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数理解析学4・講義ノート

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Academic year: 2021

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数理解析学4・講義ノート

第5回

(202011 4()配信分)

6 Traizet

の仕事

1(

)

 以下、都合により種数は G, ends の個数はN で表す。

 全曲率有限な完備極小曲面は平面、catenoid の他に久しく知られていなかった。Costa によって発見された第3の例は, 正方形の対辺を同一視して得られるT2 から3点を除い Riemann面上で定義されたもので、D2 の作用で不変なものであった。Hoffman-Meeks はこれらを一般化し、まず種数 G 2 Riemann 面から 3 点を除いた所で定義され、

DG1 の作用で不変な例を構成して見せた。彼らはその後も、偶数種数で4 点を除いた例 など、次々に新しい例を構成していった。それらの族の極限として、handle の列の部分 Sherk saddle towerに収束することに着目した Kapouleasは、同じ軸を持ついくつ かの平面もしくは catenoids の組に、saddle tower を張り付けた極限状態に陰関数定理を 用いて、はるかに多くの例の存在を一時に示した。しかし、これらの例は基本的に、何ら かの対称性を仮定したものであった。

 一方、T2 から3点を除いた所で定義される極小埋め込みはCosta により分類され、一 般には必ずしもD2 の作用で不変である必要はなく、上と下の handleの取り付け位置の 異なる1 パラメーター族を作っていることが明らかになった。この族の極限においては、

必ずしも同じ軸を持たないいくつかの平面もしくは catenoids が、十分離れた所で小さな

handle によって結ばれている状態となる。ここで、既知の事実とそれに関わる予想につ

いて、もう一度整理しておこう。M(G, N)を種数Gの埋め込まれたN-noidsの空間(を 相似変換群で割った商空間)とし、M(G,3)⊃ C(G) を種数 G Costa-Hoffman-Meeks 1-parameter 族とする。

事実

(1) M(0,1) = {平面}.

1

(2)

(2) M(0,2) = {catenoid}.

(3) M(0, N) = (∀N 3) (Lopez-Ros).

(4) M(G,2) = (∀G≥1) (Schoen).

(5) M(1,3) = C(1).

予想

(1) M(G, N) = (∀N ≥G+ 3) ? (Hoffman-Meeks).

(2) M(G,3) = C(G) (∀G≥2) ?.

GN 1 2 3 4 5 · · ·

0 plane catenoid × × × · · ·

1 × × Costa ×? × ? · · ·

2 × × HM? × ? · · ·

3 × × HM?

0 . . . . . . . . .

 この節で紹介しようと思う Traizet ’02 年の仕事は、Costa 1パラメーター族の極 限のような対称性の低い極限状態から陰関数定理によって多くの非対称な例の存在を示そ うと言うものである。

 なぜわざわざ極限状態から始めるかと言う点について触れておくと、一般に種数とends の個数が同じクラスの内で、概ね、極小曲面が最も対称性の高いものから発見されて来た のは、要するに計算がしやすいからであった。ところが、これらの例の次に高い対称性が 実現されるのが、極限状態なのである。曲面としては壊れているが、拡大してみると、各 ピースがちゃんときれいな曲面となっている。その傍証として、次の結果を挙げておく。

これは Choi-Schoen, Whiteらによって得られ、Ros によって整理されたものである。

定理6.1.(Ros,’95) (G, N) 6= (0,1)とする。M(G, N)⊃ {Mn} に対し、その部分列が 下記の意味で{M1,, . . . , Mm,} に収束する。

∀n N に対し、相似変換 φi,n (i = 1, . . . , m) が存在して、∀R > 0 に対し、Bi,n :=

φi,n1(B(0, R)),Mi,n :=Mn∩Bi,n とおくならば、次が成り立つ。

(1) C(Mn) = mi=1C(Mi,).

2

(3)

(2) φi,n(Mn) Mi, B(0, R) 上一様収束する。

φi,n(Mi,n) =φi,n(Mn)∩B(0, R)Mi, B(0, R)上一様収束する。)

(3) nR が存在して、∀n≥nR に対して、

Bi,n∩Bj,n (∀i6=∀j = 1, . . . , m).

∀k = 1, . . . , N に対し、x1x2-平面から数個の閉球を除いた領域上の関数のグラフk,n

が存在して、Mn の一つの end k 段目のend と呼ぶ)を含む。

Mn =mi=1Mi,nNk=1k,n

 さて、 Traizet の考えたのは、この各 X,i が全てcatenoid と言う場合と言う訳であ る。

 彼の得た定理は次のようなものである。少し長いが……。

定理6.2.(論文の定理 1 ) 変形の極限におけるデータは次を満たすとする。

Ck (k = 1, . . . , N) N 個のends に対応する複素平面を下から順に番号付けしたもの。

qi C(i= 1, . . . , m) 上向きに handleを付ける位置。

ただしどの平面に付けるかと言うと

Nk=11Ik ={1, . . . , m} disjoint union, i∈Ik のとき、qi Ck Ck+1 とを結ぶ。

Ik 6=, mk = #Ik とする。

˜ak R+ (k = 1, . . . , N 1) qi (i Ik) につける handle の大きさ( weight ではない ので正)。

Fi =

jIk;j̸=i

a2k

qi−qj

jIk±1

˜ ak˜ak±1

qi+qj (i∈Ik;kは奇数)

jIk;j̸=i

a2k

−qi+qj

jIk±1

˜ aka˜k±1

−qi−qj (i∈Ik;kは偶数)

W =

iIk;k:odd

qiFi+

iIk;k:even

(−qi)Fi =

N1 k=1

mk(mk1)˜a2kN2

k=1

mkmk+1˜ak˜ak+1 とおく。(注: Traizet は、これ( Fi )を force と呼んでいるが、実際には、消えてほ しい水平方向の周期(すなわち flux の虚部に相当するもの)として用いている。極限が

catenoid のときは、消える条件式が同じになる。)

(1) Fi = 0 (i= 1, . . . , m)

(2) Cm 3(qi)7→(Fi)Cm rankm−2 3

(4)

(3) RN1 3ak)7→W R rank 1

を全て満たす handleの位置と大きさの組(qi,˜ak)i=1,...,m;k=1,...,N1 に対し、t0 のとき、

これらを「実現」する極限に収束する、t を含めてN−1パラメーター族の極小曲面が存 在する。特に、極限における end k の大きさは、

ck := (1)kak=mk1a˜k1−mka˜k (k = 1, . . . , N)

を満たす。(ただし、形式的に a˜0 = ˜aN = 0 とする。)この値が単調増加ならば、十分小

さいt >0 に対して、この極小曲面は埋め込みである。

 極小曲面のみが主題の集中講義なら、以下、2コマくらいかけて、§4 で確認した事項 に沿って、その証明のあらましを解説するところなのであるが、今回は省略することとし たい。

参考文献

Traizet:An embedded minimal surface with no symmetries, J. Differential Geom. 60(2002)103- 153.(Theorem 1)

4

参照

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