• 検索結果がありません。

【特集】肺移植の適応の拡大とその限界 肺移植の現況と展望

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "【特集】肺移植の適応の拡大とその限界 肺移植の現況と展望"

Copied!
6
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

2019年第3巻1号(1月号)e00059. 世界の肺移植の実施状況と成績 肺移植の臨床応用は1963年にHardyらによ. り初めて行われた1)。その後の15年間で38例. が試みられたが10カ月以上の長期生存例は得. られず,しばらく臨床例は途絶えた。1980年. 代になって新しい免疫抑制薬シクロスポリン. が登場し,さらに気管支吻合部の縫合不全防. 止法の開発によりToronto大学のCooperらが. 1983年に片肺移植に成功した2)。以後1990年. 代には終末期呼吸器疾患に対する治療法とし て普及し,近年は世界で年間4,000例以上が. 行われるまでになった。当初は術式として両. 肺移植よりも片肺移植の実施例が主であった. が,2002年あたりで両者の比率が逆転し,そ. れ以降は片肺移植の実施数にほとんど変化がな. く,両肺移植の実施数が年々増加している状況. である。国際心肺移植学会(International. Society for Heart and Lung Transplantation:. ISHLT)の2017年の報告によれば3),これま で累計で59,000例を超える肺移植が実施され. ているが両肺移植と片肺移植の実施数の比率. は約3対1となっている(図1)。小児の肺移 植については,同じくISHLTの国際登録症例. 数から判断すると1995年あたりから年間100. 例前後が実施されていることが推定されるが,. その後の症例数の伸びは見られないようであ. る。 2016年までの国際登録における54,253例. の適応疾患としては,慢性閉塞性肺疾患. (chronic obstructive pulmonary disease:. COPD)が31%と最も多く,次いで特発性間. 質性肺炎(Idiopathic interstitial pneumonia:. IIP)25%,嚢胞性繊維症(cystic fibrosis). 16%,間質性肺疾患(Interst i t ial lung. disease:ILD)(not IIP)6%,α1アンチ トリプシン欠損症(alfa-1 ant i t ryps in. Jpn Open J Respir Med 2019 Vol. 3 No. 1 article No. e00059 https://kokyurinsho.com/surgery/e00059/ / 1 6. 要旨 肺移植の国際登録が始まって以来59,000例以上が登録された。わが国では1998年の生体肺移植,. 2000年の脳死肺移植を皮切りにこれまで脳死・生体合わせて600例以上の肺移植が実施された。こ れまでのところ,わが国の肺移植の成績は国際登録のそれを大きく上回っている。肺移植における もっとも大きな問題はドナー不足であるが,これを解決するために心停止ドナーの利用など現在も さまざまな試みがなされている。. Keywords:国際登録,肺移植の成績,心停止ドナー,EVLP/international registry, Prognosis of lung transplantation,non-heart-beating donor,EVLP. 【特集】肺移植の適応の拡大とその限界. 肺移植の現況と展望. 近藤 丘* *東北医科薬科大学外科学第二(呼吸器外科)(〒983-8536 宮城県仙台市宮城野区福室1−15−1). Present status and future prospects of lung transplantation Takashi Kondo*. *Department of Chest Surgery, Tohoku Medical and Pharmaceutical University, Miyagi. https://kokyurinsho.com/surgery/e00059/. 2019年第3巻1号(1月号)e00059. deficiency:α1ATD)5%,特発性肺動脈性 肺高血圧症(Idiopathic pulmonary arterial. hypertension:IPAH)2.9%と続いている。. 肺移植後の5年生存率とmedian survivalにつ. いては,両肺移植34,141例では約60%と7.4. 年,片肺移植18,926例では約48%と4.6年と. 両肺移植が有意に予後良好であることが示さ. れている(図2)。. わが国の肺移植の実施状況と成績 わが国の肺移植第1例目は臓器移植法が施. 行された翌年の1998年10月10日に岡山大学. で気管支拡張症の患者に実施された生体肺移. 植である4)。脳死下での臓器提供による肺移. 植は2000年3月29日に実施された東北大学で. の右片肺移植と大阪大学の左片肺移植がわが. 国で最初の症例である5)6)。