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強迫症状 を訴 える50代女性 との面接過程
―コラージュ・ ボ ックス法を通 して 一
イ中 沙織
キーワー ド:コラージユ・ボ ックス法,強迫性障害,臨床心理職 アウ トリーチ
I口 問題 と目的
強迫性障害 (Obsessive―Compulsive Disorder;OCD)は ,生涯有病率1〜 2%
で,男女比 はほぼ同等,平均発症年齢 は20歳前後の疾患 である。 しか し,初
診 に至 る年齢 は30歳頃 とされてお り,発症後かな りの期 間,症状 と葛藤 して 抵抗 を繰 り返す中で,心身 ともに疲労困億 し引 きこもるな ど,社会機能,ある
いは生活上の支障が重大化 してか らが多い とされている(松永,2012)。 筆者 は, 本疾患 を長年抱 え,医療 中断や転 院 を繰 り返 していた50代女性へ,訪問看護 の中で コラージユ・ボックス法 を導入 した。
コラージユ療法 には,ピクチ ャーマガジ ン法,コラージユ・ボ ックス法,大
コラージユ法,相互 コラージユ法 な どがあ り,その他 にも台紙やパーツの工夫,
パ ソコンの使用 な ど様 々に展開されてお り,まだまだ技法 自体 も発展途中であ る。本事例で導入 したコラージュ・ボ ックス法 とは,「持 ち運べ る箱庭」(森谷,
1988,1993,2012)と して開発 され,「表現活動全体 に含 まれる楽 しさや面 白さと いった̀遊びの要因'を通 して豊かな内的世界が展 開される (中原,2011)」 我 が国独 自の心理療法である。 コラージユ・ボ ックス法では,あらか じめセラピ
ス ト(以下,Th。 と表記)がクライエ ン ト (以下,Cl。 と表記)のアセス メ ン
トをもとに,種々のパーツを準備 し,その順番 を吟味 して箱 (ボックス)に入 れてお く。準備段 階か らTh。 とCl。 との対話が開始 されてお り,この部分 で, 他の コラージュ技法 と大 きく異 なる。
また,本事例 で は,コ ラー ジ ユ・ボ ックス法 施行 の際,その 日の気 分 で
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Cl.が選択 したアロマオイル を使用 した。本事例 の施行法 とは異 なるが,アロ マ とコラージユ療法 を組み合 わせ た ものに,2009年 7月,宇都宮市 で生 まれ たアロマ コラージユ療法がある。 アロマ コラージユ療法 は,アロマテラピーの 精油 を用いて フ レグラ ンス を制作 し,その香 りの世界 をコラージユ作 品で表 現す る ものであ り,その有用1生について報告が重ね られてい る (福島,2011
2015a, 2015b)。
本事例 は,強迫1生障害 を抱 え,不潔恐1布のために外 出や買い物,他者 との交 流が難 しく,日常生活 に支障 をきた していた50代の女性Aさんである。医療 中断,転院を繰 り返 し,訪問看護の指示 は出た ものの,自宅へ支援者 を入れる ことがで きず,訪問看護ステーシ ョン内面接室で コラージユ 0ボ ックス法 を実 施 し,計5作品 を制作 した。約10カ月の支援 を通 して,コラージユ・ボ ツク ス法 を体験 したAさんの内的世界 の変化 のプロセスについて検討す ることを 目的 とす る。なお,事例 については,個人情報保護のため内容 を改変 している。
Ⅱ.事例 1.事例の概要
Ch:Aさん,50代女 性
家族構成 :独 居。両親共 に他界,妹は他県で世帯 をもっている。
既往歴 :40代の頃強迫性障害の診断 を受 け 通院,投薬 開始。 しか し程 な く治療 中断 し,ク リニ ックや病院を転 々 とす る。
訪問看護導入の流れ:治療 中断 転院を繰 り返 したのち,初診の病院へ再来 す るが,月 1回の通院がで きない ときもある。主治医 より訪問看護 をすすめ ら れる。本人の同意 を受 け,主治医 より訪問看護ステーシ ョンに届いた「精神科 訪問看護指示書」の「精神科訪問看護 に関す る竜事項及 び指示事項」の欄 には,
「3.対人関係の改善 (家族含 む)」 のみチェックがあ り,枠外 に,「よ く話 を聴 いてあげて ください」 と記載があった。現在主症状 に対す る服薬は頓服のみで ある。
アセスメ ン トと介入方針 :自宅への訪問 を拒否 され,臨床心理士 (筆者,以
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下Th。)がじっ くりと話 を聴 き信頼関係 を築いた上で,看護師,作業療法士 を 含めたチーム体制で外 出支援や体力作 りを提案 してい くこととな り,今後の支 援方針 と,訪問看護ステーシ ョン内面接室での実施 について同意 を得た。 また, 芸術 的志 向性が高い と感 じたため,コ ラージュ療法 を提案す ると,「や ってみ たい」 と快諾 された。
