︽ 解 題 に 代 え て ︾ ☆ 新 出 資 料 翻 刻 三 篇 中 、 ︵ 一 ︶ ・ ︵ 二 ︶ は 、 江 戸 期 の 正 法 眼 藏 参 究 者 の 一 人 、 萬 仭 道 坦 ︵ 一 六 九 八 ∼ 一 七 七 五 ︶ 撰 述 の ﹃ 正 法 眼 藏 ﹄ の 註 解 資 料 の 紹 介 で あ り 、 ︵ 三 ︶ は 、 小 坂 機 融 教 授 と の 共 編 翻 刻 に よ る も の で 、 落 せ る 一 巻 の 補 足 資 料 で あ る 。 ☆ 前 二 篇 中 、 ︵ 一 ︶ ﹃ 出 家 功 一 夜 談 ﹄ ︵ 一 巻 ︶ は 、 明 和 三 年 ︵ 一 七 六 六 ︶ 、 萬 仭 六 十 九 歳 の 撰 述 で 、 肅 琴 ︵ 伝 未 詳 ︶ の 書 写 、 新 潟 県 ・ 林 泉 寺 所 藏 本 。 ︵ 二 ︶ ﹃ 正 法 眼 藏 空 花 聲 聞 作 舞 辯 ﹄ ︵ 一 巻 ︶ は 、 明 和 七 年 ︵ 一 七 七 〇 ︶ 、 七 十 三 歳 の 時 の 撰 述 で 、 ﹃ 正 法 眼 藏 傍 訓 ﹄ の 傍 註 筆 字 、 そ の 他 萬 仭 の 筆 跡 に 照 ら し 鑑 て 、 或 は 自 筆 本 か と も 思 わ れ る 。 萬 仭 の 正 法 眼 藏 註 解 撰 述 史 の 上 か ら は 、 上 記 二 篇 は 、 明 和 三 年 ︵ 一 七 六 六 ︶ よ り 明 和 九 年 ︵ 一 七 七 二 ︶ に 至 る 一 連 の 註 解 作 業 、 即 ち 、 明 和 三 年 撰 = ﹃ 正 法 眼 藏 辨 々 註 ﹄ 、 明 和 六 年 撰 = ﹃ 宏 智 坐 禅 箴 管 註 ﹄ ・ ﹃ 正 法 眼 藏 面 授 辨 ﹄ ・ ﹃ 正 法 眼 藏 仏 祖 辨 ﹄ ・ ﹃ 三 教 一 致 辨 ﹄ ・ ﹃ 永 平 破 五 位 辨 ﹄ ・ ﹃ 正 法 眼 藏 大 修 行 辨 ﹄ ・ ﹃ 無 情 説 法 話 ﹄ 、 明 和 八 年 撰 = ﹃ 正 法 眼 藏 渉 典 補 録 ﹄ 、 明 和 九 年 撰 = ﹃ 正 法 眼 藏 諫 蠧 録 ﹄ ・ ﹃ 生 死 辨 ﹄ 等 の 中 に 位 置 づ け ら れ る も の で あ る 。 殊 に 、 七 十 五 巻 本 外 の ﹃ 出 家 功 ﹄ 巻 、 ﹃ 生 死 ﹄ 巻 等 へ の 註 辨 、 各 巻 々 に 於 け る 問 題 点 の 註 辨 、 即 ち 五 位 説 ・ 三 教 一 致 説 ・ 祖 師 ︵ 臨 済 ・ 徳 山 ・ 雲 門 等 ︶ 破 斥 辯 他 ︱ ︱ 等 は 、 萬 仭 の 眼 藏 註 釈 の 中 で も 、 留 意 さ れ な け れ ば な ら な い 点 で あ る 。 右 二 篇 の 資 料 も 、 眼 藏 一 巻 の 全 文 註 釈 で は な く 、 ︵ 一 ︶ 一 退 任 記 念 寄 稿
新
出
資
料
翻
刻
紹
介
︵
一
︶
﹃
出
家
功
一
夜
談
﹄
︵
二
︶
﹃
正
法
眼
藏
空
花
聲
聞
作
舞
辯
﹄
河
村
孝
道
︵
三
︶
﹃
正
法
眼
藏
辨
注
﹄
の
翻
刻
︵
十
一
︶
河
村
孝
道
小
坂
機
融
