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(1)

‑103 一一

     欧州経済共同体における付加価値税案

       中 村 英 雄

       ○

 十年前までは︑新しい租税の導入やすでに存在している租税の改革は︑全くその当事国だけの仕事であった︒

一九五七年の欧州経済共同体条約によって︑加盟国ではこの事情が一変した︒この条約は租税に関する規定︵第

九十五条︱第九十九条︶を含んでおり︑各加盟国はこの規定によって拘束されるのである︒そこでとくに重要視さ

れているのは売上税︑消費税およびその他の間接税である︒まず加盟国間の商品貿易について︑それぞれの商品

に課されている租税負担を︑国境において正確に調整すべきことが規定されている︒すなわち︑共同体の内部で

一国が他国から輸入する商品に対して︑同種の自国産品に対するよりも高い租税を負担させてはならないし︑ま

た一国が他国に輸出する商品に対して︑実際に課された租税額以上の租税還付をおこならて利益を与えてはなら

   欧洲経済共同体における付加価値税案 研究ノート

(2)

‑104‑

ないことが定められている︒ところが︑売上税を累積的多段階制度によって課している国国では︑その租税負担

を実際上正確に定めることができない︒そこでこれらの国国に対しては︑国境における租税負担の調整にあたっ

て︑平均税率を用いることが許されている︒しかしながら︑この平均税率の規定は︑条約の精神からみて︑過渡

的な性格をもつ規定であると考えられる︒すなわち︑第九十九条で﹁其同体委員会は︑売上税︑消費税およびそ

の他の間接税︵加盟国間の貿易に適用される調整措置を含む︶に関する各加盟国の法律が︑共同市場の利益と調

和することのできる方法を検討する﹂ことが規定されており︑これが今日では加盟各国の税制を調和すべしとい

う命令であると解釈されているようである︒

 昨年四月十四目︑欧州経済共同体委員会は同理事会に対して︑﹁売上税にかんする加盟国の法律規定を調和す

るための︑理事会の第二次大綱案・共通の付加価値税制度の構造と適用方法﹂︵以下では第二次案とよぶ︶を提

出した︒これは︑一昨年︑同じく委員会によって理事会に提出された﹁売上税にかんする加盟国の法律規定を調

和するための大綱﹂の修正案︵以下では第一次修正案とよぶ︶の規定にもとづくものである・後者は︑一九六二

年に委員会が理事会に対して提出した﹁売上税にかんする加盟国の法律規定を調和するための理事会の大綱案﹂

 ︵以下では第一次案とよぶ︶の修正案であび︒この第一次案が作成されるまでの経緯については︑さきに拙稿

 ﹁欧州経済共同体における売上税の語間題﹂において︑その梗概を紹介した︒第一次案では︑共同体加盟国は︑

累積的多段階売上税の競争歪曲作用を排除するために︑最終的には共通の付加価値税制度を採用すべきことが明

らかにされたが︑その制度の具体的内容はそこでは示されなかった︒第二次案では︑それが﹁共通の付加価値税

制度の構造と適用方法﹂として詳細に述べられている︒本稿では︑第二次案を中心に第一次案︑第一次修正案等

(3)