面接では,長年他人関係 を避 け,家族へ も嫌悪感情 を抱 き,不潔恐 怖や漠然 とした不安感,孤独 感 に苦 しみ,外出 もままな らないAさ んの抱 えて きた想 いを受け止め,コラージユ療法 を通 して,想い を共有 し,自己治癒力の向上や 心理的安定 を目指す こととした。
面接構造 :2週に1回各60分で,最初 の約10分は看護師が体調確認やバ イ タルチ ェ ック,食事や睡眠,服薬状況等 の聞 き取 りを行 った。その後約50分 で コラージユ・ボ ックス法 を実施 した。面接室の隣の部屋 はス タッフルーム と なってお り,看護師はその間待機 し,何かあれば支援 に入 る体制 を整 えた。 コ ラージユ製作 の時間は40分に設定 し,残 りの時間で作 品 にタイ トル をつ け,
Th。 と振 り返 りを行 った。製作時間について,杉浦 (1994)の調査では,35分
では足 りない人が多 く,1時間で充分 と感 じる人が多かった との結果が得 られ てお り,相談時間が1時間 しか とれない場合 は,「40分か ら45分で作 って く ださい」 とあ らか じめ断ってか ら始めると,ほぼ時間内に作成で きることが多 い と結論付 けている。
2.倫理的配慮
倫理 的配慮 と して,主治医及 び訪 問看護 ステーシ ョンの管理者 の承諾 を得 た後,Aさんへ研究の 目的について口頭 と紙面で説明 し,同意書 に署名 して も
らった。支援 の内容やAさんの状態 について,毎月の訪問看護報告書 で主治 医に報告 し,指示 を仰いだ。事例の経過は,定期的なスーパー ビジ ョン及 び訪 問看護ステーシ ョンのス タッフミーティングやカンファレンスで管理者や全ス タッフに報告 し,助言や意見 を求め,内省 の機会及 びその後の支援 に活かす よ う努めた。面接終了後,コラージュ5作品 と事例 について,個人が特定 されな
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い範囲での公開の同意 を得た。
なお,本研究 は,福岡大学研究倫理審査会 の審査 を受 け,平成27年8月 10 日に承認 を得ている (整理番号 :15‑07‑05)。
Ⅲ.結果
パーツの準備 :中原 (2004)を参考 に,自然風景 植物 人物,動物,食べ
物,建物,乗り物,道具,宗教 的な もの,その他 を基本 として,Cl.のその時 の状態 をアセスメン トし,数枚ずつ準備 した。 また,Cl.の好みに合 わせた もの, 抱 えてい る課題や葛藤 を表現 している ものな ど数枚 を加 え,パーツがCl.に与
える印象や刺激 を考慮 した順序でボ ックスに収めた。 この手続 きを毎 回実施 し た。
道具の準備 :画 用紙 (八つ切 り),はさみ,のり
アロマオイルの準備:Cl.の好みの もの を中心 に,オレンジ・スイー ト,グレー プフルーツ,サンダルウッ ド, イランイラン, レモ ングラス, ラベ ンダー,ゼ
ラニウム,ベルガモ ッ ト,ローズ ウッ ド ティーツリーの10種類 を準備 した。
その 日の気分でCl.が選択 し,アロマデ イフューザーを使用 した。
1.コラージユお よび心理面接
Aさんの発言 を「 」,Th。 の発言 を< >で表記す る。
X年 5月 12日 コラージュ①:『リラックス│(図 1)ア ロマ オ イ ル:オレ ンジ・
スイー ト
慎重 な手つ きでパ ーッを扱 い,手順 を何度 もTh.に確 認す る。指 を何度 も ティッシュでぬ ぐう。 また,終了時間を気 に して何度 も時計 を見 る。<も し終 わ らなかった ら次回続 きもで きるので,大文夫です よ>と伝 えるが,時折時計 を確認 し,終了時間 きっか りで制作 を終 え,大きくため息 をつ く。
パーツは9枚,主な色彩 は赤,黄 ,重ね貼 りは海 と十字架のパ ーツ とふ くろ うのパーツ,夕 日と海のパーツと魚のパーツの2か所 に見 られた。
Relaxing 心地 よい香 りに包 まれて安 らぎチ ャージ "の 文字 とあたたかみ
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のあ るキ ャン ドルが 中心 に配置 され,穏やか な海,静か な草原,咲き誇 る花 々,
瑞 々 しい トマ トや びわが周 囲 に配置 された。右 上端 には2つ 目の海 の風 景が貼 られ る。海 は黒 い枠 で囲 まれ,手前 に十字架 を臨み,隣に6角形 に切 り取 られ た 1羽 のふ くろうが重ね貼 りされた。このパーツに対 して,「これは私」,とふ
