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本村一郎

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(1)

Toxoplasma gondiiの生物学的研究

第2報 Toxoplasma gondiiの各種理化学的条件に対する 抵抗性に関する追加実験

本村一郎

Biological Studies on Toxoplasma gondii

II. Further Examination on the Resistance of Toxoplasma gondii to Physico‑Chemical Conditions

Ichiro MOTOMURA

Abstract

Following the previous experiment, Toxoplasma gondii was examined in vitro on the resistance to some disinfectants, digestive enzymes and bovine bile.

Strains of T. gondii used were the RH and Beverley, and the experimental methods were almost similar as those in the previous experiment. Results obtained were as follows:

1) The parasites and disinfectant which was diluted to different concentrations with saline, were incubated at 4℃ for 15 minutes and washed twice by centrifugation. The parasites were resuspended in saline and inoculated to mice for an examination on infectivity of the

parasites. Both forms demonstrated to be able to survive at 4℃ for 15 minutes in 0.1%

of saponated cresol, 0.1% benzethonium chloride, 0.01% formalin, 50% ethyl alcohol, 10% sodium bicarbonate and 2% bolic acid. On the other hand, cysts could resist to 5%

carbolic acid and 1% thimerosal but proliferative form could do only to 0.1% carbolic acid and 0.001% thimerosal.

2) Resistance to T. gondii to digestive enzymes was examined by incubating them at 37℃

for different hours. It was shown that cysts survived for 5 hours respectively in 1% trypsin, 1% pepsin, 5% diastase and 5% lipase.

226       熱帯医学 第9巻 第4号:226‑243乱1967年12月

長崎大学熱帯医学研究所疫学部(主任:中林敏夫教授)

(昭和42年11月22日受付)

Department of Epidemiology, Institute for 7repical Medicine, Kagasaki University (Director : Prof. Toshio NAKABAYASHI)

長崎大学熱帯医学研究所業績 第515号

(2)

While, proliferative forms did for 5 hours in 0.5% trypsin and 1% pepsin, and for 3 hours in 5% diastase and 5% lipase.

3) Cysts could survive for 5 hours in 50% bovine bile and for 3 hours in 5% sodium‑

cholate, but proliferative forms could do for 5 hours in 25% bovine bile and was killed by 0.1% sodium cholate within 30 minutes.

Toxoplasma gondiiの生物学的研究,第2報       227

は  じ  め  に

本研究では第1報の研究にひきつづいて, Tpの理

化学的条件に対する抵抗性,とくに2, 5の化学的要 因に対する抵抗性について検討した.すなわち,前報 においては,温度,彦透圧, pH,乾燥及び紫外線照 射等の物理的な要因に対する原虫の抵抗性について報 告したが,本研究は数種の消毒薬及び洗油菜に対する 一rpの抵抗力及び2, 5の消化酵!者,胆汁またはコ‑

ル酸ナトリウム等の薬剤がTpの生活力にどのような 効果を発揮するかについて検討を加えたものである,

Tpは増殖型と Cyst型では抵抗力にかなりの差異 一があり, Jacobset al.(i960)によれば, cystの抵抗 性の強いのは単にCyst 膜の保護作用のみではなく Cyst から人工的に遊山させた原虫でも消化液こ対し て増殖塑原虫よりも抵抗性が強く,本質的にCyst型

の原虫は増殖型の原虫と異なる性質を獲得しているた めであろうと述べている.

第1報において記載した如く, Tpの増殖型とCyst 型との抵抗性は多くの面ではほぼ同等であったが, 2 cC附近の低激こ保存した場合, cyst型は増殖型の給

6倍も長く生存していることが確認された.このよう に,型による抵抗性の差異ほ原虫が消毒薬剤と接触し た場合にもみとめられるものか,また,消化液及び消 化酵!養4の作用がTpの生存に対してどの程度の影響を 与えるか等について知ることは重要なことと考えられ る.

本態こおいては.上記薬剤に対するTpの抵抗性を i―nvitroにおいて検討した結果, 2.の興味ある知見―

を得たのでここに報告する次第である.

実験材料および方法

実験に使用した原虫株はRH株(増殖型)とBever〓

1ey 株(Cyst型)の2株である.

実験に用いた動物は体重18‑20gのdd系マウスで, 供試マウスはすべて固形飼料(日本クレア CA‑Oと 少量の水を与えて飼育された.

RH 原虫浮遊液並びに Beverley株Cyst (以下 Bev. Cyst)浮遊液ま著者の第1報(1968)に記載の方 法によって作製した.ただし,第1報において雑菌汚 染防止のために,ペニシリン及びストレプトマイシン を添加したが,今回の実験ではマイシリンの添加は行 なっていない.

この原虫浮遊液と薬剤の生理的食塩水(以下,生食 水)溶液との等量を混合し,薬剤の最終濃度を決定し た.第1報において既に述べた如く, RH は蒸留水 に極めて短時間(1分間以内)の接触によって容易に 死滅することが判明していたので,薬剤の溶媒として は蒸留水は一切用いず,すべて生食水を用いることと

した.

薬剤と原虫浮遊液の等量混合液は,消毒薬の場合ほ

4℃の冷蔵庫内に,酵凄液及び胆汁液等の場合は57〇C の恒温槽内に所定時間保持した後,直ちに1.500G ( 3,0巾rpm) 5分間遠心沈澱し,上清部を棄て,汰 い濾11虫激こ生食水を加えてよく擾拝して再び遠沈する (3,0巾rpm5分間).同様の操作をさらに1回線返し て洗淋し,薬剤の残存を極力回避した。消毒薬割と原 虫との接触時間は,冷蔵庫内10分と最初の遠沈操作中 の接触時間5分を加算して15分間の接触とした.

