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循環構造: 環境問題への方法論的アプロ-チ

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循環構造: 環境問題への方法論的アプロ‑チ

著者 龍 世祥

雑誌名 金沢大学経済論集 = The Economic Review of Kanazawa University

34

ページ 43‑97

発行年 1997‑03‑21

URL http://hdl.handle.net/2297/37244

(2)

自然・人間・経済を含む広義再生過程と その循環構造

一環境問題への方法論的アプローチー

龍 世 祥

I は じ め に

Ⅱ 広 義 再 生 産 過 程 と 「 人 間 中 心 」 の 調 和 的 論 理

Ⅲ自然再生産、人間再生産、経済再生産の内部循環構造と異質性

Ⅳ広義再生産循環構造の全体的把握と関連性

V第0次産業の拡大による不調和循環からの調和循環への転換

Ⅵ 結 語

I は じ め に

これまでの人類の活動、特にその産業活動の国内的、かつ国際地域的な展 開によって、貧困からの脱却を目指す経済成長が達成されると同時に、その 基本的生存条件の崩壊という一層深刻な「貧困」をもたらす自然環境破壊が、

現れている。このような「貧困から『貧困』へ」の「悪循環」に巻き込まれ ている今日の人類は、経済成長をとる.か、自然環境保全をとるかに迷いなが ら、経済成長と環境保全が両立できる道をも探し求めている。つまり、今日 の世界は、21世紀に向かって「人間と人間との共生」(平和)と「人間と自 然との共生」(発展)という二つの課題に直面している。ところが伝統経済 理論には、その研究対象と理論視野の狭さにより上記の今日的課題に応えら れない限界があることが明確に認識され始めている。

このような時代的挑戦を受けて、高度成長期の後半期以降、「生命系のエ コノミー」や「エコロジーの経済理論」や「環境経済学」等を代表として、

自然要因を組み込んだ(或いは重視した)「広義経済学」という問題を関連 研究者が行なってきた。この意味においては、経済学の一つの革命時代が始

− 4 3 −

(3)

まっていると言ってもよいであろう。

このような時代的要請に対して、筆者は、人間・自然・財を含む広義経済 過程を経済諸問題研究の今日的な基本的視角として構築するべきだと主張し ている。人間の再生産過程と自然環境再生産過程をも理論対象として経済学 体系の中にいれるのは、様々な基礎的な理論問題が出てくる故に、それほど 簡単にいえることではないと思われるが、本論文では、人間と自然環境をも 含む経済過程の基本構成とその循環構造について分析を試みたいと思う。と ころが、経済過程という問題を提起すると、一般的に言えば、素材側面からの 分析と体制側面からの分析が共に必要であるが、本論文では、とりあえず前 者の側面から試論してみようと思う。

Ⅱ広義再生産過程と「人間中心」の調和的論理

1広義再生産過程の構築

従来、伝統的な経済学の理論体系では、財(物的な生産品という有形財 と非物的なサービスという無形財を含む。以下同)の生産、流通、分配、

消費等の諸局面(以下、概念的に区別するために、これを経済再生産過程 と言うことにする)については、それぞれ、それなりに主題として取り扱 われてきたと言ってよい。これは、周知の通りで経済学界における諸派の 理論を取り上げて釈明することが必要でなく、国民経済計算理論に一般 にとらえられた経済循環(図表を参照)を一見すれば、よく分かると思う。

すなわち、国民経済計算理論は従来の経済理論に基づいて次のような考え 方によって成立してきたのである。「それは、すべての経済活動を、生産、

所得の分配・使途、及び蓄積という基本的変換するというやり方である。

この方針に従うならば、経済循環は、生産、所得の分配・使途、及び蓄積 プロセスが閉鎖的・自己充足的に同時に進行する姿であるということがで

きる。」(武野、p.4)

ここでは、見られたのはただ生産、分配、使途、蓄積等の経済活動によ る一定の期間内のストックの増加(経済成長)であり、他方、人間それ自 体、特に自然環境の局面については、いわば「経済外的問題」とみなされ、

(4)

プ ロ

生産活動 所得の配分・使途活動

期末ストック 期首ストック

蓄積活動

ス ト ッ ク

出所:武野、1993年、p、4..

図1国民経済計算理論にとらえられた経済循環図

少なくとも、経済理論の体系上においてそれらは根本的な視野から捨象さ

れてきたのがこれまでの一般的状況であったと言える。

ところが、人間社会全体の活動には、上記のような経済再生産過程の一 方だけではなく、他方、人間自身の再生産過程を含んでいる。つまり、そ れは、エンゲルスが「二種類の生産」と云った、経済生産過程と人間自身 の生産過程から構成されているもの(図2を参照)である。人間社会内部 では、基本的に人間自身と経済という2つの生産過程は、消費財と労働力 という二種類の素材の交換を通じて相互に関連し合って進行して行くわけ

である(筆者、1990年)。

自然循環の生産過程

人間内部の経済過程 環境の内部循環

二種類生産循環

人間の生産過程 経済内部循環財の生産過程

人間内部循環

図3人間と自然の物質代謝過程 図2人間社会内部の二種類の生産

過 程

− 4 5 −

(5)

このようにまだ人間社会を一つの閉鎖の社会体系と見なす見方は従来の 経済理論より視野的に広くなりながら、環境の人間社会経済過程からの廃 棄物に対する吸収能力、或いは、同化能力と、それへの投入物に対する供 給能力あるいは再生能力が相当に大きい場合しか成立できない。しかし、

そうではない今日の場合には、環境の問題を解決しないと人間社会経済過

程が維持できないので、成立できないと考えられる。要するに経済過程を

分析する場合には、われわれは、マルクスが「人間と自然との間の物質代 謝」(K.マルクス「資本論」、p、58,p、234)と云った過程を理論の視野に 収めなければならない(吉田文和、第2章)。そうした基本視角に立って 問題を考えてみるならば、自然物と廃棄物の交換による「人間と自然の物 質代謝」過程及びそこでの素材循環の流れが図3のように示される。

なお、史的唯物論によれば、人間生命の第1前提としての物質的財貨の 生産=労働及び人間が生きてゆくためには、何よりもまず、食べ、住み、

着なければならず、そのために必要な食べ物、住居、衣服等の物質的財貨 を獲得しなければならない。そして、それを実現する労働による物質財貨 の生産こそ人間社会の存立の根本前提なのである。労働過程は労働対象、

