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男性家族介護者のセルフヘルプ・グループのメカニ ズム

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(1)

ズム

著者 水島 洋平

雑誌名 同志社政策科学研究

巻 15

号 1

ページ 61‑72

発行年 2013‑09‑20

権利 同志社大学政策学会

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000013249

(2)

男性家族介護者のセルフヘルプ・グループのメカニズム

水 島   洋 平

あらまし

 本稿の目的は、男性家族介護者のセルフヘル プ

グループ

(以下、

男性家族介護者の

SHG)が、

どのようなメカニズムで機能しているのかを探る ことにある。特に、男性家族介護者の

SHG

が機 能するための条件に焦点をあて考察を行なった。

 その結果、⑴自己物語を構成していくために は、先輩参加者と後輩参加者が「セラピスト役 割」と「クライエント役割」の両方を獲得し、

相互扶助機能を果たしていくこと、⑵新規参加 者の安定的な獲得および定着が重要であること が示唆された。

 上述の知見を踏まえれば、⑴男性家族介護者 の

SHG

への「継続的参加」によって「自己開 示の返報」が繰り返されながら、⑵「先輩参加 者がセラピスト役割だけでなくクライエント役 割をも担い、後輩参加者がクライエント役割だ けでなくセラピスト役割をも担う」といった役 割の流動化によって相互扶助機能が発揮され、

⑶先輩/後輩参加者ともに自己物語の構成につ ながる過程が、男性家族介護者の

SHG

のメカ ニズムであると考えられる。

1.問題意識

 本稿の目的は、男性家族介護者のセルフヘル

グループ

(以下、

男性家族介護者の

SHG)

が、

どのようなメカニズムで機能しているのかを探 ることにある。特に、男性家族介護者の

SHG

が 機能するための条件に焦点をあて考察を行なう。

 近年、自身のライフコースにおいて、老親や 配偶者の介護役割を担うことを想定する男性も 多くなってきたと考えられるものの、彼らが男 性性の危機に直面する可能性は高いと推測さ れる1

。また、介護における家族関係は「愛情」

といった肯定的感情のみならず、

「憤怒」や「憎

悪」といった否定的感情を生起させることがあ り、このような両価的感情経験が家族介護の大 きな特徴であるとされる2

。家族介護の閉塞化

は、否定的感情を誘発させる可能性が高いため、

外部サービスの利用や対人関係の活性化、社会 活動への参加保障といった家族介護者支援が重 要になる3

 とりわけ、男性家族介護者には否定的感情を 抱え込み他者に吐露しない傾向が見られ、彼ら が抱え込んでいる介護困難は表面化しにくいこ とが推測される4

。このような状況下で、男性

家族介護者の

SHG

への参加を試みる者が増加 傾向にある5

。男性家族介護者が介護役割遂行

に関する悩みや葛藤の自己開示を通して自己物 語を構成していくうえで、男性家族介護者の

SHG

の意義は大きいと考えられる。

 本稿の構成は、以下の通りである。第2章で は、男性家族介護者の特徴を明らかにしたうえ

1 自らの男性性を維持するために試行錯誤する男性家族介護者の姿を明らかにしている研究として、Calasanti and Bowen(2006)、Moss and Moss(2007)、Ribeiro, Paúl and Nogueira(2007)が挙げられる。

2 Mac Rae(1998), pp. 137-160. 例えば、わが国における家族介護者の両価的感情経験の世界を分析したものとして、広瀬(2010)が挙

げられる。

3 詳しくは、藤崎(2000),141-161頁を参照。

4 詳しくは、McFarland and Sanders(2000),pp. 367-373. を参照。

5 例えば、男性介護者と支援者の全国ネットワーク 編(2010),79-102頁。

(3)

で、セルフヘルプ・グループの定義、特徴およ び機能を整理する。第3章では、男性家族介護 者の

SHG

のメカニズムを考察するための理論 的背景を論じる。第4章では、男性家族介護者 の

SHG

が機能するための条件を検討するため に水島(2012)の知見と新たな仮説を提示し、

どちらが男性家族介護者の

SHG

のメカニズム を考察するうえで有用であるか検討する。第5 章では、男性家族介護者の

SHG

がどのような メカニズムで機能しているのか考察を行なう。

第6章は、結論である。

2. 男性家族介護者とセルフヘルプ・グ ループ

 本章では、男性家族介護者の特徴を明らかに したうえで、セルフヘルプ・グループの定義、

特徴および機能を整理する。

2. 1 男性家族介護者の特徴

 本節では、男性家族介護者の特徴を研究アプ ローチごとに整理する。男性家族介護者の類型 化を試みた

Harris(1993)は、妻を支配するこ

とによる管理・監督的な介護役割遂行を通して 夫としての立場を強化し、男性としてのアイデ ンティティを保持する傾向を明らかにしてい る6

 男性家族介護者による高齢者虐待や介護殺 人・心中問題をジェンダーの視点から分析した 天田(2002,2004)、羽根(2006)では、⑴性 別役割分業の反転化・協働化とは裏腹に夫の言 動に過剰な男性性が満たされてゆき、妻を管 理・監督し保護意識を拡大させてゆく傾向、⑵ 男性としてのアイデンティティを保持するため にジェンダー規範を強く内面化する傾向、⑶自 分ひとりで介護役割を抱え込み、社会的孤立に 陥る傾向が確認された7

