教育用プログラミング言語と授業利用 : 4.制御教育への利用
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(2) 4 制御教育への利用. ロボ= MYU !『com1』作る。 ロボ:スタート設定=「!「! 1 番 入力なし」の間「! モーター左」実行」 。 ロボ:缶ひろい=「! 40 モーター右 10 停止 20 モーター左」 。 ロボ:下がって左=「! 10 後退 5 右回り」 。 ロボ:下がって右=「! 10 後退 5 左回り」 。 ロボ:転送命令=「! はじめロボット パワーオンスタート スタート設定 「!前進 図 -1 3 軸自律型ロボットの作品例. 「! 2 番 入力あり」なら「! 下がって右」実行 「! 3 番 入力あり」なら「! 下がって左」実行 「! 4 番 入力あり」なら「! 缶ひろい」実行 」繰り返す おわりロボット 」 。 ロボ!転送命令。 図 -2 3 軸自律型ロボットの制御プログラム例. し,1 個のモーターで缶を運ぶ動作を行う.図 -2 はド. 図 -3 に教材である Cricket を示す.図 -4 は Cricket の. リトルで記述した制御プログラム例である .実行する. 作品例である.. 3). とセンサスイッチで缶を探しながら前進し,缶に触れる とアームを下げてから持ち上げ,後退する.. 火星ローバーコンテストの報告 中村講介氏(福岡新宮町立新宮中学校)は,「機械にプ. Cricket を用いた小学生向けワークショップ. ログラムが内蔵されて自律的に動作する」モデルを中学. 森秀樹氏(CSK ホールディングス)は,企業の社会貢. 生に体験させるために,火星探検ロボットという想定で. 献の取り組みとして,小学生にワンボードマイコンであ. 授業を行った.. る Cricket を用いた工作と制御を行う授業. ☆2. を実践して. 使用した教材は JAPAN ROBOTECH 製の制御ロボッ ☆3. いる.. ト教材. である.このロボットには 2 個の衝突検知セ. 子供たちは工作として自分のおもちゃを作り,その中. ンサが搭載されている.授業では火星探検を想定したコ. にモーターと Cricket を組み込んでプログラムから制御. ースを作り,それを通り抜ける課題を生徒に与え,クラ. する.プログラムはパソコンの画面上でタイルを組み. ス内でコンテストを行っている.図 -5 は,コンテスト. 合わせるかたちで作成する.このように工夫することで,. を行っているときの生徒の様子である.. 小学校 1,2 年生という低学年の児童から制御プログラ. このコンテストの特徴は,地球からロケットで送り込. ムを体験できるようにした.. んだロボットが火星で自律的に動くモデルを想定してい. 小学生の時点から, 「おもちゃという機器の中に機械. るため,コンテストの中で生徒はいっさい手出しをでき. とコンピュータが内蔵され,協調して動いていること」. ないというルールにある.生徒にとっては自分が作った. 「それらは人間が設計し,実際に組み立てたりプログラ. プログラムがすべてであり,真剣にプログラム作成に取. ミングして動作していること」を体験できる実践として. り組むことにつながった.プログラムはタイル形式で作. 評価したい.. 成したため,構文エラーは発生せず,プログラム作成に. ☆2. ☆3. http://cricket.camp-k.com/. http://www.japan-robotech.com/. IPSJ Magazine Vol.48 No.6 June 2007. 603.
