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単位根検定における段階別配合飼料価格の構造変化の推定

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経済と経営 43−2(2013.3)

씗論 文>

単位根検定における段階別配合飼料価格の構造変化の推定

駒 木 泰

1.はじめに

従来より国内畜産への飼料供給は,海外からの輸入に依存している。とうもろこしは,配合飼料 の主な原料であり(原料全体の 45%),86%をアメリカから輸入している(平成 23年度)。配合飼料 の原料価格は,シカゴ商品取引所の穀物相場,海上運賃,為替レートの動向により形成される。国 内の配合飼料産業は,付加価値が低く,収益性が低いとの指摘がある(佐々木(1991),生源寺(1995))。

配合飼料産業内でのクッションが小さいため,原料価格がそのまま製品価格に反映され,国外から のショックを吸収しにくいからと考えられる。したがって,最終的な農家の受け取り価格も,原料 価格の動向が大きく反映されている。製品市場は寡占であり,農家はプライス・テーカーを亭受す る。価格の高騰時には,価格差補てん制度が発動し,畜産経営に及ぼす影響を緩和している。しか し,価格操作は行なわれない。このように国内の配合飼料価格は,価格水準として国外からの影響 を受けるが,国外価格のもつ時系列的性質は国内価格にも反映されるのだろうか。

今日,時系列データの回帰分析において,データの定常・非定常性の判断基準となる単位根検定 は必要不可欠である。単位根の有無は,時系列データの性質や回帰係数の推定値の分布を決める要 素の一つである。本論では,国内外価格の時系列データへの単位根検定を通じて,国外価格から国 内価格への影響の様子を明らかにする。単位根の有無のみならず,検定モデルのパラメータ変化と しての構造変化の時期やその程度を推定し,国外時系列データの定常・非定常性が国内データにも 引き継がれるかを検討する。

単位根検定は ADF検定が代表的であるが,検定対象時期内に構造変化が起きた場合の結論に疑 問が生じ,構造変化を考慮した単位根検定モデルが多く研究されてきた(宮越・佃(1998),林(2000),

黒住(2008))。Yamamoto(1996)は,ADF検定モデルのパラメータ変化の検定を,Chow検定に より可能にした。Chow検定は構造変化の検定方法であり,Yamamoto(1996)は非定常データで も通常のF検定で検定が行える方法を提案した。山本・Zhai(1995)は,シュミレーションにより Yamamoto(1996)のモデルのパフォーマンスを調べた。さらに,林(2000)ともに,日本経済の マクロデータを対象に構造変化の時点を推定している。宮越・佃(1998)は他の単位根検定方法も 援用しながら変化時点を推定した。本論では,この Yamamoto(1996)の方法を用いる(以下,

Yamamotoと略)。

国内配合飼料価格の形成要因に関する分析として,杉山・渡辺(1988)は,国外要因から国内配 合飼料への価格形成の過程を詳細に明らかにしている。また,寺内(1999)は,国外要因の価格の

73  195( )

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変動と国内配合飼料価格との変動に介在するラグの大きさを,分布ラグモデルにより推定している。

中島(2010)は,米国産とうもろこしの輸入価格までの価格伝達の経路と市場構造との関連を,閾 値自己回帰モデルを用いて分析している。個々の配合飼料価格に対して,回帰分析の前段階として 単位根検定を適用した例は多いが,その時系列的性質と構造変化に注目した研究は,未だ見当たら ない。(本論文の作成にあたり,科研費(課題番号 23530332)の助成を受けた。)

2.データ

本論では,配合飼料価格安定機構(http://mf-kikou.lin.gr.jp/)によるデータを使用する。図1に,

平成 10年度以降の用途別の配合・混合飼料生産量を示した。成鶏用と養豚用が 600万トン前後で推 移しており,平成 16年以降に養豚用が成鶏用を上回った。本論では,近年生産量が最も多い養豚用 配合飼料を対象とする。

養豚用配合飼料に対応して,肉豚肥育用のバラ物価格を工場渡価格,小売価格,農家購入価格の 段階別に図2に示した。平成 12年より上昇傾向を示し,平成 16年と平成 18年後半に急激な上昇が 見られる。その動向は3段階とも類似している。また,農家購入価格が小売価格を下回っているの

