(54)
研究報告 :秋 田大学医学部保健学科紀要12(2):158‑166,2004
病棟看護 師の老年看護実習指導 における学生 に期待す ることの分析
阿 部 緑* 煙 山 晶 子** 小笠原 サキ子**
要 ヒEユ)
研究 目的は,病棟看護師が学生 に対 しどのような期待を もちなが ら実習指導を しているのかを分析 し,実習指導者 としての役割課題への示唆を得 ることである.病棟看護師17名に,無記名で,実習指導場面 に関す る次 の5項 目 :
1.学生 との関わ りの有無,2.行動計画発表時,対応 に困 ったこと,3.学生 と一緒 に処置 ・ケアを行 って,困 っ たこと,4.患者か らの学生 に対す る不満や苦情,5.学生の実習記録を読んだ経験 について内容 の記述を求めた.
結果の大要 は次のとお りである.(1)対象 となった病棟看護師全員が学生の指導 に関わ っていた.(2)記述内容か ら読 み取 った病棟看護師の学生への期待 は, 【看護援助】 【思考 ・記録】 【実習姿勢】 【対象の理解】の4つに分類 され た.実習指導者 としての役割 は,学生への実習指導 と病棟看護師への学生指導上の問題を把握 し助言す るとい う役割 があると示唆 された.
Ⅰ. は じめに
臨地実習 は看護学教育 の中で,非常 に重要 な位置 に あ る授業 である1).看護師3年課程 カ リキ ュラムで は 総時間数 の36%を占め2),多 くの時間 をか けて行 われ ている.実習受 け入れ病院 は看護学生 (以下,学生 と 略記) に対 して臨地実習 にふ さわ しい場 の提供 を し, 看護師 は業務 と して学生 の教育 をす る役割 を担 ってい る3). また,実習指導者 は臨地実習 中の学生 の学習 に 対す る重要 な影響因子 のひ とっであることは報告 され
ている4).
筆者 らは,臨床実習指導者 (以下,実習指導者 と略 記) としての役割 を担 い, 日々の学生や教官などとの 関わ り,指導者会 ・指導者協議会での意見交換を とお して実習指導者 としてのあるべ き姿を模索 し試行錯誤 しなが ら過 ごして きた. しか し,看護業務 を兼務 しな が ら実習指導者 としての役割, さらには病棟看護師 と して看護実習指導 (以下,実習指導 と略記)の困難 さ と限界を感 じて きた.教育 は,被教育者である学生 を 望 ま しい方向に変容 させてい くための意図的な働 きか
け5)とす るな らば , そ こには, 学生 に対 す る期待 が 存在す る.臨地実習 において教育者である病棟看護師 が,学生 に対 し, どのよ うな期待 を もちなが ら実習指 導 を しているのかを分析す る意義 は大 きい.
そ こで,本研究では病棟看護師が学生 の老年看護実 習 に関わ って感 じた ことを問 う設問の記述内容か ら, 授業者である病棟看護師が学習者である学生 に対 し, どのような期待 を もちなが ら実習指導 を しているのか を分析 し,実習指導者 としての役割課題 に対 しての示 唆を得 ることを目的 とした.
Ⅱ.目 的
病棟看護師の老年看護実習指導場面 において学生 に 対 して期待す ることの分析 によ り,実習指導者の役割 課題への示唆を得 ることである.
Ⅲ.方 法 1.調査期間
A大学医療技術短期大学部 の当該年度の老年看護学
*秋 田大学医学部附属病院看護部
**秋 田大学医学部保健学科看護学専攻
KeyWords:病棟看護師 実習指導者 老年看護実習 期待
看護学生
阿部縁/病棟看護師の老年看護実習指導 における学生 に期待す ることの分析
実習の全過程終了後の平成15年12月1日か ら12月15日 まで とした.
2.調査対象 と実習指導の背景
A大学医学部附属病院 7階西病棟所属の看護師の うち病棟担当17名 に調査への協力を依頼 した.原則 と して,病棟担当の看護師全員が,学生の受 け持 ち患者 への援助 を指導 している.調査時点では,17名の看護 師の うち1名が臨床指導者講習会を受講 し修了 してい た.
3.調査内容 と調査方法
平成15年度の臨地実習への病棟看護師の関与状況を 確認 し,実習指導場面 を想起 して もらいなが ら,設問 に答えて もらった.設問項 目は,指導経験7年以上の 実習指導者2名で検討 し,それまでの学生への指導経 験を もとに,①学生 との関わ りの有無,②行動計画発 表時,対応 に困 ったことがあるか,③学生 と一緒 に処 置 ・ケアを行 って,困 ったことがあるか,④患者か ら の学生 に対す る不満や苦情,⑤学生の実習記録を読ん だ経験の有無,の5項 目を問 うことに した.
