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聞
く
警 察 畑 の 出 身 者 ら し く 「 巨 悪 」 に 対 し 身 じ ろ ぐ ど こ ろ か 、 歯 に 衣 を 着 せ ぬ 「 口 撃 」 を 加 え る こ と で 高 い 人 気 度 を 誇 る 平 沢 勝 栄 衆 議 院 議 員 に 、 強 権 台 頭 す る 中 国 と ど う 付 き 合 え ば い い の か 、 憲 法 改 正 の ポ イ ン ト は ど こ に あ る の か な ど を 聞 い た 。 面で世界一になることを望んでいる。 その時に、国際法だとか国際間のルー ルみたいなものが邪魔になる。 おそらく、 中国はそうしたものを無視してくるだろ う。 その兆候が出ているのが南シナ海だ。 中国は国内法と国際法がぶつかった時 に、どちらを優先させるかといえば、明 らかに国内法を優先する。 そ の 時 の 理 屈 は、 国 際 法 や 国 際 間 の ルールというのは自分たちの力が弱かっ た時に、大国が勝手に作ったものという ことだ。そのすべてを無視するわけには いかないけれど、これを直していかない といけないと中国は考えている。 今の国際間のルールは中国にとって不 利 に で き て い る と い う の が 中 国 の 考 え ――中国に関しては「 10年後にはGDP で米国を抜く」とか、一方で「中国崩壊 論」があったりブレが大きいが、中国観 はどういったものか? 日本はこれからずっと、加害者である と し て 中 国 か ら 責 め ら れ 続 け る と 思 う。 だから、日中は加害者と被害者の関係が これからもずっと続く。 中国が望んでいるのは、できれば自分 たちが世界一の国家になることだ。軍事 力でも経済力でも、外交力でもあらゆる だ。中国が現状に満足することは絶対あ り得ない。 それに対し日本が何か言うと、 「 お 前 た ち は 加 害 者 だ 」 と 言 っ て く る だ ろう。中国はこれから、どこにでも出て いくだろう。 現実に、南シナ海に出てきている。そ れで南シナ海を治めたら、それで満足す るかといえば、満足しない。 中 国 が 1 9 9 2 年 に 定 め た 領 海 法 に は、尖閣(釣魚島)は自分たちの領土と 書いてある。それにもかかわらず、中国 が実力で尖閣を取りに来ないのは、明ら かに米国を意識しているからだ。米国が 背後にいなければ中国は尖閣を取りに来 ると思う。 中 国 の 学 者 と か 軍 人 と 話 し て い る と、 明 ら か に「 沖 縄 は 自 分 た ち の 領 土 」 と 言っている。韓国の中で「対馬は自分た ちの領土」と言っているのと同じだ。韓 国政府は言っていないが、韓国人にはそ う思っている者が多い。 ――韓国は「対馬」は自分たちのものだ という意識はあるのか? 対馬藩というのは、朝鮮との交流も深 かった。 ひ ら さ わ か つ え い 1 9 4 5 年 9 月 4 日、 岐 阜 県 白 川 村 生 ま れ。 東 大 法 学 部 卒 業 後、 警 察 庁 入 庁。 米 国 デ ュ ー ク 大 学 大 学 院 修 士 課 程 修 了。 外 務 省 在 英 国 日 本 国 大 使 館 一 等 書 記 官、 警 視 庁 防 犯 部 長、 岡 山 県 警 察 本 部 長、 防 衛 庁 長 官 官 房 審 議 官、 内 閣 官 房 長 官 秘 書 官 な ど 歴 任。 1 9 9 6 年、 衆 議 院 議 員。 現 在、 7 期 目。 衆 議 院 外 務 委 員 長、 総 務 大 臣 政 務 官、 内 閣 府 副 大 臣 な ど 歴 任。 著 書 に「 も う 黙 っ て い ら れ な い!」 「 日 本 よ 国 家 た れ 」「 警 察 官 僚 が 見 た『 日 本 の 警 察 』」 「 政 治家は楽な商売じゃない」など多数。中国は虎視眈々と
沖縄を狙っている
―― し か し、 江 戸 幕 府 へ の 帰 属 意 識 は あった? あったけれども、実際の交流は朝鮮と 密 だ っ た。 朝 鮮 と の 交 流 の 文 書 は 一 杯 残っている。 対馬王朝の朝鮮との交流記録は何万冊 とあるはずだ。 この多くは韓国にあるが、 日本には渡さない。いつ、どういう形で 韓国が、これを使うか分からない。 竹島近くの 鬱 うつりょうとう 陵島 には、竹島博物館が あるだけではなくて、標識に「対馬はわ が 領 土 」 と は っ き り 書 い て あ る そ う だ。 新 藤 義 孝 衆 院 議 員 や 稲 田 朋 美 衆 院 議 員、 髭の佐藤正久参院議員は鬱陵島に行こう と韓国に渡ったが、金浦空港から外に出 られず、そのまま引き返してきた。 その時には私は行けなかったが、 後日、 原田義明議員と一緒に出かけた時、天気 はいいのに船は出ないという。翌日もそ うで、結局、行くことはできなかった経 緯がある。 そうした「対馬」に対する韓国人の領 土意識と同じように、中国は「沖縄」に 対して領土意識を持っている。 だから中国とすれば、まずは尖閣。次 には沖縄だ。そんなことは絶対させては ならない。領土と言うのは一寸といえど も譲ってはだめだ。イェーリングは「権 利 の た め の 闘 争 」( 岩 波 文 庫 ) を 書 い て いるが、一部の領土を取られて黙ってい る 国 民 は 全 部 の 領 土 を 取 ら れ る と あ る。 国 家 の 最 た る も の は「 領 土 や 国 民 の 命 」 だ。絶対に、 少しでも妥協してはだめだ。 自分の領土を気前よく占領させるような お人よし国家は、その全土を侵略されて 消滅するのが世の常だ。 中国は今、尖閣が日米安全保障条約の 対象になっているから黙っているけれど も、そうしたものが外れたら、ちょうど フィリピンから米軍が出て行った後、南 沙 諸 島 に 出 て き た よ う に す ぐ 出 て く る。 日本がひるむ時に必ず出てくる。中国は 虎 視 眈 々 と 力 の 空 白 を 狙 っ て い る と 思 う。 そ の 意 味 で は 中 国 の 動 き と 言 う の は、 日本にすれば脅威だ。日本政府は中国に 対し「脅威」との言葉を使わないで「懸 念 材 料 」 と い う 言 葉 を 使 い、 「 中 国 の 国 防力の増強など」に対し「懸念」といっ て い る。 私 は「 懸 念 」 じ ゃ な く「 脅 威 」 だと思っている。 ――ドナルド・トランプ氏が米大統領共 和 党 候 補 の 指 名 を ほ ぼ 確 実 に し て い る が、発言を聞くと「米軍撤退」もあり得 る? ト ラ ン プ の 考 え 方 が 米 国 の マ ジ ョ リ ティーとは思わないが、日米関係でいえ ば米国に理解してもらうしかないし、そ のための努力を怠ってはだめだ。 もし米軍が日本から離れたら、平和安 全 法 制 を 憲 法 違 反 だ と 騒 い で い た 連 中 は、どうやって日本を守るのか。彼らは 安全保障と言うのは、日本は憲法がある から何もやらなくていい、ただ米国に任 せておけばいいという考えだった。とこ ろが、米国が出ていくことがあり得ると なった時、日本としてどうするんだとい うことの判断を迫られてくる。 だ か ら ト ラ ン プ が、 あ あ い う こ と を 言ってくれたので、日米安保条約は当然 のように考え、駐留米軍を日本を守る番 犬みたいに考えていた人には、冷や水に なっただろう。 彼らの論理は、外国に自衛隊は一人も 出さない。ただ憲法だけを守って何もし ない。基地提供しているんだから、米国 は 日 本 を し っ か り 守 れ、 と い う こ と だ。 こんなことが、いつまでも続くはずがな い。 それをトランプはしっかりと教えてく れた。 米軍が1992年、フィリピンから撤 退した時、フィリピン政府はまさか米軍 が出ていくとは思わなかった。 