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環境感染誌 Vol. 31 no. 3, 2016 総説 Ventilator-Associated Events (VAE) の疫学, 要因及び予防策 渡邉都貴子 Epidemiology, Risk Factors and Strategies to Prevent for Ventilator

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岡山大学病院感染制御部 〈総 説〉

Ventilator-Associated Events (VAE)の疫学,要因及び予防策

渡邉都貴子

Epidemiology, Risk Factors and Strategies to Prevent for Ventilator-Associated Events Tokiko WATANABE

Department of Infection Control and Prevention, Okayama University Hospital (2016 年 2 月 16 日 受付・2016 年 3 月 15 日 受理)

要 旨

2013 年,The Centers for Disease Control and Prevention (CDC)は,成人の入院施設に於いて, これまでの ventilator-associated pneumonia (VAP)サーベイランスを,ventilator-associated events (VAE)サーベイランスに変更するとし,VAE の定義を発表した.定義が発表されてからも,サー ベイランスの方法や定義について多くの変更がなされた.一方,VAE の疫学,VAE と VAP サー ベイランスの関連,VAE のリスクファクター,予防策について多くの研究が発表された.この論 文では,VAE サーベイランスの定義の最新版と,最近発表された VAE に関する研究をレビュー し要旨を述べる.

Key words人工呼吸器関連イベント,疫学,サーベイランス,リスクファクター,予防戦略

VAP から VAE へ

2013 年米国の The Centers for Disease Control and Prevention(以後 CDC)の National Healthcare Safety Network(以後 NHSH)は,ventilator-associated events (以後 VAE人工呼吸器関連イベント)サーベイランス の定義を発表した.VAE サーベイランスは,それまで の ventilator-associated pneumonia(以後 VAP人工呼 吸器関連肺炎)サーベイランスと比較して,その手法に おいて著しく相違があるため,手法を習得するために努 力を要する.しかしながら,一度習得すると,迷うこと が少なく客観的に判定ができる.一方で VAP サーベイ ランスに比較すると,個人の判断が入り込む余地がな く,サーベイランスに熟練した人には物足りなさを感じ たり判定結果に納得がいかなかったりする.それでも NHSN が VAE サーベイランスを提唱した背景には以下 のような理由がある.それまでの VAP サーベイランス における問題点として,胸部 XP の読影に個人差があ る,肺炎に特化されている,公表や施設間比較及び医療 費の支払いに使用するには不適切ではないか,臨床的徴 候や症状が主観的で記録が乏しく一貫性に欠ける可能性 がある,小児や免疫不全がある患者など特定の患者層の 特別な定義があり複雑であるなどがあげられる.VAE サーベイランスは,その点が修正され,客観的,流線的 (合理的),また電子媒体での情報収集ができる可能性が あり,人工呼吸器を装着した成人の広範囲におよぶ状態 や合併症を見つけることができるように構築されてい る1) VAE サーベイランス定義の変遷 図に 2015 年度と 2016 年度の VAE サーベイラン スのアルゴリズム(algorithm)を示した.2013 年に初め て VAE サーベイランスが紹介されてから 2016 年 1 月 までに詳細な基準や定義そのものに変更が加えられたが, 2016 年版の定義には,大きな変更は見受けられず,定 義として安定してきたことが推測される. これまでの重要な変更項目を挙げておく. 〈2013 年 7 月〉 1) PEEPの 05 cmH2Oは同等とみなすこととした. 人工呼吸器離脱の際に,PEEP を 0 cmH2O にした場 合 VAE がカウントされることがある,頭蓋内圧が高い 場合や低血圧の患者には PEEP をかけないが,正常に 戻った時に PEEP をかけると VAE がカウントされるこ

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図 NHSN Ventilator-Associated Events (VAE) Surveillance Algorithm 文献 1)より引用 とがあるなどの問題点を修正した. 〈2014 年〉 2) 「成人が入院する部署」というロケーション(部 署)を基準としたサーベイランスとした(2013 年は,18 歳以上を対象患者とする年齢を基準としたサーベイラン スであった). 3) 1 日の最低 PEEP と FiO2は,少なくとも 1 時間 継続していなければならないとした. 〈2015 年〉

4) possible と probable VAP に分かれている定義を まとめて possible VAP (PVAP)とした.

