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水素社会への国の取り組み:経済産業省資源エネルギー庁/倉本浩司

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水素エネルギーシステム Vol.32, No.1 (2007) 巻 頭 言 ―1―

巻 頭 言

水素社会への国の取り組み

倉本 浩司

経済産業省資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部政策課燃料電池推進室 2000 年前後には1バレル 20~30 ドル程度で推移していた原油の価格は、昨年7月には 70 ドルを超え、史上最高値を更新した。一時に比べると落ち着きを見せてはいるものの、依然 として高水準で推移している。しかしながら、我が国経済への原油価格の高騰の影響は限定 的であり、これは、石油ショック以来、官民一体となった取り組みにより、我が国が石油へ の過度の依存体質を克服し、原油価格の高騰に対する耐性を強めてきたためである。また、 我が国経済は、確固たる持続的経済成長を目指しており、このためには、資源小国である我 が国として、国民生活や経済活動の基礎をなすエネルギーの諸制約解消と、エネルギー安全 保障の確立に万全を期すことが不可欠である。一方、2008年から気候変動枠組み条約の 京都議定書第一約束期間がスタートするが、1990年以降、温暖化対策ガス排出量が増加 している我が国は厳しい対応を迫られている。このように、エネルギー制約と環境制約の問 題をどう乗り越えていくか、このことが重要な課題となっている。 このようなエネルギーおよび環境制約を克服する道として、水素社会への移行が考えられ る。水素は様々な一次エネルギーおよび再生可能エネルギーから製造することができる二次 エネルギーであり、最もクリーンな燃料である。また、この水素を電力に変換するのが燃料 電池であり、既往の内燃機関発電に比して、エネルギー効率や環境汚染物質排出量低減の観 点で優れている。さらに燃料電池はその利便性からその応用範囲は広く、実用化および普及 が進むことで、新たな産業とエネルギーの革命が起こる可能性がある。以上のことから、我 が国ではエネルギー関連技術の中でも水素・燃料電池技術を重要なキーテクノロジーと位置 づけ、その開発と普及推進の努力を続けている。 水素社会移行に関しては、水素利用技術(製造、貯蔵、輸送、供給)および燃料電池技術 の成熟化が不可欠である。NEDO では水素・燃料電池技術の実用化技術開発、要素技術開発、 次世代技術開発を一体的かつ総合的に推進しており、それらを通じて、当該技術の高効率化、 高信頼性化および低コスト化にむけたブレイクスルーを促している。2005年に創設した 固体高分子形燃料電池先端基盤研究センターは、燃料電池の反応機構の未解決領域にメスを 入れ、革新的技術革命に資する知見を得るべく、その研究活動をスタートさせた。また、昨 年、九州大学キャンパス内に「水素材料先端科学研究センター」を創設し、信頼性の高い水 素輸送や貯蔵を可能にするためのマテリアルサイエンスの構築を進めている。これらの研究 センターでは、国内外の優秀な研究者の英知を結集しながら、世界最高レベルでの研究活動 を展開し、我が国が燃料電池技術および水素材料開発分野で世界をリードすることを目指し ている。 上述のような技術開発推進と平行して、確実な市場形成を目指した実証事業も展開してい る。定置用燃料電池は、電力と温水を同時に供給することで高い効率およびCO2排出量低減 を実現できる家庭用電源として大きな期待が寄せられている。わが国では定置用固体高分子

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水素エネルギーシステム Vol.32, No.1 (2007) 巻 頭 言 ―2― 形燃料電池(1kW)大規模実証事業を展開しており、これまでに 1000 台を越えるシステム を日本全国の家庭に設置し、実運転条件下での性能評価を行っている。同様に2002 年度から 開始された『水素・燃料電池実証プロジェクト』(JHFC)は今年度から第2期に入っている。 公道での燃料電池自動車走行試験および水素ステーションによる水素製造と供給を通じてさ まざまなデータを取得しており、今後取り組むべき技術課題を明らかにし、更なる技術開発 の加速を促している。本事業は関西や中部地方にエリアを拡大し、FC電動車椅子・電動カ ート等の小型移動体モニター試験等も実施し、新たな水素利用形態と燃料電池システムの実 証を行う予定である。 昨年、「新・国家エネルギー戦略」を策定した。これは、世界に冠たる省エネルギー社会を 実現した知恵と工夫にさらに磨きをかけ、国民及び産業界が一体となった取り組みを推進し ていくことを目的としたガイドラインであり、2030 年までに更に 30%以上の省エネルギー を実現すること、太陽光、風力などの新エネルギーの導入拡大を促進すること、異分野ある いは中小企業の英知を結集し技術開発を後押しすることとした。さらに、現在ほぼ 100%で ある運輸部門燃料の石油依存度を2030 年までに 80%程度とすることを目指した技術開発に 取り組むことにしている。このような取り組みの中で、水素・燃料電池技術への期待は極め て大きい。しかし、こうした政策の推進は、政府のみでなし得るものではなく、産業界や消 費者の皆様など、国民各界各層の御理解と御協力、そして揺るぎない熱意があって初めて実 現できるものである。皆様の変わらぬ御理解と一層の御協力をお願いしたい。

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