〔研究ノート〕
老 人 の た め の デ イ ケ ア サ ー ビ ス における家族援助
副 田 あ け み
1 .
デイケアサービスの目的と利用者( 1 ) ヂイケアサービスの目的
1 2 9
デイケアサービスというタームは,デイケアとかデ、イサービスといったこと ばと互換的にもちいられることもあって,諸外国でもわが国でも必ずしも一定
した使われかたがなされていなし、。筆者はこれら類似の概念について検討し,
デイホスピタノレやデイセンター,ケアセンター,老人ホームなどの場におい て,通所してきた老人に提供される各種のバーソナルサービスを総称すること ばとして,デイケアサービスをもちいることにした
ω
。つまり,デイケアサー ビスとは,虚弱であったり,身体上,精神上の障害をもち,日常生活を営むう えでなんらかの介助を要する在宅老人が,日中特定の施設に来所してうける各 種のパーソナルサービスをいう Oで、は,デイケアサービスの目的はなにか。イギリスのデイケアサービスの実 態を整理した
Goldberg
とConnelly
は,老人のためのデイケアの多様な目 的を,①ひとりぐらし老人の外出や社交を促進し,仲間との食事の機会を提供 すること,②重度の身体障害老人や精神障害老人の介護者の負担を軽減するこ と,③抑うつ状態とか孤立状態にある人々にたいして社会性や生活技能の維持 訓練を提供すること,④身体障害老人にたいして機能回復および機能維持訓練 を提供すること,⑤施設ケアを代替する,あるいは施設入所を準備すること,の
5
つに整理している。ただし,この分類はサーピスを提供する場に応じた分1 3 0
老人のためのデイケアサーピスにおける家族援助類で,①はローカルグラブやドロップ・イン・センター,ケアっき住宅付設の 社会的施設などの目的,②は移送を初めとしてカイロポデイ,理容,洗濯とい った日常的ケアサービスを提供する公立,私立のデイセンターの目的,③およ び④は老人のためのデイホスピタルの目的,⑤は老人ホームにおけるデイケア の目的をさしているといってよい(2)。
アメリカの老人医療の実態をまとめた
P e g e l s
は,老人のためのデイケアの 目的を,①在宅で生活してはいけるが,そのためには種々の医療サービスやリ ハビリテーションを必要とする老人が自立して暮らして行けるよう援助したり,ナーシングホームヘ収容されるのを予防すること,②病弱老人の生活内容 を質的に向上させること,としている。そのためのプログラムは,まず快適で 安心できる環境を提供し,そのうえで食事,休息,社会活動,適度の運動,送 迎といったサービスを提供すること,さらに,家族問題の相談,専門家による 医療相談,日常生活動作の訓練, リハピリテーション治療などの個別サービス や,個人衛生,入浴,爪きりなどの個別サービスの提供も含めることが望まし い〈へまた,
D i 1 worth‑Anderson
は,デイケアの目的を「身体的・精神的機 能の維持,回復,改善Jと述べるとともに,デイケアは「一般に家族介護を補 完し家族を救済する」とその家族援助的側面を重視しているω
。わが国では,厚生省が定めた『在宅老人デイ・サービス事業実施要綱(1
9 8 6
年)Jlが, デイサービスの目的を「在宅の虚弱老人等の生活の助長, 社会的孤 立感の解消,心身機能の維持向上等を図るとともにその家族の身体的・精神的 な負担の軽減を図ること」としている。また,この要綱にしたがって,従来の 東京都のケアセンター事業とデイホーム事業,そして国の補助事業としてのデ イサーピス事業の3
つを統合して一本化した都の『高齢者在宅サービスセンタ 一事業実施要綱( 1 9 8 7
年)Jlは, この事業目的を「在宅の虚弱老人, ねたきり 老人等要介護老人およびその家族の福祉の向上を図ること」としているO これらの事業は,その目的の達成のために生活指導・相談・趣味生きがい活動,日 常動作訓練,養護,健康チェッグ,送迎などのサービスを基本事業として提供 することになっている
ω
。以上のことから,デイケアサーピスは多様な目的をもったサービスであるこ
老人のためのデイケアサービスにおける家族援助
1 3 1
と,また,とくにわが国では,老人へのサービスの提供をとおして家族の負担 を軽減するという家族援助の側面が,その目的として重視されていることを理 解することができる。デイケアサーピスには,老人の「福祉の向上」とともに家 族の「福祉の向上」を図ることが強く期待されているといってよいであろう(ヘ( 2 )
デイケアサービスの利用者では,実際にデイケアサービスを利用しているのは,どのような老人と家族 なのであろうか。これを,大阪府老人施設部会デイサービス研究会がおこなっ た『デイサーピス事業全国実態調査報告書(1
9 8 4
年)Jlと, 東京都老人福祉部 会ケアセンタ一分科会がまとめた『ケアセンター統一報告書(19 8 5
年)Jlのデ ータで概観しておこう (7)。利用老人の世帯類型をみると(表 1),
r
ひとりぐらし世帯」の老人は,もっ とも多いデイホーム利用者においても17.9%
と2