接種材料の注射方液ま腹腔内注射に統一し,注射液―

量も‑定した.接種材料中のTp原虫の生死判別は, 第1報に記載した方法に準拠して行なった.

Tp体抗価の検定ほ花木・信藤によって開発された Tp感作血球凝集反応(以下HA )を用いて行なった.‑

実験に使用された薬剤は次の如くである.消毒薬:

クレゾ=ル石鹸液(局方,高杉製薬),塩化ベンゼト ニウム液(,̀‑イアミン",三共製薬),石炭酸(和光 純薬1級),エチルアルコール(和光純薬1級),マ「

ゾニン(チメロサール,武田薬品),ホルマリン(局方>

和光純薬),洗糖英:炭酸水素ナトリウム(和兜絶

(3)

228       本  村  一 郎

薬特級),棚酸(和光純薬特級)        1 ‥50。 5分°,リパーゼ(和光純薬 Wheatgerm) 辞素:トリプシン(1 :250, Difco),ペプシン(1  この他,コール酸ナトリウム(石津製薬),デスオキ : 10,000 Difco),ジアスターゼ(和光純薬,牛膝臓  シコール酸ナトー)ウム(米山製薬)が実験に使用された.

実  験  成  績 1.教程の消毒薬割に対する,rpの抵抗性についての

検討

一般に広く使用されている8種の消毒薬並びに含嚇 洗油菜等の薬剤と一定時間接触した原虫が,マウスに 対する感染性にどのような変化を受けているかを検討

した.

まず,最終的濃度の2倍の濃碇に調製した各薬剤を, J))型遠沈管に2cc宛分注し,これに原虫浮沸液を2cc 加えてよく混和した後, 4。Cの冷蔵庫内におき,とき どき振つてよく混和し,10分後に1.500G (3,000rpm)

5分間遠沈する.原虫と消毒薬割との接触時間は,袷 蔵庫10分と遠沈操作に要した5分を加算して15分間と して表現した(表1及び表2参照)°つぎに,上清部 を棄て,生食水をもって2回洗消した後,沈漆原虫部 に4 ccの生食水を注如してよく撹拝してマウスに接 種した.

原虫と薬剤との混合液中の原虫数は, RHの場合 200万 400万個体/O.Ice, Bev.Cystの場合は300‑

100個/O.lccの範囲に調製した.接種量はl.2ccに統

一した.

表1。  RH増殖型に対する各種消毒剤の効果

Tablel. Effect of disin ectants on survival of the RH proliferative form

Drug Cone.

%

No. of mice inoculated

Saponated solution of cresol (pharmacopoeia)

0.01

o.1

1.o

Benzethonium chloride

solution Hyamine≠

0.01

o・1

1.o

I

1

1 7 3

1 2 3 1 2

, )

1 7

3

1 7

3

1 7

o

Carbolic acid

o.1

1.o

1 7 3 1 2 3

Fate of mice inoculated

1 1

‑ 1 1

/

D比C 6)**÷:i

D (6) D (6) D (6)

D (6ノ

D (7) s鞘(25) S (25) S (25ノ

Detection of T. ‑ondii Prolif form Cyst

HA

+

D (73 D (7) D C D (8ノ D ( D (7) S (25) S し25) S c25;

王自

D ( 6) D (6) D C5) S (25) S (25) S (25)

(4)

Toxoplasma sondi・iの生物学的研ノ七,第2報       229

Dmg Cone.

O/6

No. of mice inoculated

Fate of mice inoculated

Detection of y. gondii prolif form Cyst

HA

Thimerosal

0・ 0001

0. 001

o.oi

o.1

1 2 3

1 2 3 1 1 3

1 7 3

Formalin (37% of HCHO)

0 01

o.1

1.0

1 2 :)

1 7 3 1 2 3

D D D D D D s s s s s S

し ー…)

C M

し ヽ…)

(6) (9) (1o3 (30) (30) (30) (30) (30) (30)

D (5) D (5) D C S) S (25) S (25) S (25) S (25) S (25) S (25)

+

Ethyl alcohol

5o

70

9o

1 9

J

1 2

.>

1 2 3

Sodium bicarbonate

2

4

1o

1 2 3

1 2 3 1 2

^

D (6) D ( ') S (25) S (25) S (25) S (25) S (25) S (25) S (25)

::

+

D (5) D (4) D (4) D C5) D (4) D c s;

D (5) D (5) D C S)

Boric acid

2

1 2 3

D C5) D (5) D C S)

十 十 千 十 十 十 十 + s

+

Saline control

1 2 .1

D (5) D (4) D (4J

1

Tp and a drug were incubated at 4二C for 15 minutes.

鞍D :  Death ol mice

柵    Survival of mice

‑鵜   Numbers in parentheses give the survival days of mice

(5)

230      も  w     郎

表2・ Beverley…ノ/シストに対する各種消毒薬剤の効果

Table2. Effect of disinfectants on survival of the Beverley cyst

Drug Cone

%

No. of mice inoculated

Fate of mice inoculated

Detection of 7.gondii

prolif. form壬 cyst

HA

Saponated solution of cresol ([pharmacopoeia)

0 01

o・1

1.o

Benzethomum chloride

solution "Hyamine≠

0 01

0.1

1.o

1 2 o

1 2 J

1 2 J

S **(30 S (30 S (30 D羊(1o S (30 S (30 S (30 S (30 S (30

")**サ

) )

° )

° ) ) )

+ +

+

1 2 3 1 7 b

1 2 :)

D (20) D (ll) S (30) S (30) S (30) S (30) S (30) S (30) S (30)

::

+ + +

Carbolic acid 0.1

1.o

5.o

lO・o

1 2

一>

1 2 3 1 2 3

1 2 3

D (12) D (13) D (12) D (18) D (16) S (30) S (30) D (25) S (30) S (30°

S (30) S (30°

.ト

+

::

Thimerosal

0. 0001

o・ool

o・01

0・1

1 o

1 2

.)