労働手段と労働そのものという3つの要素からなる。そして、労働対象、

労働手段と労働力とは生産力を構成するわけである。・それらの中には、労 働対象と労働手段とは合わせて生産手段といわれ、生産力の客体要素、労 働力は生産力の主体要素をなす(「経済辞典」、p.590‑1)。

ここで、まず注意したいのは労働対象である。それは労働が動きかける 自然物である。労働対象は、自然に存在する天然資源と人間労働の働きか けを受ける原料などに分類される。次に労働手段を注意しよう。労働手段 は、労働者が、自分と労働対象との間に持ち込んで、これに対する彼の活 動の導体として、彼のために役立つ一つの物、または諸物の複合体である。

それも、人間労働が働きかけを受けた物と自然界に存在する物に分類され る。後者の場合には、容器として(置き場所)利用される土地とか、道路 のような運輸に利用される河川、海洋、大気空間などはそれの例である。

生産手段の定義によれば、ここでは、自然に存在する労働対象と労働手 段を自然的生産手段、人間の働きを受けた労働対象と労働手段を人工的生 産手段という。そうすると、生産力の構成要素は図4のように分類できる

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1 口 然 的 労 働的 生 産 手 &

労 働 対 ゞ 鰯 撫

Ⅷ 報 に 醐 捌 " 刑 蛾

生産力

図 4 生 産 力 の 構 成 要 素 と考えられる。

この図を見ると、次のことがすぐ分かると思う。人間の生命を維持する ために生産力の再生をしなければならない。つまり、生産力の要素の再生 をしなければならない。したがって、①自然に存在する生産手段を再生を するためには、それを提供する自然環境の保全、再生をしなければならな い。②人間労働を受けた生産手段の再生をするためには、経済生産過程を 継続、維持しなければならない。③労働力の再生をするためには、労働者、

そして、人間自身の生産過程を継続、維持しなければならない。

以上の分析によれば、これからの経済学の分析視野としての経済過程は、

人間自身の再生産、経済再生産と自然再生産という3つの過程で構成され るべきである、という認識になるわけである。図5はこの3つの再生産過 程の相互関係を概念的に示すものであるが、それは、本論文の問題となる

「広義再生産過程」である。なお、後の内容によって明確に規定されるが、

この広義再生産過程も閉鎖的な過程ではなく、エネルギー(太陽エネルギ ー)の交換によって外部(宇宙、太陽系)に関連している開放的な体系で

ある。

− 4 7 −

(7)

部 シ ス テ ム

経済再生産経済再生産

人間再生産人間再生産

ネルギー逸散

− レ エ

エネルギー吸1又→

図5広義再生産過程の概念図

2研究視角転換の理論的背景

上述した広義再生産過程に関する理論的構築、つまり、経済学研究に関 する視角の転換の内容は、筆者自身の経済学への理解と研究における問題 意識の転換過程の簡略的記述ともいえ、主に次の理論背景に基づいて成立

し、理論的正当性を持つものであると思われる。

第1の理論背景は経済発展における問題意識の変容過程に関する理論概 括である。

世界経済発展における近代的、歴史的な潮流を概観すれば、その流れを 大まかに次のような段階にわけて見ることができる。

第1の段階は、戦前において、戦争と植民地経済を基本的特徴とする

「国際的略奪」経済であった。この段階においては、社会・経済発展の目 標は勿論財の量的成長であり、植民地経済体制の定着に伴なって帝国列強 国の拡大再生産と植民地国の縮少再生産によって展開されていた。

第2段階は、戦後において、植民地経済体制の崩壊と東西冷戦構造の形 成に伴い、両体制間の軍事力と政治力を内容として国際的対時が現われ てきた。そのうち、資本主義諸国間に展開されていた経済的競争と社会主 義諸国間において展開された経済協力よりも両側の間に展開された対立的 国際経済競争はこの段階の経済発展の主な特徴であった。この段階におい

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ては、諸国の経済発展目標は、体制の違いを問わず政治と軍事の国際対立 を前提と目的とする経済の高度成長を目指していたのである。例えば、社 会主義諸国は、主に│日ソ連のモデルを導入して国家集権の経済体制の下で 重工業の発展を最優先して経済の離陸を実現してきた。資本主義諸国は主 に国家の介入と市場原理の活用によって高度経済成長の段階を達成してい

第3の段階は、1970年代の後半から80年代末にかけて南北問題の深刻 化と社会主義諸国の経済改革・開放に起因する東西冷戦構造の溶解が見ら れてきたのであった。この段階においては、経済成長が相変わらず社会経 済発展の中心目標とされていたが、「人間生活重視」という傾向がはじめ て見えてきた。というのは、その時期の世界経済発展に次の2つの現象が 明らかに現れていたか.らである。一方では、先進国側において、多くの国 が高度成長期を経て高度大衆消費時代に入ったが、「市場の失敗」と「国 家の失敗」を受けて経済成長の限界性がしばしば現れていた。それと同時 に「人間生活の質的向上」の問題が産業政策ビジョン等の面に浮上してき た。他方では、社会主義諸国において、多くの国が指標的に経済離陸期を 経て工業化の時代に入ったが、結局のところ国民生活の向上ができず「国 家集権経済体制」の貫徹と「重工業優先政策」の実行が行き詰まりに至っ ていた。それと同時に「国民生活重視」の問題を一つの要因とする「経済 体制改革」、「産業政策転換」が行われた。

第4の段階は、1990年代から現在に至るまで、冷戦構造の崩壊にしたが って、世界経済には、経済競争の範囲、分野が広がっていると同時に、地 域化を特徴とする国際経済協力が、新しい世界経済の動向として注目され ている。この段階において、環境問題が経済と並んで国際化され、「はじ めに」で提起したように経済の成長、人間の生存、環境保全の問題、つま り、「人間と自然の共生」の問題に世界範囲で関心が集まって、「持続的 発 展 」 が 経 済 発 展 の 目 標 と な っ て き た 。