‑105‑

を照合して︑欧州経済共同体において実現されるものと予想される共通の付加価税値制度を暼見したい︒

       ︵二︶

 第一次案では︑共通の付加価値税制度は二つの段階に分けて導入されることが定められていた︒すなわち第一

段階では︑フランス以外の加盟五カ国は︑累積的売上税から︑原則として一度しか商品価格を捉えない非累積的

売上税へ移行する︵第一次案第一条︶︒但しこの場合には特定の売上税が提案されているのではなく︑どんな型の

売上税を採用するかは各国の自由である︵前文︶︒第二段階では︑各国は︑前段階で採用した新売上税制度をさら

に拡大発展させて︑過渡期末︵一九六九年末︶までに共通の付加価値税制度をつくる︵第三条︶︒但し税率と免税

規定は各国が自由に定めてよい︵前文︶︒

 ところが︑この提案に対して︑欧州議会︑経済・社会委員会および各加盟国政府の意見は︑共通の付加価値税

制度への移行は︑中間段階をもうけることなく︑現行制度から直接におこなう方が有利であるという点で一致し

ている︒もともと中間段階を経て共通の制度へ移るという案は︑直接的移行に伴なって生じる困難を回避しよう

とするものであったから︑各国政府が直接的移行をよしとするのであれば︑委員会はこれに異論をさしはさむべ

き理由はない︵第一次修正案﹁理由﹂︶︒そこで第一次修正案では︑直接的移行がとりいれられ︑各国はそのための

法律を一九六八年一月一日までに公布し︑一九七〇年一月一日までにこれを施行することが定められた︵第一次

修正案第一条︶︒そのため︑委員会は一九六五年四月一日までに︑共通の付加価値税制度の構造と適用方法にかん

する具体案を理事会に提出するものとされた︵第三条︶︒第二次案はこの条項に照応するものである︒

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−‑106 一一

 共通の付加価値税制度が採用されても︑それだけですぐ売上税制度の調和が完成するのではない︒その最終目

標は租税上の国境の廃止にある︵第二次案第四条︑第一次修正案第四条︶︒ところで︑欧州経済共同体条約には﹁累

積的多段階制度によって売上税を課している加盟国は︑輸入商品に内国税を課するばあいおよび輸出商品に租税

還付をおこなうばあいに︑商品あるいは商品群に対して平均税率を定めることができる﹂︵第九十七条︶という規

定があり︑輸出入商品の租税負担を調整するのに︑これが実際に適用されている︒第一次案で中間段階が実現さ

れると︑すなわち非累積的売上税が各加盟国で採用されると︑あるいは第一次修正案で共通の付加価値税が採用

されると︑個個の輸出入商品の売上税負担はおのずから明確になるので︑前述の平均税率による調整措置は失効

することになる︵第一次案第一条︑第一次修正案第一条︶︒しかし︑これは売上税負担の調整措置そのものが全面的

になくなることを意味するものではない︒むしろ︑後に見るように共通の付加価値税制度における標準税率の決

定が各加盟国に委ねられている点などから判断して︑売上税負担の調整措置は︑租税上の国境が廃止されるまで

存続するものと考えるべきであろう︒租税上の国境を廃止すべき時期と方法について︑第一次案では未だ語るこ

とができないとし︵前文︑第四条︶︑第一次修正案および第二次案では︑委員会が一九六八年末までに提案するこ

とになっている︵第一次修正案第四条︒第二次案前文︶︒

 ところが︑その後︑昨年六月共同体委員会は租税上の国境をおそくも一九七〇年一月一日までに廃止すること

を定めた︒この決定によって︑売上税制度の調和は︑一九七〇年一月一目に一挙に完成されることになる︒すな

わち共通の付加価値税制度の採用︑租税国境の廃止︑およびこれに伴なう売上税負担の調整措置の消滅が目を同

じくして実現されるわけである︒

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−一一107一一一一

      ︵Ξ︶