1 2 3

1 2 3

1 2 3 1 2 .1

U (14) D (16) D (ll) D (17) D (15) D (14) S (30) S (30) S (30) S (30) S (30) S (30) S (30) S (30) S (30)

+

+ +

,.

+

+

(6)

Toxoplasma gondiiの/i物学的研究,第2報       251

Drug Cone

% Formalin (37% of HCHO)

0.01

o.1

1・o

Ethyl alcohol

5o

7o

9o

Sodium bicarbonate

7

4

1o

No of mice inoculated

Fate of mice moulated

1 1 3

1 1 3

1 2 3

1 2 .i 1 2 3

1 2 3

S (30) S (̲30) S (30) S (30) S (30) S (30) S (30) S (30) S (30)

Detection of T. gondii

prolif ㌫▲「  cyst

+

HA

D (13) D (14) D (16) S (30) S (30) S (30) S (30) S (30) S (30)

.1」

+

11⊥

1王

3 3

Boric acid

Saline control

>

1 7

.}

1 7

3

1 7

, *

1 7

J

S (30) S (30) S (30) S (30) S (30) S (30) S (30) S (30) S (30)

S (30)

D G9)

s (30)

1 2

,>

D D D

(12) (12;

(13)

+・

Tp and drug were incubated at 4cC for 15 minutes.

*D :  Death of mice 榊    Survival of mice

‑羊  Numbers in parentheses give the survival days of mice

表1及び表2に示した如く,クレゾール石鹸液中に おいては, RH増殖型は0.1%の濃度では15分間生存 したが1%では死滅した Bev・CystもRHと同 様の成績が得られた.

‑イアミン液は塩化ベンゼトニウムを含有する水溶 液で,逆性石鹸と呼ばれる殺菌消毒剤であるが, RH 及びBev.Cyst はともに1%‑イアミン液中で15分 以内に死滅した・

マーゾニッ液はエチル水銀チオサリチル酸ナトリウ ムを主成分とし, *ニ物学的製剤及び薬品の防腐剤とし て使用されている・マーゾニッ液中でRH増殖型は0.

o1%濃度で死滅したが Bev・Cystは1 %濃度におい てもなお生存し,かつ,マウスに対する感染性を維持

していた.

石炭酸液中ではl %濃度で増殖型は死滅したが,

召ev・Cystは5 %濃度でも生残し, 109イoでは死滅した・

(7)

252      本  村  一  郎 局方ホルマー)ンは37% HCHO.を含有しているが.

この局方製品を原液として濃度を調製した. RH は 1.1%以上の濃度で死滅し Bev・CystもRHと同様 の結果が得られた.

50%エチルアルコール液中ではRHとBev.Cyst はともに15分間生残し, 70%, 90%アルコール液中で は両株とも死滅した・

重曹水は普通洗源,含噸剤としては2%前後を用い られているが,この濃度及びそれ以上の濃度(4%, 10

%°ではRHとBev.Cystの感染性には何らの傷 もみとめられなかった.

棚酸水は普通洗油,含噺剤として用いられる場合, 1‑2%の濃度であるが,この濃度ではRHもBev.

Cystもともに全く傷害を受けずに生残した°

2.ニ,三の消化酵素に対するTp原虫の抵抗性につ いての検討

Tpの経口感染の場合,原虫は消化液,消化酵菜, 胆汁等の作用に打勝ってはじめて感染が成立する.哨

表3.   RH増殖型に対するトリプシンの効果

Table 3. Effect of trypsin on viability of the RH proliferative form

Time of digestion

(hour)

Cone of trypsin

C%)

No. of mice inoculated

1

o・1

0 S

1 0

1 9 S)

1 2 3

1 2 3

Saline Control

3

0

o

1 1

^

o

1 7

,1

1 7 3

1

? 3

1 2 .1

Fate of mice inoculated

L> ( 7) D (7)

D (7ノ

D (7)

D し7ノ D (7ノ D (8ノ D (8ノ 1) し ゞ)

Detection of T・ gondii

prolif. form Cyst

+

HA

D D し7) D し7)

D C8) D C

D (7) D C D し8)

D Cl‑°

D (103 D (10) D (io;

+ +

1ト 1ト

Saline Control

5

o.1

o.s

1 o

1 7 3

D (7) D C8) D (9;

1 7 .1

1 7

I)

1 2 3

D (10) D (8) D C8J>

S (3‑) s c3CO D (13) S (30) S (30) S (30)

・r‑

1十

十 十 .ド

Saline Control

1 2

, >

D (7) D (8) D C9)

Tp and trypsin were incubated at 37〇C

+

(8)

Toxoblasma ・eondiiの生物学的研究, J第2報      255 乳動物にみられる酵素のうち主要なもの2,5を選び,

これらの酵素がTpに対してどのような効力を発揮す るかを知る目的でこの実験を行なった.