 男性家族介護者の介護役割の受け入れプロセ

スを明らかにした林(2003)と一瀬(2004)で は、⑴介護役割遂行に関する全ての管理・監督 責任を自分に帰し、自分が果たすべき役割を再 構築する傾向、⑵自己流の介護の成功の確信と 介護へのプライドを通して、介護役割の受け入 れの意思が示される傾向、⑶妻が夫主導の介護 に従属している傾向、⑷介護困難を他者に相談 しない傾向が確認された8

 男性家族介護者の一般的な特徴を捉えた津 止・斎藤(2007)、笹谷(2008)、無藤(2008)、

春日(2010)では、⑴仕事の延長線上に介護役 割を位置づけ「第二の仕事」と捉える傾向や、

⑵妻の意思の尊重よりも自分本位の介護方針を 貫徹する傾向が確認された9

 このように、介護困難を自分ひとりで抱え込 み、他者に相談せず社会的孤立に陥る傾向が、

男性家族介護者の特徴のひとつとして指摘でき る。しかしながら、近年、セルフヘルプ

グルー プへ参加し自己開示を試みる男性家族介護者が 増加傾向にある。そのため、次節では、セルフ ヘルプ・グループとはいかなる特徴を備えた組 織であるのか整理を行なう。

2. 2 セルフヘルプ・グループとは何か

 本節では、セルフヘルプ

グループ(Self-Help

Groups / Self-Help Mutual Aid Groups: SHG)

の定 義、特徴および機能を整理する。

 今日、SHGの定義として引用されることが多 いのは、Katz and Bender(1976)のものであり、

⑴相互扶助ならびに特殊な目的達成のための自 発的な小集団、⑵

SHG

の先導者や成員は、既 存の社会制度ではニーズが満たされておらず、

また満たされうることはないと考えている、⑶ 対面的な社会的相互交流と成員が個人的責任を 取ることの重視、⑷物質的援助と情緒的支援の 付与、という4つの要点に集約できる10

。また、

Lieberman(1989)は SHG

の理論と実践の体系 化を試み、

「共通の境遇、状況、症状または経験

を有する成員による組織」

、 「自治的・自己調整

6 詳しくは、Harris(1993)を参照。

7 詳しくは、天田(2002,2004)、羽根(2006)を参照。

8 詳しくは、林(2003)、一瀬(2004)を参照。

9 詳しくは、津止・斎藤(2007)、笹谷(2008)、無藤(2008)、春日(2010)を参照。

10 Katz and Bender(1976),pp. 2-12.

(4)

11 Lieberman(1989),p. 286.

12 詳しくは、Adamsen and Rasmussen(2001),pp. 909-917. を参照。

13 伊藤(2000)、福重(2004),304-317頁。

14 岡(1988),12-16頁。

15 Borkman(1976),pp. 445-456.

16 Katz(1993),pp.45-49.

17 山崎・三田(1995),180-182頁。

18 Riessman(1965),pp. 27-32.

19 詳しくは、Gartner and Riessman(19771985)を参照。

20 詳しくは、岡(1994)、Kurtz(1997)、窪田(2000)、中田(2000)を参照。

21 詳しくは、安藤(1986),167-199頁を参照。

的な組織」

、 「対面式の協力的なネットワークを

可能とする非営利組織」という3つの特徴を挙 げている11

。ほかにも、Adamsen and Rasmussen

(2001)

は、

「反官僚的な組織」 「専門職の非関与」 、 、

「自発性」 、 「個人的な参加」 、 「互恵性」といった

特徴が確認されると指摘している12

 それでは、SHGはどのように機能し、成員 にどのような影響を与えるのだろうか。SHG は、「自己変容機能」と「社会変革機能」を併 せ持つとされるが13

、本稿では成員が SHG

に 参加することによる自己物語の構成に焦点を 当てるため、「自己変容機能」に関する議論を 参照する。岡(1988)は、自己変容機能とし て「認識の変容」と「行動の変容」を挙げて いる14

。認識の変容に関して、Borkman(1976)

は、SHGの援助力の源泉は成員の経験に基づ く知識・技術である「体験的知識(experiential

knowledge)」

に あ り、専 門 職 の 知 識・技 術

(professional knowledge)と比較して、より実用

的で包括的な特徴を持つと指摘している15

 行動の変容に関しては、役割モデリングに基 づく方法の獲得が挙げられる16

。例えば、山崎・

三田

( 1995 )