 第二次案で付加価値税の課税対象とされているのは︑︵a︶納税者が国内で対価をえておこなう物品の引渡しおよ

びサービスの提供と︑︵b︶物品の輸入とである︵第二次案第一条︶︒そして︵a︶および︵b︶については別に詳細な規定が

ある︵第三条︑第四条および第五条︶︒

 納税義務を負わされるのは︑利潤獲得意図の有無にかかわらず︑常時あるいは臨時に︑独立して︑生産業者︑販売

業者あるいはサービスの提供者としての活動をなすものである︵第二条︶︒この規定は︑共通の付加価値税が原則

として生産から小売に至る全段階に適用されることを意味している︒これは一般的消費税たるその本質から見て

望ましいことであるが︑事情によっては︑加盟国がその適用範囲を卸売段階までにとどめ︑小売段階でそれを補

う独自の租税を設けることが許されている︵第一次修正案第二条︶︒このことはこの制度に小売業者を含めること

の困難を物語るものであろう︒イタリア︑オランダおよびベルギーの累積的売上税は小売業者をその適用範囲に

含んでいない︒これらの国国で︑共通の付加価値税への移行に際して︑小売業者を新たに課税範囲に加えること

は︑大きな困難を伴なうであろう︒この点についてABC報告は心理的︑政治的あるいは技術的理由によって生

じる大きな困難を予想し︑またノイマルク報告は︑共通の付加価値税の適用を卸売段階までにとどめ︑小売売上

      ︵8︶税はそれに対する補足として︑各加盟国が独自の判断にもとづいて採用すべきであるとしている︒これらの研究

にもとづいて︑第一次案では︑この制度が卸売段階まで適用されることを原則とし︑これを小売段階まで拡げた

り︑あるいは別に補足的小売税を設けることを各国に許していたのに︑第二沢修正案で原則が右のように変更さ

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‑‑108‑

      ︵9︶れたのは︑一九六三年七月西ドイツ政府が決定したいわゆる付加価値税法案の影響によるものと考えられる︒こ

のように付加価値税がすべての生産業者および販売業者に対して適用されると︑生産業者︑卸売業者および小売

業者の定義に関連して生じる問題や︑混合企業︵生産l販売業者︶に関連して生じる問題を避けることができ

る︒適用範囲を小売段階にまで拡大することによって︑多数の小企業が納税義務者となることが予想されるが︑

この点について︑付加価値税制度を小企業に対して適用することが困難なばあいには︑加盟国は︑別に定める事

前協議の手続を経て︑各国の実情に最もよく適合する特別規則を用いることができる︵第二次案第十一条︶︒この

規定によって小企業は付加価値税負担を軽減されるか︑あるいはこれを全く免れることかありうるだろうと考え

られる︒

 課税標準は︑物品の引渡しおよびサービスの提供については︑それらの対価の総額で︑これには経費と租税が

含まれるが︑付加価値税は除外される︒物品の輸入については︑従価輸入関税を適用するために定められた関税

評価額が課税標準とされ︑これには物品の輸入のさいに課された関税︑租税および公課が含まれるが︑付加価値

税は除外される︵第六条︶︒

 標準税率の決定は各加盟国に委ねられているが︑それは物品の引渡しとサービスの提供とに対して等しくなけ

ればならない︒特定の売上に対しては税率を軽減または加重することができる︒物品の輸入のさいに適用される

税率は︑国内で同種の物品の引渡しのさいに適用される税率と等しVなければならない︵第七条︶︒

 税額は前述の課税標準と税率との積であらわされる︒納税義務者はこの税額から次のものを控除することを許

される︒㈲その納税義務者に引渡された物品および提供されたサービスに課された既納の付加価値税と㈲輸入物

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品に課された既納の付加価値税とがそれである︒但しその控除は︑上記︵a︶および︵b︶にあげた物品とサービスが企