実験に用いた消化酵素はトリプシン,ペプシン,ジ アスターゼ及びリパーゼである・

これらの酵素は生食水を用いて溶解し,原虫浮済液 と等量ずつ混和して最終濃度が求める濃度になるよう に調製した.各混合液は57℃の恒ヽvFI

/im.槽内に保持して,

所定の時間毎に取出し,直ちに遠沈して葉虫後,さら

に生食水で2回遠沈批准の後,マウス腹腔内に注射し た。

各酵素液はその作用を十分に発揮させるために,至 通pHの生食水が溶媒として用いられた.しかしながら, このpHは原虫に傷害を与えるものであってはなら ない.すでに,第1報において記載した如く, RH増 殖型はpH 1.2の強酸度液中においた場合, 5時間後 より傷害を受けていることがみとめられ, 22時間後に は死滅していた.また,第1幸削こ記述したように,RH

表4.   Beverley シストに対するトリプシンの効米

Table 4. Effect of trypsin on viability of the Beverley cyst

Time of di・

gestion (hour)

1

Cone of trypsin

v ‑>p

No of mice inoculated

Fate of mice

,

Detection of T.gondii

inoculated 中州olif for‑

Cyst

o 1

o・5

1 o

Saline Control

3

s

0.1

0.5

1 o

1 2 :) 1 2 3

1 } 3

1 7

3

1 7

I)

1 7 3

1 7

3

Saline Control

o.1

0.5

1 o

1 7

3

D (8) D MO) D (9) D (ll) s し27)

D し3ノaccident?

D (ll) D (10) D (18;

D (9)

f呂''壬?3

ゝD; L……1年3/

D (10ノ D し10ノ

D (10) D し11) D し10一

D (12;

D (12) D (12)

1 7

3

1 7 :)

1

? 3

D (10)

D OO)

S (30) D (9;

D (9) D (10) D (10) D (10) D (10)

+

mm 十 十

+ 十

+

ii

ii=

s:

mm +

十 +

Biョ

+

+

〜†l

/ト 十 十 1「

i

3

/

/

i

Hl

Saline Control

1

?

:)

D ( D (10) D (9) Tp and trypsin were incubated at 37 C

+ +

(9)

254       本  村  一  郎 及びBev・Cystはともに, pH5・0‑12。0の広いpII

域に強い抵抗性を保有していることが明らかにされた.

このため,ペプシン液のpHは2.6に調製した・各酵 素液はINNaOH及びINHClを用いて,酵,辛作用に 適したpHでしかも原虫に傷害を与えないpHを選ん だ・すなわちトリプシン液はpH 8.0,ペプシン液は pH2.6,リパーゼ液はpH8・5またジアスターゼ液は pH 8.0とした・

原虫数はRHが8D万個体ノI. IcG, Bev,Cystが240個 /O.lccであった.

実験の結果,表5,表4,表5並びに表6に示した 如く, RH増殖型と Bev.Cystはともにトリプシン 及びペプシンの作用に対して比較的抵抗性が強く,検 査された濃度範囲では5時間後の検査においても,な お原虫はマウスに対する感染性を維持していた.

しかし,一方,ジアスターゼ及びリパーゼの酵素作 用がTp 原虫に及ぼす影響を検討した結果,表7, 表8,表9並びに表10に記載する成績が得られた.す なわち,両酵素に対しては, 5時間接触によってRH 原虫は死滅したが, Bev.Cyst は5時間後もなお生 残し,より強い抵抗性を有することが確認された.

3.月旦…十液中におけるTpの抵抗性(二ついての検討 胆汁は肝細胞で作られ,細胆管に集まり,総胆管 を経て十二指腸に排押される液で,肝臓から絶えず分 泌されている・胆汁はその中に含まれている胆汁酸の 作用によって脂肪の乳化を助け,脂肪酵素の作用を容 易ならしめ,難溶性の物質を水溶性にして吸収を容易

に行なわせる働きをしている.

Tp原虫が胆汁と触れた場合,マウスに対する感染 性にどのような影響がみられるかについて検討した・

表5.     増殖型に対するペプシンの効果

Table 5. Effect of pepsin on viability of the RH proliferative form

Time of digestion

(hour)

Cone, of pepsin

(%)

No. of mice inoculated

Fate of mice inoculated

Detection of T. s,ondii

Prolif. form Cyst

HA

1

o.1

0.5

1 o

1 2 o

1 2 J

1 7 3

D (6) D (7) D (6) D (6) D (6) D (6) D C 6) D (7) D (6)

■■

+

.)

o.1

0.S

1 0

1 2 J 1 7 3

1 2 J

S (30) D ( D C7)

S (30) D (10) D (9)

D (

D (7) D OO)

……

‑「

十 十 1ト 十

5

o.1

o・S

1 o

1 2 3

1 2 3

1 7 3

D (8) D (9) D (9) D (8) D (8°

D (8) S (30) D (14) D (10)

.ド IB 11「

.S

……

+

‑I +

Saline Control

1 2 3

D (7) D (8) D (6)

Tp and pepsin were incubated at 87"C.

+

(10)

Toxoplasma gondiiの生物学的研究,第2報       255 実験に用いた胆汁は屠殺牛の胆嚢より無菌的に採取

した胆汁である° この牛胆汁は生食水によって稀釈し, 等量の原虫液を加えた最終濃度を1,10, 25及び50%濃 度になるように調製した.胆汁.原虫混合液は37cC 恒温槽内に所定の時間保持した後,遠沈集虫し,さら

に2回遠沈洗淋後,生食水浮済液としてマウスに接種 した.混合液中の原虫数はRH 180万個体ノo.2ccであ り, Bev.Cystは400個/0.2ccであった.