は、参加者を孤独感から解放したり、

居場所と役割を提供したりするほか、行動の変 容にとって重要とされる「目標像」

、 「先輩」 、 「反

面教師」といったモデリングも

SHG

では容易に 行なわれるなど効用は大きいと指摘している17

  ほ か に も、Riessman(1965)は、SHGに お ける他者への援助を通して援助者が利益を得 ることを、

「ヘルパー・セラピー原則(helper- therapy principle) 」概念を用いて説明している

18

。 Gartner and Riessman(1977

1985)

は、援 助 者が利益を得るメカニズムには、⑴

SHG

への 低依存、⑵自らの問題から距離を置いて考える 機会の付与、⑶援助の役割をとることによる社 会貢献の感覚の保持、という3つの特徴がある と指摘している19

 また、SHG独自の援助特性について指摘し ている岡(1994)、

Kurtz(1997)、

窪田(2000)、

中田(2000)の論考を検討した結果、「社会参 加」、「自尊感情の回復」、「エンパワーメント」、

「情緒的サポートの付与」、 「経験的知識 (体験知)

の伝達」、「コーピング方法の教示」、「アイデン ティティの変容」、「問題の捉え直し」、「援助者 の役割」、「自己開示の機会」といった側面が確 認された20

3. 男性家族介護者のセルフヘルプ・グ ループの理論的背景

 本章では、男性家族介護者の

SHG

のメカニ ズムを考察するための理論的背景を論じる。

3. 1  男性家族介護者のセルフヘルプ・グ ループにおける自己開示

 本節では、男性家族介護者の

SHG

における 自己開示の位置づけを確認したうえで、自己物 語を構成するための条件としての自己開示の機 能を取り上げ、その理論的意味合いに関して論 じる。そして、男性家族介護者の

SHG

におけ る自己開示の返報性の課題について論じる。

3. 1. 1 自己開示の位置づけ

 自己の意見や感情といった自己情報を他者 に伝達することは、社会関係構築のために不 可欠な行動である。それでは、

「自己開示(self-

disclosure)」はどのように定義されているのだ

ろうか。例えば、安藤(1986)は、「特定の他 者に対して言語を介して意図的に伝達される自 分自身に関する情報、およびその伝達手段」と 定義している21

。また、

安藤ら(1995)は、

「自

(5)

分が意図的に相手に打ち明けなければ決して相 手が知ることができない事柄を、特定の相手に 対して伝達することによって自らを透明にする こと」と定義している22

 これらの定義でとりわけ重要であるのが、

「開

示方法」と「被開示者との関係性」である。開 示方法に関しては、他者に対する感情や態度を 表す際には、非言語的な手段が重要な役割を果 たすことがあるが、これらを言語的に伝達する、

すなわち、言葉にして話したり文字にして伝え たりすることによって初めて自己開示として成 立する。被開示者との関係性に関しては、特定 の他者に対する伝達であり、開示者と被開示者 における一定の関係性が前提となる。すなわち、

不特定多数の他者に伝達された場合は自己開示 ではなく、あくまで特定の他者に対して伝達す る場合が自己開示である23

 以上を踏まえ、本稿では、自己開示を「自己 に関する偽りのない情報を、言語を用いて特定 の他者に自発的に伝達すること」と定義する。

本稿の文脈に照らし合わせれば、男性家族介護

4 4 4 4 4 4

者が4 4

SHG

4 4 4 に参加する特定の他者に向けて自発的4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 に自己の介護経験を話す

4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4

ことから、男性家族介 護者の

SHG

で自らの介護経験を吐露する行為 は、「自己開示」と位置づけることができる。

3. 1. 2  自己物語の構成条件としての自 己開示

 本項では、男性家族介護者の

SHG

において 自己物語を構成するための条件として、自己開 示の機能である

「自己明確化 (self-clarifi cation)」

と「社会的妥当化(social validation)」を取り 上げ、その理論的意味合いに関して論じる24

 まず、自己明確化機能に関して、安藤(1986)

は、自己開示は自己の意見や感情をより明確に すると指摘している。なぜなら、自己開示を行 なう相手を意識することは、自己を客体視する

ことが容易になるためである。すなわち、自己 の意見や感情を言語化して再整理する過程にお いて、開示者は自己を明確に認識するようにな る。このように、自己を客観的に把握するため にも、自己開示が言語的に行なわれることは重 要な意味を持っている。

 次に、社会的妥当化機能に関して、開示者が 自己情報を開示するだけで機能するわけではな く、被開示者からの社会的支援やフィードバッ クが重要な条件となる。すなわち、被開示者が 開示者の意見についてどのように評価するかを フィードバックすることによって、開示者は自 身の社会的位置づけを認識できる。このように、

社会的妥当化が機能するためには、開示者と被 開示者との相互作用が重要な背景要因になって いることに注目する必要があると考えられる25

。 3. 1. 3 自己開示の返報性

  前 項 で 論 じ た「社 会 的 妥 当 化

に 関 連 し て、自己開示を行なうために重要な役割を果た しているのが「自己開示の返報性(disclosure

reciprocity )」である。自己開示の返報性とは、

開示者の自己開示が被開示者に同程度の自己開 示を誘発させると説明する理論である。自己 開示の返報性を説明するモデルに、Altman and

Taylor (1973)

