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蒸発残留物試験における蒸発乾固後の乾燥操作に関する検討(第2報)

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(1)

13

<その1>蒸発残留物試験における蒸発乾固後の乾燥操作に関する検討

(第2報)

研究協力者  大野  浩之  名古屋市衛生研究所 研究協力者  鈴木  昌子  名古屋市衛生研究所 研究協力者  山口  未来  国立医薬品食品衛生研究所 研究代表者  六鹿  元雄  国立医薬品食品衛生研究所

A.研究目的

蒸発残留物試験は、ヘプタン、20%エタノ ール、水、4%酢酸の4種類の浸出用液を用い て溶出操作を行って試験溶液を調製し、この 試験溶液を重量既知の白金製、石英製または 耐熱ガラス製の蒸発皿に採り、水浴上で蒸発 乾固したのち、105℃で2時間加熱してその残 留物の重量を測定することで試験溶液中の蒸 発残留物量を求める方法である1), 2)。しかし、

蒸発乾固の操作や使用する容器については、

公定法変法を行う試験機関も少なくない。試 験結果に影響を及ぼす可能性がある要因がい くつか存在するにもかかわらず、これまで試 験室間共同試験は実施されておらず、真度や 精度などの性能評価は行われていなかった。

平成27年度の本研究において蒸発残留物試 験の試験溶液の蒸発乾固操作における公定法 と公定法変法の性能を確認し、規格試験法と しての適用性を検証したところ3)-5)、両法とも に、試験溶液中に揮散しにくい成分を多く含 む場合は良好な性能を示した。しかし、加熱 により揮散または変化しやすい成分を多く含 む試験溶液の場合は十分な性能が得られない 可能性が示された。その原因として、蒸発乾 固だけではなく、蒸発乾固後の105°Cで2時間 の乾燥操作によるばらつきが疑われた。

平成29年度は、蒸発乾固後の乾燥操作に着 目し、この操作が試験結果に与える影響につ いて検討を行った6)。まず105℃に設定した各 試験機関の乾燥器内の位置による温度差を調

べたところ、自然対流方式より強制送風方式 の方が温度差は少なく温度が安定する傾向に あることが分かった。

次に、105℃において揮散の程度が異なる5 種類の可塑剤等〔シリコーンオイル、テレフ タル酸ビス(2-エチルヘキシル)、ビスフェノ ールA、アセチルクエン酸トリブチル(ATBC)

及びセバシン酸ジブチル(DBS)〕を試験対 象物質(溶出物)として105℃で2時間の乾燥 操作後の残存率を調べた。その結果、揮散し やすい物質(ATBC及びDBS)では、残存率 及びそのばらつきは試験機関による差が大き く、しかもその傾向は乾燥器が自然対流方式 より強制送風方式の場合に顕著であった。そ の傾向は、容器の位置を乾燥器内の105℃とな る位置に限定して検討しても同様であった。

以上より、乾燥器内の温度のばらつきよりも 大きな影響を与える因子の存在が考えられた。

そこで、送風量及び容器の形状について影 響を調べたところ、送風量が少なく、容器は 蒸発皿や結晶皿より背が高いビーカーの方が 残存率は高くなる傾向があり、容器内の残留 物に風があたることによって揮散量が増加す ることが示唆された。

今年度は、揮散しやすいATBC及びDBSを 用いた9機関での共同試験を実施し、容器形状 や送風方式の違いなどによる試験結果への影 響を確認した。さらに、蒸発残留物試験にお いて結果がばらつく要因とその解決策につい て考察した。

(2)

14 B.研究方法

1.参加機関

共同試験には、昨年度本研究に参加した民 間の登録検査機関、公的な衛生研究所など10 機関のうち9機関が参加した。

2.試験対象物質

以下の2種類の試薬を試験対象物質として 用いた。これらは国立医薬品食品衛生研究所 で購入し、各試験機関に配布した。

アセチルクエン酸トリブチル(ATBC):純

97.0%以上、東京化成工業㈱製

セバシン酸ジブチル(DBS):純度98.0%以 上、東京化成工業㈱製

3.試験溶液の調製

国立医薬品食品衛生研究所から配布された 試験対象物質を各試験機関においてそれぞれ アセトンに溶解して各試験溶液(600 μg/mL)