こうした経済発展の姿の変容過程を概括すれば、経済成長に傾いている と同時に、「経済成長重視」−「国民生活重視」−「環境保全重視」とい うような変化の傾向が見えてくると言えるであろう。経済研究の問題意 識が経済現実の反映として当然以上の傾向に従って転換してくる。それゆ

− 4 9 −

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え、広義再生産過程に関する理論構築は、経済発展、そして経済研究の問 題意識の転換過程に対する理論的な問題提起として認識されるのである。

第2の理論背景は地球システムに対する理論的抽象の逆転である。

経済成長だけを重視することから「国民生活」そして「自然保全」も重 視することに至れば、地球システムの基本構造への認識は必ず理論的課題 になるわけである。この認識過程は端的に言えば次のような理論抽象過程

になる。

先ず、この複雑な地球システムが、われわれの問題意識の全体に応じて 抽象されれば、図表6に示されるように簡明に把握できる。このような多 重的循環が含まれる地球システムの循環構造に関する詳しい考察がⅢとⅣ の内容になるが、ここではこの図で示されること以上には立入らないこと にする。つまり、この表示によって、地球システムは太陽の①エネルギー をはじめとし、順次に②物質循環、③生態系、④動物等の自然的システム と⑤人間システム及び⑥経済システムから構成されると把握するのである。

① 太 陽 エ ネ ル ギ ー

②物質循環システム

③生態系システム

④動物システム

⑤人間システム

⑥経済システム

図 表 6 地 球 シ ス テ ム の 構 造

次に、人間生活と自然環境を問題にすることによって、必ず人間と自然 の関係への究明に目を注ぐことになる。そのため、人間システムをその地 球全体システムから抽出して独立させることは論理的になされる抽象方法 である。その残りの全体は、自然システムとして認識されるわけである。

さらに、経済成長という問題意識との関連の角度から人間と自然の関係を

(10)

深く追求する際に、経済システムを人間システムから抽出して独立させる ことが必要である。広義再生産過程の構築手順は丁度このような理論的抽 象手順(図7を参照)の逆方向の再現である。

人 間 シ ス テ ム 経 済 シ ス テ ム ■ ■ I ■ ■ ■ ■ ■ ■− →

自然システム 人 間 シ ス テ ム 経 済 シ ス テ ム

図7自然システムから、人間システム、経済システムの抽出 第3の理論背景は地球の歴史的形成過程に統一する理論的抽象過程であ

先ず、自然が人間に先行して存在したのであるということは、唯物論が 唯心論と区別される基本的命題として周知されている。

地球科学によると、地球のはじめは原始太陽系・星雲をつくっていたガ スや微細な結晶が集積したものであったということ、すなわち、形成時の 膨大な集積エネルギーを熱エネルギーに変え、それを原動力として、物質 的に均質であった原始惑星がマントルとコアに分化したということでは、

金星や火星などと同じであった。ただ、地球に独自の特徴は、ここからさ らに引きつづいてマントルから地穀が分化し、海洋と大気を分化させたと いうところにあった。始原地球が次、々と新しい構成要素に分かれ、それが さらにまた新しい構成要素に分かれていくということである。この「分化」

というプロセスを通じて、多種多様な構成要素を持ち、太陽系の中でもと くにユニークな現在の地球が形づくれたのである。分化というプロセスを 通じて、独自の構成要素をもつにいたった地球は、46億年もの間、凍らせ ることもまた蒸発させることもなく、水を「海」という形で保ちつづけて きた。水惑星としての地球は、この「海」において、この星の最大の特徴 である生命を誕生させた。この生命もまた次々と分化(進化)を遂げてい く。人類の祖先である猿人は、この生命の分化の途上である約400万年前 に登場した(鳥海光弘他、p、1−3)。ここまでにおいて、地球システムの

−51−

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「第1段階の形成過程」が完成した。

そ し て 、 さ ら な る 分 化 の プ ロ セ ス を 経 て 、 約 4 万 年 前 に 現 世 人 類 が 誕 生 したのであった。つまり、人間になる前の「人間」は自然そのものの一部 であった。それゆえにまた、「人間」が人間になる過程は、一方では人間 の労働過程であり、他方では自然自身の発展過程である。この意味で「人 間」が人間になる基本的な要因は、労働だけではなく自然自身でもある。

このような4万年にもわたる人間登場過程は人間の自然から独立する過程、

つまり、地球システムの「第2段階の形成過程」であった。

現世人類の誕生から産業社会の形成まで、つまり、産業社会以前という 段階には、狩猟・採取時代と農耕・牧畜時代が含まれる。産業形成期も歴 史的な細胞は原始的共同体で行った狩猟.採取の労働にある。ところが、

狩猟・採取時代の最初は、人間が主として自然の与える動・植物を資源と して生活する「抽出産業」、或いは「略奪産業」の時代である(黒澤、

p.286)。この時代の人間の労働は、労働がそのまま生活であり、即ち、

「使用時に採取」(村田富二郎、p、31)、或いは、「手から口へ」(山本 二三九、p.48)といった時代であった。労働は類的存在としての人間の活 動そのものであり、共同体全体の肉体的・精神的能力はまた個々の成因の 全面的な能力の総和であった。その時期において、人間と自然との関係は きわめて密接であり、経済システムの独立する条件がまだ未成熟であると 同時にその必要性もなかった。本格的な産業生産への出発点は農耕・牧畜 時代であった。この時期から、地球システム内部、そして、人間システム 内部において、経済システムの独立を内容とする「第3段階の歴史的形成 過程」が行われた。いわれる「地球環境問題」は、この形成過程の完成を 起源としたのである。

地球システムの誕生、進化の過程を概観すれば、その歴史的形成過程と その前述した理論的抽象過程(図7を参照)とは統一していることがわか る*'。

* ちなみに、経済システムの誕生から計算すれば、「太陽の寿命>地球の寿命>物 質循環の寿命>生態系の寿命>植物系の寿命>動物系の寿命>人間の寿命>経済 の寿命」、つまり、「太陽の寿命>自然の寿命>人間の寿命>経済の寿命」とい