くろうを指 した。
人物や複数で集う動物などは一切選択 されず 裏コラージユと呼ばれる,一 旦は選んで も使われなかったパーッも,自然風景や植物のみであった。
制作後,タイ トルを「リラックス」 と決め,「リラックス したいです。 もう 疲れました」 と語る。
X年5月 26日 コラージュ②:『みどりの 中で il (lXI 2) 7 v?* 4 tv : r\.)lz
ガモ ッ
「(コラージユは自分 に)合ってる気が します」 と語 る。前 回制作 したコラー ジュの映像が しば らく残 ってお り,「あのキ ャン ドルが ここ (胸)に灯 ってい るような気が してました」 と語 る。手順や時間の確認は数回あ り,指を何度 も ティッシュでぬ ぐう。
パーツは9枚,主な色彩 は緑,重ね貼 りは見 られなかった。
中心 に2匹の蛍,メ イプル リーフが貼 られ,側に親子の羊,小鳥が配置 され た。 また,ヨーロッパの城,青々 と茂 る緑,穏やかな川 と住宅,高低差があ り 流れの速い川,チョコレー トケーキが囲んでいる。
自然風景や植物 を多用す るのはコラージユ① と同 じであるが,前回の静かで 動 きが ないパ ーツではな く,迫りくる緑 や激 しく飛沫 を上 げて流 れる川 な ど, 躍動感のあるパーツが選択 される。 また,コラージユ①では近景であった建物 が遠景 にな り,全貌が確認で きる。人物 は選 ばれなかったが,住居が立 ち並ぶ 風景か らは,生活感や人の気配が感 じられる。今 回 も乗 り物 は選ばれなかった。
草花,ケーキ,洋菓子,月のパーツは,一旦 は選択 したが,貼らず に終 えた。
制作後 タイ トルを「み どりの中で」 とつけ,「 み どり"は 平仮名 に して くだ さい。その方が気分 だか ら」 と,語る。 また,「前 は よ く海外旅行 に行 ってた
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んです」,「森とか草原が,日 本の規模と全然違うんです。空気まで透き通った 緑色みたいな」と,想い出を語る。
X年6月 9日 コラージユ③:『自分の時 間](図 3)ア ロ マ オ イ ル :イ ラ ン イラン
「大人の塗 り絵 って知ってますか」,「うつに効 くと聞いたけど私にも効 くか しら」 とTh.に 尋ねる。数年前カラーセラピーの公開講座 を受講 したと言 う。
<効く,というのは私には分からないですけど,Aさんが何か始めてみたいっ て思われたんだって,すごいって思いました>と伝える。人通 りが少ない時間 帯に,ベランダの窓を開けた り,近所の公園やお店に少 しずつ外出した りする など,日常生活の中で動 きが出てきている。また,「思い切って (旅行会社の イベ ン トに)参加 してきました」 と言 うものの表情が優れず,「行かなきゃよ かった」と言 う。高齢夫婦が多 く参加 してお り,「私みたいな若い人はいない し,
一人の人 もいない。場違いだった」 と語る。<今日は,お話 しされたいことが た くさんあるように思いましたけど,どうしましょう。コラージユではなくて,
お話 しの時間にしましょうか>と尋ねると,「そうですね」 としばらく考え,「い え,コラージユをします」 と答える。
手順に慣れてきたようで,スムーズに作業を進める。パーツは9枚,主な色 彩は青 重ね貼 りは見 られなかった。まず,『モモ』の一節で, 人間は じぶ んの時間をどうするかは, じぶんじしんできめなくてはならないんだよ。だか ら時間をぬす まれないように守ることだって, じぶんでや らな くてはいけな い。"というメッセージを切 り取 り,右上に配置する。中央にチ ョコレー トケー キとハー ト型にくり抜いた小石の集まりを配置 し 雪化粧 をした山の風景,羊 の群れ,ヨーロッパ風の住居,山々の景色を眺めている後姿の男女,青い海底 でスキューバダイビングをする二人,街中の噴水が周囲に貼 られた。
制作後,「この言葉,私のことですよね。この 30年 何やってたんだろう。返 して欲 しい…」 と涙 ぐみ,タ イ トルを「自分の時間」 とする。
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X年 6月 23日 心理面接 ア ロマ オイル :オ レンジ・ス イー ト
「今 日は,お話 しで もいいですか」 とTh.に 尋ね,コラージュはお休みとする。
「これ,○○ さん (Th。 の名前)に見てもらいた くて」 と,10代後半の頃の 写真 を10枚程封筒か ら取 り出す。花柄のワンピースを着て,友人 らしき女性 や男性 と一緒に並び,生き生 きと満面の笑みのAさ んの写真や,舞台の上で 演 じているAさんの写真であった。「これ,私なんです。驚いたで しょ」 と言
