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新しいeラーニングシステムiBELLEsの可能性について

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(1)

新しいeラーニングシステムiBELLEsの可能性につい

著者

岡田 毅

雑誌名

国際文化研究科論集

23

ページ

79-89

発行年

2015-12-20

URL

http://hdl.handle.net/10097/64186

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新しい e ラーニングシステム iBELLEs の

可能性について

岡田 毅 本論は日本学術振興会科学研究費補助金の交付を受けて推進中の研究プロジェクト「タブレッ ト端末を用いたブレンデイッド e ラーニングによる外国語教育プログラムの開発J (基盤研究 B 平成 26 年度~ 28 年度)の開始 l 年 3 カ月後の平成 27 年 6 月 30 日に、開発の一応の成果を受 けて実践授業の場での稼働を開始した新しい e ラーニングシステム iBELLEs

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この問題に関して著者は、例えば Lancaster 大学の UCREL

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System) の数種類以上の粒度 (granularity)の異なるセット間 での投射に着目してきた。すなわち、言語学的な研究目的のために必要な品詞分類の精度と、初 中級の EFL 教育にとって必要な品調分けの精度には当然差があるわけで、このような粒度の差 異をコーパスユーザーとしての研究者や教育者や学習者が必要に応じて切り替えて用いることの できるシステムは有用であるに違いない。しかしこれはあくまでも既存のアノテーシヨン基準を 受け入れた上でのセット間の投射や切り替えであり、粒度の切り替えのみでは克服できないアノ テーションの限界がある。そこで、システムユーザーとしてのコーパス利用者が独自に自由に標 識(タグ)を考案し定義した上で自らがアノテーションを施していくためのシステムを開発した

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2010) 。 異なった粒度をもっアノテーションを個別の表(テーブル)として記述し、それらを厳密な関

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東北大学大学院 国際文化研究科論集 第二十三号

係付けを持って管理するという手法はリレーショナルデータベース管理システム (RDBMS) で 実現可能であり、 Okada&

Sakamoto

(2010) ではこの考えを拡大し、ユーザー自身が柔軟なテー ブルを定義し、それを他のテーブルに関連付けることにより、これまでになかったコーパス使用 の目的に沿ったアノテーションを実現するにいたった。これにより、品詞標識や構文標識の枠組 みを超えた個々のユーザーならではの標識付与が可能となった。例えば EFL 教材に対する教育 目的別のアノテーシヨンを教員ごとに定義でき、その定義テーブルを、同一教材を授業実践で使 用する教員聞で共有することによって、より拡張性の高い EFL 教育用コーパスの協働構築が可 能となる。また、 EFL 学習者である個々の学生にも、このような柔軟なアノテーシヨン機能を持 たせることができれば、これまでになかった共修のスタイルが担保される。 このように、既存のアノテーションの枠組み以外にユーザーによる自由な付加情報の付与を 可能にするという試みを、 EFL の読解教材に対するアノテーションとしてのハイライテイング (highlighting) としてシステム的に実現したのが、 CHAPEL

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e-learning) である(藤野・坂本・岡田 (2012))0 CHAPEL の画面では、 EFL 読解力養成用の

教材としての英文パッセージの特定部分を、教員の指示(これを「独自アノテーシヨンの定義」 ととらえることができる)に従って、学習者が特定の色を使ってハイライトする。例えば、「自 分にとって完全な未知単語」を赤くハイライトし、「パッセージにとってのキーワード」を黄色 でハイライトする、というようにである。 日本の大学における EFL 教育の文脈中で、英語教員と学習者である学生をシステムユーザー と位置付け、読解力養成用教材である英文パッセージに対するユーザー独自のアノテーションと してのハイライティング、という概念を基盤として一連のシステム開発が推進されている。平成 24 年 1 月に稼働した CHAPEL が実装した各種の機能と、実証実験を通して得られたユーザーの ニーズに応えるための新機能を検討し、後継システムとしての開発研究を行った成果が本論で紹 介する iBELLEs である。 l 1.2 開発の経緯

