内水 被害 に対 する
保険 制度 運用 及び 施設 整備 にお ける 社会 的割 引率 設定 に関 する 研究
2021 年 3 月
三 好 学
【 目 次 】
第 1 章 序 論-- -- ---- ---- --- --- - - -- - --- -- - --- -- ---- ---- - - 1 1. 1 背 景 と 目 的-- ---- ---- --- --- -- --- - ---- - -- --- -- ---- ---- - 1 1. 2 本 論 文 の 構 成---- ---- -- - --- - - ---- ---- --- - -- -- ---- - - -- - 2
第 2 章 既 往 の 知 見 の 整 理 と 研 究 の 位 置 付 け-- - --- -- -- -- -- -- - - 3 2. 1 本 章 の 概 要-- ---- ---- --- --- -- ---- -- -- --- --- -- ---- ---- - 3 2. 2 地 方 都 市 部 に お け る 広 域 の 内 水 氾 濫 の 評 価 方 法 の 提 案- --- - 3
2. 3 超過洪水時を含めた建物・家財に着目した被害額算定の提 案- -- - - 6
2. 4 被害額に応じたグループ分割による保険の給付・徴収の提 案- --- - 8
2. 5 社 会 的 割 引 率 の 感 度 分 析 の 提 案- -- - ---- --- --- -- ---- - -- - - 10
第 3 章 地 方 都 市 部 に お い て 広 域 の 内 水 氾 濫 を 評 価 で き る 解 析 モ デ ル の 構 築-- -- ---- ---- --- --- -- ---- - --- --- --- -- - 1 3 3. 1 構 築 す る 内 水 氾 濫 解 析 モ デ ル の 特 徴-- -- --- - - - -- ---- - - -- 1 3 3. 2 内 水 氾 濫 解 析 の 方 法-- --- --- -- --- - ---- --- --- -- ---- ---- 1 3 3.3 氾 濫 解 析 パ ラ メ ー タ- - --- --- -- ---- ---- --- -- - -- ---- ---- 1 8 3.4 対 象 領 域 と 対 象 降 雨-- --- --- -- ---- --- - --- --- -- ---- ---- 1 9 3.5 計 算 水 位 と 痕 跡 水 位 の 比 較 に よ る 解 析 モ デ ル の 検 証-- - --- 2 5 3.6 本 章 の ま と め---- ---- --- --- -- ---- ---- --- --- -- ---- ---- 2 7
第 4 章 内 水 被 害 額 に 応 じ た グ ル ー プ 分 割 に よ る 保 険 の 給 付 ・ 徴 収 に 対 す る 不 平 等 性 の 低 減- --- -- ---- ---- --- --- -- - 2 8 4. 1 本 章 の 概 要-- ---- ---- - -- --- - - ---- -- - -- - - - -- -- --- - 2 8 4. 2 保 険 原 理 の 数 値 化---- - -- --- -- ---- ---- --- --- -- -- -- - - -- 2 9 4. 3 徳 島 県 で の 適 用-- ---- --- - -- -- --- - -- -- --- --- -- ---- ---- 3 1 4. 4 被 害 額 に 応 じ た 保 険 の 給 付 ・ 徴 収 の 必 要 性- --- -- -- -- ---- 3 5 4. 5 本 章 の ま と め---- ---- --- --- -- ---- ---- --- --- -- - --- ---- 40
5. 1 本 章 の 概 要-- - --- --- - --- --- -- --- - ---- --- --- -- ---- --- - 4 1 5. 2 排 水 機 場 整 備 に よ る 便 益 と 費 用---- ---- --- --- -- --- - ---- 4 2 5. 3 損 益 分 岐 点 の 算 定 と 感 度 分 析-- ---- ---- -- - --- -- ---- --- - 4 3 5.4 社 会 的 割 引 率 の 設 定 に つ い て の 重 要 性-- - -- - -- -- --- - - -- - 4 9 5.5 本 章 の ま と め---- --- - -- - --- -- ---- ---- --- --- - - ---- - - -- 5 1
第 6 章 結 論- - - - ---- ---- - -- --- -- ---- ---- --- --- -- ---- - --- - 5 2
謝 辞- - -- --- - -- -- - --- - --- - - - --- -- ---- ---- --- --- -- ---- - --- - 5 4
参 考 文 献--- --- -- - --- - --- - - - --- -- ---- ---- --- --- -- ---- - --- - 5 5
第 1 章 序 論
1.1 背 景 と 目 的
近 年 ,地 球 温 暖 化 の 影 響 に よ り ,内 水 リ ス ク が 増 加 し て い る.水 害 統 計 に よ る と , 平 成 20 年 か ら 平 成 2 9 年 ま で の 間 の 外 水 氾 濫 と 内 水 氾 濫 の 被 害 額 合 計 は 約 1.8 兆 円 で あ り ,そ の う ち 41% が 内 水 氾 濫 に よ る も の あ っ た 1 ).ま た ,同 期 間 に お い て ,外 水 氾 濫 と 内 水 氾 濫 の 合 計 浸 水 棟 数 は 約 3 2 万 棟 で あ り , そ の う ち 68% が 内 水 氾 濫 に よ る も の で あ っ た 1 ).こ の よ う な 内 水 リ ス ク の 増 大 に 備 え る た め に は ,こ れ ま で の 河 川 管 理 者 等 の 取 組 だ け で な く , 流 域 に 関 わ る 関 係 者 が , 主 体 的 に 治 水 に 取 り 組 む 社 会 を 構 築 す る 必 要 が あ る.そ こ で ,国 土 交 通 省 で は , 河 川 ・ 下 水 道 管 理 者 等 に よ る 治 水 に 加 え , あ ら ゆ る 関 係 者 に よ り 流 域 全 体 で 行 う「 流 域 治 水 」へ 転 換 す る 方 針 を 打 ち 出 し た 2 ).
こ の 流 域 治 水 2 )で は ,人 命 被 害 の 増 加 に 加 え ,経 済 被 害 が 増 大 し , こ れ ら に 伴 う 保 険 金 の 支 払 額 が 増 加 し , 社 会 的 不 安 が 増 加 し て い る こ と 問 題 と し て い る.ま た ,高 度 経 済 成 長 期 以 降 に 整 備 さ れ た 多 く の 河 川 管 理 施 設 の 急 速 な 老 朽 化 が 懸 念 さ れ て い る 中 で , 気 候 変 動 に よ り 将 来 発 生 す る こ と が 想 定 さ れ る 現 象 を 予 測 し , そ れ に 基 づ く 効 率 的 な 維 持 管 理 ・ 更 新 計 画 の 作 成 が 求 め ら れ て い る こ と を 課 題 と し て い る.
そ こ で , 本 研 究 で は 内 水 被 害 に 対 す る 以 下 の 2 つ を 考 察 す る こ と を 目 的 と す る.こ れ ら 2 つ の 考 察 に あ た り ,徳 島 県 全 域 と い う 広 域 な 内 水 リ ス ク の 評 価 が 必 要 で あ る こ と か ら , 広 域 地 形 デ ー タ を 用 い た 内 水 氾 濫 解 析 モ デ ル の 構 築 を 行 う こ と と し た.こ の 内 水 氾 濫 解 析 モ デ ル で は , 外 水 の 影 響 を 受 け た 浸 水 も 一 部 評 価 対 象 に 含 め て い る . こ の モ デ ル を 用 い , 1 つ 目 の 考 察 で は , 治 水 経 済 調 査 か ら 算 定 さ れ る 内 水 被 害 額 に よ り 被 害 世 帯 を グ ル ー プ 分 割 し , そ の グ ル ー プ に 応 じ て 保 険 の 給 付 ・ 徴 収 を 行 っ た 場 合 の 水 害 保 険 に 対 す る 不 平 等 性 の 低 減 を 考 察 す る.2 つ 目 の 考 察 で は ,排 水 機 場 整 備 の 費 用 対 効 果 分 析 か ら 算 定 さ れ る 損 益 分 岐 点 に 対 し て , 気 候 変 動 と 景 気 変 動 に お け る 感 度 分 析 を 行 う.こ の 2 つ の 変 動 に よ る 損 益 分 岐 点 の 振 れ 幅 か ら ,社 会 的 割 引 率 の 設 定 に つ い て の 重 要 性 を 考 察 す る.
1 . 2 本 論 文 の 構 成
本 論 文 は , 第 1 章 の 序 論 か ら , 第 6 の 結 論 ま で , 全 6 章 で 構 成 さ れ る . 各 章 の 概 要 を 以 下 に 記 す .
第 1 章 で は 本 研 究 の 背 景 と 目 的 を 解 説 す る と と も に , 本 論 文 の 構 成 に つ い て 述 べ る.