以後,2010年ま. で脳死肺移植の年間実施数は2008年の14例. Jpn Open J Respir Med 2019 Vol. 3 No. 1 article No. e00059 https://kokyurinsho.com/surgery/e00059/ / 2 6. 図1 国際登録による肺移植件数の年次推移(ISHLT2017年のregistryより). 図2 国際登録による成人肺移植例の予後(ISHLT2017年のregistryより). https://kokyurinsho.com/surgery/e00059/. 2019年第3巻1号(1月号)e00059. を除いて10例未満と低迷していたが,臓器移 植法が改正された2010年以降増加して2017. 年は56例に達した。一方,生体肺移植の実施. 数は1998年以降徐々に増加したが2013年と. 2014年の年間20例をピークに年間10数例で. 推移している。このことから,2010年より年. 間脳死肺移植実施数の方が生体肺移植実施数. を上回るようになった(図3)。脳死肺移植 の術式としては両肺移植と片肺移植の実施数 はほぼ同数で推移しており,国際登録とはや. や異なった傾向を示している。脳死臓器提供. 者数が極めて限られるわが国での提供臓器の. 有効活用という観点でのレシピエント選択基. 準がもたらした結果であると言える。わが国. の脳死肺移植の適応疾患としては当初は肺リ ンパ脈管筋腫症(lymphangioleiomyomatosis:. LAM)とIPAHが多く,COPDや間質性肺炎. は少なかったが,肺移植実施数の増加ととも. にとくに間質性肺炎のレシピエント登録数が. 著増し適応疾患としても最も多くなっている。. また,LAMやIPAHはその病態の解明が進み,. 内科的治療が進歩して予後が改善されつつあ. ることもそのような傾向をもたらした要因で あると言える。. 肺移植の適応疾患は,1996年に当時の肺・. 心肺移植関連学会協議会(現在の肺移植関連. 学会協議会)が定めた17疾患であった(図 4)。しかし,その後の疾患概念や分類の変. Jpn Open J Respir Med 2019 Vol. 3 No. 1 article No. e00059 https://kokyurinsho.com/surgery/e00059/ / 3 6. 図3 わが国の肺移植実施件数年次推移. 図4 わが国における肺移植開始当初の肺移植適応疾患(肺・心肺移植関連学会協議会 1996年4月). https://kokyurinsho.com/surgery/e00059/. 2019年第3巻1号(1月号)e00059. 更などがなされたために,施設間で適応疾患 に関する認識のズレが生じないように肺移植. 関連学会協議会において2015年に肺移植レシ. ピエントの適応基準における疾患の分類が実. 情を反映するように大きく変わった(図 5)。 わが国における肺移植実施数は2018年7月. 1日現在で脳死肺移植417例,生体肺移植が. 211例の合計628例である。脳死肺移植417例 の移植後5年生存率が74.5%,10年生存率が. 64 . 1%でいまだ50%に到達しておらず. median survivalは算出できない(図6)。脳 死肺移植を術式別に両肺移植201例と片肺移. 植216例に分けて移植後生存率を比較すると5. 年生存率と10年生存率はそれぞれ両肺移植. 76.4%,69.5%と片肺移植72.8%,59.5%で. あり両者に統計学的有意差は見られない。 Median survivalは両肺移植では移植後17年. を経過していまだ50%には至っておらず算出 できないが,片肺移植では4301日(約11年9. カ月)となっていて,片肺,両肺移植を問わ. ず,わが国の脳死肺移植の成績は国際登録の. それを大きく上回っている(図7)。一方, 生体肺移植については5年生存率と10年生存. 率はそれぞれ76.3%,71.5%であり,脳死肺. 移植の移植後成績との間に統計学的有意差を. 認めない(図8)。 以上のようにわが国の肺移植の成績は非常. に優れたものとなっているが,臓器提供数が. 諸外国に比してわが国では極めて限られると. いう実情があり,この優れた成績を享受でき. る患者は極めて限られるのが現状と言える。. このため,少しでも提供肺の利用率を高める. ために脳死,生体を問わず肺移植実施施設に. よってわが国独自のさまざまな工夫がなされ てきた。すなわち,左右を逆転した片肺移植,. Jpn Open J Respir Med 2019 Vol. 3 No. 1 article No. e00059 https://kokyurinsho.com/surgery/e00059/ / 4 6. 図5 わが国における現在の肺移植適応疾患(肺・心肺移植関連学会協議会2015年改定). https://kokyurinsho.com/surgery/e00059/. 2019年第3巻1号(1月号)e00059. 1側肺を左右逆転して肺葉移植する両側生体 肺葉移植や機能が幾分残っている疾患肺葉を. 残した生体肺移植7),小さな子供に対する一. 側肺葉や中葉の移植8),片肺しか利用できな. い脳死提供肺と生体肺葉移植を組み合わせた. いわゆるハイブリッド肺移植9)など,肺移植. によって助かる機会を最大化するための工夫. がなされてきた。. 