う不等式が成立しよう。

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時 間

原 始 太 陽 系 星

始 源 地 球

「自然」

始源人間圏 物圏

「人間」の形成 人 間 圏 始 源 経 済

「経済」の形成

出所:烏海他、p、2の図1.1により加筆して作成。

図 表 8 地 球 シ ス テ ム の 歴 史 的 形 成 過 程

3 主 体 化 さ れ る 自 然 、 人 間 、 経 済 と 人 間 主 体 化 の 意 義

こ の 広 義 再 生 産 過 程 に 関 す る 分 析 を 展 開 す る た め に 、 そ こ に お い て 主 体 化された自然、人間、経済の理論的規定を明確にしなければならない。勿 論、それに関して深く理解するのは、次の諸節の分析に依らなくてはなら な い が 、 こ こ で は 取 り あ え ず 前 述 の 広 義 再 生 産 過 程 の 理 論 構 築 と そ の 理 論

− 5 3 −

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抽象に関する論述から推論して、それらの素材的な規定性を述べておきた

まず、本論文に使用される「自然」という概念は、われわれ人間自身、

その全部の活動、そしてその相互関係から構成されたシステムを除いた、

太陽のエネルギーを受けて運動している地球システムを意味するものであ る。換言すれば、「自然」は、太陽光などの外部エネルギーに駆動される 地球系における各種の物質循環、生態系、生物系、動物系から構成される

のである。

仮に太陽のエネルギーが無制限的であるとすれば、ここの自然は永遠に 存在するものとされる。ところが、科学研究に証明されるように太陽のエ ネルギーは、無限ではなくいつの日か出し尽くしてしまう。この意味で、

自然も開放的な体系でもあるし、空間的にも、時間的にも有限的な概念で もある。

本論文に抽象された人間という主体は、ニーズと欲望とその充足活動、

及びその関係と機能を持つ社会的存在の総和である。ニーズとは人間の動 物との類比と区別をする基本的属性として使用される概念である。欲望は そのニーズを充足する環境、条件、手段への追求である。充足活動は利用 できる環境と条件、手段の利用を消費することである。

広義経済過程における人間は、まず、一種の動物として大自然の中に生 きて行かなければならない。これは、人間の動物一般、或いは、「外的自 然」の一部とする属性である。なお、人間と他の動物との相違は、経済過 程自然に働きかけて産出した生活手段、それを消費しつつ生存するという 点にある。これは、人間の非動物、或いは、「人間的自然」の一部とする 属性である(岩佐茂、p.124‑30)。

したがって、人間再生産過程における人間の行動も二重的な属性を持っ ている。その一つは動物一般として持っている動物的なニーズ(欠乏感な ど)と欲求(欠乏感の充足衝動)に駆けれた行動である。もう一つは、

人間に固有なニーズ(不満感)と欲望(不満感への充足意識)によって行 った人工財の消費である。消費活動はその行われる場を問わずに財の再生 産過程に含まれていないで、人間ニーズを充足する直接的手段として人間 再生産に属することである。言い換えれば、「人間」とは、動物としての

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人間、動物から区別される自然的人間、労働力を持っている人間に区別し

て 認 識 さ れ る の で あ る 。

経済とは主に従来の経済学に定義された意味で理解される概念である。と ころが、人間過程と経済過程の区別はその場によらなくその属性によるも のである。例えば、工場で仕事をしている人には次の属性を同時に持って いる。それらは、動物として生きている、自然人として生きている、労働 力を持っている、労働力を使用している、ものを作っている、等々である。

人間の定義によれば、前の3つの属性が人間過程に属するものであって、

後者の2つだけが経済過程に属するものである。

前に提起したように、自然環境破壊問題からの挑戦を受けて、数多くの 経済学者が、自然環境に取り組む経済理論の創立に努力している。それら の経済理論は藤田暁男教授の整理によれば、大別して二つのグループ。にわ けることができる。第1は、市場メカニズムに基礎を置く理論グループで あり、現在の経済システムを前提とし、様々な経済手段を使って環境対策や 環境管理を機能的に行うための理論を構築している。第2は、市場メカニ ズムによって環境に対応するのは本質的な限界があると考え、地域の社会 と環境の独自性やエコロジーの諸条件を前提に新しい経済システムを構想 するグループである(藤田、1995年)。また、様々の理論における経済シ ステムと自然システムとの相互関係に関する取扱は、図表10のように様々 なスタイルがあり、未石當太郎氏によって整理されている。

騨二密

環境システム

出所:未石他、p.62。

図表9諸理論にとらえた経済システムと環境システムの関係

−55−

(15)

特に、よく注目されている鷲田氏のエコロジーの経済理論(鷲田、1994 年)には、物質大循環を前提とした生態システムと経済システムから構成

した生物システムが一つの循環として取り扱われている。

いずれにしても、諸理論に注目されているのは、自然と経済の関係であ る。ところが、それと同時に経済と人間が諸理論において同等視、或いは、

混同視されている。本論文の主張する広義再生産過程という考え方と以上 の諸理論との相違は、端的に言えば人間システムを自然システムと経済シ ステムに対して独立させて主体化することにある。このような取り扱い方 の正当性が先にその理論背景の考察を通して簡略に論及されたが、その理 論的意義については、主に次の4点が考えられる。

第 1 は 、 人 間 主 体 化 す る こ と に よ っ て 、 人 間 と 自 然 、 特 に 、 経 済 と の 異 質性を明確にすることが可能になるという事である。第2は、人間主体化 することによって、人間社会と自然の関連性を深く見ることが可能になる ことである。第3は、人間を主体化することによって、自然環境問題の基 本的起源を、人間の生き方にかかわる問題として、そして経済の在り方に ど の よ う に 存 在 す る の か レ ベ ル で 明 確 に 見 つ け る こ と が 可 能 に な る の で あ る。第4は、人間を主体化することによって、改めて従来の人間と経済を 混同視した自然主義、人間主義ではなく、真の人間の中心的地位を確定し て「人間中心」の調和的論理を確立する事ができるということである。

4 「 人 間 中 心 」 の 調 和 的 論 理 の 確 立

従来の自然と人間*2の関係に関する哲学的論理は大別して2つの種類に 分けて整理される。一つは「自然中心主義」の論理である。それは、自然 を 自 己 運 動 す る 物 質 シ ス テ ム と 見 る と 同 時 に 、 人 間 も 自 然 の 一 員 と し て 自 然と同様に進行の法則に従って生きて行けることを強調する構想である。

