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37

水耕ポット試験によるキャベツ幼植物のカドミウム吸収に及ぼす 培養液中マグネシウム濃度の影響

渡邉浩一郎 

國松柚美 

渡邉 泉

生命環境学部自然環境学科

生命環境学部自然環境学科卒業生

東京農工大学大学院農学研究院

Effect of magnesium concentration in nutrient medium on the cadmium uptake by cabbage seedlings

Koichiro WATANABE 

Yumi KUNIMATSU 

Izumi WATANABE

Summary

 The effects of different concentrations of magnesium (Mg) in nutrient medium on the growth of, and cadmium (Cd) uptake by seedlings of cabbage ( Brassica oleracea L. cv. Kinkei 201; Sakata Seed Co., Japan) were studied under hydroponic culture.

 The nutrient solutions containing different combinations of 0, 0.44, and 0.89 µmol L

-1

Cd and 1.0, 2.0, and 4.0 mmol L

-1

Mg were applied for a period of 14 days.

 No significant differences in the growth of seedlings were observed with different concentrations of Cd and Mg. The Cd concentration in the shoots grown with the medium containing 2.0 mmol L

-1

Mg or 4.0 mmol L

-1

Mg was significantly decreased to 9%-13% or 4%-24% of those in each 1.0 mmolL

-1

Mg plus 0.44 or 0.89 µmol L

-1

Cd medium, respectively. Higher Mg concentration in the medium resulted in decreased concentration and translocation of Cd in the shoots. The Cd concentration in the roots grown in 4.0 mmol L

-1

Mg plus 0.44 µmol L

-1

Cd medium decreased to 74%-88%of those in 1.0 mmol L

-1

Mg plus 0.44 µmol L

-1

Cd medium, however, no difference was observed using different Mg concentrations plus 0.89 µmol L

-1

Cd medium.

 The Mg concentration in the shoots with 4.0 mmol L

-1

Mg was 1.6-times higher than that in 1.0 mmol L

-1

Mg plus 0.44 µmol L

-1

Cd medium, but no difference in the Mg concentration in the shoots was observed in each concentration of Mg plus 0.89 µmol L

-1

Cd medium, respectively. The Mg concentration in the roots with 4.0 mmol L

-1

 Mg was 1.6-1.8 - times higher than that with 1.0 mmol L

-1

Mg plus 0.44 or 0.89μ mol L

-1

Cd medium.

 When the Mg concentration in the medium became higher, the concentrations of Cd in the shoots were decreased. These results indicate that the lower Cd concentration and higher Mg concentration in shoots was due to high Mg concentration in the culture medium.

キーワード:カドミウム、マグネシウム、水耕栽培、キャベツ、幼植物 Keywords:cadmium, magnesium nutrient medium, cabbage, seedling

1.緒 言

 カドミウム(Cd)は植物およびヒト、動物に とって必須ではない有害元素である。国連食糧農業 機関・世界保健機関のコーデックス食品規格委員会 で、1995年から2006年にかけて、野菜、豆、穀類 等の農作物の Cd 濃度について議論され、最大レベ ル(基準値)が国際的な基準として定められてい る

1,2)

。我が国には、廃坑山、旧製錬所、Cd 使用 工場等から排出された Cd により汚染された農耕地 も存在しており、農作物中の Cd 濃度の一層の低減 を図る技術開発が進められている

3)

 農作物による土壌からの Cd 吸収を低減する方法 として、アルカリ資材の施用が知られる。アルカ リ資材の施用による植物の Cd 吸収の抑制は、土壌 pH が高くなることで、Cd の土壌溶液への溶解度 が低下し、植物への可給性が低くなることによると

報告されている

4~6)

。また、土壌 pH が等しくなる ように異なるアルカリ資材を施用した場合、資材 の種類により植物の Cd 吸収抑制に対する効果が異 なる例も報告されている

7~ 11)

。さらに、炭酸カル シウム(CaCO

3

)または CaCO

3

と炭酸マグネシウ ム(MgCO

3

)の混合物である苦土石灰の施用によ り土壌 pH を同じ値になるように高くした場合、オ クラの Cd 吸収抑制に対する効果は苦土石灰を施用 した方が高いこと

10)

