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英国における取締役報酬に関する近時の改正

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英国における取締役報酬に関する近時の改正

著者 伊藤 靖史

雑誌名 同志社法學

巻 67

号 5

ページ 2063‑2101

発行年 2015‑09‑30

権利 同志社法學會

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000015614

(2)

    同志社法学 六七巻五号二一七二〇六三

           

                                退 

(3)

    同志社法学 六七巻五号二一八二〇六四                   

一  はじめに   英国では、一九九〇年代から、取締役報酬について規律の改正が繰り返されてきた。取締役報酬の決定過程や報酬の内容については、主に模範的経営慣行規程(

co de o f b es t p ra ct ic e

)によって規律が加えられる。取締役報酬の開示は、それ以前から比較的詳細なものであったが、一九九五年のグリーンブリー報告書の勧告に従い、上場規則によってさらに詳細なものになった 1

。その後、二〇〇二年の法改正によって、会社法の規則にもとづき、取締役報酬報告書(

dir ec to rs ’ re m un er at io n re po rt

)において詳細な開示が行われるようになった 2

。また、同改正では、株主総会において取締役報酬報告書を承認する勧告決議を行う制度(いわゆる

sa y o n p ay

)が導入された 3

。このように株主総会で経営者の報酬について承認する勧告決議を行う制度は、その後、他の国でも導入されることになった 4

。二〇〇二年の法改正によって形成された会社法の規律は、二〇〇六年会社法にも引き継がれている。

  しかし、以上のような規律にもかかわらず、英国の上場会社の取締役報酬は、二〇〇〇年代を通じて増加を続けた。このような報酬額の増加は必ずしも会社の業績とは連動しないものと考えられ、さらなる規律の改善が求められた。そ

(4)

    同志社法学 六七巻五号二一九二〇六五 のため、数年の改正作業を経て、二〇一三年企業規制改革法 5

に含まれる二〇〇六年会社法の改正によって、取締役報酬政策(取締役報酬に関する会社の方針)についての株主総会の拘束決議(会社および取締役を法的に拘束する決議)による承認のルール等が定められた。また、二〇一三年大・中規模会社・グループ(会計と報告)(改正)規則 6

によって、取締役報酬報告書の内容も改められた。

  本稿は、このような近年の英国での取締役報酬に関する規律の改正について紹介するものである。改正の内容を見る前に、二で、改正までの規律の内容をごく簡単にまとめ、改正の経緯を紹介する。その後、改正後の会社法等の規定の内容について三・四で、この改正に応じた英国コーポレート・ガバナンス・コード(以下では﹁英国CGコード﹂という)・上場規則の改正について五で、概観する。

二  二〇一三年の法改正の経緯 1  取締役報酬に関する従来の規律   二〇〇六年会社法は、英国で登記されたすべての株式会社について、以下の定めを置く。すなわち、二年を超える任用期間を取締役について合意するためには、株主総会決議による承認が必要である 7

。取締役の終任に伴い、事前の契約の定めのない支払い(終任に伴う補償等の形によるもの)をするためには、株主総会決議による承認が必要である 8

。年次計算書類の注記(

no te s

)には、取締役の報酬に関する情報が含まれなければならない 9

  さらに、英国で登記された上場会社(

qu ot ed c om pa ny

₁₀

は、年次報告の一環として、取締役報酬報告書の作成・公開を義務付けられる。同報告書によって、取締役報酬の決定過程や、会社の報酬政策、取締役の個人別の報酬について、

(5)

    同志社法学 六七巻五号二二〇二〇六六

詳細な開示が行われる ₁₁

。上場会社の定時総会には、この取締役報酬報告書を承認する勧告決議を行う議題が上程されなければならない ₁₂

  英国上場規則は、上場会社に、以下のことを要求する。英国で設立された上場会社(

lis te d c om pa ny in co rp or at ed in th e U nit ed K in gd om

)は、その会社または主要な子会社の長期インセンティブ計画(その会社の取締役が参加資格を有するもの)について、株主総会決議による承認を受けなければならない ₁₃

。英国で設立された上場会社は、その年次財務報告に、英国CGコードに定められた主要原則の適用と、同コードに定められたすべての関連する規定の遵守について、説明しなければならない ₁₄

。同コードには、取締役報酬の内容や決定過程に関する原則や規定が定められる ₁₅

2  取締役報酬と会社業績の連動性の欠如   以上のような規律にも関わらず、英国では、二〇〇〇年代を通じて上場会社の取締役報酬は一貫して増加した。増加の程度は、時価総額の大きな会社ほど大きい。FTSE一〇〇構成会社では、CEOの報酬総額中央値が、一九九八年から二〇一〇年までの間に、一〇〇万ポンドから四二〇万ポンドに上昇したとされる。これに対して、FTSE二五〇構成会社や、さらに時価総額が小さな会社では、上昇の度合いは緩やかであった ₁₆

  このようなCEOの報酬額の増加は、会社の業績と連動するものではなかった。FTSE一〇〇構成会社のCEOの報酬総額中央値は、一九九九年から二〇一〇年までの間に、平均すれば年一三・六%増加したのに対して、同期間にFTSE一〇〇指数は平均すれば年一・七%しか上昇しなかった。同期間中、FTSE一〇〇指数が上昇・下降を繰り返したのに対して、CEOの報酬総額は一貫して増加している ₁₇