うAさんに,<す ぐ,Aさ んって分か りましたよ。演劇 されてたんですか>
と返す。幼少期から人前で歌った り踊った りするのが好 きで,演濠1部や合唱部 で活躍 していたこと,芸能界に憧れ,い くつか応募 して最終選考まで残ったこ となど,時折笑みを交えて語る。高校卒業を控え,芸能界を目指 したいと両親 に相談するが猛反対 を受け,止む無 く地元の短期大学へ進む。休 日は演劇サー クルの活動に取 り組んでいたが,「あの時両親が反対 しなかったら,私はテレ ビの中で輝いていた。あの人たちのせいで,私の人生は狂 った」,と,声を詰 まらせる。短期大学卒業後,「いろいろあって」,カル ト宗教 に入信,約 30年 間信者たちと共に教団施設で生活 し,「はっと目が覚めて,命か らが ら逃げた んです」,と涙を流す。両親は既に他界 し,和解することはできなかった。また,
遺産相続で実妹 と裁判で争い,「縁 を切 りました」 と語る。<お一人で,ずっ
と頑張って来られたんですね>と言 うと,返答な く泣 き続ける。前回の作品を 見なが ら,<Aさ んが,『自分の時間』 を,少しずつ進んでいけるといいなっ て思います>と伝える。落ち着 くのを待ち終了する。
X̲生7月 7壁̲̲二二二立:二∠)二工:私̲2妊:室̲上上の上̲̲(̲図4)̲̲̲二 ̲聖ヱ三左̲∠宣生::̲土
レンジ・ス イー ト
<今日は, どうしますか>と尋ねると,「コラージユ します」 と言 う。
慣 れた手つ きで作業 を進める。作業途中はテイッシュで指 をぬ ぐわず,最後 のみであった。パーツは12枚,主な色彩 は赤,黄 ,青 ,緑で,重ね貼 りは見 られない。
赤い リボンのかかったプレゼ ン トの箱 と花束が最 も大 きいパーッを,右下 に
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配置す る。伸 びをす る トイプー ドル, ワイ ンとビールのグラス,ひまわ り畑,
星空 と建物 メロンが,角を丸 く切 り取 って貼 られた。初 めて乗 り物が2つ選 ばれる。雲の上 を飛ぶ飛行機 は右上へ,その下 に洞窟の中を進む手漕 ぎボー ト が貼 られた。各パーツの隙間を埋 めるように,様々な色 と形のガラスの瓶が小 さ くくり抜かれた。パーツ数はこれ までで最 も多かったが,時間に余裕 を持 っ て終了 した。
「ここ,行 ってみたいんです」 と,洞 窟のパーツを指す。海外の話 しか ら「飛 行機が (乗り物で)一番好 き」,「あっとい う間に別世界 に行 けるか ら」 と話す。
また,右下のパーツについて,「 もうす ぐ,誕生 日なんです。誰 も祝 って くれ ないか ら自分で」 と,笑みを見せる。誕生 日の過ごし方について,「どこかホ テルのラウンジで一人で飲んでたら,素敵な紳士に声 を掛けられた りして」 と 笑 う。「私の好 きなもの」 と,タイ トルをつける。
Xl■7星 2]=旦」:憂堕:整:二̲Z̲王整:二重二生̲生笙二̲2:∠:主≧:重主:二.
「今 日は,聞きたいことがあるので」 と, コラージユはお休みする。
「海外旅行に行 こうか迷ってるんです」と,いくつかパ ンフレットを取 り出す。
以前旅行会社のイベン トに参加 したが,その後担当者から何度か案内の電話が きていたと言 う。思い切って担当者に,海外へ行 きたい気持ちはあるけれど,
他人 と一緒に過ごした り食事 した りすることができない し,不衛生な場所が耐 えられないことを伝えた。すると,担当者は親身になって話を聴いて くれ,自 分に合ったプランを立て紹介 して くれた,と語る。今の気持ちを尋ねると,「昔 から行 きたかった所なんです。でも,自分が どうなって しまうか不安です」 と,
言 う。申込金の締切 まで,も う少 し考えてみることとなる。
面接の帰 りに,スーパーマーケットに寄 り買い物をした り,図書館へ出掛け た りしたことを話す。スーパーマーケットではカー トやカゴが触れず,両手に 持てる分 しか買えなかったことや,図書館で借 りた本をベランダで虫干 しして か ら使い捨てビニール手袋 をして読んだことなど,「私はまだ全然だめ」 と否 定的に語る。出掛けられたこと,買い物ができたこと,本を借 りることができ
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たことを肯定的に伝え返すと,「そうですね。そういう風に考えられるといい んですけど」と言う。
X年8月 4日 心理面接 アロマオイル:オ レンジ・スイー ト
「今 日も,お話 しでいいですか」 と,コラージユはお休みする。