回答 は無記名 自己記述式 とし,対象の看護師に質問 紙 を配布 し,各 自が期間中に回答 し,回収袋 に投函 し て もらう方式 とした.
4.分析方法
1)臨地実習への病棟看護師の関与状況 につ いて は, 単純集計 した.
2)各設問 に看護師が記述 した内容 (以下 「記述内容」
と略記) の うち,看護師が実際に学生の実習に関わっ て感 じたことを問 う設問,すなわち 「行動計画発表時, 対応 に困 ったことがあるか」「学生 と一緒 に処 置 ・ケ
アを行 って,困 ったことがあるか」「患者 か ら学生 に 対す る不満や苦情」の各設問に対 して回答 された記述 内容を分析 の対象 として,臨床実習指導者および老年 看護学 を専門 とす る教員か らなる研究者間で熟読 した.
3)記述 された個 々の状況で,病棟看護 師が学生 に期 待 していると考え られ る要因を検討 し書 き出 した.
4)上記3)の要因を類似す る意味内容 で まとめ, そ の内容を代表 している語句を用いて ラベルをっけ, さ らに大 きいカテゴ リーに集約 した. カテゴ リーの集約 は研究者間で検討を重ね,妥当性の確保 に努めた.
5.用語の定義
1)実習指導者 :病棟単位で所属長 よ り任命 された看 護実習指導の責任者である.研究者の うち 1名が この 役割 を担 っている.
(55)
2)病棟看護師 :病棟 における看護業務 を遂行 しなが ら,学生の受 け持 ち患者への援助の協力 ・助言を行 う.
具体的には,学生の一 日の行動計画を確認 し,必要時 にはア ドバイスす る. また計画 した看護援助の実施 に あたっては,学生を支援 しなが ら,受 け持 ち患者の状 態の報告を受 けるなどの実践面で学生 と直接的な関わ
りを もつ.
3)期待 :授業者である病棟看護 師が学習者 である学 生 に対 して もつ望 ま しい行動変容への期待である.本 研究においては,研究者 らが記述内容を熟読 し,文脈 か ら読みとった,病棟看護師の学生 に対 して期待 して いることをいう.
6.倫理的配慮
調査の主 旨を文書 と口頭で説明 し同意 を得た.調査 協力 は自由意志であること,各 自で回収袋 に投函 して もらうことを説明 した.また調査結果は,病棟カンファ レンスで報告 し情報 を共有す ること,公表す る場合 は 個人が特定 されることがないように配慮す ることを約 束 した.論文中では,個人的な内容 にふれている記述 内容 について,意味内容 に大 きく影響 しない程度 に修 正 を加えている.
Ⅳ.結 果
1.臨地実習での病棟看護師の関与状況
質問紙への回答 は17名全員か ら協力が得 られた.各 設問への回答数 は以下の通 りである (表1).
「① 実習で看護学生 との関わ りがあ ったか」 につい ては,回答 した全員が実習 に関わ っていた. 「② 行 動計画発表時,対応 に困 った ことがあるか」 について は困 ったことがある,4名,困 ったことはない,13名 であった.「③ 学生 と一緒 に処置 ・ケアを行 って, 困 った ことがあるか」 については,困ったことがある,
5名,困 ったことはない,12名であ った. 「④ 患者 か らの看護学生 に対す る不満や苦情を聞いた ことがあ るか」については,聞いた ことがある,2名,聞いた ことはない,15名であった.「⑤ 学生 の実習記録 を 読んだ経験 の有無」 については,16名が読んだ ことが あると答えていたが,1名 は読んでいなか った.
2.記述内容か ら読み取 った学生への期待
病棟看護師の記述内容か ら学生の期待が,71件抽出 された.記述内容か ら読み取 った学生への期待 は 【看 護援助】 【思考 ・記録】 【実習姿勢】 【対象の理解】
の4つに分類 された.
【看護援助】 は, 《安全な看護技術の提供 について 考慮す る》, 《様々な看護技術を体験 してほ しい》 に
(56) 阿部緑/病棟看護師の老年看護実習指導における学生 に期待することの分析
表 1 臨地実習指導での病棟看護師の関与状況
①看護学生との関わりの有無 関わった 17
関わらない
0
②行動計画発表時、対応に困ったことがあるか 困った 4
困らない 13
⑨学生と一緒に処置 .ケアを行って、困ったことがあるか 困った 5
困らない 12
④患者さんからの看護学生に対する不満や苦情の有無 開いたことがある 2 聞いたことはない 15
⑤学生の実習記録を読んだ経験‑ ll読んだことがある 16
分類 された (表2‑1).
