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大学に於ける児童を対象とした「子ども公開講座英 会話で遊ぶ」の実践と今後の課題

著者 酒井 藤恵

雑誌名 東京家政大学研究紀要 1 人文社会科学

巻 48

ページ 179‑186

発行年 2008

出版者 東京家政大学

URL http://id.nii.ac.jp/1653/00009253/

(2)

大学に於ける児童を対象とした「子ども公開講座       英会話で遊ぶ」の実践と今後の課題

   酒井藤恵

(平成19年10月4日受理)

AReport on the English Extension Course for Children and     Some Suggestions for Improving English Activities

   SAKAI, Fujie

(Received on October 4,2007)

キーワード:地域連携,英語活動,総合的な学習の時間,ウォーム・アップ,クラフト

Key words:co]laboration with community, English activities, Period for Integrated study, warm−up, craft

0.はじめに

 大学の果たすべき使命の1っに,地域社会への貢献が あげられる.昨今,多くの大学で積極的な地域連携事業 が進められており,殊に国立大学では法人化以降,地域 との連携事業に対する予算的支援の充実も図られている.

「閉ざされた大学」から,地域との交流や人材育成など に取り組む大学に期待が寄せられている.

 このような現状に即応し,東京家政大学狭山校舎には 2005年4月に「地域連携協力推進センター」が設置され,

本学と地域社会との連携事業や地域住民との交流事業が 始動した.また,生涯学習関連事業として,大学施設の 外部開放などにも積極的な取り組みが行われるようになっ てきた.そのような取り組みの一っに市内の小学校の

「英語活動」を支援するために文学部英語英文学科の学 生をボランティアとして派遣する活動がある.このよう に,大学近隣の小学校とは,すでに「英語活動」を通し て,種々の交流が行われており,表題に掲げた「子ども 公開講座 英会話で遊ぶ」(以下,「英会話講座」)は,す でに行われているボランティア学生派遣事業と連動する 取り組みと位置づけることができる.したがって,2006 年秋に行われた地域連携協力推進センター主催の「英 会話講座」には,筆者を含めた英語英文学科の講師・非 常勤講師,及び外部の講師が有機的にかかわることによっ て実現されることとなった.大学近隣の狭山市・入間市

の小学生を対象として,本学狭山校舎にて小学生に英語 を教えるという試みは始めてのことである.本稿では,

「英会話講座」の実践例を報告するとともに,当該講座 の実施を通し得ることのできた知見について検討するこ とにする.

 小論は,次のように構成されている.第1節では,

「英会話講座」への参加児童が通う狭山・入間両市の小 学校における英語の教育について概略述べる.第2節で は,「英会話講座」の概要を述べ,第3節では,筆者の

「英会話講座」の指導実践報告を行い,この指導実践を 通して明らかになった小学校における「英語活動」のい くっかの問題点を指摘する.また,今後,小学校と本学 の交流事業の質を高めていくための方法や方向性などに ついて私見を述べることにする.

英語英文学科

1.狭山市・入間市の小学校における英語の教育  「英会話講座」は大学近隣の狭山市・入間市の小学生 を対象としたが,両市の公立小学校で展開されている

「英語活動」には,幾つかの異なる特徴が見られる.

 周知の通り2002年度より「総合的な学習の時間」の 枠組みで「国際理解教育」の一環として「英語活動」を 取り入れることが可能となった.しかし狭d」市は2003 年に「外国語早期教育推進特区」に認定されたことによ り「国際理解教育」としての「英語活動」の枠組みを超 えて「教科」として英語を教えることができるようになっ たD.初年度は市内17小学校のうち,7校で先進的に

(3)

酒井 藤恵

英語の授業が開始され,翌2004年からは全小学校で実 施されている.指導者は学級担任とALT,或いは学級 担任と英語活動支援員の二者がティーム・ティーチングの 形をとっている.教材は教育委員会,小学校の英語担当 者代表,また児童英語の専門家等が協力し「英語活動指      2)

導資料集」

      (以下「資料集」)を作成し,全市内の小 学校で用いている.

