研
究
3歳児における食物由来ダイオキシン類暴露に影響 する食物摂取の特徴と摂取量の推計
一自薦地域の食事調査から一
佐:藤 祐子1),内山 巌雄2),安達 修一3)
/”・IJUJL.“ マ嬰麟_到、、 .難黙難・鑑”烈繍艦柵灘瀞瀞懸撫黙撒.. 醐騨 謬.魁、。_ 鍾雛騰脚長.藍謹 懸 馨.窪::、 職縣輔薦騨覇、 1,羅,,
く轄難鐘一
〔論文要旨〕
成長発達が著しい乳幼児期では,90%以上が経口由来であるダイオキシン類の暴露で成人とは異なる 健康影響が懸念され,小児の食事の特徴を考慮した暴露状況を明らかにする必要がある。本研究では,
離乳が完了しつつも食習慣が未熟な時期,3歳児のダイオキシン類摂取量の推計と食品群摂取の特徴を 明らかにした。島喚地域3歳児37名(男23名,女14名)を対象に,秤量法で食物摂i取状況調査を行い,
トータルダイエットスタディの考え方に基づき処理をした。推計摂取量は0.95pgTEQ/kgbw/day(body weight per day)で, TDI4pgTEQ/kgbw/dayを下回った。乳・乳製品の摂取量が多いことが,摂取量 に寄与する3歳児の要因の特徴であり,含有量により影響を受けることが示唆された。
Key words:3歳児,食物由来,ダイオキシン類,摂取量,食品摂取の特徴
1.はじめに
ダイオキシン類は健康への影響として,発が ん性,催奇形性,生殖毒性,免疫毒性が疑われ ている1)。小児期,特に乳幼児期では身体の成 長と神経や臓器の発達が著しく,成人とは異な る健康への特異な健康影響があることが予測 される2)。1997年G8環境大臣会合における先進 8ヶ国による環境保健に関する宣言(マイアミ 宣言)では「小児の特徴を考慮に入れたりスク 評価の必要性」,2002年ヨハネスブルグサミッ ト(持続可能な開発に関する世界首脳会議)で は,「環境を含めた健康障害の原因およびそれ らが小児の発達に影響を及ぼすものに対処する
必要」があるとされている3)。このように,世 界的にも小児の特徴を考慮した健康リスク評価 をすることが求められ,日本でも環境省が「小 児環境保健プロジェクト」と位置づけている4>。
90%以上が食品に由来するといわれているダ イオキシン類の摂取に関して5),わが国の小児 期の調査では,母乳からのダイオキシン類摂 取量については調査,研究がされているもの の6),食事からの暴露の状況は明らかにされて いない。小児の特殊性を踏まえたダイオキシン 類の健康影響を評価するためには,まず,小児 の食事の特徴を考慮したダイオキシン類摂取の 状況を明らかにする必要がある。日本では,現 在成人において食事からのダイオキシン類
Characterization of Food lntake and Estimation of lts Dioxin Taken from Daily Meals of 3 Years-old-children on lsland Area
Yuko SATo, lwao UcHryAMA, Syuichi ADAcHi
1)横浜国立大学大学院環境情報学府環境リスクマネジメント専攻(研究職/保健師)
2)京都大学名誉教授(研究職/医師公衆衛生)
3)相模女子大学公衆衛生学研究室(研究職/薬剤師公衆衛生)
別刷請求先:佐藤祐子 横浜国立大学大学院環境情報学府
〒240-8501神奈川県横浜市保土ヶ谷区常盤台79番7号 Tel:090-1103一“1907 Fax:045’338’1016
C2031)
受付08.4,7 採用09.10.21
摂取量は,1.11P9/TEQ(平成19年)と推測さ れ,健康に影響がないとされる一日耐用摂取量
(TDI) 4pgTEQ/kgbw/day (body weight per day)を下回っている8)。しかしながら,離乳 が完了し,成人とほぼ同じ食品を摂取できるよ うになる3歳児では,食品を摂取する量に特有 なパターンがあり2),食生活におけるダイオキ シン類摂取に影響する暴露の特徴を明らかにす る必要がある。