第 2 章 で は,既 往 の 知 見 を 整 理 し , そ の 問 題 点 を 指 摘 す る と と も に , 本 研 究 で の 位 置 付 け と し て , 問 題 点 を 解 決 す る 提 案 を 行 う.
第 3 章 で は,徳 島 県 全 域 を 対 象 と し た 内 水 氾 濫 解 析 モ デ ル を 構 築 す る.平 成 16 年 台 風 2 3 号(以 下 ,H1 6T2 3 と い う .)を 再 現 し た 計 算 結 果 と , そ の 際 に 測 量 さ れ た 浸 水 実 績 を 比 較 す る こ と に よ り , 構 築 し た 内 水 氾 濫 解 析 モ デ ル の 再 現 性 と , そ の 結 果 を 治 水 経 済 調 査 に 用 い る こ と の 妥 当 性 を 検 証 す る.
第 4 章 で は,保 険 原 理 の 考 察 と 数 値 化 を 述 べ る と と も に , こ の 内 水 氾 濫 解 析 モ デ ル を 用 い , 治 水 経 済 調 査 か ら 算 定 さ れ る 内 水 被 害 額 に よ り 被 害 世 帯 を グ ル ー プ 分 割 し , そ の グ ル ー プ に 応 じ て 保 険 の 給 付 ・ 徴 収 を 行 っ た 場 合 の 水 害 保 険 に 対 す る 不 平 等 性 の 低 減 を 考 察 す る.
第 5 章 で は, 排 水 機 場 整 備 に よ る 便 益 と 費 用 か ら 算 定 さ れ る 損 益 分 岐 点 に 対 し て , 気 候 変 動 と 景 気 変 動 に お け る 感 度 分 析 を 行 う.こ の 2 つ の 変 動 に よ る 損 益 分 岐 点 の 振 れ 幅 か ら , 社 会 的 割 引 率 の 設 定 に つ い て の 重 要 性 を 考 察 す る.
第 6 章 で は ,本 研 究 で 得 ら れ た 知 見 と , 本 研 究 の 提 案 と 留 意 事 項 を 記 し , 結 論 と
す る . 図 1 - 1 本 論 文 の 構 成
序 論 背景と目的 本論文の構成
既往の知見の整理と研究の位置付け
超過洪水時を含めた建物・家財に 着目した被害額算定の提案
地方都市部において広域の内水氾濫を 評価できる解析モデルの構築
構築する内水氾濫解析モデル の特徴
内水被害額に応じたグループ分割による 保険の給付・徴収に対する不平等性の低減
保険原理の考察と数値化
内水被害額に応じたグループ分割 による保険の給付・徴収に対する
不平等性の低減
結 論 内水氾濫解析の方法
徳島県のH16T23時 における適用
計算水位と痕跡水位の比較による 解析モデルの検証
排水機場整備の費用対効果分析から考察される 社会的割引率の設定についての重要性
排水機場整備による便益と費用
得られた知見
損益分岐点の算定と感度分析 社会的割引率の設定の重要性 地方都市部における広域の 内水氾濫の評価方法の提案
社会的割引率の感度分析 の提案
被害額に応じたグループ分割によ る保険の給付・徴収の提案
提案と留意事項
第 2 章 既 往 の 知 見 の 整 理 と 研 究 の 位 置 付 け
2.1 本 章 の 概 要
本 章 で は , 既 往 の 氾 濫 解 析 モ デ ル と 被 害 額 算 定 モ デ ル を 用 い た 知 見 を 整 理 し ,そ の 問 題 点 を 指 摘 す る.本 研 究 で は ,徳 島 県 全 域 と い う 広 域 な 内 水 氾 濫 解 析 モ デ ル を 必 要 と す る こ と か ら , 氾 濫 解 析 モ デ ル と 被 害 額 算 定 モ デ ル は 1 都 道 府 県 程 度 の 面 積 を 対 象 と し た 氾 濫 解 析 モ デ ル を 着 目 し ,知 見 を 整 理 す る.そ れ に よ り ,地 方 都 市 部 に お い て 広 域 の 内 水 被 害 評 価 方 法 が 存 在 し な い 問 題 が 提 起 し , 地 方 都 市 部 に お け る 広 域 の 内 水 氾 濫 の 評 価 方 法 の 提 案 と , 超 過 洪 水 時 を 含 め た 建 物 ・ 家 財 に 着 目 し た 被 害 額 算 定 の 提 案 を 行 う . ま た , 我 が 国 と 諸 外 国 の 保 険 制 度 を 比 較 し , 我 が 国 の 保 険 制 度 を 持 続 的 に 運 用 す る た め に , 被 害 額 に 応 じ た グ ル ー プ 分 割 に よ る 保 険 の 給 付 ・ 徴 収 を 提 案 す る . 最 後 に , 我 が 国 と 諸 外 国 ・ 国 際 機 関 の 社 会 的 割 引 率 を 比 較 し , 社 会 的 割 引 率 の 感 度 分 析 を 行 う こ と の 重 要 性 を 述 べ る .
2.2 地 方 都 市 部 に お け る 広 域 の 内 水 氾 濫 の 評 価 方 法 の 提 案
(1) 既 往 の 氾 濫 解 析 モ デ ル の 整 理
1) 東 京 都 心 部 を 対 象 と し た 内 水 氾 濫 解 析 モ デ ル a) 目 的
関 根 ら 3 )は , 近 年 の 異 常 な 強 度 の 豪 雨 に よ る 内 水 氾 濫 に つ い て 検 討 す る た め ,数 値 解 析 手 法 を 有 力 な ツ ー ル と 位 置 づ け ,「 街 路 ネ ッ ト ワ ー ク 浸 水 ・ 氾 濫 解 析 モ デ ル 」を 構 築 し て い る.こ の モ デ ル は ,計 算 コ ー ド を 高 速 化 し , リ ア ル タ イ ム で の 浸 水 状 況 を 把 握 で き る よ う 改 良 さ れ , 現 在 リ ア ル タ イ ム で の 運 用 が 開 始 さ れ て い る.
b) 計 算 手 法
こ の モ デ ル で は , 東 京 都 心 部 の よ う な 都 市 化 の 進 ん だ 地 域 を 対 象 と し て い る.そ の た め , 対 象 と す る 雨 水 の 流 れ は , 以 下 と し て い る. 道 路 上 に 降 っ た 雨 は , そ の ま ま 標 高 の 低 い 地 点 を 目 指 し て 流 下 す る も の の , そ の 一 部 は 道 路 側 方 に 設 置 さ れ て い る 雨 水 升 を 介 し て 下 水 道 内 に 運 ば れ る.住 宅 密 集 地 に 降 っ た 雨 の う ち 建 物 の 屋 根 に 降 っ た
も の に つ い て は , 軒 樋 に 集 め ら れ た 後 に 地 表 面 下 の 住 宅 内 管 路 に 運 ば れ る.さ ら に ,そ の 水 は 住 宅 が 面 す る 道 路 の 真 下 に 設 置 さ れ て い る 下 水 道 へ と 運 ば れ る.一 方 ,個 々 の 住 宅 の 建 物 以 外 の 部 分 に 降 っ た 雨 に つ い て は , こ れ が 与 え る 影 響 は 小 さ い も の と し て , 本 解 析 で は 無 視 し て い る.な お ,下 水 道 に 流 れ 込 ん だ 雨 水 は 最 終 的 に は 河 川 へ と 運 ば れ る こ と に な る.
c) 問 題 点
こ の モ デ ル で は , 東 京 都 心 部 の よ う な 都 市 化 の 進 ん だ 地 域 を 対 象 と し て お り , 以 下 の 問 題 が あ り , 地 方 都 市 の 郊 外 部 で は 適 用 す る こ と が 困 難 で あ る と 考 え ら れ る.
① 住 宅 密 集 地 と 道 路 か ら 地 表 面 が 構 成 さ れ て い る こ と を 前 提 と し て お り , 田 畑 や 山 地 が 考 慮 で き な い.
② 下 水 管 路 が 整 備 さ れ て い る こ と を 前 提 と し て お り , 開 水 路 に よ る 雨 水 流 下 能 力 を 考 慮 で き な い.