Okada

(2014) で指摘したように、 CHAPEL と iBELLEs という一連のシステム研究開発には、(外 国語教育のみに限定されることではないが)教授者としての教員と学習者としての学生の聞に不 可避的に発生する溝 (Davies 2006)) を ICT の活用によって埋めようという基本的な目標がある。 教員が学生に対して予め想定する基礎的知識や、教育目標に照らして設定する各種の項目と、学 生が実際に持っている知識や授業に対するニーズの問での溝(ギャップ)が大きければ大きい ほど、学生側の学習意欲の低下と教員側の教育意欲の低下が発生しやすくなり (Peacock 2001) 、 その結果として一方向性しか持たない教育効果の低い授業が提供され続けることになる。この、 一種不幸な行き違い (unfortunate discrepancy) を解消するためには、教員に対する学生側からの フィードパックが不可欠で、ある。入念な教育計画に基づいた授業では、例えば事前の調査によっ て教員は学生の技能や知識的背景を把握することができるし、学生側も教員に対して、例えば自 発的な発言や質問、ポートフォリオのような学習履歴の提供によって、的確なニーズや学習状況 を伝えることは可能で、ある。しかし、 ICT を活用することにより、本システムの研究チームが目 標とするのは、時間的なラグのない瞬時的で双方向的な情報の交換によって保証されるフィード パックのループ (Okada&

Sakamoto

2014) が実現する、不幸な行き違い(ないし溝)の解消である。 そのために、 iBELLEs の教員側機能では、送信されてきた情報を処理し、対面している EFL 80

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新しい e ラーニングシステム iBELLEs の可能性について

クラス受講者全員の傾向が瞬時に視認できるようなグラフイック機能を重視している。 例えば、

教材の特定個所に対して何らかの動作を加えた学生の正確な人数が数値で表示されるようなイン ターフェイス (Talmo,

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2014) よりも、色の濃淡やグラフという視認性の高い表

示の方が、実際の授業を運営しながら、学生のニーズや問題点を瞬時に把握しなければならない 立場の教員にとって有益であることは疑いがない。 詳細な数値的情報はサーバーに蓄積され、爾 後の分析の対象となる一方で、 iBELLEs のインターフェイスはあくまでも実際の対面式授業に参 加している教員と学生の支援を中心に据えて設計されている。 1.3 全体像の中での iBELLEs:開発チームの構成 「ブレンデイツドラーニング」、 ie ラーニング」、「反転(自ipped) 授業」、「遠隔授業」等の用語 はそれぞれが厳密な定義のもとで用いられていることがむしろ少ないが、本研究プロジェクトで は e ラーニングのシステムや工夫を、いろいろな教育手法をブレンドして提供する EFL教育中 の重要なモジュールと位置付けている。 また、更に大きな枠組みの中での対面式授業、個別学習、 協働学習 (Davies 2015) 、教室外の(いわば遠隔)自律学習などを包括的にカバーする教育プロ グラムの開発がプロジェク ト全体の開発研究目標でもある。

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図 1 .教育プログラムの全体図と iBELLEs 図l で示すのは、本研究プロジェクトで開発研究を目指す教育プログラムの全体像であり、巴 ラーニングシステムとしてのiBELLEs は対面式授業の中で重要な役割を果たすことが示されて いる (iBELLEs と、学生聞の個別 ・ 協働学習については後述する)。 図の右端は、教室を離れた 自律的学習モジ、ユールを示しており、 2 ここでの学習が様々な工夫によってフィードバックされ、 実際の対面式授業の場での教育支援に反映されることになる。 また、図からも明らかなように全 体の学習は学習管理システム WebOCMneげによって支援されており、各種のシステムや webサー ビスを別個に利用して独自の計画と努力で到達目標に向かうというのではなく、ユーザーとして の教員も学生もそれらが適切にブレンドされた切れ目のない e ラーニング環境としての教育 ・ 学 習プログラムの効果を享受することが期待される。 設定された教育・学習プログラムの到達目標 に向かう際に、教員にとっても学習者にとっても各種のシステムやサービスはことさら個別に意 識に上ることのない、全体としての支援であるべきである0 4 研究プロジェクトチームは図 2 で示す構成であり、この中の教材開発グループでは、 TOEFL

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東北大学大学院 国際文化研究科論集 第二十三号

ITP@テストのリーデイングセクシヨンで用いられた英文パッセージの実物の使用許諾を、 CIEE

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Service) と締結している。 5 TOEFLITP⑧テスト以外の素材であっても、このグループでは上述の、 教員によるアノテーシヨンの応用として柔軟な注釈や解説をリーデイング訓練用の英文パッセー ジに付与していくことができる。