91年のピ ナトゥボ火山の噴火があったこともあっ て、実際に米軍は出て行った。 日本の米軍も出ていかないとも限らな い。そのためには、日本もそれなりの貢 献をしなければいけない。日本は憲法が あるから何もしないというのじゃ通らな いだろう。 日本人が一番勘違いしているのは、憲 法9条があるから日本は世界から大変に 尊敬されている、信頼されていると思い 込んでいることだ。大学の憲法学者の中 にも、こういう考えの者が一杯いる。 日本は平和憲法を持っているから外国 か ら 信 頼 さ れ 尊 敬 さ れ て い る と 言 う が、 全然、日本は世界から信頼されていない し、尊敬されてもいない。 日本はむしろ、外国から見たら日本人 の命が一番大事だと思っている国だ。そ して日本だけ平和になれば、他の国はど うでもいいと思っている独りよがりのセ ルフィッシュ(利己的)な国民だと思わ れている。 私は役人時代の最後、防衛庁の審議官 を や っ て い た。 外 国 は ず い ぶ ん 回 っ て、 国防関係者と話をした。その時、彼らが 言 う の は、 日 本 と い う の は セ ル フ ィ ッ シ ュ な 国 だ。 自 分 の 国 民 さ え 助 か れ ば、 他の国の国民はどうなってもいいと思っ ているのが日本国民だ。非常にわがまま だし、 自己中心だ。みなそう言っていた。 表向きには言わないし、新聞に出るよ うなところでは言わないが、内々で話を すれば必ずこうしたことを言う。 世界から日本が尊敬されているなんて 現実にはない。テロリストは「尊敬」し ているかもしれない。韓国、中国も「尊 敬」しているかもしれない。 先だってBSフジのプライムニュース と い う 番 組 で、 「 憲 法 シ リ ー ズ 」 を や っ ていて、私も出演した。一緒に出演した 中 国 の 朱 建 栄 と い う 教 授 が、 憲 法 前 文 の「平和を愛する諸国民の公正と信義に 信頼して、われらの安全と生存を保持し ようと決意した」について(自民党の草 案では)何でこんないい文章を削ったん だと言った。すかさず「そんなにいいの なら中国の憲法に入れたらいいじゃない か」と返したら、 朱氏は黙ってしまった。 ――中国の習近平政権というのは言論の 自由を抑え込み、人権派の弁護士は牢獄 に放り込むなど 「強権統治」 の手法をとっ て い る。 さ ら に「 ハ エ も ト ラ も た た く 」 とのスローガンで、汚職一掃にも動いて きたが、これは汚職一掃しないと共産党 の求心力は消えてしまうとの危機感から 動いているのか、政敵を潰すための権力 闘争なのか、どちらだと思うか? その両方だろう。中国は憲法に人権が 書 い て あ る が、 人 権 が 守 ら れ な い 国 だ。 なぜ守られないかというと、中国は憲法 や法律の上に共産党がある。その共産党 がすべてだからだ。だから、人権も党の 方針でいくらでも右にも左にも動かすこ とができる。 中国の長春で国際会議があった時、慶 応大学名誉教授の小林節さんと一緒に参
加した。私はそこで「中国は憲法や法律 があって法治国家と言っているが、中国 では法の上に共産党がある。党の方針で 法を変えることが可能だ。これでは法治 国家とは言えず、信用して中国とは付き 合えない」と言った。さらに、示し合わ せたわけではないが、私の後の小林節さ んも同じような基調報告をした。 そうしたら、昼の食事の座席が変わっ た。 今 ま で メ イ ン テ ー ブ ル だ っ た の が、 すみっこに押しやられた。 そして私たちに「シンポに出なくてい いから見学に行ってくれ」と言う。そし て、小林節さんと私に車を用意してくれ て、案内された。その場所が、日本が戦 時中、いかに残虐なことをしたかという 博物院だった。 最 初 に 言 っ た よ う に「 中 国 は 被 害 者。 加害者のお前たちは何を言うのか」とい う意識だ。つくづく「この国とつきあう のは大変なことだ」 と私は思ったものだ。 要するに、中国には法律とか正義とか 何もない。要は共産党があるだけだ。 経済については自由主義みたいな錯覚 を持っているが、人権とか思想とかは共 産党一党独裁下の共産主義国家だ。そこ を忘れてはだめだ。 ――1991年 12月にソ連は崩壊し冷戦 終結と言われたが、アジアには共産主義 は残った。北朝鮮にしろ、中国にしろ異 質の国だ。 中国は民主主義国家ではなく、共産党 独裁の共産主義国家であることは間違い がない。ただ経済では一部、自由主義的 な側面が出ている。 ――アジアに残った共産主義とどう対峙 していくのかという歴史的課題がある? 日 本 に と っ て 戦 後 は 終 わ っ て い な い。 韓国とは同じ価値観と言うことでやって いるが、北朝鮮とは国交もないし、中国 とは価値観が全く違う。その中国から日 本は脅威にさらされながら、これからも うまくやっていかないといけない。 軍事力でも経済力でも、今まで中国が 弱かった時はよかった。しかし、中国は 現 在、 変 に 自 信 を つ け て き て い る 中 で、 昔の被害者意識を丸出しにして、無理難 題を含めて日本にすべてを飲み込ませよ うとしている。これから中国との付き合 いは、大変になると思う。 ――その意味では、安倍首相がロシアを 訪問するなど、ロシア外交に力を入れよ うとしている。タタールのくびきといっ た歴史的な教訓もあるし、中国の圧倒的 な人口圧力にさらされているロシアの中 国への脅威感は強いものがある。そうし たロシアを中国へのカウンターバランス として使う必要がある? その通りだ。ロシア外交強化路線は正 しい選択だ。 ――落としどころは2島返還か? 領 土 と い う の は 国 家 主 権 の 最 た る も の だ。 た だ 難 し い の は 領 土 と い う の は、 100年も取られていたら既成事実化す る。前にも二島先行返還論とか面積で二 等分するとか妥協案が出たが、これにつ いては国内がまとまらないから難しい。 ただ私は、二島でも三島でも返しても らって、後は今後の交渉に任せたらいい と思う。すでに戦後 70年で、このままだ と完全に既成事実化する懸念がある。 だから、取れるときに少しでも取って お か な く て は な ら な い。 そ の 意 味 で は 1991年 12月 25日のソ連崩壊の時が大 チャンスだった。その千載一遇の機会を 日本は逃してしまった。 ――なぜ、歴史的な好機を逃してしまっ たのか? 残 念 な が ら 日 本 国 内 の 政 治 状 況 が 悪 く、腰を据えて外交できるような環境に は な か っ た。 日 本 の 政 界 は 竹 下 登 氏 の 後、宇野さん、海部さん、宮沢さんと目 まぐるしく動いた。さらに細川政権につ ながっていった。 小泉政権だとか安倍政権のように安定 した政権だったら、そうしたことにはな らなかった。 ――中国の内的な課題である道徳問題を お 聞 き し た い。 人 民 公 社 や 文 革 の 時 代、 中国は家族間での密告を奨励したり、教 師を売るようなことを薦めた。さらに改 革開放路線で、拝金主義が蔓延した。人 倫道徳はすたれる一方だが? 中国はパナマ文書では、習近平関係者 だけでなく、もっと出てくると思う。中 国の富裕層はできるだけ外国に金を蓄え て、何かあれば逃げられるようにしてい る。 自分たちの子弟も、できるだけ外国の 大学とかで学ばせて、場合によってはい つ で も 外 国 に 住 め る よ う に 準 備 し て い る。 中国の致命的な問題の1つは、極端に 格差が大きいことだ。金持ちは日本と比 較にならないぐらいの富豪で、自家用飛 行機や外国に別荘を持っている。 今、カジノ都市マカオが困っているの は、これまでマネロンダリングでカジノ を利用していた中国人が来れなくなって 閑古鳥が鳴いていることだ。