2) 地 先 の 安 全 度 マ ッ プ
a) 目 的
「 地 先 の 安 全 度 マ ッ プ 」4 )は ,滋 賀 県 の 土 地 の 地 先 の 水 害 リ ス ク を 評 価 し ,図 化 し た も の で あ る.地 域 住 民 と 流 域 全 体 が 抱 え る 水 害 リ ス ク を 共 通 の 認 識 と し , 命 を 守 る た め の 避 難 行 動 や 住 ま い 方 な ど の 意 識 改 革 た め に 公 表 し て い る.ま た 滋 賀 県 で は ,こ の マ ッ プ を 基 に ,建 築 規 制 ・ 土 地 利 用 規 制 を 実 施 し て い る.
b) 計 算 手 法
こ の マ ッ プ を 作 成 し た 際 の 計 算 モ デ ル は , 流 出 計 算 を 合 成 合 理 式 で 行 い , そ れ に よ り 算 定 さ れ た 流 出 量 を 河 川 上 流 端 に 流 入 さ せ る. そ し て 河 川 堤 防 高 よ り 河 川 水 位 が 上 回 る と , 氾 濫 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン マ ニ ュ ア ル(案)5 )に 従 っ た 破 堤 状 況 と な り ,氾 濫 水 が 堤 内 に 押 し 寄 せ る モ デ ル と な っ て い る.堤 内 地 の 解 析 で は ,盛 土 ・ 開 水 路 ・ 下 水 管 路 が 考 慮 さ れ て い る.
c) 問 題 点
こ の モ デ ル で は , 外 水 氾 濫 を 対 象 と し て お り , 流 出 計 算 に よ り 算 定 さ れ た 流 出 量 を 河 川 上 流 端 に 流 入 さ せ て い る.そ の た め ,堤 内 地 の
氾 濫 は , 全 て 河 川 か ら の 溢 水 ・ 越 水 で あ り , 内 水 氾 濫 に よ る 浸 水 を 見 落 と し て い る 恐 れ が あ る.こ こ で 国 土 交 通 省 で は ,洪 水 予 報 河 川 ・ 水 位 周 知 河 川 以 外 の 河 川 の 氾 濫 に よ り 浸 水 被 害 が 発 生 し て い る 事 例 が あ り , 浸 水 リ ス ク 情 報 の 空 白 域 と な っ て い る 小 規 模 河 川 近 傍 を 問 題 視 し て い る 6 ).こ の 事 例 は ,地 先 の 安 全 度 マ ッ プ が 流 出 計 算 に よ り 算 定 さ れ た 流 出 量 を 河 川 に 流 入 さ せ る 小 規 模 河 川 ま で 含 め て い な い 場 合 に は , リ ス ク 評 価 の 空 白 域 が 存 在 す る 恐 れ が あ る こ と を 示 唆 し て い る.
3) 土 壌 雨 量 指 数 ・ 表 面 雨 量 指 数 ・ 流 域 雨 量 指 数
a) 目 的
気 象 庁 は , 日 本 国 全 域 を リ ア ル タ イ ム で , タ ン ク モ デ ル に よ り 流 出 計 算 し ,そ の 流 出 量 ・貯 留 量 を 公 開 し て い る.こ れ ら の 値 か ら 土 壌 雨 量 指 数 ・ 表 面 雨 量 指 数 ・ 流 域 雨 量 指 数 の 3 指 標 が 算 定 さ れ , こ の 3 指 標 は 災 害 発 生 に 密 接 に 結 び つ い た 指 標 と し て ,特 別 警 報 ,警 報 , 注 意 報 の 発 令 の 際 の 参 考 と し て い る.
b) 計 算 手 法
土 壌 雨 量 指 数 ・ 表 面 雨 量 指 数 ・ 流 域 雨 量 指 数 の 3 指 標 は , タ ン ク モ デ ル に お け る 以 下 の 値 と さ れ て い る.タ ン ク モ デ ル は ,都 市 域 で は , 表 面 流 出 が 主 体 の 5 段 タ ン ク モ デ ル を 用 い , 非 都 市 域 で は , 直 列 3 段 タ ン ク モ デ ル ( 地 質 に 応 じ た 5 種 類 の 流 出 特 性 の 異 な る モ デ ル ) を 用 い て い る.
① 土 壌 雨 量 指 数 … … 各 タ ン ク に 残 っ て い る 貯 留 量 の 合 計 値.
② 表 面 雨 量 指 数 … … タ ン ク モ デ ル で 算 出 し た 流 出 量 に 地 形 補 正 係 数 を 乗 じ た 値.な お ,地 形 補 正 係 数 は 地 表 勾 配 に よ り 算 定 さ れ る パ ラ メ ー タ で あ る.
③ 流 域 雨 量 指 数 … … 地 表 面 を 1k m 四 方 に 分 割 し , 各 河 川 の 上 流 に お け る 降 雨 の 河 川 へ の 流 出 量 を タ ン ク モ デ ル に よ り 計 算 す る ( 流 出 過 程 ).次 に 河 川 に 流 出 し た 雨 水 が 河 川 を 流 下 す る 水 量 を マ ニ ン グ 式 に よ り 計 算 す る ( 流 下 過 程 ).こ の 流 下 水 量 の 平 方 根 を と っ た 値.
c) 問 題 点
こ の モ デ ル は , オ ー プ ン デ ー タ と し て リ ア ル タ イ ム で 公 開 さ れ て い る も の の ,こ れ ら 指 標 の 単 位 は 公 開 さ れ て お ら ず ,他 の 流 出 計 算 ・ 河 川 流 下 計 算 ・ 堤 内 氾 濫 解 析 な ど に 用 い る こ と が 困 難 で あ る と 考 え ら れ る.ま た , 表 面 雨 量 指 数 は 2 5 0 m メ ッ シ ュ で 算 定 さ れ お り , メ ッ シ ュ サ イ ズ が 大 き く , 評 価 す る こ と が で き る の は 大 規 模 な 内 水 氾 濫 に 限 ら れ る と 考 え ら れ る.
(2) 問 題 点 の 整 理
前 項 に 記 載 し た よ う に , 1 都 道 府 県 程 度 の 面 積 を 対 象 と し た 広 域 の 既 往 の 内 水 氾 濫 モ デ ル を み る と ,外 水 氾 濫 を 対 象 と し た モ デ ル や , 内 水 氾 濫 を 対 象 と し て い て も 東 京 都 心 部 に 着 目 し た モ デ ル で あ っ た. ま た ,日 本 全 域 を 対 象 と し た モ デ ル は ,そ の 出 力 値 を 他 の 流 出 計 算 ・ 河 川 流 下 計 算 ・ 堤 内 氾 濫 解 析 な ど に 用 い る こ と が 困 難 で あ っ た と 考 え ら れ る.
(3) 本 研 究 で の 提 案
本 研 究 で は , 地 方 都 市 部 お よ び 地 方 都 市 郊 外 部 に も 適 用 す る こ と の で き る 内 水 氾 濫 解 析 モ デ ル を 構 築 し , 徳 島 県 全 域 を 対 象 と し た 内 水 対 策 の 検 討 を 行 う こ と を 提 案 す る.
そ の 際 に , オ ー プ ン デ ー タ と し て 公 開 さ れ て い る 情 報 の み を 内 水 氾 濫 解 析 モ デ ル の 入 力 条 件 と し , 一 般 に 公 開 さ れ て い な い 情 報 は 本 研 究 で は 用 い な い こ と と す る.ま た ,リ ス ク 評 価 の 空 白 域 が 生 じ な い 氾 濫 解 析 モ デ ル を 構 築 す る こ と と す る.
2.3 超 過 洪 水 時 を 含 め た 建 物・家 財 に 着 目 し た 被 害 額 算 定 の 提 案
(1) 被 害 額 算 定 モ デ ル を 用 い た 結 果 の 整 理 1 ) 外 水 氾 濫 対 策 を 対 象 と し た 研 究
a) 目 的 と 結 論
時 岡 ら 7 )は , 流 域 面 積 1, 930 km2 の 一 級 河 川 で あ る 常 呂 川 の 外 水 氾 濫 を 対 象 と し , 河 道 掘 削 案 と 洪 水 調 節 施 設 整 備 案 の 費 用 対 効 果 を 比 較 し , こ れ ま で の 河 川 整 備 基 本 方 針 の 検 討 に あ た っ て は , 計 画 規 模 以 上 の 超 過 洪 水 時 の 被 害 軽 減 を 考 慮 し て い な か っ た が , 超 過 洪 水 時 も 検 討 に 含 む こ と に よ り , 治 水 対 策 ご と に 超 過 洪 水 時 の 被 害 軽 減 効 果 が 異 な る こ と を 示 し て い る . ま た , 気 候 変 動 に よ る 計 画 降 雨 量 の
変 化 量 ま で 費 用 対 効 果 分 析 を 行 う こ と に よ り 治 水 対 策 の 効 果 を 評 価 可 能 で あ る こ と を 示 し て い る .
b) 本 研 究 と の 関 連
時 岡 ら 7 )は , 外 水 氾 濫 対 策 を 検 討 し , 内 水 氾 濫 対 策 は 対 象 と し て い な い.ま た ,水 害 被 害 を 検 討 す る 際 に は ,計 画 規 模 以 上 の 超 過 洪 水 時 の 検 討 が 重 要 あ る と の 指 摘 あ る た め , 計 画 規 模 以 上 の 超 過 洪 水 時 の 被 害 を 考 慮 し た 検 討 を 本 研 究 で は 行 う こ と と し た.