、キャベツ幼植物の Cd 吸収の 抑制効果が MgCO

3

施用の方が CaCO

3

施用よりも高 いこと

11)

が報告されている。これらの結果から Mg の方が Ca よりも植物の Cd 吸収を抑制する効果が 高いと考えられる。

 一方、植物の Cd 吸収と Mg の関係については、

水酸化マグネシウム施用によりダイズの Cd 吸収が

抑制されること

12,13)

が、酸化マグネシウム施用によ

(2)

渡邉浩一郎 國松柚美 渡邉 泉

38

り水稲の Cd 吸収が抑制されること

14)

がそれぞれ報 告されている。また、オオムギでは Cd の茎葉部へ の移行が高濃度の Mg により阻害されること

15,16)

が 報告されている。また、シロイヌナズナでは低 Mg 条件下で Cd 耐性が促進されること

17)

も報告されて いる。

 しかし、Cd を吸収しやすいといわれるアブラナ 科葉菜類については、Cd 吸収に及ぼす Mg の影響 を調べた報告はみあたらない。また、アブラナ科葉 菜類は、コーデックス委員会で Cd の基準値が他の 農作物に比べて低く定められている。従って、農作 物として利用されるアブラナ科葉菜類について、茎 葉部 Cd 濃度に及ぼす Mg の影響を調べることは、

Cd 吸収抑制技術の確立に寄与する基礎的知見を得 る上でも重要である。

 本研究では、アブラナ科葉菜類のうち生産量が多 いキャベツを供試し、水耕ポット試験により培養液 中 Mg 濃度が Cd 吸収に及ぼす影響を調べたので報 告する。

 なお、水耕ポット試験を行ったのは以下の理由に よる。土壌にアルカリ資材で Mg を施用した場合、

Mg が施用されるだけでなく土壌 pH も高くなる。

また、Mg 塩を添加した場合には下層への溶脱によ る影響が生じることも考えられる。一方、水耕ポッ ト栽培試験では、Mg 添加時の pH の調整が比較的 容易で、Mg が植物体に直接に及ぼす影響を調べら れると考えたことによる。

2.実験方法

  キ ャ ベ ツ( Brassica oleracea L. 品 種 : 金 系201 号;(株)サカタのタネ)を供試し、種子を次亜 塩素酸ナトリウム溶液(有効塩素0.5%)で滅菌し た後、市販ウレタン培地に播種した(2015年7月 2日)。1/10倍に希釈した Hoagland-Arnon 培養 液(pH5.7)を適宜与えながら第一本葉が展開す るまで人工光型植物育成装置(小糸工業(株)製 パーソナルグロースキャビネット;コイトトロン HNM-S11型)で育苗した。育苗条件は、装置内床 面の平均光強度約200μmolm

-2

S

-1

、明期14時間、暗 期10時間、温度は明期24℃、暗期19℃とし、相対湿 度は約70%であった。

 育苗した植物体を500mL 容ポリプロピレン製容 器に移植し(同年7月20日)、1/5~1/2倍に 希釈した Hoagland-Arnon 培養液(pH5.7)を用い て、本学上野原キャンパス(山梨県上野原市)構 内に設置した自然光型ファイトトロン(小糸工業

(株)製コイトトロン S-180)内で水耕栽培を行っ た。温度は昼27℃、夜22℃、相対湿度は約70%に設 定した。

 培養液中 Cd および Mg 濃度を変化させた試験 は、培養液中 Mg 濃度1.0 mmol L

-1

の1/2倍希釈 Hoagland-Arnon 培養液を対照として、試薬特級硫 酸カドミウム水溶液、試薬特級硫酸マグネシウム 水溶液をそれぞれ供し、Cd 濃度0, 0.44, 0.89μ mol L

-1

の3区を設け、さらに各 Cd 濃度において Mg 濃度を1.0, 2.0および4.0 mmol L

-1

と変化させた3区 を設けることにより行った。試験に用いた培養液 の pH はすべて5.7に調整した。なお、標準濃度の Hoagland-Arnon 培養液の Mg 濃度は2.0 mmol L