  このような報酬額の増加の理由として、いくつかのものが考えられる。

(6)

    同志社法学 六七巻五号二二一二〇六七   ア  会社の規模が拡大し、また、それに伴ってCEOの役割も変化したため、報酬も増加したといわれることがある ₁₈

  イ  英国のCEOの報酬構造は、米国と同様に変化してきた。エージェンシー問題の解決を目的として、繰り延べボーナス、ストック・オプション、長期インセンティブ計画といった様々な種類の業績連動型報酬が付与され、CEOの報酬構造は非常に複雑になっている。報酬額の増加は大部分このような業績連動型報酬の増加によるものである。報酬額が繰り延べられる場合、CEOにとってはリスクが上昇するため、より多くの報酬が要求されることになる。また、このように様々な業績連動型報酬が用いられれば、少なくともいくつかの報酬は条件等が成就して実際に支払われることになり、結果として報酬額が増加する ₁₉

  ウ  報酬について要求される詳細な開示によって、かえって、各会社が他社のCEOの報酬をベンチマークとし、有能な人材を引き付けるために中央値よりも高い報酬を支払おうとするために、結果として各会社が支払う報酬額が増加する。ラチェッティング効果(

ra tc he tin g e ffe ct

)とも呼ばれる現象である ₂₀

  エ  CEOについて国際的な人材獲得競争が存在するため、高い報酬額を支払わざるをえないともいわれる ₂₁

  以上のように、上場会社の役員報酬額が会社業績と連動することなく増加の一途をたどってきたという問題点を踏まえて、役員報酬と会社業績とをより明確かつ強固に連動させるため、そして、株主の権限を強化して会社に説明責任を果たさせるため、立法的な措置が探られることになった ₂₂

3  改正の方向性   英国事業・革新・技術省(

D ep ar tm en t f or B us in es s, In no va tio n an d Sk ills .

以下では﹁BIS﹂という)は、役員報

(7)

    同志社法学 六七巻五号二二二二〇六八

酬について求められる法改正の基本的な方向性について、次のように述べる。

  様々な報酬要素を上手く組み合わせて構成され、会社の戦略的目標と明確に連動し、その会社の長期的な成功に貢献する取締役に報いる役員報酬は、事業の安定性と成長を促すために重要である。しかし、役員報酬を会社の戦略と業績に適切に連動させない報酬政策は、株主のリターンを減少させ、コーポレート・ガバナンスを弱め、会社セクターへの公衆の信頼を減少させることを通じて、潜在的な経済的コストとなる ₂₃

  2に述べたような近年の英国の上場会社の役員報酬をめぐる動向は、株式会社におけるプリンシパルである株主が、株主のために会社を経営するよう選任されたエージェントである取締役に対して影響を与え、取締役をコントロールするための、適切なメカニズムと十分な情報を有しているのか、という疑問を生じさせるものである ₂₄

  このような事態を改善するために第一に行動すべきは株主であり会社であるが、政府としても、とりわけ、株主が情報を欠いており、会社に説明責任を果たさせるために必要な権限を有していない場合には、役員報酬に関する効果的なコーポレート・ガバナンスの枠組みを提供する役割を果たさなければならない ₂₅

  政府が立法上の措置や、その他の措置をとることで、株主には、役員報酬について、梃子となるものがさらに与えられることになる。株主に権限を付与することは、英国のコーポレート・ガバナンスの枠組みの中心であり、以下に述べる具体的な改正の内容は、このような基本的なアプローチと一貫するものである。改正によって、株主は、例外的に良い業績について報償を与え、平凡な業績や失敗について報償を与えることを避けるために、より強く明確な報酬と業績の連動を促すことが可能になる。会社は、株主にとって理解が容易で受容可能な取締役報酬政策を先んじて作成し、役員報酬の問題についての株主からの異議申し立てに適切に対応するよう、促される ₂₆

  改正の具体的な内容として、当初は、開示の改善 ₂₇

、役員報酬に関する株主の権限強化(報酬について株主総会の拘束

(8)

    同志社法学 六七巻五号二二三二〇六九 決議を要求することのほか、指名委員会に株主の代表者を含めること等も選択肢とされた) ₂₈

、報酬委員会の構成等についての規律を設けること(委員会構成をより多様化すること、従業員の代表者を報酬委員会に含めること等も選択肢とされた) ₂₉

、報酬構造についても何らかの法律による規律を設けること ₃₀

が検討課題とされた。

  二〇一二年に入ってからも何度か意見照会が繰り返される中で、改正の中心は、会社の将来の取締役報酬政策について株主総会の拘束決議による承認を要求することと、開示の改善に収斂していった。前者に関する二〇〇六年会社法の改正は、二〇一三年企業規制改革法として議会に提出され、成立した。開示の改善は、二〇一三年大・中規模会社・グループ(会計と報告)(改正)規則 ₃₁