が提唱した

「社会的浸透理論 (social penetration theory)」がある。彼らは、関係初期

における相互作用は極めて限られた領域の表面 的なものに留まるが、関係の進展に伴って次第 にその領域が広がり、内容も内面的で私的なも のになると説明している26

また、

Altman (1973)

は、関係の親密度が深くないとされる関係初期 から中期にかけては、自己開示の返報が重要な 役割を果たしているが、関係後期になると安定 的な信頼関係が構築されていると考えられるた め、返報の重要性は減少してくると指摘してい る27

22 安藤・大坊・池田(1995),50頁。

23 詳しくは、古川(2008),2-9頁を参照。

24 Derlega and Grzelak(1979)は、自己開示の機能として「感情表出(expression)」、「自己明確化(self-clarification)」、「社会的妥当化(social validation)」、「対人関係の発展(relationship development)」、「社会的統制(social control)」を挙げているが、男性家族介護者のSHG おいて自己開示をし、自己物語を構成していくためには、とりわけ「自己明確化」と「社会的妥当化」が重要な機能を果たすと考え られるため、本稿ではこれら2つの機能を取り上げた。

25 詳しくは、安藤(1986),167-199頁を参照。

26 詳しくは、Altman and Taylor(1973)を参照。

27 詳しくは、Altman(1973),pp.249-261. を参照。

(6)

 上記の議論を男性家族介護者の

SHG

の文脈 に照らし合わせれば、男性家族介護者の

SHG

において自己開示の返報を繰り返しながら、対 人関係が深まることによって介護経験の自己開 示が促進されることに異論はないが、被開示者 が開示者と同程度の介護経験を返報すると予測 するのには無理があると考えられる。なぜなら、

返報性規範が絶対的な拘束力を持つとは考えに くく、開示者と被開示者の間の開示に不均等が 生じる可能性が推測されるためである。Altman

(1973)に依拠すれば、男性家族介護者の SHG

への参加によって自己開示が促進されるのは、

参加期間が短い関係初期から中期にかけてであ り、参加期間が長くなれば参加者同士の安定的 な信頼関係の構築によって、返報の重要性が低 下することが考えられる。

3. 2  男性家族介護者のセルフヘルプ・グ ループにおける自己物語の構成条件

 前節で、男性家族介護者の

SHG

において自 己物語を構成するためには、「自己開示の返報」

が重要であることを指摘した。本節では、自己 物語論の特徴を確認したうえで、自己物語を構 成するためには「参加の継続性」と「相互扶助 機能」が重要な条件になることを、自己物語論 とナラティヴ

セラピー論に依拠しつつ論じる。

3. 2. 1 自己物語論の特徴

 自己物語論とは、「自己が自身について語る 物語(self-narrative)」を通して構成されると説 明する理論である28

。浅野(2005)は、自己物

語論とは、⑴自己はそれ自体で存在する客観的 な実体ではなく、現在の時点から自分の人生を 回顧し、そこに見出されたさまざまな出来事を 納得のいくような形で時間軸上にプロットした 物語である、⑵このプロットは、他者に向けて 物語る形式で行なわれる、⑶自己物語は、過去 の自分を現在の自分(語り手としての自己)か

ら一旦区別しながら、最終的には結末(現在お よび未来)において一致させるような構成を持 つ、という3つの主張を緩やかに共有する理論 であると指摘している29

 また、浅野(

2001 )は、心理学的な視点から

みた自己物語論の特徴として、以下の3点を指 摘している。第一に、「語り手」と「語られた 物語の主人公」という「視点の二重性」を挙げ ている。すなわち、自己物語を語ることによっ て、語り手は自らの視点とは異なる登場人物の 視点も持つことが可能になり、この両者の視点 は最終的に統合される必要がある。第二に、

「出

来事の時間軸上への構造化」を挙げているが、

時間軸に沿って出来事の選択や配列が行なわれ るものの、全ての出来事が選択されているわけ ではない点に留意する必要がある。第三に、

「語

りかける他者の存在」を挙げており、自己物語 は他者との関係性や相互作用を通して存在し、

他者の反応によって変化する可能性があると指 摘している30

 ほかにも、Harre(2001)は、自己の構成は 自己物語を通して行なわれるとし、自身を回顧 して語る「再帰性」と、過去から未来へと時間 軸に沿って自身を構成する「通時性」を組み込 んだものであり、他者を媒介した「関係性」に 視座を置くものであると指摘している31

。 3. 2. 2 参加の継続性

 前項で整理した自己物語論の特徴を踏まえ、

本項では、男性家族介護者の

SHG

への「参加 の継続性」が自己物語を構成するためのひとつ の条件になることを、井口(2007)に依拠しつ つ論じる。

 井口(2007)は、浅野(2001)が指摘した「語 りかける他者の存在」を踏まえ、自己の介護経 験の対象化をある一定期間の自己の介護過程を 俯瞰することとし、ある期間の自己物語を構成 することとみなしている32