割に満たず,ケアセンター事 業の各種サービス利用者では4‑8%
ていどにすぎない。残りのほとんどは家 族員や親族との同居世帯であるc r
その他の親族との同居世帯」には,子やそ の配偶者および孫以外の親族を含む世帯が多いと思われる〉。つまり,家族員 との同居世帯の割合は8‑9
割以上ということになる。このうち, r夫婦世 帯J
,つまり配偶者という家族員のみとの同居世帯は,もっとも多い機能回復 訓練利用者で26.9%
,もっとも少ないショートステイ利用者で17.0%
である。「単身の子どもとの同居世帯」は,もっとも多いデイホーム利用者で
14.8%
, もっとも少ないショートステイ利用者で10.0%
,r
配偶者のある子との同居世 帯」および「子と孫との同居世帯J
は,もっとも多いショートステイ利用者で60.1%
,もっとも少ない機能回復訓練利用者で37.7%
であった〈デイサービス 利用者の世帯類型はこれらの世帯にかんして分類方法が若干異なるので比較せ ず〉。いずれにしても,デイケアサービスは家族介護をうけている老人が圧倒 的に多く利用している。なお,比較的重い障害をもっ老人を対象とする入浴サーピスやショートステ イの利用は,家族介護力が相対的に弱いと考えられる「夫婦のみの世帯」およ び「単身の子との同居世帯」の利用率が「配偶者のある子との同居世帯」およ び「子と孫との同居世帯」のそれよりも高いのではないかと予想されたが,両
同
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C%)
ひとりぐ I夫婦世帯 単身の居息子 単身の娘と 息子家族と 娘家族との その他の親居
計 と の 同 世 族との同 そ の 他
らし世帯 帯 の同居世帯 の同居世帯 同居世帯 世帯
ケ事 入浴サービス
l 5 . 0 2 0 . 8 4 . 7 、 ー ー ー ー ー 『 戸 田 町 ー ー ‑ 6 ' . 4 4 0 . 5 』 ー ー ー ー 目 、 、 . ‑ 1 ‑ 3 ' . 5 7 . 8
1.4
ア
1 1 . 1 5 4 . 0
セ
3 . 2 6 . 8 4 3 . 0 1 7 . 1
4 . 1 1 7 . 0 、ーーー田ー、.‑‑' 、‑ーーー、‑ー' 7 . 5
1.4
ン ステイ
1 0 . 0 6 0 . 1
タ
機能回復訓練│
6 . 3 6 . 5 2 7 . 2 1 0 . 5
i
業7 . 7 2 6 . 9 、ーーーーー、.‑‑' 、 司 自 ー ー 司 、 , ー ー ー ー ‑ ' 7 . 7 7 . 1 1 2 . 9 3 7 . 7
帯 世
3 2 . 4
え』口
複 表 1 デイケアサービス利用者の世帯類型
│ひとりぐら し 世 帯 │ 夫 婦 世 帯 │
1 7 e f t i f 1 ! t 1 f t 1
f親 子 世 帯tT i ! t 1 f t 1 │
‑ ' ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ̲ 1 2 . 7
I1 7 . 5
I3 7 . 4
計1 0 0 . 0
デイサーピス事業0 . 3
N A 0 . 6
C%)
t‑
I
1 7 . 3 1
一一「2 . 2
2 . 4
都 妻 宅 ト 護 老 人1 1
∞o 1 6 . 9 1 2 0 . 2 1 つ ま γ
i資料 『デイサーピス事業全国実態調査報告書IJ
1 9 8 4
年 『ケアセンタ一統一報告書IJ1 9 8 5
年『老人の生活実態東京都社会福祉基礎調査報告書JI
1 9 8 5
年表 2 デイケアサービス利用者の主たる介護者
│ 号 案 │ 鮮 の │ 野 五 の │ 関 幹 │ 孫 │ へ 山 一 │ 家 政 婦 │ そ の 他 │ な
2 7 . 0 I 2 . 3 1 O . 9 1 1
1.4 1 9 . 6 1 2 . 5 1 つ 7l
n 1 1 5 . 4 1
1.8 1 1 2 . 3 1
1.0 1
1.4 1 3 . 3 1
1.2 I
1.1 1 3 6 . 7 1 7 . 1 1
1.9 1 1 5 . 5 1
1.7 1
1.1 1
1.3 1 o . 7 1 6 . 8 1 1 3 . 6 1 3 . 2 1
1.2 1 7 . 9 1 0 . 6 1 O . 1 1
1.8 1
1.2 1 3 . 5 1 2
1.2 1 5 . 7 1
1.9 1 1 0 . 6
I 1.2 1 o . 3 1 5 . 6 1
1.6 1 3 . 3 1 2 6 . 9 1 ' 2
3.' 3 1
(訪問岩護婦会主)1 3 . 1 1 2.91
4 . 5 3 2 . 8 1 2 . 2
、ーーー‑..‑‑'
4 5 . 0
」 一 ‑ . . ‑ ‑ '
4 9 . 4
│配偶者│ 嫁
1 0 0 . 0 1 2 5 . 0 1 1 0 0 . 0 1 3 8 . 3 1 1 0 0 . 0 1 2 4 . 8 1 1 0 0 . 0 1 4 9 . 9 1 1 0 0 . 0 1 2 5 . 5 1 1 0 0 。日司
計 デ イ ホ ー ム 事 業
デイサービス事業│
ケタ│入浴サービス!