迷っていた海外旅行 を,「申し込みました」,「すごく迷って,入金の締切 を 過 ぎて しまって,担当の人から電話が きて,一旦は止めようって思ったんです けど」 と,言う。<た くさん悩 まれて決めたんですね>に,「正直,まだ迷っ てます。これでよかったのか。向こうで症状が強 く出たらどうしたらいいのか 不安です」 と表情を曇 らせる。一緒に旅行の工程表を見なが ら,細か く動 きを 確認する。不安がある工程を挙げ,具体的に紙に書 き,後日担当者に確認する こととなる。飛行機の中でパニックになったら,と心配するAさんに,何か
お守 りのようなものを持って行ってはどうか と提案する。「これ,少しもらっ
てもいいですか」 と,アロマオイルを指 し,お守 り代わ りに,テイッシュに少 し染み込ませ密閉袋に入れて持参することとする。
X年9月 1日 コラ=ジ型⑥̲二ⅨX̲完成〕」玉図̲⊃̲̲三二三土二上生二生二∠三二 いつ も持参するスリッパを忘れて くる。長年1足を履 き続けていたスニー カーではなく,ヒールのあるターコイズブルーのサンダルを慣れない手つきで 脱 ぎ揃える。「すばらしかった」と,旅行の想い出を語る。広い草原に横になり,
透 き通る青空を眺めていたら涙があふれてきたこと,日本ではそんな不潔なこ とはできないのに,ベンチに座ってアイスクリームを食べた り,木陰で読書を した り,バーで初めて会った人たちと乾杯 をしたことなど,噛み しめるように 話す。「あれは私だった。昔,私あんなだったんです」 と言 う。
続 く語 りに,コラージユはお休みかなと確認をしなかったが,しばらく話 し た後で,「コラージユしてもいいですか」 と言う。時間を伝え,始める。
パーッを選ぶ間も,「この風景,いいですね」,「(旅行 した場所 と)似てる」,
「離陸するまでが,結構長 くて,満席で息ができなくて心臓が痛 くなるし,(ア
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ロマ オイル を しみ こませ た)テイ ッシュ握 りしめて神 に祈 ってた んです」 な ど と,旅行 のエ ピソー ドが話 され る。 自然風 景,建物,川,海 ,果物 洋菓 子 花 東,飛行 機 を選 び 左 上 に旅行 した場所 と似 てい る風 景 を配置,画用紙 の角
と合 わせ る部分 を除 き,3角を丸 く面取 りした。左 下 に ヨー ロ ッパ の街並 みの 風景を配置 し,青空に小 さな飛行機 を飛び立つように重ね貼 りした。そこで少 し考え,「あ,まだ大文夫か しら」 と端 を少 しはが し,手のひらに載せ られた フルーツタル トを挟み込んだ。
そこで時間とな り,<このままとっておきますね。また,続きをしたいと思っ たらしましょう>と言 うと 「タイ トル 未完成"に してて ください」 と答え る。時計を見て,「まだ時間大丈夫ですか」 とTh.に 尋ね,「これ」,と,丁寧 に切 り取 られた 婚活パーテイー"の記事 を見せる。「どう思いますか。やっ ぱ りやめた方がいいで しようか」 と尋ねるAさんに,<Aさ んはどうされた いですか>と返す と,「いい人なんて来ないとは思うんですけど」 と言 う。語 尾にAさんの行 きたい気持ちを感 じ,<けど…行ってみようかな>と,代弁 するように言 うと,「まだ,迷ってるんですけど」と はにかむ。
Aさ んが海外旅行で訪問看護 をお体み している間に スタッフミーティン グでAさんの状態 と今後の支援方針 について話 し合いが持たれた。支援の受 け入れが良好であること 少 しずつ外出が可能になり海外旅行へ も行けたこと, 他者 との交流への希望や期待が高まっていることなどから,看護師,作業療法 士を含め,多 職種チームを再編成 し,自宅への訪問看護を再度チャレンジして,
Aさんの 日常生活の場で,よ り活動 性と自発1生を高める支援 を目指す ことと なった。Th。 か ら自宅への訪問看護についてAさんの気持ちを尋ねると,「そ うか そうですよね。ちょっと,考えてもいいですか」,「これ (コラージユ),
家で もできるんですか」, と言 う。ゆっくり考えていいこと, コラージユは自 宅で も可能なことを伝 えた。後 日,Aさ んより,緊張するので,まずは自宅 マンションのロビーで 会 うので もいいかと電話があ り 次回看護師とTh。 が 訪問することとなった。
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X年9月 15日〜X年 10月 27日 (訪問回数 :3回)
Aさん 自宅マ ンシ ョンの1階ロビーで対面す る。婚活パーティーヘ参加 し, 素敵 な出会 いはなかったが,帰りに一緒 に参加 していた年配の女性 と食事 をし
