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村田省三 Hamilton = Slutsky (1990)定理5の証明

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Academic year: 2021

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(1)

《研究ノート》

Hamilton = Slutsky (1990)定理 5 の証明

村 田 省 三

Abstract

In this paper we consider the location and the curvature of isoprofit curve in duopoly games under some conditions on derivatives of profit functions. If profit functions of both firms are twice continuously differentiable and some other second order conditions over delivatives are fully satisfied, theorem 5 in Hamilton=Sltsky(1990) is still to be valid. Amir condition is not sufficient for the proof of therem 5.

Keywords: Amir Condition,Convexity of equiprofit curve,best reply curve,Cournot=Nash Equilibria

1 はじめに

複占ゲームにおける手番形成問題については,

Hamilton

=

Slutsky

(1990) (以下では

H

S

と略記する) による補題1から定理5にもとづき,一応の 解答が与えられた。定理5では,両企業の最適反応曲線の傾きとパレート優 位集合の位置関係によって各種の類別を示して,その類別ごとに起こりうる ゲーム均衡を特定している。ところが,この定理5について,

Amir

(1995) (以下では

Amir

と略記する) による反例が提示された。また,利潤関数が 相手戦略について単調であれば定理5は無矛盾であること(以下では

Amir

条件という)を示唆した。本稿では,

Amir

条件の効果を確認して,定理5

(2)

が無矛盾となるための十分条件を提示する。

2 定理5

2.1 定理5の概要

定理5(

A

):両企業の利潤関数は,ともに,自己の戦略について狭義準凹 関数であるとする。また,同時手番均衡とシュタッケルベルグ均衡は(どち らの企業が先手であるとしても)純戦略で一意に存在しており,かつ相互に 異なっているものとする*1。このとき,最適反応曲線(連続)の傾きの符号 が同一であれば,(1)どちらの最適反応曲線も(同時手番均衡にたいする)

パレート優位集合との交点をもたないときは同時手番がゲーム均衡になる。

(2)どちらの最適反応曲線も(同時手番均衡にたいする)パレート優位集合 に入るときは多数のゲーム均衡がある。

(証明)同時手番の均衡は,両企業の最適反応曲線の交点で与えられるが,

この点よりパレート優位である領域(パレート優位集合)は,この交点を通 過する両企業の等利潤線で囲まれる部分になる。ところで,この等利潤線は,

最適反応曲線を通過するとき,自己の戦略軸(横軸あるいは縦軸)にたいし て平行となる性質があるから,結局,クールノー=ナッシュ均衡点を原点と する直交座標系を考えることができ,問題のパレート優位集合はこの直交座 標系の4つの象限のいずれかひとつのみに完全に含まれることになる。した がって,かりに最適反応曲線がともに右下がりで,しかも,問題のパレート 優位集合がこの直交座標系の第1象限あるいは第3象限にあるとすれば,両 企業の最適反応曲線はパレート優位集合と接触することはない。一方,問題 のパレート優位集合がこの直交座標系の第2象限あるいは第4象限にあると すれば,両企業の最適反応曲線はパレート優位集合のなかを通過することに

*1 定理5の仮定が何であるかについて,かならずしも明確に記述されてはいないが,同 論文の全体を通じての仮定群を想定することとして,定理5のなかに要約的に収録した。

(3)

なる。(証明終)

2.2 定理5の再証明

本節では,等利潤線の凹凸形状を確認する*2。この確認ができれば,

H

S

が想定していた状況であるかどうかが判定でき,定理5の主張は無矛 盾となるかどうかを指摘できる*3。これにより,

H

S

定理5が成立しうる ひとつの十分条件をあたえる補題1を提示する。そのなかで,

Amir

条件の 効果が確認される。補題1では,まず,証明第1段で2π(

x

,

y

)

x

y

<0 かつ

2π(

x

,

y

)

y

2 >0)の場合,次に2π(

x

,

y

)

x

y

<0 かつ(2π(

x

,

y

)

y

2 =0)の場合,次 に 証 明 第 2 段 で (2π(

x

,

y

)

y

2 > 0 ) か つ (2π(

x

,

y

)

y

2 > 0 ) の 場 合 , 次 に ,

2π(

x

,

y

)

y

2 >0)かつ(2π(

x

,

y

)

y

2 =0)の場合を検討して,等利潤線の凹凸形 状を確認する*4

補題1ある企業の利潤関数π(

x

,

y

)は,(

x

,

y

)∈

R

2で定義された2回連続 微分可能関数で,

R

2の全領域において以下の条件(1),(2)および(3)を満た すものとする。ここで,自企業の戦略変数は第1変数(

x

)であり,相手戦略

*2 凸性の確認は,微分可能関数の場合,2次微分の符号判定によっておこなわれ,2×

2のヘッセ行列(∇2π(x,y))が正定値行列であるかどうかを判定するのが常態である。

しかし,たとえば本稿の図6のようなグラフをもつ利潤関数では,関数の定義域を第1 象限(正値領域)に限定できたとしても,なおエピグラフの凸性は成立しないことに注 意すべきである。