《安全 な看護技術 の提供 について考慮す る》では,
『援助 内容 の報告 を確実 に行 うことの重要性 を理解 し て ほ しい』『安全 に看護技術 を提供す る』『患者 の安全 を考 えてサポー トを求 めてほ しい』 とい うカテゴ リー を含み, これ らは 「援助 を実行 した ら,その結果や反 応 をその 日の担当看護師 に報告 してほ しい.看護師が 確認す ると実行 されて報告 していなか っただけの こと がある.」「熱 い清拭 タオルをそのまま患者 さんの背中 にパ タッとあてた学生 さんがいた. ビック リした.」
「一人 で行 うには大変 と思われ る患者さんを一人で行 っ ている時があ って,声 をか けて もらえた らよか ったと 思 いま した.」とい う記述内容か ら読 み取 った.
《様 々な看護技術を体験 してほ しい》で は 『様 々な 看護技術 を体験 して ほ しい』「学生 さんが どの範囲 ま で実施 してよいのかわか らない為,対応に困った.様々 な看護技術 を体験 して ほ しい」 とい う記述内容か ら読 み取 った.
【思考 ・記録】 は 《看護過程 の展開を確実 に学ぶ≫
《患者 の個別 の問題を とらえ計画す る≫ 《わか りやす い行動計画》 《重要事項 の記銘》 《適切 な記録がで き る》 に分類 された.
《看護過程の展開を確実 に学ぶ≫ で は, 『一般論 で 終 わ らず対象 の反応を記述で きるようになってほしい』
『十分 な分析がで きるようにな って ほ しい』 とい うカ テ ゴ リーを含み, これ らは 「どうして も一般論 にな っ て しま うので,何か実行 した ・された部分 にはもっと 反応や状態把握 の様子 も多 く入 っているとよ りよいと 思 う.」「得 た情報 を分析で きていないと思 った.情報 をな らべているだけで, だか ら何なのか書いていない, 疾患の ことが全然でて こない人 もいた.」等 とい う記 述 内容か ら読 み取 った.
《患者 の個別 の問題 を とらえ計画 す る≫ で は, 『計
画立案の理 由や注意事項 について も理解 して実習 して は しい』『計画立案 は実際の方法 を現実 的 に考 えて ほ しい』 というカテゴ リーを含 み, これ らは 「ただ何 を や ります とだけ言 われた.理 由, どんな ことに注意す るのか何 もなか った.」「シャン ト造設 の患者 さんに, 丁寧 に話 を聞いて説明 しムンテラにもっいて相談 にのっ ていた.」とい う記述内容等か ら読 み取 った.
また 《わか りやすい行動計画≫では 『行動計画 はわ か りやす く表現 して ほしい』 とい う期待 を, 「朝 に行 動計画をきちん と話 して くれたので,一緒 に処置やケ ア ・看護 を行 う時 に声 をか けやすか った.」とい う記 述 内容等か ら読み とった. 《重要事項 の記銘》 『指導 した ことは忘れないで ほ しい』 は 「前 日,指導 したは ずなのに,翌 日には忘れている.」とい う記述 内容等 か ら読み取 った.
《適切 な記録がで きる≫ は 『感想で終 わ らず内容 を 深 め,担当患者 にあてはめて記載 しては しい』 とい う 期待 を,「一 日一 日を感想で終 わ って い る人 もお り,
もっと考察 した ことの記録があれ ば よい.」な どの記 述 内容等か ら読み取 った.
【実習姿勢】 に含 まれ る期待 は 《学生主体 の援助≫
《患者 との十分な コ ミュニケーシ ョン≫ 《患者 に楽 し みや喜 びを与 える存在 となる》 《患者 の予定 に合わせ た実習時間の調整》 《懸命な学習姿勢》 《学生が得 た 情報 の価値≫ 《経験 の積み重ね≫ 《協調》 《職業観 を 身 に付 ける》 《臨地実習で学べることを積極的に学ぶ》
に分類 された (表2‑2).
《学生主体 の援助≫では,『患者 に適 した援助方法 を選択で きるよ うにな ってほ しい』『担 当患者 へ の援 助 はで きるだけ学生 を参加 させた い』 『で きるだ け学 生が主体的に援助で きるよ うに したい』 とい うカテ ゴ
リーを含み, これ らは順 に 「物品の方法が学校側 と臨 床では多少違 いがあ り学生が戸惑 うことがあること.」
阿部緑/病棟看護師の老年看護実習指導における学生に期待することの分析
「陰部洗浄時,学生の援助 を拒否 した患者 がお り, 求 方 の対応 に困 った.」「看護援助 を学生 と一緒 に行お う と してベ ッ ドサイ ドを訪 れたが,学生が 自 ら援助 を行 お うとせず,実践 に学生 が参加で きないで しまい,良 か ったのか迷 う.」等 の記述内容か ら読 み取 った.