たこと,何十年かぶ りに「デパ地下」へ行 ってみたこと,高くて何 も買 えなかっ たことな ど語 る。風邪症状 を訴 え,看護師に漢方薬 について尋ねる。
X年11月 10日 〜X+1年 3月 16日 (訪問回数:10回)
Th。 の提案 を受け入れ,Aさんの 自宅玄関へ の訪間が開始 される。玄関のた た きに支援者,上が った所 にAさんが位置 し,立ち話 をす る。 コラージュの 要望 はない。X年 12月 8日 玄関にヒーターが置かれる。X年 12月 22日 以降,
玄関のたた きに支援者用の折 りたたみ椅子が用意 され,お互い座 って過 ごす よ うになる。X+1年 2月 2日,玄関 に花が飾 られ,リ ビングヘ通 じる ドアが少 し開いている。「暖かい空気が来 るか ら」,と,以降閉 じられていることはな く,
X+1年 3月 2日 には,人が十分通れ る ぐらいの幅 に開け られてお り,リ ビン グの様子が見 え家具やベ ランダな どの会話が なされる。年度末でのTh。 の離職 を告 げる と,「いただいて もいいですか。苦 しくなった とき見たい」 と,コ ラー ジュ作 品を大事 そ うに受け取 る。以降,看護師,作業療法士のチームで,訪問 看護継続 中である。
図1:コラージユ① 図2:コ ラージユ②
82 仲 沙 織
図3:コ ラージユ③ 図4:コ ラージユ④
図5:コ ラージユ⑤
Ⅳ.考察
1.コラージユ作 品の理解か ら見たAさんの内的世界の変化のプロセス (1)形式的側面
パーツ数は,未完成の コラージユ⑤ を除 き,コ ラージユ①〜③で9枚,コラー ジュ④ で12枚であった。杉浦 (1994)の研究では,成人女性 (29歳 〜50代)
は,全世代 で一番使用枚数が多 く,19.4枚である。高齢者女性 (60代 〜90代)
の平均数は9.8枚であ り,Aさんは高齢者 の群 に近い使用枚数である。生 き生 きとした 日常生活か ら長年遠 く離 れて孤立 していたAさんの,いわば老化 し た心 を映 した結果 とも考 えられる。
全作 品を通 してはみ出 しがな く,面取 りやカッティング,構成の級密 さか ら
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はAさんの成熟性,几帳面 さ,芸術的センス,統合性,自我境界の安定性が 窺われた。
コラージユ①〜③では,象徴的に文字メッセージが貼 られた。で Relaxing 心地 よい香 りに包 まれて安 らぎチャージ "(コ ラージユ①), 緑のシャワーを 求めて "(コ ラージュ②),コ ラージュ③では 人間はじぶんの時間をどうする かは,じぶんじしんできめなくてはならないんだよ。だか ら時間をぬすまれな いように守ることだって,じぶんでや らな くてはいけない。",と,素直に自 己表現 されている。杉浦 (1994)が,「作品の中に意味をもって使われたと思 われる文字は,作者のス トレー トな訴えであ り,事例においてはアセスメント の要素 として取 り上げることができる」,と述べているように,Aさんがあえ
て使用 した文字は,Aさ んの素直なメッセージであ り,非言語の世界である コラージユ作品の中で,しっか りと発信 しているのではないだろうか。そのメッ セージをしっか りと受け取 り,Aさ んの想いを理解 し,支援 につなげてい く 必要があると考える。
コラージュ① とコラージユ⑤では,重ね貼 りが見 られた。何かを隠すのでは なく,コ ラージュ① ふ くろう"やコラージユ⑤ 飛行機"のように,その場 所にあえて置いた象徴的なものであると考えられる。
全体的に,人物を含め,生物はあまり選択 されない傾向であるが,作品が進 むにつれ少 しずつ貼 られ始めた。対人関係 を避け続けてきたAさんではある が,少しずつ他者関係に対する気持ちの変化が窺える。
図柄 に合わせて大胆 に斜めにカッ トした り(コラージユ①),単に丸 く切 り 取るのではな く六角形やハー ト型に切 り取 った り (コラージュ①,③),3つ の角を丸 く切 り取 り,残した角を画用紙の角 と合わせた り(コラージユ⑤),パー ツや配置に合わせてカッティングが 自然 に工夫 されてお り,Aさんの芸術ヘ
の興味関心や芸術性の高さが窺われる。
(2)内容 的側面
Aさんの コラー ジユ作 品 には 強迫 症状 に苦 しみ家族 との関係 に疲 れ果 て
84 仲 沙 織
先行 きの見えない不安感や絶望感など,ネガテイブなメッセージが貼 られてい る一方で,輝いていた時期を回想 し 老いを受け入れ,将来への明るい希望を 抱けるようなポジテイブなメッセージも貼 られ,豊かに内的世界が表現 された。