これらの背景を踏まえ,本研究では,3歳児 を対象に食事摂取状況調査により,食事からの ダイオキシン類摂取量を推計し,ダイオキシン 類暴露への小児の食品摂取の特徴を明らかにす ることを目的とした。なお,日本ではダイオキ シン類は魚介類に多く含まれているため,魚介 類の摂取に注目する意味から島懊地域での調査
を行った。
※ダイオキシン類とは,ポリ塩化ジベンゾパラオキ シン(PCDD),ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)
とPCBの異性体であるコプラナーPCBの総称で
ある。
1.方
法
1.調査方法
国民栄養調査に準じた内容,方法で食物摂取 状況調査を行った。
1)対象者
島懊地域である0市に居住する3歳児で3歳 児健康診査を受診した108名のうち,保護者か ら協力が得られた37名(男児23名,女児14名)
を対象とした。
2)調査期間
2000年11,12月の中で,土曜日,日曜日を除 く指定した3日間のうち2日間
3)調査内容
自記式調査用紙を用い,以下の内容を調査し
た。
a.食物摂取状況
2日間に喫食した食物を,保護者の記入に
よって調査した。調査項目は,「料理名」,「献立」,
「材料」,「皆野の調理前重量(g)」である。
b.児の属性
年齢(月齢),体重,住所,本調査では,同 時に「産地(製造元)」,「食品摂取頻度」,「化
学物質に対する保護者の意識」を調査した。
4)調査票の配布・回収方法
3歳児健康診査の会場で調査についての説明 を行い,調査用紙と食物測定用のはかりを配布 した。配布時,保護者に対し栄養士が,個別に 記入方法を説明した。はかりは誤差1gの調理 用デジタル式のもので,謝礼として差し上げた。
また,保護者の調査票への記入の意欲を高める ため,ダイオキシン類摂取量栄養摂取量の結 果と栄養士からのアドバイスをお返しする旨の 説明も行った。調査票の回収は,1週間以内に
0市母子保健推進員が家庭を訪問し,回収した。
その際記入漏れや間違いがないように,内容 の確認を行った。さらに,調査結果の分析を行
う際記載内容に疑問があるときには栄養士か ら保護者に電話で確認ができる体制をとった。
5)倫理的配慮
調査対象の保護者には,調査について個別に 説明し,口頭で同意を得た。調査を開始した後 さでも,調査を中断することも可能とした。調査 票の回収には,日頃から0市の母子保健活動に 参加している母子保健推進員が行い,調査票は 0市保健師を通じ直ちに研究者が回収し,プラ イバシーの保持に努めた。
2.食品摂取の特徴把握とダイオキシン類摂取量の 推計方法
対象者が喫食した食品から3歳児の特徴を把 握し,ダイオキシン類摂取量を推計するため に,「トータルダイエットスタディ(Total Diet Study)」7)の考え方に基づいて,調査結果を処 理した。トータルダイエットスタディとは,食 品からの環境汚染化学物質の分析方法として国 際的にも広く用いられている方法である。この 方法では,調査地域の流通を考慮し,購入した 食下を調理することで標準と考えられるモデル となる献立を作成する。これを試料に,喫食す ると思われる平均的な量を水も含めた14群に分 け,それぞれの食品群を分析器にかけ,環境化 学物質の含有量を求めるものである。わが国で は,毎年,厚生労働省が実施している国民健康・
栄養調査の食品群別摂取量の平均値をもとに,
モデルの献立を作成している。
小児の喫食量として,国民健康・栄養調査で
は,家族全体の喫食量のうち,小児が食べると 思われる量の比率から重量を算定する。本研究 では,小児の実際の食事を反映させるため,3 歳児への調査を実施し,その結果の喫食量を用 い,食品群を14群に分け食品重量を求めた。こ れにより,各群のダイオキシン類摂取量を算出 し,3歳児の食品由来のダイオキシン類摂取量
とした。
対象3歳児の調査結果の処理について,詳細 な手順を述べる(図1)。
(1)食品を分類し,重量を算出する