この実験の結果,表11と表12に示すように,牛胆汁 液中におけるRHは25%濃度液中で5時間の接触にお いて生存がみとめられたが, 50%濃度液5時間では死 滅した・しかし, Bev. Cystは50%胆汁液中に5時間 接触させても原虫は死滅しなかった・

4・コ■ル酸ナトリウム及びデスオキシコ■ル酸ナ

トリウム溶液中におけるTp原虫の抵抗性(ニつt)て の検討

人体における胆汁の成分としては,胆汁酸,胆汁fe 某が主であり,その他,中性脂肪,レチシン,燐脂 質,ムチン,コレステリン,無根物質などが含まれて いるが,このうち,.胆汁酸の主成分は,コール酸,ケ ノデスオキシコール酸,デスオキシコール酸並びにリ トコール酸などである.

これらの胆汁酸の50‑75%はグリシンと残りはタウ リンと抱合し,所謂抱合胆汁酸(グリココール酸,タウ ロコール酸)として分泌されている.胆汁酸の主な生理 作用は強力な利胆作用と脂肪の消化促進作用であり,

この他にもビタミン類吸収作用と利尿作用が認められ ている.

表6.   Beverley ヽンストに,上才するペプシンの効果

Table 6. Effect of pepsin on viability of the Beverley cyst

Time of

digestion (hour)

Cone, of Pepsin

しOノ6 )

1

o・1

o・5

1 o

No of mice inoculated

Fate of mice inoculated

Detection of T. ondii

Prolif・ form Cyst

1 2 3 1 2 :)

1 7 I)

3

o.1

o 5

1 0

5

o.1

o.S

1 o

1 2 .1

1 7 3

1 2 :)

D (13) S (30) S (30) S (30) S (30) S (30) S (30) S (30) S (30)

S (30) S (30) S (30) S (30) S (30) S (30) S (30) S (30) S (30..

+

+

ii

1

>

I)

1 1 3

1 2 :)

S (30) S (30) S 〔3o) S (30) S (30) S (30一 S (30) D (10) S (30)

+ +

きaline ontrol

1 7

I)

S (30) S (30) S し3o)

Tp and pepsin were incubated at 37cC.

1ト

(11)

255       本  村  一  郎 この実験では,胆汁酸の主成分であるコ一ル酸並び

にデスオキシコ,ル酸に対し,原虫はどの程度の抵抗 性を保有しているかについて検討したものである.

実験には水溶性のコール酸ナトリウムとデスォキシ コ,ル酸ナトリウムを使用した.これらの薬剤と原虫 浮遊液との混合液の濃度は1.1, 1,0' 2.5及び5.0%で あり, 5ワ。Cの恒温槽内に5D分,または5時間接触させ た 接触後,原虫を生食水で2回洗漉し,マウスの腹 腔内に接種した。接種時の虫体数はRH180万個体/o.2 cc, Bev.Cyst520個/0.2ccであった。

0.1%以上のコ,ル酸ナトリウム溶液中において, RH増殖型は50分間の接触によりすべて死滅したが

(表15), Bev.Cystは表14にみるように, 5.096コー ル酸ナトリウム液中に5時間接触後もなお原虫の生残 が確認され, RH増殖型よりもCystはより強い抵抗 性をもつことが認知された。

5%以下のデスオキシコール酸ナトリウム溶液中に おいて, RH増殖型と Bev.Cystは50分の接触時間で は両株ともに生存が確認された(表15).

表7.   RH増殖型に対するジアスターゼの効果

Table 7. Effect of diastase on viability of the proliferative form Time of

digestion ( hourノ

Cone of Pepsin

し%〜°

No mice inoc

of

ulated

Fate of mice inoculated

Detection of T・ gondii

Prolif. form Cyst lHA

1

0.s

1.o

5・o

,

/

.

1 7 3

1 7 3

1 2 3

Saline Control

3

o.5

1 o

.… ll

1 7 3

1

?

3

1 7

3

1

^

3

5

l ,

】】

1

1

o.s

1 o

5 o

1 7 3 1 2 3 1 7 3

/! D (4) 4) D し4一 D (4ノ D し7ノ D (5ノ D (9ノ D (8ノ D し10ノ

D (4) D (4) D (4;

‑h 1ト + + + +

D (7) D (7) D (7) D (10) D (8一 D cio;

D (9) D (

D (一 8ノ

■ト 十 十 十 十 .ト + 十

]

/ / / 1

】】

/

//.

3

F

S (30) S (30) S (30.) S (30) S (30;

S し3o) S (30) S (30) S (30.)

Tp and diastase were incubated at 37こC

(12)

Tcxoblasma sondiiの4ニ物学的研究,第2報      257 表     Beverleyシストに対するジアスターゼの効果

Table 8. Effect of diastase on ヽlability of the lieverley cyst

Time of digestion

(hour;

Cone, of diastase

し9P

1

>>

0 5

1.o

5.o

Saline Control

0.5

1.o

5 o

No. of mice inoculated

1 2 .…

1 7

3

1 7 ,1

1 2 3

1 2 3 1 7 .1

1 s 3

Fate of mice inoculated

D (10) S (30ノ S (303 D (10) S (30) S (30) D (10) D (1o) s し30)

[ L

[

i 1

1

D (10) D (13;

D (10)

Detection of T. gondn prolif. form / Cyst

・ト

十 十 一卜

+

D (10,, D (9) D (9J>

S (30) D (io;

D (10一 D (9j D (9) s (.so;