現実世界で疲れ呆て,遠くへ行って心身を浄化 したいという想いが,頻出す る海外の風景 (コ ラージュ①〜⑤),草原 (コ ラージュ①〜③,⑤ ),水の流れ(コ
ラージュ①〜④)などに表現 されていた。また コラージュ①では静かで動 き がない印象の水の風景であったが,コラージュ②では,迫りくる緑や激 しく飛 沫を上げて流れる川,コラージュ③では流れ出る噴水など,生き生 きとした躍 動感が感 じられるものへ と変化 している。コラージュ③の流れ出る噴水のパー ツは,街中の広場の風景であ り,人物は映っていないものの,人の気配が強 く 感 じられるパーツである。 これ らの変化は,Aさ んの動 き出 した内的世界 を 象徴 していると思われる。さらに,乗 り物のパーツについても,コラージュ④ で飛行機 と手漕 ぎボー トが初めて出現するまで選択 されなかったが,川や林道 を登ってい く手す り (コラージュ②),ダイバーが蹴 り出すフィン (コ ラージュ
③)からも同様に,Aさんの動 き出した内的世界が推察された。
また,毎回,エネルギー備給の象徴 として果物 (コ ラージュ①,④)やケー キ (コラージュ②,③ ,⑤)など甘いものが貼 られた。孤独感や不安感でいっ ぱいの心を満たす役割であったと考えられる。
自然風景,川や海などの水の景色は毎回使用され大 きく配置されたが 人物 は後ろ姿の二人 (コラージュ③),ダイビングスーッ姿の二人 (コ ラージュ③),
暗が りの中の数人の人影 (コラージュ④)の いずれも小 さく表情が見えない ものであった。対人恐 昨症者の表現特徴について,服部 (1999)は,人の顔や 体 を何かで覆った,または隠 したパーツが貼 られることが多いと報告 している。
Aさんの選択 したパーツは,人の顔や体 を何かで覆った り隠 した りはされて いない ものの,顔 や体がはっきり見えないという点で 似通っている。これは 対人関係 を避け他者への強い拒否感 と不信感 を抱 き続けてきたAさんの内面 が表現 されているとも考えられる。 しか し,コ ラージユ①,コ ラージユ②で は全 く人物を選択 しなかったAさんが,小さく表情が見えない人物 を配置 し,
強迫症状 を訴える 50代 女性 との面接過程 一コラージユ・ボツクス法を通 して‑ 85
対 また は複 数 の人物 だ った こ とは,対人 関係 へ の期待 や希 望 が窺 え,同時 に,
対 人 関係 を持 つ こ とに対 す る不 安 が感 じ取 られ る。
コラージユ①で「これは私」と,寂しげな ふ くろう"に自分自身を投影 し た。ふくろうの隣には黒い十字架が立ち,死のイメージも感じさせる。そのふ くろうは,コ ラージユ④で,「もうす ぐ,誕生 日なんです。誰 も祝ってくれな
いか ら自分 で,」「 どこか ホテルの ラウ ンジで一 人で飲 んで た ら,素敵 な紳士 に 声 を掛 け られ た りして」,と,誕生 日のス トー リが展 開 された 中に貼 られた ト
イプー ドル"へ変化 したのではないだろうか。黒い縁取 りで囲まれ,十字架の 横にたたずんでいたふ くろうが,明るい背景に柔 らかそうなクッションを背に して,かわいらしいリボンをつけ気持ちよさそうに伸びをしている トイプー ド ルヘ と変化 し,同時に,自分 自身のイメージも変化 していったのではないだろ うか。
コラージユ④の飛行機は,コラージユ⑤で飛び立ち,象徴的に空へ重ね貼 り された。また,大空を飛ぶ飛行機 とヨーロッパの街並みのパーツの下に,手の
ひらに載せ られたフルーツタル トが挟み込まれ,これまでの重ね貼 りと比べる と,構成に面白みが加わっている。不潔恐1布のため他人の手が触れた食べ物を 受け付けなかったAさんが,手のひらの部分 を切 り落 とさずに貼ったことは, 大 きな変化であると考えられる。また,構成の面白み,と言 う点は,コラージユ で遊ぶゆとりが出てきたとも考えられる。これは,山上 (2014)の,重症強迫 神経症の男1生の事例や社会恐 怖の女性の事例で,面接後期に見 られた表現 と通 ずるものである。
全作品を通 して,高い表現力 と統合性,コラージュヘの親和性が見 られた。
(3)継時的側面
5枚のコラージユ作品を,継時的に検討する。コラージユ①では,爽やかな 自然風景 と暖かみのあるキャンドルと対照的に,ふ くろうに自分 自身を投影 し,
両化的な感情が表現 されている。コラージユ②では,さ らに自然風景が増加 し, また小鳥,対の蛍,親子の羊 と生 き物 も増えている。小鳥のみ 1羽 であるが,
86 仲 沙 織
明るい印象のパーツであ り,自己イメージが,前回のふ くろうから変化 したも のとも考えられる。急流や近景の川や住宅地からは,動き出した内的世界が窺 える。コラージュ③では,メ ッセージ性の強い文字が貼 られ,初めて人物が選 ばれた。人物は全て対であ り,ハー ト型にくり抜かれたパーツが印象的である。