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OVerall 拘吋討tManagem側t 図 2. 研究プロジェクトチームの構成 iBELLEs のシステム的な開発を担うのが図 2 右上のグループであり、そこでは各種のデータ管 理をはじめ、柔軟なユーザーインターフェイスのための開発研究が行われている。 そして下部で 示されたグループは、教育評価やシステム評価を含めた教育プログラム全体の開発を担うことに なる。 1 .4システムユーザーの明確化:日本の大学における英語力のニーズ iBELLEs を中心に据えた EFL 教育プログラムでは、その教育目標を明確に設定し、これに伴っ て、システムユーザーとしての教員と学生も限定している (Okada 2014b) 。商用の e ラーニング システムに求められる汎用性と幅広いユーザ一層を想定するのではなく、このプログラムは、東 北大学の学部レベルにおける EFL 教育の中で、特に同学が平成 21 年度から全学部の l 、 2 年次 学生に受験を課してきている TOEFL ITP@ テストのリーデイングセクションを素材とする英語読 解力養成授業のために開発されている o また、教育目標としては、決して高くないリーデイン グセクシヨンのスコアアップを「総合的な読解学習の結果」として設定し、英語圏の大学におい ての勉学に最低限要求されるラインである 550 点ないし 560 点以上のスコアを目指している。 7 TOEFLITP@ テストのスコアで 500 点から 530 点のゾーンの学生数が多く、この層に属する学生は、 一定の英語力を持ちながらも、リスニングとともにリーデイングにおいてさまざまな克服すべき 課題を抱えていると考えられる。 iBELLEs を用いたリーデイング指導の授業から得られる多くの データや学生からのフィードパックは、その課題を明確にするのに役立ち、より効果的で効率的 な EFL 学習へと繋がるものである。また、ユーザーとしての教員には、一定水準の ICT リテラシー は求められるが、それ以上に、学生のニーズや困難点を瞬時に把握し、その上で動的に授業プラ ンを変更・修正・設定する能力が求められる。また、 iBELLEs を利用する複数教員間でのアノテー ション情報の交換という形で実現される拡張性と汎用性に富んだ協働 (Okada &

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新しい e ラーニングシステム iBELLEs の可能性について を重視する姿勢が必要と考えられる。 ここで重要なことは、 c ラーニングシステムである iBELLEs は上述のような中上級の EFL 学 習者の読解力養成みを目標として設計されているのではなく、本教育プログラムの中ではそうで あっても、提供される教材の種類やレベルに何らの制限もなく、今後の幅広い応用の可能性を持っ ているという点である。 2. 新システム iBELLEs これまでに指摘したように、対面式の EFL 読解力養成授業の中で、教員が学習者との間で 不可避的に生じる溝を、リアルタイム性を伴ったフィードパックを通して瞬時に把握し、動的 な授業運営を強力に支援するというのが iBELLEs の基本的設計思想である。 そこでは視認性が 重視され、詳細な数値に拘泥することなく、教員の発想、と経験をもとに動的な評価 (dynamic assessment) や適切な介入 (mediation) を伴った指導 (Bavali,Yamini & Sadighi2011) が実現され

ることになる。 2.1 実践例 ここでは iBELLEs の実践運用の模様を実際の授業例を用いて、教員側と学生側からのスクリー ンショットで示して解説する。 8 2.1.1LMS との連携 図 3 で示すように、 LMS としての WebOCMnext に強力に支援される本教育プログラムの中核 となる iBELLEs は、 WebOCMnext のウインドウの中で稼働することができる。 画面の左下には WebOCMnext が提供する辞書システムが稼働しており、学習者は iBELLEs を利用しながら体系 的に語葉力を増強していくことができる。 WebOCMnext には語葉的な弱点の自己克服を支援する 辞書機能以外にも教材管理やテステイング、履修学生聞の通信など豊富な機能が実装されており、 このプラットフォーム上での e ラーニングの活用には大きなメリットがある。

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P 印刷 仁王遍ζJ 図 3. LMS と iBELLEs (学生ログイン画面) 図 2 の左上で示されている教材開発チームでは、 TOEFLITP@テストのリーデイング素材を中