駒 澤 大 學 佛 學 部 論 集 第 三 十 四 成 十 五 年 十 月 天 桂 傳 尊 直 筆 艸 稿 三 休 老 人新 出 資 料 翻 刻 紹 介 ︵ 河 村 ・ 小 坂 ︶ 二 は 、 出 家 の 広 大 な る 功 徳 を 、 諸 種 の 経 論 の 引 用 文 証 に よ り 高 揚 す る こ と に 主 眼 が あ り 、 ︵ 二 ︶ は 、 ﹃ 空 花 ﹄ 巻 本 文 中 の 、 瑯 慧 覚 の 眼 花 の 古 則 に つ き ﹁ 若 明 得 、 過 在 十 方 佛 、 若 未 明 得 、 聲 聞 作 舞 、 獨 覚 臨 ﹂ の 二 句 に つ い て 、 明 得 ・ 未 明 得 共 に 眼 中 花 = 般 若 と し 、 聲 聞 ・ 獨 覚 と 十 方 佛 の 無 勝 劣 一 等 の 道 理 を 辯 注 す る こ と に 題 意 が あ る 。 萬 仭 に は 、 斯 様 な 注 辨 は 多 く あ っ た と 思 わ れ 、 今 後 に も 、 諸 方 よ り 、 数 多 く の 解 注 が 発 見 紹 介 さ れ る で あ ろ う 。 真 摯 な る 眼 藏 参 究 者 の 先 達 と し て 、 そ の 参 究 の 視 点 と 姿 勢 と に は 、 啓 発 せ ら れ 、 裨 益 さ れ る 所 、 多 い も の が あ る 。 ☆ ︵ 三 ︶ の 天 桂 伝 尊 の ﹃ 眼 藏 辨 註 ﹄ は 、 従 来 十 回 に 亘 り 発 表 し て き て い る 翻 刻 で 、 今 回 見 落 と し が あ っ た ﹃ 看 経 ﹄ 一 巻 に 関 す る も の で あ り 、 こ れ を 以 っ て 一 連 の 翻 刻 が 終 了 す る た め に 、 併 わ せ て こ こ に 発 表 さ せ て 頂 く も の で あ る 。 ︱ ︱ 在 職 最 後 の 発 表 、 掲 載 を 許 可 さ れ た 仏 教 学 部 各 位 に 対 し 、 甚 深 の 謝 意 を 表 し た い 。 顧 れ ば 、 在 職 最 終 年 の 講 義 に 当 っ て 、 大 学 院 及 び 学 部 で の 宗 典 講 義 ・ 演 習 の 一 回 々 々 を 最 終 講 義 と し 、 改 め て の 講 義 は 行 わ な い こ と を 、 予 め 学 生 諸 兄 並 び に 一 般 聴 講 生 諸 氏 に 宣 し て 、 授 業 に 臨 ん で 来 た 。 学 部 行 事 を 乱 す も の と の 抗 議 文 も 頂 い た が 、 幸 い 、 田 中 良 昭 教 授 が 最 終 講 義 の 行 事 に 臨 ま れ た 事 で 、 私 自 身 は 、 命 終 へ の 処 身 を も 含 め て 、 自 ら の 去 就 は 自 ら で と の 予 て か ら の 思 い の 一 端 を 、 我 侭 勝 手 と 覚 え つ ヽ も 、 果 た さ せ て 頂 い た こ と を 、 学 部 執 行 部 へ の 御 迷 惑 を 陳 謝 す る と 共 に 、 御 容 認 頂 い た こ と に 対 し 、 感 謝 の 意 を 表 す る 。 新 出 資 料 二 篇 の 紹 介 は 、 最 終 講 義 の 卑 言 に 代 う る も の と し て 、 自 ら の 専 門 研 究 分 野 で の 探 索 資 料 に よ っ て 、 そ の 責 め を 補 う 意 に 出 づ る も の で も あ る 。 以 っ て 諒 と さ れ た い 。 本 学 部 の 益 々 の 研 究 の 隆 盛 と 、 諸 先 生 方 の 御 文 安 を 、 衷 心 よ り 祈 念 申 上 げ る 。 ︱ ︱ 二 〇 〇 三 ・ 七 ・ 一 日 ︱ ︱ ※ 本 資 料 の 撮 影 、 掲 載 の 御 許 可 を 頂 い た 林 泉 寺 ・ 光 厳 寺 各 現 董 老 師 に 拝 謝 申 上 げ る 。 ま た 本 資 料 は 、 原 文 の 歴 史 性 を 重 ん じ 、 あ く ま で 学 術 研 究 資 料 と し て 翻 刻 に 当 る も の で あ る こ と を 附 記 し て お く 。 ︵ 編 者 ︶