。そして、自己物語

を語るうえで「始点」と「終点」の区切りが必

28 例えば、浅野(2001)、片桐(2000)、Bruner(1990)、Gubrium and Holstein(2001)、Holstein and Gubrium(1999)を参照。

29 浅野(2005),77-78頁。

30 詳しくは、浅野(2001)を参照。

31 詳しくは、Harre(2001),pp.59-73. を参照。

32 井口(2007),216頁。

(7)

要であり、その区切りを設定していくうえで

「参

加の継続性」が重要になると指摘している33

 また、井口(2007)は、介護役割遂行の場面 とは、⑴介護者と被介護者の二者に限定されて いることが多く、介護役割遂行における「発見」

が本当に「発見」であるかの評価者が不在であ ることが多いことと、⑵ある行為や出来事の評 価のためには、被評価者の対象化が必要である ことを指摘している。そして、家族会(本稿に おける男性家族介護者の

SHG)への「継続的

参加」によって、⑴「発見」の評価者となる可 能性を持つ他者の確保と、⑵前回の参加から今 回の参加までの介護経験を語るなかで、自己の 介護経験を回顧的に対象化することが可能にな ると指摘している34

 このように、男性家族介護者の

SHG

におい て自己物語を構成する条件として「参加の継続 性」が指摘できる。男性家族介護者の

SHG

は、

男性家族介護者が前回の参加から今回の参加ま での介護経験を自己開示する形式で進められ、

前回の参加における自己開示を「始点」とし、

今回の参加における自己開示を「終点」とした 現在までの介護経験を語る場となる。このこと から、男性家族介護者の

SHG

への「参加の継 続性」は、自己物語を構成するための条件にな ると考えられる。

3. 2. 3 相互扶助機能

  本 項 で は、前 項 で 指 摘 し た「参 加 の 継 続 性」のみならず、「相互扶助機能」も男性家族 介護者の

SHG

における自己物語の構成条件に なることを、ナラティヴ・セラピー(narrative

therapy)論に依拠しつつ論じる。野口(2001)

は、ナラティヴ・セラピーは

1990

年代以降、

家族療法の領域で最も有力になった臨床実践で あり、「セラピストとクライエントが共同で新 しい自己物語を構成していく実践35

」と言い換

えることができると指摘している36

 野口(2001)によれば、ナラティヴ

セラピー

は、以下の4つの前提に基づくとされる。第一 に、我々が生きる現実は、他者との交流を通し て社会的に構成される点である。第二に、現実 は言語の網の目によって維持され、一定のまと まりを持つものとして構成される点である。第 三に、言語は物語によって意味の一貫性とまと まりを獲得し組織化される点である。第四に、

物語は語られるたびに変形され更新される可能 性を持つ点である37

自己物語論とナラティヴ

セラピー論を踏まえれば、

「再帰性」、 「通時性」、

「関係性」の文脈のなかで、男性家族介護者の SHG

の参加者が「セラピスト役割」と「クラ イエント役割」の相互作用を通して自己物語を 構成していくと考えられる。

3. 3 小括

 前節までの議論を整理すると、男性家族介 護者の

SHG

への継続的参加は、自身の介護経 験に関する意見や感情を明確にする効果があ ると考えられる。なぜなら、男性家族介護者 の

SHG

の参加者に介護経験を傾聴してもらう ことは、彼らの存在を意識しながら自己開示を 行なうことになるため、自己を客観的に把握し 介護経験の再整理にも貢献すること(「自己明 確化」機能)が可能になると推測できるからで ある。また、男性家族介護者の

SHG

では、介 護経験から得られた「体験的知識」を参加者同 士で提供しあう相互扶助機能(「社会的妥当化」

機能)が期待できる。

 このように、⑴男性家族介護者の

SHG

への

「継続的参加」によって「自己開示の返報」が

繰り返されながら、⑵参加者同士による「セラ ピスト役割とクライエント役割の相互扶助機 能」を通じて、⑶自己物語を構成していくと考 えられる。

33 同書,234-235頁。

34 同書,216頁。⑴に関しては、他者が直接的に介護行為を評価する者として現れるわけではなく、評価の主体はあくまでも介護者自身 であり、⑵の「介護経験の対象化」との関わりで、⑴の「他者の存在の意味」を捉え直すことができると指摘している。

35 詳しくは、McNamee and Gergen(1992)を参照。

36 野口(2001),50頁。

37 同書,51-52頁。

(8)