2) 田 畑 と 家 屋 が 混 在 し た 地 区 に お け る 内 水 氾 濫 対 策
a) 目 的 と 結 論
木 村 ら 8 )は , 低 平 農 業 地 域 で あ る 新 潟 市 亀 田 郷 地 区 を 対 象 と し た 排 水 解 析 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン モ デ ル を 構 築 し , 末 端 調 整 池 で あ る 鳥 屋 野 潟 に お け る 排 水 機 場 の 予 備 運 転 お よ び 排 水 ポ ン プ の 目 標 内 水 位 の 引 き 下 げ に よ る , 大 雨 時 の ピ ー ク 内 水 位 抑 制 効 果 , 内 水 氾 濫 被 害 軽 減 効 果 に つ い て 検 討 し て い る.そ の 際 に ,治 水 経 済 調 査 マ ニ ュ ア ル 9 ) か ら , 農 作 物 の 被 害 額 を 算 定 し , 排 水 ポ ン プ の 目 標 内 水 位 の 引 き 下 げ に よ る 冠 水 被 害 地 の 軽 減 効 果 は 特 に 水 田 に お い て 高 い 傾 向 が 示 さ れ た . 一 方 で , 冠 水 被 害 額 は , 市 街 地 で は 被 害 額 の 単 価 が 高 い こ と か ら ,農 地 に 比 べ て 大 き な 被 害 額 軽 減 効 果 が 見 込 め る 結 果 と な っ た .
b) 本 研 究 と の 関 連
木 村 ら 8 )は , 内 水 氾 濫 を 対 象 と し , 内 水 氾 濫 対 策 に よ る 被 害 額 の 低 減 効 果 を 算 定 し て い る.し か し ,新 潟 市 亀 田 郷 地 区 の 1 地 区 を 対 象 と し た 研 究 で あ り , 1 都 道 府 県 程 度 の 面 積 を 対 象 と し た 研 究 で は な い.ま た ,浸 水 軽 減 効 果 の 大 き い 水 田 よ り も ,被 害 額 の 単 価 の 高 い 市 街 地 の 方 が 被 害 額 軽 減 効 果 を 見 込 め る と い う 指 摘 が あ っ た.
(2) 問 題 点 の 整 理
氾 濫 被 害 の 検 討 で は , 外 水 氾 濫 を 対 象 と し た 検 討 や 内 水 氾 濫 を 対 象 と し て い て も 1 地 域 に 限 定 し た 考 察 で あ り , 1 都 道 府 県 程 度 の 面 積 を 対 象 に 内 水 氾 濫 対 策 を 考 察 し た も の は 少 な か っ た.
(3) 本 研 究 で の 提 案
内 水 氾 濫 解 析 の 結 果 の 1 つ で あ る 最 大 浸 水 深 分 布 を も と に , 治 水
経 済 調 査 マ ニ ュ ア ル 9 )に 従 い ,被 害 額 を 算 定 す る.そ の 際 に は ,時 岡 ら 7 )の 指 摘 に 従 い , 計 画 規 模 以 上 の 超 過 洪 水 時 の 被 害 を 考 慮 し た 検 討 を 本 研 究 で は 行 う こ と と し た. し か し , 超 過 洪 水 時 に は 内 水 氾 濫 だ け で な く 外 水 氾 濫 が 発 生 す る こ と が 想 定 さ れ る.外 水 氾 濫 の 際 に は , 破 堤 に よ る 氾 濫 の 恐 れ が あ り , 4 章 で 後 述 す る 地 域 偏 在 性 が 少 な く , ラ ン ダ ム に 誰 し も が 同 確 率 で 被 災 す る 恐 れ が あ る.そ の た め , 4 章 の 水 害 保 険 の 検 討 で は ,計 画 規 模 の み を 対 象 と す る こ と と し た. そ れ に 対 し , 5 章 の 排 水 機 場 の 費 用 対 効 果 の 検 討 で は , 超 過 洪 水 時 で あ っ て も 排 水 機 場 は 稼 働 し て い る と 考 え , 計 画 規 模 お よ び 超 過 洪 水 時 を 対 象 に 検 討 を 行 う こ と と し た.
一 方 , 本 研 究 で は , 家 屋 を 対 象 と し た 水 害 保 険 と , 雨 水 排 水 を 目 的 と し た 下 水 排 水 機 場 整 備 に お け る 費 用 対 効 果 を 検 討 す る こ と と し て い る.木 村 ら 8 )に よ る と ,浸 水 軽 減 効 果 の 大 き い 水 田 よ り も ,被 害 額 の 単 価 の 高 い 市 街 地 の 方 が 被 害 額 軽 減 効 果 を 見 込 め る と の 指 摘 も あ っ た.そ の た め 本 研 究 で は ,治 水 経 済 調 査 の 対 象 は 建 物 ・ 家 財 に 限 定 す る こ と と し た.
2.4 被 害 額 に 応 じ た グ ル ー プ 分 割 に よ る 保 険 の 給 付・徴 収 の 提 案 (1) 日 本 国 と 諸 外 国 の 自 然 災 害 保 険 制 度 の 整 理
1 ) 日 本 国
我 が 国 で は , 被 保 険 者 は 火 災 保 険 に 加 入 す る こ と に よ り , 水 害 被 害 に 対 す る 補 償 を 得 る こ と が で き る . 一 方 , 内 水 氾 濫 は 低 地 に 発 生 す る 頻 度 が 高 く , 地 域 偏 在 性 が 大 き い 災 害 で あ る と 考 え ら れ る . そ の た め ,水 害 保 険 を 誰 し も が 被 害 を 受 け る 火 災 保 険 と 一 体 運 用(プ ー ル)す る こ と に よ り , 保 険 制 度 を 機 能 さ せ て い る 1 0 ). し か し , 近 年 の 地 球 温 暖 化 に よ る 水 害 リ ス ク の 増 加 に よ り , 保 険 会 社 の 保 険 支 払 い 不 可 能 リ ス ク が 増 加 し て い る 現 況 と な っ て い る 2 ). 一 方 , 地 震 保 険 制 度 で は ,家 屋 構 造(木 造/非 木 造),耐 震 対 策 を 考 慮 し ,加 入 者 の 被 害 軽 減 対 策 に 応 じ て 保 険 利 率 を 変 化 さ せ て い る 1 1 ).
2) ア メ リ カ 合 衆 国
ア メ リ カ 合 衆 国 で は , 水 害 保 険 は 土 地 利 用 規 制 と 一 体 と な っ て 運 用 さ れ て お り ,1 0 0 年 確 率 洪 水 の 氾 濫 区 域 で は 保 険 料 率 が 高 く 設 定
さ れ る . ま た , 土 地 利 用 規 制 に よ り 危 険 地 域 の 居 住 を 制 限 す る こ と で , 洪 水 被 害 を 減 少 さ せ て い る . こ れ ら に よ り , 水 害 リ ス ク が 増 加 し て も , 保 険 会 社 の 保 険 支 払 い 不 可 能 リ ス ク を 緩 和 し て い る と 考 え ら れ る 1 1 ).
3) フ ラ ン ス 共 和 国
フ ラ ン ス 共 和 国 で は , 氾 濫 原 内 が 主 に 農 地 に 利 用 さ れ て お り , 家 屋 が 少 な い た め , 河 川 氾 濫 に 対 す る 治 水 事 業 の 規 模 が 日 本 国 と 比 較 し 少 な い . ま た , 日 本 よ り も 地 震 災 害 が 少 な い 特 徴 が あ る . そ の た め ,火 災・洪 水・地 震 な ど の 災 害 を 統 合 し ,保 険 を 運 用 す る こ と で , 保 険 制 度 の 破 綻 を 防 い で い る と 考 え ら れ る 1 1 ).
4) ス ペ イ ン 王 国
ス ペ イ ン 王 国 で は , 加 入 率 の 高 い 火 災 保 険 に 水 害 保 険 を 強 制 付 帯 す る こ と に よ り , 加 入 者 を 確 保 し て い る . ま た , 洪 水 ・ 地 震 な ど の 自 然 災 害 と , テ ロ ・ 暴 動 な ど の 社 会 活 動 に よ る リ ス ク と 統 合 し , 保 険 を 運 用 す る こ と で ,保 険 制 度 の 破 綻 を 防 い で い る と 考 え ら れ る 1 1 ).
(2) 日 本 国 の 水 害 保 険 制 度 の 問 題 点 と 本 研 究 で の 提 案
1) 水 害 保 険 制 度 の 現 状 と 問 題 点
我 が 国 で は 水 害 保 険 を 誰 し も が 被 害 を 受 け る 火 災 保 険 と 一 体 運 用 す る こ と で , 保 険 制 度 を 機 能 さ せ て い る . し か し , 近 年 の 地 球 温 暖 化 に よ る 水 害 リ ス ク の 増 加 に よ り , 保 険 会 社 の 保 険 支 払 い 不 可 能 リ ス ク が 増 加 し て い る 現 況 と な っ て い る 2 ).
