波束
波束は持続時間が有限な波である。たとえば、
u(t) = {
e
iω0t( − a < t < a) 0 (otherwise)
は時間
2a
の間だけ周波数ω 0で振動する波束であり、
u(t) = a π
∫ ∞
−∞
sinc[a(ω − ω 0 )] e
iωtdω = a π
∫ ∞
−∞
sinc(a∆ω) e
i(ω0+∆ω)t d∆ω
ともあらわせるが
1
、これは、周波数ω 0を中心として1/a
程度に広がるたくさんの周波数成分の重ね合わ
せになっている。このように、波束は周波数を完全に一つには決めることができず、いろいろな周波数の
単色波成分の重ね合わせとしてあらわされる。
周波数が異なる波の位相がそろっていると強め合って全体として大きな振動になるが、時間が経つと位 相がずれて全体の振幅が小さくなる。位相のずれの速さは周波数の差で決まるから、周波数の広がりと振 動の持続時間は反比例の関係にある。
波束のフーリエ展開
時間の関数
f (t)
は次のようなFourier
展開であらわせる。f (t) =
∫ ∞
−∞
G(t, ω)f (ω)dω
(
G(t, ω) = exp(iωt)
√ 2π )
(1)
周波数の関数
f (ω)
はf (t)
から次のように得られる。f (ω) =
∫ ∞
−∞
G ∗ (ω, t)f (t)dt
(
G ∗ (ω, t) = G(t, ω) = exp( − iωt)
√ 2π )
(2)
f (t)
が波束(持続時間が有限な波)
をあらわす場合、その時間幅∆t
は確率的変数の標準偏差のように(∆t) 2 =
∫ ∞
−∞
(t − h t i ) 2 P (t)dt
h t i =
∫ ∞
−∞
t P (t)dt, P (t) = ∫ ∞ | f (t) | 2
−∞ | f (t) | 2 dt
(3)
で定義される。周波数幅
∆ω
も同様。これらの間には次の関係がある。∆t ∆ω = 1
2 (4)
これは
Schwarz
の不等式∫
| φ(x) | 2 dx ∫
| ψ(x) | 2 dx = ¯¯ ¯ ∫
φ(x)ψ(x)dx ¯¯ ¯ 2 から得られるが、交換関係
ˆ
ω ˆ t − t ˆ ω ˆ = − i (5)
から出て来る不確定性関係として解釈することもできる。ここで、時間の関数に対するエルミート演算子
ˆ
ω
とt ˆ
はω[f(t)] = ˆ − i dt d f (t)
とˆ t [f (t)] = tf (t)
で定義される。ˆω
の固有関数の系は、上のFourier
展開の 核、G(t, ω)である。これは∫ ∞
−∞
G ∗ (ω 0 , t) G(t, ω)dt = δ(ω 0 − ω) (6)
という意味で規格化直交系である(δ(x)
はDirac
のデルタ関数)。1
sincx = sin x/x
波束の群速度
周波数
ω
の単色波が入口から入って出口に出て来るとき、入口と出口の間で位相が− φ(ω)
だけずれると する。周波数によって波長が異なるので位相のずれも異なる。波束の場合は一旦周波数成分に展開し、成 分毎に位相のずれを与えて再び合成すれば、出口に現れる波の形がわかるだろう。ある周波数
ω 0のまわりに少しだけ広がったスペクトルを持つ波束を考える。ω0
からのずれδω
で周波数
をあらわし、δωの2次以上のベキを無視してφ(ω) ∼ = φ(ω 0 ) + dφ dω δω
とする。入力波は次のように書ける。
f IN (t) = exp(iω 0 t) p(t)
(
p(t) = 1
√ 2π
∫ ∞
−∞
exp(iδω t)f (ω 0 + δω)dδω )
(7)
出力波は位相をずらすために
f(ω)
にexp[ − iφ(ω)]
を掛けてから時間の関数に変換すると得られる。f OUT (t) = exp[ iω 0 t − iφ(ω 0 ) ] p(t − τ)
( τ = dφ
dω )
(8)
両式とも、積分の外に出ている速い振動の因子
(搬送波)
を積分であらわされる遅い変化(信号)
で変調した 形になっている。上式より、出力信号は入力信号と同じ形だが時間τ = dφ/dω
だけ遅れて現れることがわ かる。これを「群遅延時間」という。dφ/dω
が周波数によって異なる場合は、∆ωの2
次以上のベキのために信号の形が変わってしまうことに注意する必要がある。しかし、波束の成分の周波数範囲でのみ一定であれば信号の形は変わらない。
波束の瞬間的振幅は周波数成分の位相のそろい方で決まり、位相がそろうと振幅が極大になるが、周波 数によって異なる速さで位相が変化するので、時間が経てば位相がずれて振幅がゼロになる。また、周波 数によって波長が異なるので、ある時刻に位相が一致しているのはある場所に限られる。したがってこの 振幅極大の位置は空間中を時間と共に移動する。
入口から見て出口の方を向いている単位ベクトルを
n、入口と出口の間の距離を l
とすると、φ = (k · n)l.
したがって、この向きへの波束の移動速度
v G は
v G = dω
d(k · n) (9)
これを「群速度」という。位相速度