習近平主席 が厳しく汚職追放に動いているから、下 手に動けば、汚職疑惑の対象にされかね ない。とりわけ役人の顧客がごっそり消 えた。マカオだけでなく、韓国の釜山や ソウルなどのカジノも運営が厳しくなっ た。それまで、中国の顧客でもっていた ようなものだったからだ。それに比べる と日本人顧客というのは大したことはな い。 そして中国は儒教精神で家族を大切に すると言いながら、政治家を含めて自分 たちさえよければいいという社会現象が みられるようになっている。 その意味でも私は、中国のあの体制と い う の は そ れ ほ ど 長 く は 続 か な い と 思 う。 ―― 中 国 要 人 の 汚 職 の 額 が 半 端 じ ゃ な い。3000億円や4000億円だとか 天文学的で、田中角栄氏のロッキード事 件での5億円という数字の比じゃない。 先 だ っ て 中 国 大 使 館 の 人 と 話 し た 時、 甘利さんが大臣室で受け取ったとして大 騒ぎになった 50万円というのは、中国で は問題にもならないと言っていた。 ――憲法改正の眼目は? 前文と9条だ。さらにいうなら前文か ら103条まで全部、変えないといけな い。 ただし、前文と9条を変えるとなると 問題になるし、国民は憲法改正のやり方 も知らないから、私は方法論としては誰 もが反対しないところから入ったほうが いいと思っている。全部、変えようとし たら多分、2、 30年はかかるだろう。 いっぺんに全部の改正を試みようとし ても、 国民がついてこれない。せいぜい、 同じジャンルの部分に絞って改正案を出 していく。 次には別のジャンルに絞って、 何回も改正案を国民に提示する必要があ る。
――入り口としてはどこが適当か? 私学助成や裁判官の給与とかの改正あ るいは緊急事態、犯罪被害者の権利利益 の保護、環境権やプライバシーといった 新 設 の と こ ろ な ど が 適 当 か も し れ な い。 それと憲法には確実に誤っているところ がある。 憲法7条には「天皇陛下は内閣の承認 と助言により、 次の告示を行う」とあり、 4番目に「国会議員の総選挙を施行する こ と 」 と あ る が、 「 国 会 議 員 の 総 選 挙 」 というのはありえない。衆議院は全員改 選されるので総選挙と言うが、参議院は 半数の選挙で、通常選挙と言う。これは 憲法の明らかな過ちだ。 それから憲法第 60条に「予算は先に衆 議院に提出しなければならない」とある が、 こ れ は「 予 算 」 で は な く「 予 算 案 」 でないといけない。こうした明らかな間 違いもある。 それと石原慎太郎氏が国会で質問した ことがあるが、前文に「諸国民の公正と 信義に信頼して、我が国は生存と安全を 守 る と 決 意 し た 」 と あ る が、 「 諸 国 民 の 公正と信義に信頼して」の「に」は国語 と し て 過 ち だ。 「 に 」 で は な く「 を 」 で な く て は な ら ず、 「 諸 国 民 の 公 正 と 信 義 を 信 頼 し て 」 で な い と い け な い。 「 あ な たに信頼して金を貸す」とは言わず「あ なたを信頼して金を貸す」が正しい。 それから言葉の中に 「官吏」 や 「吏員」 、 それに「奴隷的拘束」とか日本語で使わ ない言葉も出てくる。なぜ、こうした言 葉 が あ る か と い う と、 も と も と 英 語 で あったものを日本語に訳したからこうい うことになった。 ともかく、誰もが反対しないところか ら直したり、 付け加えた方がいい。だが、 最後の本丸は9条だろう。そもそも、こ れは自衛隊が存在しない時に、できた憲 法だ。だから昭和 22年に憲法がスタート した時、自衛隊の存在は前提としていな い。 自衛隊は昭和 25年に朝鮮戦争が勃発し て、警察予備隊を作ったのが前身だ。自 衛隊は憲法の後からできたもので、憲法 は自衛隊を想定していない。 本当なら日本が独立を果たした時、憲 法を書きかえて自衛隊を位置付け、その 中で自衛隊は何ができ何ができないのか 明記すればよかった。それを何もしない で今日まで、無理な解釈でその場しのぎ できた経緯がある。 安倍首相が国会で「わが軍は」と言っ て問題になったことがあった。これは日 本は軍隊を持たないことになっているか らだ。軍は持たないけれど、自衛力は持 つ。あるいは自衛のための実力組織は持 つ。だが軍隊ではない。 こうした屁理屈みたいなことを言って きた。こうした屁理屈は、いつまでも言 うべきじゃないし、まともな国家じゃな い。そろそろ改めた方がいい。 それと護憲・護憲という人たちがいる が、あの人たちも実は改憲主義者だ。民 主 党 国 会 議 員 と テ レ ビ で 一 緒 に な っ た 時、この議員は「憲法は一言一句変えて はいけない」と言うから、私は「天皇制 はどう思うか」と聞いた。すると、その 人は「天皇制は民営化した方がいい」と 答えた。そうしたら憲法を変えないとい けない。 要するに、護憲派は嘘をついているだ けの話だ。
ケネディ大統領の従兄弟であり弁護士 だったライアン氏は、レーガン大統領の 信頼を得て、歴代最年少の首席補佐官に 任命された人物だ。 レーガン氏逝去の時、 国葬で棺を担ぎ行進したうちの1人がラ イアン氏だった。それほど信頼されてい たライアン氏は現在、米紙ワシントンポ スト会長兼最高経営責任者(CEO)の 仕事をしている傍ら、レーガン大統領財 団の理事長を務めている。 私 が 訪 米 し た 折、 会 い た い と 伝 え る と 例 え ど ん な に 忙 し く て も、 時 間 を 惜 し ま ず ア ポ を と っ て く れ る。 そ の ラ イ ア ン 氏 が テ レ ビ 会 社 A B C 放 送 の 会 長 時 代 に、 同 社 を 訪 問 し た こ と が あ る。 す る と A B C 本 社 の 玄 関 の 電 光 掲 示 板 に「 ウ エ ル カ ム、 シ モ ジ 」 と あったのには驚かさせた。そうした心遣 いをしてくれるライアン氏は「私の誇り の人」だ。 さて、沖縄訪問要請を受けてくれたラ イアン氏が夫人と共に那覇空港に到着し たのは夕刻だった。だが、翌朝には宮古 島に飛んでもらった。前もって言ってい た「私の故郷を見てください」との約束 を守るためだ。 長旅で疲れていたはずのライアン夫妻 は、嫌な顔ひとつせず、にこりと笑って 宮古島に向かう飛行機に乗り込んでくれ た。 宮古島では下地米一市長がライアン夫 妻を出迎えてくれた。米一市長は衆議院 議員の下地幹郎氏の父親だ。 ライアン夫妻は宮古島だけでなく、大 急ぎで下地島や伊良部島を回り、その日 のうちに沖縄に戻った。そして夜は歓迎 レセプションがパレスオンザヒル沖縄で 開催された。 観 光 と い う の は 結 構、 疲 れ る も の だ。 しかも一日で沖縄、宮古島、下地島、伊 良部島、さらに沖縄と暑い中、強行軍で の行程に、体はベッドを求めていたに違
日本経営者同友会会長
下地常雄
経緯があるが、大統領を辞めた後も多忙 を極めるレーガン氏にその時間はなかっ た。そのレーガン氏の名代としてライア ン氏がその要請を受けてくれたのだ。 私が米要人を沖縄に招待したのは、基 地問題を解決する上で不可欠のステップ だと確信していたからだ。ただ「基地反 対、米軍出て行け」と沖縄だけで騒いで も、決して解決できる問題ではない。む しろ米国の要人と交流を密にして、沖縄 の現状をしっかり受け止めてもらうこと が肝要だ。本気で沖縄問題を解決するに は、外野から石を投げるのでは無く、相 手の懐に飛び込んでいく腹がないと動く ものではない。 冷戦終結はドナルド・レーガン米大統 領抜きには語れない。その首席補佐官を 務めたフレデリック・ライアン氏が四半 世紀前の1991年に沖縄を訪問した。 レ ー ガ ン 大 統 領 と 交 流 の あ っ た 私 は、 しばしば同大統領に沖縄訪問を要請した 【プロフィール】しもじ つねお 1944 年、沖縄宮古島生まれ。77 年、日本経営者同友会設立。93 年、 ASEAN協会代表理事に就任。米大統領(レーガン大統領か らオバマ大統領までの歴代大統領)やブータン王国首相、北マ リアナ諸島テニアン市長などとも親交が深い国際人。テニアン 経営顧問。レーガン大統領記念館国際委員。2009 年、モンゴル 政府の友好勲章(ナイラムダルメダル)受章。東南アジアにも 幅広い人脈を持つ。関東地方更生保護事業協会評議員。法務大 臣感謝状 2 回受賞。米大統領元首席補佐官の沖縄訪問