を調製した。

4.乾燥器及び容器

共同試験に使用した乾燥器及び容器は各試 験機関が通常使用しているものとした(表1)

乾燥器は9機関中、自然対流方式が5機関、

強制送風方式が4機関であった。

容器は現行公定法の規定に準拠し、通常使 用している「蒸発皿等」と、それより背が高 い容量50 mLのガラス製ビーカー(外径:4.6 cm、高さ:6 cm)を用いて比較検討した。

5.操作手順

共同試験の操作手順を以下に示した。なお、

Wsは試験溶液用の容器の重量(mg)、Wb 空試験用の容器の重量(mg)とした。

1)容器の重量測定

使用する容器を乾燥器により 105℃で2 間加熱し、デシケーター内で1晩静置したの ち、容器の重量(mg)を測定した(Ws1、

Wb1)。

2)試験対象物質の添加

各試験溶液10 mLを容器に採取した(蒸発 残留物30 µg/mL相当)。また空試験としてア

セトン10 mLを採取し、同様の操作を行った。

各容器は自然乾燥(ドラフト内で1〜2時間 静置)によりアセトンを除去し、アセトン臭 が無くなったことを確認した。

3)乾燥器による乾燥操作前の容器の重量測

容器をデシケーター内で 1 時間〜1 晩静置 して乾燥したのち、容器の重量を測定した

(Ws2、Wb2)。この時、乾燥操作前の残留物 量〔(Ws2−Ws1)−(Wb2−Wb1)〕が5.5〜

6.5 mgの範囲になった容器を使用して次の操

作を行った。これらの容器が必要数に満たな い場合は、必要数の容器が得られるまで乾燥 時間を延長した。

4)乾燥器による乾燥操作

乾燥器内に容器3個及び空試験用容器1 を置き(3 試行)、105℃で 2 時間加熱した。

容器は乾燥器内で 105℃となる位置を中心に 配置した。

なお、容器に蓋をして残存率を測定する場 合は、図1のようにガラス製時計皿またはア ルミ箔を用いて蓋をして同様の乾燥操作を行 った。蓋は2時間加熱後に外した。

5)乾燥操作後の容器の重量測定

容器をデシケーター内で 1 時間〜1 晩静置 したのち、容器の重量を測定した(Ws3、Wb3)。

6)残存物量及び残存率の計算

上記の操作手順によって得られた各重量か ら以下のように残存率を計算した。

①乾燥操作前の残留物量(mg)

(Ws2−Ws1)−(Wb2−Wb1)

(3)

15 表1 各試験機関の乾燥器及び容器

送風方式 温度分布1) 内槽サイズ

1 強制送風 ±2.5℃

(210℃)

横幅 60 cm 奥行 50 cm 高さ 50 cm

蒸発皿(ガラス製)

  内径 6.0 cm、高さ 3.5 cm

2 自然対流 ±10℃

(300℃)

横幅 45 cm 奥行 41 cm 高さ 40 cm

結晶皿(ガラス製)

  内径 7.2 cm、高さ 3.5 cm   (容量 100 mL)

4 自然対流 ±7℃

(270℃)

横幅 61 cm 奥行 52.5 cm

高さ 50 cm

蒸発皿(ガラス製)

  内径 10 cm、高さ 5 cm   (容量 200 mL)

5 自然対流 ±8 ℃

(300℃)

横幅 61 cm 奥行 52.5 cm

高さ 50 cm

蒸発皿(ガラス製)

  内径 6.5 cm、高さ 3.5 cm   (容量 50 mL)

6 自然対流 ±10℃

(250℃)

横幅 61 cm 奥行 52.5 cm

高さ 50 cm

蒸発皿(ガラス製)

  内径 6 cm、高さ 3 cm   (容量 20 mL)