《患者 との十分 な コ ミュニケー シ ョン≫ で は, 『患
(57)
者 と十分 な会話 を して,状態把握 に努 めて ほ しい』 と い う期待を 「患者 の ところにいって コ ミュニケーシ ョ ンをよ くとろうと頑張 っていた.」等 の記述 内容 か ら 読 み取 った.
《患者 に楽 しみや喜 びを与 え る存在 とな る》 は,
『患者 に楽 しみや喜 びを与 える存在 にな って ほ しい』
表2‑1記述 内容 か ら読 み取 った病 棟 看護 師 の看護 学生 へ の期待 カテゴリ‑ 1:看護援助
中カテゴリー 小カテゴリー 記 述 内 容 の 例
安全な看護技術 の提供について考慮する 援助内容の報告を確実に行 うことの重要性を理解 してほしい 結果や反応をその日の担当看護師に報告 して計画すると発表 した援助を実行 したら,そのほしい.看護師が確認すると実行されて報告していなかっただけのことがある.
安全に看護技術を提供する 熱い清拭タオルをそのまま患者さんの背中にパタツとあてた学生がいた. ビックリした.
患者の安全を考えてサポー トを求め
てほしい 一人で行うには大変と思われる患者さんを一人で行っている時があって,声をかけてもらえた らよかつたと恩いました.
様 々な看護技術 を体験してほしい 様々な看護技術を体験 してほしい 学生さんがどの軒園まで実施 してよいのかわから為,対応に困った.様々な看護技術を体験してほしい カテゴリ‑2:思考 .記録
中カテゴリー 小カテゴリー 記 述 内 容 の 例
看護過 程の展開を確実
に学ぶ 一般論で終わ らず対象の反応を記述 実行 した .された部分にはもつと反応や状態どうしても一般論にな って しまうので,何か できるようになってほしい 把握の様子も多く入っているとよりよいと思う.
十分な分析ができるようになってほ 得た情報を分析できていないと恩つた.情報をな らべているだけで,だか ら何なのか幸い
しい ていない,疾患のことが全然でてこない人もいた.
患者の個別 の問題をとらえ計画する 計画立案の理由や注意事項 について ただ何をや りますとだけ言われた.理由,ど も理解して実習 してほしい んなことに注意するのか何もなかった.
計画立案は実際の方法を甥美的に考えてほしい て説明しムンテラにもついて相談にのつていた.シャン ト造設の患者さんに,丁寧に話を聞い
わか りやすい行動計画 行動計画はわか りやすく表甥 してほしい 朝に行動計画をきちん と話 してくれたので,一緒 に処置やケア .看護を行う時に声をかけやすかつた.
重要事項の記銘 指導 したことは忘れないでほしい 前日,指導 したはずなのに,翌日には忘れている.
適切な記録ができる 者にあてはめて記載 してほしい感想で終わらず内容を深め,担当患 一日一日を感想で終わ っている人もおり,も紳かな レポー トだが,受け持ち患者との関わつと考察 したことの記録があればよい.りをもつと具体的にされてもよいかと思う.
‑日一日を感想で終わ‑つと考察 したことの記録があればよい.?ている人もおり,ち
紳かな レポー トだが,受け持ち患者との関わりをもつと具体的にされてもよいかと思う.
(58) 阿部緑/病棟看護師の老年看護実習指導 における学生 に期待す ることの分析
表2‑2記 述 内容 か ら読 み取 った病 棟 看 護 師 の 看 護 学 生 へ の 期 待 カテ ゴリ‑3:実習姿勢
中カテ ゴリー 小カテゴリー 記 述 内 容 の 例
学生主体の援助 患者 に適 した援助方法を選択で きるようにな ってほ しい 物品の方法が学校側 と臨床では多少違いがあリ学生が戸惑うことがあること.
担当患者 への援助はできるだけ学生 陰部洗浄時,学生の援助を拒否 した患者がお
を参加させたい リ,双方の対応に困った.
できるだ け学生が主体的 に援助 できるように したい 看護援助を学生 と一緒 に行お うと してベ ッ ドサイ ドを訪れたが,学生が 自ら援助を行おうとせず,実践 に学生が 参加で きな いで しまい,良か つたのか迷う.
実習 に慣れてきた ら準備 (清拭の準備な ど) はととのえておいても良いと思います.
患者 との十分 な コ ミユ 患者 と十分な会話を して,状態把握 に 話が学生には行えている.患者 さんの満足につながると思う.日々,なかなか行えな いベ ッ ドサイ ドでの会 ニケ‑シ ヨン 努めてほ しい
患者の ところにいって コミュニケーションをよくとろうと頑張 っていた.