-1

で あるが、幼植物を供した試験では1/2倍程度に希 釈して使用することが多い。

 試験は、1株 / ポット、各区4連で、同年7月27 日~8月10日の14日間行った。この間、培養液の交 換を1日おきに行った。

 サンプリング後、茎葉部と根部に分け、80℃で48 時間通風乾燥後、乾物重を測定した。また、茎葉部 および根部をそれぞれ硝酸 - 過塩素酸法により湿式 分解し、Cd および Mg 濃度を内標準元素にロジウ ム(Rh)を用いて ICP-MS 法で定量分析した。な お根部については、試料量が少なかったため、試験 区毎に4連分をまとめて湿式分解し、分析に供し た。

 得られた結果については t-test により有意差検定 を行った。なお有意差検定結果については、各培養 液中 Cd 濃度において、p<0.05で有意差が認められ た場合にのみ異なるアスタリスク(*)数で示し た。

3.結 果

(1)植物体の生育

 植物体の生育を茎葉部および根部の1個体あたり の乾物重で示し、図1に表した。

 茎葉部の乾物重は0.63~1.0 g個体

-1

、根部は0.06

~ 0.09 g 個体

-1

であり、いずれも培養液中 Cd およ び Mg 濃度による有意な差はみられなかった。

(2)植物体中 Cd 濃度と1個体あたりの Cd 含有量  植物体中 Cd 濃度を図2に表した。

  茎 葉 部 Cd 濃 度 は、Cd0.44μ mol L

-1

区 で は、

Mg2.0 mmol L

-1

区および Mg4.0 mmol L

-1

区で Mg1.0

mmol L

-1

区(23.8μ g 乾物g

-1

)の9~ 13%に有意

に低下した。また Cd 0.89μ mol L

-1

区では、Mg2.0

(3)

39 mmol L

-1

区で Mg1.0 mmol L

-1

区(22.9μ g 乾物 g

-1

) の24 % に、Mg4.0 mmol L

-1

区 で Mg1.0 mmol L

-1

区 の4%に、それぞれ有意に低下することが示され た。

 根部 Cd 濃度は、Cd0.44μ mol L

-1

区では、Mg2.0 お よ び Mg4.0mmol L

-1

区 で Mg 1.0mmolL

-1

区(663 μ g 乾物 g

-1

)の74 ~ 88%に低下した。しかし、

Cd0.89μ mol L

-1

区では660 ~ 690μ g 乾物 g

-1

と大き な変化はみられなかった。

 次に、植物体1個体当たりの Cd 含有量を図3に 表した。

 茎葉部 Cd 含有量は、Cd0.44μ mol L

-1

区では、

Mg2.0 mmol L

-1

区および Mg4.0 mmol L

-1

区で Mg1.0 mmol L

-1

区(15μ g 個体

-1

)の9~ 16%に有意に低 下した。また Cd0.89μ mol L

-1

区では Mg2.0 mmol L

-1

区 で Mg1.0 mmol L

-1

区(20μ g 個 体

-1

) の15 % に、Mg4.0mmol L

-1

区では Mg1.0mmol L

-1

区の4%

に、それぞれ有意に低下した。

  根 部 Cd 含 有 量 は、Cd 0.44μ mol L

-1

区 で は Mg2.0 mmol L

-1

区 お よ び Mg4.0 mmol L

-1

区 で Mg1.0 mmol L

-1

区(49μ g 個体

-1

)の56 ~ 66%に 低下した。一方 Cd 0.89μ mol L

-1

区では、51 ~ 59 μ g 個体

-1

であった。

 さらに、茎葉部と根部の1個体当たりの Cd 含有 量(図3)から、Cd の茎葉部と根部の分配率を算 出したところ、Cd の茎葉部への分配率は、培養液 中 Mg 濃度が高くなるに従い、Cd 0.44μ mol L