新 出 資 料 翻 刻 紹 介 ︵ 河 村 ・ 小 坂 ︶ 三
︵
一
︶
﹃
出
家
功
一
夜
談
﹄
法 花 經 に 、 佛 乃 御 詞 を 案 ず る に 、 我 れ 少 カ ク シ テ し て 、 初 て 出 家 し て 成 佛 せ り と 、 思 ふ ら ん 。 我 れ 実 に 成 佛 し て 久 遠 な る 事 、 無 量 無 辺 な り と 。 し か れ バ 、 釈 尊 の ミ 、 幾 世 幾 度 も 出 家 ま し ま す 。 の ミ な ら ず 、 三 世 ノ 諸 佛 、 歴 代 の 祖 師 、 一 人 も 生 々 世 々 の 出 家 に あ ら ず と 云 こ と な し 。 本 生 經 の 優 鉢 羅 比 丘 尼 は 、 前 生 ハ 遊 女 な り し が 、 出 家 の 袈 裟 ヲ か け て 哥 ・ 舞 し た る 因 縁 に よ り て 、 迦 葉 佛 の 出 世 に あ ひ 、 出 家 と な り し か れ ど も 、 前 世 の 怨 縁 に や 、 破 戒 し て 地 獄 に 落 ツ 。 苦 を 受 ク る こ と 二 百 歳 に 及 ブ と い え ど も 、 前 生 の 出 家 の 因 縁 朽 チ ざ れ バ 、 釈 尊 の 出 世 に 逢 ひ 奉 り 、 六 神 通 の 羅 漢 と な る な り 。 常 に 在 家 の 女 人 に 出 家 を す ゝ め し に 、 女 人 、 皆 い わ く 、 我 等 、 出 家 し た り と も 、 戒 を た も ち 難 し 、 と 。 比 丘 尼 い わ く 、 破 戒 し て 、 地 獄 に い ら ば 入 る べ し 。 其 後 ハ 、 決 シ て 成 佛 疑 ひ な し 、 と 教 へ け り 。 又 、 大 論 を 案 ず る に 、 佛 在 世 の 昔 日 、 婆 羅 門 有 り 。 酒 に 醉 ヒ て 、 佛 所 に 至 り て 出 家 を も と む 。 佛 、 則 ち 剃 髪 し て 、 袈 裟 を 拾 ふ 。 婆 羅 門 、 醉 ヒ さ め て 、 我 身 を 見 て 驚 き 入 り 、 袈 裟 を 捨 て 出 デ さ り ぬ 。 諸 の 比 丘 、 如 來 に 問 ひ 奉 る に 、 佛 、 の 玉マ ヽ ふ に ハ 、 此 婆 羅 門 、 無 量 劫 ノ 間 、 か り に も 出 家 の 心 な し 。 醉 犯 に よ り て 、 始 て 今 、 出 家 の 心 い で き 。 た と ひ 還 俗 す る と も 、 一 度 ビ 出 家 し た る 因 縁 に よ り て 、 來 生 に ハ 、 出 家 成 佛 せ ん 事 、 必 定 な り 、 と 云 云 。 し か あ れ バ 、 此 遊 女 と 婆 羅 門 の 昔 し は 、 信 心 に て 出 家 せ し に も あ ら ね ど も 、 出 家 功 の 廣 大 な る を 以 て 、 終 に ハ 、 出 家 を と げ 、 成 佛 せ し 、 と あ れ ば 、 今 日 の 我 等 ご と き 、 お ぼ ろ げ に も 信 心 を と り て 出 家 せ り シ ナ バ 、 成 佛 、 う た が ふ べ か ら ず 、 頼 母 敷 に あ ら ず や 。 法 花 經 を 見 奉 る に 、 日 月 燈 明 佛 、 在 家 に ま し ま す 、 王 子 八 人 あ り 。 