宮古島でライアン氏を出迎えた下地米一市長(左)、右端が私 レーガン大統領を訪問衆参ダブル選は見送りの公算
熊
本
地
震
へ
の
対
応
が
影
響
一
部
に
抜
き
打
ち
解
散
説
も
なかでも、北海道5区補選は、第3次 安倍政権発足後、初めての国政選挙であ り、野党側は民進党と共産党の共闘した 「 野 党 統 一 候 補 」 が 相 手 だ っ た の で、 参 院 選 の 前 哨 戦 と の 位 置 付 け の み な ら ず、 首相が衆院選を含めたダブル選に踏み切 るか否かの有力な判断材料になるとみら れていた。しかも、戦況が一進一退だっ たため、首相自身、地元の選挙応援に入 れるかどうか迷いに迷っていたほどだっ た。もし、応援に入って負けたらダブル 選への道を狭めることになると考えてい たからだ。 ところが、その選挙戦の真っ最中に大 地震が発生してしまったのである。4月 14日といえば、衆院TPP特別委員会で 安倍首相は、通常国会の開幕を1月4 日に早め、7月の衆参ダブル選に向けて 照準を合わせてきた。今年度予算を順調 に成立させ、後半国会を環太平洋連携協 定(TPP)関連法案の成立に尽力しつ つ4月 24日投開票の北海道5区の衆院補 欠選挙で勝利して弾みをつけ、主要国首 脳会議(G7)である伊勢志摩サミット で得点を稼いで衆参ダブル選に踏み切る とのシナリオを描いていた。 7 月 10日 の 参 議 院 選 挙 に 衆 議 院 選 挙 を 重 ね て の ダ ブ ル 選 挙 に 向 け 、 着 々 と 布 石 を 打 っ て き た 安 倍 晋 三 首 相 の 闘 志 に 「 待 っ た 」 が か か っ た 。 4月 14日 午 後 9 時 半 ご ろ 、 九 州 地 方 を 震 源 と し 熊 本 で は 震 度 7 の 揺 れ を 観 測 し た 地 震 が 発 生 し た か ら だ 。 そ の 後 も 大 き な 揺 れ は 続 き 、 政 府 は そ の 対 処 に 追 わ れ 、 選 挙 ど こ ろの 話 で は な く な っ て し ま っ た 。 と こ ろ が 、 5 月 も 中 旬 に な っ て 補 正 予 算 の メ ド も つ き 、政 治 日 程 に 余 裕 が 出 て き た あ た り か ら 、 再 び 「 抜 き 打 ち 解 散 が あ るの で は 」 と い っ た 声 が 出 始 め て い る 。「 在 任 中 に 憲 法 改 正 を な す 」 と 語 っ た 首 相 に と っ て 自 民 党 総 裁 3 選 は な く 、残 さ れ た 唯 一 の チ ャ ン ス が 7月 の 参 院 選 で 改 憲 議 席 総 数 3 分 の 2 以 上 を 獲 得 す る こ と なの だ 。 参 院 選 単 独 に 全 力 を 傾 注 す るの か 、 少 し で も チ ャ ン ス が あ れ ば 衆 参 ダ ブ ル 選 を 再 び 狙 う の か 。 与 野 党 の 緊 張 は 続 い て い る 。 負を語った。 そして宮里松正衆議院議員(元沖縄開 発庁政務次官)は「昨年、共和党大統領 候補だったブッシュ氏の大会に参加した 時、そこにレーガン氏が現れると、会場 は割れんばかりの拍手につつまれた。人 気は圧倒的。大統領は3選禁止だが、も し3期目が許されていたなら大勝利した に違いない。レーガン氏は余力を残しな が ら、 勇 退 し た が、 ま だ 現 役 時 代 同 様、 活躍している。ライアン氏はそのキース タッフだ」と述べ「日本人は腹八分で納 め、米人は言いたいことを120%主張 する。それで日本人は米人はけしからん と言い、米人は日本人はもっと胸襟を開 いて話をすればいいと言う。埋め難いカ ル チ ャ ー ギ ャ ッ プ が あ る か も し れ な い が、いずれにせよ、日米の友好の絆を深 めなくてはならない」と語った。 さらに大田昌秀沖縄県知事は「沖縄の 問題を解決するため、米国に多くの友人 を作りたい。本当の友人とは、相互に相 手の立場を尊重しあう関係だ。一方的に 過重な負担を強いるようでは真の友好は 生まれない。より長期的な友好関係を作 れるよう、滞在期間は短いかもしれない が、沖縄の実態を知って欲しい」と挨拶 した。 一 方、 ラ イ ア ン 氏 は 宮 古 島 や 下 地 島、 伊良部島などを駆け足で回ったことを報 告 し な が ら「 下 地 氏 は レ ー ガ ン 大 統 領 に、何度も故郷の美しさを強調していた が、その通りだった。また下地氏はいろ いろな提案やアイデアを大統領に出して きた。両国の溝をうめるためにもこれら を活用したい」 として感謝の念を述べた。 なお米政界の要人が、それまでは沖縄 の土を踏んだことはない。その意味では ライアン氏は、米政界の中で沖縄初訪問 を果たした人物だ。 そ れ を マ ス コ ミ は 一 行 も 書 か な か っ た。最初から色眼鏡をつけて物事を見て いるとしか、理解できない事柄だ。 それは先だって米紙ワシントンタイム ズ会長のマークデビッド氏が、沖縄を訪 問した時も同様だった。自分達に近い考 え方をする人間は針小棒大に取り上げて も、 遠い人物には無視を決め込む姿勢に、 マスコミ人としてジャーナリスト魂の欠 落を見るのは残念なことだ。 いないが、ライアン氏は喜んで参加して くれた。 レセプションでは、まず沖縄県経営者 協会会長の稲嶺恵一氏が挨拶。稲嶺氏は 「 ス ト ロ ン グ ア メ リ カ を 地 球 上 に 再 現 し たレーガン大統領は、歴史に残る偉大な 大統領だ」と述べた上で日米関係が最も 厳しい中、沖縄に米国の実力者が訪問す る意義を語った。また稲嶺氏は「過去 27 年、米施政下で沖縄県民は米のいいとこ ろも悪いところもみんな知っている。そ うした沖縄の特性を生かして、日米の溝 をうめ、関係をよくしていきたい」と抱 ABCテレビ会社玄関の掲示板に 「ウエルカム、シモジ」とあったし、捜索も続き、震度6強の地震も相次 いでいた。余震もいつまで続くか分から ない状況で、選挙なんか無理」と考えた からだ、と同幹部は言う。別の同党幹部 も「震災の粉じんも治まらず、憲政の常 道ではない同日選挙に持ち込めば、 政府 ・ 与 党 へ の 批 判 が 強 ま る こ と に な り、 か えってマイナスだ」と語るとともに「党 実力者の二階俊博総務会長も『衆参同日 選を首相はやる気だ』と言い回っていた が、最近は言わなくなった」とし、衆院 選は先送りになるとの見通しを示した。 自民党の谷垣禎一幹事長もまた、4月 10日の記者会見で、来年4月に予定する 消費税増税の是非について「生き物であ る経済をさばくときに、判断は選挙の時 期と必ずしも関係するわけではない」と 語り、首相が7月の参院選の後に判断す る可能性に言及した。これは、前回の衆 院・解散総選挙の際に主要テーマとして 消費税増税延期の審判を国民に仰いだこ とに照らし合わせると、少なくとも、消 費税延期をテーマにした衆院選は、参院 選と同日にはならないことを裏付けてい る。 る。 この政府・国会の対応の早さに「逆に 選挙の事情に変化が起きるのでは」と首 をかしげているのが自民党中堅だ。場合 によっては、衆参同日選の可能性が再浮 上する予感がするというのである。 