*3 補題1での条件を前提とすれば,H&S(1990)定理5の証明は無矛盾となる。この他,

πxx<0,πxy<0,πyy>0 という符号条件を,補題1より緩め,πx=0 近傍で成立すればよい という条件に緩和しても,定理5証明は無矛盾になる。ただ,この場合,全域的な等利 潤線形状確定は困難になる。

*4 凸性の確認は,微分可能関数の場合,2次微分の符号判定によっておこなわれ,2×

2のヘッセ行列(∇2π(x,y))が正定値行列であるかどうかを判定するのが常態である。

しかし,たとえば外部経済タイプの利潤関数では,関数の定義域を第1象限(正値領域)

に限定できたとしても,なおエピグラフの凸性は成立しないことに注意すべきである。

(4)

変数は

y

である。

2π(

x

,

y

)

x

2

Const

<0 (1)

2π(

x

,

y

)

y

2

Const

≧0 (2)

2π(

x

,

y

)

x

y

Const

≠0 (3)

また,

∂π(

x

,

y

)

x

=0

∂π(

x

,

y

)

y

=0

を満たす(

x

,

y

)∈

R

2は各々ひとつの曲線を形成するものとし,交点は一意(

x

0,

y

0)であるとする。また,πx=0 およびπy=0 曲線のグラフは,任意の

x

R

あるいは任意の

y

R

にたいして存在するものとする。このとき,すべての 等利潤線のグラフは,2本のπ=πmin直線によって区分される

R

2の4領域 いずれかひとつに完全に含まれ,πx=0 ,πy=0 曲線およびπ=πmin直線で区 分される各領域(最大8領域*5)での等利潤線の凹凸を確定できる。なお,

(

x

0,

y

0)を通過する等利潤線は直線になる。この4領域のうち,πy=0 ライン が通過しない領域(境界は含まない)において定義されたゲームは,(Amir 条件)*6を満たしている。

証明 証明の第1段 (1)〈2π(

x

,

y

)

x

y

<0,2π(

x

,

y

)

y

2 >0,の場合〉

仮定により,πx=0 は右下がりであり,πy=0 は右上がりになる。この交 点(

x

0,

y

0)では,仮定により,利潤は最適反応曲線(πx=0 )上における最小

*5 凹凸変更ライン(πy=0)が垂直となる場合,凹凸変更ライン(πy=0)とπ=πminライ ンは,しばしば一致する。

*6 Amir条件は,ある前提条件のもとで,以下の2条件と同値であることを証明できる。

(1) 自己の最適反応曲線上で利潤が単調である。

(2) 等利潤線の凹凸が逆転しない。

(5)

値(πmin)をとる。これには各種の証明が可能だが,たとえばπyy>0から,πy

=0 曲線より上側(縦軸を

y

とする)ではπy>0が,下側ではπy<0が成立す ることから証明できる。したがって,同交点から最適反応曲線上を遠ざかれ ば,利潤は単調に増加する。

仮定とπminの性質より,等利潤線(π=πmin)は,最適反応曲線の両側に各 々1本だけ存在する。また,2本のπ=πmin曲線はπx=0,πy=0 の交点にお いて交差する。

このとき,右上がりのπy=0 曲線が,通過すべき領域が決まる。πy=0 曲線はふたつのπmin曲線の中間を通過する。しかし,2本のπ=πmin曲線に よって4分される領域のうち,最適反応曲線が通過する領域を通過しない。

ところで,πx=0 およびπy=0 曲線の近傍での,局所的な,等利潤線凹凸 は確定する。判定は,等利潤線上での微分より得られる,以下の1次導関数

y

dy

dx

)および2次導関数(

y

d

2

y

dx

2)から可能である*7

y

′=πx

−πy

y

πxxy)2−2πxyπxπy+πyyx)2

−(πy)3

ところで,直線

y

ax

b

上での利潤関数の2次微係数は,πxx+2πxy(

a

)

+πyy(

a

)2であり,

πxx+2πxy(

a

)+πyy(

a

)2=0 (4) となる

a

は,仮定によりたかだか2個である。この(4)によって決まる

a

の方向では利潤関数2次微係数は常にゼロであり,利潤関数1次微係数は 一定となる。また,

a

以外の方向では,利潤関数2次微係数はゼロにならな い。したがって,あらゆる等利潤線上では,凸から凹への(または逆の)形

*7 上を検討する場合には,以下の形式が有用である。

dx dy=πy

πx

d2x

dx2=πyyx)2−2πxyπxπy+πxxy)2

−(πx)3

(6)