2) 他 災 害 の 保 険 制 度 と の 比 較
我 が 国 の 水 害 保 険 と 地 震 保 険 と を 比 較 す る と , 地 震 保 険 で は 危 険 度 に 応 じ た 利 率 を 設 定 す る こ と で 制 度 の 破 綻 を 防 い で い る の に 対 し , 水 害 保 険 で は そ の よ う な 対 策 は 講 じ ら れ て い な い . ま た , 水 害 保 険 と 地 震 保 険 と も に , そ れ ら よ り 加 入 率 の 高 い 火 災 保 険 と 一 体 運 用 す る こ と で 制 度 の 破 綻 を 防 い で い る . し か し , 水 害 保 険 と 地 震 保 険 と も に , 火 災 保 険 の 強 制 付 帯 と は な っ て お ら ず , 任 意 に 加 入 す る 制 度 と な っ て い る .
3) 諸 外 国 の 水 害 保 険 制 度 と の 比 較
ア メ リ カ 合 衆 国 で は , 水 害 保 険 は 土 地 利 用 規 制 と 一 体 と な っ て 運 用 す る こ と に よ り , 保 険 支 払 い 不 可 能 リ ス ク の 解 消 を 試 み て い る . し か し , 我 が 国 で は 現 在 か ら 土 地 利 用 規 制 の 効 果 を 発 現 さ せ よ う と す る と ,5 0,1 00 年 程 度 の 時 間 を 要 し , 近 年 の 地 球 温 暖 化 に よ る 水 害 リ ス ク の 増 加 に は 対 処 で き な い 恐 れ が あ る . 一 方 , 我 が 国 で は , フ ラ ン ス 共 和 国 と は 異 な り , 氾 濫 原 内 が 主 に 農 地 に 利 用 さ れ て お り 家 屋 が 少 な く , ま た 地 震 災 害 が 少 な い 特 徴 を 持 っ て い な い . そ の た め , フ ラ ン ス 共 和 国 の よ う に , 地 震 な ど の 他 災 害 と , こ れ 以 上 一 体 運 用 す る こ と は 望 ま し い と は い え な い と 考 え ら れ る . 他 方 , ス ペ イ ン 王 国 の よ う に , 火 災 保 険 に 強 制 付 帯 す る た め に は 国 民 に 理 解 が 必 要 で あ り , 時 間 を 要 す る と 考 え ら れ る . ま た , 我 が 国 で は テ ロ ・ 暴 動 の リ ス ク は ス ペ イ ン 王 国 よ り 低 い と 考 え ら れ , 社 会 活 動 に よ る リ ス ク に 関 す る 災 害 保 険 と 自 然 災 害 リ ス ク に 関 す る 災 害 保 険 と を 一 体 運 用 す る こ と は 望 ま し い と は い え な い と 考 え ら れ る .
4) 本 研 究 で の 提 案
諸 外 国 で は 気 候 変 動 に よ る 水 害 保 険 支 払 額 の 増 加 に 伴 い 保 険 制 度 が 破 綻 し な い よ う , 土 地 利 用 規 制 と の 一 体 運 用 ・ 複 数 の 災 害 保 険 を 統 合 ・ 保 険 の 強 制 加 入 を 行 っ て い る . し か し , 上 記 を 踏 ま え る と , こ れ ら 諸 外 国 と 同 様 の 保 険 運 用 制 度 を 実 施 す る こ と は 困 難 で あ る と 考 え ら れ る . 我 が 国 で は 火 災 保 険 と 一 体 運 用 す る こ と で , 保 険 制 度 を 機 能 さ せ て い る も の の , 近 年 の 地 球 温 暖 化 に よ る 水 害 リ ス ク の 増 加 に よ り , 保 険 会 社 の 保 険 支 払 い 不 可 能 リ ス ク が 増 加 し て お り , 支 払 額 の 増 加 に 備 え る た め に は , 水 害 以 外 の 他 災 害 と の 一 体 運 用 と は 異 な る 方 策 を 行 う 必 要 が あ る . そ こ で , 我 が 国 の 地 震 災 害 保 険 を 参 考 に , 災 害 危 険 度 に 応 じ て 保 険 の 利 率 を 設 定 す る 制 度 を 提 案 す る . 具 体 的 に は ,内 水 被 害 額(内 水 危 険 度)に 応 じ た グ ル ー プ 分 割 に よ り , 保 険 の 給 付 ・ 徴 収 を 行 い , 保 険 制 度 の 運 用 性 を 高 め る こ と で あ る .
2.5 社 会 的 割 引 率 の 感 度 分 析 の 提 案
(1) 日 本 国 と 諸 外 国 ・ 国 際 機 関 の 社 会 的 割 引 率 の 整 理 1 ) 日 本 国
我 が 国 で は , 国 債 は 代 表 的 な リ ス ク の 少 な い 債 券 で あ り , 政 府 の
資 金 調 達 コ ス ト を 表 し て い る と も 考 え ら れ る こ と か ら , 国 債 の 実 質 利 回 り を 参 考 値 と し て , 社 会 的 割 引 率 を 4 % と し て 設 定 し て い る . 必 ず し も 社 会 的 割 引 率 が 市 場 利 子 率 と 一 致 す る と は い え な い も の の , 社 会 的 時 間 選 好 の 考 え 方 に 基 づ き 社 会 的 割 引 率 を 設 定 す る こ と は 困 難 で あ る た め ,我 が 国 で は 国 債 の 実 質 利 回 り を 参 考 値 と し て い る 1 2 ).
2) 諸 外 国 ・ 国 際 機 関
諸 外 国 ・ 国 際 機 関 の 費 用 便 益 分 析 に お い て 適 用 さ れ て い る 社 会 的 割 引 率 の 設 定 の 状 況 を 表 2 -1 に 示 す . 表 2 -1 を み る と , ド イ ツ 連 邦 共 和 国 の 3 % か ら ア ジ ア 開 発 銀 行 の 12% ま で 振 れ 幅 が 大 き い こ と が わ か る . ま た , 同 表 か ら イ ギ リ ス 連 合 王 国 で は 2 00 3 年 に 6 % か ら 3.5% に 改 訂 し た こ と も わ か る 1 2 ).
表 2 - 1 諸 外 国 ・ 国 際 機 関 の 社 会 的 割 引 率 1 2 )
(2) 社 会 的 割 引 率 の 問 題 点 と 本 研 究 で の 提 案
1) 日 本 国 の 社 会 的 割 引 率 の 現 状 と 問 題 点
我 が 国 で は 現 行 の 社 会 的 割 引 率 は , 国 債 の 実 質 利 回 り を 参 考 値 と し , 4 % を 採 用 し て い る . 必 ず し も 社 会 的 割 引 率 が 市 場 利 子 率 と 一 致 す る と は い え な い も の の , 社 会 的 時 間 選 好 の 考 え 方 に 基 づ き 社 会 的 割 引 率 を 設 定 す る こ と は 困 難 で あ る た め , 我 が 国 で は 国 債 の 実 質 利 回 り を 参 考 値 と し て い る 1 2 ). そ の た め , 望 ま し い 社 会 的 割 引 率 の 水 準 に つ い て は , 決 定 的 な 結 論 は 出 て い な い 現 況 に あ る .
2) 日 本 国 と 諸 外 国 ・ 国 際 機 関 の 社 会 的 割 引 率 の 比 較
諸 外 国 ・ 国 際 機 関 を み る と , イ ギ リ ス 連 合 王 国 で は 社 会 の 情 勢 に 応 じ て 改 訂 を 行 っ て い る . 我 が 国 で は , 改 定 の 必 要 性 が 指 摘 さ れ て
い る 1 2 )も の の , 改 定 は 実 施 さ れ た こ と は な い . ま た , 諸 外 国 ・ 国 際
機 関 の 社 会 的 割 引 率 を み る と , 3 % か ら 1 2% ま で 存 在 し , 我 が 国 で 採 用 さ れ て い る 4% は そ の 範 囲 内 で あ る も の の , そ の 範 囲 の 上 下 限 値 の 振 れ 幅 が 大 き い こ と が わ か っ た .
3) 本 研 究 で の 提 案
4 % 以 外 の 値 の 社 会 的 割 引 率 を 用 い た 費 用 対 効 果 分 析 を 行 う こ と が 重 要 と 考 え , 社 会 的 割 引 率 の 感 度 分 析 を 行 う こ と を 提 案 す る . こ の 感 度 分 析 に お い て , 気 候 変 動 に よ る 費 用 対 効 果 分 析 の 振 れ 幅 と , 景 気 変 動 の 振 れ 幅 を 比 較 す る こ と に よ り , 社 会 的 割 引 率 の 設 定 の 重 要 性 を 述 べ る .