  内径 7.5 cm、高さ 3.7 cm   (容量 80 mL)

7 強制送風 ±2.5℃

(210℃)

横幅 60 cm 奥行 50 cm 高さ 50 cm

蒸発皿(ガラス製)

  内径 6.0 cm 、高さ 3.6 cm   (容量 50 mL)

8

強制送風

(標準/微風の 風量設定可能)

±0.5℃

(100℃)

±1.5℃

(200℃)

横幅 40 cm 奥行 35 cm 高さ 28 cm

結晶皿(ガラス製)

  内径 7.2 cm、高さ 3.5 cm   (容量 100 mL)

9 強制送風 ±2.5℃

(210℃)

横幅 60 cm 奥行 51 cm 高さ 50 cm

ビーカー(ガラス製)2)

  内径 8.4 cm、高さ 4.6 cm   (容量 200 mL)

10 自然対流 ±8℃

(260℃)

横幅 60 cm 奥行 53 cm 高さ 50 cm

ビーカー(ガラス製)2)

  内径 8.5 cm、高さ 4.5 cm   (容量 200 mL)

1) 取扱説明書等に記載の温度分布

2) ビーカーの上部を切断したもので、形状は結晶皿に近い 試験機関及びそのNo.はH29年度と同じ

試験 機関

乾燥器 通常使用している

「蒸発皿、結晶皿等」の容器

(4)

16

図1 時計皿及びアルミ箔で蓋をした結晶皿及びビーカー

②乾燥操作後の残留物量(mg):

(Ws3−Ws1)−(Wb3−Wb1)

③乾燥操作による残留物の減量(mg)

(Ws2−Ws3)−(Wb2−Wb3)

④残存率(%):②/①×100

なお、各試験における残存率は3試行の平 均値で表した。

C.研究結果及び考察 1.予試験

送風方式及び容器形状の違いによって残存 率にどの程度の差が生じるのかを比較するた め、予試験を行った。送風方式が異なる乾燥 器を有する試験機関 2(自然対流方式)及び

試験機関 8(強制送風方式)の 2 機関におい

て、ガラス製の結晶皿及びビーカーを用いて ATBCDBSの蒸発残留物量を測定し、残存 率を調べた。

その結果、ATBC の残存率は、自然対流方 式では結晶皿は 62.6%、ビーカーは 80.2%、

強制送風方式では結晶皿は 24.7%、ビーカー 58.5%であった。またDBSの残存率は、自 然対流方式では結晶皿は 42.5%、ビーカーは

72.7%、強制送風方式では結晶皿は17%未満、

ビーカーは45.2%であった。

乾燥器の送風方式による差を比較すると、2 物質ともにいずれの容器形状でも残存率は送

風量が少ない自然対流方式の方が高かった。

また、容器形状による差を比較すると、2 質ともにいずれの送風方式でも残存率はビー カーの方が高かった。

2.9機関の共同試験

予試験の結果から、ATBCDBSの残存率 は乾燥器の送風方式及び容器形状の違いによ り顕著な差が認められた。そこで、本試験と して9機関による共同試験を実施した。その 結果を表2に示す。

ATBCでは、「蒸発皿、結晶皿等」の残存率 24.7〜76.7%、標準偏差は 1.9〜13.9%、ビ ーカーの残存率は 58.5〜90.6%、標準偏差は 2.0〜9.5%であった。一方DBSでは、「蒸発皿、

結晶皿等」の残存率は 17%未満〜69.0%、標

準偏差は 1.7〜12.7%、ビーカーの残存率は

45.2〜71.0%、標準偏差は1.7〜12.0%であった。

各残存率は、試験機関5DBSの結果を除 き、2 物質ともにビーカーを使用した方が高 かった。容器を蒸発皿や結晶皿等から背が高 いビーカーに変更することにより、9 機関の 平均残存率はATBC52.8%から78.6%、DBS 35.0%から 60.9%といずれも高くなった。

また、9機関の相対標準偏差もATBC32.1%

から 12.7%、DBS 55.8%から18.4%に改善 した。

(5)