によって、取締役報酬報告書に関する二〇〇八年大・中規模会社・グループ(会計と報告)規則スケジュール八 ₃₂

が改正され、実現した。

三  報酬についての株主総会決議 1  取締役報酬政策についての拘束決議⑴  改正の理由

  二1に述べたように、英国では、すでに二〇〇二年の会社法改正によって、取締役報酬報告書について、定時総会での勧告決議による承認が要求されている。この決議は、取締役報酬報告書全体について行われるものであり、同報告書に記された、すでに行われた報酬の支払いと、将来の取締役報酬政策との両方が、決議の対象に含まれていた ₃₃

。この決議は勧告的なものであって、取締役が報酬を受領する契約上の権利や、取締役報酬政策を変更させる効力を有するものではない ₃₄

(9)

    同志社法学 六七巻五号二二四二〇七〇

  このような制度は、株主に、取締役の報酬に影響を与えるための、効果的で、(たとえば、取締役の再任に反対するといった方法よりも)焦点を合わせた手段を与えるよう、定められたものである。これによって、株主は、投資先会社のコーポレート・ガバナンスへの関与を強め、投資先会社との関係を発展させるよう促された ₃₅

。数は多くないが、実際に取締役報酬報告書の承認が得られなかった事例もあり、また、取締役報酬報告書の承認への賛成票の割合は、経済状況によっても増減してきた。取締役報酬報告書の承認への賛成票は平均すれば九〇%程度にもなるが、二〇%を超える株主が賛成を控えた事例もいくつかある。そのような事例では、多くの場合、承認が得られなかった後で取締役報酬政策の大幅な見直しが行われたが、適切な対応を怠る会社も存在する。つまり、勧告決議が限定的な効果しか有しない事例も存在するのである ₃₆

  以上の問題に対処するために、取締役報酬報告書の承認を拘束決議によるものとすることも考えられたが、そのようなルールの下では、承認が得られなかった場合にすでに行われた報酬の支払いの効力について難しい問題が生じる ₃₇

。そのために株主が権限の行使をためらうという、かえって望ましくない結果が生じるおそれもある ₃₈

。そこで、投資家等から寄せられた意見を参考に、将来の取締役報酬政策について拘束決議による承認を要求し、そのように承認された取締役報酬政策の範囲内で報酬を支払うよう会社に要求することで、従来の勧告決議の欠点を補うものとされた ₃₉

。取締役報酬政策に関する拘束決議によって、株主には、給与の増額、次年度の業績連動型報酬の付与レベルや業績基準、取締役の年金に関する合意の重要な変更、取締役の任用契約や契約に定めのない支払いに関する重要な変更について、承認をする機会が与えられる ₄₀

  以上のような改正に応じて、四に述べるように、取締役報酬報告書の内容も、会社の将来の取締役報酬政策を開示する部分と、そのような取締役報酬政策の実施状況(実際の報酬支払額を含む)を開示する部分とに区分されることにな

(10)

    同志社法学 六七巻五号二二五二〇七一 った ₄₁

⑵  取締役報酬政策の承認   二〇一三年企業規制改革法によって改正された二〇〇六年会社法は、株主総会の拘束決議による取締役報酬政策の承認に関連して、以下の規定を置く。

  ア  上場会社(

qu ot ed c om pa ny

₄₂

は、次に述べる株主総会において、取締役報酬政策(

dir ec to rs ’ r em un er at io n po lic y

)を承認する決議(普通決議による)を行う意図を、通知しなければならない。このような通知が義務付けられるのは、⒜その会社が上場会社になった日またはその後の日に始まる最初の事業年度に開催される定時総会、および、⒝ここで義務付けられる通知が行われた最終の総会の後の最初の事業年度から始まる三事業年度間が終了するまでに開催される総会である ₄₃

  イ  さらに、上場会社は、その会社の最終の定時総会において四三九条の下で要求される決議(2に述べる取締役報酬政策の実施に関する勧告決議)が可決されず、かつ、その定時総会(または、次の定時総会以前に開催されたいずれかの総会)について上記アの通知が行われなかった場合には、定時総会において、取締役報酬政策を承認する決議(普通決議による)を行う意図を、通知しなければならない ₄₄

  アイで承認される取締役報酬政策は、定時総会の場合は取締役報酬報告書に含まれる取締役報酬政策であり、それ以外の総会の場合は、最終の定時総会で議決に付された取締役報酬政策でも、その後に改訂された取締役報酬政策でもよい ₄₅

。アイの通知は、問題になる総会に先立ち、招集通知を受ける資格のある株主に対して行われなければならない ₄₆

。イの通知が行われた場合、そこから起算してア⒝所定の三事業年度間が計算される ₄₇

。アイの決議を行うことは、株主への

(11)

    同志社法学 六七巻五号二二六二〇七二

通知が遵守されたかどうかにかかわりなく、総会の議題に含まれなければならない。取締役は、これらの議題が総会での議決に付されることを確保しなければならない ₄₈

。これらの決議についての通知がなされないとき、および、これらの議題が総会での議決に付されないときは、会社の取締役は罰金を支払わなければならない ₄₉

  以上を要するに、改正によって、上場会社は、少なくとも三年に一度は、取締役報酬政策について、株主総会の承認を受けなければならなくなったわけである。さらに、取締役報酬政策の実施に関する勧告決議が可決されなければ、次の定時総会において、取締役報酬政策について、株主総会の承認を受けなければならない。当初は、取締役報酬政策が年度によって異なりうることから、このような承認を毎年義務付けることが提案されていた ₅₀