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東北大学大学院 国際文化研究科論集 第二十三号 心に、 iBELLEs 上で提供されるマテリアルを開発している。 そこでは、例えば素材としての英文 パッセージの読解に必要な、キーワード、構文、談話構造上の情報などに関する指導項目が付加 情報としてアノテーションの形で付与される。 下の図は、目標素材に対して教員が教育目的に即 して指摘・強調すべきと考える個所に、 3 色で分けられたハイライトを画面上で施し、そのハイ ライト個所に、画面右側で示されるような、独自の定義を与えている。 これは上述のような、コー パスアノテーションの技術に裏付けられた、ユーザーとしての教員に許された「独自定義のタグ 付与」 の概念の具現例である。 必之江1.!. ・匂..-="".-=~ー 個目叩 ~--四四 包ー四回 ~.也凪・・3 沼山

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新しい E ラーニングシステム iBELLEs の可能性について 色のベンを用いてハイライトを施す。 自分のハイライトを Submit ボタンで教員に提出すること もできるし、 Teacher's にチェックを入れることで、各色別の枠で固まれている教員が開示してい るハイライト情報を重ねて閲覧することができる。 また、この図からも明らかなように、学習者は教員のハイライト部分を右クリックすることで 現れるポップアップウインドウの中で、当該ハイライト部分に対する解説やヒントを閲覧できる。 この意味で図 4 における教材作成としての教員のアノテーションは、単にハイライトで強調する 箇所を指定するだけではなく、それらに対して解説やヒントなどという追加の付加情報を重層的 に付与しているといえる。 指示に従って学生が提出してきたハイライト情報は、図 6 のような形で教員側にフィードパッ クされる。

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東北大学大学院 国際文化研究科論集 第二十三号

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図 7. 授業中の教員モード画面 : (例) r トピックセンテンス J ハイライトの把握 2.1.3 使用アンケー卜調査結果 本論執筆段階ではiBELLEs を利用する教員やTAの数は限定されているが、実際の授業でこの システムを利用した合計128名の東北大学学部生に対してアンケート調査を実施した。 工学部 l 年生 l クラス、 2 年生 l クラス、法学部 1年生 l クラス、農学部l 年生 l クラスの学部学生たち は概ね iBELLEs による EFL対面授業に満足している。 この4 つのクラスにおいての教育 ・ 学習 では紙媒体の教材を一切利用せず、全てが電子媒体を用いて行われた。 アンケー ト集計結果に ついての詳細な議論は、図 2 右上のシステム開発チームの発表等 (日野 ・ 坂本2015) に譲るが、 教授法的に注目すべきは、 紙媒体教材と電子媒体教材の相関関係についての回答結果である。 そ こでは、紙に印字された英文パッセージに対するハイライテイングの困難さを iBELLEs のよう な電子システムが解消しているという評価と並んで、 ハイライ ト以外の書き込み(これも一種の ユーザ一定義のアノテーションである)も学習上必要と感じる、とする指摘がみられるo こ のようなハイライテイングのみではない自分向けのヒン トやメモのような付加情報付与の仕組み が、システムが実装すべき追加機能として考えられる。 また、アンケー トの自由記述からは、 自 分が所属するクラス全体のリーデイングの傾向や、 読解上の困難点を、 教員画面を教室内の共用 モニタで視認することによって共有できることを、リ アルタイム性を持った iBELLEs の利点と して指摘する意見がみられた。 2.2 動的授業プランの設計 序論で指摘したように、 リ アルタイム性を持つ双方向通信を重視したiBELLEs を有効に利用 するには、 教員側にも一定の資質が求められる。 それは、 事前に入念に設計した授業プランを実 際に得られる学生からのフィー ドパックに基づいて瞬時に柔軟に変更・修正して所定の目標に到 達するという動的な授業運営の技術であり、 教員の想定と学習者の実際の困難点やニーズ聞の講 を iBELLEs を利用して埋めるという作業を具現する技能である。 これは、 具体的にはl 回の授業セッション内で割り当てておいた何種類かの学習項目別授業プ ランの変更や、最適な授業 ・学修スタイルの選択に繋がる。 例えば、 事前の授業プラン設計では 対象英文パッセージの語葉よりも構文についての指導の割合が高くとも、も し iBELLEs を介し たフィー ドパックから、 学習者がむしろ語葉レベルで大きく蹟いていると判断される場合、 教員