VAEの定義を簡便にし,また,分析する際は両方を 合わせて分析するため,定義もそれに合わせた.

この変更で,それまでは膿性喀痰の定義の一致のみで possible VAP が判定されていたが,微生物の陽性結果 がなければ判定できないこととなった.

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5) 特定の市中感染型真菌を判定基準から除外した. 6) 最低の PEEP/FiO2を 1 時間継続したという基準 を満たすデータがない場合(23 時 30 分に人工呼吸器を 装着した,24 時 30 分に人工呼吸器を外した,1 時間以 内に設定を変更し続けた場合など)は,その日の最も低 いセッティング値を記載することとした.

7) 分母に“EMV (episodes of mechanical ventila-tion人工呼吸器の装着件数”を導入する(このデータ の収集・報告はオプションとなっており,2016 年の報 告基準においてもオプションとなっている). 〈2016 年〉 8) イベント日(date of event酸素化が悪化した日) が,脳死を宣告された日またはそれ以降であり臓器移植 の ド ナ ー と し て の み 人 工 呼 吸 をさ れ て い る 場合 は , VAE として報告しないという項目が追加されている. VAE の疫学その意義と VAP サーベイランスとの関連 について NHSN が VAE サーベイランスの定義を発表するや, 後ろ向き研究の報告が次々と報告された.その結果は研 究者によってさまざまである.Hayashi らは2),2009 年