状変化は起こらない。仮に,等利潤線の凹凸形状に逆転変化が起こったとす ると,その適当な近傍で,傾きが

a

以外の方向での切断面を考えれば,ただ ちに矛盾を導ける。すると,あらゆる等利潤線凹凸は逆転しないことが分か る。

一方,等利潤線πminによって4分されている各領域内部にある等利潤線 は,別領域にまたがることはない。したがって,交点(

x

0,

y

0)からスタート して,

a

方向へ移動するとき,利潤関数(2次微係数ゼロ)は,狭義単調増 加もしくは狭義単調減少となることはできず,定数値となる。というのは,

単調増加とすると,これと同一の傾き(

a

)であればいたるところ単調増加 となり,矛盾である*8。単調減少を仮定しても同様に矛盾する。かくして,

交点(

x

0,

y

0)からスタートして,

a

方向へ移動するとき,利潤は一定であり,

ひとつの等利潤線を形成する。つまり,この方向では,π=πminは直線であ る。

証明の第1段 (2)〈2π(

x

,

y

)

x

y

<0,2π(

x

,

y

)

y

2 =0 の場合〉

この場合,補題の仮定により,πy=0 曲線は,横軸に垂直な直線以外では ありえない。垂直でなければ,πy=0 曲線より下(または上)領域でπy 0 になるはずであるが,同時に別の仮定(πxy<0)によれば,その領域でπy

<0となり矛盾するからである。

仮定πyy=0 より,この垂直なπy=0 曲線上では利潤一定であり,これがひ とつの等利潤線π=πminとなる。もう一方の等利潤線π=πminについては,

(4)より方向(

a

)が決まる。

その他は,第1段の証明方法と同様である。したがって,各領域での等利 潤線凹凸が確定する。

証明の第2段 (1)〈2π(

x

,

y

)

x

y

>0,2π(

x

,

y

)

y

2 >0,の場合〉

*8 例えば,π(x, y)=(10−2(x+y))x−2x の場合,この傾き(a)はa=−1 である。この とき,直線y=−x+b上(bは定数)における,利潤関数は,π(x, y)=(8−2b)x となる。

b=4で,利潤は定数値(ゼロ)となる。

(7)

仮定により,πx=0 は右上がりであり,πy=0 は右下がりになる。この点 が証明第1段(1)と異なる。また,πx=0,πy=0 の交点において交差する2本 の等利潤線(π=πmin)は,最適反応曲線(πx=0 )の左右両側に各々1本が あり,πy=0 曲線の上下両側に各々1本通過している。その他の証明方法は 形式的に同様である。

証明の第2段 (2)〈2π(

x

,

y

)

x

y

>0,2π(

x

,

y

)

y

2 =0 の場合〉

この場合も,πy=0 曲線は,横軸に垂直な直線になる。垂直でなければ,

πy=0 曲線より下(または上)領域でπy=0 になるはずだが,別の仮定(πxy

>0)によれば,その領域でπy>0 となるためである。以下の証明は,形式 的に第1段と同様である。

なお,命題の後半(

Amir

条件)の成立は,証明するまでもなく自明。■

定理5を証明しうる可能性のある符号の組合せとしては,以下の4つがあ る。ただし,後半の二つは経済学的な理由から排除されるであろう。

2π

x

2<0,2π

y

2≧0 および2π(

x

,

y

)

x

y

<0 右下がり最適反応曲線(補題1)

2π

x

2<0,2π

y

2≧0 および2π(

x

,

y

)

x

y

>0 右上がり最適反応曲線(補題1)

2π

x

2>0,2π

y

2<0 および2π(

x

,

y

)

x

y

<0 右上がり最適反応曲線

2π

x

2>0,2π

y

2<0 および2π(

x

,

y

)

x

y

>0 右下がり最適反応曲線

Amir

条件は,最適反応曲線上(πx=0)近傍において等利潤線凹凸が不変 であることを主張している。

定理2補題1の条件が成立しているとする。このとき,2本の等利潤線π1

=π1minによる

R

2の4区分領域のうちのひとつと,同様に2本の等利潤線 π2=π2minによる

R

2 の4区分領域のひとつの,共通領域で定義されたゲー ムが,その領域内部にクールノー=ナッシュ均衡点および2種類のシュタッ

(8)