1ト

^

0 5

1 o

5 o

1 7

3

1 7

3

1

^

3

D (10) D し1o) D , (V D ( 9) D (9) D (9) D C9J>

D (93

D (13°

Tp and diastase were incubated at 37こC

+

+

+

一ト

+

+

(13)

2.でF;       太  村  一  郎

表     RH増殖型に対するリパーゼの効果

甘able 9・ Effect of lipase on viability of the RH proliferative form ,rime of

digestion (hourj

Cone, of lipase

(%)

No of mice inoculated

・‑,,,.iDetectiono Fateofmice'王T.gondii inoculatedprolif.formCyst

HA

1

1.o

2・5

5 o

1 7 3 1 7 3

1 2 3

D (9一

D t 9;

D しウノ

D (9;

D しウノ D (10ノ D r D し10) D し1o)

iiii

+ + + 十 十 十

,5

1.o

2・5

5 o

1 2

.>

1 2 3

1 2 3

D (9) D (9) D (9) D (9) D (9」

D (9) D (9) D (10) D C9;

+ + 1十 + +

ヽ…

1 0

2.5

S・o

1 2 3 1 2 3 1 2 3

s (30) s し30) S (30;

S (30) s (3o;

s (30;

S (3o) S (30) s (30;

Saline Control

1 2 3

D (5) D (5) D (6)

+

Tp and lipase were inucbated at 37。C.

表10.   Beverleyシストに対するリパーゼの効果

Table 10. Effect of lipase on viability of the Beverley cyst

Time of digestion

(hour)

Cone of lipase

(%)

No of mice inoculated

Fate of mice inoculated

Detection of T. gondii

Prolif. form Cyst

5

1.0

2.5

5。o

1 2 J>

1 2 3 1 2 3

S (25) D (12) D (12) D (12) D (.9) D (9) D (9) D し1o) D C9)

+

‑ト

Saline Control

1 2 3

D (9) D (ll) D ci2;

Tp and lipase were incubated at 87。C・

(14)

Toノ:of>lasma gondiiの生物学的研究,第2報       259 表11.   牛胆汁液中におけるRH増殖型の生残

Table H. Survival of the RH proliferative form of Toxoplasma in bovine biliary solution

Time of exposure

( hour)

Cone of bile

(%)

No of mice inoculated

7

1

1o

2=;

50

1 7 3

1 7

3

1 7 3

1 2 3

//

Fate of mice

3

Detection of T vondii inoculated prolif. form Cyst

D (5) D 〔5) 5) D (6) n , o*

D (6) D (7) D C7) D C6) D (8) D ( D (

+

+ + + + + +

ITA

^

1

1o

25

5o

1 2 3

1 7

,1

1

^

3

1 2 3

D ( D C D C

D C9)

D C

D (10) D (9) S (30) D (10) S (30) S (30) S (30)

+

+

Saline Control

1 1

3

r D D

しさ) (5) し 5)

Tp and bovine bile were incubated at 87°C.

表12・

Table 12.

+ +

牛胆汁液中におけるBeverleyシストの生残

Survival of the Beverley cyst of Toxoplasma in bovine biliary solution

Time of exposure (hour)

Cone, of bile

(%)

No of mice inoculated

Fate of mice inoculated

Detection of T. gondh

Prolif. form Cyst

5

1

10

25

5o

1 7

.〜

1 7 3

1 7

3

1 7 vl

D (ll) S し3o) S (30) S (30) S (30) S (303 D (IS) S (25) D (10) S (25) S c25) S (25)

.卜

Saline Control

1 7

3

D (ll) D (13) D 〔1o)

Tp and bovine bile were incubated at 37‑C・

(15)

240       本  村  一  郎

表13.   コール酸ナトリウムに対するRH増殖型の抵抗性

Table 13. Resistance of the RH proliferative orm to Sodium Cholate Time of

exposure (minutes^

3o

/1

/

1

I

Cone・ of Sodium Choi‑

ate (%)

甲。・ 。f miceトate 。f mice

inoculated inoculated

Detection of T.gondii

pro叶 form Cyst

HA

o.1

1.0

2.5

S.o

/

/

;

/

1 1

^

3

1

? 3

1 7 3

1 7 3

1 /

1

S (30) S (30) s し3o) S (30) S ^30) s し3oノ

S (30ノ

s し30) s し30ノ s し3oノ s し3o一 s し3o一

Saline Control

1 2

:)

r呂巨≡,3

Tp and sodium cholate were incubated at 37〔C

十 + +

表14・   コール酸ナトリウムに対する Beverleyシストの抵抗性 Table 14. Resistance of the Beverley cyst to Sodium Cholate

Time of

exposure (hour)

o 5

1

l

Cone of Sodium Choi・

ate

No of mice inoculated

Fate of mice inoculated

Detection of T. gondし'i

Prolif. form Cyst

o.1

1 o

7 ^

5 o

1 7

:)

1

? 3

1 7

3

1 7

.1

D し12) D し9) S (30J D し12) s し3oノ D eio;

S (30) D し11) s し30ノ S (30) s し3oノ D し13)

mm 1寸1

……

+

3

1・o

2.5

S o

1 2 ,1

1 7 3

1 2 3

S (30) s し3o) S (30) S (30) S し3o) S し3o) S (30) s し3o) s し3o)

//

1十 +

■ト

+

Saline Control

1 2 3

呂o?o (.12) D(.9)

]

/

/

/

Tp and sodium cholate were incubated at 37cC

(16)