か ら 2011 年 の VAC ( ventilator-associated complica-tions, Hayashi らは VAC をこのように使用している)を 後ろ向きに調査し報告している.彼らの研究は 2013 年 よりも前に実施されているために,酸素化悪化の基準が 多少違うが(PEEP≧2.5 cmH2O, FiO2≧15としてい る),18 歳以上で 48 時間を超えて人工呼吸器を付けた 543 の事例の内,153 名に VAC(28)が認められたと 報告している.人工呼吸器装着から VAC 発生までの日 数の平均は 5.8(SD, 5.8),中央値は 4.3 で,人工呼吸器 装着後比較的早期に発生していることを示した.また, VAC の発生によって ICU への滞在が 48延長し,人 工呼吸器の装着が 30延長していたと報告している. VAC と病院及び ICU の死亡率,病院からの退院との関 連はなかったと報告している.また,彼らは VAC が発 生した患者は,そうでない患者と比較して輸液量が多 く,また furosemide (利尿剤)の使用が多く一部の抗菌 薬の使用も多かったとも報告している.Klompas ら3) よる後ろ向きコホート研究(2006 年 1 月から 2011 年 12 月)では,20,356 件(91,830 ventilator-days)の人工呼吸 器使用エピソードの内,VAC(VAC: ventilator-associat-ed conditions)plus(IVAC〈infection-relatventilator-associat-ed ventilator associated complications〉, possible 及び ProbableVAP 〈以後 VAEVAP〉を含めたもの)事例は,1,141 件で (5.6/100 人工呼吸器使用エピソード〈以後 MV エピソー ド 〉, 12.4 / 1000 人 工 呼 吸 器 日 〈 以 後 D days 〉) で , IVACplus(VAEVAP を含めたもの)事例は,431 件 (2.4/100 MV エピソード,4.7/1,000 Ddays),139 件 の possible VAP(0.7/100 MV エピソード,1.5/1,000 D days) , 127 件 の probable VAP( 0.6/ 100 MV エ ピ ソード,1.4/1,000 Ddays)であったと報告している. 彼らはこの研究から,VAE の全体の発生率は非常に 低く(5),probable VAP に至っては 1以下である  ICU のタイプによって発生率が違い,hazard 率は, 外科,内科,胸部 ICU で高く,心臓,神経科 ICU では 低かったほとんどの VAE は,人工呼吸器装着の早 期に発生し,その後は漸減したVAE を発生する累 積リスクは 1 日に約 1増加する呼吸器検体の培養 結果,抗菌薬の処方パターンが probable VAP, possible VAP, IVACで相違があり,このことは,これらの定義 が異なった集団を識別するということを示唆する VAE のフレームワークの全ての階層は,人工呼吸器装 着の遷延,入院期間の延長,病院死亡率の上昇と強く関 連していたIVAC は,VAC のみの患者と比較して 抜管と退院までにさらに多くの日数を要した.これは, IVAC の定義が VAC を満たした集団の悪化傾向を示す グループを明確にすることを示唆する,という結果を報 告している.これらのことは,VAE サーベイランスの 有用性を示すとともに,VAE の発生を予防する方法を 確立することの重要性を示す. Klein ら4)は,VAP の前向きサーベイランスと同期間 の VAE サーベイランスを後ろ向きに行い比較し報告し ている.データは 2011 年 1 月 1 日から 2012 年 7 月 1 日に収集されている.彼らは,2 日以上人工呼吸器を装 着した事例は 2080 件で,うち VAC 158 件(152 名, 7.5,10.0/1,000 d of MV)で,149 件は PEEP の設定 で判定されている.IVAC は 66 件(65 名 , 4.2/1,000 d of MV)で,probable と possible VAP は 51 件(50 名, 3.2/1,000 d of MV)であったと報告している.前向きに 収集された VAP の件数は,127 件(115 名,8.1/1,000 d of MV)で,感染率が高いのは,VAP サーベイランス の基準として,彼らが独自に明らかな(deˆnite)VAP の ほかに,possible, probable VAP を追加しているためで ある.VAE サーベイランスで VAP サーベイランスの VAPと一致したのは 32と報告している.VAP サー ベイランスのデータを,deˆnite と probable VAP(32 件)だけにすると,32 件のうち VAC と判定されたのは 14 件で 44,IVAC が 8 件,25,VAEVAP が 7 件 22であった.また,VAC と判定された事例で,VAP サーベイランスで deˆnite または probable VAP と判定 さ れ た の は , わ ず か に 9  で あ っ た . 明 ら か な ( deˆnite ) VAP の 件 数 は 3 件 と 非 常 に 少 な く , VAE サーベイランスとの一致はわずかに 1 件であった.ま た,この研究でも,VAE の発生が死亡率と関連してい ることを報告している.Bouadma ら5)は,フランスの