。しかし、これについては意見照会への反対も強く、むしろ、長期的で、事業戦略と明確に関連した取締役報酬政策を会社が策定することを促すため、決議の頻度は、少なくとも三年に一度とされた ₅₁

⑶  取締役報酬政策を承認する決議の効果   会社は、次の場合でなければ、会社の取締役である者、取締役になる予定の者、または、取締役であった者に対して、報酬を支払ってはならない。報酬の支払いが許されるのは、⒜支払いが、承認された取締役報酬政策に従う場合、または、⒝支払いが、総会決議によって承認された場合である ₅₂

。ここでいう承認された取締役報酬政策とは、総会で可決された決議によって承認された取締役報酬政策のうち最近のものをいう ₅₃

。これらのルールに違反する支払いを行う義務を合意しても、無効である ₅₄

。また、①これらのルールに違反して行われた支払いは、受領者によって会社のために信託的に保有されているものと評価され、②会社が損害を被った場合には、その支払いを承認した取締役が連帯責任を負う ₅₅

  以上に述べたように、報酬の支払いの制限のルールは、現に会社の取締役である者だけでなく、﹁取締役になる予定

(12)

    同志社法学 六七巻五号二二七二〇七三 の者、または、取締役であった者﹂にも適用される。﹁取締役になる予定の者﹂への報酬の支払いには、その者の前職に関する任用契約上の報酬を会社が代りに支払うことも含まれ、そのような支払いも、以上に述べた⒜⒝いずれかに該当しなければ許されない ₅₆

  以上のように、会社は、総会で承認された取締役報酬政策に従って取締役報酬を支払わなければならない。その意味で、取締役報酬政策を承認する総会決議は、拘束的なもの(

bin din g

)といわれる ₅₇

  取締役報酬政策を承認する決議が否決された場合、会社には、次の選択肢がある ₅₈

。アすでに承認された最終の取締役報酬政策に従って報酬支払いを継続する。イすでに承認された最終の取締役報酬政策に従って報酬支払いを継続することに加えて、そのような最終の取締役報酬政策に従わない報酬の支払いについて、別個に総会の承認を受ける。ウ改めて総会を開催し、取締役報酬政策について承認を受ける。この場合に承認を求める取締役報酬政策は後に述べる⑸に従って改訂したものでもよいし、承認を受けられなかった取締役報酬政策を改訂せずに再度承認を求めることもできる。

⑷  取締役報酬政策の承認のための決議要件・決議への反対   取締役報酬政策の承認のための決議要件は、⑵に述べたように、普通決議(

or din ar y r es olu tio n

)である ₅₉

。普通決議は、投票(

po ll

)による場合、決議において直接に、委任状によって、または事前に議決権を行使する(その資格のある)株主の総議決権の過半数(

sim ple m ajo rit y

)による ₆₀

  改正作業の過程では、取締役報酬政策の承認については、普通決議よりは厳しいが、七五%の賛成を要する特別決議(

sp ec ia l r es olu tio n

₆₁

よりは緩やかな決議要件を定めることも検討された ₆₂

。このような検討がなされたのは、次の理由による。すなわち、従来の取締役報告書に関する勧告決議による承認については、平均して他の決議よりも反対の割合

(13)

    同志社法学 六七巻五号二二八二〇七四

が高く、かなりの割合の株主が賛成をしない事例も、数は少ないながら見られた ₆₃

。また、決議に反対はしないまでも不満を伝える方法として、そのような決議について棄権(

ab st ain

)をすることが一般的になっている。棄権は行使された議決権に算入されないため ₆₄

、棄権を含めて考えれば、過半数の賛成を得られなかった事例もある ₆₅

。英国の上場会社の株主構成は変化してきており、コーポレート・ガバナンスについて伝統的に重要な役割を果たしてきた英国国内の機関投資家による持株割合は低下してきている ₆₆

。このように株式所有はかつてよりも分散しており、特定の決議について過半数がこれに反対する可能性は非常に低い ₆₇

。以上のようなことから、決議要件を普通決議よりも厳しくすることが検討されたわけである。決議要件の厳格化によって、決議を成立させるために取締役報酬について株主と対話することを会社に促すこと、そして、取締役報酬について株主により強い権限を与えることで積極的な役割を果たすよう株主に促すことが期待された ₆₈

  しかし、このようなルールには反対意見が強く、取締役報酬政策の承認のための決議要件は普通決議とされた。決議要件の厳格化によって取締役報酬の問題に不相応に焦点が当てられること、および、少数株主に強い権限が与えられることが望ましくないと考えられたのである ₆₉