ア 1I ショート │
セ事│ ステイ!ン業l機能回復訓練 l
デ イ ホ ー ム 事 業 │
都調査
│
要 介 護 老 人 │ 資 料 表1に同じ
老人のためのデイケアサーピスにおける家族援助
1 3 3
サービスの利用者の世帯類型の分布を東京都の調査による要介護老人の世帯類 型の分布と比較してみるとω
,逆に低いことがわかった。これは,r
配偶者のある子との同居世帯」および「子と孫との同居世帯」のほうがより重度の障害 老人をかかえている割合が高く,入浴サーピスやショートステイの利用にむす びつきやすいためではないかと考えられる。しかし,もし「夫婦のみの世帯」
および「単身の子との同居世帯」と,
r
配偶者のある子との同居世帯」および「子と孫との同居世帯」とで,かかえている老人の障害ていどがあまり変わら ないとしたら,前二者が後二者にくらべこれらのサービスにむすびつきにくい 理由を検討しなければならないであろうD
利用老人の介護者は表
2
のとおりである。「配偶者」と,r
嫁」および「有配偶の娘」などの子世代による介護の割合をサービス別に求めておくと,デイサ ービス利用老人のばあい
2.5
割c r
配偶者J )
と5 . 1
割c r
子世代J )
, 入浴サービスのばあい
3.8
割と5 . 4
割,ショートステイのばあい2 . 5
割と6 . 4
割,機能回復訓 練のばあい5 . 5
割と2 .7
割,デイホームのばあい2.6
割と4 . 1
割となるo
先の東京 都の調査によると,r
要介護老人〈ねたきり老人, 準ねたきり老人, 比較的重 い障害をもっ老人) J
の介護者は,r
配偶者」が3 . 1
割,r
子世代」が5
割である表
3
デイケアサービス利用者の性別(%)
│ 男 性 │ 女 性
ア 入 浴~(特介均f甘浴)
1 0 0 . 0 4 0 . 8 5 9 . 1
イ
(N=4150)
サ
食 事
1 0 0 . 0 3 3 . 3 6 6 . 7
ピ
(N=4680)
コ % . .
