出口治明著 生命保険入門 新版
⎜ 岩波書店,2009年12月,はじめに3頁,目次4頁,本文241頁,参 考文献紹介2頁,生命保険会社相談窓口一覧5頁,索引6頁 ⎜
生命保険の全体像を平易に論じた入門書がほとんどみあたらない現状に対 して,本書は,筆者が生命保険会社に長く従事してきた立場から一般消費者 や学生を対象に生命保険の基本を論じた書である。
本書の初版は2004年に出版された。5年を経て改訂されたこの新版では,
図表が以前より分かりやすいものに改善され,本文の記述も最近の動向を踏 まえたものになっている。旧版では触れられていなかった,米国,英国,フ ランス,ドイツなど主要国における生命保険事情や,わが国における保険自 由化後15年の検証といったトピックが盛り込まれており,より充実した内容 となっている。以下,新版の内容を簡単に紹介してみよう。
本書は4部構成となっている。前半部分となる第Ⅰ部と第Ⅱ部では生命保 険について理解する上で必要となる基礎知識を解説し,後半部分となる第Ⅲ 部と第Ⅳ部では今日の生命保険業が直面する諸問題に対して,筆者の私見を 交えながら鋭く切り込んでいる。とりわけ後半部分における記述には,筆者 の生命保険業を刷新したいという明確な思いが込められており,本書を単な る入門書にとどまらないものとしている。
第Ⅰ部 生命保険とは何か は4つの章から成り立っており,生命保険全 体の知識を扱っている。第1章 生命保険とはどのような金融商品か では,
生命保険の定義,我が国の生命保険の特徴,私保険と社会保険との違い,リ スクマネジメントと生命保険の関係について述べられている。第2章 生命 保険の歴史と主要国の生命保険事情 では,生命保険の誕生から近代化まで の経緯と特徴,および欧米の生命保険事情について触れられている。第3章 生命保険はどのような仕組みになっているか では,保険料の計算方法,
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【書籍紹介】
生命保険会社の収益構造や決算について解説している。第4章 生命保険に はどのような種類があるか では,生命保険商品の基礎を説明している。
第Ⅱ部 生命保険会社の仕組み には3つの章が設けられており,生命保 険商品の担い手である生命保険会社に焦点を当てている。第5章 生命保険 会社の組織 では,営業職員制度の意義や問題点,相互会社制度の特徴,生 命保険業界の構成について整理している。第6章 生命保険会社の資産運 用 では,生保金融のポジションから保険負債評価の問題や時価会計の問題 までを扱い,第7章 生命保険に関わる法制度 では,保険法や保険業法な どについて解説している。
第Ⅲ部 岐路に立つ生命保険業界 には,第8章 生命保険業が直面する 課題 のみがあてられている。ここでは,逆ざやと予定利率の引き下げ問題,
少子高齢化の衝撃,これからの保険商品政策と販売チャネル,保険金の不払 い問題の整理,自由化後15年の検証など,非常にタイムリーな話題を取り上 げている。生命保険のビジネスモデルを再構築するためには,販売チャネル の多様化,海外事業展開,業務の多様化が必要だと説いている。
第Ⅳ部 生命保険とどうつきあうか は2つの章で構成されており,消費 者の生命保険との関わり方について議論が行われている。第9章 上手な生 命保険の利用方法 では,生命保険会社の破綻リスクが現実化するなか,セ ーフティネットの意義や役割について整理し,業績表示の方法,ソルベンシ ー・マージン比率の提示方法など,消費者に対して保険会社は正しい保険商 品の比較情報を提供しなければならないと説いている。
第10章 理想の保険・サービスを考える では,消費者ニーズ,保険料を 安くする方法,生命保険の購入経路など,様々なトピックスが扱われている。
最後に,今後,生命保険業界の発展のためには,保険商品を自由に組み合わ せて販売することを可能にするオープン・アーキテクチャーによる業界の再 編が必要と締めくくられている。
(紹介者:高千穂大学商学部教授 恩藏三穂) 出口治明著 生命保険入門
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