産業用熱源システムにおける高効率化技術の導入とオフィスビルへの展開 [ PDF
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(2) 2.4 高効率化技術の導入効果 検討ケースを表 1 に示す。Case0 は従来型のシステムを 想定している。Case A-1~3 は高効率機器の導入に関する 検討であり Case B-1~3 は高効率制御の導入に関する検 討である。 図 4 に各ケースの年積算電力消費量を、図 5 に Case 0 に対する Case A-1~3 の電力消費量削減率を、図 6 に Case 0~A-3 の月平均冷却塔出口冷却水温度を示す。 Case A-1 では集合型冷却塔を導入することでファンの 電力消費量は増加するが、冷却塔出口冷却水温度が低下 することで冷凍機の電力消費量が削減されるため、年間. 図 3 シミュレーションフロー図 (産業用熱源システム). で 400MWh(2.9%)の電力消費量削減効果が得られた。 INV ターボ冷凍機を導入した Case A-2 では、年間で. 表 1 検討ケース. 1900MWh(14%)の電力消費量削減効果が得られた。冷. 導入機器. 却塔出口冷却水温度が低下する程削減率は大きくなって. 冷凍機. おり、冬期は約 20%の削減効果が得られた。Case A-3 で は集合型冷却塔と INV ターボ冷凍機を共に導入すること で、電力消費量は Case 0 に比べ年間で 2700MWh(20%) 削減された。月別では Case A-2 同様冬期に高い削減率を 示し、最大で 30%の削減効果が得られた。. 制御 冷却塔. 冷凍機入口 冷却水温度下限値. 冷凍機冷水流量. INV ターボ 冷凍機. 固定速 ターボ 冷凍機. 集合型 冷却塔. 個別 冷却塔. 変流量. 定流量. 13℃. 24℃. ○ ○ ○ ○ ○. ○ ○ -. ○ ○ ○ ○ ○. ○ ○ -. ○ ○. ○ ○ ○ ○ ○ -. ○ ○. ○ ○ ○ ○ ○ -. Case 0 Case A-1 Case A-2 Case A-3 Case B-1 Case B-2 Case B-3. 図 7 に冷凍機冷水ポンプの月積算電力消費量を示す。. 冷却塔ファン 低温系 (冷凍機,冷凍機冷水・冷却水ポンプ) 高温系 (冷凍機,冷凍機冷水・冷却水ポンプ). それぞれ左が Case A-3、右が冷凍機冷水流量可変制御を. 16000. 採用した Case B-1 の結果である。冷凍機冷水流量を可変 電力消費量[MWh]. 14000. 制御することにより毎月の冷凍機冷水ポンプの電力消費 量が削減され、Case A-3 に比べ年間で 400MWh の電力消 費量が削減された。図 8 に Case A-3 と Case B-2 の月積算. 12000 10000 8000. 6000 4000. 電力消費量と月平均冷凍機入口冷却水温度を示す。月積. 2000 0. 算電力消費量は左が Case A-3、右が冷凍機入口冷却水温. Case0. CaseA-1. CaseA-2. CaseA-3. CaseB-1. CaseB-2. CaseB-3. 図 4 各ケース年積算電力消費量. 度下限値を 13℃に設定した Case B-2 である。夏期は Case A-3 と Case B-2 の冷凍機入口冷却水温度が同じであるた. CaseA-1. CaseA-2. CaseA-3. 35. め、電力消費量に変化は見られない。しかし中間期と冬. 30 25. 削減率[%]. 期は Case A-3 に比べ Case B-2 の冷凍機入口冷却水温度が 低下するため、冷凍機の効率が向上し電力消費量が削減. 20 15 10. される。Case B-3 の冷凍機冷水流量可変制御と冷凍機入. 5 0. 口冷却水温度下限値の低温化を同時に導入した場合 、. -5. Case A-3 に比べ年間で 1400MWh の電力消費量が削減さ. 8月. 9月 10月 11月 12月 1月. 2月. 3月. 4月. 5月. 6月. 7月. 図 5 Case 0 に対する削減率. れる。また、高効率化技術を全て導入した場合、従来型 32. 消費量削減効果が得られた。. 30. 温度 [℃]. の熱源システムに対し年間で約 4100MWh(30%)の電力. 3. オフィスビルにおける導入効果 前節で省エネルギー効果が確認された高効率化技術を. Case 0. Ca se A-1. Case A-2. Ca se A-3. 28. 26. 24. オフィスビルの熱源システムに導入する。 22. 3.1 対象建物の概要. 8月. 9月. 10月 11月 12月. 1月. 2月. 3月. 4月. 5月. 6月. 7月. 図 6 月平均冷却塔出口冷却水温度(Case 0~A-3). まず、オフィスビルを延床面積別に 5 つのグループに. 36-2.