17

表2 9機関の共同試験結果

蒸発皿、

結晶皿等 ビーカー 蒸発皿、

結晶皿等 ビーカー

平均値(%) 48.9 80.1 33.7 47.8

標準偏差(%) 1.9 5.5 7.9 10.2

平均値(%) 62.6 80.2 42.5 72.7

標準偏差(%) 6.5 4.2 7.5 5.3

平均値(%) 56.6 86.0 34.1 71.0

標準偏差(%) 13.9 2.0 12.7 1.7

平均値(%) 76.7 80.4 69.0 64.8

標準偏差(%) 2.1 3.6 1.7 2.4

平均値(%) 70.5 82.2 51.4 63.3

標準偏差(%) 3.7 4.5 11.9 2.4

平均値(%) 59.9 66.1 44.7 46.5

標準偏差(%) 4.2 3.5 5.3 9.4

平均値(%) 24.7 58.5 <17 45.2

標準偏差(%) 8.2 9.5 12.0

平均値(%) 37.3 83.6 <17 68.1

標準偏差(%) 7.3 2.3 6.2

平均値(%) 38.3 90.6 17.5 68.9

標準偏差(%) 6.3 4.0 6.4 2.6

52.8 78.6 35.0 60.9

32.1 12.7 55.8 18.4

n=3

8 強制送風 7

ATBC DBS

試験 機関

乾燥器の 送風方式

強制送風

残存率

平均残存率(%)

相対標準偏差(%)

1 強制送風

2 自然対流

4 自然対流

5 自然対流

9 強制送風

10 自然対流 6 自然対流

3.乾燥器の送風方式別の比較

上記の共同試験の結果を乾燥器の送風方式 別に比較するため、表3に自然対流方式5 関、表4に強制送風方式4機関の結果をそれ ぞれまとめた。

自然対流方式では、容器を「蒸発皿、結晶 皿等」からビーカーに変更すると、ATBC 平均残存率は 60.9%から 83.9%と高くなり、

相対標準偏差は24.2%から5.3%と小さくなっ た。DBSも同様に、平均残存率は42.9%から 68.1%と高くなり、相対標準偏差は44.7%から 5.9%と大幅に小さくなった。

強制送風方式でも、容器を「蒸発皿、結晶

皿等」からビーカーに変更すると、ATBC 平均残存率は 42.7%から 72.1%と高くなり、

相対標準偏差は 35.5%から 16.3%と小さくな った。また、DBSの平均残存率は25.1%から 51.9%と高くなり、相対標準偏差は67.7%から 20.9%と小さくなった。

以上のことから、容器を「蒸発皿、結晶皿 等」から背が高いビーカーに変更すると、乾 燥器の送風方式にかかわらず、2 物質とも平 均残存率が高くなり、試験機関間のばらつき も小さくなった。これは、背が高いビーカー を使用することにより、蒸発乾固後の乾燥操 作の際、より効率的に風の影響を抑えること

(6)

18 表3 自然対流方式5機関の結果

蒸発皿、

結晶皿等 ビーカー 蒸発皿、

結晶皿等 ビーカー

平均値(%) 62.6 80.2 42.5 72.7

標準偏差(%) 6.5 4.2 7.5 5.3

平均値(%) 56.6 86.0 34.1 71.0

標準偏差(%) 13.9 2.0 12.7 1.7

平均値(%) 76.7 80.4 69.0 64.8

標準偏差(%) 2.1 3.6 1.7 2.4

平均値(%) 70.5 82.2 51.4 63.3

標準偏差(%) 3.7 4.5 11.9 2.4

平均値(%) 38.3 90.6 17.5 68.9

標準偏差(%) 6.3 4.0 6.4 2.6

60.9 83.9 42.9 68.1

24.2 5.3 44.7 5.9

n=3

DBS

6 2

4

5

相対標準偏差(%)

10

平均残存率(%)

