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【学位論文審査の要旨】

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Academic year: 2021

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【学位論文審査の要旨】

1 研究の目的

フーリエ変換は数学の基本的な変換であるにもかかわらず,超曲面への制限定理など, よ り深い性質について未解決な部分も多い。ローランシュワルツは著書「超関数の理論」に より,超関数をフーリエ変換に対して考えた。申請者の仕事はここでは近代の数学に大き な影響を与えた

(i)

概収束問題の発展,

(ii)

リーマン・ルベーグの定理,プランシュレルの定 理以外のフーリエ変換像の性質の解明に分類される。1966年のカールソンが

(L

2の場合 のみ),1974年のハントが(Lp

, 1<p<∞)

1変数関数の概収束問題に決定的な答えを与え たが,多変数関数については未だに概収束問題はこのような解答は得られていない。同じ くシュレーディンガープロパゲーターの時間に関する概収束問題として知られるカールソ ンの問題も近年の貢献があるものの,完全な解決には至っていない。フーリエ変換像の性 質について,1975年にはトーマスにより球面上に制限すると

L

1ではなくても,フーリ エ変換像が

L

2関数になることが示されている。この結論はのちに制限定理と呼ばれている。

これとは独立に1977年にはストリッカーツによりフーリエ変換と密接に関係している シュレーディンガープロパゲーターについてある時間可積分性と空間可積分性を組み合わ せた積分評価式を発見した。この積分評価式はキールとタオにより1998年に別の時間 可積分性と空間可積分性を組み合わせても得られることが指摘された。この積分評価式は ストリッカーツ評価として今日では偏微分方程式論における重要な道具の一つである。の ちにストリッカーツ評価は制限問題との関係を指摘されて,フーリエ変換の性質を知るた めの道具として使われている。

本研究は以上のような事情を踏まえてフーリエ変換の性質のうち,種々の関数空間の側 面からフーリエ変換の像を曲面に制限して得られる可積分性とその性質から得られるスト リッカーツ評価を調和解析の観点で考察することである。

2 研究の方法と結果

研究成果は大きくいって二つに分けられる。一つは多重線形積分作用素の性質,もう一 つは直交ストリッカーツ評価である。研究方法の観点からは,二つの方法を巧妙に組み合 わせることにより,種々の成果を得た。

多重線形積分作用素について説明したい。解明が不十分であるフーリエ変換の重要な性 質として,逆変換がどのような意味でもとの関数を与えるかという問題があげられる。1 次元で考える場合はヒルベルト変換が使えるために,カールソンによってほとんど最終的 な答えが与えられた。しかしながら,フェファーマンによって示されたように多次元の場 合は球の特性関数が生成するフーリエ掛け算作用素が有界とならないために工夫が必要で ある。多重線形積分作用素はこのような問題点を克服するために導入された作用素である。

申請者はこの作用素について,ハーディー空間を用いて,ある種の打ち消しあいを仮定す れば,この作用素はコントロールできることを証明した。また,この作用素がハーディー 空間に属するためには申請者が提唱した積分条件が必要であることも証明した。1次元の

(2)

解析と多次元の解析が被覆補題を自由に用いることができないという点において異なるよ うに,線形の場合と多重線形の場合は違う質の技術が必要である。

次に直交ストリッカーツ評価について説明したい。ストリッカーツ評価はフーリエ変換 と大きく関連している積分評価式である。そこで,本研究ではストリッカーツ評価をさら に精密にした直交ストリッカーツ評価に着眼して,フーリエ変換やそれに関連した作用素 の性質を調べた。直交ストリッカーツ評価には全空間での評価である「連続」型,区間で の評価である「離散」型がある。連続型については,サーバンやフランクなどにより調べ られていたが,離散型の場合は申請者により世界で初めて着手された。直交ストリッカー ツ評価をするさいに重要になってくるのが数列空間である。

l

p空間だけではなく,これを実 補間して得られるローレンツ数列空間をも必要とする。ストリッカーツ評価を得る際の技 法としては,局所化,複素補間,実補間(とくにブルガンによる局所化と実補間を混合す るテクニックなど),多重線形補間,

TT

*法など多くの手法が知られているが申請者は知ら れているほとんどすべての方法を巧みに用いることで現在の結果を得ている。

3 審査の結果

多重線形積分作用素をコントロールする方法は積分作用素のそれよりも難しい。実際に,

多重線形ならではの特殊な評価が必要だからである。具体的には複数の関数の積を扱うた めに,関数同士の相互作用を考慮しなくてはならない。それを申請者は立方体の極大関数 をうまく用いることで解決した。実際に,この手法の優れている点は立方体の極大関数の もつ減少度をうまく用いて複数の因子の相互作用を定量化したことと,その相互作用を打 ち消すために再びハーディー・リトルウッドの極大作用素を用いたことである。

ストリッカーツ評価はよく知られている積分不等式である。しかしながら,直交ストリ ッカーツ評価はあまりよく知られていない。申請者は周波数空間における局所性などを用 いた議論などを巧みに使い,斉次ソボレフ空間におけるフーリエ掛け算作用素の特異性を 解消し,微分可能性を込めた全空間における直交ストリッカーツ評価の導出に成功した。

また,ツベツコフたちによる多様体におけるストリッカーツ評価の理論と,ブルガンたち によるデカップリング理論を参考にすることにより,周期的な場合には微分可能性などを 加味しないと所望の不等式が得られないことを示した。これらの結果は調和解析だけでは なく偏微分方程式論においても重要であり,申請者のハートリー方程式への応用からも示 唆されるように物理学への応用をも期待される。申請者の研究成果は種々の分野への応用 が期待される非常に有益なもので,審査の結果,業績は十分と認められた。

4 最終試験の結果

申請者の論文の主要な結果は,多重線形積分作用素を扱う2編と直交ストリッカーツ評価 を扱う論文3編からなる。多重線形積分作用素の論文2編は国際的に高い評価を得ている 雑誌における掲載が決定した。直交ストリッカーツ評価に関連する論文3編のうち1編は

,

(3)

著名な国際的学術雑誌に既に掲載されている。以上の5編が申請者の主要論文で,ほかの 論文は学位論文には採録されていないが,申請者はそのほかにも共著論文を含め,既に総 計14編の研究業績がある。また,日本学術振興会による海外挑戦プログラムに採択され て,5か月間イギリスに渡航し,ベネット氏の指導の下で活発な研究活動も行った。申請 者は国内の研究集会で発表を4件,国内の国際会議で発表を3件,国外の国際会議で発表 を6件しており,申請者の結果は国際的にも既に高い評価を得ている。また,修士論文の 研究テーマであるモレー空間についても研究を継続し,国際雑誌に掲載された。以上の研 究内容,発表内容は極めて水準の高いものであり,1月10日の最終試験の結果,業績は 十分と認められた。

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