﹃金虎真符﹄﹃神虎玉経真符﹄考
石井昌子
はじめに
『金虎 真符 』 『神 虎 玉経 真 符』 考
﹃金虎真符﹄﹃神虎玉経真符﹄は道教上清派の第一太師紫虚元君南嶽上真魏夫人が在世中に受けた四経典のうちの二経典
(1)で︑﹃三洞奉道科誠儀範﹄(以下﹃科誠儀範﹄と略称)の﹁経目﹂に著録する名称は﹃上清太微天帝君金虎真符一巻﹄(以
下﹃金虎真符﹄と略称)﹃上清太微天帝君神虎玉経真符一巻﹄(以下﹃神虎玉経真符﹄と略称)である︒本稿は拙稿﹁玉清
(2)隠書考﹂につづく六朝期道教上清派の経典研究の一環である︒研究方法としては︑﹃科誠儀範﹄の﹁経目﹂に著録する経
典と︑現行道蔵本所収の同名或は類似している経題の経典との関係を明らかにし︑経典目録作成の作業として進めてきた︒
本稿もその方法にしたがって論を進める︒二経典を取りあげたのは︑紙数の都合上からと内容が類似しているということ
にある︒しかし︑論を進めるにあたっては︑各経典ごとにまとめていくことをおことわりしておく︒
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﹃金虎真符﹄考
相当する現行道蔵本
﹃金虎真符﹄に相当すると考えられる現行道蔵本は﹃洞真太微金虎真符﹄(以下現行本﹃金虎真符﹄と略称)と﹃洞真太
上金篇虎符真文経﹄(以下﹃真文経﹄と略称)の二経典である︒次に各経典の概略を紹介する︒
︽洞真太微金虎真符︾
﹃道蔵﹄広字号︑第一〇三一冊所収のこの経典は十七紙からなる小部のもので︑十七紙のうち七紙が符で占められている︒
冒頭はこの経典の説明に相当する部分で︑﹁太微天帝君金虎真符は太上元景瑳宮に蔵してあり︑毒獣が万尋しても︑魔を
撃ち経を衛る神虎七千が玉関に備えられている﹂といい︑また︑﹁この符は︑或は天魔隠諦を著わし︑或は万神内名を表
わし︑或は幽喩疑訣を釈する現音である﹂ともいう︒この﹁三天虎書太元よ録﹂を受ける方法は﹃四極明科﹄に依ること
を述べている︒﹁太微天帝君金虎玉精真符は太上上景自然金章の内音﹂で︑この符を侃する者は天地を威制し群霊を呵叱
するとも説く︒
次に太微天帝君金虎真符を記す︒
『金虎真 符』 『神 虎 玉経 真符』 考
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薯講陛璽韻黒毒 幽 華 肇 蔭 匿 罐 譲 垂
右の符について次ように記す︒
右金虎真符︑太微天帝君以伝金閾帝君︑朱書自素盛以紫錦嚢︑侃之箸頭上以行則威制天地群霊神仙敬伏︑玉華執巾天
丁衛躯︑山嶽稽精加敷威神之祝玉清之章︑便得誠斬九魔千妖滅形 ︑此上清禁符不伝於世︑得侃之者飛昇上清︒
次に以下の七種の符を記す︒
舘落大符(此符青地黄書)⁝⁝符有り
日元(朱地青書)⁝⁝符有り
月元(青地朱書)⁝⁝符有り
歳元(白地黄書)⁝⁝符有り
焚惑元(朱地黄書)⁝⁝符有り
大白元(黄地黒書)⁝⁝符有り
辰元(青地朱書)⁝⁝符有り
鎮元(白地朱書)⁝⁝符有り
次に﹁五鈴登空歩虎保仙上符(一名火鈴)﹂︒この中に以下に示す五帝の符とその説明文がある︒
青帝碧霞流鈴登空歩虚上符
ママ赤帝丹震流鈴登空歩虚上符
白帝素霞流鈴登空歩虚上符
黒帝緑霞流鈴登空歩虚上符
黄帝蒼霞流鈴登空歩虚上符
この後にこれら符の受け方を記し︑つづいて︑﹁火鈴振威内存大神祝慧云云﹂として︑それぞれの祝を記す︒
(3)現行本﹃金虎真符﹄とほぼ同内容のものが﹃無上秘要﹄(以下﹃秘要﹄と略称)巻九十七に﹁五鈴登空歩虚保仙上符