試験 機関

ATBC 残存率

表4 強制送風方式4機関の結果

蒸発皿、

結晶皿等 ビーカー 蒸発皿、

結晶皿等 ビーカー

平均値(%) 48.9 80.1 33.7 47.8

標準偏差(%) 1.9 5.5 7.9 10.2

平均値(%) 59.9 66.1 44.7 46.5

標準偏差(%) 4.2 3.5 5.3 9.4

平均値(%) 24.7 58.5 <17 45.2

標準偏差(%) 8.2 9.5 12.0

平均値(%) 37.3 83.6 <17 68.1

標準偏差(%) 7.3 2.3 6.2

42.7 72.1 25.1 51.9

35.5 16.3 67.7 20.9

n=3

ATBC DBS

1

平均残存率(%)

相対標準偏差(%)

7

8

9 試験 残存率 機関

(7)

19 ができたためと推察された。

また、送風方式別に比較すると、残留物に 風があたりにくい自然対流方式の方が試験機 関間のばらつきも小さかったため、乾燥操作 には自然対流方式を使用する方が望ましいと 考えられた。

一方、強制送風方式を使用する場合は、容 器をビーカーに変更し残留物に風があたりに くくすると、自然対流方式ほどではないが残 存率が高くなり、ばらつきも改善することが 分かった。

4.容器の蓋の有無による残存率の比較 次に、蒸発乾固後の乾燥操作において風の 影響を抑える方法として、容器の蓋の有無に ついて効果を調べた。予試験と同様に、送風 方式が異なる乾燥器を有する試験機関2及び 8 において、ガラス製の結晶皿及びビーカー を用い、容器に時計皿またはアルミ箔の蓋の 有無による残存率を比較した。その結果を表 5に示す。

蓋が有る場合は、蓋が無い場合と比較する と、残存率はいずれも大幅に高くなり、標準 偏差もほとんどの場合で小さくなった。自然 対流方式では、ATBCの残存率は95.6〜99.4%、

DBS 91.1〜97.8%といずれも容器形状にか かわらず非常に高い値であった。強制送風方 式では、ATBCの残存率は90.4〜97.2%と自然 対流方式と同様に高かったが、DBSではビー カーは残存率が90%前後であったが、結晶皿 65.8 及び 68.1%と低かった。これは DBS ATBCより揮散しやすい物質であることに 加え、背の高いビーカーでは容器内で空気が 対流しても容器内に留まりやすいためと考え られた。一方、時計皿とアルミ箔では残存率 に明らかな違いは認められなかった。

現行公定法では乾燥操作時における蓋の使 用に関しては記載がなく、通常の試験では多 くの試験機関が蓋を使用していない。容器に 蓋をして乾燥操作を行うと標準偏差は小さく

なり、乾燥器の送風方式による結果の差はほ とんどなくなり試験機関間のばらつきは小さ くなると考えられるが、蒸発残留物量が規格 値付近の検体の場合、今までの合否判定の結 果と齟齬を生じる可能性がある。

また、蒸発皿や結晶皿を用いた場合は蓋を しても強制送風方式の乾燥器では、完全に DBS の揮散を防ぐことができず一部は揮散 することが分かった。そのため、沸点がDBS

(沸点:約 345℃)よりも低いまたは同程度 の物質においては、蓋の材質や形状、乾燥器 内での位置などの各試験に機関における細か な操作や状況によって残存率が大きく変わる 可能性もある。

5.蒸発残留物試験における結果のばらつき の要因とその解決策

蒸発残留物試験は、器具・容器包装から浸 出用液に溶出した物質のうち、蒸発乾固及び

105℃2 時間の加熱で揮発せずに残留した物

質の総量を求める試験である。そのため、規 格の対象となる溶出物は明確に定められてい ない。

このため、ATBCDBSといった沸点が150

〜400℃の有機化合物については、試験操作後 に残存した部分は規格の対象となるが、揮散 した部分は対象とならない。しかも、このよ うな揮発性を有する物質の残存率は各試験機 関における試験操作や使用する乾燥器などの 細かな違いにより大きく異なる可能性がある ことが明らかとなった。