4. 男性家族介護者のセルフヘルプ・グ ループが機能するための条件

 本章では、男性家族介護者の

SHG

が機能す るための条件を検討するために水島(

2012 )の

知見と新たな仮説を提示し、どちらが男性家族 介護者の

SHG

のメカニズムを考察するうえで 有用であるか検討する。

4. 1  セラピスト役割とクライエント役割 の固定化

 本節では、男性家族介護者の

SHG

が機能す るための条件として、水島(

2012 )の知見がど

のような課題を抱えているのか論じる。

 水島(2012)では、男性家族介護者の

SHG

への参加期間が比較的長い者を「先輩参加者」、

参加期間が比較的短い者を「後輩参加者」と捉 え、参加者同士の語りを分析した。その結果、

「男性家族介護者の SHG

では、先輩参加者がセ ラピスト役割を担い、後輩参加者がクライエン ト役割を担っている」という知見が得られた。

 この知見が導き出された過程は、以下の通り である。先輩参加者は後輩参加者の自己物語を 傾聴し、自らの介護経験を回顧しながら後輩参 加者にアドバイスをすることによって、自己物 語を構成する傾向が確認されたため、「セラピ スト役割」を担っていると結論づけた。一方、

後輩参加者は男性家族介護者の

SHG

への継続 的参加によって、自身の介護経験を傾聴してく れる先輩参加者に出会い、介護経験を自己開示 できる条件が整うことによって、今まで明確に 語られることのなかった自己物語を構成する傾 向が確認されたため、「クライエント役割」を 担っていると結論づけた。このように、「先輩 参加者がセラピスト役割を担い、後輩参加者が クライエント役割を担う」という役割の固定化 が確認されたのである。

 しかしながら、水島(

2012 )の知見は、多く

の集団において自ずと起こる事象であると考え られるため、男性家族介護者の

SHG

特有の事 象とは言い切れない可能性が指摘できる。すな

わち、後輩参加者が集団から排除されないよう にするためには、先輩参加者への質問や相談を 通じて集団規範(group norm)を学ぶ必要があ ると考えられる。なぜなら、先輩参加者に質問 や相談をしない後輩参加者は、集団規範を十分 に学ぶことができず集団から排除される(=参 加者でなくなる)可能性が高いと推測されるた めである。男性家族介護者の

SHG

において、

継続的な参加者が存在している時点で集団とし て成立しているため、「先輩参加者がセラピス ト役割を担い、後輩参加者がクライエント役割 を担う」という役割の固定化は確認されると考 えられる。このことから、水島(2012)の知見 は、男性家族介護者の

SHG

が機能するための 条件としては不十分であるといえるだろう38

4. 2  セラピスト役割とクライエント役割 の流動化

 前節で、水島(2012)の知見は、男性家族介 護者の

SHG

が機能するための条件としては不 十分であると指摘した。そのため、本節では、

水島(

2012 )の知見に対抗する新たな仮説を設

定する。

 新たな仮説は、「男性家族介護者の

SHG

が 機能するためには、先輩参加者がセラピスト役 割だけでなくクライエント役割をも担い、後輩 参加者がクライエント役割だけでなくセラピス ト役割をも担うことが重要であると考えられ る」(以下、仮説

Q)である。なぜなら、Katz and Bender(1976)の定義で明らかにされてい

るように、SHGは「参加者たちによる相互扶 助」を行なう集団であるため、男性家族介護者

4 4 4 4 4 4 4

4

SHG

4 4 4 が機能するためには、4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4

「参加者の対称性」

4 4 4 4 4 4 4 がひとつの必須条件になると考えられる

4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4

ためで ある。水島(2012)で提示されている「先輩参 加者が主としてセラピスト役割を担うこと」は、

先輩参加者が後輩参加者を非対称的に扶助する

(=相互扶助ではない)場に陥る可能性が指摘

できる。

 仮説

Q

では、「後輩参加者の相談を受ける側 の先輩参加者であるにも拘らず後輩参加者へ相

38 誤解のないように言えば、水島(2012)の知見は、「要介護状態にある若年性アルツハイマー型認知症の妻を在宅介護する団塊世代の 夫が、家族会への継続的参加により自己物語を構成することで、いかに自己変容を経験するのかを時系列的に明らかにする」という 目的を掲げて分析した結果得られたものであり、男性家族介護者のSHGが機能するための条件を分析したものではない。

(9)

談する傾向、あるいは先輩参加者に相談を持ち かける側の後輩参加者であるにも拘らず先輩参 加者へアドバイスする傾向が確認されてこそ、

男性家族介護者の

SHG

は相互扶助の集団であ る

SHG

として機能するのではないか」という

「役割の流動化」

が強調されている。水島

(2012)

で確認された「先輩参加者がセラピスト役割を 担い、後輩参加者がクライエント役割を担う」

といった役割の固定化は、先輩参加者と後輩参 加者の関係性が非対称的であり、相互扶助関係 であるとは言い難いだろう。すなわち、「役割4 4 の固定化」が崩れ「役割の流動化」の傾向が確

4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4

認されて初めて参加者同士の深い相互扶助関係4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 が生じ、男性家族介護者の

SHG

特有の機能が

4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4

発揮されるのではないか

4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4

と推測される。以上 のことから、男性家族介護者の

SHG

のメカニ ズムを考察するうえで、仮説

Q

が水島(2012)