図2 段階別肉豚肥育用価格の推移 図1 配合・混合飼料生産量

(3)

が特徴的である。

配合飼料価格の形成要因として,図3にとうもろこし輸入価格(輸入額/輸入量より CIF価格)

と期近物,図4に海上運賃と円ドル為替相場を示した。海上運賃はドル表示であり,平成 16年1月 まではメキシコ湾岸と日本間の5万トン〜8万トン級の海上運賃,平成 16年2月〜平成 18年3月 は6万5千トン級,平成 18年4月以降は7万2千トン級の海上運賃である。

とうもろこし価格は両者とも類似の動向を示し,平成 16年,平成 18年,平成 22年後半に急激な 上昇が見られる。海上運賃も同様である。円ドル為替相場は,平成 19年以降は一貫して円高傾向に ある。

このように国内の配合飼料価格は,各段階ともに,国外要因としてのとうもろこし輸入価格と期 近物および海上運賃の影響が見られ,農家購入価格の最終段階までに波及している。また,平成 16 年,平成 18年,平成 22年に構造変化と思われる急激な上昇時期が見られる。そこで本論での分析 対象は,平成 12以降の上昇傾向の時期以降の,平成 12年 10月から平成 24年2月までとした。

3.モデルと分析結果

分析対象の時系列データを

y욧

とする。Yamamotoのモデルは,ADF検定のモデルに変数を追加 単位根検定における段階別配合飼料価格の構造変化の推定

図4 海上運賃と円相場の推移 図3 とうもろこし価格の推移

75  197( )

(4)

して,次のように定式化される。

y욧

=μ+ Σ 우웕웋 욡웆욣

β욡

y욧

욪욡+γ

t

+μ1+β욣용욼

y욧

욪욣욪욼+γ

t

+e욧 

i

=1,…,T

ここで,y욧は階差をとらない表記にしており,1,y욧욪욣욪욼,

t

は推定値β욡が漸近的正規分布に従 うための追加変数である。具体的には,平均 0,分散 1の正規乱数である

v

욡욧

i

=1,2を用いて,

1=1+v욼욧/

T

월웧워웏,

t

=t+v욽욧 とする。

推定値β욡が漸近的正規分布に従うので,構造変化に関する Chow検定を F値で行うことが出来 る。Chow検定のモデルは,誤差を

e

욧として次のようになる。

制約なしモデル:y욧=x욧δ+e욧 制約ありモデル:y욧=x욧δ+e욧 ここで,

y

욧=

y

욧웋

y

욧워

  

x

욧= 1,

y

욧웋,욪욼…,

y

욧웋 ,욪욣

t

0

0 1,

y

욧워 ,욪욼…,

y

욧워 ,욪욣

t

1,

y

욧웋욪욣욪욼,

t

 0

0 1,

y

욧워욪욣욪욼,

t

 

δ=μ웋,β욼웋,…,β욣웋,γ웋,μ워,β욼워,…,β욣워,γ워,μ웋,β욣웋 ,용욼γ웋,μ워,β욣워 ,용욼γ워

x

욧= 1,

y

욧웋 ,욪욼…,

y

욧웋 ,욪욣

t

1,

y

욧워 ,욪욼…,

y

욧워 ,욪욣

t

1,

y

욧웋욪욣욪욼,

t

 0

0 1,

y

욧워욪욣욪욼,

t

 

δ=μ,β욼,…,β욣,γ,μ웋,β욣웋 ,용욼γ웋,μ워,β욣워 ,용욼γ워

であり,変数の上付き文字は時期 1と時期 2のデータを意味する。

帰無仮説は,以下のように与えられる。

H

웅:μ웋=μ워,β욡웋=β욡워

i

≠1,…,

p

,γ웋=γ워

H욼

:いずれかの等号が不成立

ここでの Chow検定の F値は,自由度

p

+2と

T

−2

p+5

の F分布に従う。Yamamotoのモデ ルは,ADF検定の係数パラメータが構造変化するか否かを検定する。実際に,単位根を含むか否か を明らかにするには,構造変化を含まない時期を明らかにした後,時期毎に別途 ADF検定等で単位 根検定を行う必要がある。