⑸  取締役報酬政策の改訂   会社の取締役報酬報告書に含まれる取締役報酬政策は、これを改訂することができる ₇₀

。そのような改訂は、取締役会によって承認されなければならない ₇₁

。そのようにして改訂された取締役報酬政策は、取締役または秘書役(

se cr et ar y

)によって取締役会のために署名された文書に記されなければならない ₇₂

。以上のルールに従って取締役報酬政策が改訂された場合、会社は、年次計算書類および報告書が入手できるようにされるウェブ・サイトで、改訂された取締役報酬政

(14)

    同志社法学 六七巻五号二二九二〇七五 策を入手できるようにしなければならない ₇₃

  以上のルールによって、会社は、取締役報酬政策を、定時総会を待たずに改訂することができる。たとえば、取締役報酬政策に欠陥があることが判明した場合、従来は想定されていなかった報酬支払いをしたい場合、合併等の後で次の定時総会を待たずに取締役報酬政策を変更したい場合等に、会社がそのような改訂を望むことがある ₇₄

  このように取締役報酬政策の改訂は可能であるが、⑵に述べたように取締役の報酬の支払いは総会で承認された取締役報酬政策に従わなければならないため、結局、取締役報酬政策の改訂については総会の承認が必要だということになる ₇₅

2  取締役報酬政策の実施に関する勧告決議   改正後も、取締役報酬報告書について、定時総会での勧告決議による承認を要求する規定は、そのまま残されている。改正後は、勧告決議の対象になるものは、取締役報酬報告書のうち四三九A条による承認(1に述べたもの)を要求される取締役報酬政策を含まない部分と改められた ₇₆

。この勧告決議は、改正後には、株主が、(実際の報酬支払額を含む)取締役報酬政策の実施状況に満足しているかどうかを示すものと位置付けられ、改正後も定時総会ごとに要求される ₇₇

  このような決議は勧告的なものであって、取締役が報酬を受領する契約上の権利や、取締役報酬政策を変更させる効力を有するものではない ₇₈

。しかし、改正後は、勧告決議が可決されなければ、1⑵に述べたように、次の定時総会で取締役報酬政策について承認を受けなければならなくなった。従来、勧告決議が可決されなかった場合に適切な対応をしない会社があったことに対する投資家等の不満が強かったこともあり、以上のようなルールが採用されたものと考えられる。

(15)

    同志社法学 六七巻五号二三〇二〇七六

3  退職金   英国では、業績不振等による取締役の退職の際に会社が多額の退職金を支払う事例について、しばしば、﹁失敗への報酬﹂であると批判されてきた。そのような退職金の支払いに対処する意味を有する規定は、二〇〇六年会社法にも置かれている。すなわち、二1に述べたように、二年を超える任用期間を取締役について合意する場合、また、取締役の終任に伴い事前の契約の定めのない支払いをするためには、株主総会決議による承認が必要である。英国CGコードにおいても、取締役の任用期間は一年以内に定められるべきものとされ、現在ではほとんどの会社が取締役については一年の任用期間を更新する扱いをとっている。しかしながら、退職金の支払いは実務上定着しており、株主は、退職金支払いの根拠となる任用契約等の締結に直接関与することができない。多額の退職金が取締役に支払われる事例も、なくなっていない。退職金に関する契約条項は複雑であり、退職金額の決定に関する報酬委員会の裁量が大きい ₇₉

  以上のようなことから、改正作業の過程では、一年間の基本給相当額を超える退職金の支払いについては、株主総会の拘束決議による承認を要求することも検討された ₈₀

。しかし、このようなルールを定めれば、かえって基本給の増額が行われ、長期のインセンティブを用いることが抑制される可能性があること、また、任用契約の内容をそのようなルールに合わせて変更するために取締役に支払わなければならない対価等の費用が生じることから、これに反対する意見が多く、そのようなルールは定められなかった ₈₁

  改正後の会社法の下で、退職金について追加されたルールは、次のようなものである。1⑵に述べた総会の拘束決議によって承認されなければならない取締役報酬政策には、取締役の退職金についての政策も含まれる。そのため、会社は、承認された取締役報酬政策に従って退職金を支払うか、個別に総会の承認を受けて支払われなければならない。終任に伴う支払いも、同様に取締役報酬政策に含まれ、承認された取締役報酬政策に従って支払われるか、別個に総会の

(16)

    同志社法学 六七巻五号二三一二〇七七 承認を受けて支払われなければならない ₈₂

  さらに、ある者が上場会社の取締役でなくなった場合、会社は、次の情報を、年次計算書類および報告書が入手できるようにされるウェブ・サイトで入手できるようにしなければならない ₈₃

。⒜その者の名。⒝その者が取締役でなくなった後で支払われた、または、支払われる予定である、報酬支払いの詳細(その額と算定方法を含む)。⒞その者に支払われた、または、支払われる予定である、終任に伴う支払いの詳細(その額と算定方法を含む)。このような開示によって、株主は、次の定時総会に提出される取締役報酬報告書を待たず、取締役の退職に伴ってどれだけの支払いが行われたのかを知ることができるようになった ₈₄