 一方,入間市は「特区」には認定されていないが,現 在,市内16校の小学校の全てで,「国際理解教育」の一 環としての「英語活動」が実施されている.指導者は,

学級担任と市内の中学校に派遣されているALT,或い は教育委員会が雇用したALTであり,ティーム・ティー チングによる「英語活動」を実践している.教材につい ては,狭山市の「資料集」等を参考に,入間市が独自に 作成したものを市内で共通に用いている3).年間授業 回数には学校間で隔たりがある.

2.「英会話講座」について 2,/ 概要・目的

 「英会話講座」は,本学近隣の狭山市・入間市の小学 3年生から6年生の児童を対象に開講された.児童の募 集は,各小学校へ文書による通知と,本学,及び狭山市 教育委員会生涯学習部社会教育課のホームページ等で広 報を行った.

 講座は2006年9月30日から10月21日までの毎週土 曜日に開講し,1時間目は10時〜10時55分,2時間目 は11時〜11時55分までを,5名の講師が交代で担当し

た.

 定員は当初20名であったが27名を受け入れた.

 上記ホームページには,「ネイティブ・スピーカーと 英語教育の専門家による英語活動.英語を楽しみながら 自然に学ぶ」とうたわれているが,これは英語初学者で ある児童が,初めて出会う英語母語話者や他の小学校の 児童と,片言の英語で楽しくやり取りできるようになる ことを,本講座の目的としているからである.また「英 会話講座」は地域連携協力推進センター主催の他の公開 講座同様,地域住民のサポートを通して大学が地域に貢 献し,地域と本学との連携を深めることも目的の1っと

している.

 現在,全国の小学校で多種多様な「英語活動」が行わ れているが,その実態や,児童が習得していると考えら れる知識にはどのようなものが含まれているのかなど,

それらを検討すべき基礎的なデータすら存在していない.

これが現在の小学校における「英語活動」を取り巻く実 態であろう.そのような現状にあって,2つの自治体と は言え,そこで展開されている「英語活動」について

(部分的ではあるにせよ)児童を通して知ることができ たのは,今後行うべき「英語活動」に関する基礎デー一一夕 の構築という点からも有意義な機会となったの.

2.2 参加児童・指導者について

 参加児童は,近隣の小学校に通う3〜6学年の児童 27名で,狭山市立の4っの小学校から8名,入間市立の 10っの小学校から19名であった.クラス編成は,3年 生11名を1っのクラスに,4年生11名を1っのクラスに,

5・6年生計5名を1っのクラスにした.

 講師は,本学の専任,非常勤,及び外部講師の5名で,

そのうち英語母語話者の男性講師が3名と,筆者を含む 日本人女性講師が2名であった.

 児童は小学校とは異なる環境で,異なるメンバーと新 しい言語を用いて活動や意思疎通を図らなければならず,

緊張を伴うと考えられる.講師は普段接している大学生 よりも,はるかに低年齢の児童を受け持っので,彼らの 心理状態に細心の注意を払い,丁寧な声かけや,理解度 のチェック,わかりやすい提示方法の工夫などに努める 必要があった.

3.筆者の「英会話講座」の指導内容について 3.1 教材に関する留意点

 第1節で述べたように,狭山・入間両市においては各 市内で共通の「資料集」を用いることによって学校間の

「英語活動」に大きな差が生じないよう配慮されていた.

だが実際には同一市内であっても,学校間で「英語活動」

の取り組み状況には差異が見出された.まず,学校間で 顕著に見られた差異として,「英語活動」の実施回数を 挙げることができる.例えば入間市では2007年度1学 期の1学級における「英語活動」の実施回数は,ある小 学校では10回であったのに対して,別の小学校では4 回であった.この回数の差異から考えると「資料集」記 載の言語活動を概ね実施できる学校と,活動を消化する のが困難な学校があると推測せざるを得ない.時間数に 余裕のある学校では「資料集」以外の歌やチャンッ,ス

トーリー・ブックなどを活用している可能性がある.

 学校間の差異の問題とは別に,もう一っ考慮しなけれ

(4)

ばならない問題として,同一校における学年間の差異,

すなわち,学年と英語習熟度の間に有意な相関関係を見 出すことができないため,本講座でも学年毎に教材の難 易度をっけるか否かという問題が生じた.現時点では,

個々の小学校での「英語活動」の実態に関する基礎デー タが構築されていないので,本来なら,学年毎の熟達度 の違いを反映した教材の使用が望ましいが,今回の試み では,数種類の異なる言語活動を準備し,授業開始後,

個々の児童の理解度,運用能力等を勘案し,教材の提示 方法に難易度をっけていくことで調整することにした.