データは月次なので,統計数理研究所の季節調整・時系列分析システムである Web Decmoを用 いて,事前に 12か月の季節調整を行った。Yamamotoでは,正規乱数

v욡

욧

i

=1,2を用いる。そこ で本論では,1回の検定において 100回のシュミレーションを行い,BIC,F値などの統計量はその 100回分を平均した。逐次 Chow検定は,データを二分割しながら検定していき,有意となった区間 をさらに二分割して,構造変化が認められなくなるまで,検定を続けた。また,対象時期の初期値 よりも過去のデータが存在する場合は,ラグに含め,つまり初期値が構造変化直後の初期時点とな るようにした。また,Yamamotoは F検定による検出力が低いという指摘がある(山本・Zhai

(5)

(1995))。そのため,逐次 Chow検定の F検定は,有意水準 1%で行った。

最初に Yamamotoのモデルにより,ラグの長さ

p

を BICにより決定した(表 1)。AICに比べる と,BICはラグを短く選択する傾向がある。

表 2に逐次 Chow検定の結果を示した。国内の段階別価格のみ構造変化が検出された。国外から の形成要因であるとうもろこしの両価格と海上運賃は急激な変動がみられるものの,円ドル為替相 場と同様に構造変化は検出されなかった。

国内価格で最初の段階である工場渡価格は,まずは平成 18年 4月に起きている。次の段階の小売 価格は 3か月遅れで平成 18年 7月であるが,農家購入価格に至ると平成 18年 4月に戻っている。

平成 21年 1月と 8月の構造変化は三段階とも共通している。最終段階の農家購入価格はその後,平 成 23年 6月に起きた。段階が経るにつれ,構造変化が起きやすくなっている。

表1 ラグpの決定

AIC   BIC

工場渡価格 6 1

小売価格 3 1

農家購入価格 3 1

とうもろこし輸入価格 1 1 とうもろこし期近物 2 2

海上運賃 3 2

円ドル為替相場 5 1

注)Yamamotoのモデルによる。

表2 構造変化検定の結果

価 格 期 間 サンプル数

工場渡価格 平成 12年 10月〜平成 18年 3 月 66 平成 18年 4 月〜平成 20年 12月 33 平成 21年 1 月〜平成 21年 7 月 7 平成 21年 8 月〜平成 24年 2 月 31 小売価格 平成 12年 10月〜平成 18年 6 月 69 平成 18年 7 月〜平成 20年 12月 30 平成 21年 1 月〜平成 21年 7 月 7 平成 21年 8 月〜平成 24年 2 月 31 農家購入価格 平成 12年 10月〜平成 18年 3 月 66 平成 18年 4 月〜平成 20年 12月 33 平成 21年 1 月〜平成 21年 7 月 7 平成 21年 8 月〜平成 23年 5 月 22 平成 23年 6 月〜平成 24年 2 月 9 とうもろこし輸入価格 構造変化なし

とうもろこし期近物 構造変化なし

海上運賃 構造変化なし

円ドル為替相場 構造変化なし

注)Yamamotoのモデルによる。

77  199( ) 単位根検定における段階別配合飼料価格の構造変化の推定

(6)

国内段階別価格の平成 21年 1月〜7月の 7カ月,および農家購入価格の平成 23年 6月〜平成 24 年 2月の 9カ月は短い期間で構造変化が起きている。価格の推移を構造変化毎に区切って図示した 図 5〜図 7を見ると,これらの時期の価格推移に大きな変化はみられない。

すべての価格を対象にした単位根検定の結果を表 3に示した。国内段階別価格については,平成 21年 1月以降はデータの推移をみても大きな変化がなく(図 5〜図 7),またサンプル数が検定結果 を歪めるのを避けるため,以降の時期に含めた。ADF検定は,トレンド・定数項モデル,トレンド

図5 工場渡価格

図6 小売価格

図7 農家購入価格

(7)