Toxoblasma sondiiの埠物学的研究.篇2朝       241

表15・   デスォキシコール酸ナトリウムに対する Toxoplavnagondnの抵抗性

Table 15. Resistance of T.gondii to Sodium Desoxycholate

Strain

RH

Cone, of Sol dium Desoxy‑

cholate (%)

o.1

1.0

Saline Control

Bev. Cyst

o・1

1 0

No. of mice i Fate of mice inoculated inoculated

1 7 3 1 7 3

1 7

3

1 7 /)

1 2 3

Saline Control

1 7

3

D し13) D し12) D し12) D (13) D し13) D し14)

D ( 5) D c 5) D し 5)

Detection of T.gondii

prolif. form Cyst

+

+

S (30) s し30) s し3o) s 〔30) D し15) D し13)

D (10) D し13) D し12)

+

+

Tp and sodium desoxycholate incubated at 37oC for 30 minutes

+

考         察 Toxoplasma gondiiは人体にきわめて重大な疾病を

もたらし,殊に乳幼児においては致死的感染を惹起し, また広汎な不顕性感染の実態も次第に明らかにされて きている.しかしながら,自然感染経路は先天性感染 を除いては実証性に乏しい現状である.従って,本疾 患の予防及び治療に閲しては未解決の問題が多く残さ れている°予防対策を推進するにあたって,木原虫の 感染動物から外界への排粒径路,外界における生残性 および生体への感染経路等について十分な知識が与え

られねばならない.

Tpは生体からの分泌物あるい排継物を介して外界 に排推されることが知られている・すなわち,唾液中 への出現を示唆したMesnil et al。 (1913)の論文,

唾中液にTpの排班を実証したEichenwald (1948), Manwell et al. (1951)及び櫓垣(1959)らの報告も あり,また, Perrin (1945)は腸内容物中に出現する といい Olafsonef c/.(1942), Fankhauser (1951) らは腸内容物の他に尿中にもTpは出現することを確 認している。この外にも,乳汁(Laven e.tal.1950),

啄疾(van Thieletal・ 1949° 及び涙液中からTpを 検出したという報告がある.

しかしながら, Tpの外界での抵抗性について検討/

した報告は部分I,伽こ散見する程度であつて(Manwell el c.1. 1945),僅かにJacobset al.(I960)の比較的轟 細な論文を見るに過ぎない.多くの研究者が一致し てみとめていることば, Tpは理化学的刺戟に対してー 抵抗性が弱く,感染動物の体外では容易に死滅する Obligate intracellular parasiteであるということ である.

Tpの伝播に関する研究は,一般にTpの増殖型を実 験胡.挙.斗に用いたものが多い.例えば,節足動物への感染 実験などはほとんど失敗に帰している.この原因を増 殖型の抵抗性が〜S飢)ことに原因づける研究者(Jacobs,.

1956)もある.また,Jacobs et al.(1953;・1956;1960°

の報告には, TpのCyst型は組織蛋白成分が共存し た場合,あるいは,低温に保存されたときは増殖型よ りもはるかに抵抗性が強く,長時間にわたってその病 原性を保有していると記載されている.

著者らは,すでに第1報(1968° において述べたよ

うに, Tp の増殖型とCyst型との抵抗性はほぼ同等

とみられたが, 0〇C附近の低温に保存した場合, Cyst

型は増殖型の約6倍も長く」残していることを証明し

(17)

242      本  村  一  郎 た.

本報においては,日常実験室内で使用されている2, 15の消毒薬について増殖型とCyst型の抵抗性の差異を 比較検討した結果, 1%クレゾ‑ル石鹸液, 1%‑イア

ミン液).1ホルマリン水及び7G%エチルアルコー ル液等において15分間で原虫は死滅した.しかし,増 殖型は0.1%石炭酸及び0.001%チプロサール(マーゾ ニッ)液中15分間で死滅したが5, Cystは増殖型よりも 強く抵抗し5 %石炭酸及び1%チメロサール液中で15 分間の接触に生残した.これは今後Tpの消毒にあた

って注意すべき事柄であると考える.

実験に用いた消毒薬剤中,最も殺減作用の強かった ものはホルマリンであった・また,洗減,含噸剤とし て用いられている重曹水や軒酸水は洗液用の濃度( 2

‑3%)ではTpを死滅させることは不可能であり, 殺威効果を期待するよりもむしろ洗液効果の方に意義 があるように思考された・著者の予備実験において, 市販されている洗眼液の原虫に対する殺滅効果は無効

であることを認めている(未発表資料) ・クレゾ,ル 石鹸液, ‑イアミン液も洗減用の濃度(0・1%)では Tpを死滅させることはできない.今回の実験におい て,薬剤と接触後の原虫は遠心沈澱によって生食水 で2回洗液の後,マウスに接種したのであるが,石炭 敢液と接触させた原虫は2回洗蔽後接種したにもかか わらず,マウスは痩肇発作を起し,死にまでは至らな 話ゝヽったが,接雇マウスの変状が観察された・これは洗 一液後の原虫浮遊液中にもなお微量の石炭酸が残存して このような産撃を惹起させたものと思われた.このこ とから2回の洗源によつて,薬剤との接種を完全に断 ち場り得るかについては疑問であり,虫体内部または /体表部に吸着して薬剤が残存する可能性は十分に考え

られる.

, Tpの経口感染の場合,原虫は胃液'消化液及び消 化酵素などの作用を克服して後,感染が成立する訳で あって,このような分泌液に対するTpの抵抗性につ

、いて?, 5検討した・その結果'増殖型及でCyst塑 はトリプシンやペプシンの1%以下の濃度では5時間 王混和後も原虫の感染性は保持されていた.