 今回は,初の試みということもあり,講座開始までの 時間的制約の中で,学校間,学年間の英語習熟度の差異 の有無を事前に測定することはできなかった.そのため 筆者の本講座のシラバスでは,挨拶やウオーム・アップ 活動は別として,小学校での「英語活動」に一般によく 用いられる教材の使用をあえて避けることによって,児 童間の言語経験の差異から生じると思われる問題の回避 に努めた,ゆえに導入期に通例用いられる活動や教材と は趣きの異なる,筆者のオリジナルの教材を用意するこ とで,新鮮な活動の提示を目指した.

 今後,このような講座を開講する場合,以下のような 項目にっいて予め調査をすることが極めて重要になると 考えられる.

(1)「英語活動」の実施の有無

(2)「英語活動」の年間実施回数

(3)「英語活動」の週あたりの頻度

(4)言語項目(例えば,be動詞,一般動詞,疑問詞を用  いた疑問文等)の調査

(5)テキストの有無(狭LLI・入間市のように自治体の用意  した指導資料集を用いているか否か,用いている場合  は,どこまで忠実に教えているか)

(6)マザーグースなどの詩や歌の提示の有無

(7)発音指導の方法

(8)文字導入の有無

学校間の差異の問題を把握するために,アンケート項目 をよく吟味して実施し,全国レベルで「英語活動」の実 態を把握していく必要があろう.

 本講座の指導内容に関しては,今後は,学年に応じた 教材・活動を提示するのが望ましいが,学年に適した難 易度を設定するには,それに先立っ上述したようなアン

ケート項目を含む調査の実施をし,小学校における「英 語活動」実態に関する基礎データの構築をしなければな

らない.

3.2 具体的指導実践

 次に筆者の本講座での指導実践を紹介する.指導内容 を考える際に,筆者が留意した点は,11名,あるいは 5名,という少人数のクラスサイズのメリットを十分生 かすということである.現在の小学校の平均的なクラス サイズは40名程度であり,「英語活動」はクラス毎か,

クラスを半分に分けた20名程度で行われることがある.

本講座はそれよりもさらに少ない人数なので,児童一人 一人に目が届くと思われる.その利点を生かしたいと考

えた.

(i)挨拶

 「英語活動」では,授業開始時の挨拶を英語で行うの が常である.以下のような質問を適宜用いて,児童一人 一人の顔をよく見っめながら問いかけた.

(1)Hi, nice to meet you. Welcome to this English   claSS,

 Iam Fujie Sakai. How are you?

 rm very hapPy to meet you. WhaVs your name?

児童の小学校名が書いてある名簿を見ながら話しかける.

(2)You are from OOelementary school, right?

話しかけた児童と1司じ小学校の出身者を選んで質問する.

(3)You are from OOelementary school, too.

  Then, you are from the same eユementary   school,

別の児童にも発問する.

(4)Which elementary school do you go to?

  What is the name of your elementary school?

  Oh, are you from the same elementary school?

  Are you friends? Are you classmates?

  Are you in a club?What kind of club are you   in?

(u)ウオーム・アップ

 中学校の英語の授業では,本時のレッスンに入る前の 準備段階の活動として,歌を歌ったり,単語を用いたビ ンゴゲームをする等,楽しく取り組める活動を行う場合 が多い.しかし,「英語活動」では授業全体を通して歌 やゲームが多用されるので,ウォーム・アップの連続の ような授業風景も見られる.また,授業開始後にウォー ム・アップを位置づける,という意識が指導者にない場

(5)

酒井 藤恵

合,ウォーム・アップ的な活動を連続して取り入れてい るだけの場合もある.

 筆者は児童にとって既習と思われる数え歌や,身振り 歌をウォーム・アップとして導入した.小学校では,歌 が苦手な児童や,消極的な児童は,歌などの活動のとき,

参加しないままで時間が過ぎてしまう場合もあろう5).

筆者のクラスでは,大きな声で歌いたがらない児童に対 しても,活動になるべく引き込んでいくような働きかけ を継続して行った.