対象児が喫食した食品を国民栄養調査で用い る分類に基づき食品群18群に分類した。その後 食品群の分類の一部を修正,まとめることで
トータルダイエットスタディによる14群に分類 し,各食品群の重量を求めた。この作業は,国 民栄養調査の経験を持ち,地元の食材や流通を 把握している地元の管理栄養士と,幼児の食事 に経験:の深い保育園の栄養士に依頼した。
(2)調査地域の食品群ダイオキシン類含有量を作成 毎年厚生労働省が実施しているトータルダイ
エットスタディによる食品群14群によるダイオ キシン類摂取量の調査では,全国を11ヶ所に 分けて調査を行っている。この結果を用いて,
食品のダイオキシン類含有量を算出した。つま り,全国11ヶ所に分けた調査地域のうち,本 調査と同じ地域を含むダイオキシン類摂取量の 値を重量で割り,食品群重量1gあたりのダイ オキシン類含有量を算出した。
(3)喫食重量を調理前の重量から調理後の重量に換算 本調査は,国民栄養調査の方法に準じ,喫食 量として調理前の食材の重量を記載していただ いた。トータルダイエットスタディでは,調理 による化学物質の流出,濃縮を考え,調理後の 食品群の重量を用いている。このため,本調査 結果である譜面量を調理前の食材重量から,調 理後の食品特別重量の比によって調理後の含有 量を換算することとした。比率は,国民栄養調 査(平成12年度摂取重量)の結果である食品群9)
と同様の地域のトータルダイエットスタディを 使用した環境化学物質に関する調査14群の食品 摂取重量10)を,使用して求めた。
(4)調1査対象児のダイオキシン類摂取量の推計 調査対象児が喫食した食品群14群の重量それ
ぞれに,食品群でのダイオキシン類摂取量を推 計する。これらを合計し,1日のダイオキシン 類摂取量とし,成人と比較することを考え,平 均体重を用いて,体重あたりのダイオキシン類
〔対象児喫食量〕 〔ダイオキシン類舗量〕
対象者喫食重量
食品18群に分け それぞれ重量算出
14群に再分類
国民栄養調査に 準じる調査方法
(調理前重量)
国民栄養調査と 環境汚染物質調 査からの比率
食品からのダイ オキシン類1日 摂取量調査によ る,対象地域と 同じ地域の結果
既存資料(厚生労 1働省報告書)
トータルスタディ 1による調査
調理後の重量に換算
×
食品群ごとの食品19 ダイオキシン類含有量ダイオキシン類 摂取量の総計
体重あたりダイオ
キシン類摂取量 対象児の平均体重
図1 調査結果からダイオキシン類摂取量を求める手順
摂取量とした。
皿.結 果
1.食物由来ダイオキシン類一日摂取量の推計
0市3歳児の食事における食品群別食物摂 取量(2日間の平均値),および各通のダイオ キシン類摂取量(平均値)を,表1に示す。飲 み水にはダイオキシン類がほとんど含まれてい ないことがわかっているため,第14群飲料水は ダイオキシン類含有量を0と仮定し,食品か らの摂取量のみを推計した。その結果,ダイ オキシン類摂取量は13,47pgTEQと推計され た。調査対象児の平均体重は14.1kgであった ため,0市3歳児の食品からの体重あたりダイ オキシン類摂取量は0.95±9.05pgTEQ/kgbw/
day,最大値2 . 35PgTEQ/kgbw/day,最小値 0.08PgTEQ/kgbw/dayとなった。
3歳児は成人と比較して,急激な成長と発 達,活発な活動のためにエネルギー量が多く必 要である2>。よって,体重あたりの摂取エネル ギーは成人よりも多く,ダイオキシン類摂取量 も成人より多くなると予想した。国民栄養調査 平成12年度栄養素等摂取量(地域ブロック別:
南九州)の全年齢での1日あたりエネルギー摂 取量は1,919kcal(n=793)9)であった。全年齢