又 、 大 通 智 勝 佛 も 、 王 子 十 六 人 有 り 。 ミ な 父 王 の 出 家 成 佛 あ る を 見 奉 り 、 と も に 王 位 を 捨 テ て 出 家 し 玉 ふ 。 妙 荘 厳 の 二 王 子 も 、 父 ・ 夫 人 ヲ も 、 す ゝ め て 出 家 有 り 。 浄 飯 大 王 の 悉 達 太 子 の 昔 し 、 夜 半 に 、 王 城 を し の び 出 で 、 檀 特 山 に 入 て 、 下 男 車 匿の く が 剃カ ミ 刀ソ リ を か り て 、 右 の 御 手 に も ち 、 左 の 御 手 に 髻もと ど り を 引 キ の べ 、 太 子 ミ ず か ら 切 リ て 宮︵マ ヽ ︶ ︵ 空 カ ︶ 中 に な げ 玉 ひ ば 、 忝 ク も 、 天 帝 釈 ハ 、 太 子 の 髻 を 地 に 落ヲ ト さ じ と て 、 天 の 妙 衣 を 以 て つ ゝ み て 、 天 上 に 帰 り 、 天 の 勝 れ た る 供 物 を 以 て 供 養 せ り と か や 。 浄 居 天 人 、 太 子 の 髪 を そ り 奉 り 、 洗 浴 し ま ひ ら せ り 。 三 世 諸 佛 の 出 家 剃 髪 も 、 亦 々 か く の ご と く と な り 。 一 仏 と し て も 、 在 家 の 侭 に て 、 成 佛 あ る 事 な し 。 皆 、 発 心 ・ 執︵マ ヽ ︶ ︵ 修 カ ︶ 行 ・ 出 家 ・ 受 戒 の 功 徳 な り と 、 經 文 に 説 キ 玉 へ り 。 三 休 老 人新 出 資 料 翻 刻 紹 介 ︵ 河 村 ・ 小 坂 ︶ 四 今 の 世 は 、 病 者 が 、 不 具 カ タ ワ か 、 能 く 世 に 餘 れ る 、 渡 世 の な ら ぬ も の こ そ 出 家 す れ 、 と 人 毎ゴ ト に 思 ふ ハ 、 愚 の 至 り 、 甚 ダ 敷 キ も の な り 。 士 ・ 農 ・ 工 ・ 商 の 、 た と ひ 冨 貴 な り と も 、 天 人 と 王 位 と に く ら ぶ れ バ 、 下 劣 の 、 至 て 下 劣 成 ル に あ ら ず や 。 し か れ ど も 、 中 に は 聡 明 も あ る べ し 、 叡 智 も 有 ル べ し 。 徒イタ ズ ラ に 今 生 の 渡 世 に 迷 ひ 、 人 間 暫 の 壽 命 は 、 風 前 の 燈 よ り あ や う く 、 草 露 の も ろ き よ り も 、 も ろ し 。 朝 の 食 事 に あ て ら れ 、 夕 に ハ 鳥 辺 野 の 煙 リ と な ら ん も 、 知 る べ か ら ず 。 死 後 に は 、 畜 生 道 ニ 生 ぜ ん や 、 餓 鬼 道 に 徃 カ ん や も し ら ず 。 千 一 地 獄 の ホ ナ ワ に 入 ら ん も 、 ま た 知 る べ か ら ず 。 か ゝ る あ だ 成 ル 身 を し ら ず 、 一 生 、 む な し く 、 老 ・ 病 ・ 死 の 到 來 を 待 ツ て 、 毎 日 、 東 西 の 用 事 に 走 り 、 南 北 の 世 話 に 取 紛 レ 、 空 敷 ク 一 生 を 過 る は 、 甚 ダ 以 テ 愚 カ 成 ル に あ ら ず や 、 亦 タ 以 テ 暗 キ に あ ら ず や 。 宝 莊 厳 王 の 太 子 ハ 、 七 歳 の に 、 父 母 に 向 ヒ て 出 家 を も と む 。 一 人 の 王 子 な れ ば 、 父 母 の 許 容 あ る べ き に あ ら ず 。 