 本クラスでは,多くの英語活動の現場で導入されてい る数え歌One, Two, Three, Four, Five, Six, Seven.

と,身振り歌Head, Shoulder, Knees, and Toes.を用 いた.歌を用いた活動へ誘うたあに,次のような問いか けをした.

(1) Do you know some English songs?

  How many English songs do you know?

  How about this? It s a counting song.

次に手本として歌を歌った,

(2)歌:One, two, three, four, five, six, seven.

    Orle, two, three, four, five, six, sever1.

    One, two, three, one, two, three,

    One, two, three, four, five, six, seven.

全員がこの歌を知っていたので,すぐに歌わせた,

 2,3回歌わせた後,threeとsevenのところで拍子 を取るために拍手をさせた.この拍手にも慣れたら,

sevenから逆に歌うことを,次のような表現を用いて提 案し,その手本を見せた.

(3) How about from the opposite direction?

  Can you sing f1・oM seven, then six, and five?

  Can you try?  1,11 try.

(4)歌:Seven, six, five, four, three, two, one.

    Seven, six, five, four, three, two, one.

    Seven six five, seven six five,

    Seven six five four three two one.

児童は大きな数字から逆に歌うことに初めはとまどって いたが,数回で除々に歌えるようになった.Sevenから 数えていく場合は,拍子が取りやすいfiveとoneのとこ ろで拍手をさせた.

 通常の英語活動であれば,時間的制約もあろうが,本 クラスでは,逆から歌わせる試みも,ゆとりを持って楽

しみながら実行できた.

 もう一っ,英語活動として全国的に馴染みのある

Head, Shoulders, Knees and Toes.を取り入れた.

「資料集」にも記載されているが,知らない児童のため にデモンストレーションを行った.先に紹介した活動の 場合と同様に,次のような問いかけをした後,身振りを っけて歌い始めた.

(5) Maybe, you are all familiar with this action song・

Head, Shoulders, Knees and Toes.

This is good for warming up.

1 ll show you an examLple first.

(6) 歌:Head, shoulders, knees and toes, knees and     toes.

    Head, shoulders, knees and toes, knees and     toes

    And eyes and ears and mouth and nose,

    Head, shoulders, knees and toes, knees and     toes.

児童にも身振りをっけて歌うように促し,2回ほど振り っきで歌わせた.次に歌詞を順番に1語ずっ歌わずに,

その単語の時は身振りだけをっけさせた.

(7)Now next time, we leave out the word Head   but still do the actions.

まず,筆者がHeadの部分を言わないで, Shouldersか ら歌い,途中も,Headが出てきたところは,全て無言 で身振りだけでやってみせる。

 次には,2語,すなわち,HeadとShouldersの部分 を言わずに動作だけ,その次は,3語,と徐々に発音し ない体の部分を増やしていき,身振りはそのまま行わせ る.具体的には次のような指示を出した.

(8) Next, leave out the words, Head, Shoulders   And, next let s leave out the words, Head,

  Shoulders, knees.

  Next let s leave out the words,  Head,

  Shoulders, knees, and toes.

  Finally we don t sing any words, only the ac−

  tions.

この身振り歌は多くの小学校で用いられており,受講児 童も全員が経験していたが,身体部分の単語を徐々に歌 わないようにする活動は小学校では行われていないよう であった.この歌は英語圏の国でも幼児教育の場面で多 く用いられるものの1つであるが,その活用方法は,身

(6)

振りをつけて歌詞通りに歌うだけではなく,本クラスで 行ったように,徐々に発音する身体部分の語彙を減らし ながら歌われることが多い.これは発音すべき身体部分 の名称の数を徐々に減らしていくことによって,発音さ せる語彙を際立たせ,従って,その語彙の習得を促すと いう学習上の効果があるからである.このような観点か ら本クラスでも語彙を除々に減らして歌う活動を取り入 れた.この身振り歌はあまりにも有名なことから,大半 の小学校で用いられているものの,本来の学習上の意味 が十分認識されることなく,広く受け入れられているよ うである.実際,2自治体の「資料集」では,この歌が 紹介されてはいるが,学習.ヒの効果を上げるための工夫 等については記述がない.従って,「資料集」等で提示

されている活動・教材を精査し,その学習上の意義,あ るいは学習上の効果を高あるための工夫等の記述を加え ていくことによって,小学校においてより質の高い「英 語活動」を実現することが期待できるのではないだろう

か6).

