アスコルビン酸リン酸エステルを用いたテトラゾリウム塩還元法による ホスファターゼ活性測定
塚谷 忠之
*1井手 誠二
*1小野 昌志
*1松本 清
*2New Tetrazolium Method for Phosphatase Assay Using Ascorbic Acid 2-Phosphate as a Substrate
Tadayuki Tsukatani, Seiji Ide, Masashi Ono and Kiyoshi Matsumoto
アスコルビン酸リン酸(AsA-P)を利用したアルカリホスファターゼ(ALP)及び酸性ホスファターゼ(ACP)の活性染 色法を開発した。テトラゾリウム塩としてNBTを用い,AsA-P/NBT系においてALP活性を,また,フェナジンメトサ ルフェート(PMS)を共存させたAsA-P/PMS/NBT系でACP活性を選択的かつ定量的に検出することが可能になった。
ALP活性染色法は牛乳中のアレルゲンであるβ-ラクトグロブリンのドットブロット分析へ応用され,従来法である BCIP/NBT法に比べて感度及び安定性の面で優れていることがわかった。
3 結果及び考察 1 はじめに
3-1 ALP活性 骨芽細胞のマーカー酵素であるアルカリホスファタ
ーゼ(ALP)と破骨細胞のマーカー酵素である酸性ホス ファターゼ(ACP)の活性は,骨代謝のバランスを把握 する上で重要な指標である。また,ALPは酵素免疫法 に利用される最も一般的な酵素であり,タンパク質や DNAを検出する各種ブロッティング法の検出酵素とし ても広く用いられている。そこで,安定型ビタミンC として知られているアスコルビン酸リン酸(AsA-P)を 基質として利用したALP及びACP活性染色法を開発した。
ALP活性測定におけるAsA-Pの有効性を検討するため、
AsA-Pと既存の基質であるBCIPの比較を行った(図1)。
ALP存在下で基質濃度0.04~7.0mMの濃度範囲でNBTの 還元速度の比較を行ったところ,AsA-Pにおいては濃 度の増加にしたがって還元応速度も増加した。しかし,
0.04mMでは反応はほとんど進まなかった。一方,BCIP はAsA-Pに比べて,低濃度0.04mMから高い還元速度が 見られたが,0.7mM以上では逆に低下傾向が見られた。
Km値は,AsA-P=0.23mM,BCIP=0.02mMであり,BCIPの ほうが基質親和性に優れていた。しかし,特に0.7mM 以 上 で は , AsA-P で 最 終 的 に 得 ら れ る 吸 光 度 ( 発 色 度)はBCIPの約2倍であった。この結果から, AsA-P は BCIPよ り 酵 素 反 応 が 遅 い が , 生 成 し た 加 水 分 解 物
(アスコルビン酸)とNBTの反応効率がBCIPより高い ものと考えられる。
2 研究,実験方法 2-1 ALP活性測定
ALP活性はテトラゾリウム塩としてニトロブルーテ ト ラ ゾ リ ウ ム 塩 (NBT) を 用 い , 0.45mMNBT 及 び 0.7mMAsA-Pを含む0.1MCAPSO緩衝液(pH10.0)で測定を 行った。
以上の結果から,AsA-P はALPによる加水分解速度 ではBCIP に劣るが, NBTの還元反応を含むトータル の反応ではBCIPより有利であると考えられる。
2-2 ACP 活性測定
ACP活性は0.45mMNBT,7.0mMAsA-P及び0.18mMPMSを 含む0.1M酒石酸緩衝液(pH4.5)で測定を行った。
3-2 ACP活性 2-3 β-ラクトグロブリンのドットブロット分析
酸 性 条 件 下 に お い て , ALP 活 性 測 定 で 用 い た AsA- P/NBT系を適用したが,NBTの還元がほとんどみられな かった。そこで,AsA-P/NBT系に対して電子アクセプ ター(電子供与体)として働くPMSの適用を試みた。
その結果,PMS濃度の増加と共にNBT還元速度は急激に 増加した(図2)。ACP活性測定ではAsA-P/PMS/NBT系が 効果的に働くことが明らかとなった。
β-ラクトグロブリン用ウエスタンブロットキット
(森永生科学研究所)及びVECTASTAIN
®ABC systemの 手順に従って測定を行った。
*1 化学繊維研究所
*2 九州大学
3-3 ドットブロット分析
0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7
0 5 10 15 20
Time (min)
Absorbance change (530 nm
ニトロセルロース膜へ種々の濃度のALP及びACPを吸 着させ,上述の測定系において検出を行ったところ,
ALP量あるいはACP量と染色度(発色度)の間に直線関 係が認められ,ALP活性及びACP活性を選択的に検出す ることが可能になった。
さらに,ALP活性染色法はβ-ラクトグロブリンのド ットブロット分析へ応用され,従来法のBCIP/NBT系に 比べて感度の面で優れていることがわかった(図3)。
4 まとめ
図2 ACP活性測定におけるPMS濃度の検討 本法は,既存の基質であるBCIP法と比較して感度の
みならず安全性や経済性にも優れた手法であり,様々 なバイオアッセイに適用可能であると考えられる。
PMS concentration (
μM): 0, ; 9, ; 27, z; 45,
{; 90, S; 180, U.(A)
0 0.1 0.2 0.3 0.4
0 1 2 3 4 5
Time (min)
Absorbance change (530 nm
(A) BCIP/NB
0.5 1.0 2.5 5.0 10.0 25.0 ng (B) AsA-P/NBT
0.5 1.0 2.5 5.0 10.0 25.0 ng (B)
0 0.1 0.2 0.3 0.4
0 1 2 3 4 5
Time (min)
Absorbance change (530 nm