エンゲルスの自然癖証法がこのような論理の代表作であると思われる。先 に提起した鷲田氏のエコロジーの経済理論は基本的に経済システムと生態 システムを一つの生物システムと見て展開された理論体系であるという意

*2勿論、ここの「人間」は本論文に定義された人間と違って、まだ経済活動を含ん

でいる人間の概念である。

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味で、このような自然観に属するものといっても良いであろう。「自然権 から自然の権利へ」(ロデリック・F・ナッシュ、1993年)ということを主 張する理論はこの論理の明快な延長とも言えよう。

このように「人間一自然」関係を「自然一自然」関係の一部とし、自然 を、人間をも含んで自己運動している根源的存在とする「自然中心主義」

に対立して「人間中心主義」という論理がある。特に内山節氏の自然哲学 が「人間中心主義」の力説としてよく取り上げられている。同氏は、自分 の自然哲学は「労働を獲得し、自然から自立した存在としての人間が現に 暮らしているという事実」から出発し、「労働論、或いは、労働過程論」

を基礎においているのであると、明瞭に強調している(内山節、1988年)。

この二つの自然哲学を比較して見れば、前者が自然を中心に置き、自然 から人間を見ることに対して、後者は、人間を中心に置き、人間から自然 を見るのである。この意味において、両者を対立的なものではなく補完的 なものとして吸収した、「弁証的自然観」が提唱されている(嶋崎隆、

1990年)。

「弁証的自然観」によれば、人間と自然が人間中心主義に強調された

「主体一客体」と自然中心主義に強調された「客体一主体」と「相互承認」

の「主体一主体」という3つの関係を持つのである。このような自然観に

図10自然、人間、経済における主体・客体関係

− 5 7 −

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基づいて、人間が自ら衰退し、滅亡しないようにするには、労働の論理

(主体一客体)のなかに積極的に「主体一主体」関係を洞察し、さらに

「客体一主体」関係を大前提とすべきであるという「自然主義=人間主義」

の復権論が提起された。

筆者は、人間と自然との多面的関係を全面的に把握する上で今日の「環 境論理」を理解する際に、こうした「弁証的自然観」が方法論的にきわめ て有効的なのであると考えている。ところが、それと同時に提唱された

「自然主義=人間主義復権論」は一つの無中心の論理として現実的に貫徹 し難いものではないかと思わざるをえない。それでは、この中心になるべ きものは自然でもなく、労働過程を内容とする人間でもなければ、前述に定 義された、「経済過程」を抽象された「人間」である。そして、人間、自 然、経済の三者の間に存在している「主体一客体」的関係、「主体一主体」

的関係、及び「客体一主体」的関係を認識した上で把握される三者の調和 関係(図10を参照)を前提にして、人間はあるべき生き方で持続的に生存 していくべきであるという「人間中心の調和的論理」が確立されることが 期待されるわけである。つまり、経済成長のための経済成長が勿論望まし くないことと同じように、経済の持続的発展のための自然保全をも自然保 全のための自然保全をも望むのでなく、人間の持続的生存のために人間再 生産と自然再生産と経済再生産の調和関係が重視されるべきである。この 際に、このような広義再生産過程における調和的関係を洞察するのは一つ の重要な課題となり、そのために、3つの再生産過程の循環関係及びそれ

らの属性を解明することを必要とするのである。

Ⅲ 人 間 再 生 産 、 自 然 再 生 産 と 財 の 再 生 産 の 内 部 循 環 構 造 と そ の 異 質 性

第Ⅱ節に明らかにされたように、広義的経済過程は、人間・経済・自然と いう3つの再生産過程で構成される再生産過程である。その全体構造を把握 するために何よりも、その一般的要因一広義経済過程の運動を規定・支配す る基本的法則を探求することは、最も重要なことである。そのために、先ず 各の再生産過程の内部循環構造を解明しながら、それぞれに規定、支配する

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法則を発見することにする。

1自己組織最適化法則による自然再生産の内部循環

自然再生産の内部循環構造を把握するために、まず生物個体と生物個体 群を流れるエネルギーのプロセスに関する認識がきわめて重要である。そ れは、生態学に図11のように解明されている。

I → A → P − 令 △ P

R

図11生態系のエネルギー生産

Iは、生物個体の外部から摂取したエネルギー量で、植物の場合は、主に 太陽のエネルギーそのものであるが、動物や、菌類、バクテリア等の場合 は、主に外部から提供された有機物である。Bは、生物個体そのものの持 つエネルギー量のストック、つまり、生体量である。▲Bは、エネルギー 生産するための生体量の消耗である。Iと▲Bは生産のエネルギー総投入量 となるわけである。NUは未利用エネルギーで、植物の場合は葉を通過した 太陽光、植物の枯死量等であるが、その他の場合は、排泄物、遺体、生物 残骸等である。Aは同化エネルギーであり、そのうち、Rは生態系の存続 を維持するために用いられたエネルギーで生態系全体の呼吸廃熱であるが、

Pは、生産であり、生体量Bの増加に利用され部分△Bと他の生物に提供 された部分△Pに分解される(鷲田豊明p、38−9を参照)*3。

*3ただ、図11とその説明では、エネルギー流のフローとストックの関係、及び内部 と外部の関係を明確にするためにその表記方式と構成内容が同氏の説明よりやや 違うところがある。

− 5 9 −

(19)

図11の通り形式化されたエネルギー流のプロセスを「生産定式」と呼ぶ ことにする。それは、一般的に生物個体、生物個体群、生物群体等のすべ てのレベルにおいて見られるのである。さらに、生態系を一つの生物体と 1ノて見れば、その全体を流れるエネルギーも同様な「生産定式」にしたが って現れるのであろう。このような「生産定式」の具体的展開として、

生態系の内部循環構造は全体的に、一方では、生産者、消費者、分解者が 相互依存して形成した食物連鎖と食物網(図12を参照)、一方では、その エネルギーの1次生産、2次生産、3次生産における転換過程(図13を参 照)によって把握される。

生産者

(膳礎生産者) 砂 魁

一次消費者 二次消費者

9 = = "

W.;

I"

.