患者 に楽 しみ や喜 びを 患者 に楽 しみや喜びを与え る存在に 学生は時間が許す限 り患者の側にいることができるので,細やかな ところまで援助で きる.患者に明るさを与えてくれる.
与える存在 となる な ってほ しい
患者 の予 定 に合 わ せた 患者の予定 に合 わせた夷習 時間の詞 検査が午後 にある時,早 目に昼食 をとり,準 実習時間の調整 整を してほ しい 備 に間に合 うよう時間を配慮 していた.
懸命な学習姿勢 がんばって学んでほ しい がんばって学んでほ しい.一生懸命にその患者の疾患や背景 を学ぼ うとする姿勢が伺えます.患者 さんのそばにいる時間が長 く,医療者が知 らない情報をスタ ッフに知 らせてくれる.
学生が得た情報の価値 細かな朝寮による重要な情報の提供
経験の積み重ね 実習で経 験する一つ一つを大切 に してほ しい 一つ一つの小さな ことが学生の学習に結びついているということが分かる.
一 日を過 ごすのに行動計画が少な く 「それだ け?Jと思うことがある.
協 調 実習 グル ープ内のチ‑ム ワークを保ってほ しい ていた りして協力 していた事.グループの中で記録や行動がみんなよ り遅い学生がいてもみんなでフォロー した り,待っ
職業朝を身に付 ける 担当患者 との関係性の姿勢を身につけてほ しい職業人と して 香水が気 になる人が いた.
患者さん との会議 は,、ということを念頭 に入れてほ しい.、友達′′同士で はな い
臨地実習で 学べ る こと
を積極的に学ぶ 実習では治療 を うける患者の理解を中心に考えてほ しい 検査の見学や看護師の技術の観察や医師の処置の朝寮がメインで,患者さんにどういう軸索や看護が必要なのかわか らない.
患者 の個別の問題を十分 に考え,積
極的に実習 してほ しい 当日検査のある患者の受け持ち学生が, 「行かないようにします.日は大切な 日なので,あま りベ ッ ドサイ ドにJと発表され囲った.今 朝の申し送 り前に患者 さんを訴重 し,挨拶を済ませて情報を収集 してきている事.
阿部緑/病棟看護師の老年看護実習指導 における学生 に期待す ることの分析
表2‑3 記述内容から読み取った病棟看護師の看護学生への期待 カテゴリー4:対象の理解
中カテゴリー 小カテゴリー 記 述 内 容 の 例
患者の状態の変化 を予
測できる 実習で関わる期間だ けではな くその後に予測 されることも考慮 してほ し 実習終了後に何かある患者で, 自分はいないか ら関係ないという感 じで問題にもあげ られ
い ていないことがあった.
患者の体調 への配慮が 患者の状態を見なが ら関わ ってほ し ずつと側にいて疲れると言われた.
とい う期待 を含んでいる.「学生 は時間が許 す限 り患 者 の側 にいることがで きるので,細 やかな ところまで 援助で きる.患者 に明 るさを与 えて くれ る.」等 か ら 読 み取 った.
《患者 の予定 に合わせた実習時間 の調整》 は,『患 者 の予定 に合わせた実習時間の調整を して は しい』と い う期待 を 「検査が午後 にある時,早 目に昼食をとり, 準備 に間 に合 うよ う時間を配慮 して いた.」等 の記述 内容か ら読 み取 った.
《懸命 な学習姿勢》 は,『がんば って学んで ほ しい』
とい う期待 を 「一生懸命 にその患者 の疾患や背景 を学 ぼ うとす る姿勢が伺 えます.」等か ら読み取 った.
《学生が得 た情報 の価値》 は, 『細 かな観察 による 重要 な情報 の提供』とい う期待 を 「患者 さんのそばに いる時間が長 く,医療者が知 らない情報 を時にスタッ フに知 らせて くれ る.」等か ら読 み取 った.
《経験 の積み重ね≫ は,『実 習で経験 す る一 つ一 つ を大切 に して ほ しい』 とい う期待 を, 「一 つ一 つ の小 さな ことが学生 の学習 に結 びついているとい うことが 分 か る.」「一 目を過 ごすのに行動計画が少 な く 「それ だ け ?」と思 うことがある.」等 の記述 内容 か ら読 み 取 った.
《協調》 は,『実習 グループ内のチー ムワー クを保 つ』 とい う期待 を 「グループの中で記録や行動がみん なよ り遅 い学生がいて もみんなでフォローしたり,待 っ ていた りして協力 していた事.」等か ら読み取 った.