夜 半 に 王 城 を 忍 び 出 て 、 深 山 の 石 窟 に 入 リ て 、 出 家 、 坐 禅 し て 、 終 に は 、 道 果 を 得 た り 。 是 を 、 僧 伽 難 提 尊 者 と は 、 申 シ 奉 る ナ リ 。 出 家 功 經 を 案 ず る に 、 國 王 の 太 子 、 七 日 の 内 に 死 せ ん こ と 、 如 来 、 是 を し り 玉 へ り 。 阿 難 を 使 と し て 、 其 侭 を 告ツ ゲ さ せ 玉 へ て 、 出 家 、 受 衣 を す ゝ め ま し ま す 。 王 子 、 そ れ よ り 六 日 の 間 、 夫 婦 の 愛 欲 、 心 ノ 侭 に た の し み 、 七 日 め に 佛 所 に 到 り て 、 発 心 、 出 家 せ ら れ け れ ば 、 命 、 お は り て 生 天 せ し 、 と な り 。 か く て 、 愚ヲロ カ か 成 ル 王 子 な れ ど も 、 一 日 の 出 家 功 の 廣 大 成 ル 故 に 、 終 に ハ 、 天 上 に 生 を 得 た り 。 此 故 に 、 六 縁 經 に ハ 、 一 日 一 夜 も 出 家 執マ ヽ 行 す れ ば 、 其 功 を 以 て 、 二 千 劫 、 三 悪 道 の 苦 を 、 は な る ゝ と 有 り 。 僧 儀 律 を 見 れ バ 、 一 日 一 夜 、 出 家 執マ ヽ 行 の 功 を 以 て 、 六 百 万 歳 迄 、 三 悪 道 を ま ぬ が る ゝ 、 と あ り 。 日 本 も 、 上 代 よ り の 掟 法 と し て 、 上 下 ノ 人 民 、 死 後 に は 剃 髪 し て 僧 の 形 と 成 ル 、 其 謂イハ レ れ 有 り と 知 る べ し 。 起 世 經 を そ ら ん ず る に 、 摩 王 、 悪 業 不 善 の 報 に よ り て 、 昼 夜 に 六 度 、 自 然 に 熱 湯 有 り 、 王 の 前 に 現 じ 、 殿 閣 み な 、 熱 湯 と な る 。 閻 王 、 怖 畏 の 念 生 じ 、 さ け 、 さ ら ん と す れ ど も 、 獄 鬼 有 リ て 是 を と ら へ 、 餌 を 以 て 、 王 の 口 を 張 り 、 熱 湯 を そ ゝ ぐ 、 其 苦 、 心 も 詞 も 、 及 ブ こ と な し 、 身 も た ま し イ も 、 偏 に き え う す る が ご と く 、 是 に よ り て 、 閻 王 も 、 出 家 剃 髪 し て 、 安 樂 の 身 と な ら ん こ と を 願 ハ る ゝ と 、 經 文 に 見 エ た り 。 高 僧 傳 を 閲ケ ミ す る に 、 西 京 大 莊 厳 寺 の 釈 の 惠 圓 法 師 ハ 、 閻 摩 王 の 請 待 を 受 け 、 彼 ノ 国 に 行 キ 、 大 品 般 若 經 を 講 釈 せ し 、 と な り 。 元 享 釋 書 を 見 れ バ 、 日 本 の 満 成 上 人 ハ 、 閻 王 の 請 待 を 得 て 、 彼 の 國 に ゆ い て 閻 摩 王 に 戒 を 授 け ら る ゝ と 。 又 、 日 藏 上 人 、 法 花 經 と 本 尊 と を 、 棺 中 に 入 れ て 遷 化 せ ら れ け れ バ 、 摩 王 、 礼 拜 恭 敬 な し 玉 へ り と 、 土 州 勧 信 記 に 見 へ た り 。