事 日常動作訓練等
1 0 0 . 0 3 4 . 1 6 5 . 9
業
(N=4702)
ケ 入, 浴
1 0 0 . 0 4 4 . 9 5 5 . 1
ア
(N=1984)
セ
ン
ショートステイ1 0 0 . 0 3 8 . 0 6 2 . 0
タ
(N=1802)
事 機能回復訓練
1 0 0 . 0 6
1.2 3 8 . 8
業
(N=956)
デ イ ホ ー ム 事 業
(N=576) 1 0 0 . 0 3 6 . 3 6 3 . 7
1 3 4
老人のためのデイケアサーピスにおける家族援助から, ショートステイ利用老人のばあい
r
配偶者」による介護の割合がやや 少なく,r
子世代」による介護, とくに「嫁J
の介護の割合が比較的多くなっ ているといえるo
な お , サ ー ピ ス ご と に 利 用 老 人 の 特 徴 を ま と め て お く と つ ぎ の よ う に な る
〈表
3
, 表4
, 表5)
。デイサーピス事業の入浴サービス利用者は, 女性の利 用 者 が6
割とやや多く,75
歳 以 上 の 後 期 老 年 層 が5 .7
割 い る 。 歩 行 が 「 自 立J
し て い る 人 の 割 合 い は 性 別 で や や 異 な り , 女 性 で6.4割 , 男 性 で4.6割であるD
食 事 サ ー ビ ス と 日 常 動 作 訓 練 等 サ ー ビ ス 利 用 者 ( こ の
2
つのサービスの利用者 表4
デイケアザーピス利用者の年齢C%)
l
計l 官 ; 司 令 品 ( 同7?ぉl 叫同9抗
抗
デピ
i 三 一
浴日ふ0/ 2 . 0 / 4 . 8 /13.0 / 2 2 . 8 / 2 4 . 3
ゃ/5/ 9.4/3.2
品 │ 食 事1 1 0 0 . 0 /
1. 7/ 4 . 1 / 1 4 . 9/261 /258117.418.01
1.9
1 子雨時均等 11 0 0 . 0 1 1. 1 / 3 . 7 / 1 4 . 0 1
ム312 6.7 両耳川玉
ん 入
浴11 0 0 . 0 / 3 . 0 1 3 . 2 1 7 . 5 1 1 5 . 5 / 2
1. 51 22 . 1 / 1 8 . 8 1 8 . 4
2 4
ショートステイ1 1 0 0 . 0 / 示戸耳五日訂ん 12 4.511 9 . 311
1. 2ン業l
瓦 函 函 1 1
練1 1 0 0 . 0 113.1115.9117.912
1. 2119.61 7 刈 4.21 0 . 5
デイホーム事業
1 1 0 0 . 0 1 3 . 0 1 6 . 1 / 1 4 . 9 1 2 4 . 5 1 2 5 . 9 1 1 7 . 0 1 681
1.9
表5
デイケアサービス利用者の歩行にかんする自立ていど│自 立
1 f r i i
分 介 助 男l
女 │ 男 │ 女ι
日 │ 女│ 入 浴
1 1 0 0 .0 / 1 0 0 . 0 1 4 5 . 8 / 6 4 . 2 1 2 4 . 91 1 7 . 2 1
持 │ 食 事/ 1 0 0 .0 /100.0 1 5 8 . 2 / 7 5 . 2 1 2 4 . 8/ 1 5 . 7 /
l
業│日常動作訓練等/ 1 0 0 .0 1 1 0 0 . 0 / 5 6 . 9 / 7 2 . 0 / 2 4 . 6 / 玩
i入 浴
/ 1 0 0 .0 / 1 0 0 . 0 / 8 . 8 / 7 . 8 / 38.41 34.41
斗│ショートステイ1I O O . O /100.0 1 幻 6/ 3 0 . 7 / 2 9 . 4 / 3 0 0/
ン 業 │ 機 能 回 復 訓 練 川 司
1 0 0 . 0/ 5 0 . 6 1 6
1.5 1 3 7 . 3 1 2 9 . 1 1
ホ ー ム 事 業11 0 0.01100.0 1 64.6 1 70.0 / 27.3 / 25.9 /
C%)
全 面 介 助 男
l
女29.41 1 8 . 6 1 7 . 0 1 9 . 1 1 8 . 4 1 1 0 . 0 ω 1 5 7 . 8 4 3 . 0 1 3 9 . 0
山凶:土
8 . 1 1 4 . 1
老人のためのデイケアサービスにおける家族援助
1 3 5
は大部分かさなっている〉は〈ヘ女性が6 . 5
割強で男性より多く,後期老年層 は5 . 5
割弱,歩行の「自立J
している人は女性がほぼ7 . 5
割,男性のほぼ5 . 8
割であるD ケアセンタ一事業のばあい,入浴サービスでは女性の利用者が5 . 5
割と若干多く,後期老年層は7 . 1
割,歩行の「自立」している者は男女とも1
割に満たない。ショートステイ利用老人もこれと似た傾向を示しており,女性 が6 . 2
割と多く後期老年層も7 . 6
割と多い口歩行の「自立」しているものは女 性で3 . 1
割,男性で2.8
割と少ない。これにたいし,機能回復訓練の利用老人 では,男性が6 . 1
割と多く後期老年層が3 . 2
割と少ない。歩行の「自立Jして いる人は,女性の6 . 2
割,男性で5 . 1
割と「自立」が入浴サービスとショート ステイ利用者にくらべ多くなっている。2 .