8

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新しい e ラーニングシステムiBELLEs の可能性について はそれぞれのプランに割り当てていた時間を変更することができる。談話標識のような、教員側 がより解説に重点を置きたいと感じる項目であっても、学習者が容易にそれを認識しているとい う事実がフィードパックを通して把握できれば、談話標識の説明や指摘に費やす時間を大幅に短 縮することができる。また、一般的な文法項目や段落構成についての背景知識が不足していると 瞬時に判断できる場合には、あえて一方向的な講義スタイルを採用したり、学習者同士の学修に よるパッセージトピックの認定作業が必要な場合には、ペア学習やグループ学習という学習スタ イルに動的に切り替える、というような、教育・学習スタイルの選択に iBELLEs は役立つこと になる。

さらに、 τひEFL ITP<Ilテストのリーデイングセクションの正解傾向を iBELLEs で視認し把握す ることもできる。例えば、段落構成に関する問題よりも、パッセージ内容の延長としての推論に 関わる問題に学習者が困難を感じていると判明すれば、適切な介入による個別指導を通してや、 動的評価システムを利用しての自動介入による評価というような、多角的な評価に基づいた教育 指導が実現される。 10 3. まとめと今後の発展

3

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1

Eurocall での公開とフィードパック iBELLEs とそれを用いた動的な授業プラン設計については、本論に先立つて Eurocall 2015 大 会で概要を発表している (Okada& S北阻loto 2015) 。大会での発表等に対しては、(1)

iBELLEs

そのものが著者のコーパス構築に関わる研究成果の応用であること、 (2) システムユーザーとし ての学習者のレベルを明確に規定し、汎用システムが陥りがちな冗長性を排除することに成功し ていること、 (3) 色の濃淡という視認性を重視することによる瞬時の学習者把握の工夫がなされ ていること、などに好意的な評価を得た。 批判的な意見としては、(1)教員側からの学習者の画面操作に対する制御機能がない、 (2) ショートテストのような簡易採点機能がない、 (3) 学習者間の通信機能がない、というようなも のがあった。このうち(1)は、東北大学の CALL 教室で利用するクライアントマシンのコント ローラーで対応可能であるし、 (2) のような自動採点・集計機能は WebOCMnext を利用するの で iBELLEs には当初から実装を企図していないものである。また、このような周辺機能をあえ て実装しないことで、 iBELLEs 本来の役割りと機能を先鋭化させることに成功しているわけであ り、それがプラスの評価 (2) に繋がっている。 しかし項目 (3) は今後の検討を要する問題であり、 CHAPEL に実装された学生聞の相互閲覧 機能の復活が必要であるかもしれない。しかし、個別・ベア・グループ学習の際に iBELLEs を どのように用いるのが最適かという問題と並んで、、閲覧機能が実現できても、それをどのようし て対面式授業に有効に役立てるのかという教授法上の重要な問題が残る。 3.2 教授法へのインパクト 稼働を始めて数カ月の iBELLEs であるが、この新しい e ラーニングシステムがもたらすであ ろう EFL 教育上の効果、および教授法に与えるインパクトは大きなものであることが感じられる。 iBELLEs は無論単体でも稼働するが、本論で概説したように、 WebOCMnext のような LMS に支 援されながら利用される形態が好ましいと考えられる。 e ラーニングとひと言でいっても、学習 者および開発者ではない一般の教員にとって、さまざまな e ラーニングシステムや web 教材など