「 地 震 発 生 か ら 1 カ 月 で の 成 立 は 極 め て 素 早 い 対 応 で は な い か。 5 年 前 の 3・ 11東日本大震災の時は、第1次災害対策 補正予算4兆153億円を4月 22日に閣 議決定し、 28日に国会に提出、5月2日 に 成 立 さ せ た。 2 カ 月 弱 か か っ て い る。 今回も同様の対応だったなら、6月1日 閉幕の国会を延長させての成立になった はずだ。5月 17日に成立するとなれば政 治 日 程 に 余 裕 が 出 て く る。 そ の こ と が、 首相に再び衆参ダブルの思いを呼び起こ さないとは限らない」と言うのだ。 後半国会の最大の焦点となるはずだっ たTPP関連法案についても、政府・与 党は春の大型連休前に法案を衆院通過さ せて、6月1日の会期末までに成立させ る考えだった。ところが、西川公也衆院 T P P 特 別 委 員 会 委 員 長 の 著 作 物 問 題、 法案をまとめて1本にしている問題、甘 選挙ポスターをすでに準備し終えた現 職の衆院議員も「夏になくても年内には 間 違 い な く あ る だ ろ う 」 と 語 っ て い る。 国会、地方を問わず議員関係者のほぼ一 の 与 野 党 の 対 立 回 避 が 合 意 さ れ、 審 議 再 開 の メ ド が 立 っ た 日 だ。 そ の 日 の 夜 に 地 震 が 発 生 し 翌 15日 の T P P 特 別 委 で は 安 倍 首 相 に よ る 災 害 状 況 の 報 告 の み が 行 わ れ た の で あ る。 首 相 は「 被 災 者 の 救 助 は ま さ に 正 念 場 だ。 一 人 で も 多 く の 住 民 の 命 を 救 う た め、 全 力 を 尽 く し て も ら い た い 」 と 指 示。 自 ら は 23日 に、 北 海 道 5 区 で は な く 被 災 地 を 視 察 す る た め に 熊 本 入 りしたのである。 「 も う こ の 時 点 で、 衆 参 ダ ブ ル 選 挙 は 吹 っ 飛 ん だ 」 と 自 民 党 幹 部 は 言 い 切 っ た。 「 50人 近 く の 死 者 が 出 て、 9 万 人 超 が 避 難 致した見方も 「天災相手では仕方がない。 今回、衆院の解散はなくなった」という ものだ。 政府はすでに熊本地震を激甚災害に指 定し、復旧事業に対する国 の補助率引き上げを決めて い る が、 10日 の 閣 議 で さ ら に「 非 常 災 害 」 に 指 定 し、大規模災害復興法を初 適用することになった。こ れにより、被災自治体が管 理する橋やトンネル、道路 などの復旧工事を国が代行 できるようにもなった。安 倍首相は「被災者が日常生 活を取り戻し、被災地が復 旧・ 復 興 を 成 し 遂 げ る ま で、できることはすべてや る 」 と の 決 意 を 表 明。 自 民、民進両党も熊本地震の 復旧・復興に使途を限定し た 2 0 1 6 年 度 補 正 予 算 7780億円を 16日に衆院 を通過させ、 17日に成立さ せ る 運 び と な っ た の で あ ダブル選に待ったをかけた熊本地震 サミットをジャンプボードにするシナリオだったが…
相の時のような抜き打ちの「死んだふり 解散」があり得るのではないかと警戒し ている。民進党の岡田克也代表は5月5 日に、地方で記者団に「安倍首相が簡単 にダブル選挙をあきらめたとは思ってい ない。チャンスがあればやってくる」と 語っている。 民進党とすれば、旧民主党時代の一昨 年 12月の突然の衆院解散選挙に準備不足 で対応できず、候補者を擁立できたのが 小 選 挙 区 2 9 5 の う ち わ ず か 1 7 8 人。 38議席しか獲得できず、当時の海江田万 里代表も落選した。そのため、現在、候 補 者 擁 立 作 業 を 急 ピ ッ チ で 進 め て お り、 小選挙区約200人を内定。さらに5月 中に 20人程度増やしたい考えだ。 ただ、一方で、旧民主党時代の主要支 援労組の連合は4月 14日の中央執行委員 会で、旧維新と合流した民進党への対応 について「支援を強化」の文言を削除し た。その背景には、官公労に批判的な旧 維 新 系 議 員 を け ん 制 す る こ と が あ っ た。 また、共産党と接近していることに対す る強い反発もある。 共産党としては「安倍首相が早期の衆 る。いくら 50%に近い高支持率が続いて いるといっても、自民党の総裁任期には 限 り が あ る。 「 3 選 禁 止 」 と い う 党 の 内 部規定を変えない限り、首相にはあと2 年 4 カ 月 し か 残 さ れ て い な い。 つ ま り、 次 回 の 平 成 31年 の 参 院 選 時 に、 「 安 倍 首 相」は存在しないのである。今夏の参院 選が、衆参両院で改憲に必要な数である 3分の2以上を集める最後のチャンスな のだ。 そのためには、政権与党に不利なお灸 選挙と言われる参院選単独ではなく、政 権選択選挙の意味を持つ衆院選を同日に 行うことで全体的に得票をアップさせて 勝利する道は捨て難い。アベノミクスの 見通しも不確実性を増していて「そのう ちに衆院を解散する」などと悠長なこと を言ってはいられない。 もちろん、参院選単独で改憲議席総数 で3分の2以上を確保するのが常道であ り、そこに首相が全力を傾注するという のが現状では、 最も可能性が高い。ただ、 間違いのないことは、衆参ダブルへと誘 う客観情勢が少しずつ増しているという ことである。 利明前TPP担当大臣が国会で説明でき ない問題などで野党側が強い不満を表明 し、 円 滑 な 審 議 が 期 待 で き な く な っ た。 このため、谷垣自民党幹事長は4月 26日 の与野党幹事長書記局長会談で、TPP 関連法案について今国会で結論を得るの は断念したことを伝えたのである。 国会の会期延長も辞さない強い姿勢で 臨んだはずのTPP審議が秋の臨時国会 に先送りされたことで、これまた政治日 程上、余裕が出てきているのだ。それだ け で は な い。 T P P 審 議 が 過 熱 す れ ば、 野党側は反TPP連合を組んで悪影響が 予想される農村関係者に対しマイナス面 ばかりを強調した選挙戦術を展開するこ とは間違いなく、政府・与党側は防戦一 方になる可能性があった。ところが、審 議自体がなくなってしまったことで対立 点が焦点ボケしてしまったのである。こ のことは選挙戦で与党にはプラスになる だろう。 政治日程の面では、もはや重要な対決 法案はなくなっている。衆院選における 「 一 票 の 格 差 」 是 正 を 目 的 と し た 衆 院 選 挙制度改革関連法案は4月 28日に衆院を 院解散・総選挙を行ったとしても、攻勢 的な対応ができるよう衆院小選挙区での 選挙協力態勢を構築することが急務であ る 」( 志 位 和 夫 委 員 長 ) と し、 衆 参 同 日 選をにらんだ野党共闘態勢づくりを急ぐ 考えを示している。ところが、民進党側 は参院選での積極対応と異なり、衆院選 での共闘には慎重姿勢を崩していない。 こうした分かりにくい姿勢であること な ど か ら、 各 種 世 論 調 査 で は、 民 主 党 と 維 新 の 党 が 合 流 し た 結 果 の 民 進 党 の 通過し、近く成立する。すでに、TPP 関連法案、年金制度改革関連法案、労働 基準法改正案は今国会での成立を断念し ており、特定人種への差別防止のための ヘイトスピーチ解消法案や取り調べ可視 化と司法取引導入のための刑事司法改革 関連法案が残っている程度だ。それらが すべて成立しても今国会では 43本に過ぎ ず、150日以上あった通常国会では戦 後3番目の少なさだ。 国会での対決構造がしぼむ一方で目立 つのが安倍外交の好調さだ。 5 月 の 連 休 中 は、 欧 州 歴 訪 に 集 中 し、 26、 27日に伊勢志摩で開催されるサミッ トに備えた。