デイケアサービスの老人と家族にたいする効果( 1 )
老人にたいする効果では,デイケアサーピスが提供されることによって,老人の「福祉の向上」
と家族の「福祉の向上」はどのような意味で達成されるのかD これを,デイケ アサーピスの老人と家族にとっての効果という観点からみてみたい。
デイケアサーピスの効果についての実証研究はまだ緒についたばかりである が,いくつかの研究や実践報告などをもとにその効果をまとめてみると,つぎ のようになる。まず,老人にとっては,①身体機能の維持,②日常生活動作能 力の維持・拡大,③健康管理,④精神的満足感,⑤生活意欲の回復・維持,⑥ 社会性の回復・保持, ⑦社会的孤立感の緩和・解消などである(lへ これらの 効果は,入浴サービス,機能回復訓練,デイホームやデイサービスといった各 種のサービスにおいて,一般的にもたらされるものと考えられる。機能回復訓 練においては,さらに障害の受容や社会的役割の転換の受容,その結果として
の肯定的自己評価といった効果も付け加えることができるだろう
o
ただし,痴呆性老人のためのデイホームやデイサーピス,またショートステ イは,必ずしもこうした多くの効果を老人にもたらすとはかぎらない。とく に,一定期間施設に入所してうけるサーピスであって,定期的な利用という性 格を制度上の原則としてはもたないショートステイでは,利用老人にこうした
1 3 6
老人のためのデイケアサービスにおける家族援助効果がもたらされるかどうかやや疑問がある。これらは老人のためのサービス というより,家族の負担軽減のためのサービスという性格を強くもっている
o
しかし,これらのサービス提供が,老人の「福祉の向上」という意味での効果 をもたらさないというわけではない。たとえば,痴呆性老人の治療や看護の専 門スタップが参加しておこなう痴呆性老人のデイケアでは,精神症状や問題行 動などの痴呆の周辺症状の軽減とその結果としての家庭生活での適応,精神機 能の活発化,豊かな感情表出と意欲の向上といったことが目指され,それが徐 々にもたらされていく(11)。また,ショートステイにおいても,家族の都合でし かたなく来所した老人がスタップの適切で親切なサービスの提供とふれあいに よって,大いに満足感を得るとか社会的孤立感の緩和,日常生活動作能力CADL)
の拡大といった結果をみせる例は必ずしも少なくない。これらのサー ビスについては,他のサービス以上にその効果について研究する必要があると 思われる。(2) 家族にたいする効果
家族にとっての効果は,①身体的負担の軽減,②精神的負担の軽減,③休息 時間の提供,④疾病・障害にかんする知識および介護方法・技術の指導,伝達,
⑤社会的孤立感の緩和・解消,⑥老人と介護者との関係の安定化,などが考え られるc1ヘこれらの効果は,いずれも障害の重い老人をかかえた家族により強 くもたらされるであろうD ①と②は各種のサービスの提供によって,家族の介 護機能あるいは監護機能(直接手助けをするよりも注意して見守ってあげると いう意味でのケア機能,歩行可能の痴呆性老人のケアにはこの機能がとくに重 要である〉を一時的に代替することでもたらされる。障害老人の介護および監 護が,介護者やその他の家族員に身体的負担だけでなく精神的負担を多くもた らすことは容易に想像できる
o
介護者は身体的負担よりむしろ精神的負担,心 理的負担のほうを多く感じるというねたきり老人などの介護実態調査結果も少なくない(18)。
ねたきり老人など重度の障害老人への入浴サービスは,家庭での入浴困難状 況(入浴介護の手が不足,風目場の構造上の困難,健康チェック方法の知識不 足,入浴介護方法・技術の知識不足など〉のため,老人を入浴させられないこ
老人のためのデイケアサーピスにおける家族援助
1 3 7
とによる精神的負担や,無理をして入浴させることからくる心理的不安および 身体的負担を軽減する。また,機能回復訓練やデイホーム,デイサービスは,日中の数時間介護者を老人の介護から解放することで,身体的負担および精神 的負担を軽減レ心理的解放感をもたらす。冠婚葬祭など「社会的理由」による ショートステイの利用では,介護の代替により介護負担から解放されて社会的 事由をはたすことができ,介護者の疲労回復のためといった「私的理由」によ
る利用では,介護者は休息の時聞を得ることができる
o
この③休息時間の提供という意味での効果は,ショートステイの長さほどで はないにしても,その他のサービスにおいてももたらされる。日中の数時間で も介護を代替することは,介護者に息抜きの時間を与えることになる
o