(iii)ビッグ。ブック

 ビッグ・ブックとは大型絵本のことである.子どもに 大きな絵を示しながら読み聞か誉ることができるため,

児童英語教室や英語活動などでよく用いられる教材の一 っである.絵本は次の頁をめくる時の絵や内容に対する 期待感や,ストーリーに楽しみを感じながら読むという 要素があるため,児童が見慣れた作品を提示するのは避

けたいと考えた.しかし,彼らがどの本に接したことが あるのかを事前に把握することはできなかったため,教 室にはNo, David. Broωn Bear, Broωn Beαr,陥α亡

Z)oYou See?AColor ofHis Oωnの3冊を用意し た.ビッグ・ブックの提示法の詳細にっいては稿を改め て紹介したい.

(iv)色と形

 本クラスの1時間分の授業の中心テーマを「色」col−

orsと「形」shapesにした.色や形の名称提示は英語活 動では定番のものであり,参加児童にとっては既習事項 と思われたので,応用として,色と形をテーマにしたク ラフト(工作)を取り入れることにした.

 クラフトは,児童英語教育にしばしば用いられる.児 童は材料(色紙,厚紙等)や道具(鋏,糊等)を与えられ,

指導者の英語の指示に従って作品を完成させていく.

クラフトが効果的である理由としては,児童は作品を完 成させるために,指導者の英語指示文を傾聴し,理解し た内容を工作の手順に反映することで,リスニングカを 育成できる.聞き取った内容を直接自分の行動に結びっ けるので,より一層の理解が増すからである.

 リスニング力育成の活動には,学級担任とALTとの 会話の聞き取りや,全身反応法7)等,様々なものがあ るが,クラフトの利点の一っに,児童が教師の英語の指 示を聞き取れなかった場合,次の工作に進めることがで きないため,℃ould you say that again? や,℃arl you explain about this part? と言った助言要請(ap−

peal for assistance)のコミュニケーション・ストラテ ジーを自然と身にっけさせることができることである.

 また,児童の助言要請に対して指導者は,音声だけで 回答するのではなく,具体的な対象物である工作品を手 に取り,実際に作り方等を示すことで,英文の内容と行 動を一致させることができ,児童により深い発話の理解 を促すことができるのである.

 クラフトの内容によっては「総合的な学習」の視点も 包含できる.工作の種類により,理科的実験の要素や,

数学的要素を取り入れることができるからである.何よ りもクラフトは児童にとって作品が出来上がるという達 成感を味合うことができる心躍る活動である.

 クラフトは児童英語教育に特有の指導法の一っという よりは,元来はイマージョン・プログラム8)の中で,

数学や地理等の教科の一っとして位置づけられているも のであると考えられる.

 本クラスでは,色と形を提示するために,事前に次の 準備をした.

 黒板用カラーマグネットを丸,三角,四角,五角,六 角,七角,八角,長方形,楕円形等に切り取っておく.

授業では,形に切り取ったカラーマグネットを1っ1っ 黒板に貼りっけながら,児童に,次に示す問いかけをす ることで,種々の図形の名称を確認していった(以下の 発話には,児童のものも含まれている).

(1)What shape is this?

  A circle.

  Yes, iVs a circle.「丸」(必要があれば,日本語に   する)

以下,同様に形を確認していく.クラスの習熟度に応じ て,形だけでなく,色に関しても,質問を取り混ぜる.

(2)What shape is this?

(7)

酒井 藤恵、

  Atriangle 「三角」

  What color is it?

  It s blue.

以下,同様に色と形を提示する.

(3)Asquare「四角」An oval「卵形,又は,楕Fq形」

Arectangle「長方形」

Ahexagon 「六角形」

An octagon r八角形」

 Apentagon「五角形」

 Aheptagon「七角形」

Yellow, green, red, etc.

基本的な形,色が答えられたら,以下の英文や質問を追 加する.

(4) An octagon has 8 corners.

  Letls count the corners.

  Let s count how many corners does it have?

  Ashape which has six corners is a hexagon.

  Ashape which has eight corners is an octagon.