(3) 90. 低温系冷凍機冷水ポンプ 高温系冷凍機冷水ポンプ. 電力消費量[MWh]. 80. Case A-3 Case B-1. 70 60 50. 40 30 20 10 0. 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月. 4月 5月 6月 7月. 図 7 冷凍機冷水ポンプ月積算電力消費量 2500. 冷却塔ファン 低温系 (冷凍機,冷凍機冷水・冷却水ポンプ) 高温系 (冷凍機,冷凍機冷水・冷却水ポンプ). 冷凍機入口冷却水温度(CaseA-3) 冷凍機入口冷却水温度(CaseB-2) 外気湿球温度. 25. 2000. 15 1000. 空調機モデル 室の温湿度. 10 500. 室熱収支 モデル. 5. 0. 室内温度設定値 給気温度設定値 外気温湿度. 基準温度における熱負荷. 20 1500. 温度[℃]. 電力消費量[MWh]. 図 9 基準階平面図(単位:mm). 30. 供給熱量. 0. 8月. 9月. 10月 11月 12月. 1月. 2月. 3月. 4月. 5月. 6月. 熱源システムモデル. 表 2 建物規模の対象範囲と基準建物データ 対象範囲 グループ グループ グループ グループ グループ. 0 1 2 3 4. 2. 3,000m 以下 3,000~10,000m2 10,000~20,000m2 20,000~30,000m2 30,000m2以上. 冷却塔モデル 冷却水ポンプモデル 冷凍機風量制御モデル. 基準建物データ 延床面積[m2] 階数 基準階面積[m2] 8,266 10 827 15,064 10 1,506 25,076 12 2,090 40,171 15 2,678. 冷却塔出口 冷却水温度設定値. 熱源出口 冷却水温度 冷却水流量. 冷却塔ファン消費電力 冷却水ポンプ消費電力. 熱源出口冷水温度. 冷凍機モデル 一次ポンプモデル 二次ポンプモデル 熱源出力制御モデル. 冷凍機消費電力 一次ポンプ消費電力 二次ポンプ消費電力. 熱源出口冷水温度設定値. 図 10 シミュレーション概要 10000. 2 一次エネルギー消費量 [GJ]. 回高効率化技術を導入するのはグループ 1~4 の 3,000m. 以上のオフィスビルとする。基準建物の基準階平面は日 1). 熱源入口 冷却水温度. ファン消費電力. (オフィスビル空調システム). 分け、基準となる建物の延床面積を設定する(表 2)。今. 本建築学会オフィス用標準問題の建物モデル. 熱源入口冷水温度 二次側冷水流量. 7月. 図 8 月積算電力消費量 (Case A-3,Case B-2). ファンモデル コイルモデル 給気風量制御モデル コイル冷水流量制御モデル. を基に作. 成した。グループ 1 の基準階平面図を図 9 に示す。計算 を簡単にするため、最下階と最上階を含め全ての階の平. 8000. ガス 冷凍機 二次ポンプ(東). 冷却水ポンプ 一次ポンプ ファン(西). 冷却塔ファン 二次ポンプ(西) ファン(東). 6000 4000 2000. 面は基準階と同じとする。空調システムは空調機、給気 0. ファン、還気ファン、冷凍機、冷凍機冷水ポンプ、冷却 塔、冷却水ポンプ、二次ポンプからなり、機器選定は建 築設備設計基準(平成 18 年度版)2)を基に行った。. 図 11 年積算電力消費量. 3.2 シミュレーション概要. でグループ 1 では Case 1 で 28%、Case 2 で 49%の削減効. シミュレーションの概要を図 10 に示す。室の熱収支モ. 果が得られた。同様にグループ 2 では Case 1 で 37%、Case. デルには HASP/ACLD/8501 の計算時間間隔を 1 分に変更. 2 で 59%、Case 3 で 41%、グループ 3 では Case 1 で 28%、. したモデルを使用した。