《職業観 を身 に付 ける≫か らは, 『担 当患者 との関 係性 ・職業人 としての姿勢 を身 につけては しい』 とい う期待 を,「香水 が気 になる人がいた.」「患者 さん と の会話 は, "友達"同士ではないとい うことを念頭 に 入れて ほ しい.」等 の記述 内容 か ら読 み取 った.
《臨地実習で学べ ることを積極 的 に学 ぶ》 は, 『実 習で は治療 を うける患者 の理解を中心 に考えてほしい』
『患者 の個別 の問題 を十分 に考え, 積極 的 に実 習 して ほ しい』 とい う期待を,「検査 の見学 や看護 師 の技術 の観察 や医師の処置の観察が メイ ンで,患者 さんにど うい う観察 や看護が必要 なのかわか らない.」「朝 の申
(59)
し送 り前 に患者 さんの ところへ訪室 し,挨拶 を済 ませ で情報 を収集 して きている事.」「当 日検査 のある患者 の受 け持 ち学生が,「今 日は大切 な 日なので, あ ま り ベ ッ ドサイ ドに行かないよ うに します.」と発表 され 困 った.」「机 に座 って,話 している時間が長 いよ うな 気が します.」等の記述内容か ら読み取 った.
【対象 の理解】は 《患者の状態の変化を予測できる》
《患者の体調への配慮がで きる》 に分類 され た (表2
‑3).
《患者の状態の変化 を予測で きる》 は 『実習で関わ る期間だけではな くその後 に予測 され ることも考慮 し てほ しい』 とい う期待 を,「実 習終了後 に何 か あ る患 者で, 自分 はいないか ら関係ないとい う感 じで問題 に もあげ られていないことがあ った.」か ら, 《患者 の 体調への配慮がで きる》 は 『患者 の状態 を見 なが ら関 わ ってほ しい』 という期待を 「ず っと側にいて疲れる.」
とい う記述内容等か ら読み取 った.
V.考 察
1 病棟看護師が学生 に期待す るもの
今回,病棟看護師が学生 に対 しどのよ うな期待 を も ちなが ら実習指導 を していたのかを分析 し,実習指導 者 としての役割課題への示唆を得 ることを目的 とした.
病棟看護師の記述内容か ら読 み取 った学生への期待 は, 【看護援助】 【思考 ・記録】 【実習姿勢】 【対象 の理解】の4つに分類 された.
【看護援助】 においては,安全 な看護技術 の提供 と 様 々な看護技術を体験 させたい,という期待を読み取 っ た.病棟看護師 は有資格者であ り,状況 によって は学 生が提供す る看護 に対 して責任が生 じる場合があ る.
学生が担当患者への援助計画を学生 自身 の判断だけに まかせ るので はな く,適切 に助言 し, リスクを極力回 避 しなければな らない. しか し, その一方で は様 々な 看護技術を体験 して ほ しいとも思 っている.多 くの看 護技術 を体験す る機会 を得 るととは同時 にアクシデ ン
トに遭遇す る機会 も増 えることにな る. この両者 は適 度 なバ ランスの中で進 め られなければな らず,常 に緊
(60) 阿部緑/病棟看護師の老年看護実習指導 における学生 に期待す ることの分析
張を伴 い,臨地実習での リスクマネジメン トが重要 に な って くる6). リスクを恐れていて は体験 で きること が限 られ,臨床能力の向上 を制限す ることにもなる.
リスクは最小限にとどめ,できるだけ多 くの体験がで きるように,実習での安全 に問題がないか,注意を払 う必要がある.
【思考 ・記録】 においては,看護過程 と記録 に関す る期待を読 み取 った.病棟看護師は看護過程 という問 題解決思考の重要性を実感 し,学生時代に十分 に学ん で ほ しいと考えている. それ ら看護過程や行動計画, 実施記録の表現 は,適切な形式や用語を用いて表す こ とがで きるよう,確実 に習得す ることを期待 している と考えた.
実習記録か らは学生の体験 した項 目や,体験か らさ らに発展 させた学習過程を知 ることがで きる.本来の 看護業務 と兼任 しなが らの指導 は,時間的な制限があ る.発問に対 しての学生の反応だけでは,状況に対す る学生 の理解度や納得の度合いが伝わ って こないこと もある. また,時 には実習場面で重要 と感 じた内容を 強調 して伝えようと試 みるが,学生 にとってその内容 が重要であると理解で きるレベルに達 しているかどう か は不明である.「前 日,指導 したはず なのに,翌 日 には忘れている.」とい う記述内容 があ ったが, 関与
した結果 として学生が学習 していない状況では指導側 の学生指導への意欲 も削がれて しまう.学生の記録 に 表現 されている内容で学習効果がどの程度あったかが わか る. それによって病棟看護師の指導の効果の程度 が明 らか とな り,病棟看護師側の指導意欲 も刺激 され る.記録 について簡潔でわか りやすい表記が期待 され ていたのはそのような背景があったと考えた.