第 3 章 地 方 都 市 部 に お い て 広 域 の 内 水 氾 濫 を 評 価 で き る 解 析 モ デ ル の 構 築
3.1 構 築 す る 内 水 氾 濫 解 析 モ デ ル の 特 徴
本 章 で は , 前 章 に お い て 記 し た 以 下 の 特 徴 を 持 っ た 内 水 氾 濫 解 析 モ デ ル を 構 築 す る.
① 地 方 都 市 部 お よ び 地 方 都 市 郊 外 部 に も 適 用 す る こ と の で き る 内 水 氾 濫 解 析 モ デ ル.
② 1 都 道 府 県 程 度 の 面 積 を 対 象 と し た 広 域 の 内 水 氾 濫 モ デ ル
③ オ ー プ ン デ ー タ と し て 公 開 さ れ て い る 情 報 の み を 内 水 氾 濫 解 析 モ デ ル の 入 力 条 件 と し , 一 般 に 公 開 さ れ て い な い 情 報 は 用 い な い 内 水 氾 濫 モ デ ル
④ リ ス ク 評 価 の 空 白 域 が 生 じ な い 氾 濫 解 析 モ デ ル
3.2 内 水 氾 濫 解 析 の 方 法
本解 析 モ デ ル は , 二 次 元 不 定 流 モ デ ル(地 表 面)に 準 線 形 貯 留 型 モ デ ル(堤 外 排 水)を 結 合 す る こ と に よ り 構 築 さ れ て い る . 準 線 形 貯 留 型 モ デ ル を 用 い る と ,流 末 に 到 達 し た 流 量 を 算 定 す る こ と が で き る . 本 研究 で は , 流 路 を 河 川 , 開 水 路 , 下 水 管 路 と 定 義 し , そ の 箇 所 を 堤 外 と す る . 一 方 , 流 路 以 外 の 箇 所 を 堤 内 と す る . 本 研 究 で は , 準 線 形 貯 留 型 モ デ ルを 用 い , 地 表 面(堤 内 地)か ら 流 路 へ の 流 出 量 を 算 定 す る . 堤 内 地 に 整 備 さ れ て い る 流 路 は 集 水 域(国 土 数 値 情 報 流 域 メ ッ シ ュ に 準 拠 す る .)全 体 に 張 り 巡 ら さ れ て い る こ と が 多 く , 地 表 面 か ら 流 路 に 流 出 す る 現 象 は , 下 流 端 だ け で な く 集 水 域 全 体 で 生 じ る こ と が 想 定 さ れ る . そ の た め , 準 線 形 貯 留 型 モ デ ル で 算 定 さ れ た 集 水 域 の 下 流 端 に 到 達 し た 流 量 分 の 水 量 を , 集 水 域 全 体 の 浸 水 深 か ら 一 定 割 合 を 差 し 引 く こ と に よ り , 地 表 面 か ら 流 路 に 流 出 す る 現 象 を モ デ ル 化 し た . な お , 流 路 に 流 入 し た 氾 濫 水 が 再 び 地 表 面 に 溢 れ 出 す 現 象 は 外 水 氾 濫 と 考 え ら れ る . 本 研 究 で は 内 水 氾 濫 の み を 対 象 と し た た め , 再 び 流 路 か ら 地 表 面 に 溢 れ 出 す 現 象 を 考 慮 し な い 解 析 モ デ ルと なっ て いる .
(1) 地 表 面 に お け る 氾 濫 モ デ ル
地 表 面 の 氾 濫 流 の 基 礎 式 は , 以 下 の よ う な 二 次 元 ・ 非 定 常 浅 水 流 の 連 続 式 と 運 動 方 程 式 を 用 い る . 式( 3 -1 )右 辺 第2項 は 堤 外 流 出 を 表 し て お り , 本 節(3 )項 に て 詳 述 す る .
FD FD
dr V
h t f V R y f
N x M t
h
+
= +
+
inf ( 3 -1)
bx x gh H yvM xuM
t
M − ,
−
= +
+
( 3 - 2 )
by y gh H yvN xuN
t
N − ,
−
= +
+
( 3 -3 )
こ こ に ,t:時 間( s e c),x,y:水 平 2 次 元 座 標 距 離(m),h:水 深(m ),
v
u, : x,y方 向 の 流 速(m/ s), M,N: x,y方 向 の 流 量 フ ラ ッ ク ス(単 位 幅 流 量)( m2/ s )M=uhお よ び N=vh,H: 水 位( m), finf:浸 透 に 起 因 す る 降 雨 損 失 に 対 応 す る 流 出 係 数(-),R:雨 量(m / s),g:重 力 加 速 度( m /s2),: 水 の 密 度(kg /m3),
y b x b, . ,
:x,y方 向 の 地 表 面 摩 擦 抵 抗 応 力( m/s2) , fdr: 流 下 ・ 排 水 能 力 不 足 に 起 因 す る 流 出 係 数 ( - ), VFd:地 表 面 の 湛 水 量 ( m3)で あ る .
地 表 面 摩 擦 抵 抗 応 力 は 次 の よ う に 表 さ れ る .
3 / 4
2 2 2 3
/ 1
2 2 2 ,
h v u M gn h
v u u
x gn
b = + = +
ρ
τ ( 3 -4 )
3 / 4
2 2 2 3
/ 1
2 2 2 ,
h v u N gn h
v u v
y gn
b = + = +
ρ
τ ( 3 -5 )
こ こ に , n: マ ニ ン グ 粗 度 係 数( s/m1 / 3)で あ る .
氾 濫 流 の 数 値 計 算 で は ,式(3 - 1) ( 3 -2 )( 3 - 3)を ,空 間 的 に は ス タ ッ ガ ー ド ・ 構 造 格 子 に つ い て 陽 的 に 差 分 化 し , 時 間 的 に はle a p - fro g 法 に よ り , 数 値 解 析 す る .
( 2) 堤 外 流 出 量
内 水 浸 水 想 定 区 域 作 成 マ ニ ュ ア ル(案)1 0 )に は , 降 雨 波 形 の ピ ー ク か ら 強 制 排 水 を 行 う 浸 水 シ ナ リ オ を 検 討 す る 旨 の 記 載 が あ る(図 3-1) .一 方 ,1 .01年 確 率 雨 量 強 度 に ま で 雨 量 が 下 回 っ た 場 合 に は ,外 水 位 も 低 下 し て い る と 考 え ら れ る.そ の た め ,降 雨 波 形 の ピ ー ク か ら 1 .0 1年 確 率 雨 量 強 度 に ま で 雨 量 が 下 回 る ま で の 間 を 強 制 排 水 が 実 施 さ れ る 期 間 と し ,そ れ 以 外 の 期 間 は 自 然 排 水 の 期 間 と し た.本 研 究 の 浸 水 シ ナ リ オ を 図3 -2に 示 す.
図 3 - 1 強 制 排 水 を 行 う タ イ ミ ン グ 1 0 )
時間 雨量
最大 雨量
1.01年 確率雨量
樋門・水門操作 排水機場操作
開門 閉門 開門
停止 稼動 停止
外水と内水の高低
排水 条件
内水位(高)>外水位(低) 外水位(高)>内水位(低) 内水位(高)>外水位(低) 自然排水 強制排水 自然排水 機場あり
機場なし 自然排水 排水不能 自然排水
※堤内水位が排水機場の開始水位を上回った際には、雨量に係わらず自然排水から強制排水に移行する。
図3 - 2 浸 水 シ ナ リ オ(降 雨 波 形 と 自 然 ・ 強 制 排 水 の 関 係)
1) 自 然 排 水 時
自 然 排 水 時 の 堤 外 流 出 量 は , 前 項 の 平 面 二 次 元 の 流 れ と は 別 に 計 算 す る . 堤 外 流 出 量 は 流 路 に 到 達 し た 流 量 と 想 定 し , 流 入 量 の 計 算
は 準 線 形 貯 留 型 モ デ ル に 準 拠 す る .こ れ を 集 水 領 域 ご と に 計 算 す る . こ こ で ,式( 3- 6 )に お い て Rが 0. 0 mm/ h r と な る と ,地 表 面 に 湛 水 が 存 在 し て い た と し て も , 堤 外 流 出 量 は 0 .0m3/ s と な る こ と が 想 定 さ れ る .一 方 ,徳 島 県 で は ,ほ ぼ 毎 年 3 0 .0 mm / hr の 雨 量(生 起 確 率 に 換 算 す る と 1. 01 年)が 観 測 さ れ お り , こ の 程 度 の 雨 量 に 対 す る 流 下 ・ 排 水 能 力 は 常 に 確 保 さ れ て い る と 考 え ら れ る .そ の た め ,式( 3 - 6 )の Rが 3 0.0 mm/h r 未 満 の 場 合 は ,Rに 3 0.0 mm /h r を 計 算 対 象 時 間 中 ,常 に 与 え る こ と に よ り , 堤 外 流 出 量 を 推 定 し た .