新 出 資 料 翻 刻 紹 介 ︵ 河 村 ・ 小 坂 ︶ 五 如 是 、 出 家 功 の 廣 大 成 ル ゆ いマヽ に 、 た と ひ 一 旦 の 錯 り に て 、 佛 戒 を 破 り 、 國 法 に 違 背 す る と も 、 出 家 の 一 命 を 殺 せ ば 、 阿 鼻 地 獄 に 落 ツ る と こ そ 、 十 輪 經 に の べ 玉 い り 。 又 、 國 王 、 も し 破 戒 せ し 出 家 の 一 命 を と ら ば 、 天 神 地 祇 、 其 国 を 擁 護 せ ず 。 此 故 に 、 な ら ず 風 雨 水 旱干 の 天 災サ イ 有 り て 、 五 穀 、 ミ の ら ず 、 人 民 飢 渇 す べ し と 、 薩 尼 經 に 佛 説 分 明 な り 。 四 分 律 の 内 に ハ 、 頭 盧 尊 者 ハ 、 本 と 、 優 填テ ン 王 の 臣 下 な り 。 出 家 し て 果 上 の 羅 漢 な れ バ 、 優 填 王 、 常 に 來 り て 、 礼 拝 せ し と な り 。 有 ル 、 侫 臣 、 王 に 申 シ け る ハ 、 臣 下 と し て 出 家 な り と も 、 王 の 礼 拝 を 受 る 事 、 無 礼 の 至 ツ て 甚 敷 キ と 諌 む れ バ 、 は か な く も 、 帝 王 も 侫 臣 に ま ど わ さ れ て 、 尊 者 を 殺 さ ん と ば か り 、 尊 者 の 所 に 到 る 。 尊 者 、 則 ち 是 を 知 り 玉 へ て 、 門 に 出 デ 、 親 シ く 王 を 迎 へ 、 慇ネ ン 懃ゴ ロ に 礼 儀 を も ふ け れ ば 、 帝 王 、 あ や し ミ て 其 故 を 問 ヒ け れ バ 、 尊 者 曰 ク 、 今 日 、 王 の 、 悪 心 を 以 て 我 を 殺 さ ん と は か り 來 し ゆ へ な り と 云 云 。 に 帝 王 、 其 語 を 聞 き て 、 大 イ に 後 悔 し て 懺 謝 せ ら れ け る に 、 尊 者 い わ く 、 懺 悔 の 功 に よ り て 、 地 獄 の 難 は 免 ガ れ た り 。 し か れ ど も 、 悪 心 、 三 宝 に カ ク る 故 に 、 七 日 の 後 に 、 王 位 を 失 フ べ し と 。 は た し て 、 隣 國 、 蜂 起 し て 、 王 の 國 を う ば え り 、 と な り 。 正 理 論 を 閲 す る に 、 た と ひ 國 王 た り と も 、 出 家 の 、 礼 拝 を も と め ざ れ 、 必 ず 壽 命 を 損 せ ん 、 と 有 り 。 百 縁 經 に い わ く 、 長 者 の 妻 、 九 子 を 生 メ り 。 し か れ ど も 、 最 初 の 一 子 、 猶 胎 内 に 有 り 。 其 母 、 老 死 に 遺 言 せ し に よ り て 、 死 後 に 、 母 の 腹 を 切 り て 見 れ バ 、 男 子 有 り 。 胎 内 に て 白 髪 と な れ り 。 我 れ 前 生 に お ゐ て 、 好コノ ミ て 出 家 を そ し り し 悪 業 に よ り て 、 六 拾 年 余 、 胎 内 に 有 り て 、 大 苦 悩 を 受 ク る 事 、 無 量 な り と い え り 。 不 学 の 在 家 ハ 、 出 家 功 の 廣 大 成 ル を も 見 モ ン せ ざ る 故 に や 。 は か ら ず シ テ 如 是 の 悪 報 を 受 け た る な り 。 出 家 の 功 を し ら ぬ ハ 、 畜 生 に も 及 ば ず 、 と し る べ し 。 僧 護 經 を 案 ず る に 、 大 海 の 龍 王 、 変 じ て 人 と な り 、 佛 所 に 至 り て 、 出 家 を も と む 。 