さらに、米国のオバマ大統 領が訪日中、被爆地・広島の平和記念公 園を訪問することになった。現職の米大 統領による広島訪問は初めてで、安倍首 相は「今回の訪問を、すべての犠牲者を 日米でともに追悼する機会としたい」と して歓迎している。サミット議長国とし ての采配ぶりも加われば、支持率は大き くアップすることが予想される。 一方の野党側は、共産党を含む野党共 闘の準備を進めながら、中曽根康弘元首 支 持 率 が 大 幅 に 下 落 し、 一 ケ タ 台 へ と 急 降 下 し て い る。 民 進 党 の 枝 野 幸 男 幹 事 長 は「 僕 は 一 貫 し て、 1 回 1 回 の 世 論 調 査 に は 反 応 し な い 」 と 強 が り を 言 う が、 国 民 の 期 待 値 は か な り 低 い し 上 昇 す る 気 配 も な い。 こ う し た 状 況 の 中 で 北 海 道 5 区 補 選 で は 自 民・ 公 明 が 民 進・ 共 産 を 退 け たのである。1万2千票の差での勝利は 与党に弾みをつけており、首相は「勝っ て兜の緒を締めよ」と言いながらもご機 嫌だ。もし、敗北していたら「野党共闘 強 し 」 の ム ー ド が 広 が っ て い た だ ろ う。 衆院選を参院選に絡めれば、野党共闘を 壊せるとの読みがダブル決断を迷う首相 の背中を後押ししないとは限らない。 そして、何よりも首相が政治家になる 原点となった憲法改正を実現できるか否 か の 瀬 戸 際 に 立 た さ れ て い る こ と が あ あと2年4カ月の任期しか残されていない安倍首相
頂 点 と な る 伊 勢 志 摩 サ ミ ッ ト を 前 に し て 、 国 内 は サ ミ ッ ト 色 に 彩 ら れ る 。教 育 大 臣 会 合 が 岡 山 県 倉 敷 市 で 14、 15日 に 開 催 、 続 い て 、 富 山 県 富 山 市 で 環 境 大 臣 会 合 ( 15、 16日 )、 茨 城 県 つ く ば 市 で 科 学 技 術 大 臣 会 合 ( 15か ら 17日 )、 宮 城 県 仙 台 市 で 財 務 大 臣 ・ 中 央 銀 行 総 裁 会 議 ( 20、 21日 ) と い っ た 関 係 閣 僚 会 合 が 相 次 い で 開 か れるか ら だ 。 海 外 の 指 導 者 層 や マ ス コ ミ 関 係 者 ら が 日 本 に 押 し 寄 せ て く る こ と に な る 。 そ れ を 前 に し て 安 倍 首 相 は 5 月 1 日 か ら 7 日 ま で 、 欧 州 を 歴 訪 し た 。 5 日の 内 外 記 者 会 見で は サ ミ ッ ト に 対 し て 「 世 界 が 直 面 する 様 々 な 課 題 に 、 力 を 合 わ せ て 立 ち 向 か う 。 そ の 大 き な 一 歩 を 踏 み 出 す 場 に し た い 。 自 由 、 民 主 主 義 、 人 権 、 法 の 支 配 と い っ た 基 本 的 な 価 値 を 共 有 し 、 世 界 の 平 和 と 繁 栄 を 牽 引 し て き た G 7 に は 、 そ の 大 き な 責 任 が あ る 」 と 表 明 。 そ の う えで 翌 日 の6 日 に は 、 ロ シ ア の ソ チ で プ ー チ ン 大 統 領 と 3 時 間 以 上 に わ た っ て 会 談 し た 。 今 回 の 歴 訪 に つ い て 情 報 関 係 者 は 「 世 界 経 済 を 下 支 え す る 財 政 出 動に つ い て 最 も 反 対 とさ れ るメルケ ル 首 相 か ら サ ミ ッ ト の 場 で 柔 軟 な 姿 勢 を と る 可 能 性 を 引 き 出 し た 」 と の 成 果 を 指 摘 。 そ れ と 同 時 に 、 プ ー チ ン 大 統 領 と の 間 で 北 方 領 土 返 還 の た め の 首 相 に よ る 「 新 ア プ ロ ー チ 」 が 話 し 合 わ れ 、 こ の 日 露 接 近 によ り 中 国 と ロ シ ア を 分 断 す る首 相 の 極 東 戦 略 が 現 時 点 で は 奏 功 し て い る こ と を 強 調 し た 。 安 倍 首 相 が 首 脳 会 議 で 議 長 国 と し て ま と め る べ き 課 題 は 、大 き く わ け て こ の 「 経 済 」 と 「 安 全 保 障 」 の 問 題 だ 。 「 経 済 」 で は 、 世 界 経 済 を 再 活 性 化 さ せ る た め に 構 造 改 革 の 推 進 と と も に 機 動 的 な 財 政 出 動 が 必 要 と の見 解で 日 米 が 一 致 。 英 仏 も 理 解 を 示 し て い る 。 他 方 、「 安 倍 首 相 ら し さ 」が 出 た の は 、「 安 全 保 障 」 の 面 だ 。 ク リ ミ ア 併 合 で 爆 発 的 な 国 内 支 持 を 獲 得 し な が ら 、 石 油 価 格 の 暴 落 と ク リ ミ ア 併 合 に 伴 う 欧 米 日 の 経 済 制 裁 で 杖 を つ き な が ら 生 き 延 び て い る 状 況 の ロ シ ア の プ ー チ ン 大 統 領 が 、 G 7 に よ る 経 済 制 裁 を 逸 脱 し な い 範 囲 で 首 相 が 提 示 し た 8項 目 の 経 済 協 力 に 食 い つ い て き た か ら だ 。 そ の 引 き 換 え に 、 北 方 領 土 問 題 解 決 に 向 け て の 「 新 ア プ ロ ー チ 」 を 首 相 が 提 示 し たと い う の だ 。 そ の 中 身 は 分 か っ て は い な い 。 こ れ ま で 常 に 、 領 土 返 還 を エ サ に た だ た だ 経 済 協 力 を さ せ ら れ て き た 日 本 だ け に 、 警 戒 を 解 く こ と は で き な い の は 当 然 だ 。 軽 は ず み に ロ シ ア に 向 き 合 え ば 必 ず 痛 い 思 い を さ せ ら れ る か ら だ 。 た だ 菅 義 偉 官 房 長 官 が 「 4 島 の 帰 属 問 題 を 解 決 し て 平 和 条 約 を 締 結 す る と い う 日 本 側 の 基 本 的 立 場 に 変 わ り は な い 」 と い う ヒ ン ト を ど う 解 釈 す べ き な の か 、 だ 。 そ こ か ら 推 測 す る と 、 ① 歯 舞 ・ 色 丹の 2 島 先 行 返 還 の み ② 歯 舞 ・ 色 丹 プ ラ ス α ( 択 捉 か 国 後 ) ③ 国 家 安 全 保 障 局 長 の 谷 内 正 太 郎 氏 が 主 張 し た こ と の あ る 北 方 4 島 の面 積 等 分 論 ―― の 3 つ で は な い とみ ら れ る 。 ロ シ ア 側 も 、 平 和 条 約 締 結 後 に 歯 舞 ・ 色 丹 両 島 を 引 き 渡 す と し た 1 9 5 6 年 の 日 ソ 共 同 宣 言 を 軸 に 交 渉 に 臨 ん で い る と す る と 、 か つ て 元 駐 日 大 使 だ っ た ア レ ク サ ン ド ル ・ パ ノ フ 氏 が 提 案 し た こ と の ある 、 平 和 条 約 締 結 直 後 の 歯 舞 ・ 色 丹 返 還 と 残 り の 2 島 の時 間 差 返 還 の 可 能 性 が 浮 上 し て く る 。 30年 か ら 50年 の 間 、 ロ シ ア の 施 政 権 を 担 保 し た 後 の 2 島 返 還 で あ る 。 い ず れ に せ よ 、 安 倍 政 権 が プ ー チ ン 大 統 領 の 訪 日 を 絡 ま せ な が ら 北 方 領 土 返 還 に 向 け て 動 き 出 し 、 ロ シ ア 側 も そ のそ ぶ り を し て い る こ と だ け は 確 か だ 。 