( inf )0.35
22 .
0 −
=C A f R
TP m ( 3 -6 ) ( 60)2
= TP
k ( 3 -7 )
(
A dt)
V k
S= m m10−6 ( 3 -8 )
= i j m ij
m h dx dy
V _, ( 3 -9 ) (S dt) k
VFD_out= (3 - 1 0) こ こ に ,i,j:x,y方 向 の メ ッ シ ュ 分 割 番 号(- ),C:流 出 特 性 を 表 す 係 数(- ), TP:到 達 時 間(m i n), k:遅 れ 時 間( s ec), S:貯 留 高( m ),Vm:土 地 利 用 状 況 mに お け る 湛 水 量( m3), Am:土 地 利 用 状 況 mの 面 積( km2),
hm:土 地 利 用 状 況 mの 水 深( m),VFD_out:堤 外 流 出 量(m3)で あ る . 2) 強 制 排 水 時
強 制 排 水 時 の 堤 外 流 出 量 は , 集 水 域 内 に 存 在 す る 排 水 機 場 の 排 水 能 力 と し た.集 水 域 内 に 排 水 機 場 が 存 在 し な い 場 合 は ,内 水 位 よ り 外 水 位 が 高 い と 想 定 し , 堤 外 流 出 量 は 無 い と し た.
( 3) 堤 外 流 出 量 の 地 表 面 モ デ ル へ の 反 映
洪 水 浸 水 想 定 区 域 図 作 成 マ ニ ュ ア ル(第 4 版)1 4 )で は , ポ ン プ 排 水 量 を 集 水 面 積 全 体 で 受 け 持 つ こ と に よ り , 排 水 機 に よ る 強 制 排 水 を モ デ ル 化 す る こ と を 考 案 し て い る .そ こ で 本 モ デ ル で は ,式( 3 -1)右 辺 第 2 項 を 式(3 - 1 1)の よ う に 差 分 化 し た . 式(3 - 11)を み る と , 集 水 域 の 湛 水 量 nstep
VFd と 堤 外 流 出 量 fdrVFd−out か ら , 湛 水 量 の 減 少 率
(
nstep dr Fd out)
FdnstepFd f V V
V − − を 求 め ,そ の 減 少 率 を 一 律 に 水 深 hinstep,j に 乗 す こ と に よ り , 次 ス テ ッ プ の 水 深 hinstep,j +1を 求 め て い る こ と が わ か る .
(
nstep dr Fdout)
Fdnstep Fdnstep j i nstep
j
i h V f V V
h + = , − − 1
, (3 - 1 1)
こ こ に , nstep:計 算 ス テ ッ プ 数( -)で あ る .
(4) 流 出 係 数 の モ デ ル 化
流 出 係 数 を 浸 透 に 起 因 す る 降 雨 損 失 に 対 応 す る も の と , 流 下 ・ 排 水 能 力 不 足 に 起 因 す る も の と に 分 離 す る . こ の 2 要 素 の , 重 み 付 け 相 乗 平 均 が 表3- 1に 示 す 1 次 流 出 係 数 で あ る と 考 え た . 本 研 究 で は , 重 み 付 け 係 数 を0 . 0か ら1. 0ま で0 . 1刻 み で 変 化 さ せ ,重 み 付 け 係 数 の 同 定 を 行 っ た . 式( 3-1 2),( 3- 1 3)よ り , こ れ ら 流 出 係 数 を 土 地 利 用 状 況 ご と に 求 め る .
w dr
p fw f
f = inf 1− ( 3 - 1 2)
1
0w (3 - 13 ) こ こ に ,fp:1 次 流 出 係 数(- ),w:流 出 係 数 の 重 み 付 け 係 数( -)で あ る .
本 研 究 の モ デ ル の 概 念 を 図 3- 3 に 示 す.
貯留施設 流下施設
[開水路]
流下施設 [下水管路]
排水施設 [下水ポンプ場]
排水施設 [河川排水機場]
集水域A
集水域B
集水域C
Ⅰ.降雨モデル
[1次流出率:f1]
Ⅱ.堤内地氾濫モデル
[平面2次元不定流計算]
Ⅲ.堤外流出モデル
自然排水時 強制排水時
貯留施設は損失雨量として考慮する。 浸水深に有効雨量を加える。
堤内地から堤外地・流下施設への 流出量の総和を計算し、堤内地浸 水深から差し引く。
堤外地 [河川本川]
堤内地 [氾濫原]
[準線形貯留型モデル]
堤内地から堤外地・流下施設への 流出量の総和を、排水施設の域外 排水量と同等にする。
[排水施設の排水能力]
→:自然排水時堤外流出
→:強制排水時堤外流出
堤外地 [河川支川]
堤内地 [山地]
図 3 - 3 本 研 究 の モ デ ル の 概 念
3.3 氾 濫 解 析 パ ラ メ ー タ
( 1)メ ッ シ ュ サ イ ズ
メ ッ シ ュ サ イ ズ は , 内 水 浸 水 想 定 区 域 図 作 成 マ ニ ュ ア ル 1 5 )を 参 考 に ,2 5 m×25 m メ ッ シ ュ と し た .
(2)計 算 対 象 時 間
計 算 対 象 時 間 は ,後 節 に 記 載 す る 概 ね H 1 6T 2 3 の 降 雨 継 続 時 間 で あ る 平 成 1 6 年(20 04 年) 1 0 月 20 日 0 時 か ら 2 4 時 の 2 4 時 間 と し た.
(3)土 地 利 用 状 況 に 応 じ た 氾 濫 解 析 パ ラ メ ー タ
氾 濫 解 析 パ ラ メ ー タ を 表 3 - 1 に 示 す.氾 濫 解 析 パ ラ メ ー タ は ,マ ニ ン グ 粗 度 係 数 , 1 次 流 出 係 数 , 流 出 特 性 を 表 す 係 数 を 表 3- 1 に 示 す 1 1 種 類 の 土 地 利 用 種 ご と に 与 え た.
表3 - 1 土 地 利 用 状 況 に 応 じ た 氾 濫 解 析 パ ラ メ ー タ
マニング 粗度係数
1次 流出係数
流出特性を 表す係数
田 0.060 0.70 1,000.0
その他農用地 0.050 0.60 210.0
森林 0.060 0.30 290.0
荒れ地 0.050 0.60 105.0
建物用地 0.050 0.80 110.0
幹線交通用地 0.047 0.95 50.0 その他用地 0.050 0.80 80.0 河川地及び湖沼 0.030 1.00 1.0
海浜 0.030 0.80 105.0
海水域 0.030 1.00 1.0
ゴルフ場 0.050 0.50 140.0
3.4 対 象 領 域 と 対 象 降 雨
( 1)対 象 領 域
対 象 領 域 は 徳 島 県 全 域 で あ る.対 象 領 域 の 地 盤 標 高 ,土 地 利 用 状 況 , 建 物 占 有 率 お よ び 集 水 域 を 図 3 - 4か ら 図 3 -7に 示 す.地 盤 標 高 と 建 物 占 有 率 は 基 盤 地 図 情 報 を , 土 地 利 用 状 況 と 集 水 域 は 国 土 数 値 情 報 を 用 い , 内 水 氾 濫 解 析 モ デ ル を 構 築 し た.
図 3 - 4 地 盤 標 高
図 3 - 5 土 地 利 用 状 況
図 3 - 6 建 物 占 有 状 況
図 3 - 7 集 水 域
( 2)対 象 降 雨 1) 降 雨 波 形
徳 島 県 の 雨 量 観 測 所 の テ ィ ー セ ン 分 割 図 を 図3- 8に 示 す.徳 島 県 で は , 「 池 田 」 「 穴 吹 」 「 徳 島 」 「 半 田 」 「 京 上 」 「 福 原 旭 」 「 蒲 生 田 」「 木 頭 」「 日 和 佐 」「 宍 喰 」 の1 0雨 量 観 測 所 に 分 割 さ れ る.こ れ ら1 0観 測 所 のH 1 6T 23時 の 降 雨 波 形 を 図3- 9か ら 図3- 1 8に 示 す.