た だ し,付添って来所することを要求すると(ケアセンターの入浴サーピスのばあ いなど), 必ずしも休息をもたらすことにはならないかもしれないD むしろ逆 に,付添いとし、う介護負担を付け加わえることになろうo
付添わなくてもすむ ばあいでも1
月に1
回か2
回(入浴サービスのばあい),1
週間に1 , . . . . , 3
回て いど(機能回復訓練やデイホーム,デイサービスのばあい〉の利用で,しかも その1
回の時聞が1
,2
時間〈入浴サービス〉とか2 , . . . . , 5
時間ていど(機能回 復訓練,デイホーム,デイサービス〉では,ふだん介護に追われてできないことをおこなうことで精一杯という介護者もいるであろう
o
だが,介護から解放 された時聞を介護者の裁量で、使えることの意味は,介護者の精神衛生にとって 大きいと思われる。④疾病・障害にかんする知識の伝達および介護方法・技術の指導,伝達とい う効果も,サービスの種類によってその内容がやや異なる。たとえば,入浴サ ーピスでは,入浴前の看護婦によるヴィタルチェックや入浴時の寮母による全 身のチェックによって,血圧の上昇や樗療の初期症状など健康状態の変化を発 見すると,スタップは家族にそのことを知らせ,疾病にむすびっくようなもの であれば看護婦がその説明をおこなうなどする。このことによって,家族は老 人の健康状態に注意を払ったり,なんらかの症状がで、たり悪化する前に医者に みてもらうなどの行為をとることが可能になるO また,オムツのあてかたとか 障害の部位やていどに応じた適切な衣類の着用など,介護方法や技術について
1 3 8
老人のためのデイケアサービスにおける家族援助家族に話したり,家族から問われて説明することもあろう
o
機能回復訓練のば あい,理学療法や障害に適応した身体の代償的な使い方の指導などをとおして 活動の巧徴性が増し,老人自身が障害を受容していく過程を介護者が観察する ことにより,またスタッフに説明や指導を求めることにより,障害についての 知識や老人への対応の方法を学ぶことができるO 痴呆性老人のデイホームやデ イケアでも,スタッフの痴呆性老人への対応方法を観察したり,スタップから 痴呆にかんする知識や対応の原則などを聞くことが可能であるO⑤社会的孤立感の緩和・解消というのは,介護に追われ地域社会や友人・知 人関係において孤立しがちな介護者が,サービス提供の場において同じような 介護者や家族に出会い,ことばを交わしていくことによって孤立感を弱めてい くことをさす。また,サービス提供スタッフとのふれあいや対話によっても,
こうした効果は生れるD 老人に付添ってサービス提供の場に来ることは介護者 の休息にはならなし、かもしれないが,孤立感が弱められ介護者の心理的な立直 りがもたらされる可能性があるO こうした効果は痴呆性老人のデイホーム,デ イケア,また夫婦のみの家族の利用が比較的多い機能回復訓練などにおいて,
とくにみられるのではないか。最後に⑥老人と介護者との関係の安定化という ことについて。これにかんしては,説明が若干長くなるので節を変えることに しよう O
(3) 老人と介護者との関係の安定化
老人の介護は家族関係にさまざまな影響を及ぼす。家庭内の役割関係,勢力 (地位〉関係における変化だけでなく,情緒的関係も変化する可能性が強い。
たとえば,白己の障害を受容できず社会や家庭内での役割,地位の変化も心理 的に受け入れられない老人は,精神的に不安定な状態におもいりやすく,介護 者の自分にたいする態度や対応に不満や反発を示すことが少なくない。介護者 がその点を十分理解していないと,老人にとってよかれと思っておこなってい ることにかんしても,老人とのあいだで摩擦がおきイライラしてしまいかねな い。ささいな摩擦でも積み重なれば,両者の葛藤状態は慢性化してしまう
o
ま た,老人があきらめから障害を受容し介護者にたいする物理的依存,精神的依 存を強めて種々の要求や期待を増大させていくと,介護者の身体的,精神的負老人のためのデイケアサービスにおける家族援助
1 3 9
担は増加していく。それにつれ介護者は寛容さを失いがちとなり,老人との関 係が否定的なものになる恐れが十分にある。あるいはまた,老人の家庭内での 不適応行動が痴呆という疾病によるものだと理解しているつもりでも,つぎからつぎ、へと問題をおこされると,介護者はその問題状況に感情的に巻込まれ,
老人を心理的に拒否したくなりがちである
(14L
こうした老人と介護者との関係の悪化は,介護者の社会的役割の断念,地域 社会における社会的孤立状況の強まり,その他の家族員や親族による援助の欠 如ないし不十分さ,介護の終わりの見通しのなさ,以前からの老人と介護者の 良好でない関係などの諸要因によって促進される。老人の身体・精神的状態か ら端を発して,老人と介護者のあいだでさまざまなできごとが連鎖的におきる 結果,両者のあいだが強い否定的な関係になってしまうことを,