四  取締役報酬報告書 1  従来の開示の問題点   英国では、取締役の報酬について、二1に述べたように詳細な開示が要求されてきた。しかし、そのような開示については、取締役報酬報告書が徐々に長く複雑になってきており、主要な事実や数字が他の大量の情報に埋もれてしまっているという問題が指摘された。取締役報酬報告書は長大であるにもかかわらず、取締役報酬についての会社の提案を株主が検討する際に助けになる情報(報酬と業績の連動性、また、役員報酬と従業員も含めた会社全体での報酬との連動性についての明確な説明など)がしばしば欠けているともいわれた ₈₅

  このようなことから、当初、取締役報酬に関する開示については、年次報告における非財務情報に関する報告(

na rr at iv e re po rti ng

)の改善措置の一環として、改正を行うことが検討された。すなわち、非財務情報に関する報告を改善する

(17)

    同志社法学 六七巻五号二三二二〇七八

ために、年次報告に戦略報告(

St ra te gic R ep or t

)という独立した項目を置き、そこでまず会社の戦略・事業モデル等について簡潔に記述するものとされた ₈₆

。そして、戦略報告において、個々の取締役の報酬総額や報酬と業績の連動性等についての開示も要求し、その他の詳細は別の箇所で開示することが考えられた ₈₇

  その後、取締役報酬については株主等の関心も高く、取締役報酬の開示がますます重要になっていることから、取締役報酬について開示をする箇所を分けることは適切でないと考えられるようになった。そして、三1に述べたように会社の取締役報酬政策について株主総会の拘束決議による承認を要求するルールが設けられたことに伴い、取締役報酬報告書は、役員報酬についての将来の政策を記す部分と、会社の取締役報酬政策がいかに実施されたかを記す部分に分けられることになった ₈₈

  この改正は、二3にも述べたように、二〇一三年大・中規模会社・グループ(会計と報告)(改正)規則 ₈₉

によって、取締役報酬報告書に関する二〇〇八年大・中規模会社・グループ(会計と報告)規則スケジュール八 ₉₀

を改正することで行われた。以下では、改正後の取締役報酬報告書の内容を概観する。

2  全体の構成と報酬委員会議長の年次報告   取締役報酬報告書には、﹁報酬委員会議長の年次報告﹂(

an nu al st at em en t

)、﹁報酬に関する年次報告﹂(

an nu al re po rt on re m un er at io n

)、および、﹁取締役報酬政策﹂(

dir ec to rs ’ r em un er at io n p oli cy

)が示されなければならない。

  このうち﹁取締役報酬政策﹂が、三1⑵に述べた取締役報酬政策の承認の対象であり、株主総会がそのような承認を行わない場合には記載しないことができる。その場合には、﹁取締役報酬政策﹂が承認された直近の株主総会の日と、当該承認された﹁取締役報酬政策﹂を株主が閲覧することができるウェブ・サイト等が記載されなければならない ₉₁

。会

(18)

    同志社法学 六七巻五号二三三二〇七九 社が﹁取締役報酬政策﹂の承認決議を求めることを意図しており、かつ、当該承認決議後にも前回に承認された﹁取締役報酬政策﹂の一部または全部を継続して適用することを意図する場合には、そのことが当該承認決議の対象である﹁取締役報酬政策﹂において述べられなければならず、かつ、前回に承認された﹁取締役報酬政策﹂のどの部分が継続して適用されるか、および、その期間が明らかにされなければならない ₉₂

、れ約されて述べらながければならない況要 ₉₃ お更変な要主るす連関に酬報役締取たれ、じよ行状たれわ行が定決生びが更変のられこ、わにる度年該当、定決な要主   ﹁はに合議場いないが長の﹂(告報次年締長議会員委酬取報役です関に酬報役締取、は)会るよに役締取たさ名指にれ

。このような開示は、取締役報酬に関する開示の透明性を高め、取締役報酬について鍵となる情報を株主が見つけることを容易にするために設けられたものである。従来から多くの会社では、取締役報酬報告書の前書きとして、報酬委員会議長の株主へのレターを記していた ₉₄

3  報酬に関する年次報告 下るの項事の下以。あちでのもなうよのう、以査るなに象対の監⑴、はでま⑹らか ₉₅   ﹁なはれわ払支に役締取各、に報﹂告報次年るす関に酬た酬いら。記載報項の概要は、な額ばれけなれさ載記が等事

⑴  各取締役の報酬総額(

sin gle to ta l f ig ur e

)   当該事業年度の各取締役の報酬総額が、次のような表の形で記載されなければならない(報酬総額表

sin gle to ta l fig ur e t ab le

)︹表1︺。表の向きは、これと異なる向きでもよい ₉₆

  同表のうち、a~eには、次の報酬の額(それぞれ、当該事業年度の額と前事業年度の額)が記載される。これらは、

(19)