  HOw many triangles Can yOU See?

 次に,筆者が考案した理科的実験の要素を取り入れた クラフトの指導実践を紹介する.異なる色のセロファン を用いた虫眼鏡9)を作成させ,セロファンの色の部分 を重ねて得られた色を楽しむ実験的なクラフトである.

 授業前に,以下の準備品を用意しておく.

1)図1のように,厚紙を2つに折り,2枚重ねたまま,

  山折りの部分の一部を切らないようにして,丸,三   角,四角の虫眼鏡のような形を切り取る,虫眼鏡の   持ち手になるよう,棒状の部分を残して切る.

切ソ取る

図1

2)次に,下図2のように真ん中を切り取り,ちょうど,

  虫眼鏡のフレームになるようにする.

図2

vn)gaる

3)カラーセロファンを用意する.カラーセロファンは,

 赤,青,黄,緑を揃え,1)で作成した,丸,三角,

  四角の虫眼鏡のフレームの大きさに合うように,の   りしろ部分を確保して,セロファンをだいたい四角   く切っておく.

       閣・・て

∠コ1コー一→

  也VフPン

図3

のソゲ

○ ○

 ここまでが事前準備である,これから先の,フレーム の間にセロファンを挟んで糊づけし,虫眼鏡を完成させ る工程を児童自身に行わせる.

以下が実際に工作をさせる際の発話例である.

 見本として,3つの形のフレーム,4色のセロファン,

そして,完成品としての虫眼鏡も数種類作っておく.例 えば,丸いフレームに青いセロファンの虫眼鏡,四角い フレームに黄色いセロファンの虫眼鏡等である.

(5.) 1 mascientist. Let「s do an experiment today.

完成したセロファンの虫眼鏡を児童に見せる.

(6)Look at this. This is 「虫眼鏡」

  This is a magnifier.

  It「s a cellophane magnifying gユass, 「セロファ   ンを使った虫眼鏡ですね.」

  Let,s make a magnifier today.

次にピースに切ったセロファンを色別に提示する.

(7) This is not just a piece of paper.

  This is cellophane.

  Cellophane enables you to see through it.「向   こうが見えますね.」(動作をしながら)

  These are cellophane pieces of paper.

  This is red.  This is blue.

  This is yellow. This is green,

  You will make a magnifier with red, bユue, ye1−

  low, or green.

3種類の形をした虫眼鏡のフレームを順に見せる.

(8) Look at this. This is a frame.

  Aframe fOr「虫眼鏡」.

  Ihave three kinds of frames;acircle, a trian−

  gle, Or a SqUare.

(8)

  You will choose two frames.

  Which do you prefer, a circle frame, a triangle   frame, or a square frame?

  Pユease tell me, for example, I want a circle   frame and a triarユgle frame, or I want a tri−

  angle frame and square frame, or I want two   triangle frames.「

次に4色のセロファンを見せて,2色を選ばせる。

(9) Ihave four colors;red, blue, yellow, and green.

  You can choose two of the four colors.

  Please tell me, for example, I want red and   yellow,1 or I want blue and green.

次の手順の説明をする.糊を見せてフレームにセロファ ンを貼るところを,実際にその手順を示しながら説明す

る。

(10)You now have two frames and two pieces of   cellophane.

  Ihave some glue here.

  You put the glue on the inside of the frame.

  Put the cellophane on the glue.

  And close the frame and press it gently.

完成品をいくっか示し,フレーム部分に異なる色が貼っ てある虫眼鏡の色の部分を2っ重ねて,太陽にかざす.

(11)When you mix red and blue, what color will   you get?

  Do you know that?

  Mix red and blue. Anyone?

  Yes. Purple.

  How about another combination?

  Red and yellow, or yellow and blue.

  You can mix two colors, or three colors.

  You can look at anything with your magnifier   outside、

  FinaUy let s make new colors with your   friends?

  What color did you make?

  How did you do it?

実際の授業で,児童は2種類のフレームの虫眼鏡と他の 児童の持っ虫眼鏡をさまざまに組み合わせて,変化する 色を楽しんでいた, Iwant red and yellow., など,

児童が作品を完成させるために必要な材料をもらう時の 表現などを,決まり文句として,何度も提示し,復唱さ

せたので,児童はその表現を用いて,筆者から材料を受 け取っていた.