ケルベルグ均衡点をすべて含むならば,そのゲームについては

Hamilton

=

Slutsky

(1990) 定理5が成立する*9。あるいは,両企業にとって,相手戦略 に関する偏微係数がゼロとならないような共通領域で定義されたゲームが,

その領域内部にクールノー=ナッシュ均衡点および2種類のシュタッケルベ ルグ均衡点をすべて含むならば,をもつならば,そのゲームについては

Hamilton

=

Slutsky

(1990) 定理5が成立する。

証明 補題1および

Hamilton

=

Slutsky

(1990) 定理5の証明により自明 ■

補題の前提のうち,二つの曲線(π

x

=0 およびπ

y

=0)の交点一意性は 分析単純化のためである*10。一方,(2π

x

2<0)という前提は,利潤最大化 問題が可解であるという方向からの要請である。これにたいして,2番目の 前提(2π

y

2>0)は,これ単独では当然の仮定とはいえない。ただし,ふた つの条件(2π

x

2<0 および2π

y

2<0)の同時成立は円形等利潤線の場合をそ の典型として,

H

S

定理5にとっての矛盾を引き起こしやすいため,除外 しなければならない*11。なお,2π(

x

,

y

)

x

y

の正負については,負値を前提し たが,正値でも補題1の証明手順そのものに相違はない。最適反応曲線

*9 Amir反例および外部経済反例については,自己の最適反応曲線上での利潤単調性によ っても除外することができている。

なお,補題条件が満たされれば,π=πmin以外のすべての等利潤線は,方向(a)の直 線と一度出会えば,その後ふたたび出会うことはない。

*10 これら2曲線が複数の交点をもつ場合には,相手戦略についての単調性条件を満たす 領域についての分類が煩雑になる。ここでいう単調性条件とは,Amir条件のことである。

*11 この補題における前提の必要性については,たとえば,∂2π(x,y)

∂x2 <0 かつ∂2π(x,y)

∂y2

<0 の組合せを仮定する場合には,次のような利潤関数を排除できないことに注意すべき である。

π(x, y)=−x2−y2+α

ゲームの定義域を第1 象限(軸上を含む)とすれば,この利潤関数はAmir条件を満 たすが,このような利潤関数の特質こそがAmir反例の本質であって,多少の係数変更 等によって,容易にH&S(1990)定理5に矛盾を引き起こすことを確認できる。

なお,∂2π

∂y2=0 の場合,曲線(∂π

∂y=0)は,横軸に垂直な直線になる。通常の数量戦 略複占ゲームのケースである。

(9)

π

x

=0)が右上がりであれば,2π(

x

,

y

)

x

y

>0 となるが,これは価格戦略 ゲームでは特徴的なものである。なお,πxx< を前提とするとき,

Amir

件は,最適反応曲線上(πx=0)近傍において等利潤線凹凸が不変であるこ とを主張している。

3 おわりに

本稿では,

Hamilton

=

Slutsky

(1990) の定理5に新しい証明を与えて,ゲー ムの定義領域の全域で

Amir

条件が満たされるだけでは,

H

S

(1990)定理 5が想定していた状況を生み出しえないことを確認した。ただ,

H

S

定理 5成立の必要十分条件が何であるかは未解決のままであるともいえる。だが,

2回連続微分可能関数の解析的性質を利用する方向でこの問題を考えるなら ば,そして経済学的に有意味な関数形を想定するならば,おそらくは本稿条 件が必要十分条件にきわめて近いものになっていると考えられる。本稿で採 用した,2次微分係数の符号と最適反応曲線の傾きの組合せに関する前提,

若しくは,相手戦略についての(ゲーム定義域内における)単調性のうち,

どのひとつの仮定を除いても,そこには

H

S

定理5に抵触する反例を構築 できるか,あるいは,経済学的に許容されにくい特徴が出現すると予想され る。

とはいえ,本稿における前提条件は,別の形式によって表現される可能性 は少なからずあるといわねばならない。これについては,たとえば,2π

x

2

>0 という条件と曲線(π

x

=0)が右下がりという条件から,2π

x

y

<0 が得 られることなどの相互関連性があることなどを指摘できる。本稿における仮 定表現が定理5の正しい証明にとって必要最小限かつ端的な形式になってい ることを願う。

(10)

参 考 文 献

[1] Amir,R.(1995). Endogenous Timing Two-Player Games:A Counter Example Games and Economic Behavior.

[2]Hamilton,J.and S.Slutsky.(1990). Endogenious Timing in Duopoly Games:Stackel- berg or Cournot Equilibria, Games and Economic Behavior.2.29‑46.

[3] 村田省三(2008).「外部経済と複占ゲームの均衡」応用経済学研究第2巻.30‑43.

参照

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