【実習姿勢】 においては,実習に対す る学生の主体 的 ・積極的な取 り組み方 と患者 との十分なコミュニケー シ ョンや グループメンバーとのチームワーク, さらに 看護師 としての職業観 に対 して期待 している.学習 は 学生 の主体的 ・積極的な努力な しには成立 しない.学 生が 自らの経験 に意味づけを してい く看護学実習では 学生 の自己決定を尊重 し学生 の主体的な学 びが進んで い くように助言 した り,看護 モデルになったり,学習 環境 を整えることが必要である7). 患者 の個別 の問題 を十分 に考え積極的に実習 してほしい, という期待が 抽出された背景 には,受 け持ち患者 という対象 に対 し て十分 に関心 を示 し,看護師 としての学生の役割や, 存在意義を自覚す ることを求 め られているものであろ
う.
看護の実践能力の中には患者や家族 とのコミュニケー シ ョンがで きる,患者や家族 に対 して ヒューマ ンケア リングな関係を成立す ることができることが必要 とさ
れている8).学生 は様々な実践能力 を習得す る ことを 期待 されているが,中で も患者や家族 との関係を探 る ことは重要である. また,実習の対象 となる老年期 に ある患者の体験を患者の言葉で聞 くとい う過程が重要 である.学生 にとっては受身的でな く主体的に対象 に 関心、を持ち続 けることを体験 し, また患者 にとって も 学生を相手 に自らの思 いを表出す ることにもなる.
病棟看護師にとって,実習生 に求め られる積極的態 度や,学生 らしい態度などは,学生がすでに持 ってい るべ き資質を問われていると考え られてお り,指導 し て導 いてい くものとは考え られていない9), とい う指 摘 もある.「香水が気 になる」 な どの学生 の態度 は実 習以前 に身 についているもの という見方が強 く出てい るとも考え られる.学生 は看護師 としての職業観を身 につけようとす る途上 にあ り,学生 に課す る期待 は大 きいが,指導 によって導 いてい くという視点 も必要で ある.
【対象の理解】では患者の状態予測や体調への配慮 を期待 していた.学生 は患者の問題を解決す るための 看護過程を展開 しているが,実習開始時の学生 は,覗 時点で見えている患者の状態が主な関心の対象であり, 患者のこれまでや今後の経過 にはなかなか注 目しがた
い ものがある.実習を重ねることで,患者 の現在だけ ではな く,徐々に過去や未来 について も視野が広が っ てい くが,患者理解を促す上で,看護師 は単 に当座 の 症状や訴えのみに関わるのではない, とい うことを伝 える必要がある.老年期 にある患者の遠慮や気遣 いを 感 じ取 ることは難 しい.患者の側では,言わな くて も 学生 はわか って くれるだろう, という思 い もあると推 測 され,実習 に対 して,協力 して もらう時間や患者の 予定 に配慮す る必要性を強調す る必要がある. さらに 病棟看護師は,学生の関わ りが患者 に影響 を与えてい ないか,学生本人 には言 い出 しに くいことを患者が我 慢 していないか,調整す る動 きも必要であろう.
2 実習指導者か ら見た病棟看護師の指導のあ り方 実習 という授業を受 けている学生 にとって,病棟署 護師は重要な役割を担 っている.病棟看護師が責任 ・ 役割を意識 して指導 に携わ っているか否かによって, 学生を見守 る目も大 きく変化す る.関わる病棟看護師 全員が指導上の様々な取 り決めや手法を周知 した上で 指導 に携わるな ら,学生 はさらに伸びていくであろう.
病棟看護師の意識づけとして,看護師全員が指導者で あることを自覚 し,実習の目的を理解 してか ら指導 に 臨めるように周知の方法を考える必要がある.1人の 学生 は,複数の病棟看護師か ら指導を受 けている.指 導す る側の病棟看護師は,患者 ケアの質を保証す るた
阿部縁/病棟看護師の老年看護実習指導 における学生に期待することの分析
めに も,病棟看護師間での学生への指導内容 の共有を 図 ることが必要である.
シフ ト勤務 にある病棟看護師 は実習の指導 に関わ っ た後 の学生 の反応 を振 り返 る機会が少ない.実際にど う感 じたのか評価で きずに実習が終了 して しまうと, 自身 の関わ りが どのよ うな影響 を与 えたか,深 める機 会がない.多少,時間のずれ は生 じて しまうが,記録 を通 して,病棟看護師 にフィー ドバ ックす ることで指 導 のふ り返 りをす ることがで きる.