佛 、 す な わ ち 剃 髪 し て 出 家 と な し 玉 ふ 。 大 衆 と 同 じ く 坐 禅 せ り 。 龍 王 の 性 と し て 、 睡 眠 多 キ も の な り 。 坐 禅 に 草 臥 れ し 、 為 に 熟 睡 し て 、 思 わ ず 本 身 あ ら わ れ 、 其 形カタ チ 、 お そ ろ し く 、 廣 大 成 ル 有 様 な れ ば 、 一 堂 の 大 衆 、 寒 心 ゾ ッ ト し て 驚 キ 入 リ 、 佛 に 告 ゲ 奉 り け れ ば 、 佛 、 す な わ ち 龍 僧 を 大 海 に 帰 ら し め り 。 此 龍 王 、 た ま 如 來 の 出 世 に 逢 ひ 、 出 家 し て 人 界 に 有 り て 佛 道 執マ ヽ 行 を 願 ふ と も 不 叶 、 本 の 海 中 に 帰 り け れ 。 あ わ れ む べ し 。 我 等 、 幸 へ に 人 界 に 生 れ て 、 佛 法 の 荒ア ラ 増 シ を 知 り て 、 出 家 学 道 の 身 と な る 。 一 日 の 光 陰 を お し ミ 、 世 縁 に 繋 縛 ケ バ ク せ ず つ と め 、 執マ ヽ 行 せ ざ ら ん や 。 大 集 經 を 見 る に 、 如 來 在 世 の 昔 し 、 一 切 の 出 家 を 以 て 、 天 龍 、 諸 神 、 国 王 に 遺 屬ゾ ク し 玉 ふ て 、 末 世 の 護 法 を た の ミ ま し ま す 。 依リ レ 之ニ 、 今 に 至 ツ て 一 切 の 出 家 、 我 等 ご と き 数カ ズ な ら ぬ 身 も 、 竜 天 ・ 諸 神 の 擁 護 に 預 る 。 頼 母 敷 キ に あ ら ず や 。
新 出 資 料 翻 刻 紹 介 ︵ 河 村 ・ 小 坂 ︶ 六 南 山 感 通 傳 を 見 れ ば 、 氏 と 云 ふ 天 人 來 リ て 、 道 宣 法 師 に 隨 身 を 願 ふ に い わ く 、 弟 子 ハ 、 迦 葉 佛 の よ り 、 韋 将 軍 の 軍 下 に 有 り 。 韋 将 軍 ハ 、 梵 行 有 レ 之 、 天 の 欲 楽 を 受 ケ ず 。 一 王 の 下 に 八 将 神 有 り 。 四 王 に は 、 三 拾 二 神 有 り 。 常 に 四 天 下 を 廻 り 、 一 切 ノ 出 家 を 守 護 す る も の な り 。 如 來 在 世 の 昔ツ ノ 日カ ミ 、 附 属 を 受 ク る を 以 て な り と 。 又 、 谷 響 集 を よ め ば 、 三 宝 荒 神 、 ゑ ん の 行 者 に 告 て い わ く 、 悪 人 を 罸バ ッ す る に は 、 麁ソ 乱 荒 神 と い わ れ 、 佛 法 僧 の 三 宝 を 守 護 す る に は 、 三 宝 荒 神 と 言 ふ て 、 九 万 八 千 の 眷 属 有 り て 、 出 家 を 擁 護 す と 云 云 。 然 れ バ す な わ ち 、 天 龍 、 諸 神 の 、 末 世 の 出 家 を 守 護 し 玉 ふ 其 謂 れ あ る 事 を 、 し る べ し 。 し か る に 、 不 学 し て 、 国 法 の 權 柄 を 以 て 出 家 を 害ガ イ し 、 出 家 を 軽 蔑ベ ツ す る 人 ハ 、 天 竜 、 諸 人 の ね た ミ を 受 ケ ん 事 、 必 定 な り 。 三 輪 明 神 の 託 宣 に は 、 明 惠 坊 、 解 脱 坊 ハ 、 我 が 次 節 大 帝 な り と 有 り 。 