-1

区 では24%から5~7%へと、Cd0.89μ mol L

-1

区で は27%から1~6%へと、いずれも低下する傾向が みられた。

(3)植物体中 Mg 濃度と1個体あたりの Mg 含有量  植物体中 Mg 濃度を図4に表した。

  茎 葉 部 Mg 濃 度 は、Cd 0μ mol L

-1

区 の Mg2.0 および4.0mmol L

-1

区で Mg1.0 mmol L

-1

区(6.5 mg 乾 物 g

-1

) よ り も2.2 ~ 2.6倍 有 意 に 高 く な っ た。

Cd0.44μ mol L

-1

区でも Mg2.0および4.0 mmol L

-1

区 で Mg1.0 mmol L

-1

区(4.9 mg 乾物 g

-1

)よりも1.2 ~ 1.6倍有意に高くなったが、Cd0.89μ mol L

-1

区では 培養液中 Mg 濃度の違いによる有意な差はみられな かった。

 根部 Mg 濃度は、培養液中 Mg 濃度が高くなる に従い、Cd 0μ mol L

-1

区で3.8 mg 乾物 g

-1

(Mg1.0 mmol L

-1

区)から5.9mg乾物g (Mg4.0 mmol L

-1 -1

区)

へと、Cd0.44μ mol L

-1

区で3.5 mg 乾物 g

-1

(Mg1.0 mmol L

-1

区)から6.2mg乾物g (Mg4.0 mmol L

-1 -1

区)

10

図 1 キャベツ幼 植 物 体 の生 育 に及 ぼす培 養 液 中 Mg 濃 度 の影 響 (n=4)

図 2 キャベツ幼 植 物 体 の Cd 濃 度 に及 ぼす培 養 液 中 Mg 濃 度 の影 響 (n=4(茎 葉 部 ),1(根 部 ), 茎 葉 部 では各 培 養 液 中 Cd 濃 度 において異 なるアスタリ スク数 間 で p<0.05 で有 意 差 あり)

図1 キャベツ幼植物体の生育に及ぼす培養液中 Mg 濃 度の影響(n=4)

図2 キャベツ幼植物体の Cd 濃度に及ぼす培養液中 Mg 濃度の影響(n=4(茎葉部),1(根部),茎葉部で は各培養液中 Cd 濃度において異なるアスタリス ク数間で p<0.05で有意差あり)

(4)

渡邉浩一郎 國松柚美 渡邉 泉

40

へと、Cd0.89μ mol L

-1

区では3.1 mg 乾物 g

-1

(Mg1.0 mmol L

-1

区)から5.3 mg 乾物 g

-1

(Mg4.0 mmol L

-1

区)へと、1.6 ~ 1.8倍高くなる傾向がみられた。

 次に、植物体1個体当たりの Mg 含有量を図5に 表した。

  茎 葉 部 Mg 含 有 量 は、Cd 0μ mol L

-1

区 で は Mg2.0 mmol L

-1

区 お よ び Mg4.0 mmol L

-1

区(12

~ 14 mg 個体

-1

)で Mg1.0 mmol L

-1

区(7 mg 個 体

-1

)よりも有意に高かった。また Cd 0.44μ mol L

-1

区 で は Mg4.0 mmol L

-1

区(5 mg 個 体

-1

) で Mg1.0 mmol L

-1

区(3 mg 個体

-1

)よりも有意に高 くなったが、Cd0.89μ molL

-1

区では培養液中 Mg 濃 度の違いによる有意な差はみられなかった。

 根部 Mg 含有量は、いずれの培養液中 Cd 濃度に おいても、Mg 1.0 mmol L

-1

区および Mg 2.0 mmol L

-1

区(0.23 ~ 0.28 mg 個体

-1

)よりも Mg4.0 mmol L

-1

区(0.35 ~ 0.49 mg 個体

-1

)の方が1.4 ~ 2.0倍高

くなる傾向がみられた。

 また、茎葉部と根部の1個体当たりの Mg 含有量

(図5)から、Mg の茎葉部と根部の分配率を算出 したところ、茎葉部には91~98%が存在していた。

(4)Cd および Mg の濃縮係数

 濃縮係数とは、環境中の種々の物質が生物体内に 高濃度で濃縮される場合、その程度を示す係数であ る

18)

。濃縮係数=対象物質の生物体内の濃度 / 対象 物質の外界における濃度で求められる

18)