肺移植実施例増加に向けての取り組み 脳死下での臓器提供数の増加への努力がもっ. ともわかりやすい肺移植実施例の増加のため. の対策であるが,一方で限られた提供肺の利. 用率を上げることも肺移植実施例の増加につ. ながるのは言うまでもない。わが国では前項. のような手術という面での工夫がなされてき たが,国際的に見ると移植に適さない提供肺. を極力減らすという方向性での研究がなされ. てきた。すなわちex vivo lung perfusion. (EVLP)という手技であり,これにより移. 植に適するかどうかの客観的判断や脳死や心. 停止によって障害を受けた肺を体外で治療し,. 移植可能な状態に回復させて肺移植に結びつ. けるというものである。 心停止ドナーからの肺移植に関する基礎的. な研究は古くからなされているが10)-13),世界. ではじめて臨床で実践したのはWisconsin大学. のDr. Loveらであった14)。その後,心停止下. で提供された肺が移植に適するかどうか,ど. のようにして評価するのかということからEVLP. という手法が開発され,2001年にこの手技の. 臨床応用が報告されて一躍注目を浴びること となった15)。その後,このEVLPは長時間の体. 外灌流を可能とすることによって,単に心停止. ドナー肺の評価から障害を受けた肺を体外で. 治療し,回復を見たら移植に進むといった方. 向へ利用が拡大されてきている16)-18)。. Jpn Open J Respir Med 2019 Vol. 3 No. 1 article No. e00059 https://kokyurinsho.com/surgery/e00059/ / 5 6. 図6 わが国の脳死肺移植の成績 図7 わが国の脳死肺移植の術式別成績. 図8 わが国の脳死/生体肺移植の成績. https://kokyurinsho.com/surgery/e00059/. 2019年第3巻1号(1月号)e00059. わが国の肺移植の展望 わが国では脳死下での臓器提供数はこれま. でのところ極めて限られた数になっているが,. 提供された肺の利用率,すなわち肺移植に供. される確率は日本臓器移植ネットワークのホー. ムページに公開されているデータから,提供. 者の約65%と極めて高いことが示されている。. わが国独自のメディカルコンサルタント制度. の導入がこの高い肺の利用率をもたらしてい. ることが推測される。そのため,いわゆるマー ジナルドナーをEVLPなどによって安全に移植. 可能にする手段をとっただけでは移植実施数. の劇的な増加は期待できないと思われる。心. 停止下での臓器提供による肺移植を可能にす. るなど,臓器提供数そのものを大幅に増加さ. せるような何らかの根本的な手立てが必要に. なるのではないかと思われる。. 利益相反:なし。. 文献 1) Hardy JD, et al. Lung transplantation in man. Report of the initial case. JAMA. 1963; 186: 1065-74.. 2) Cooper JD, et al. Technique of successful lung transplantation in humans. J Thorac Cardiovasc Surg. 1987; 93: 173-81.. 3) Chambers DC, et al. The registry of the international society for heart and lung transplantation: Thirty-fourth adult lung and heart-lung transplantation report-2017. J Heart Lung Transplant. 2017; 36: 1047-59.. 4) 清水信義, ほか. 国内初の両側生体部分肺移植成 功例. 日外会誌. 1999; 100: 806-14.. 5) 松村輔二, ほか. 本邦初の脳死肺移植: 右片肺移植. 今日の移植. 2000; 13: 418-25.. 6) Miyoshi S, et al. Single lung transplantation from brain-dead donor for a patient with idiopathic pulmonary fibrosis: a breakthrough after new legislation in Japan. Jpn J Thorac. Cardiovasc Surg. 2001; 49: 398-403.. 7) 伊達洋至. 生体肺移植の新しい術式. 医学のあゆ み. 2015; 28: 113-21.. 8) Oto T, et al. Living related donor middle lobe lung transplant in a pediatric patient. J Thorac Cardiovasc Surg. 2015; 149: e42-4.. 9) 大藤剛宏, ほか. ハイブリッド肺移植の経験. 移植. 2016; 51: 247.. 10) Eagan TM, et al. A strategy to increase the donor pool: Use of cadaver lungs for transplantation. Ann Thorac Surg. 1991; 52: 1113-21.. 