智 惠 あ ら ん 人 ハ 、 今 も 、 士 ・ 農 ・ 工 ・ 商 の 急 死 ・ 急 病 、 不 慮 の 災サ イ 難 あ ら ん に 、 心 を よ せ て た め し 見 る べ し 。 福 田 經 に い わ く 出 家 の 人 は 、 凡 俗 を 離 れ 、 佛 道 を 執マ ヽ 行 し て 、 衆 生 を す く ふ 救グ 世 の 福 田 な り 。 又 、 出 家 の 人 ハ 、 在 家 の 難 捨 愛 欲 を 切 り て 、 佛 道 を 以 て 父 母 の 恩 を 報 ず 、 世 上 の 大 福 な り 。 又 、 出 家 の 人 は 、 常 に 衆 生 に 善 根 を す ゝ め 、 大 乗 の 法 を 学 び 、 佛 法 を 世 に 久 住 せ し む る 、 世 上 の 大 福 田 な り 、 と 云 う 。 此 故 に 、 世 俗阿 の こ含 と わ經 ざ に い わ く 、 一 子 出 家 す れ ば 、 九 俗マ ヽ ︵ 族 カ ︶ 、 天 に 生 ず 、 と 。 し か あ れ ど も 、 豈 に 九 俗 の ミ な ら ん や 。 一 僧 の 功 は 廣 大 な る 事 、 筆 墨 の 書 尽 す べ き に あ ら ず と い え ど も 、 通 俗 の た め に 万 が 一 を 、 と く べ し 。 昔 し 、 雅 俗マ ヽ 王 と 云 人 有 り 。 外 道 の お し え を 受 ケ て 、 千 人 の 王 の 頸 を と り て 天 を 祭 れ ば 、 大 福 を 得 る 、 と 心 得 て 、 す で に 九 百 九 捨 九 王 を と ら え た り 。 お わ り に 、 普 明 王 と 云 を と ら え た り 。 す で に 、 皆 ナ 殺 サ ん と せ し に 、 普 明 王 の 願 イ に よ り て 、 一 人 の 僧 を 請 待 し 、 最 後 に 説 法 を 聞 カ れ け り 。 雅 足マ ヽ 王 も 、 一 僧 の 説 法 を 聞 く ま ゝ に 悪 心 を 知 る ぬ べ し 。 終 に は 、 千 王 の 命 を た す け 、 其 国 々 に か へ ら し め り 。 み づ か ら も 、 国 を 弟 に ゆ ず り 、 出 家 し て 佛 道 に 入 れ り 。 是 レ 偏 へ に 一 僧 の 功 に あ ら ず や 。 善 見 律 論 を 案 ず る に 、 釋 迦 牟 尼 佛 、 有 ル 時 、 池 の 辺 り に て 説 法 ま し ま す 。 水 中 に 蛤 有 り 。 説 法 を カ ん と おヽ りヽ ひヽ 出 て 、 草 の 中 に あ り き 。 は か ら ず 、 参 詣 人 の 杖 に 當 り て 死 せ り 。 し か れ ど も 、 一 言 の 聴テ ウ 法 の 功 りヽ きヽ ︵ 力 ︶ に よ り て 、 天 に 生 じ 得 タ り 。 間 も な く 、 説 法 の 庭 に 降ク ダ り 、 終 に 羅 漢 果 を 得 し き 。 一 偈 を 作 り 、 佛 に 奉 り き 。 佛 、 す な は ち 此 偈 を 説 キ て 説 法 し 玉 へ バ 、 其 ノ 座 の 八 万 四 千 の 人 衆 生 、 不 残 得 道 せ り 。 此 八 万 四 千 の 得 道 ハ 、 一 僧 の 功 な ら ん や 、 し る べ し 。 又 、 天 竺 に 大 な る 池 有 り 。 十 千 余 の 魚 有 り 。 其 年 、 干 魃 に て 水 渇 し 、 魚 、 皆 死 せ ん と 見 へ た り 。 長 者 有 り 、 国 王 に 願 ひ 、