の平均体重は地域ブロック別に公表されていな いため,全国の平均体重53.37kgを使用し計算 すると,体重1kgあたりエネルギー摂取量は 36.Okcalとなる。一方,対象3歳児の1日あ たりエネルギー摂取量は78.3kcalと倍以上で あった。同地域の成人のダイオキシン類摂取量 は1.1gPgTEQ/kgbw/dayであり,エネルギー 摂取量から推測すると対象児のダイオキシン類 摂取量は2。59PgTEQ/kgbw/dayと.なる。しか し,結果として対象児における一日ダイオキシ ン類摂取量は,O . 95PgTEQ/kgbw/dayとそれ より少なかった。よって,ダイオキシン類摂取 量は,エネルギー摂取量には比例しないと考え,
食品群別摂取状況を検討することとした。
2.食品群別摂取状況
3歳児は,完全に離乳期が終了し,食習慣が 形成され成人とほぼ同じ食品が摂取できるよう になる。しかし,まだ,食生活が安定する時期 ではなく,身体の成長のために特有な栄養摂取 のパターンがみられる2)。ダイオキシン類含有 率の高い食品摂取状況によりダイオキシン類摂 取量は大きく影響することから,食品群ごとの 含有率と食品摂取重量によって寄与率を算出し た(表1)。
表1 食品二品食物摂取重量とダイオキシン素量
食 品 群 H12年度ダイオキシン類含有量
食材調理前1g(pgTEQ)0市3歳児平均値
食物摂取重量(g) ダイオキシン類摂取量(pgTEQ) 寄与率
1米・米加工品
。.ooooooo 75.18 o.oo o.oo%2芋・穀類・種子
。.ooooooo 71.40Oroo
o.ooo/,3砂糖・菓子
O.0023026 34.36 O.12 O.88%4油脂 O.0046875 7.66 O.04 O.27e/.
5豆類 。.ooooooo 37.87 o.oo o.oo%
6果実 。.ooooooo 71.17 o.oo o.oo%
7有色野菜
O.OOIO147 39.34 O.04 o.30 o/,8その他の野菜部類・海草 O.OOO4310 53.05 O.02 o.170/.
9嗜好品
。.ooooooo 85.64 o.oo O.ooo/.10魚介類 O.4885714 25.01 12.22 90.73 o/.
11肉・卵 O.O115702 71.90 O.83
6.18e/e
12乳・乳製品 O.OOO5686 217.88 O.12 o.g2 o/.
13その他 O.0065574 10.04 O.08 o.s60/,
合 計
13.47100.ooo/.
寄与率は10群魚介類が90.73%と最も高く,
次いで11群肉・卵類6.18%,12群乳・乳製品 0.92%であった。3歳児の特徴を検討するた めに,体重あたり食品群別摂取量を国民栄養調 査(平成12=2000年)の地域ブロック別(同地 域である南九州:全年齢)と比較した(図2)。
全国の平均体重53.37kgを使用し,体重あたり 食品群別食物摂取重量を算出した。魚介類はダ イオキシン類摂取に対し,寄与率が高かったも のの,食品群別食物摂取重量は3歳児1,43g,
全年齢1.78gとほぼ同量であった。このため,
日本では一般にダイオキシン類の含有率が高い 食品群であるが,食品群の摂取に関しては,3 歳児の特徴とは考えなかった。次に寄与率が高 かった肉・卵子は,体重あたりの摂取量は全 年齢では2.25gで,3歳児はほぼ倍の摂取量で あった。寄与率が0.92%である乳・乳製品は,
摂取量は3歳児15.50gと全年齢2.39gの約6.5 倍の摂取量があった。乳・乳製品の寄与率は低 いものの,摂取量が多いことによって脂溶性で あるダイオキシン類の含有が変動すれば,ダイ オキシン類の摂取量は大きく影響を受けると考
えられる。そのため,乳・乳製品の摂取量が多 いことを3歳児の特徴とした。
】V.考
察1.ダイオキシン類暴露状況
本研究の対象児のダイオキシン類摂取量の推 計値は0.95PgTEQ/kgbw/dayでわが国のTDI
(耐容一日摂取量)4pgTEQ/kgbw/dayより 低く,最高値2 . 35PgTEQ/kgbw/dayもTDIを 下回った。対象3歳児のダイオキシン類摂取量
は,TDIから考えると,このままの量であれ ば一生とり続けても健康に影響がない量といえ
る。