(一名火鈴)﹂﹁流金火鈴内視振威大呪神慧﹂として収められている︒前者は文字の違いが少しあるのみで一致し︑後者は
文章が前後する個所がいくつかあるが︑現行本﹃金虎真符﹄からの引用であることは明らかである︒現行本は前述した如
く︑﹁火鈴振威内存大神祝智云云﹂と文中のもので︑項目として出しているものではない︒﹃秘要﹄が項目としてとりあげ
たものである︒
︽洞真太上金篇虎符真文経︾
﹃道蔵﹄広字号︑第一〇三一冊所収︑﹃金虎真符﹄の前に収められている六紙からなる小部の経典である︒冒頭は次に示
す﹁金虎真符﹂ではじまる︒
『金虎真符』 『神虎玉経真符』 考
﹁右金虎真符﹂以下は︑現行本﹃金虎真符﹄と同文である︒
次に﹁太上神虎玉経神虎内真符﹂﹁神虎上符﹂と各符の説明が記してある︒
あつかう﹃洞真太上神虎玉経﹄と同文のものなので︑ここには省略する︒
一一古道経の引用文と現行本の関係 これらは︑本稿﹁神虎玉経真符考﹂でとり
(4)(5)引用文のある古道経は﹃秘要﹄﹃雲笈七籔﹄(略称﹃七籔﹄)﹃太平御覧﹄(略称﹃御覧﹄)の三経典である︒引用文の所在
の表示は︑巻・紙とその表裏・行とし︑巻二七の第一紙表一〇行目は27/1a10のように示す(その行は経典名所在の位
置)︒
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︽秘要︾①27/‑a10
侃此符者威制天地詞叱群霊︑控景駕龍位司高仙︑環音既震則玉華侍側金真衛兵千妖喪眸万鬼滅形︒
右出洞真金虎真符
現行本﹃金虎真符﹄1b8に相当し︑文字の相違が一個所あるのみである︒
②30/5b7
太微天帝君金虎玉精真符︑乃太元上景自然金章之音︒
現行本﹃金虎真符﹄1b5に相当し︑欠字が一個所あるのみである︒
③31/11b5・7
非有項籔玉名刻簡三清者︑皆不得金虎内符及聞太上之玉篇︒
右出洞真太微天帝君金虎真符
現行本﹃金虎真符﹄1a5に相当し︑完全に一致する︒
④33/5b7
伝非其人身入風火七祖父母長考干水官︒
右出洞真金虎真符
現行本﹃金虎真符﹄2a6に相当し︑文字の相違が一個所あるのみである︒
⑤34/14a6・8
凡受金虎真符者︑齎金虎玉鈴素錦玄羅各三十尺︑以為金真之誓盟於天地不宣之約︒
右出洞真太微天帝君金虎真符
現行本﹃金虎真符﹄1b1に相当し︑文字の相違が一個所あるのみである︒
⑥47/6a5
金虎真符
右受之者先斎七十日
現行本﹃金虎真符﹄1b1に相当する︒
﹃秘要﹄の引用は以上の六個条で︑すべて現行本﹃金虎真符﹄のーa5から2a6までに相当し︑
るだけである︒これは﹃秘要﹄が引用したものは現行本であるとみてよかろう︒ 文字の違いが数個所あ
『金虎真符』 『神虎玉経真符』考
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︽七籔︾①4/22a‑
玄都上品第九篇日︑方諸文震霊符︑諮落七元︑八天隠文︑流金火鈴︑金神虎符︑消魔支幹︑夜照神燭︑⁝⁝︒
﹁諮落七元﹂﹁流金火鈴﹂については︑現行本﹃金虎真符﹄の﹁五鈴登空歩虚保仙上符(一名火鈴)﹂(7a6)に﹁左榔
則為流金火鈴︑右振則冠諮落七元﹂とある︒また﹁諮落七元﹂とは︑同経典の3b10〜6b10所収の﹁諮落大符︑日元・
月元・歳元・焚惑元・太白元・辰元・鎮元﹂の各符をさしているのであろう︒
②6/6b7
三洞品格
八素真経云︑太上之道有三︑上真之道有七︑中真之道有六︑下真之道有八︑今出如左︒
玉清隠書