11)岡田克典,ほか 脱血心停止Donor肺の24時間保 存および同種肺移植に関する実験的研究.移植 1993; 28(1): 38-45.. 12)島田和佳, ほか. 脳死心停止したDonor肺を用いた イヌ同種肺移植に関する実験的研究. 日胸疾会誌. 1994; 32: 315-8.. 13) Kondo T, et al. Study of lung transplantation from non-heart-beating donor following brain dea th in can ine mode l o f l e f t lung transplantation. Acta Bio-Medica de l’Ateneo Parmense. 1994; 65: 133-45.. 14) Love RB, et al. Successful lung transplantation using a non‒heart-beating donor [abstract]. J Heart Lung Transplant. 1995; 14: S88.. 15) Steen S, et al. Transplantation of lungs from a non-heart-beating donor. Lancet. 2001; 357: 825-9.. 16) Cypel M, et al. Technique for prolonged normothermic ex vivo lung perfusion. J Heart Lung Transplant. 2008; 27: 1319-25.. 17) Cypel M, et al. Normothermic ex vivo lung perfusion in clinical lung transplantation. N Engl J Med. 2011; 364: 1431-40.. 18)Machuca TN, et al. Lung transplantation with donation after circulatory determination of death donors and the impact of ex vivo lung perfusion. Am J Transplant. 2015; 15: 993-1002.. 掲載日2019年1月15日. Jpn Open J Respir Med 2019 Vol. 3 No. 1 article No. e00059 https://kokyurinsho.com/surgery/e00059/ / 6 6. © Takashi Kondo. 本論文の複製権,翻訳権,上映権, 譲渡権,貸与権,公衆送信権(送信可能化権を含む)は 弊社に帰属し,それらの利用ならびに許諾等の管理は弊 社が行います。. https://kokyurinsho.com/surgery/e00059/

参照

関連したドキュメント

In this context, living liver transplantation was started, because, in those days, brain death transplantation could not be performed in Japan.. Thereafter, living

Incidence of hyperacute rejection in pig-to- primate transplantation using organs from hDAF- transgenic donors. , e t al.(2013).Production of cloned NIBS (Nippon

7 ) Takahashi K, Saito K, Takahara S et all Excellent long-term outcome of ABO- incompatible living donor kidney transplantation in Japan・ Am J Transplant

Long-Term Outcome of Percutaneous Biliary Interventions for Biliary Anastomotic Stricture in Pediatric Patients after Living Donor Liver Transplantation

ure secondary to muscular dystrophy: Clinical outcomes after left ventricular assist device implantation. J Heart Lung Transplant 2016; 35: 831 ‒ 834. 20) Ryan TD, Jefferies

その成績, 予後, 問題点などをうかがい, 今後の腎移植の発展に資することを目的と した。 従って, 泌尿器科,

山梨医大紀要 第9巻(1992)

: An evaluation of the tolerance of the autotransplant ed canine lung against warm ischemia... Impart of a free