こ の 伊 勢 志 摩 サ ミ ッ ト で 、 か つ て のヒ ュ ー ス ト ン 、 ロ ン ド ン 、 ミュ ン ヘ ン で の サ ミ ッ ト に 盛り 込 ま せ た 「 北 方 領 土 問 題 の 早 期 解 決 」 以 上 の 具 体 的 な 文 言 で 声 明 を 出 せ る か ど う か が 注 目 さ れ る 。 も う 一 つ は 、中 国 の 「 力 に よ る 現 状 変 更 」 批 判 を 宣 言 文 に ど う 盛 り 込 め る か だ 。 南 シ ナ 海 の 埋 め 立 て と 軍 事 基 地 化 は 続 き 「 脅 威 」 を 拡 大 さ せ て い る 。 首 相 は 欧 州 歴 訪 で 熱 心 に 説 明 し 、 各 国 の 首 脳 も 「 対 岸 の 火 事 で は な い 」( メ ル ケ ル 首 相 ) な ど と 同 じ 立 場 を 表 明 し た 。 単 な る 海 洋 進 出 で はな く 、 不 当 な 侵 出 で ある こ と を 中 国 側 に 突 き 付 け て 国 際 社 会 が結 束し て 対 応 す る よ う 方 針 を 明 確 化 す る こ と だ 。 東 シ ナ 海 で 尖 閣 諸 島 を 脅 か す 中 国 の 覇 権 行 動 に 対 し て も 、 批 判 を 盛 り 込 む よ う 尽 力 すべ き で あ る 。 首 相 が ロ シ ア の プ ー チ ン 大 統 領 と のパ イ プ を 生か す こ と で 、 北 方 の 脅 威 に 自 衛 力 を そ れ ほ ど 割 か れ な い こ と の 意 味 は 小 さ く な い 。 昨 年 9 月 3 日 に 北 京 で 開 催 さ れ た 抗 日 戦 争 勝 利 70周 年 記 念 式 典 で は 、 軍 事 パ レ ー ド に プ ーチ ン 大 統 領 が 参 加 し て 習 近 平 国 家 主 席 と の 蜜 月 関 係 を 誇 示し た 。 だ が 、 ロ シ ア 内 で は 中 国 の 極 東 に お け る 軍 事 力 増 強 に 警 戒 感 が 高 ま っ て お り 、 ソ チ 会 談 で 首 相 が 中 露 戦 略 的 パ ー ト ナ ー シ ッ プ にく さ び を 打 ち 込 ん だ 。 中 露 関 係 を 分 断 し 、 中 国 問 題 に 国 際 的 連 携 で 対 処 し つ つ 、 同 時 に ロ シ ア と の 領 土 問 題 の 解 決 に 向 け て 4 島 返 還 の 基 本 路 線 を 崩 さ ず 、 欧 米 の 理 解 を 求 め つ つ 慎 重 に 進 め る こ と は 、 当 面 、 国 益 に か な う 外 交 ベ ク ト ル だ と 言 え よ う 。
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5 月 は 外 交 日 程 が 目 白 押 し だ。 安 倍 晋 三 首 相 の 欧 州 歴 訪 に 始 ま り、 日 本 各 地 で の 主 要 国 首 脳 会 議( 伊 勢 志 摩 サ ミ ッ ト ) に 関 係 す る 閣 僚 会 合 が 積 み 上 げ ら れ て、 26、 27日 の サ ミ ッ ト に 臨 む こ と が 主 な 流 れ で あ る。 国 会 で の 与 野 党 対 決 の 法 案 審 議 が な い こ と か ら、 政 治 力 を 分 散 さ れ な い 安 倍 首 相 が 議 長 国 の リ ー ダ ー と し て ど う 指 導 力 を 発 揮 し て 外 交 成 果 を 得 ら れ る の か、 に政財官各界関係者らの関心が集まっている。の国々を日本に対して開いてもらうこと にある。農業にばかり関心が向いている が、 現に、 交渉結果は全体としてみれば、 日本が「攻め」に立って得た成果のほう が多い。 日本は人口減少で国内市場の縮小が懸 念される国だ。自国経済の繁栄基盤を広 く、成長するアジア太平洋地域へと拡大 しなければ、社会保障も財政も超高齢社 会を乗り切るだけの経済成長は実現しな い。地方の中小企業も含め海外とのサプ ライチェーンを円滑化して日本国内に雇 用を確保する、海外の市場開放で日本で 生み出した製品や農産物、サービスの市 場を拡大する、海外直接投資について各 国における障害を除去し、投資収益を日 本国内に還元できるようにする…、いず れも日本にとっては死活問題だ。 日本の輸出額の4分の3を占めるAP ECは、日中韓+東南アジア+豪州・N Z+米+ロシアなど、世界のGDPの約 6割、人口で約4割に達する。TPPは 国 会 で は T P P( 環 太 平 洋 経 済 連 携 ) 関連法案の審議が先送りになった。かつ て筆者は「TPP興国論」を上梓したこ とがあるが、国政選挙を前に、消費税や 安保法制と並んで国論を二分するテーマ であるTPPとは何かについて、改めて 考えてみたい。 他国の開国で日本にチャンス まず、多くの国民や有識者にも、基本 的に大きな誤解がある。それはTPPが 日本の「開国」という文脈で理解されて い る こ と だ。 逆 で あ る。 日 本 は す で に、 長 年 に わ た る 欧 米 と の 経 済 摩 擦 を 通 じ て、少なくとも政府が講じられる措置に 関しては世界で最も開かれた国の一つに なっている。平均関税率は世界一低い部 類であり、農業を除けば、ほとんどの工 業製品は関税ゼロ、 基準認証や政府調達、 サービスなど、内外無差別の洗練度の高 い市場制度を備えている。 TPPの日本にとっての意味は、ここ までの開放度を実現していない環太平洋
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第7回
―日本新秩序へ―
松 田 政 策 研 究 所 代 表
東京大学大学院客員教授
前 衆 議 院 議 員
松田 まなぶ
松田まなぶの国力倍増論
に、世界新秩序の形成を狙える位置に日 本がいるという意味でも大チャンスだ。 しかも日本は、 14年末で三六七兆円も の 世 界 ダ ン ト ツ 一 位 の 対 外 純 資 産 国 だ。 必ずしも高くないその投資収益率を向上 できるよう、他国のルールを整備するこ とは日本の国益であろう。 必要な真の保護農政 たしかに農業については「開国」の面 があるが、大事なのは農業を本当の意味 で保護育成することではないか。 問題は保護の政策手段にある。開発途 上国型の高関税方式を続けてきたからこ そ、日本の農業も地方も衰退した。欧米 諸国も転換したように、日本も水際での 輸入規制方式から財政方式へと転換する 必要がある。 農業の生産性向上に保護政策の主眼を 置き、農家への直接支払方式で農業に伴 うリスクをカバーして経営を安定化させ る。 10年かけて国際競争力の向上度合い を見計りながら、徐々に関税を下げ、財 政 で の ゲ タ を 講 じ て い く。 結 果 と し て、 農 産 品 価 格 は 下 が り、 一 般 消 費 者 の メ リットになる。生活必需品の価格が安い た。ルールとしての完成度が高いTPP が成立すれば、それは今後の世界の国際 秩序づくりのベースにもなる。中国も欧 州も、これを無視できなくなる。国際取 引は日進月歩であり、将来に向けて今後 も様々なルールづくりが進むだろう。そ の基本形の策定に参画した国は半永続的 な優位を得ることになる。 い ま 日 本 は、 世 界 の グ ロ ー バ リ ゼ ー ション秩序の扇の要の位置にいる。TP P、RCEP(ASEAN+中国を含む 6 か 国 )、 日・ E U 間 の E P A、 い ず れ の 巨 大 経 済 圏 に も 属 す る の は 日 本 だ け だ。これは自国で生み出される価値を軸 将来、APEC全体で形成するFTAA P(アジア太平洋自由貿易圏)のひな型 と位置付けられている。 