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東北大学大学院 国際文化研究科論集 第二十三号 を個別に選択して学習や教育に応用するというのではなく、ひとつのプラットフォームの上から シームレスに各種のサービスを受けシステムの機能を享受し、学習教育目標に到達することが何 より肝要なわけであり、パーツに分解されたシステムやサーピスの連携を自らが選択して利用す るという、ある意味でのツール利用に労力を割く必要はないのである。例えば本研究プロジェク トで対象としている中上級レベルの EFL 学習者の読解力の向上が最終的な目標であって、学習 者や教員が e ラーニングプログラムに不必要な関心を向ける必要はないということである。 CALL 教室で LMS に支援されながら iBELLEs を含めた各種ツールを利用して教育と学習が進 められる場合でも、必要に応じ、デジタル情報ではなく、紙媒体や手書きを含めたアナログ的な 手段が当然用いられるべきであるし、電子媒体を介した双方向通信を最大限に活用する対面式授 業であっても、教員・学生間で交わされるべきコミュニケーションの重要さに何ら変わりはない。 iBELLEs はむしろ、このような真の意味でのブレンド教育の場における人間としての教員の果た すべき役割を明確化するための大きなきっかけとなる。 先述したように、 iBELLEs は対面式 EFL 読解授業のみに特化して設計され開発されたシステ ムではない。フォント等のクリアすべき問題はあるが、テキストエディタで扱える素材であるな らば教材の語種を間わないという理由から、システム開発チームでは iBELLEs を(通信性を持っ た) I便利な電子教科書」と性格付けている。また、教科書的な側面ばかりではなく、ハイライ ト色の濃淡を利用すれば、クリッカー的にシステム利用者からのフィードパックを瞬時に得るこ とができる。リアルタイムの意向調査や投票結果の集計などにも利用することすら可能である。 今後、 CHAPEL に実装されていた学生聞の相互閲覧機能や、ベアやグループを構成して学習 を進める場合の、双方向情報伝達の仕組みなどが iBELLEs に求められる追加機能として考えら れるが、その前に現行のシステムで実現することのできるより効果的な EFL 読解教育・学習に 関する研究が教材開発チームのみならず、教育プログラム研究チームに与えられた課題である。 注 1. 教員側から個今の学生からのフィードバックは閲覧できても、クラス全体の傾向を僻搬するという機能が CHAPEL には実装されていない。この備隊機能がもたらす動的な授業設計と運営が iBELLEs 開発の大きなきっ かけとなっている。 2. 教室外の自律学習を強力に支援するためのシステム開発を現在、平成 27 年度高度教養教育開発推進事業費の 交付を受けて推進中である。また、学習内容や履歴を正確に評価し、授業に反映させるための手段としての E ポー トフォリオに関する研究も進められている。 3. WebOCMnext: http://130.34.131.67/wn22/Login.aspx(2015 年 9 月 30 日アクセス) 4. かつての LL を用いた英語教育の多くには、ともすれば装置や技術の面に関心を奪われ、肝心の教育内容や学 習支援の充実とそこから得られる教育効果の面に十分な関心を向けなかった、という反省点がある。 5. 非公開が原則の TOEFL ITP@ テスト素材を世界で初めて e ラーニング教育用に提供を受けたことになる。 TOEFL ITP@ テスト以外にも、フォント調整の問題を除いて、 iBELLEs には原則的にどのような言語素材でも搭

載が可能である。 6 無論、他の技能の訓練用に iBELLEs の機能を活用することは可能であるし、今後の応用と発展がさらに期待 されるところである。この点については稿を改めて論じる。 7 東北大学で実施している TOEFLITP" テストの結果に関しては、学務審議会外国語委員会英語教科部会が毎年 発行する報告書を参照。 8. iBELLEs の実践使用にあたって、システム利用記録の学術的利用に関するインフォームドコンセントを実施 し、受講学生全員から文書による同意を得ている。 9. これは、紙媒体を用いた英語学習の履歴が長いための学習スタイルの固定化から生じる反応かもしれない。

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新しい E ラーニングシステム iBELLEs の可能性について いわゆる学習スタイルに対する好みが教材を搭載する媒体の差に反映されていると考えることもできる。 10 テステイングと動的評価の問題に関しては図 2 中の教育プログラム開発チームで研究中である。 謝辞 ・この論考は日本学術振興会科学研究費(基盤研究 B 課題番号 26284075) の交付を受けて行わ れている研究プロジェクト成果の一部である。 -正式契約を締結し、世界で初めて e ラーニングシステム上での真正 TOEFL ITP@ テストの reading 一素材を提供することを許諾してくれた米国 ETS 、ならびに CIEE Japan に謝意を表します。

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図 1 .教育 プ ログラムの全体図と iBELLEs 図 l で示すのは、本研究プロジェクトで開発研究を目指す教育プログラムの全体像であり、巴 ラーニングシステムとしての i BELLEs は対面式授業の中で重要な役割を果たすことが示されて いる (iBELLEs と、学生聞の個別 ・ 協働学習については後述する) 。 図の右端は、教室を離れた 自律的学習モジ、ユールを示しており、 2 ここでの学習が様々な工夫によってフィードバックされ、 実際の対面式授業の場での教育支援に反映されることになる 。 また、

参照

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