神虎大符
金虎真符
右是太上之道︑行此真道得為太上之真︑位為上真玉皇君也︒
﹁金虎真符﹂が現行本﹃金虎真符﹄をさしていると考えられる︒太上之道三有り︑の三書﹁玉清隠書﹂﹁神虎大符﹂﹁金虎
真符﹂は南嶽魏夫人が在世中に受けた四経典のうちの三書にあたる︒
③7/12a3
玉清隠書金虎符云︑奮儀赤文招日同輿︑結燐黄章与月共居︑⁝⁝
(6)現行本﹃金虎真符﹄﹃真文経﹄に相当する個所は見当らない︒﹃玉清隠書﹄にも見当らない︒
④9/6h10
釈太上金虎符
此符本刻干上清玉簡︑智慧篇中有七万言︑霊音道妙微旨難詳︑或著天魔隠誇︑或表万神内名︑或釈幽論凝決干瑳音也︑
小有王君抄出此符及威神内文之法以制天地群霊︑有一百言耳︒此祝甚秘名日三天虎書太元上籔︑受之者先斎七十日︑
費金虎玉金素金玄羅三十尺︑以為金真之誓盟天地不宣之約︑依四極明科︑聴使七百年中得伝三人︒
現行本﹃金虎真符﹄1a6以下に相当する︒文字の相違五個所あり︒そのうちの﹁玉金素金﹂は現行本の﹁玉鈴素錦﹂
とすべきであろう︒
⑤9/7a10
釈太上金篇虎符
太微天帝君以伝金閾帝君︑朱書白素盛以紫錦嚢︑侃之頭上以行則命天地群霊神仙敬伏︑玉華執巾天丁衛躯︑山嶽稽精
加勅威神之祝玉清之章︑便得斬誠九魔千妖滅形 ︑此上清禁符不伝於世︑得侃之者飛昇上清︒
現行本﹃金虎真符﹄2b6以下︑﹃真文経﹄1b1以下に相当し︑完全に一致する︒
⑥廻/14a7
11『 金 虎真 符』 『神 虎 玉経真 符 』 考
太上大道君遣協農大夫石叔門賜盈金虎真符流金之鈴︒
﹁金虎真符﹂という名称のみの引用である︒
﹃七籔﹄の引用は以上の六個条である︒﹁云﹂とする③は現行本に相当する個所はない︒④の﹁釈太上金虎符﹂は現行本
﹃金虎真符﹄に相当し︑⑤の﹁釈太上金篇虎符﹂は現行本﹃金虎真符﹄と﹃真文経﹄に相当する︒しかし︑﹁釈太上金篇虎
符﹂の名称から考えるに︑﹃真文経﹄から引用したものであろう︒﹃七籔﹄は④と⑤は別の経典としてあつかっているが︑
﹁金虎真符﹂という一つの経典に対する釈ということになる︒④の釈は符の由来︑伝授の仕方等を述べているものであり︑
⑤は符の効用等を述べたものである︒
︽御覧︾
①硲/8b1
登真隠訣云︑太微天帝君金虎符太上玉真保皇道君以授太上太微天帝君︒
現行の﹃登真隠訣﹄には相当する個所はない︒﹁太微天帝君金虎符﹂を授けたのは太上玉真保皇道君ということであろ
う︒
②昭/8b3
又日︑太一有玉璽金真虎符︑方丈台昭霊李夫人治方丈台第十三朱館中︑以晋興寧中降楊君︑曳紫錦衣帯神虎符流金鈴︑
帯青玉色綬︑有両侍女年二十許︑著青綾衣︑一侍女名隠暉捧赤玉箱二枚︑青帯絡玉検文題検一日太上章一日太上文︑
自此後数数来降授書作詩︒
①と同様︑現行の﹃登真隠訣﹄には見当らないが︑﹃真詰﹄巻三の冒頭に︑﹁夫人著紫錦衣︑帯神虎符握流金鈴﹂とある︒
前後の文からみて同内容のもである︒
﹃御覧﹄の引用は以上二個条で︑経名のみの引用である︒
三古道経引用の名称について
﹃秘要﹄﹃七籔﹄﹃御覧﹄に引用されている経典名をまとめてみると以下のようになる︒()内は引用文の順である︒
︿秘要﹀
洞真金虎真符(①︑④)
洞真太微天帝君金虎真符(③︑⑤)
金虎真符(⑤︑⑥ともに名称のみ)
太微天帝君金虎玉精真符(②名称のみ)
︿七籔﹀
太上金虎符(④)
太上金篇虎符(⑤)
玉清隠書金虎符(③)
金虎真符(②︑⑥ともに名称のみ)
金神虎符(①名称のみ)
︿御覧﹀
金真虎符(②名称のみ)
太微天帝君金虎符(①名称のみ)