Johnson
らは「カスケード(滝状〉効果」とよんでいる。また,介護者が老人の介護に追わ れて他の家族員の世話が不十分になったり,他の家族員とのコミュニケーショ
ンやレクリェーションの機会が不足してくる,あるいはまた,介護者が老人と の否定的な関係における不満や怒りを他の家族員に向けたり,不安定な精神状 況のもと他の家族員にたいする配慮が散漫になったりすると,介護者と他の家 族員との関係においても摩擦や対立がおきてくる
o Johnson
らは,これを「リブ。ル(波状〉効果」とよんでいる(15)。
かれらによれば,こうした状態に置かれがちな介護者が,老人の施設入所と いう手段をとらず安定した精神衛生状態で、在宅介護をおこなっていこうとする ばあいにとる方法が 2つある。ひとつは,老人との関係において心理的距離を 置く方法である。具体的には,たとえば「わたしはできることはすべてやって いる」と自己の介護行為を合理化する,介護にさいして情緒的関与は最少限に とどめて老人の道具的要求を満たし続ける,日常の介護に他者を引き入れて老 人と介護者だけの関係を質的に変化させる,介護者が精神療法を受ける,とい った方法で、あるO これらの方法は,介護者が老人の子どもであるばあいに採用 されやすい。ふたつめは,逆に老人との情緒的関係をいっそう緊密にしていく という方法であるO これには「社会的退行」と「役割埋没」という 2つのパタ ーンがある
o r
社会的退行」は老人夫婦にみられやすいパターンで,一方の配1 4 0
老人のためのデイケアサービスにおける家族援助偶者の虚弱化によって期待や要求が増すにつれ,もう一方の配偶者は社会的な 活動から完全に引きこもり,その期待や要求に物理的,精神的に答えられるだ け答えようと努めるといったパターンである
o
r役割埋没」は,介護者が介護 以外の関心や活動を自ら排除し介護を自分の主要な任務として位置付けて,物 理的,精神的エネルギーの大部分を介護に注ごうとするパターンであるo
これ は,離婚したり未亡人となった初老期の娘など,主要な役割を喪失した人たち がとりやすい〈16〉O入浴サービス,機能回復訓練,デイホーム,デイサービスといったサービス の提供は,先に触れたように,老人の社会的孤立感の緩和や社会性あるいは生 活意欲の回復を促進する。また,老人に精神的満足や喜びを与える
o
と 同 時 に,介護する家族にとってもこれまでみてきたような種々の効果をもたらし,介護者の精神衛生状態の安定化に寄与するD 両者が満足し精神的に安定すれ ば,両者の関係も安定的なものになりやすし、。また,こうしたことは,長期に わたる介護過程における老人と介護者との関係の悪化の予防にいささかなりと も貢献すると考えられる。サービスを利用してどんな点がよかったかという問 いに,サービスの利用を老人が喜んでいることが嬉しいと答えた介護者が少な くなかったことはは7) サービスの提供が老人と介護者との関係の安定化, あ るいは否定的関係の予防に貢献していることを示唆しているように思われる。
ただい以上のことは,ただサービスを受けることによるだけでなく,老人,
介護者それぞれがサ}ピス提供のスタッフとの安定した関係をもつことによっ てもたらされるという側面が強い。スタッフとの安定的な関係が加わることに よって,老人と介護者とのあいだの心理的な距離が適切なものになることの結 果という意味である
o
ショートステイは,老人と介護者との物理的距離を日中の数時間だけ保つ他 のサービスにくらべると,かなりの時間老人と介護者とを物理的に距離を置い た関係にする。この長時間の物理的な距離の保持は,介護者の老人への心理的 な距離を置くことを容易にする。わが国のショートステイにあたる施設を基盤 とした休J息サーピスの効果について,介護者にアンケート調査した
S c h a r l a c h
らは,介護者の56%が利用前より老人との関係がよくなったと答えたことをあ老人のためのデイケアサーピスにおける家族援助
1 4 1
きらかにした。かれらは,これを介護者の怒りや憤りが減じた結果と解釈して いる(問。一定期間物理的に離れ介護者が自分の生活や介護を振返ってみたり,老人の増大する諸要求や問題行動に感情的に巻込まれ失っていた自分を取戻す ことで,老人との関係に心理的な距離を置くことができるようになった結果と も解釈できょう。他方で介護役割から解放されたいという心理を強くもってい たような介護者のぼあい,ショートステイの利用によって心理的な距離が離れ すぎ,利用後の在宅での介護に抵抗感をもってしまうこともある