シミュレーションの入力は、外. Case 2 で 57%、Case 3 で 31%、グループ 4 では Case 1 で. 気温湿度、室温設定値、基準温湿度における熱負荷、給. 31%、Case 2 で 57%、Case 3 で 34%の削減効果がそれぞ. 気温度設定値、冷却塔出口冷却水温度設定値、冷却塔出. れ得られた。. 入口冷却水温度差設定値であり、出力は各機器の消費電 力である。シミュレーションの計算時間間隔は 1 分とし. 4. 福岡市におけるエネルギー消費量削減効果. た。. 福岡市のオフィスビルを対象に高効率化技術が普及し. 3.3 検討ケースと計算結果. た際のエネルギー消費量削減効果について明らかにする。. 今回比較検討を行った熱源システムは、Case 1 の固定. 4.1 高効率化技術普及前の一次エネルギー消費量. 速ターボ冷凍機を導入したシステム、Case 2 のガス吸収. 福岡市全体のオフィスビルの一次エネルギー消費量を. 式冷温水機を導入したシステム、Case 3 の固定速ターボ. 以下の手順で算出する。日本不動産研究所によれば 2008. 冷凍機とガス吸収式冷温水機を同時に導入したシステム、. 年度における福岡市の博多区・中央区にある 3,000m2 以上. Case 4 の高効率化技術を全て導入したシステムの 4 ケー. のオフィスビルストック数は 352 棟である 3)。オフィスビ. スである。. ルは博多区と中央区に集中していることから、この 352. 計算結果を図 11 に示す。高効率化技術を導入すること. 棟が福岡市全体の値に相当すると仮定する。図 12 に福岡. 36-3.
(4) 表 3 高効率化技術普及前の一次エネルギー消費量. 0 1 2 3 4. 202 95 37 18. 4,017,852 1,262,209 1,360,716 880,000 735,522. 1299 1519 1868 1884 2107. 5,219 1,917 2,542 1,658 1,550. 14 12 10 8 6 4 2 0 3~4 4~5 5~6 6~7 7~8 8~9 9~10 10~11 11~12 12~13 13~14 14~15 15~16 16~17 17~18 18~19 19~20 20~25 25~30 30~40 40~50 50~. グループ グループ グループ グループ グループ. 割合[%]. エネルギー 一次エネ ストック 消費原単位 ルギー消 ストック数 2 床面積 [m ] [MJ/m2・年] 費量 [TJ]. 延床面積[千m2]. 県の 3,000m2 以上のオフィスビルを対象に、既往の研究デ. 図 12 延床面積別オフィスビルストック数の割合. ータより求めた延床面積別ストック数の割合を示す 4)。こ. 圧縮式. の割合が福岡市にも適用できると仮定し、福岡市の. グループ1. 3,000m2 以上のオフィスビルストック数(352)を乗じて. グループ2. 各延床面積ストック数を算出する。この値に各延床面積. 吸収式. 圧縮式+吸収式. その他. グループ3. の中間値を乗じてストック床面積を算出する。また、福. グループ4. 岡市統計書を基に算出した 2005 年時点での福岡市に現存 0%. するオフィスビルのストック床面積は 8,256,300m2 であ る 5)。この値と 3,000m2 以上のオフィスビルストック床面 一次エネルギー消費量[TJ]. トック床面積とする。これに既往の研究データより算出 4). 40%. 60%. 80%. 100%. 14000. 積の差を、福岡市における 3,000m2 以下のオフィスビルス した一次エネルギー消費原単位. 20%. 図 13 熱源機器の割合. を乗じて各グループの. 一次エネルギー消費量を算出する。 表 3 にグループ別のオフィスビルストック数、オフィ スビルストック床面積、用いた一次エネルギー消費原単 位、一次エネルギー消費量の計算結果を示す。. 