の知見より有用であると考えられる。

4. 3 事例分析

 本節では、水島(2012)の知見と仮説

Q

の どちらが男性家族介護者の

SHG

のメカニズム を考察するうえで有用であるのかを事例分析に よって検討する。

 仮説

Q

は、⑴先輩参加者がセラピスト役割 を担い、後輩参加者がクライエント役割を担う、

⑵先輩参加者がクライエント役割を担い、後輩 参加者がセラピスト役割を担う、という2つ の仮説に分解することができる。なお、仮説

Q

の⑴は水島(2012)の知見であるため、本稿で は事例分析は行なわない39

 以下では、仮説

Q

の⑵を分析するため、「先

4

輩参加者がクライエント役割を担い、後輩参加4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 者がセラピスト役割を担っている」と考えられ

4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4

る事例4 4 4を取り上げる。

 今週から、あの何て言うんですか、トレーニ ングパンツ、吸収パンツ、リハパン?布製[パ ンツ]のなかに吸収用のパッドが入ってるやつ で、洗って使えるっていうやつを、すごいフォー

ムが決まるということだったんで、まとめて 買ってきて。今、それを出したら一応穿くんで、

多少ですから、完全に吸収しないんで。1日5 から6回[失禁に]なりうるんで、最低限6枚 準備して。

(中略)

最近、その汚れると全部脱 ぐから。で、新しいの出して。(中略)新しい の出したら、すぐその上に[尿を]しちゃうか ら。だから、新しいの渡さないで隠して「とり あえずそれ脱いでって、冷たいだろ」って言っ て、30分位格闘したのかなあ。冬は寒いしね、

風邪ひくかと気が気じゃないんですね。

 私のとこ、畳のところにアルミのシート、断 熱シート、炬燵とかあれに使うようなやつ、薄 いやつ。それだと染み込まないで、上だけで止 まるんで、濡れた後拭けるんで。まあ、2畳程 の大きさのやつを、それを敷いて。で、その上 に炬燵置いてあるんですよ。上に炬燵置いても、

アルミ冷たくないんですよ。そのまま直に座っ ても温かいんで。座布団に失敗されて汚された んで、全部どけてアルミ

[を敷くことにした]

40

 上述の語りは、先輩参加者が「失禁後の後始 末を効率的に行なうために畳から板の間に改装 したものの、床が汚れることに変わりはない ため何か有効な手段はないか」と後輩参加者

P

氏に相談したところ、P氏が失禁後の後始末を 効率的に行なうために「発見」した方法を語っ たものである。P氏は、洗って繰り返し使用で きる襁褓を妻に穿かせている。妻は1日に5〜

6回失禁をし、最近は下着が汚れると全部脱ぐ ため、新しい下着を渡すのだが、その下着にす ぐに失禁をするため困り果てている。そのため、

新しい下着をすぐに渡さず妻とのやり取りを繰 り返すが、妻が風邪を引かないか気を揉んでい た。そこで、畳の上に2畳程の広さの断熱素材 のアルミシートを敷くことによって、尿がアル ミシートの上で留まり畳に染み込むことはなく 簡単に拭くことができ、冬でも断熱素材である ため暖かいので一石二鳥であると語っている。

 この

P

氏の語りは、井口(2007)の議論を 用いて分析が可能である41

。介護役割遂行の過

39 例えば、後輩参加者が「(被介護者が)御飯ばかりを食べておかずも単品のみを食べるといった偏った食べ方をするのでどうしたら良 いのか」と相談を持ちかけ、先輩参加者が「深めのワンプレートに御飯を盛り付け、その上におかずを全部載せると食べるので、そ れが良い方法である」と自身の体験的知識を後輩参加者に伝達していた。

40 水島(2012),89-90頁。文中の[   ]は、筆者が便宜上補ったものである。

41 井口(2007),215-216頁。

(10)

程で妻の失禁という現実に直面し、畳の上に断 熱素材のアルミシートを敷くという方法を「発 見」したとしても、P氏が在宅で「発見」した 介護経験である限り、それを新しい方法の「発 見」と定義づけることは困難であると考えられ る。なぜなら、⑴

P

氏は妻との二人暮らしの ため、二者関係への閉塞に陥る可能性が高く、

畳の上に断熱素材のアルミシートを敷くという 方法が、本当に「発見」であるかの評価者が不 在であることと、⑵この「発見」の評価のため には

P

氏の対象化が必要になるが、P氏が自ら の「発見」を自身で評価することには限界があ るためである。そこで、P氏は先輩参加者に向 けて自らの「発見」を語ることによって「セラ ピスト役割」を獲得し、自己物語を構成してい ると説明できるだろう。

 それでは、水島(2012)において「役割の固 定化」の傾向が確認される一方で、「役割の流 動化」(仮説

Q)の傾向がほとんど確認されな

かったのはなぜだろうか。水島(2012)で分析 対象とした男性家族介護者の

SHG

では、新規 参加者が継続的に参加せず定着しない傾向が 確認されている。

Altman and Taylor ( 1973 )や Altman(1973)に依拠すれば、新規参加から数

回の参加を経て、先輩参加者との安定的な関係 を構築したうえで初めて、先輩参加者にアドバ イスをすることが可能になると考えられる。そ のため、男性家族介護者の

SHG

において新規 参加者の安定的な獲得および定着を図ることが 可能になれば、後輩参加者が増えることにつな がるため、「役割の固定化」が崩れ「役割の流 動化」が確認されるようになると考えられる。