Jacobs et αI.(1960)は,増殖型は1%トリプシン液 中で少くとも5時間は生残したが, 6時間以上では死 滅したと報告し, Cyst型の場合, Cyst膜はトリプシ ンの作用によって直ちに破壊したが,溝出した原虫は 少くとも6時間は生存していたと記載している.ペプ シン液中でのCystの牛.残性はJacobsらの成績とほ

ぼ同様の結果であったが,増殖型の抵抗性において大 きな差がみられた・すなわち, Jacobsらによれば, 増殖型は0.2%ペプシン液中で1時間以内に死滅したと 報じているが,今回の著者らの実験では1%ペプシン 液中で5時間後も原虫は生存していた.この両者の成 績の相違点が何に由来するか不明ーであるが, Jacobs らの実験ではペプシン液の調製においてHClを加え てpIIを胃液と同様(pHl‑2)に調製しているので,こ のpHの差異に原因があるのかもしれない.著者らの 実験でも,第1報に記述したように,増殖型はpHl.2 においた場合5時間後より原虫は傷害を受け' 22時間 後には死滅していたことが明らかにされ, RH及び Bev.CystはともにpH 3. 0‑12.0の広いpH域に強い 抵抗性を示したことから,今回の実験ではペプシン液

のpHは2・6に調製している・

一方, 5%ジアスターゼ及び5%リパーゼ液中では 5時間後には死滅したが, Cyst型は5時間接触後も 生残していた.

つぎに,胆汁液中ではTpは両型ともかなり強い抵 抗性がみられた・また,胆汁成分のうち胆汁酸の主な 成分であるコール酸とデスォキシヽコ,ル酸について Tpの抵抗性を調べた結果, 0・1‑5. 濃度のコール 酸ナトリウム溶液中でRH増殖型は50分以内に死滅し たが, Cyst型は5時間後もマウスに対する感染性を 維持していた.

一般に,胆汁は水分97.46%と乾燥成分2.54%の組 成をもち,乾燥成分中に胆汁酸は0・9%含まれ,コー ル酸は50‑75%がグリシンと残りはタウリンと抱合し て抱合胆汁酸(グリココール酸,タウロコール酸)と して分泌されている‑ 胆汁酸中ではタウロコール酸 o.22%,グリココール酸6・90%含有されているといわ れている・遊離胆汁酸は生理的にはほとんど存在せず, 病的な場合にのみ出現するといわれている.胆汁中に 抱合胆汁酸の占める割合はタウロコール酸0・0056%,

グリココール酸1.175%程度であろうと推定され,従 って,胆汁中に含まれ王群「ゝるコーノし良薬竣デスオキシ コール酸の濃度はきわめて微′トであると考えられ,表 11及び表12にみるように,正常な胆汁の稀釈液(25‑

50%)中で原虫が強く抵抗して生残したことはこのよ

うな理由によるものと推測している.胆汁酸の中では

コール酸がTpに対して大きく傷害を与えているもの

と思われるが,今回の実験では生理的濃度よりはるか

に大きい濃度が用いられていることを考慮すべきであ

ろう.本研究の範囲内では, Cyst型が増殖型よりも消

(18)

Toxoblasma so,ldiiの/I:.物学白/ヽ一研究.第2二報       245

化酪素や消化液に対して強い抵抗性を保有しているこ  分裏付ける成績であると思考する.

とは確実であり, Cyst型による経口感染の可能性を十

む    す    び Toxoplasma gondiiの増殖型(RH株)及びCyst型

<^Beverley株)の消毒薬,洗准,含嚇喜r],消化酵素,胆 汁及び胆汁酸等に対する抵抗性をin vitroにおいて比 較検討し,以下の成績を得た.

1・ RH増殖塑は1%クレゾール石鹸液, 1%‑イアミ ン液, 1%石炭酸水' D・01%チメロサール液, 0.1%ホ ルマリン液,70%エチルアルコ,ル液中において4⊂C15 分間の接触によって死滅したが,これ以下の濃度液,

10%重曹水及び2 0イo誹酸水中において生残した.

Beverley株Cyst は増殖型とほぼ同等の或績がイ/ヨ//

られたが, 5%石炭酸水及び1.1%チメロサール液中で 臼三残した.

2. RH増殖型は).5%トリプシン液中57℃5時間,1・0

%ペプシン液中5時間, 5%ジアスタ,ゼ液中5時間 及び5 % 'J ヽ。■ゼ液中で5時間の接触において4。■̲存し た・

Beverley Cystは1%トリプシン液5時間, 5%ジア スターゼ及び5 %リパーゼ液中で5時間生存していた.1 5・ RH増殖型は25%牛胆汁液中で57℃5時間生存した が,Beverley Cystは50%牛胆汁液中で5時間生存したー 4・ RH増殖型はコール酸ナトリウムの1.1‑5.09イo濃 度液中57℃50分以内に死滅したが, Beverley Cyst

o/oコール酸ナトリウム液中において5時間生残した.

5・ RH増殖塑とBeverley Cystはともに1%デスオ キシコール酸ナトリウム液中において57℃50分間の接 触に生残した.

本稿を終るのぞみ,御指導,御校閲を賜った中林敏/

夫教授に感謝の意を表します.

本論文要旨の一部は第20回日本寄/一i虫学会南日本支 部大会(1967年11月1411,長崎市)において口演発表

した.

文        献

i)Ei血enwald'H. : Experimental toxoplasmosis.

I Transmission of the infection in utero and through the milk of the lactating female mice Amer.J・Dis・ Child.,76 : 3o7・315, 1943.

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参照

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