    同志社法学 六七巻五号二三四二〇八〇

表の理解のために必要であれば異なる順序で記載されてもよい。これらに含まれないが報酬の性質を有するものについては、項目を追加しなければならない。表の理解のために必要であると取締役が判断した小計その他の項目を追加することもできる ₉₇

  a:給与および手当の総額。   b:課税便益(

ta xa ble b en ef its

)。

  c:当該事業年度に終了する期間に関連する業績基準・目標の達成の結果として、当該事業年度に受領されまたは受領可能になる金銭その他の財産。

  d:一年を超える期間について受領されまたは受領可能になる金銭その他の財産。ただし、最終的な権利確定が、当該事業年度に終了する期間に関連する業績基準・目標の達成の結果として決定され、かつ、将来の事業年度における業績基準・目標の達成を条件としないものにかぎる。

  e:年金に関連する便益。   そして、a~eに記された金額の合計額が、総額の欄に記載される。   過年度の取締役報酬報告書の報酬総額表で報告された金銭その他の資産が当該事業年度において返還または支払いの停止(いわゆるクローバック)の対象である場合、その額は別個の欄にマイナス額として記載され、総額から控除された上で、返還・支払いの停止の理由とその額の算定根拠が注記されなければならない ₉₈

  実は、従来の取締役報酬報告書では、このような各取締役の報酬の総額が一つの数字として

〔表1〕報酬総額表 報酬総額表

a b c d e

総額

取締役1 取締役2

(20)

    同志社法学 六七巻五号二三五二〇八一 開示されていなかった。従来、取締役報酬は、給与・手当・賞与等を示す表のほか、ストック・オプションについての表、長期インセンティブ計画についての表、年金についての表に分けて開示されていたのである。そのため、株主にとっては各取締役が合計でどれだけの報酬を受領しているのかを理解することが容易ではなかった ₉₉

。改正によってこのような事態が改善されたわけである。

⑵  年金受給権総額 100

  各取締役について、その者が受給資格を有する年金に関する次の情報が記載されなければならない。⒜当該事業年度末における年金受給権の詳細(その者の通常の退職日を含む)、⒝取締役の早期退職の場合に受領可能になる追加的な便益、および、⒞報酬総額表に年金に関連する便益として記載されたものが複数種類の年金の便益からなる場合には、各種類に関する詳細。

⑶  事業年度中に付与された計画による利益(

sc he m e i nt er es t

101

  各取締役について、次の事項が表の形で記載されなければならない。⒜当該事業年度中にその者に付与された計画による利益の詳細、および、⒝各計画による利益について、ⅰ付与された利益の種類、ⅱ付与が行われる基準、ⅲ付与の名目額(株式またはストック・オプションに関連した計画による利益については、すべての業績基準・目標が達成された場合に権利確定する株式の最大数に、付与日の株価または付与株式数を決定するために用いられる平均株価を乗じたもの)、ⅳ計画による利益のうち、最低限の業績が達成された場合に受領可能になるものの割合、ⅴ計画による利益がストック・オプションである場合には、付与の名目額の算定に用いられた株価と、行使価格との差についての説明、

(21)

    同志社法学 六七巻五号二三六二〇八二

ⅵ業績基準・目標が当該利益のために達成されなければならない期間の末日、および、ⅶ業績基準・目標の概要(これが報告書の他の箇所に記されていない場合に限る)。

⑷  元取締役への支払い 102

  ⑴や⑸として開示されるものや、以前の取締役報酬報告書で開示されたことがあるもの等を除いて、当該事業年度の間に元取締役に対して支払われた金銭その他の資産の詳細が開示されなければならない。

⑸  終任に伴う支払い 103

  元取締役について、次の事項が記載されなければならない。⒜当該事業年度に支払われまたは受領可能になる終任に伴う支払いの総額(構成要素ごとに価値を記載する)、⒝各構成要素の算定方法、⒞その者に支払われまたは受領可能になる、特定の役務の終了に関する支払い(終任時またはその後に権利確定するインセンティブ付与の取扱いを含む)、⒟当該支払いについて裁量が行使された場合には、どのように行使されたかの説明。

⑹  取締役の株式保有および株式についての利益 104

  各取締役について、当該取締役が会社の株式を保有することについての要求またはガイドラインと、当該要求またはガイドラインが守られたかどうかが記載されなければならない。また、次の事項が表の形で記載されなければならない。ⅰ当該取締役の会社の株式持分の総数、ⅱ計画による利益の総数(株式とストック・オプションを区別し、また、業績基準が定められたものと定められていないものを区別)、ⅲこれらの計画による利益の詳細(報告書の他の箇所に記

(22)

    同志社法学 六七巻五号二三七二〇八三 されているものは除くことができる)、および、ⅳ権利確定しているが行使されていないストック・オプション、および、当該事業年度に行使されたストック・オプションの詳細。

⑺  業績グラフおよび表 105

  業績グラフとして、当該会社の上場株式についての累積投資収益率と、株式市場と同じ動きを示す株式についての累積投資収益率とを、過去五事業年度にわたって比較する折れ線グラフが記載されなければならない。さらに、過去五事業年度それぞれについて、CEOに関する次の事項が、表の形で記載されなければならない。⒜報酬総額表に記載された報酬総額、⒝報酬総額表のcの欄に記載された金額が、当該事業年度において最大限支払われる可能性のあった金額に占める割合、⒞報酬総額表のdの欄に記載された金額が、当該事業年度において最大限支払われる可能性のあった金額に占める割合。

