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介護保険制度における要介護者のサービス選択について

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Academic year: 2021

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A-2

介護保険制度における要介護者のサービス選択について

─身元保証人不在者や低所得者の施設利用の問題点―

キーワード:介護保険、契約、サービス選択、身元保証、低所得

○阿部裕昭1)押木泉2 介護老人保健施設「入舟」1) 地域福祉団体「くらしかた・ねっと」2

目的

介護保険は、利用者(要介護認定者)が事業所を選 択し、契約してサービスを利用し、利用料を支払う。

しかし、身元保証人不在者や低所得者はそのことが理 由で選択できないサービスがあるのではないかと考 えた。特に施設サービス(短期入所生活介護・短期入 所療養介護含む)と地域密着型サービスの上記対象者 の利用の選択が難しいのではないかと仮説を立てた。

利用者が「選択して利用する」という介護保険制度の 理念と現状との乖離を,特に施設利用の観点から確認 し、上記対象者がサービスを選択・利用するうえでの 問題点の解明と解決策の検討を目的とした。

方法

居宅介護支援事業所の介護支援専門員へ身元保証 人不在や経済的理由がサービスの選択に影響があっ たかアンケート調査を実施した。アンケート結果の クロス集計から全体傾向を把握し、典型事例につ いてケース・スタディを行った。なお、アンケート 調査及び事例については、守秘義務を厳守するととも に、研究の目的以外の使用は無いとし、個人が特定さ れないよう配慮のうえ,被調査者の了解を得た。

結果

介護支援専門員へのアンケート結果から(17 事業 44名に配布し、38名分回収)、身元保証人が不在 で施設サービスが利用できなかったという回答が 9 名から得られた。うち6名が「身元保証人がいなくて も対応してくれる介護保険外の施設に依頼した」と回 答した。さらに、経済的理由から必要と思われた施設 系サービスの利用ができなかったという回答が14 あった。アンケート調査の結果から、身元保証人の不 在と経済的な理由から施設サービスの利用に影響が あると考えられる。

《事例 1》要介護4 独居(親族無)生活保護アパ

ートで生活。居室にクーラーが無く、夏場は居室内の 気温が常に30℃を超え、本人は「このままじゃ家に いられない」と言う。担当居宅介護支援専門員は、熱 中症の心配があったため、早急に短期入所サービスの 導入を図った。しかし、急変時の連絡先はなく、認知 症があり契約能力無しと判断され、契約代行者不在で 契約できず利用できない。生活保護であることから設 定された限度額を超えてサービスを利用することも できない。介護保険上使える限度額のぎりぎりまで暑 い居室で、訪問サービスのみ利用した。関係者は毎日、

本人の生命の危機を感じながら支援にあたった。

《事例 2》2人暮らしだったが、介護者が他界し、

独居となった。他親族は一切の関わりを拒否。施設利 用の申し込みをしていたが、契約者・身元保証人がい なければ受入できないとのことで施設入所が困難と なった。

《事例 3》生活保護受給。地域密着型サービスの導

入を図ったが減免ができず、支払いきれないため導入 を断念。他施設の申し込みをしたが個室しかなく、生 活保護受給者の個室利用ができないという理由から 入所に至らなかった。

事例2・3については示説発表時に詳述する。

考察

在宅介護の最前線で要介護者を支援する介護支援 専門員は、施設サービスを選択できない状況でも、他 のサービスで代替しながら、何とか要介護者・家族を 支えようと奮闘している。何よりも、サービスに乗れ ない要介護者が苦しい思いをしていることが事例を 通じて分かる。契約できなかったり利用料が支払えな いといった、保険に馴染まない要介護者がサービスを 選べない。また、公的な制度でありながら、サービス を利用することができない現状がある点で、現行制度 が多様化した家族形態・経済状況に対応できていない と言える。

結論

介護保険は社会的入院患者への医療費対策として の期待を背負ってでき、その方法が社会保険方式をと り、市場原理を導入して開始された。しかし、本人の 意向を含むアセスメントの結果、必要と判断したサー ビスであるならば、身元保証人不在者には行政あるい は施設長等が一時的にでも身元を保証する仕組みへ と改善すべきである。また、利用料についても、サー ビスの一部を負担限度額認定の対象とするなどとい うものではなく、その制限を撤廃して全てのサービス が、世帯の状況に応じた支払いの仕組み(応能負担)

となるよう改正が必要である。そのことが「自由な選 択」に繋がり,介護保険制度の立法趣旨実現に繋がる ものと考える。

参考文献

山路克文『医療・福祉の市場化と高齢者問題』ミネル ヴァ書房,2003.

NHK スペシャル取材班,佐々木とく子『「愛」なき 介護の人材が逃げていく阪急コミュニケー ションズ,2008.

参照

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