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2012 年の VAE と VAP サーベイランスを行い比較して いる.彼らは人工呼吸器を 5 日以上装着した患者を対 象としてサーベイランスをした結果,3,028 名の患者の うち 2,331 名の患者(77)に少なくとも 1 件の VAC が 発生し,869 名の患者(29)で IVAC を判定したと報 告している.発生率が他の研究と比較して高いのは,人 工呼吸器を 5 日以上装着している患者としているため に分母の数が少なくなることが原因であるとしているが (多くの文献は人工呼吸器を 2 日以上装着としている), 1996 年と比較すると人工呼吸器の管理の仕方やその他 の ICU での身体管理において大きな相違があることが 影 響 し て い る こ と も 推 測 で き る. 彼 ら の 研 究で は , VAE サーベイランスと VAP サーベイランスが他の研 究と比較して非常によく一致している.VAP に対する VAC の感度,特異度はそれぞれ 0.92, 0.28 で,IVAC はそれぞれ 0.67, 0.75 であったと報告している.他の文 献との差が生じた要因は特定できないが,彼らは VAE サーベイランスが医療の質管理のために有用であること を強調している. Muscedere ら6)は,48 時間以上人工呼吸器を装着し た 1,320 の患者の後ろ向き VAE サーベイランスを行い, VAC が 10.5,IVAC が 4.9判定され,VAC または IVAC の発生は,有意に人工呼吸器装着期間,入院期 間,抗菌薬使用期間が延長し,死亡率が上昇したと報告 している.彼らは更に VAP の予防対策のガイドライン が浸透することによって,VAP と VAC が減少したが IVAC に変化はなかったと報告している.彼らの研究で は VAP と VAE と 判 定 さ れ た 事 例 が 一 致 し た の は 26.4であった. その他,Lewis ら7)も,VAE の発生が人工呼吸器装 着の遷延,病院死亡率の上昇に関連していたという後ろ 向き case-control study の報告をしている. 2015 年になってから前向き VAE サーベイランスが 報告されるようになった.Zhu ら8)は,2013 年の 4 月 から 7 月までの 15 病院の 15 成人 ICU のデータを報告 している.636 名の 2 日以上人工呼吸器を装着した患者 を対象に VAE サーベイランスを実行した結果,IVAC 31 名,VAEVAP 16 名(probable VAP は 0)を含める と VAC は 94 件(4.011.1/1,000Ddays)判定され, VAC が判定されなかった患者と比較して,病院死亡率 が(50.0 vs 27.3)と高く,VAC が原因となった死亡 率は 11.7であったと報告している.また,VAC のみ の 患 者 と IVAC が 判 定 さ れ た 患 者 と を 比 較 す る と , IVACが判定された患者の抗菌薬の使用日数,人工呼吸 器の 装 着日 数 ,ICU 滞 在期 間 が有 意 に延 長 して いた が,病院への入院日数,死亡率には差がなかったと報告 し て い る . 31 名 の IVAC を 認 め た 患 者 の 内 16 名 が possible VAP を判定されているが,この文献の追加情 報的な特徴として,喀痰,吸引物から検出された微生物 が,Acinetobacter baumannii の検出が最も多く 10 名の 患 者 か ら 検 出 さ れ た と 報 告 さ れ て い る こ と で あ る . Boyer ら9)も,2013 年の 1 年間の前向き VAE サーベイ ランスの結果を報告している.2 日以上人工呼吸器を装 着した患者 1,209 名の内 IVAC 34 名を含む VAC が判 定された患者は 67 名(5.5)で,VAC が判定された患 者はそうでない患者に比べて有意に死亡率が高かったと 報告している(65.7 vs 14.4, p<0.001).また,同期 間中の VAP サーベイランスによる VAP は 86 件判定さ れ て お り , VAC の 定 義 に よ る VAP 検 出 の 感 度 は 25.9(95CI, 16.734.5)であったと報告してい る.彼らは VAC の発生要因を分析し,発生の予防が可 能であったかどうかを判定しており,予防可能な VAC は 25であったと報告している(この要因については後 に延べる).彼らは,VAE サーベイランスは VAP の検 出率が低いこと,予防可能な VAC が少ないことから, 基準を見直す必要があると述べている. VAE サーベイランスは,従来の VAP サーベイラン スの結果とあまり一致しないことで,このサーベイラン スをする意義,特に感染管理の担当者が行う意義につい て問われる.また,VAC の発生は患者の重要な事象に 関連しているが,予防可能な事例は少ないことからその 意義を問われるかもしれない.しかし誰が行うかは別と して,VAE の発生が重大な結果につながるのであれ ば,その指標として有用なサーベイランスと言える. VAE の要因 VAC が判定された要因について,Hayashi ら2)は,

無気肺 16.3,肺水腫 11.8,ARDS (acute respirato-ry distress syndrome) 6.5,胸水 3,肺塞栓症 2, 誤嚥 2,腹部膨満 1.3であったと報告しているが, 特に要因がなかったものが 31あったと報告してい る.これらの VAC の判定に明らかな要因が認められな かった患者についても,VAP として抗菌薬が投与さ れ,水分過剰として furosemide が投与されていたと報 告している.Boyer ら9)は,VAC の原因として,IVAC