現 実 に は、 そ の ア ジ ア 太 平 洋 地 域 で は、中国が主宰する秩序形成が進んでき た。 「 法 の 支 配 」 が 大 事 な の は、 何 も 南 シナ海問題にみられるような安全保障面 だけではない。TPPとは経済取引の国 際ルールを形成するものだ。経済面でも Rule of Law を徹底する。 こうした国際スタンダードの形成には 当初から参画した国が強い。多国間交渉 だ か ら、 日 米 二 国 間 で 交 渉 す る よ り も、 米 国 の 一 方 的 な 主 張 は 通 用 し に く か っ 【プロフィール】 1981 年東京大学卒、同年大蔵省入省、内閣審 議官、本省課長、東京医科歯科大学教授、郵 貯簡保管理機構理事等を経て、2010 年国政進 出のため財務省を退官、2012 年日本維新の会 より衆議院議員に当選、同党国会議員団副幹 事長、衆院内閣委員会理事、次世代の党政調 会長代理等を歴任。ていく上で不可避なグローバリゼーショ ンという事実に向き合って、では、日本 が主体的に国柄を守り、国益を実現する にはどうするかを考えることに、我々が 考えるべきテーマと答えが存在する。T P P が 恐 い か ら と 言 っ て 逃 げ て い て は、 国柄を維持できるだけの強い国は実現し ない。 既に、TPPとは無関係に、海外から マネーもヒトも日本に押し寄せ、外国勢 による不動産の買収などでは安全保障上 の問題すら懸念されている。日本は既に 開き切った国なのだ。これにどう対応す るかは、TPPとは別の次元の問題とし て真剣に考える必要がある。 TPP反対論者には、持続可能な日本 の将来への道行きについて現実的な代替 案があるのだろうか。もし日本がTPP を拒否し、別の国が主導する国際ルール が形成されるようになれば、失われる国 益ははるかに大きい。 TPPに正面から向き合い、それを国 力倍増への新しい国づくりの契機にする ことについて、国民合意を形成できるか どうかが政治には問われている。 との間で締結してきたものだ。投資国家 の日本にとっては、 投資利益を守る上で、 むしろメリットのほうが大きい。TPP で米国との間にも導入されるが、これま での現実の仲裁事例では、政府が公益の ために講じた措置であれば、損害賠償請 求が命じられた事例はすべて、その意図 が明白に外国企業の差別にあったなどの 場合に限られている。TPPでも、正当 な公益措置は損害賠償の対象にならない 工夫がなされているようだ。 TPPで日本の国柄が損なわれ、米国 のような弱肉強食の社会になるといった 批判も多いが、本当にそうだろうか。 人間社会には必ず守るべきルールがあ る。ルールがあるから各主体の個性が失 わ れ る と い う も の で は な い。 T P P の ルールは内外無差別というルールだ。交 流が進めば、よそ者を差別しないという ルールが必要になるのは当然だ。 結果として、多国籍企業や国際資本の グローバリズムに貢献するという批判も あ る が、 イ ズ ム( 主 義、 ゾ ル レ ン ) と、 現実に起こっている事実(ザイン)とは 区別して論じる必要がある。日本が生き こと自体が、低所得者には大きな福祉政 策になる。 農家への直接支払のメニューも多様化 し、地域ごとに多様性のある農業の展開 と農村、地域づくりを進める。政府が 10 年後の農業農村の姿という 「大きな幸せ」 の見取り図を描かなければ、関係者は現 状の「小さな幸せ」にしがみつくだけだ ろう。政治の役割は未来ビジョンを示す ことにあるはずだ。 最 大 の 食 料 安 全 保 障 は 農 産 品 の 輸 出 だ。いざという時のバッファーができる か ら で あ る。 保 護 政 策 の 中 身 を 変 え て、 日本は「食」の価値を世界に提供する国 になる。 強いニッポンが国柄を守る そ の 他、 T P P に は 未 だ に 誤 解 が 多 い。サービス産業での交渉は、内外無差 別の原則の徹底にあり、各国が独自に規 制をどうするかは対象ではない。医療の 国民皆保険制度の崩壊を懸念する向きも 多かったが、最初からTPP交渉とは無 関係だった。 恐れられているISDS(投資者―国 家間紛争解決)条項も、既に日本が各国
では憲法改正が必要だといって国民投 票にかけてみたら失敗したということに なりますと、次が難しくなるので、その 点は、慎重にというか、必ずできること をまず考えるべきではないかと思ってい ます。そう考えますと、少なくとも野党 第 一 党 を 巻 き 込 ん だ こ と か ら 始 め て い く。野党第一党などの理解を経ながらや るのが、現実的な道なのではないか。 【 記 者 】( 北 海 道 5 区 補 選 に つ い て )「 自 公対民共」という構図を今回は前面に押 し 出 し て 選 挙 戦 を 展 開 し た と 思 い ま す が、これが無党派層の支持を得られるも のだとお考えでしょうか。 【幹事長】 「自公対民共」というのは人に よって用語の好みがあります。私は、歳 のせいだと思いますが、人民戦線的発想 という表現をしています。与党の立場か ら見ますと、政策の方向は総合的なもの を示さなければ本当の判断はできないだ ろうと思います。ただ、人民戦線的発想 に立ちますと、総合的な政策というのは 恐 ら く 提 示 で き な い の で は な い か。 つ ま り、 い ろ い ろ な 会 派 が 一 致 す る こ と し か で き な い。 や や も す る と ピ ン ポ イ ン ト 的 な 論 点、 争 点 の提示ということですね。 私 の 政 治 に 対 す る 考 え 方 か ら す る と、 や は り 物 事 を ト ー タ ル に 捉 え て、 こ の よ う に 日 本 を 持 っ て い く の だ と い う 主 張 の 方 が 究 極 的 に は国民の支持を得るだろうと、固く信じ ています。ただ、先ほど「謙虚でなけれ ばいけない」と言ったのは「自民党、感 じ悪いね」とか「この頃そっくり返って いるね」とか、それから例えば今度の災 害の対応があまりにももたついているで は な い か、 と い う よ う な こ と に な れ ば、 ピンポイント的な批判が非常に功を奏し てくるということがあります。 やはり、政権がきちんと腰を落として 謙虚にトータルに日本の進むべき方向を 見据えているなということであれば、ピ ンポイント的な政治主張に負けるはずが ないというのが私の考え方です。 【 記 者 】 産 経 新 聞 の 世 論 調 査 に つ い て。 参議院選で憲法改正は重要な争点になる かという問いに対して「思う」は6割を 超 え て、 「 思 わ な い 」 は 3 割 超 え と い う 状況です。憲法改正の是非は、賛成、反 対はいずれも 45・5%でおおむね同じで す。改憲勢力の3分の2以上の議席確保 について「よいと思う」のは 48%で、 「思 わない」よりも多くなっています。今の 憲法で平和と安全が守れるかという問い に 対 し て、 「 思 わ な い 」 と い う 声 が 5 割 を超えて 「思う」 より多くなっています。 これらを見たときに憲法改正の機運が高 まってきているように思えるのですが。 【 幹 事 長 】 も と も と わ が 党 が 自 主 憲 法 の 制定と唱えていましたのは、その背景に はマッカーサーの占領下で一番の根本法 典を国会がつくったということにやはり 問 題 が あ る の で は な い か と い う 認 識 が あったと思います。 現 在 で も そ う い う 認 識 の 意 味 は な く なったわけではないと思いますが、 他方、 憲法制定以来、もう 70年を経過している わけですので、ここは憲法をいささか使 いにくくなっているなとか、現実と合わ