業目的に供された限度内で許されるのである︵第九条一項︶︒購入された物品とサービスが︑課税の対象となる売上

のために用いられないばあいには︑これらの物品・サービスに課された付加価値税は控除されない︒国内でおこ

なわれれば課税の対象となるはずの物品の引渡しおよびサービスの提供が︑外国でおこなわれたという理由でか

あるいは輸出されたという理由で︑課税の対象から除外された場合には︑これらの物品・サービスに課された付

加価値税について控除が認められる︒購入された物品・サービスが︑控除を認められる売上にも︑また控除を認

められない売上にも用いられる場合には︑これらの物品・サービスに課された付加価値税は︑前者の部分に対し

てだけ控除が認められる︵比例配分法︶︵第九条二項︶︒物品を取得するさいおよびサービスの提供を受けるさいに

課された付加価値税は︑それらの物品・サービスにかんする領収書がえられた期間に課される付加価値税から控

除することができる︵即時控除︶︒前述の部分的控除の場合には︑控除額は前年の一般比率によって暫定的に定

められ︑取得年についての比率が算定されてから︑年末に清算される︒投資財については︑その清算は取得年を

含めて五ヵ年にわたっておこなわれ︑一カ年あたりの清算は︑投資財に課された租税の五分の一だけを対象とす

る︵時間的比例配分法︶︵第九条三項︶︒特定の物品と特定のサービス︑とくに全面的にか部分的にか納税義務者

あるいはその職員の個人的需要に適したものは︑控除の対象から除外してよい︵第九条四項︶︒一ヵ月︑三ヵ月ま

たは六ヵ月の申告期間について控除されるべき付加価値税額が︑その期間に売上に課される付加価値税額よりも

大きい場合には︑前者が後者を超過する額は次期に繰越されるが︑暦年未には︑超過額が実際に還付される︵第

九条五項︶︒

‑109‑

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110

 農業は︑この付加価値税制度の中で特殊な分野を形成している︒すなわち一定品目の農業生産物は︑すべての

経済段階で一定の軽減税率を適用されるか︑あるいは場合によっては︑各段階ごとに異った軽減税率を適用され

る︒これと関連して共同体委員会は︑おそくとも一九六六年四月一日までに︑つぎの三点について理事会に対し

て提案することになっている︒︵a︶上記の農業生産物の品目とそれらに適用されるべき軽減税率︑︵b︶農業共同市場

の組織およびそこで定められる価格機構の機能を阻害しないような付加価値税の適用方法︑および︵C︶租税上の国

境が廃止されるまで各加盟国が適用しうる過渡的規則︒委員会から︑これらの諸点について提案がなされると︑

理事会はそれについておそくも一九六七年一月一日までに決定を下さなければならない︵第十二条︶︒

 輸出される物品に対しては付加価値税を免除する︒輸出される物品と関連のあるサービスに対しては付加価値

税を免除することができる︒加盟国は︑別に定める事前協議の手続を経て︑上記以外の免税措置を定めることが

できる︵第八条︶︒

 納税義務者は︑税務官庁が付加価値税の適用および検査をなすのに十分詳細な記帳をおこない︑それにもとづ

いて一ヵ月ごとに前月分の報告書を提出しなければならないが︑各国は事情によっては︑この報告書を三ヵ月︑

六ヵ月または一ヵ年ごとに提出させてもよい︵第十条︶︒このほかさらに事前協議︵第十三条︶︑二つの付録︵第十

四条︶およびこの﹁大綱﹂の適用︵第十五条︶についての規定がある︒

      糾

 前節で概観した共通の付加価値税制度は︑前に述べた西ドイツ政府のいわゆる付加価値税案とほとんどすべて

(9)

‑n1一一

の点で符合している︒これは第二次案の決定に対して︑この西ドイツ政府案が強い影響を及ぼしたためであると

考えられる︒第二次案で各加盟国に決定を委ねられた諸点は︑西ドイツ政府案ではつぎのようになっている︒

 標準税率は一○%であるが︑食料品および自由業のサービス等に対しては五%の軽減税率が適用される︵西ド

イツ政府案第十一条および付録︶︒税率をこのように決定したのは︑新しい付加価値税からの収入が現行の売上税か

らの収入よりも減少することなく︑しかも国民総生産に対する税収の比率が︑現在よりも高くならないためであ

る︒一九六二年には売上税収入︵売上調整税および運送税を含む︶は二〇〇億DMで︑国民総生産に対する割合

はおよそ五・六%であったが︑新しい付加価値税の税率はこれらの点を甚だしく変えないように定められたので

ある︒新しい制度では課税標準たる﹁対価﹂には付加価値税が含まれていない︒従ってそれに対する一〇%およ

び五%の税率は︑付加価値税を含む額に対してはそれぞれ九・〇九%および四・七六%となる︒また五%の軽減

税率を適用される課税対象が︑全体の三分の一を下らないので︑この租税の税率を全体的に平均するとハ・三五

%︑付加価値税を含む額に対する税率でみると七・六六%となる︒西ドイツで現在おこなわれている累積的売上

税制度では標準税率が一般には四%︑卸売段階では一%である︒これと︑標準税率一〇%の付加価値税との租税

負担の比較を例示すると第I表のようになる︒

 免税措置については︑西ドイッ政府案では第四条に詳細な組定かある︒その一項ないし三項では輸出およびそ

れに関連する給付について︑また四項ないし二十項では保険および再保険契約による給付等について述べられて

いる︒そのうち四項ないし二十項の適用を受けるためには︑納税義務者は既細の税額に対する控除の権利を放棄

しなければならない︒従ってこれらの項に掲げられているのは︑真の意味の免税措置ではなく︑むしろ租税負担

(10)

たとえば西ドイツで︑ある商品の生産者に対して累積的売上税を免除すると︑競争がおこなわれている場合に

は︑最終消費者に対するその商品の価格が︑生産者価格の四%だけ下がるはずである︒しかし付加価値税制度で

は事情が全く異っている︒ の軽減措置というべき    Iであろう︒これは後述の課税の加重効果とも関連して︑問題の多い規定である︒  ︵五︶ 累積的売上税制度で

は︑商品の通過する段

階の中のどれか一つで

租税を免除することに

よって︑消費者に対す

るその商品の価格を引

下げることができる︒

‑112一

(11)