50.7(IVAC の要因は VAEVAP が 61.7と最も多 い),ARDS 16.4,肺水腫 14.9,無気肺 9,気胸 3,TRALI (輸血関連急性肺障害)/TACO (輸血関連 循環過負荷) 3であったと報告している.Zhu ら8)は, 粘液腫 23.4,気道清浄化(軌道から分泌物を除去する こと)の不足 16.0,ARDS 13.8,胸水 10.6,肺水 腫 5.3,無気肺 3.2,腹部コンパートメント症候群 2.1,気胸 2.1,胃内容物の誤嚥 1.1であったと報 告している.Lewis ら7)は,ベンチレーター・バンドル のアドヒアレンスは VAC が判定された群とコントロー ル群では差がなかったと報告し,VAC を予防するため

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には,更なる対策が必要であることを述べている.その なかで,コントロール群と比較して VAC 群は,有意に 輸液量が多く,水分バランスが positive にコントロール されていたと述べている.更に,うっ血性心不全と肝疾 患の既往を持つ患者については VAC 判定患者が有意に 少なかったと述べている.これらは,水分出納の管理の 重要さを示し,うっ血性心不全の患者では他の疾患の患 者と比較して水分量が 1/3 であったと述べている.肝 疾患の既往がある患者で VAC が少ないのは,医師は肝 疾患の患者を鎮静することに注意を払うためであると し,肝疾患の既往がない患者と比較して VAC 発生の 7 日前の benzodiazepines と propofol の投与が 75少な かったと述べている. VAE の予防策

Boyer ら9)は,67 件の VAC(34 件の IVAC を含む,

IVACは 6 件の possible VAP, 15 件の probable VAP を 含む)について,予防可能であったのは 25 件(37.3)で あったと報告している.文献には全ての VAC 事例が記 載 さ れ 予 防 可 能 で あ っ た か ど うか を 記 述 し てい る . probable VAP のうち 15 件は予防可能であったが,病 院の VAP 予防バンドルを実施していたにもかかわらず 起こっていた.残りの 10 件は,不適切な抗菌薬の適用 2 件で,不十分な PEEP 2 件,輸液の過剰投与 2 件,気 管チューブ挿入に伴う誤嚥 2 件,経鼻挿管に伴う食道 穿孔 1 件,術後の鼠径動脈出血の蘇生 1 件であった. 予防不可能な VAC として多かったのは,ARDS の発症 が 11 件,敗血症性ショックを発症した事例の内の肺水 腫発症 8 件,適切な人工呼吸器管理にもかかわらず起 こった無気肺 4 件であったと報告している. これまでの VAP 予防のバンドルは,VAE の予防に 対して不十分であるということから,Klompas10)は, 自らの研究および他者の研究を参考に VAE 予防のため の方法として,挿管を回避する,人工呼吸器使用を最小 限にする,最もよく VAE を引き起こす特定のコンディ ション(肺炎,胸水・肺水腫,無気肺,ARDS)に焦点を 当てるという 3 つの主要なアプローチを基本に,更に VAE 予防が可能な戦略として次の項目を挙げている.  sedation を最小限にする,毎日,覚醒と自発呼吸の 促進を試みる,早期運動と離床プログラムの実施, 低一回換気量,控え目な輸液,控え目な輸血(輸血 が ARDS に関連するという文献を紹介している)であ る.その内鎮静を最小限にする,毎日の覚醒と自発呼吸 の促進,輸液の制限の VAE 予防効果については今まで の研究により証明されていると述べ,その他の項目につ いては,更に研究が必要であることを述べている.その 他一般的な VAP 予防策が VAE を予防するかについて は,まだ十分なエビデンスがなく,Klompas10)は,一 般的な VAP の予防策は VAE の予防に十分ではなく, クロルヘキシジンによる口腔ケアや,声門下の分泌物の ドレナージは VAE 防止にはならないとし,頭部拳上も エビデンスが少ないとしている.しかし,VAP 予防と いう点,また口腔ケアについては日常的な清潔ケアとい う 点 か ら , こ れ ら の ケ ア は 重 要 で あ る . Klompas10) は,この文献で VAE はクリティカルケアの質を変える のが目的であると強調している.予防できる割合が低い としても,VAE の発生と有害事象の関連があるという 報告はすでに多くなされていることから,VAE の発生 の予防戦略を実践し,VAE の発生状況を評価していく ことは重要であり,VAE サーベイランスは有意義なも のであると考える.Klompas10)は,この文献の中で, 予防策に関することではないが,VAE サーベイランス の分母として相応しいのは前述した EMV であると述べ ている.VAE 予防のもっとも効果的な戦略は,人工呼 吸器装着期間を短くすることであるにも関わらず,人工 呼吸器使用日数(ventilator-days)が減少すると,VAE の感染率が上昇するという矛盾した結果をまねき得るこ と,また ventilator-days を使用すると感染率に変化が ない場合でも,EMV を使用すると著しく減少している 場合があることを解説している. 展 望 NHSN は,VAE サーベイランスを成人の入院部署で 実施するように指示しているが,小児の病棟で実施した 研究がすでに報告されている.伊藤ら11)は,小児重症 治療室での前向きサーベイランスの VAP と後ろ向き サーベイランスの VAE の結果を報告しており,小児領 域においても人工呼吸器使用管理の指標となりうること を報告している.彼らは VAP と判定されたなかで,呼 吸器条件の変更があったものの,呼吸器条件変更の基準 を満たさなかったため,VAE と判定できなかった事例 の存在を報告しており,このことは小児領域において成 人に使用される基準をそのまま使用することへの問題を 示唆している.Cocoros らは,小児の VAC を判定する ために,FiO2が 0.25,MAP (meam airway pressure