図 3 - 8 雨 量 観 測 所 の テ ィ ー セ ン 分 割 図
穴 吹 徳 島 半 田
池 田
京 上
木 頭
宍 喰
福 原 旭
日 和 佐
蒲 生 田
図 3 - 9 平 成 1 6 年 台 風 2 3 号 の 降 雨 波 形[池 田]
図 3 - 1 0 平 成 1 6 年 台 風 2 3 号 の 降 雨 波 形[穴 吹]
図 3 - 1 1 平 成 1 6 年 台 風 2 3 号 の 降 雨 波 形[徳 島]
図 3 - 1 2 平 成 1 6 年 台 風 2 3 号 の 降 雨 波 形[半 田]
図 3 - 1 3 平 成 1 6 年 台 風 2 3 号 の 降 雨 波 形[京 上]
図 3 - 1 4 平 成 1 6 年 台 風 2 3 号 の 降 雨 波 形[福 原 旭]
図 3 - 1 5 平 成 1 6 年 台 風 2 3 号 の 降 雨 波 形[蒲 生 田]
図 3 - 1 6 平 成 1 6 年 台 風 2 3 号 の 降 雨 波 形[木 頭]
図 3 - 1 7 平 成 1 6 年 台 風 2 3 号 の 降 雨 波 形[日 和 佐]
図3 - 1 8 平 成1 6年 台 風2 3号 の 降 雨 波 形[宍 喰]
3.5 計 算 水 位 と 痕 跡 水 位 の 比 較 に よ る 解 析 モ デ ル の 検 証
(1) 痕 跡 水 位
H16T 23 で は 徳 島 県 内 で 2,8 44 箇 所(図 3- 1 9 )に お い て ,痕 跡 水 位 が 測 量 さ れ て い る 1 6 ).こ の 2 ,844 箇 所 に お い て 計 算 水 位 と 痕 跡 水 位 を 比 較 し , 構 築 さ れ た 内 水 氾 濫 解 析 モ デ ル の 検 証 を 行 う . こ の 2,8 44 箇 所 に は , 外 水 氾 濫 の 影 響 を 受 け た 浸 水 痕 跡 も 含 ま れ て お り , こ れ ら の 影 響 を 受 け た 氾 濫 も 一 部 評 価 対 象 に 含 め た .
図 3 - 1 9 浸 水 実 績 の 測 量 箇 所(赤 点)
(2) 流 出 係 数 の 同 定
計 算 水 位 と 痕 跡 水 位(2 ,84 4 箇 所)と の 比 較 に あ た り , 式( 3 -1 4 )を 用 い て 評 価 を 行 っ た.式(3 - 1 4)を 用 い ,計 算 水 位 と 痕 跡 水 位 の 差 の 絶 対 値 の 合 計 を , 計 算 結 果 と 浸 水 実 績 と の 差 の 評 価 値 と し た.
2,844
1
o c
n
H H
=
=
− (3 - 1 4)こ こ で ,: 誤 差 評 価 値(m ), Ho: 痕 跡 水 位( m),Hc: 計 算 水 位(m ) で あ る.
図 3- 2 0 を み る と , 縦 軸 に 誤 差 評 価 値 を , 横 軸 に 式( 3- 1 2)の 流 出 係 数 の 重 み 付 け 係 数 wを と る と , w=0.45の 際 に 誤 差 評 価 値 が 最 小 と な る こ と が わ か る.そ の た め , 次 章 か ら w=0.45を 用 い て 考 察 を 行 う.
R² = 0.9984
293 294 295 296 297 298 299 300 301 302
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
計算結果と浸水実績との差の合計 (ε)(m)
重み付け係数(w)
図 3 - 2 0 流 出 係 数 の 重 み 付 け 係 数 の 同 定
0.45
(3)内 水 氾 濫 解 析 モ デ ル の 妥 当 性 の 検 証
流 出 係 数 の 重 み 付 け 係 数 w=0.45の 際 に 差 が 最 小 に な り , 平 均 で 1 0.3 cm=( 294 .12 m/ 2,84 4 箇 所)の 差 が あ っ た . こ こ で , 治 水 経 済 調 査 マ ニ ュ ア ル 9 )で は , 浸 水 被 害 率 を 浸 水 深 0. 5m 未 満 ,0 .5m 以 上 1 .0m 未 満 ,1. 0m 以 上 2 .0m 未 満 ,2 .0 m 以 上 3 .0 m 未 満 ,3.0 m 以 上 の 5 区 分 で 定 義 し て お り , 本 研 究 で は 0.5 m 未 満 は 対 象 外 と し て い る . 1 0. 3 c m は ,本 研 究 で 対 象 の 4 区 分 の 最 短 範 囲 で あ る 50 cm(0 .5m 以 上 1 .0 m 未 満)の 20 .6 %で あ る こ と か ら ,浸 水 被 害 額 の 算 定 は 妥 当 と 考 え ら れ る .
3.6 本 章 の ま と め
本 章 は , オ ー プ ン デ ー タ を 用 い , 治 水 経 済 調 査 マ ニ ュ ア ル 9 )に 従 い 内 水 被 害 額 の 算 定 が 可 能 で , 1 都 道 府 県 程 度 の 面 積 が 計 算 可 能 な 内 水 氾 濫 解 析 モ デ ル を 構 築 す る こ と が で き た.こ の 内 水 氾 濫 解 析 モ デ ル は , 外 力 し て 与 え た 降 雨 量 が 地 表 面 の 水 深 と し て 加 算 さ れ る 連 続 式 を 採 用 し て い る た め , リ ス ク 評 価 の 空 白 域 を 生 じ さ せ な い 特 徴 を 持 っ て い る と 考 え ら れ る .
第 4 章 内 水 被 害 額 に 応 じ た グ ル ー プ 分 割 に よ る 保 険 の 給 付 ・ 徴 収 に 対 す る 不 平 等 性 の 低 減
4.1 本 章 の 概 要
本 研 究 の 流 れ を 図 4 -1 に 示 す . ま ず , 前 章 で 記 し た 方 法 で 7 ケ ー ス の 確 率 評 価 さ れ た 降 雨 波 形 作 成 し , こ れ ら を 外 力 と し た 内 水 氾 濫 解 析 を 行 う . そ の 計 算 結 果 で あ る 最 大 浸 水 深 分 布 を も と に , 治 水 経 済 調 査 に 基 づ く 被 害 額 算 定 を 行 っ た . 被 害 額 に 生 起 確 率 を 乗 じ た 降 雨 規 模 別 年 平 均 被 害 額 を 累 計 し , 年 平 均 被 害 額 を 算 定 す る . そ し て , 年 平 均 被 害 額 と そ の 被 害 を 受 け る と 想 定 さ れ る 世 帯 数 の 分 布 を 求 め る . 一 方 , 内 水 被 害 の 地 域 偏 在 性 を 考 察 す る た め ,想 定 最 大 規 模 1 7 )の 降 雨 波 形 に よ り 内 水 氾 濫 解 析 を 行 い , そ の 結 果 に お い て 0.5 m 以 上 の 浸 水 深 が 生 じ た 地 点 の う ち , 7 ケ ー ス の 確 率 評 価 さ れ た 降 雨 波 形 に よ る 内 水 氾 濫 解 析 の 結 果 で も 0 .5 m 以 上 の 浸 水 深 が 生 じ て い る 地 点 の 割 合 を 示 し 内 水 被 害 の 地 域 偏 在 性 を 考 察 す る . 地 域 偏 在 性 が あ っ た 場 合 は , 後 述 す る 「 大 数 の 法 則 」 が 成 立 し な い 恐 れ が 高 い こ と が 示 唆 さ れ る . 大 数 の 法 則 が 成 立 し な い 場 合 は , 水 害 保 険 よ り 規 模 の 大 き い 他 災 害 と 合 わ せ て , 保 険 を 一 体 運 用
す る 必 要 が あ る と 考 え ら れ る . そ の 場 合 は , 総 徴 収 料 と 総 給 付 料 と の 差 額(以 下 , 保 険 自 立 性 と い う .)が , 可 能 な 限 り 高 く な る こ と が 望 ま し い と 考 え ら れ る . ま た , 保 険 給 付 料 と 徴 収 料 の 差 額 の 世 帯 格 差 (以 下 ,不 平 等 性 と い う .)を 小 さ く す る 必 要 が あ る と 考 え ら れ る .
内水氾濫解析モデルの構築
計算結果 浸水実績
流出係数 の同定
内水氾濫解析
最大浸水深分布 降雨外力の設定 (1.1,2,3,5,10,20,50確率年,想定最大)
治水経済調査 最大浸水深分布
年平均被害額と世帯数
保険原理の考察と数値化
大数の法則
収支相等 の原則 給付・反給付
均等の原則
自立性と平等 性の重要性
内水被害の 地域偏在性
給付・徴収差額
の世帯平均 保険自立性 の数値化 不平等性 の数値化
内水被害額に応じたグループ分割による 保険の給付・徴収に対する不平等性の解消
給付・徴収差額 の標準偏差
図 4 - 1 本 章 の 流 れ