(3) 特集:教育用プログラミング言語と授業利用. 図 -3 Cricket. 図 -5 火星ローバーコンテスト. 図 -4 Cricket の作品例. 集中できた.. 制御学習が生み出すもの. とが可能であるため,機械的な部分,電解回路的な部分, ロボットに使用する材料の強度,基板のコンピュータ, 制御プログラム,のどれか 1 つの不備でも正確に動作し ないことを体験できる.これは,それぞれが連動しシス. 制御学習を体験することで,子供たちはさまざまなこ. テムをなして動いていることを理解することになる.言. とを学ぶことができる.. 葉で説明してもなかなか分からない難しい概念であるが, 制御教材を使うことで体験的に理解できるようになる.. システムの考え方が分かる 制御を学習する中で,子どもたちは,自分が作ったロ. ソフトウェアの大切さが分かる. ボット教材が思ったように動作しなくて困る場面を頻繁. コンピュータを積んで制御している以上,プログラム. に経験する.そのときに,自分が作ったプログラムとロ. は絶対に必要になる.自分が作ったロボットをどのよう. ボットのどちらが悪いのかを悩み始める.そして,作業. に動作させるか規定するプログラムによりロボットの動. する過程で,プログラムとロボットは,「両方が動かな. 作が決まる.また,プログラムを変えることで,まった. いと全体が動かないし,逆にどちらかの多少の不具合は. く違った動作のロボットになってしまう.. もう一方を修正することで補える」というソフトウェア. この体験は,プログラムの特長を端的に表している.. とハードウェアの相補的な関係に気づくことになる.. 制御プログラムの体験でなくても,純粋なプログラムの. さらに,中学生の技術・家庭科の授業では,情報の授. 体験でも分かるが,制御学習の場合ロボットの動きでは. 業とものづくりの授業を合わせたかたちで取り組むこ. っきり評価できるため,子どもにとってもインパクトが. 604. 48 巻 6 号 情報処理 2007 年 6 月.
(4) 4 制御教育への利用. 高い.. 進める上では生徒と教員への負担が大きくなり,必ずし も歓迎できない側面がある.この問題はステッピングモ. 社会的な技術利用が見えるようになる. ーターなどを使うことで解決可能だが,現実には生徒が. 2006 年 6 月に東京で起きたエレベータ事故を題材に,. 負担できる教材のコストなどにかかわってくる.. 小学校の児童に調査した経験では,先生が特にエレベー タの仕組みを説明しなくても,制御学習を体験した児童. 制御教材を使用しなければ学べないもの. は,体験していない児童と比べて,エレベータの仕組み. 前述のように,学校教育現場で使用できる制御教材は,. を類推できることが分かった.. 物理的な制約を受けることが多く,プログラムの再現性. 具体的には,原因の 1 つとして制御プログラムのミス. が乏しくなる欠点を持っている.しかし,その欠点があ. が報道されていた新聞記事を見せ,「二度とこのような. るからこそ学べることも存在する.. 事故が起こらないためには,エレベータ会社の人にどん. ワークショップの発表では,制御教材を用いた学習を. なことをしてもらいたいか書いてください」という質問. コンピュータプログラムの学習に特化しないで,情報技. をしたところ,未経験の児童は「しっかり点検してほし. 術や産業技術の基礎を理解する学習と位置づける取り組. い」などと漠然とした回答が多数だったが,制御学習を. みが紹介された.制御教材を利用した学習の中で,子ど. 体験した児童は「制御盤を常に点検してほしい」 「制御プ. もたちが物理的な問題を含むさまざまな問題に遭遇した. ログラムの異常を点検してほしい」など,ソフトウェア. とき,ロボット自体を修正すべきなのか,制御プログラ. または制御に関連する具体的な点検個所を指摘する答え. ムで対応できる問題なのか,その解決方法を自ら考えさ. が多かった.. せている.さらに,プログラムの再現性が難しいという. 制御学習を体験することにより,世の中で使われてい. 物理的な問題でも,コンピュータプログラムで解決でき. る制御の仕組みを理解したり,事故などの報道を理解す. る限界を考えさせ,さらには,コンピュータプログラム. ることができることにつながる可能性がある.. が適切に動作できるためには,機械的な部分の精度も重. 授業に取り入れるための工夫. 要であることに気づかせている.その中で子どもたちは, ソフトウェアとハードウェアともに機器を正確に動作さ せるための大切な技術であることに気づく.. ワークショップの議論を通して,学校の授業で制御を. ソフトウェアとハードウェアの関係は,コンピュータ. 扱うためのポイントと課題が見えてきた.. だけに限った問題ではなく,家電など身近に存在してい る機器の中でも活かされている.これらの内容は,子ど. プログラミング学習との違い. もたちに座学で教えても分かるものではなく,実感を伴. 制御教材を用いて子どもたちにプログラムを教えるこ. う体験型学習においてこそ可能であると思われる.制御. とによって得られる学習効果は,コンピュータプログラ. 教材は,ブラックボックスとなって見えにくい自動化さ. ムの単体での学習とは異なっている.. れている機器の中身について触れられる良い教材となっ. 授業ではプログラミングの学習になりがちであるが,. ていることが分かる.. 制御学習では,コントローラとしてのコンピュータの役 割を考えた制御教材の学習を常に意識して進める必要が. システムを理解する学習への発展. ある.. 制御学習は,コンピュータ制御の役割について考える 機会を与えることになる.たとえば,コンピュータプロ. 論理性や再現性の問題. グラムを学習することで,ソフトウェアを内蔵した機械. 通常のプログラミングの学習では,作成したプログラ. は,プログラムによって機能が変わることが理解できる.. ムの動作は,何度実行しても同じ結果になる.一方,小. それによって,コンピュータソフトウェアの働きが見え. 中学校で使われる教材では,安価なモーターのばらつき. てくると同時にソフトウェアの重要性に気づくことにつ. や電池の消耗などの要因から,同じプログラムでも生徒. ながる.. によって動きが違ったり,動かすたびに微妙に動作が変. 子どもたちが,ハードウェアとして意識するものは,. 化することが多い.. ロボット(制御教材) のモーターでありセンサであり,コ. これは,実際の機械でも発生する摩擦や磨耗といった. ンピュータを載せた基板である.そして,それらのどれ. 物理現象を体験的に理解することにつながるが,授業を. か 1 つにでも故障があると,ロボットは正確に動作し IPSJ Magazine Vol.48 No.6 June 2007. 605.