 この活動の留意点としては,虫眼鏡の材料がセロファ ンであるために,材質上2色を重ねて太陽にかざしても 重なった色がなに色かの判別がやや難しく,原則通りの 色が生じるとは限らなかった.3色となると一層判断が っきにくかった.それでも児童は,混ざった色を見て,

arown!Brown! と叫んだり,1 Black! 「になったと言い 合い,教室中歓声が溢れていた.

4.結び

 この英会話講座の実践を通して,開講当初には見えて こなかった目的や効果がいくっか明確になった.

 昨今,高校と大学のいわゆる高大連携の強化に関する 取り組みが盛んに行われているが,本公開講座は,言わ ば小大連携というこれまでに類を見ない校種間の連携事 業であった。

 小大連携のメリットは,まず小学校にとっては,新し く英語活動が小学校に導入され,理論的基盤の構築を待 たずに,日々の授業に取り組まざるを得なくなった現状 に対して,大学が持つ児童心理,児童英語に対する知見 を,例えば,「資料集」等の中に活かすことで,各小学 校で独自に実施している指導内容・方法をより有効なも のにできる可能性が示唆されることにある.

 また大学にとっては,今後の小学校での英語の教科化 の流れを受けて,多くの大学で「児童英語指導法」「児 童英語教材論」などの児童英語関連の新科目が設置され,

児童英語指導者育成に本格的に取り組むようになるであ ろう.その際に,教える対象である小学生を本稿で紹介 したような連携事業により,いつでも大学内に招き入れ,

指導法の効果の検証に協力してもらうことや,学生の模 擬授業の受講者になってもらうなど,近い将来必要にな る児童養成課程の教育実習という点からも,将来的な展 望が大いに見えてくる.今後とも双方向の連携を一層図

ることが有意義であろう.

       謝 辞

 「英会話講座」に参加してくれた小学生の皆さん,こ の講座を企画し,準備段階から実施までのコーディネイ トをしてくれた地域連携の職員の皆さん,授業のサポー トをしてくれたゼミ生の末永浩子さん,五野上裕里さん,

冨永真琴さん,そして原稿に目を通し,助言を与えてく

(9)

酒井 藤恵

れた桑原和生氏にお礼を申し上げる.

       註

(1)しかし本稿では狭山市における英語教育も,便宜   上「英語活動」と呼ぶことがある.

(2)「狭L[」市小学校英語活動指導資料」(2003)狭山市教   育委員会

(3)「入間市小学校英語活動指導資料集」(2007)入間市   教育委員会

(4)いわゆる「小学校英語活動」に関する基礎データ   の構築に関する取り組みにっいては,筆者はその   具体例が実際に存在するのか把握していない.今   後,体系的に種々の観点からデータを収集してい   く試みが必要になってくるであろう.

(5)この点に関しては,現在,英語活動時に学級担任   やALT以外に,学習補助の役割をする保護者ボ   ランティアや学生ボランティア等を参加させるこ   とによって,児童のケアをしている小学校もある.

(6)これは小学校に児童英語の専門家がいないこと,

  もう一っにはあくまでも「英語活動」であって教   育課程の正規の教科でないことに部分的には帰因   する.「教科」でなければ,学習上の意義や学習上   の効果を高めるための工夫をする必要性は生じに   くいのであろう.

(7)Total Physical Response 「言語活動と全身運動   とを連合させることによって目標言語を定着させ   ようとする方法(by J.J.Asher)」(『英言吾教育用   語辞典』白畑他,1999)

(8)イマージョン・プログラム「児童・生徒の母語では   なく,第二言語を教育用言語として用いる言語教   育プログラムの一形態」(『英語教育用語辞典』白   火田他,1999)

(9)虫眼鏡と言っても,レンズに見立ててカラーセロ   ファンを使用しているので,実際に拡大しては見   えない.

Abstract

 This paper reviews the Engllsh extension course offered to children at Tokyo Kasei University in 2006. A close look at the architecture of the course and the properties of the individual par−

ticipants reveals some problematic aspects associated with English activities taught in elementary schools。 The paper discusses some possible ways to solve these problems and the fUture direction we may take to improve the content of English activities in elementary schools.

参照

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