毎年,厚生労働省が実施しているトータルダ イエットスタディによる調査では,成人の食品 由来ダイオキシン類摂取量は,この7年間に 2.25から1.20pgTEQ/kgbw/dayと,年々,減 少していることがわかっている(図3)7)。
この調査方法であるトータルダイエットスタ ディは,地域の流通,調理方法を反映させたも ので,本研究で用いた0市ダイオキシン類含有 量の値もこれによる。本研究での摂取量の計算
18.00 16.00 14.00
1 2.00 1 o.oo
8.00 6.00 4.00 2.00 0.oo
15.50懸置藝轟
5・35 5.08 5.06
6.09 5.12雛
翻 3.77
@3.47
翻 灘
鼠・一ユ・鷺α馴269
1画一 …
鮭・ 艶・α71
一 恥部騰1ぜ1醗7
論衡
観1駒糊 1糊1壷11
1米・米加工品 3砂糖・菓子2芋・穀類・種子 4油脂 8その他の野菜・茸類・海草7有色野菜6果実5豆類 9嗜好品
12禔E乳製品
11E卵
10實﨤゙
図2 体重あたり食品群別食物摂取重量(g)3歳児,全年齢 13サの他
翻0市3歳児
( n =37)
・O市を含む 地域全年齢
( n =729)
(pgTEQIugbw/day)
2.5
2 FO 1 5
ヨ ハ 体重あたり1日摂取量
0
㍉_ 1.63 1.49 1.33 1.41
r
1.21
Hll H12 H13 H14 H15 H16 Ht7 調査年度
図3 厚生労働省の調査による食品からのダイオキ シン類一日摂取量
方法では,対象3歳児の食事も同地域の成人の 調査とほぼ同様の平目,調理方法と考えること から,成人の食品由来ダイオキシン類例取引が,
年々減少するに伴い,小児の摂取量も同様に減 少していくものと思われる。さらに,ダイオキ シン類の環境中の存在量は水田土壌のダイオキ シン類平均残存濃度が1980年頃をピークに減少 していることが報告されるなど12),わが国の自 然環境中でのダイオキシン類の減少も報告され ている。このため,食物の含有量も増加するこ とはないと予測される。
本研究では厚生労働省が公開している「ダイ オキシン対策について食品からのダイオキシン 類一日摂取量調査」の本調査を実施した同じ年 である平成12年の結果を使用し,3歳児のダイ オキシン類摂取量を推計した。前年,平成11 年度の結果では成人のダイオキシン類摂取量
は,2.25pgTEQ/kgbw/dayであり,わが国の 主食である1群,米・米加工品を1日あたり摂 取する重量にはダイオキシン類が13 . 02pgTEQ と高い含有量を示していた8)。この結果を用い ると,本研究対象3歳児のダイオキシン類一日 摂取量は増加し1.56PgTEQ/kgbw/dayと推計
される。他の地域や翌年平成12年度は,米・米 加工品のダイオキシン類含有量がほとんどO pgTEQ/kgbw/dayであったため,高値であっ
た理由を調査元に問い合わせたが明らかにでき なかった。しかしながら,高山ら11)のトータル ダイエットスタディでの試料を用いた分析に よれば,大人一人が1日で摂取する米・米製 品にはPCDD+PCDFll±15pgTEQ/day,コ
プラナーPCB4.1±3.4pgTEQ/dayの含有があ り,両者の合計であるダイオキシン類含有量は 15.1PgTEQ/dayと高値であった。何らかの理 由で米・米加工品へのダイオキシン類含有の可 能性も否定できないと考えた。そこで,仮に主 食として多く摂取する米・米加工品にダイオキ シン類が含有されていたときの値として平成11 年度の厚生労働省の調査結果を用いて考えて も,本調査対象3歳児のダイオキシン類摂取量 は1.56PgTEQ/kgbw/dayとTDIを下回るこ
ととなった。
よって,本研究の対象3歳児は,通常の食生 活を続けている限り,ダイオキシン類摂取量は TDI(耐容一日摂取量)を超えることはなく,
この摂取量からは健康に影響を与える値とはい
えない。
2.3歳児の食物摂取の特徴