上述の

P

氏は、新規参加から継続的に参加し

先輩参加者との関係を構築できていたため、先 輩参加者にアドバイスをすることが可能になっ たのではないかと推測される。

5.  男性家族介護者のセルフヘルプ・グ ループのメカニズム

 本章では、男性家族介護者の

SHG

がどのよう なメカニズムで機能しているのか考察を行なう。

4.1

でも論じたように、水島(2012)の知見は、

先輩参加者が自らの介護経験を後輩参加者に語 ることによって「セラピスト役割」を担い、後輩 参加者は先輩参加者へ質問や相談をすることに よって「クライエント役割」を担い、それぞれ が自己物語を構成していくというものであった。

 そして、4.3で検討したように、先輩参加者 が後輩参加者に相談を持ちかけ(先輩参加者が4 4 4 4 4 4

「クライエント役割」を担う

4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4

)、後輩参加者が先

輩参加者にアドバイスをする

(後輩参加者が

4 4 4 4 4 4 4 4

「セ

ラピスト役割」を担う

4 4 4 4 4 4 4 4 4 4

)ことによって自己物語

を構成していく過程こそが、男性家族介護者の

SHG

が機能するうえで重要であると考えられ る。すなわち、「男性家族介護者の

SHG

が機能 するためには、先輩参加者がセラピスト役割だ けでなくクライエント役割をも担い、後輩参加 者がクライエント役割だけでなくセラピスト役 割をも担うことが重要であると考えられる」と 仮定する仮説

Q

が、男性家族介護者の

SHG

の メカニズムを説明するうえで有用であるといえ るのではないだろうか。

 ここまでの議論を踏まえると、⑴男性家族介 護者の

SHG

への「継続的参加」によって「自

Ԭ

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【出典:筆者作成】

図1 男性家族介護者の SHG のメカニズム

(11)

己開示の返報」が繰り返されながら、⑵「先輩 参加者がセラピスト役割だけでなくクライエン ト役割をも担い、後輩参加者がクライエント役 割だけでなくセラピスト役割をも担う」といっ た「役割の流動化」によって相互扶助機能が発 揮され、⑶先輩/後輩参加者ともに自己物語を 構成していくことにつながると説明できるだろ う。この過程を図示したものが、図1である。

6.結語

 本稿では、男性家族介護者の

SHG

が機能す るための条件に焦点をあてながら、男性家族介 護者の

SHG

がどのようなメカニズムで機能し ているのかを探った。以下では、本稿から得ら れた知見を提示する。

 第一に、男性家族介護者の

SHG

において自 己物語を構成していくためには、先行研究で指 摘されている「参加の継続性」に加えて、「先 輩参加者がセラピスト役割だけでなくクライエ ント役割をも担い、後輩参加者がクライエント 役割だけでなくセラピスト役割をも担う」と仮 定する仮説

Q

が有用であることが示唆された。

すなわち、先輩参加者と後輩参加者が「セラピ スト役割」と「クライエント役割」の両方を獲 得し、相互扶助機能を果たしていくことが、男 性家族介護者の

SHG

が機能するために必要な 条件であることが示唆された。

 第二に、男性家族介護者の

SHG

が機能する ためには、「新規参加者の安定的な獲得および 定着」が重要であることが示唆された。なぜな ら、新規参加者が定着しなければ後輩参加者が 増えることはなく、先輩参加者が「セラピスト 役割」の獲得どころか「クライエント役割」の 獲得も困難になり、相互扶助機能が発揮されな くなることが考えられるためである。このよう に、男性家族介護者の

SHG

が機能不全に陥ら ないためにも、新規参加者の安定的な獲得およ び定着が重要になると考えられる。

 上述の知見を踏まえれば、⑴男性家族介護者 の

SHG

への「継続的参加」によって「自己開 示の返報」が繰り返されながら、⑵「先輩参加 者がセラピスト役割だけでなくクライエント役 割をも担い、後輩参加者がクライエント役割だ けでなくセラピスト役割をも担う」といった

「役

割の流動化」によって相互扶助機能が発揮され、

⑶先輩/後輩参加者ともに自己物語の構成につ ながる過程が、男性家族介護者の

SHG

のメカ ニズムであると考えられる。

付記

 本稿は、同志社大学大学院総合政策科学研究 科に提出した博士学位論文『セルフヘルプ・グ ループへの継続的参加による自己物語の構成と 自己変容―若年性認知症の妻を介護する団塊世 代の夫を事例として―』を大幅に加筆修正した ものである。なお、自己物語の内容分析につい ては、別の機会に発表する予定である。

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参照

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