 図2および図4のグラフを作成する際に算出した 植物体茎葉部または根部の Cd、Mg 濃度を、栽培 した培養液中の Cd、Mg 濃度で割ることにより、

濃縮係数を求めた。その結果を表1に表した。

 茎葉部の Cd の濃縮係数は、Cd0.44μ mol L

-1

区で は培養液中 Mg 濃度が1.0 mmol L

-1

から2.0 mmol L

-1

になると約1/7に、4.0 mmol L

-1

になると約1/12

図3 キャベツ幼植物体の Cd 含有量に及ぼす培養液中

Mg 濃度の影響(n=4(茎葉部),1(根部),茎葉 部では各培養液中 Cd 濃度において異なるアスタ リスク数間で p<0.05で有意差あり)

図4 キャベツ幼植物体の Mg 濃度に及ぼす培養液中 Mg 濃度の影響(n=4(茎葉部),1(根部),茎葉部で は各培養液中 Cd 濃度において異なるアスタリス ク数間で p<0.05で有意差あり)

12

図 3 キャベツ幼 植 物 体 の Cd 含 有 量 に及 ぼす培 養 液 中 Mg 濃 度 の影 響 (n=4(茎 葉 部 ),1(根 部 ), 茎 葉 部 で は各 培 養 液 中 Cd 濃 度 において異 なるアスタリスク 数 間 で p<0.05 で有 意 差 あり)

13

図 4 キャベツ幼 植 物 体 の Mg 濃 度 に及 ぼす培 養 液 中 Mg 濃 度 の影 響 (n=4(茎 葉 部 ),1(根 部 ), 茎 葉 部 で は各 培 養 液 中 Cd 濃 度 において異 なるアスタリスク 数 間 で p<0.05 で有 意 差 あり)

(5)

41

水耕ポット試験によるキャベツ幼植物のカドミウム吸収に及ぼす培養液中マグネシウム濃度の影響

に低下した。また Cd0.89μ mol L

-1

区では培養液中 Mg 濃度が1.0 mmol L

-1

から2.0 mmol L

-1

になると約 1/4に、4.0 mmol L

-1

になると約1/26に低下した。

 茎葉部の Mg の濃縮係数は、培養液に Cd を添 加しない場合には、培養液中 Mg 濃度が1.0 mmol L

-1

から2.0 mmol L

-1

になるとわずかに大きくなっ たが、4.0 mmolL

-1

になると約2/3に低下した。

ま た Cd0.44μ mol L

-1

区 で は 培 養 液 中 Mg 濃 度 が

1.0 mmol L

-1

から2.0mmol L

-1

になると約3/5に、

4.0 mmolL

-1

に な る と 約 2/5 に 低 下 し、Cd0.89μ mol L

-1

区では培養液中 Mg 濃度が1.0 mmol L

-1

から 2.0mmol L

-1

になると約2/5に、4.0 mmol L

-1

になる と約1/4に低下した。

 一方、根部の Cd の濃縮係数には、Cd 0.44μ mol L

-1

区では培養液中 Mg 濃度が1.0 mmol L

-1

から2.0お よび4.0 mmol L

-1

になるとわずかに低下する傾向が

14

図 5 キャベツ幼 植 物 体 の Mg 含 有 量 に及 ぼす培 養 液 中 Mg 濃 度 の影 響 (n=4(茎 葉 部 ),1(根 部 ), 茎 葉 部 で は各 培 養 液 中 Cd 濃 度 において異 なるアスタリスク数 間 で p<0.05 で有 意 差 あり)

14

図 5 キャベツ幼 植 物 体 の Mg 含 有 量 に及 ぼす培 養 液 中 Mg 濃 度 の影 響 (n=4(茎 葉 部 ),1(根 部 ), 茎 葉 部 で は各 培 養 液 中 Cd 濃 度 において異 なるアスタリスク数 間 で p<0.05 で有 意 差 あり)

図5 キャベツ幼植物体の Mg 含有量に及ぼす培養液中 Mg 濃度の影響(n=4(茎葉部),1(根部),茎葉部では各培養液 中 Cd 濃度において異なるアスタリスク数間で p<0.05で有意差あり)

表1 キャベツ幼植物体の茎葉部および根部における Cd および Mg の濃縮係数

培 養 液 中 濃 度 濃 縮 係 数

茎 葉 部 根 部

Cd Mg

Cd Mg Cd Mg

(μmol L

- 1

) (mmol L

- 1

)