一一113‑一一

 付加価値税制度で︑たとえばある卸売業者がある期間に︑一五〇〇DM︵商品価格︶プラス一五〇DM︵租税︶

の販売と一〇〇〇DM︵商品価格︶プラス一〇〇DM︵租税︶の購買とをおこなったとする︒この業者は︑販売

に課される税額から︑彼が購入した商品に対してこれまでに課された税額を控除することができるから︑この場

合に彼が支払うべき税額はつぎのように計算される︒

 すなわち︑この卸売業者の販売した商品の租税

負担は一五〇DMであるが︑そのうち五〇DMは

この業者が支払い︑残りの一〇〇DMは彼に商品

を販売した業者たちが支払ったこと記なるのであ

る︒ 第Ⅱ表は第一段階において一〇〇〇DM︵商品

価格︶プラス一〇〇DM︵租税︶で購入された商

品が︑各段階で五〇〇DMの付加価値を加えなが

ら︑四つの段階を経て最終消費者に到達すること

を示している︒この例では第二段階で付加価値税

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‑一一114‑

が免除され︑しかも既納の租税一五〇DM

︵第Ⅱ表b列4行︶が払戻されるものと仮定

されている︒この段階での商品の販売価格

二〇〇〇DMは全く租税負担を合んでいな

い︒ところがすぐつぎの第三段階では︑商

品価格︵純︶二五〇〇DMに対して二五〇

DMの租税が課され︑販売価格は二七五〇

DMとなる︒すなわち︑ここでは累積的売

上税の場合に見られるような免税による価

格引下げの効果はあらわれず︑免税のおこ

なわれたすぐつぎの段階で︑免税がなかっ

た場合と全く同じ水準にまで︑商品価格に対する租税負担が回復される︒これは付加価値税における既納税額控

除制度の特色で︑課税の回復効果(Nachholwirkung)とよばれる︒この効果のあらわれるのを防ぐためには︑最

終課税段階において免税がおこなわれなければならない︒西ドイツ政府案に示されている制度では︑小売段階で

付加価値税が免除された場合にだけ︑この回復効果を回避して︑消費者に対する商品価格を引下げることができ

る︒ 第1表と同じ条件で︑しかも第二段階では免税だけがおこなわれ︑既納税額の払戻しが許されない場合を︑第

(13)

115 一一−

Ⅲ表について考えてみる︒この場合には︑第二段階で免税がおこなれれるが︑既納の租税一五〇DM︵第Ⅲ表b

列4行︶は払戻されないから︑この段階の企業者はこの税額を商品購入代金一五〇〇DMおよび付加価値五〇〇

DMと同様に商品価格の形成要因に加えることになり︵第Ⅲ表a列5行下段︶︑従って商品価格は二〇〇〇DMで

はなく二一五〇DMとなる︒そしてこの二一五〇DMは第三段階における購入価格となり︑これに付加価値五〇

〇DMを加えた二六五〇DMが商品価格︵純︶と考えられ︑さらにこれに一〇%︑二六五DMの付加価値税を加

えた二九一五DMが販売価格となる︒第四段階では外見上︑商品価格は三一五〇DM︑付加価値税は三一五DM

で︑販売価格は三四六五DMとなる︒しかし実際の付加価値税負担額は三一五DMのほか︑第二段階で商品価格

に含まれた一五〇DMを加えた四六五DMである︒従って真の商品価格は三四六五DMマイナス四六五DMで︑

三〇〇〇DMとなり︑これは第Ⅱ表の場合と等しい︒租税負担額四六五DMは︑第Ⅱ表の場合の三〇〇DMより

も一六五DMだけ大きいが︑これは商品価格に含まれた一五〇DMだけでなく︑さらにこの租税額に対する一〇

%︑一五DMの租税を含んでいることがわかる︒これは︑付加価値税における既納税額控除制度に伴なう一つの

欠陥であって︑負担の加重効果(Kaskadenwirkung)とよぶことができよう︒この効果は︑第二次案第九条二

項︑西ドイッ政府案第四条および第十二条二項︵既納税額の控除を排除する規定︶等と関連して︑厄介な問題を

惹起するものと予想される︒

 このように︑売上税制度のもつ欠陥のすべてが︑付加価値税制度への移行によって解決されるわけではないけ

れども︑共同体委員会がこの制度の採用を決定したことは︑長いあいだ累積的売上税制度の蔽害に悩まされ乍

ら︑なかなかこれを一新することのできなかった国国にとって︑問題解決へのいとぐちを与えるものである︒

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‑116‑

(15)

一一117‑

(16)

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水稿は昭和四〇年度文部省科学研究費補助金︵総合研究︶による研究の一部である︒

参照

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