表3単位根検定の結果 サンプル数トレンド・定数項モデル定数項のみモデル定数項なしモデル トレンド項定数項τラグ定数項τラグτラグ 工場渡価格平成12年10月18年3月661.7642.201−2.15261.463−1.34361.5200 平成18年4月成20年12月333.961*4.160*−4.069*5 平成21年1月成24年2月381.7922.178−2.17501.321−1.31800.0330 小売価格平成12年10月18年6月691.5171.517−2.25801.829−1.77401.0030 平成18年7月成20年12月302.7172.803−2.73130.691−0.27303.4710 平成21年1月成24年2月381.3921.927−1.94801.755−1.77500.4660 農家購入価格平成12年10月18年3月661.5132.578−2.53602.173−2.11100.7940 平成18年4月成20年12月332.984*3.031−2.9160 平成21年1月成24年2月381.6102.093−2.10301.841−1.85100.2800 とうもろこし輸入価格平成12年10月24年2月1372.3953.749*−3.748*1 とうもろこし期近物平成12年10月24年2月1372.826*3.162*−3.0562 海上運賃平成12年10月24年2月1370.9912.412−2.53732.217−2.38730.8923 円ドル為替相場平成12年10月24年2月137−3.006*2.658−2.7351 注)*は5%で有意を示す。

79  201( ) 単位根検定における段階別配合飼料価格の構造変化の推定

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なし・定数項モデル,トレンドなし・定数項なしモデルの三タイプで行い,すべての統計量が有意 でない時に,右のモデルに進んで検定を行う。本論では,Yamamotoとの整合性を保つために ADF 検定のみを用い,モデルの選択と単位根検定とを分離するため,t値タイプの統計量で検定を行っ た。

国内段階別価格について,構造変化の時期ごとに쑿期,쒀期,쒁期とした。工場渡価格は쒀期の 価格急上昇時にトレンド定常,農家購入価格は同時期にトレンドを含む階差定常となった。両価格 のその他の時期,および小売価格はすべての時期で階差定常であった。単位根がないのは,工場渡 価格の쒀期のみとなった。また,国内価格に構造変化は起きたものの,単位根がなくなるまでには 至らなかった。国外要因として,とうもろこし輸入価格は定数項を含む定常,とうもろこし期近物 はトレンド・定数項を含む階差定常,海上運賃は階差定常,円ドル為替相場はトレンドを含む階差 定常となった。以上の検定結果では,トレンドや定数項が有意なときにτの値も大きくなる特徴がみ られる。また,これらは本論文での分析対象時期での結論であることに留意したい。

4.おわりに

国内配合飼料価格とその国外からの形成要因に対して,時系列的性質の関係を分析した。

Yamamotoで構造変化を検出し,その後,構造変化の時期ごとに ADF検定を適用して,単位根検 定を行った。

工場渡価格,製品価格,農家購入価格を国内飼料価格の段階別価格とした。どれも類似の変動傾 向を示した。段階が経るにつれ,構造変化が起きやすくなっている。構造変化の期間別の単位根検 定の結果では,概ね階差定常となった。しかし,工場渡価格は急上昇した時期のみトレンド定常と なった。国外からの国内飼料価格への形成要因としてのとうもろこし輸入価格,とうもろこし期近,

海上運賃,円ドル為替相場には構造変化は見られなかった。これらへの単位根検定の結果は,とう もろこし輸入価格を除いて階差定常となった。国外要因から影響を受けた結果,国内価格のみに構 造変化が起きた。国外価格に急激な変化がある場合には配合飼料産業内で吸収できず,それを増幅 する結果として,国内価格への構造変化として表われたと考えられる。

構造変化の検定により,時系列的性質の変化を捉えるのは重要である。さらに,国内価格と国外 価格の関係を回帰分析で明らかにするには,時期を区分するか,階差定常とトレンド定常が混在し た変数同士の分析手法を用いる必要がある。

参考文献

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[12]山本拓,Zhai,G.H. 日本経済の構造変化 倉澤資成・若杉隆平・浅子和美 構造変化と企業行動 p.351‑365,日本評論社,1995。

81  203( ) 単位根検定における段階別配合飼料価格の構造変化の推定

参照

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