平均気道内圧) 4 cmH2O の上昇を用いることを提言し ている12) その他,VAE サーベイランスの電子化について検討 した文献も報告されており,VAE サーベイランスの重 要な目的でもあった電子化(automated method)するに あたって,効率がよく,信頼性があることが広告されて いる13~15) 小児の病棟においても使用可能な VAE の定義の開発 と,日本においても電子化がさらに進むことによって, サーベイランスに係るマンパワーの削減に期待したい.

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結 語 日本環境感染学会の JHAIS 委員会でも,現在 VAE サーベイランスの導入に向けて準備をしている.その中 で,感染制御という立場からどのように介入できるのか と疑問視する声も聞かれる.しかし,研究文献が増加す るにつれ VAE の発生と有害事象との関連が明らかにな り,その予防が重要であることが報告されているおり, VAE サーベイランスの定義については,改善の余地が あるとしても,人工呼吸器の管理をするうえで重要な指 標となることは間違いないであろう.IVAC 以降の感染 が関わる領域では,「感染」分野からの介入が必要であ ることは間違いないし,またサーベイランスの技法に長 けた感染制御のスタッフがデータを提供することは有意 義であると考える. なお,本論文の要旨は第30 回日本環境感染学会総会にて発 表した. 利益相反自己申告申告すべきものなし. 文 献 1) 渡邉都貴子医療器具関連サーベイランス VAP サー ベ イ ラ ン ス (VAE サ ー ベ イ ラ ン ス 含 む ) . INFECT CONTROL 2015春季増刊82101.

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〔連絡先〒7008558 岡山市鹿田町251

岡山大学病院感染制御部 渡邉都貴子

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Epidemiology, Risk Factors and Strategies to Prevent Ventilator-Associated Events Tokiko WATANABE

Department of Infection Control and Prevention, Okayama University Hospital

Abstract

In 2013, the Centers for Disease Control and Prevention (CDC) replaced the national surveil-lance deˆnition for ventilator-associated pneumonia (VAP) in adult inpatient settings with deˆni-tions for ventilator-associated events (VAEs). Since the inception of VAE surveillance, several modiˆcations have been made to improve methods and deˆnitions. Multiple studies have conˆrmed VAE epidemiology, correlation of VAE with VAP surveillance, risk factors, and strategies to pre-vent VAEs. This article updates the changes in VAE deˆnitions and reviews the current published studies on VAE.

Key wordsventilator-associated events, epidemiology, surveillance, risk factors, preventive strategies

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