本研究対象3歳児のダイオキシン類摂取量に 影響する食物摂取の特徴として,12群乳・乳製 品の体重あたり摂取重量は15.50g/kgと全年齢 の約6.5倍であることが明らかとなった。
0市3歳児の乳・乳製品の摂取重量が3歳児 として妥当であるか検討するために,他の2地 域(神奈川県S市,東京都M区)ユ3)の3歳児の 食品指揮摂取量を比較した(図4)。12群乳・
乳製品では食品群別摂取量の差は27.9g(0市 205.7g, S市177.8g)であり, S市では乳・
乳製品の摂取量は177.8gと0市のそれよりも 少ないものの,乳・乳製品以外の食品群に比べ れば,はるかに摂取量は多かった。S市3歳児 の体重は15kg(0市14.6kg, M区13.3kg)で,
乳・乳製品の体重あたり摂取重量をみても,2 g程度少ない量ではあったものの,成人の体重 あたり摂取重量2. 49 gと比較しても,摂取量は 多いといえる。3歳児の食物由来ダイオキシン 類暴露に影響する食品摂取の特徴として,乳・
乳製品の摂取重量が多いことが挙げられた。し かしながら,本調査3歳児では,乳・乳製品か
らのダイオキシン類摂取量は,0.12pgTEQで 寄与率は0.92%と低かった。本研究では,平成 12年度の厚生労働省が発表している平成12年度 食品からのダイオキシン類一日摂取量調査等の 調査結果のうちトータルダイエットスタディの
250.0
200.0
αD 15
摂取重量
10
σn
(£
50.0
o,o
1一
麗 1鍵
1瞬1羅
一
一
麟幽r一
三一
一翻:罐一鉗_,
lrl 憾
1細灘
睡麟
「
1馳[
1米・米加工品 2芋・穀類・種子 4由ビロ
、明ノ月
3砂糖・菓子 7有色野菜6果実5豆類 11E卵10實﨤゙9嗜好品8その他の野菜・茸類・海藻
図4 体重あたり食品群別摂取重量3歳児の地域比較
13サの他
惚乳・乳製品
圏沖縄0市
( n ==37)
囲東京M区
(n =27)
□神奈川S市
(n =47)
食品群
調査結果九州地区B8),乳・乳製品0.07pgTEQ を用い,調理前の食材1gあたりの含有量を算 出し用いた。同年の調査結果は乳・乳製品で は東北地区が14.18pgTEQと最高値であった。
本調査で用いた値の中央値に近い北海道地区の 結果6,02pgTEQを用いれば,乳・乳製品から のダイオキシン類摂取量は9.35pgTEQとなり,
ダイオキシン類一日摂取量は22.67pgTEQ,体 重あたり摂取量は1.61PgTEQ/kgbw/dayと大 きく変動することになる。よって,この食品群 の摂取量が多いことがダイオキシン類摂取量に 影響を与えると考えられ,3歳児では,この 乳・乳製品の摂取量が多いことが,ダイオキシ ン類摂取量に影響する食品摂取の特徴であると いえる。さらに,この場合,成人のエネルギー 摂取量と比較して推測したダイオキシン摂取量 2.59pgTEQ/kgbw/dayに近づく値となる。
0市が島嗅地域であることから,魚介類の摂 取量が多い地域性の食生活を疑い,他の地域と 全国の3歳児で食品群別摂取重量との比較を 行った。0市3歳児の魚介類の摂取は25.3g,
M区33.7g, S市31 .5gであった。0市は島嗅 地域にもかかわらず,他の2地域よりも魚介類
の摂取量はむしろ少なかった。従って,本研究 で得られたダイオキシン類摂取量に影響する特 徴を検討するうえでは,寄与率が大きい魚介類 の摂取に関して島嗅である地域性を考慮する必 要はないと考える。
体重あたり食品群別摂取重量は全食品群で 対象3歳児は成人より多いために,各群で体 重あたりエネルギー摂取量も多くなっている
と考えられる。その中でも一般にダイオキシン 類含有量が多いといわれている魚介類は,0市 地域でも41。09pgTEQ(調理後)と,一般と同 様で他の食品群よりも圧倒的に多い。仮に,魚 介類の体重あたり摂取量が,他の食品群同様の 割合で成人より多くなれば,エネルギー摂取 量の比率から予測したダイオキシン類摂取量,
