• 検索結果がありません。

佐久間彊先生の想い出

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "佐久間彊先生の想い出"

Copied!
3
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

vii

佐久間彊先生に始めてお目にかかって、東京大学定年後千葉経済大学で働か ないかというお誘いを受けたとき、先生は大学について二つのことを口にされ た。私は実は他の一、二の大学からも勧誘を受けていたのであったが、先生の 口にされた千葉経済大学の二つの特色が私の経済学者としての信念と共通する ものがあり、お誘いを受けさせて頂いたのである。

それから十年、私は先生の強いご支援を頂いて、学部長から更には思いもか けず学長という大役を勤めさせて頂くこととなったが、その期間を通じて、私 の非力はともかく、最初に私の感銘した先生のお話しを不変の信念として貫く 努力はした積りである。

お話しの一つは、いう迄もなく「論語と算盤」であった。彊先生の御尊父が 学園を創立されて以来の校是であるが、私はこの校是に心から同感した。

私は五十歳の頃から、経済学の研究よりもむしろ経済政策に関する政府の審 議会などに参加することが主な仕事になっていたが、政策の選択決定は経済学 の知識だけでは不可能であり、更に幅広い判断基準が必要であることを痛感し、

若干の試行錯誤の後に「論語」にそれをもとめるようになっていたのである。

五十代の私は、毎朝「論語」の数章を読むのが日課となっており、また繰り返 し読むほどにその深い思想に惹かれていた。そのような経験から、論語と算盤 という校是に自然に同感したのである。

佐久間彊先生の想い出

荏 開 津

(千葉経済大学第二代学長)

(2)

viii

千葉経済論叢 第37号

もう一つのお話しは、大学と実社会、とりわけ官庁と大学との協同の必要性 ということであった。これも又、当時の私の信念と全く合致するお話しであっ た。経済政策に大学が貢献することができるとすれば、それは官学協同を通じ て始めて可能であることを、私も又経験によって確信していたのである。

彊先生の口にされたこの二つの、大学のあるべき姿についての理念は、私よ りもはるかに深く、先生の生涯を通じる御経験にもとづいて確固不抜のものと なっていたに違いないが、程度の深浅はあれ、はしなくもそれは私に共通する ものであったのである。

私はまず講義を通じて、後には学部長や学長として、この理念を大学に浸透 させることに努めた。もちろん非力な私に何ほどのことができた訳ではない。

しかし彊先生は私を信頼して下さって、全面的に支援して下さった。まことに 私にとって有難いことであった。おかげで私にとって、千葉経済大学での十年 間は充実した幸せな日々であった。

話しは変るが、勤務して最初の頃、私は経営学科新設の事務を担当した。そ のためにたびたび先生のお供をして文部省に出向いたが、文部省に向う車の中 で、或は文部省での待ち時間に、しばしば御尊父の建学の御苦心や戦後の復興 と拡大の御苦労についてうかがったことも忘れられない。教育に対する熱意と、

教育のあり方についての信念に、大学経営、学園経営の努力が伴わなければ、

熱意も信念も空しいものとなるしかない。

近年の大学乱立、受験生減少の傾向の中で苦労することになったとき、私は いつも先生からうかがった戦中・戦後の御尊父ともどもの御苦労に思い及んで 自ら励ました。こうした問題への対処は、私には始めての経験であり、教職員 の方々にもとまどいがあって到底うまく対処したなどといえないが、私の心中

(3)

ix

では、戦中・戦後の苦難に思いを致して、何としてもこの困難を乗りきり、建 学以来の伝統を守らなければならないという気持ちが強かったのである。

残念なことに、その頃から、彊先生は健康を害されて病臥され、私自身も長 年の胃病が悪化して休養を余儀なくされることになった。そして結局その温容 に再び接することのないままに、幽明境を異にされてしまった。大学を去る時 にすらご挨拶もできず御礼もいえぬままであった。人の世のならいとはいいな がら、悲しくまた申訳ないことであった。

最後に論語から私の最も好きな章句の一つを抜き書きして、先生の霊にささ げたい。

君子篤於親則民興於仁

故旧不遺則民不偸 (泰伯篇)

先人から伝わるものを重んじることに人偸の基本があることをいう章である。

参照

関連したドキュメント

熱が異品である場合(?)それの働きがあるから展体性にとっては遅充の破壊があることに基づいて妥当とさ  

2021年9月以降受験のTOEFL iBTまたはIELTS(Academicモジュール)にて希望大学の要件を 満たしていること。ただし、協定校が要件を設定していない場合はTOEFL

  中川翔太 (経済学科 4 年生) ・昼間雅貴 (経済学科 4 年生) ・鈴木友香 (経済 学科 4 年生) ・野口佳純 (経済学科 4 年生)

講師:首都大学東京 システムデザイン学部 知能機械システムコース 准教授 三好 洋美先生 芝浦工業大学 システム理工学部 生命科学科 助教 中村

1.3で示した想定シナリオにおいて,格納容器ベントの実施は事象発生から 38 時間後 であるため,上記フェーズⅠ~フェーズⅣは以下の時間帯となる。 フェーズⅠ 事象発生後

児童生徒の長期的な体力低下が指摘されてから 久しい。 文部科学省の調査結果からも 1985 年前 後の体力ピーク時から

[r]

[r]