0

1.0

268

158

2.0 299 95

4.0 176 61

0.44

1.0 481 201 13 143

2.0 65 125 12 86

4.0 42 80 10 64

0.89

1.0 237 201 7 128

2.0 57 77 7 79

4.0 9 54 7 55

表 1 キャベツ幼 植 物 体 の茎 葉 部 および根 部 における Cd

および Mg の濃 縮 係 数

(6)

渡邉浩一郎 國松柚美 渡邉 泉

42

みられたが、0.89μ molL

-1

区では培養液中 Mg 濃度 の変化はみられなかった。また、根部の Mg の濃 縮係数は、Cd を添加しない場合、Cd 0.44および 0.89μ mol L

-1

区のいずれも、培養液中 Mg 濃度が1.0 mmol L

-1

から2.0 mmol L

-1

になると約3/5に、4.0 mmol L

-1

になると約2/5に低下した。

4.考 察

 本研究において培養液に Cd を添加して栽培した キャベツ幼植物体の茎葉部 Cd 濃度は0.8 ~ 23.8μ g 乾物 g

-1

であったが、設定した培養液中 Cd 濃度お よび Mg 濃度では、植物体の生育に阻害はみられな かった。我が国において、Cd の平均濃度が最も高 い葉菜としてキャベツの Cd 濃度が0.16mg FW kg

-1

と報告されている

19)

。この数値を水分含有率90 ~ 95%と仮定して乾物あたりに換算すると1.6 ~ 3.2μ g 乾物g

-1

と算出された。本研究で培養液の Mg 濃 度を2.0mmolL

-1

にして栽培した植物体中 Cd 濃度は 3.2および5.5μ g 乾物g

-1

、4.0mmolL

-1

では2.1および 0.85μ g 乾物g

-1

であり、上述の報告

24)

のキャベツ の Cd 濃度とほぼ同程度かやや高い程度であった。

農作物を対象とした場合には、Cd による生育阻害 がみられない Cd 濃度でも、Mg 施用濃度を高くす ることにより植物体の Cd 濃度が低下することが明 らかにされることにより、植物体 Cd 濃度を抑制す る方法として Mg 施用が有用であると考えられる。

 著者らは既報

11)

で、Cd 添加土壌を用いた土耕 ポット試験においてキャベツ幼植物の Cd 吸収に及 ぼす炭酸マグネシウム(MgCO

)施用の影響を調 べている。その結果、土壌の全 Cd 濃度が1.0μ gg

-1

となるように Cd を添加した場合、Mg 施用濃度を 0.31mg 乾土 g

-1

から0.71mg 乾土 g

-1

に高くすると、

茎葉部 Cd 濃度は3.9μ g 乾物 g

-1

から2.6μ g 乾物 g

-1

と約67%に有意に低下することを、また、茎葉部 Mg 濃度は55mg 乾物 g

-1

から73 mg 乾物 g

-1

と約1.3 倍に有意に高くなることを報告した

11)

 本研究の培養液中 Cd 濃度は、Cd0.44μ molL

-1

区 は0.05μ g mL

-1

、Cd0.89μ mol L

-1

区は0.1μ g mL

-1

であり、既報

11)

の Cd 添加土壌の全 Cd 濃度(1.0 μ gg

-1

)の1/20または1/10である。本研究の水 耕ポット試験では、茎葉部 Cd 濃度は、22.9 ~ 23.8 μ g 乾物g

-1

(培養液中 Mg 濃度1.0mmolL

-1

)から 0.8 ~ 5.5μ g 乾物g

-1

(培養液中 Mg 濃度2.0、4.0 mmol L

-1

)と4~ 24%に有意に低下した。培養液 中 Mg 濃度が低いときの茎葉部の Cd 濃度は、上述 の土耕ポット試験の結果よりも約6倍も高い濃度で

あったが、培養液中 Mg 濃度を高くした場合には土 耕ポット試験の結果とほぼ同程度となった。

 一方、本研究の培養液中 Mg 濃度は、Mg1.0mmolL

-1

は0.024 mg mL

-1

、Mg2.0mmolL

-1

は0.048mg mL

-1

、 Mg4.0mmolL

-1

は0.072 mg mL

-1

であり、既報

11)