4Ill③純生産量妬111lx一

卒−11②総生産殴崎lllIlllllr

4−1①光合成で固定されたエネルギー11k

入射した太陽エネルギー

R9 物質流<…………令用役(サービス)授受

−−−−→有機物一‑.‑.‑.‑〉エネルギー

生態系における有機物の生産と消費、B:般初の生体猛、G:純成長置 P:被食湿、D:枯死趾・死滅歴、R:呼吸戯、F:不消化排出鼠

出所:鷲田豊明、p.41。 出所:松本忠夫、p.20.

図 1 2 生 態 系 の 概 念 図 図 1 3 生 態 系 に お け る 生 産 と 消 費 また、生態系存在の前提条件となるのは、太陽エネルギーに駆動され、

そして、自然生産活動からの余分のエネルギーを宇宙に処分する機能をし ている大気循環と水循環、及びそれに伴なうCO2等の物質循環である。こ れらの循環は、HO2、CO2、N2、を基質とする生命体に絶えずに新鮮な大 気と水を供給すると同時に、自然生産(呼吸)、生命体の間に行われる物 質、エネルギー、サービス等の相互交換を可能にする環境を供給されるの である。すなわち、自然内部のエネルギー流は、これらの一連の循環によ って図14のように宇宙空間、成層圏、対流圏、及び水圏の間において現れ

B

G

P

R

(20)

射出放射 短 波 長 波

2 8 7 2 入射太陽放射

100 宇宙空間

CO2とH20に

3

十 一 乱渦熱輸洪 成 層 圏

9

1 蕊 嘉 ゞ

H20,

叢融

に よ る

17

水蒸気 エ ア ロ ゾ ル吸収

〃ゾ

5

13 対 流 圏 109

< − > 乱渦熱輸送

3 鮒5

潜熱 ク4

114 96

射しIEJ、

正味長波放射 地表面反

水 圏 <一一一一>

海 流 に よ る 輸 送 2 2 2 5

日射の吸収

出所:烏海光弘、p.120.

図14自然におけるエネルギー流の概念図

るのである。

さらに、このように根源的動力の太陽エネルギーに駆動される自然内部 のエネルギー流にはマクロ的にもミクロ的な生物個体のような「生産定式」

によって絶えずに運動していくことが見られるのである。ここでこれを

「自然生産定式」と呼ぶことにするが、人間、経済と区別するために、各 分量が元の記号をXに付けて表記する*4°ただし、Iinは外部エネルギー で、ほとんど太陽から光として発射される莫大なエネルギーである。人間 システムと経済システムの吸収を省略すれば、XIは、Iinと同量である。

XNuは大気、雲、地表面、水面等による反射ですぐに宇宙空間に逃げ、地 球表層の活動に利用されていない未利用エネルギー、XAは利用(同化)さ

*4これに対して、人間再生産と経済再生産の場合にも、同様にそれぞれY,Zを利

用する。

− 6 1 −

(21)

れるエネルギー総和で、総和呼廃熱XR,蓄積生産量XPに分解されるので ある。X△Bは生産量の増加で、X△Bは生産の供給で、X△pは自然外部に 提供されるエネルギーである。Ioutは逸散エネルギーの総和である。つま

り、自然再生産過程は、人間と経済の影響を省略できる限り、基本的に一 つのエネルギーの収支過程として認識されれば、次の式によって示される。

Iin=XIN=XNu+X&p+XR=Iout

Iin→XI‑" XA→XP→X△p→I。u(

XR

図15「自然生産定式」

地球科学によれば、この全体のエネルギー循環は以下のように推定されて いる。地球軌道において太陽からやってくる光のエネルギーの面密度は (1.37〜l.38)/m2であることが、人工衛星による観察で測定されている。

これに地球の断面積1.3×104m2をかけると、地球の受けるエネルギーが 1.8×1017Wになることが分かる。このうちの約30%はとして大気、雲、地 表面、水面等による反射ですぐに宇宙空間に逃げるので、地球表層の活動 に利用されていない未利用エネルギーXNuになる。自然再生産活動に利用 されるのは、その残りの1.2×1017Wである。それに対する一方では、地球 内部のエネルギー収支過程によって、マントルからは地面に向かって4.4×

1017Wのエネルギーが地球表層に流れ出ている。そして、結果としては、

呼 吸 廃 熱 を も 含 む 地 球 表 面 廃 熱 が 大 気 層 を 通 し て 太 陽 か ら 流 れ 込 ん だ エ ネ ルギーと同量で、1.8×1017WのエネルギーIoutを宇宙に放出している。こ のような太陽からのエネルギーの摂取量と地球からの宇宙へのエネルギ ー の 放 射 量 の 間 の 動 態 的 調 和 関 係 は 、 自 然 存 続 可 能 の 基 本 的 前 提 に な る わ

(22)

けである。というのは、この調和関係を破壊されたら、地球表層が温まっ たり冷えたりするはずだからである(鳥海光弘他、p、66‑7参照)。

ところが、今日には、人間、特に経済から影響も省略できないほど大き くなっておる。つまり、XIの中にはまだ人間と経済からの廃棄物が入って いる。XNuの中には自然に吸収されていない廃棄物が含まれている。特に、

X△pの中には人間、経済の自然のエネルギー蓄積量に対する搾取量も計算 されるわけである。そうすれば、図16に示されるように、広義再生産過程 における「自然再生産」の外部循環構造は、自然廃棄物一自然再生産一自 然廃棄物という自然それなりの自己閉鎖の循環、人間廃棄物一自然再生産 一自然消費財と経済廃棄物一自然再生産一自然生産財という人間と経済に 関連する対外開放の循環からなるのである。前者は、自然の独自性、後者 は、自然の開放を表している。このような理論抽象を支えるのは以下の二 つの事実である。一つ目には、自然が人間と経済ではなく、自然それ自身 の前提条件に依存して存在し、つまり、仮に人間と経済がないとしても生 存できるのである。それに対して、二つ目には、自然は人間と経済の介入 を自ら回避することができなく、人工的自然と人間と経済に影響される自 然として存在している。したがって、自然内部循環を分析する際に、自然 の固有の生き方と人間と経済の影響を受けている生き方を検出することは 主 な 狙 い と な る わ け で あ る 。