12000 10000 8000. 6000. グループ 4 グループ 3. 4000. グループ 2. 2000. 4.2 高効率化技術の普及による削減効果. グループ 1 グループ 0. 0. 普及前. 高効率化技術普及後の一次エネルギー消費量は以下の. 普及後. 手順で算出する。まず、前節で求めた高効率化技術導入. 図 14 オフィスビル全体の一次エネルギー消費量. による一次エネルギー消費量削減量が、建物一棟での削. て明らかにした。また、福岡市のオフィスビルを対象に. 減量であると仮定する。図 13 に既往の研究データより求. 高効率化技術が普及した際のエネルギー消費量削減量を. めた、オフィスビルの熱源システムに導入されている熱. 明らかにした。以下に結果を示す。. 源機器の割合をグループ別に示す。この割合に 3.1 節で求. 1)産業用熱源システムに高効率化技術を導入した場合、. めたオフィスビルストック数(表 3)を乗じて、対象熱源. 従来型の熱源システムに比べ約 30%のエネルギー消費量. 機器が導入されているオフィスビルストック数を算出す. 削減効果が得られた。. る。求めたストック数と高効率化技術導入による一次エ. 2)高効率化技術をオフィスビルの熱源システムに導入し. ネルギー消費量削減量(図 11)を乗じて高効率化技術の. た際、固定速ターボ冷凍機を導入したシステムでは 28~. 普及による福岡市のオフィスビル全体の一次エネルギー. 37%、ガス吸収式冷温水機を導入したシステムでは 49~. 消費量削減量を算出する。この値を普及前の一次エネル. 59%、固定速ターボ冷凍機とガス吸収式冷温水機を共に. ギー消費量より引いた値が高効率化技術普及後の一次エ. 導入したシステムでは 31~41%のエネルギー消費量削減. ネルギー消費量となる。. 効果が得られた。. 計算結果を図 14 に示す。高効率化技術普及前の一次エ. 3)福岡市の 3,000m2 以上のオフィスビルに高効率化技術. ネルギー消費量は 12,886TJ である。高効率化技術が普及. が普及した際、エネルギー消費量は福岡市全体で 303TJ. することで一次エネルギー消費量は 12,583TJ となり、福. (2.3%)削減することが可能である。. 岡市全体で 303TJ(2.3%)の一次エネルギー消費量が削. [参考文献] 1) 滝沢博:標準問題の提案(オフィス用標準問題) ,日本建築学会環境工. 減されるという結果が得られた。昨今の CO2 排出量削減. 学委員会,熱分科会第 15 回シンポジウム,pp305-308,2009 年 3 月. 目標を考えれば今回の高効率化技術の普及だけでは不十. 2) 国土交通省大臣官房官庁営繕部設備・環境課監修:建築設備設計基準. 2. 分であり、3,000m 以下の小規模なオフィスを対象とした. (平成 18 年度版) ,2006 年. 省エネルギー化や、空調だけでなく照明、給湯などの建. 3) 日本不動産研究所:2009 年全国オフィスビル調査,2009 年 4) 田中絵梨香,他:非住宅建築物の環境関連データベース構築に関する. 築設備全般の総合的な省エネルギー化が不可欠である。. 研究. その 18 九州における調査建物概要,日本建築学会大会学術講演梗. 概集,2008 年. 5. むすび. 5) 藤原正泰,他:都市環境負荷の長期予測シミュレータ開発と民生業務 部門 CO2 排出量予測. 本研究では産業用熱源システムとオフィスビルの熱源. その 4 事務所・卸小売業・飲食業・宿泊業・医療. 業セクタのモデル化,日本建築学会九州支部研究報告,2010 年. システムを対象に 4 つの高効率化技術の導入効果につい. 36-4.
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図
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