他者 との交流への期待 と強い意志が窺える。コラージュ④では,それまで9枚 が続いていたパーツ数が12枚になった。また,初めて乗 り物 も選ばれた。大 空へ飛び行 く飛行機は,「あっという間に別世界に行ける」 ものであ り,ボー
トは手漕 ぎであ り,自分の力で進んでい くものである。これらのことか ら,A
さんの内的エネルギーの高まりが窺えた。自分の誕生 日を祝 うかのような作品 は,コラージュ①で垣間見えた孤独 と死のイメージが一転 している。その後2 回,Aさ んの希望でコラージュ制作 を休み,心理面接 を実施 している。非言 語のコラージュ制作の中で,自分の想いを整理 し,メ ッセージを象徴的に発信 してきたAさんであったが,言語でのや りとりが可能 とな り,Aさ ん自身 も 直接の対話を求めるまでに心理的に回復 したと考えられる。その結果,コラー ジュ⑤は,象徴的な飛び立つ飛行機の重ね貼 りと,手のひらに載せ られたフルー ツタル トが遊びの要素を含み,未完成で終えている。
日常生活では,一旦は受諾 した自宅への訪問看護を拒否 し,落胆 と諦め,ま た少 しの希望を持ち訪問看護ステーションヘ出向いたAさんの複雑な心境が,
コラージュ①に表現されている。その後支援が定着 し,少しずつ外出が可能に なり,コラージュにも動 きが出てきた。さらに,対人関係への期待や希望が高 まり,大きな一歩を踏み出すために,コラージュ③で,「この 30年 何やってた んだろう。返 して欲 しい…」 と,封印してきた過去の振 り返 りを始め,次の回 はコラージユ制作 を休み,心理面接 を実施 した。その後制作 されたコラージュ
④では,色彩 もパーツ数 も最 も多 く,海外旅行への希望や誕生 日への期待感が 語 られている。その後 2回 は心理面接 を実施 してお り,海外旅行への不安を具 体的に言語化 し,旅立って行った。最後に制作 されたコラージュ⑤では,海外 旅行 を成 し遂げた自信 と心のゆとりが感 じられた。中原 (2012)は,60代女 性の事例 を通 して,「創造的退行を足掛か りに残存能力や感情が蘇 り,自己対
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話 を繰 り返 しなが ら本来の芸術 的志向性 を賦活 させた」 と考察 し,その要因に セラピス トの見守 りとコラージユ療法が有す る遊び要 因を挙 げている。 また, 緒方 ・楡木 (2008)は,中年期男1生へ 10回 の コラージユ療法 を実施 した結果, 生育や今後の生 き方の見直 しと未解決な問題 と葛藤の整理 を行い,主体的なア イデ ンテイテ イの獲得へ向けての模索 と軌道修正 を行 うことで,う つ症状 の緩 和 と中年期 を受容す ることが可能 とな り,危機的な状況 を乗 り越 えることがで きた,と報告 している。 これ らの事例経過 には,本事例の経過 と通ず る部分が 多 く見 られた。
このように,コラージユ表現 と内外的世界が連動 し,回復 と再出発のプロセ スが窺われた。
2.アロマオイルの使用
本事例 で は,コラージユ・ボ ツクス法施行 の際,Aさんの嗜好性 を受 けア ロマオイルを使用 した。福 島 (2011)の調査では,オ レンジ・スイー トが半数 以上の被験者 に好 まれ,すっきりしなが らもやわ らかいイメージが持たれてい ることが明 らかになっている。 また,好きな精油 を選択 してアロマ コラージユ 療法 を実施 した場合,制作直後 と1週間後のいずれ も,作業の楽 しさ,香りの 満足度 において,高い得点が得 られた一方で,セラビス トが提供 した精油 (ラ
ベ ンダー)を使用 した群 は,嗜好 にば らつ きがあ り,得点が伸 びなかったこと も明 らか となってい る (福島,2015a)。 本事例 で は,10種類 か らその 日の気 分で選択 して もらった結果,オレンジ・スイー トが最 も多 く使用 された。 また, 本事例では,海外旅行へ行 く際,お守 り代 わ りにアロマオイルを染み込 ませた
ティッシュを持参 したが,福島 (2015b)の調査 で被験者か ら聴かれた,「カウ ンセ リングを思い出 しなが ら香水 を嗅いだ リコラージユを眺めると落ち着 く」
などの感想 と重 なる ものである。 アロマオイルの使用 については,香りが面接 室か らもれる心配があることや,すぐ次の面接が入 っている場合 に香 りを消す ことが難 しいな ど,課題 も多 い。 しか し,Cl。 の 自宅での使用 については可能 性が高 く,アウ トリーチでの活用が期待 される。