で土壌 に与えた Mg 濃度の1/13 ~1/10である。本研究の 水耕ポット試験では、茎葉部 Mg 濃度は、上述の土 耕ポット試験の結果の約1/11 ~1/9であった。ま た、培養液中 Cd 濃度0.44μ mol L

-1

区では、培養液中 Mg 濃度2.0、4.0 mmol L

-1

区の茎葉部 Mg 濃度は、6.1

~ 7.8mg 乾物g

-1

と培養液中 Mg 濃度1.0mmolL

-1

区に 比べて1.2 ~ 1.6倍に高くなったが、培養液中 Cd 濃度 0.89μ mol L

-1

区では培養液中 Mg 濃度の違いによる差 はみられなかった。

 これらのことから、培養液と土壌を用いた場合 では、Cd 添加および Mg 施用が茎葉部の Cd 濃度 や Mg 濃度の変化に及ぼす影響には相違がみられ ることが示唆される。その要因として、土壌に Cd や Mg を添加した場合には、土壌粒子に吸着された り、あるいは下方に溶脱されたりして、Cd や Mg の植物への可給性が培養液と異なることについても 考慮しなければならないと考えられる。

 本研究では、培養液中 Mg 濃度を高くすると、茎 葉部の Cd 濃度、1個体あたりの Cd 含有量および 茎葉部への Cd の分布率、Cd の濃縮係数が低下す ることが示された。また茎葉部の Mg については、

濃縮係数は低下するものの、Mg 濃度、1個体あた りの Mg 含有量は高くなる傾向がみられた。これら のことから、培養液中 Mg 濃度を高くすることに より生じた茎葉部 Cd 濃度の低下は、茎葉部におけ る Mg 濃縮による影響を受けているものと考えられ る。

 根部については、植物体の Cd 濃度および Cd 含 有量は培養液中 Cd 濃度0.44μ molL

-1

区では培養液 の Mg 濃度が高くなるに従い低下する傾向がみられ た。また、Cd 0.44μ molL

-1

区では根部の Cd の濃縮 係数は培養液中 Mg 濃度を高くするとやや低下する 傾向がみられた。これらのことから、根部におけ る Cd の吸収および集積には培養液中 Mg の影響は ほとんどみられないと考えられる。ただし、根部の Cd および Mg 濃度については、試料量が少なかっ たため試験区毎にまとめて分析した結果である。そ のため解析精度は茎葉部に比べて劣る。したがっ て、今後、精度を高めた詳細な検討を行う必要があ る。

 水耕オオムギでは、培養液中 Mg 濃度を1mmolL

-1

(7)

43 から10mmolL

-1

に高くすることにより、植物体の Cd

吸収量が低下すること、Mg 蓄積量が低い葉で Cd 蓄積量が増加することから、Mg は植物体内での Cd の転流に影響する可能性が示唆されている

15)

。 また、高濃度の Mg が Cd の根からの吸収よりも茎 葉部への移行を阻害することにより、茎葉部 Cd 濃 度が低下することも報告されている

16)

 したがって、本研究において培養液中 Mg 濃度 を高くすることによって生じたキャベツ幼植物体 の茎葉部 Cd 濃度の低下は、茎葉部への Cd の移行 が Mg により抑制されたためではないかと考えられ る。しかし、低 Mg 濃度下で植物の Cd 耐性が促進 されるという報告

17)

もあり、Mg が Cd の吸収およ び茎葉部への移行に及ぼす影響については、今後、

さらに詳細な検討も必要である。

 一方、国連食糧農業機関・世界保健機関のコー デックス食品規格委員会が定めたアブラナ科葉菜類 の Cd 濃度の基準値は0.05mg/FW kg といわれてい る

1)

。この数値は水分含有率90 ~ 95%と仮定して 乾物あたりに換算すると0.5 ~ 1.0μ g 乾物g

-1

と推 定される。本研究における Cd 添加区のキャベツ幼 植物体の茎葉部 Cd 濃度は0.8 ~ 23.8μ g 乾物g

-1

で あり、基準値よりも1.6 ~ 48倍高い。今後、本研究 よりも Cd 濃度が低いレベルで Mg 施用により Cd 濃度が基準値よりも低下する現象がみられるのか否 か、またその機構についても明らかにする必要があ る。

5.引用および参考文献

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参照

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