さ らに,病棟看護師 は学生 に反応を求 めるだけでは な く, 自身 も感 じた ことを素直に学生 に伝えてい く努 力が必要 である. 日々の何気 ない話 しかけで,学生 を 緊張状態か ら解放す ることにつなが り, その場でお互 いに評価 ・修正 で きる場合 もある10).実習指導者 は, 学生 と学生 と病棟看護 師の双方向の コ ミュニケーショ
ンがスムーズにい くよ うに考慮す る必要がある.
カ リキュラムの変遷 により実習時間が短 くな ってお り,限 られた時間を有効活用 して様 々な看護技術を体 験 し学 びを深 める事 を期待す ると同時 に,効果的な実 習 を実施す るために指導者 の存在 は不可欠である.学 生 は実習を重ね体験す ることでは じめて理論 と実践 の 統合が可能 とな り, 自分 の持 っている技術が役立っ こ とを実感 し看護で きる喜 びにつなが るのだ と思 う.莱 習中に様 々な思考 を こらし体験 を重ね ることにより, 現場 での即戟力 ともな りうる.学生への指導 は将来 の 看護 を担 う私 たちの後輩 を育成す ることに もっなが っ ているのである. したが って,実習指導者 は学生が病 棟看護師の助言 を肯定的に受 け止 め られるよ うに学生 と病棟看護師の両者 にかかわることが大切であ り, リ
(61)
ラックスして実習がで きるように実習環境 を調整す る ことが必要 となる.
文 献
1)山田里津監修 :最新看護学教育 ガイダンス (臨地実習 編).医歯薬出版,東京,1996,p75
2)看護行政研究会監修 :看護師等養成所の運営に関す る 指導要領について.看護六法.新 日本法規出版,名古 屋,2002,pp220‑221
3)日本看護協会看護婦職能委員全編 :看護婦業務指針, 日本看護協会出版会,東京,2000,pp3‑4
4)明石恵子,水渓雅子他 :臨地実習教育学習効果 と課題.
看護教育38(2):112‑117,1997
5)雄西智恵美,佐藤碍子他 :臨床実習 における学生 の学 習効果に係わる実習指導者の態度 ・行動一学生 による 臨床実習指導の評価の分析か ら‑. 日本看護学教育学 会誌2(1):23‑31,1992
6)日本看護系大学協議会広報 ・出版委員会 :看護学教育, 日本看護協会出版会,東京,2004,pp7‑ll
7)藤岡完治,相島さい子他 :学生 とともに創 る臨床実習 指導 ワークブック,医学書院,東京,1996,pp2‑12 8)新道幸恵 :実践力を高める教授 ・学習方法 としての実
習, 日本看護学教育学会誌7 (3):47‑54,1997 9)森下路子 :看護学実習の意義 と指導者のあ り方 に関す
る質的研究 ‑実習指導者講習会受講生の レポー トの分 析 ‑. 日本看護学教育学会誌11(3):1‑16,2002 10)宮本真巳 : 「異和感」 と援助者 アイデ ンティティ, 日
本看護協会出版会,東京,1995,pplO5‑114
(62) 阿部縁/病棟看護師の老年看護実習指導 における学生 に期待す ることの分析
AnalysisofWardNurses'ExpectationsofStudents duringGeriatricNursingPractice
MidoriAbe♯ShokoKemuyama‥ SakikoOgasawara‥
*DepartmentofNursing,AkitaUniversityHospital
**CourseofNursing,SchoolofHealthSciences,AkitaUniversity
Thepurposeofthisresearchwastoanalysewhatexpectationswardnurseshaveofstudentsduringnursing practice,andtoobtainsuggestionsregardingtheroleofnursingpracticesupervisor.
Seventeenwardnurseswereaskedtoreportanonymouslyonthefollowingfiveareas: 1.Whethertheyhadbeeninvolvedinstudentsupervision.
2.Difficultiesexperiencedatthetimeoftheactionplanannouncement.
3.DifficultiesexperiencedincarrylngOutproceduresorpatientcarewiththestudent. 4.Patient'sdissatisfactionwithorcomplaintsregardingthestudent.
5.Thoughtsonreadingthestudent'strainlngrecord.
Theresultswereasfollows:
(1)Allofthewardnursessurveyedhadbeeninvolvedinstudentsupervision.
(2)From theirreports,wardnurses'expectationsofstudentscanbebrokendownintothefourcategories: Nursingassistance;Thinkingandrecording;Attitude;Understandingofobjective.
Itwassuggestedthatthenursingpracticesupervisor'srolewastoguidethestudentnursesandtounderstand andadviseonissuesrelatingtosupervISlngStudentsduringnursingpractice.