2.82PgTEQ/kgbw/dayの近似値になるとも考 えられる。しかしながら,魚介類の摂取量が成 人とほぼ同量であるため,0市3歳児ではダイ オキシン類摂取量はエネルギー摂取量から予測 した値より低い結果となっているとも考えられ
た。
V,まとめと今後の課題
本研究では0市を対象に3歳児のダイオキシ ン類摂取量は0.95±9.05回目TEQ/kgbw/dayと 推計し,TDIより低く,このままの値であれ ば生涯とり続けても,健康に影響がない値であ ることが明らかになった。また,食品摂取の特 徴として,成人同様にダイオキシン類含有量の 高い魚介類による寄与率は高かった。3歳とい う乳幼児期における特徴として,ダイオキシン 類の含有が比較的少ない乳・乳製品の摂取量が 多いことが,体重あたりのエネルギー摂取量が 成人に比較して多いにもかかわらずダイオキシ ン類摂取量が成人とほぼ変らない要因であるこ とが明らかにできた。
以下に,本研究の限界と展望を述べる。
1.対象者が健康診査の会場で調査協力が得ら れた37名であることから,結果に偏りがある 可能性は否めない。しかし,本研究では,小 児の実際の食事を反映させた分析方法を開発 することで,今までの対象者が数人のみの報 告やモデル献立を試料とした定量分析による 報告の限界を超え,小児の食事の現状を反映 しダイオキシン類摂取量を推計し,暴露に影 号する食物摂取の特徴を明らかにすることが できた。よって,本研究で得られた結果は比 較的一般性が高く,現実に即したものになつ たと考える。
2.暴露に影響を与える要因として食品の摂取 状況に絞っていることから,食物由来の暴露 要因全体を検討するには至らなかったことで ある。今後,食物由来の暴露状況を検討する 際には,献立,調理方法,食品の流通,食事 摂取に影響する保護者の意識などの要因を加 物し,かつ,今回要因として明らかになった 食品摂取状況を捉えることが可能な多角的研 究デザインにより,3歳児における食品由来 の暴露状況をトータルに把握していくことが 重要である。
3.既存の調査結果を基に地域の食品群のダイ オキシン類含有量の標準値を設定しているこ とから,ダイオキシン類摂取の推計方法の精 度が十分に確保されていないという点であ る。また,食品摂取の特徴を検討する際に使
回した国民栄養調査は公表された集計結果の 形でしか利用できなかったため,摂取重量な どに誤差があることは否めない。しかし,小 児の数十入単位という地域集団の食品由来の 暴露状況の報告はされていないことから,食 品摂取の特徴,暴露状況は適切に評価できた と考える。今後標準値を適切なものにする ため,ダイオキシン類の自然環境中の挙動や 食品含有量に関する他分野での研究に期待し つつ,本研究で使用した資料の妥当性も検討 していく必要がある。同時に,小児の成長,
発達の特殊性からも,現時点での暴露量によ る健康影響を評価する必要がある。
今後さらに小児における食品由来のダイオ キシン類暴露状況が明らかにされるとともに,
本研究での調査分析方法を使用し,他の化学物 質についても同様に,小児の特徴を考慮した食 物由来の暴露状況が明らかにされ,小児の安全 な食環境が作られていくことを期待する。
謝 辞
本研究にご協力いただいた0市3歳児の保護者の 皆様,母子保健推進員,保健師仲宗根真知子様,沖 縄県コザ保健所(現沖縄県中央保健所)の栄養士は じめ,職員の皆様,栄養士東予西徳子様と上原りつ 子様に心より感謝します。また,ご指導いただいた 旧国立公衆衛生院(現国立保健医療科学院),佐藤加 代子先生,諸先生方に深謝致します。
なお,本研究は国立公衆衛生院特別演習報告書を 加筆修正したものです(環境省 未来環境創造型 基礎研究推進制度:研究代表者 関澤 純によって
行われました)。
文 献
1) Terri damstra, Sue Barlow, Aake Bergman,
et a1.小林 剛,訳WHO環境ホルモンアセス メント,エヌ・ティー・エス,2004:194-207,
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