生 産 の 廃 棄 物 一 → 消費の廃棄物一一→

自然の廃棄物一一→

自然の再生産過程

一 財 の 再 生 産 へ の 自 然 的 生 産 財 一一→人間再生産への自然的消費財 一 自 然 再 生 産 へ の 自 然 的 廃 棄 財

図 1 6 自 然 再 生 産 過 程 の 外 部 循 環 構 造

人間一自然環境系と人間活動(経済過程)−自然環境系という2つの側 面は、自然再生産過程における基本的法則を導き出す基本的視角・出発点 である。

生物体として認識される自然そのものは人間を引き付けてきたのは、そ の自己増殖と自己組織化の二つである。それに対して、無生物体として認 識される自然そのものは、人間活動(経済)を引き付けてきたのはそのそ

− 6 3 −

(23)

こ存続と自己組織化の二つである。

自己組織化とは、システムを構成するミクロな要素が協同して、自発的 に構造や機能といったマクロな秩序を形成することと考えられる。それと 同時に、それは、生物・無生物を問わず幅広く自然現象や社会現象などに 見られるものとして認識されている。

ここで自然の「自己増殖」と「自己存続」を自然の「目的」と呼ぶこと にし、その「自己組織化」を自然のこのような「目的」を実現する手段と 呼ぶことにしたい。前者は、もし、太陽のエネルギーが自然再生産を駆動 される原動力とすれば、自然再生産を起動する基本的、内在的動因である。

後者は、自然の複雄多様性を生む根源である(都甲潔、松本元、p.20

‑1)。

自然環境系は、一面では、生物としての人間とその自然環境との関係で あるので、人間一自然環境系である。つまり人間が生物である限り、無機 一有機系、有機一有機系、並びに食物連鎖を含む生物社会一般の生態系法 則に規定されていることはいうまでもない。

生態系の基本法則といえば、何よりも「生態系は、そこに人間が含まれ ていない場合でも、全体的構造をより望ましい方向に自己組織化する能力 を持っている」ということである。この自己組織化する能力をはかる量的 指標は、「全エネルギー流」である。従ってこの自己組織化する能力を持 っているということは、ロトカによれば、エネルギー流最大化法則と呼ば れている。鷲田によれば「生態系呼吸仮説」でもある(鷲田豊明、1994年)。

これは、ここで説明したい「自然自己組織最適化」法則の人間一自然環 境系からみた意味である。

人間活動一自然環境系からみると、目を自然資源に注ぐことになるのは いうまでもない。自然資源における一般法則と言えば熱力学第1,2法則 がまず取りあげられるに違いない。第1法則によれば、物質(自然資源)がエ ネルギーの蓄積として形式転換があっても、そのエネルギー自身が量的に 損失することはない。ところが、第2法則によれば、物質とエネルギーは 一方方向のみ、すなわち使用可能のものから使用不能なものへ、または有 序なものから無序なものへ変化するものである(時政勗、p.4)。

この2つの法則には矛盾が在りそうで矛盾がない。同一の物質(資源)

(24)

の開発利用過程に関しては、前者が主張しているのは、この過程における エ ネ ル ギ ー の 形 式 と そ の 量 と の 関 係 で あ る 。 後 者 が 主 張 し て い る の は 、 エ ネルギーの形式と質との関係である。例えば、石炭を燃やすと、熱エネル ギーが得られる。それとともに酸化炭素や、その他のガスが発生して空気 中に拡散する。第1法則によれば、この過程に行ったのは、エネルギー形 式転換にすぎず、エネルギーの量は減っていない。しかし、一度燃焼した 石炭は再度燃やすことができず、石炭として使用不能になり、再び同量の エネルギーを得ることはできない。つまり、第2法則によってこの過程を 見ると、エネルギーはある状態から他の状態に変わると同時に、その質の 面では、将来何らかの仕事を行うに必要な使用可能なエネルギーが損失し ていくと言うことである。

この熱力学の2つの法則は、人間活動一自然環境系の視角からみた「自 然自己組織最適化」法則の内容である。

概括して言えば、「自然の自己組織最適化」法則とは、自然が、生物体 としても、非生物体としても、無意識でありながら、自身の望ましい方向 に向かって、自己組織化メカニズムを稼動して外部の影響と自身条件に適 応 す る 一 番 効 率 の よ い 形 を と っ て 存 続 し て い く 機 能 を 持 っ て い る こ と で あ

2 欲 望 拡 大 法 則 に よ る 人 間 の 再 生 産 過 程 の 内 部 循 環

現実社会における人間は、まず、一種の動物として、自然の中に生きて いかなければならない。前節の人間に関する定義によって明確にされたよ うに、広義再生産過程における人間という主体も、その動物的属性を持っ ているものとして理解されるのである。これは、人間の自然、経済という 主体に区別する属性ではないが、自然再生産が形式的に自然再生産と同様 な「生産定式」(図17を参照)をとって行われる一つの重要な根拠となる と 同 時 に 、 人 間 が 動 物 の 属 性 を 捨 て る こ と が で き な い 限 り 、 自 然 か ら の 規 制から基本的に脱却できないことを意味することである。

ところが、「人間生産定式」の内容には主に次のことによって、「自然 生産定式」の内容と本質的に違って来る特徴がある。

まず、第1は、なによりも自然生産が自然主体の無意識的行動によって

− 6 5 −

(25)

Iin‑→Y】一bYA−÷YP̲→Y△P一ヶ1.u1

エ コ &

図17「人間生産定式」

行われることに対して、人間生産は人間主体の意識的行動によって行われ るので一つの素材的再生産過程でもあり、一つの素材的生産に基づいた文 化的、社会的再生産でもあることである。この意識的行動によって人間再 生産が摂取活動、加工活動、吸収活動、生産活動、分配活動から構成され

るのである。

これにかかわって、第2は、その生産定式の構成要素の意味も異なって くることである。YBは人間主体そのもので、意識的に消費ニーズと欲望を、

素材的に生命体、消費能力を持っている自然人口である*5。YIは、人間 が、その外部から生物と同様に太陽光、空気、水等の養分を摂取する以上、

自らも経済過程から供給された、人間労働によって変形した自然物質を積 極的に摂取すると同時に、教育、情報、娯楽、観光等等非物質のサービス をも摂取するということを意味しているものである。Y4Bは上記の各生産 過程において人間自身が消耗した肉体、体力、精力、消費能力などのエネ ルギー(質的に自然人口の消費力に、量的に自然人口の減少に当たる)で ある。このような自然再生産からの消費財と経済再生産からの消費材の供 給は人間再生産を駆動する外部エネルギーで、YBは人間再生産を起動する 内部エネルギーであると考えられる。YIとY△Bはその結合の結果として、