⑻  CEOの報酬の変化割合 106

  CEOについて報酬総額表のa、b、およびcの欄に記載されることが要求される各種類の報酬額の前事業年度からの増減の割合と、会社の従業員全体に支払われたそれぞれに対応する報酬額の平均の増減の割合とが、対比する形で記載されなければならない。

⑼  報酬支払いの相対的重要性 107

  当該事業年度および前事業年度について、グループの全従業員に支払われた報酬または受領可能な報酬についての会

(23)

    同志社法学 六七巻五号二三八二〇八四

社の現実の支出と、配当または自己株式取得によって株主に分配された会社の現実の支出とが、グラフまたは表の形で記載されなければならない。

⑽  次の事業年度の報酬政策の実施 108

  承認された﹁取締役報酬政策﹂を、当該事業年度の次の事業年度において、会社がどのように実施しようと意図しているかが記載されなければならない。そこでは、⒜業績基準と、複数の業績基準それぞれの相対的比重、⒝業績基準のために定められた業績目標と、付与される報酬の算定方法が記されなければならない。当該事業年度における実施に比べて、報酬政策の実施方法に重要な変更がある場合には、その詳細が記載されなければならない。

⑾  取締役会による取締役報酬に関する問題についての考慮 109

  会社の取締役会の委員会が、当該事業年度の取締役報酬に関する問題について考慮した場合、次の事項が記載されなければならない。⒜そのような問題を考慮した時の当該委員会構成員である各取締役の名、⒝そのような問題の考慮の際に当該委員会を実質的に補助する助言またはサービスを当該委員会に提供した者がいるかどうか、および、その者の名、⒞上記⒝の者が取締役でない場合、その者(法遵守のための法的助言を与えた者を除く)について、ⅰその者が当該事業年度において当該会社に提供した他のサービスの性質、ⅱその者が誰によって任命されたか、当該委員会によって任命されたか否か、どのようにしてその者が選ばれたか、ⅲ提供された助言が客観的かつ独立したものであると当該委員会が満足したかどうか、また、どのように満足したか、ⅳ上記⒝の助言またはサービスの提供について会社によってその者に支払われた報酬の額、および、その算定の基準。

(24)

    同志社法学 六七巻五号二三九二〇八五 ⑿  株主総会における議決 110

  前回の株主総会において、次の決議が行われた場合、それぞれ、次の事項が記載されなければならない。⒜取締役報酬報告書を承認する決議について、賛成票・反対票の割合と、棄権票数。⒝﹁取締役報酬政策﹂を承認する決議について、賛成票・反対票の割合と、棄権票数。⒞そのような決議に反対する割合が大きかった場合には、取締役会が知る限りでの反対票の理由の概要と、これらの懸念に対応して取締役会がとった措置 111

4  取締役報酬政策   取締役報酬報告書の中で﹁取締役報酬政策﹂という独立した部分として、会社の将来の報酬政策について以下の事項が記載されなければならない 112

⑴  将来政策表(

fu tu re p oli cy ta ble

)   会社の取締役報酬政策に含まれる取締役の報酬パッケージの各構成要素が、表の形で説明されなければならない。すべての取締役に一般的に適用される定めが記載される場合には、特定の取締役についての特別の取決めがあれば、それも記載しなければならない 113

。このような表の形での取締役報酬政策の開示は、従来、会社の報酬政策がどのように会社の戦略および業績を支持するものなのかが、容易に理解できる形で一貫して開示されてはこなかったという問題点を受けたものである 114

  表で説明される各構成要素については、次の情報が記載されなければならない 115

。⒜当該構成要素が会社(当該会社が親会社である場合は、会社グループ)の短期および長期の戦略的目標をどのように支持するか。⒝報酬パッケージ

(25)

    同志社法学 六七巻五号二四〇二〇八六

のうち当該構成要素がどのように働くかの説明。⒞当該構成要素について支払われる可能性がある最大限(金銭額やその他で表現することができる) 116

。⒟業績を評価するために用いられるフレームワークの説明。この⒟には、ⅰ適用される業績基準の説明と、複数の業績基準が適用される場合にはそれぞれのウェイト、ⅱ業績評価期間の詳細、および、ⅲ当該政策の下で支払いが行われるための最低限の業績水準において支払われる額と、当該政策に従って設定されたそれよりも高い業績水準において支払われる額が含まれる。⒠支払われた額の返還または支払いの停止についての定めがあるかどうかの説明。

  この表について、たとえば、次の事項が注記されなければならない 117

。上記⒟の記載がある構成要素については、業績基準が選ばれた理由と業績目標がどのように設定されるかが注記されなければならない。業績基準に服さない構成要素(給与、手当、便益、年金を除く)については、業績基準が定められない理由が注記されなければならない。さらに、取締役の報酬についての会社の政策と従業員一般の報酬についての会社の政策に相違があれば、その説明が注記されなければならない。

  業務の執行を職務としない取締役については、以上の表とは異なる表で、次の報酬の決定についての会社のアプローチを記載することでもよい 118

。⒜そのような取締役に支払われる手当、⒝会社に対する他の義務について支払われる追加的手当、⒞報酬の性質を有すると考えられるその他のもの。

⑵  リクルート報酬についてのアプローチ 119

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参照

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