今回の検討の結果、105℃での乾燥時にビー カーを用いガラス製時計皿等で蓋をするなど 各試験機関における試験操作の細部を統一化 することにより、ばらつきを大きく低減する ことができた。しかし、さらに試験精度を向 上させるためには、蒸発残留物の規格の意義 や目的を明確にし、その意義や目的に適した 範囲の物質を精度よく測定できる試験法を検 討する必要がある。

(8)

20

表5 容器の蓋の有無による残存率の比較

結晶皿 ビーカー 結晶皿 ビーカー 結晶皿 ビーカー 平均値(%) 62.6 80.2 95.6 97.8 98.9 99.4 標準偏差(%) 6.5 4.2 1.9 0.9 0.9 1.0 平均値(%) 24.7 58.5 92.2 97.2 90.4 94.4 標準偏差(%) 8.2 9.5 1.9 0.9 6.4 0.9 平均値(%) 42.5 72.7 91.1 95.6 95.6 97.8 標準偏差(%) 7.5 5.3 2.0 1.0 1.0 1.0 平均値(%) <17 45.2 68.1 93.3 65.8 88.7 標準偏差(%) 12.0 16.2 1.6 8.8 1.0 自然対流方式の乾燥器による試験は試験機関2、強制送風方式の乾燥器による試験は試験機関8で実施 n=3

試験対象 物質

自然対流

強制送風 ATBC

DBS

強制送風 自然対流 乾燥器の

送風方式 残存率 蓋無し 時計皿で蓋 アルミ箔で蓋

D.結論

蒸発乾固後の乾燥操作において、容器形状 や乾燥器の送風方式の違いなど風の影響が残 存率にどのような影響を及ぼすかについて、

揮散しやすいATBC及びDBSを用い、9機関が 参加した共同試験を実施した。

その結果、現行公定法の規定に準拠してい る「蒸発皿、結晶皿等」より背が高いビーカ ーを使用すると、乾燥器の送風方式にかかわ らず、平均残存率はATBC52.8%から78.6%、

DBS35.0%から60.9%といずれも高くなり、

試験機関間のばらつきも改善された。また、

送風方式別に比較すると、自然対流方式が残 存率、標準偏差はともに良好であり、強制送 風方式より望ましいと考えられた。また、強 制送風方式を使用する場合は、容器をビーカ ーに変更することで、残存率が高くなりばら つきも改善することが分かった。

さらに、容器に蓋をして効果を調べたとこ ろ、風に影響が抑えられ、残存率が大幅に高 くなり、ばらつきも改善した。

しかしながら、蒸発残留物試験において試 験機関間の結果にばらつきを生じさせている

根本的な要因は、規格の対象となる溶出物の 範囲が明確に定められていないことにあると 考えられる。そのため、さらに試験精度を向 上させるためには、蒸発残留物の規格の意義 や目的を明確にし、その意義や目的に適した 範囲の物質を精度よく測定できる試験法を検 討する必要がある。

E.参考文献

1) 厚生労働省告示第201号、食品、添加物等 の規格基準(昭和 34 年厚生省告示第 370 号)の一部改正(平成18331日)

2) 河村葉子、器具・容器包装の規格基準とそ の試験法(ISBN4-8058-2663-0)、中央法規、

p 34-36 (2006)

3) 平成 27 年度厚生労働科学研究費補助金  食品の安全確保推進研究事業  食品用器 具・容器包装等に含有される化学物質の分 析に関する研究  総括・分析研究報告書、

p 15-55 (2016)

4) 大野浩之ら、器具・容器包装における蒸発 残留物試験の試験室間共同試験(第1報) 食衛誌、59、55-63 (2018)

(9)

21 5) 大野浩之ら、器具・容器包装における蒸発

残留物試験の試験室間共同試験(第2報) 食衛誌、59、64-71 (2018)

6) 平成 29 年度厚生労働科学研究費補助金 

食品の安全確保推進研究事業  食品用器 具・容器包装等に使用される化学物質に関 する研究  総括・分析研究報告書、p 69-86 (2018)

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