二つの部分に分解される。YNuは、人間に未利用された消費財であり、動

*5厳密的に言えば、住宅、耐久消費財、非耐久消費財の在庫貯蓄などからなる消費 財ストックも含むべきであるが、ここでこれを捨象することにする。

(26)

物と同じような未利用の自然エネルギーをも含むより、われわれの消費生 活にかかわる各種の形のゴミとなるわけである。それからYNuを除いて残 るのは人間再生産に吸収された消費財YAとなる。その結果としては、YA がミクロ的に人間個体の成長、マクロ的に社会人口の純増加Y△Bと人間の 呼吸廃熱YRとなる。そのうちこの呼吸廃熱はただ人間の生物として吐き 出し呼吸廃熱だけではなく、物的消費加工をも含む人間生産過程において 吐き出した廃熱の総計である。YPは自然人口の純増加Y△Bと労働人口の 純増加Y△pから構成される*6.

第3は、人間の純生産が規模的に自然再生産、経済再生産への貢献とな らなく、それと同時に、人間再生産の内部においても自然生態系内部のよ うな食物網原理が存在しないので減少しなく、その結果としては、自然人 口はますます増加している。勿論、人類発展の歴史と現実においては、戦 争、紛争などの動物界の「生存競争」のように見える現象がまだ存在して いるが、本論文には、それを人間の自己疎外現象として人間の本来の属性 とされない。人間の本来の属性として認められるのは人間繁殖の自己コン

トロールということである。

第4は、このような生産過程に伴って形成した人間再生産の循環構造が 次のような4つのレベルにおいて展開されるのである。まずは、人間再生 産の基礎でもあり、人間個体の内部において人体の各種の器官の作用を通

して行っている「人体的循環」である。その内容としては物質消化、情報

処理、エネルギー転換などが取り上げられる。人体的循環自身においても 循環周期があり、それは生命的循環が形成する原因である。生命的循環と は、人間個体の生産過程において見られる出生(生命の誕生期)から、幼 少年(生命の成長期)、青年、中年(生命の成熟期)を経て、老年(生命 の衰退期)、死亡(生命の消失期)へと変化していく生命現象ということ である。このようなミクロ的循環の総計としては、人間社会において世代 的循環と組織的循環が主に見られる。世代的循環とは、数量的に一定の期

*6エネルギーの転換の視角からみればYp=Y&B+Y4pが成立するが、規模的に見れ ば3者の関係はYP=非労働人口十労働人口=(Y4B‑Y4p)+Y4p=Y4Bとなって いる。というのは、労働力を持っている労働人口は労働力を持っていない自然人 口 と 同 様 に 消 費 力 を 持 っ て い る か ら で あ る 。

− 6 7 −

(27)

間における全社会の「出生人口→未成年人口→成年人口→老年人口→死亡 人口」の流入と流出から現れる現象であるが、実質的に扶養と被扶養とい う人間内部に特有な相互にサービスする原理によって形成した各年齢層間 の「被扶養者層→独立者層→扶養者層→被扶養者」のつながりである。そ れと同時に、世代的循環の条件でもあり、その形式でもある人間の組織的 循環が機能しているのである。それは、人間社会における個人、家庭、団 体、地域、社会、国際等の組織間の相互関係である。

第5は、こうして自然再生産と経済再生産と関連を考慮して見た人間再 生産の内部循環の内容が改めて横断面的に第0次消費、第1次消費、第2 次消費、第3次消費にわけられて把握されることである。第0次消費とは、

人間が生きるために自然生産から供給された、生活環境と生活物質に対し

て行われた消費活動である。これがなければ、他の一切の消費活動はあり えない。故に「第0次」という。第1次消費とは、人間が人間として生き るために経済生産から供給された、基本的生活環境と必要な生活物資に対 して行われた消費活動である。第2次消費とは、人間が活ける以上、さら に生活を安定し、向上するために経済生産から供給された生活環境と生活 物資に対して行われた消費活動である。それに対して、第3次消費は、生 活を向上する為の全部のサービスへの消費活動である。

図18に示されるのは、広義再生産過程における「人間再生産」の外部的 循環構造である。すなわち、それは、自然人口一自然再生産一自然人口と いう人間それなりの自己閉鎖の循環、自然消費財一人間再生産一人間廃棄 物と人工消費財一人間再生産一労働力という自然と経済に関連する対外開 放の循環からなるのである。前者は、人間の独自性、後者は、人間の開放 を表している。このような理論抽象を支えるのは以下の二つの事実である。

一つ目には、人間は生物の一種でありながら、労働、そして経済活動の拡 大によって自然の食物網から脱却して生存できるものと同時に、経済活動 がその生存の目的ではなく手段であることである。それに対して、二つ目に は、人間は生物の一種、そして自然から脱却の生物種であるからこそ、そ の自身の再生産が自然と経済への依存ができなければ、人間そのものが存 在し得ないのである。したがって、人間内部循環を分析する際に、人間の 固有の生き方と自然と経済の影響を受けている生き方を検出することは重

図 2 6 広 義 再 生 産 過 程 に お け る 物 質 循 環 表 − 8 1 −(z)経済再生産過程溺第三次生産翅第二次生産︑第一次生産別第○次生産 (Y)人間再生産過程粥第三次消費Ⅶ第二次消費Ⅵ第一次消費0Y篭小○次消蓉︽ (x)自然再生産過程期分解者期消費者Ⅲ生産者別非生態系 仙外部M,産業廃棄物G1人工消費財G2人工生産財G3サービス財鵬 1 鵬 2 Ⅶ300Z由●■■︽■■■■MZ3Z3餓鰯22ZZ観鰯03氾躯G$2G111Z氾躯p犯1G920GGHoGG3'G0MM1MH2MIZ3O加●

参照

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