(5) 特集:教育用プログラミング言語と授業利用 なくなる.これは,自動化された家電などの機器に例え. みを理解する力を育てることができることにつながると. ると,機械的な部分,センサ,電気回路,コンピュータ,. 考える.. 制御プログラムのどの部分が欠けても製品として機能し. それは同時に,専門家の話を聞いて,それらの仕組み. ないという事実と同じである.. を理解できる程度の素養が身につくことを意味し,生徒. 身の回りに存在する多くの家電製品は,中身がブラッ. たちに現在と未来の技術に関して考えるきっかけを与え. クボックスであり仕組みを理解することは困難だが,制. ることにもなる.. 御学習の体験により,子どもたちはシステム的な考え方. ひいては,広く技術リテラシー を育てる市民の教育. を学び,多くの組み込み製品の仕組みを類推することが. にもつながる.. できるようになる.. 制御教材の実践者を少しでも普通教育に増やしていき. まとめ 制御学習によって学ばせる内容と制御教材について紹 介をした.また,教育言語ワークショップにおける 3 人 の実践発表を紹介した. システム化された製品は,世に多く出回っているにも. 4). たい.そのためにも,制御教材の開発や改良を進めてい きたい. 参考文献 1) 末松良一,雨宮好文 : 制御用マイコン入門 (2005). 2) 文部科学省 : 中学校学習指導要領 (1998).. 3) Kurebayashi, S., Kamada, T. and Kanemune, S. : Learning Computer Program with Autonomous Robots, LNCS, Vol.4226, pp.138-149 (2006). 4) 桜井 宏 : 社会教養のための技術リテラシー,東海大学出版会 (2006). (平成 19 年 4 月 19 日受付). かかわらず,多くの使用者にとってブラックボックス であり,その仕組みや概要は謎のままである.それら製 品の内容を把握し理解するためには,ソフトウェアの働 きやハードウェアの仕組みなどを学習する必要があるが, 専門家を目指していない中学・高校の生徒たちにとって は,専門的な知識獲得の目的がないため,学ぶことがお もしろいと思わせる教材で,それらを無理なく学習でき る環境を構築することが大切である. 中学校・技術家庭科の授業でシステムの考え方を学ぶ ことは,身近にある製品をブラックボックスとして受け 入れるのではなく,使用し管理するための最低限の仕組. 606. 48 巻 6 号 情報処理 2007 年 6 月. 紅林 秀治(正会員). [email protected] 静岡県内の国公立中学校,工業高校教諭を勤めた後,2005 年から静 岡大学教育学部へ.専門は技術教育.ものづくり教材やロボット制御 教材の開発とそれらの学習効果を研究.主な著書「Learning Computer. Programming with Autonomous Robots, Lecture Notes in Computer Science, LNCS 4226, pp.138-149 (2006)」「中学校における技術科のもの 作り教材について,技術史教育学会誌,Vol.7, No.2, pp.2-7 (2006)」「こ んなものまで作れるの 身近な材料を使ったものづくり,技法堂出版 (2006)」等..
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