o
また,その 利用を納得できないまま入所した老人は,介護者にたいする不満や怒りを利用 後,介護者にことばや行動で表現することもある。こうした例で、は,利用老人と介護者との関係はいっそう悪化する恐れがある。
S c h a r l a c h
らの調査では,介護者の
38%
は利用前より関係が悪化したと答えていた。かれらは,これを介 護者の都合で家を離れさせられた老人の怒りの結果と解釈している〈19
〉0 老人 の身体的扶養にかんする家族機能が弱まっているにもかかわらず,老人介護に かんする社会規範がより強く存在するわが国においても,老人と介護者との関 係は否定的なものになりがちである。デイケアサービスのもたらす老人と介護 者との関係の安定化および否定的関係の予防という効果は,わが国においてももっと注目されてよい。
デイケアサービスは,すべての老人と家族にどんなばあいでもよい結果をも たらすというわけではないが,多くのばあい以上にみてきたような種々の効果 をもたらす。こうした意味で,デイケアサービスは老人の「福祉の向上」と家 族の「福祉の向上」を図っている
o
デイケアサービスのスタッフは, 老 人 の「福祉の向上」を目指してサーピスを提供しているという意識が強く,家族の
「福祉の向上」をも目指しているという意識は比較的弱いように思われるが
(20)
デイケアサービスは老人へのサーピスの提供をとおして,家族の「福祉の向 上
J
に貢献しており,老人を介護する家族を援助しているo
上記のような効果は,デイケアサーピスのスタップの,老人と家族にたいす る適切な応対によるサービスの提供によってもたらされる。だが,デイケアサ ービスの提供センターのスタップのなかには,こうした効果にとどまらず,老 人の家庭における「生活の質
CQOL)J
の向上をいっそう図るために,意識的1 4 2
老人のためのデイケアサービスにおける家族援助に家族へのはたらきかけを試みている人々もいるD つぎにこの点をみることに しようO
3 .
老人の「生活の質」の向上と家族援助( 1 )
老人の「生活の質」の向上デイケアサーピスのスタッフは,サービスをくりかえし提供していくなか で,個々の老人の身体状況や精神状況,家庭での生活状況などをつかんでゆ く
o
その過程でスタッフは老人の家庭での生活状況において,改善されること が望ましいと思われる点を見いだすことが少なくない。多少なりとも改善され れば,老人が今よりよい状況で生活することができると考えられれば,その点 について老人本人や家族のはたらきかけを試みる。こうした意味で,デイケア サービスのスタッフは老人の家庭における「生活の質C Q O L ) J
の向上をもデ イケアサービスの目標としているということができる。上田敏によると,
QOL
の向上とは, リハビリテーションにおける「障害者 の選択権と自己決定権が最大限に尊重されていれば,たとえ全面的に介助を受 けていても人格的には自立しているJ
という「自立生活思想」にもとづいて,ADL
に代わってリハビリテーションの目標となるべきものでr
人生の質」あるいは「生の質」を全体的に高めていくことである
o QOL
を構成する諸因 子としては,ADL
, 労働・仕事,経済生活,家庭生活, 社会参加,住居,物 的・人的環境などが考えられている(21)。デイケアサーピス利用老人のばあい,これほど広い範囲の項目にわたっての質の向上を検討するのではなく,主に家 庭における老人の生活状況の質的向上を期待するのであるから,ここでは
QOL
を「生活の質」と訳しておくO
改善されることが老人にとって望ましいとスタッフが思うことにはどんなこ とがあるのか,いくつか具体的例をあげてみよう
o
老人の身体状況について……衣類をいつも清潔に保つ, 爪きり・耳垢の掃 除・ひげそり・整髪などにふだんも注意、を払う,栄養管理に気をつけて太りす ぎに注意する,拘縮がひどくならないように床のなかでもできる簡単なリハビ
リテーションをおこなうなど。
老人のためのデイケアサーピスにおける家族援助
1 4 3
老人のADL
について・・…‑介護者が用心深くなりすぎて介護しすぎ老人の自 立への意欲をそがないようにする, サービス提供の場において拡大したADL
(日常生活動作能力〉を評価し,家庭においても老人がその維持に努められる よう心がけるO 可能な範囲で老人の障害や
ADL
に適した日常生活道具を整え るなど。老人とのコミュニケーションについて……老人が家庭内で孤立しないよう家 庭内のコミュニケーションにかんして配慮する,老人に子どもあっかし、した話 かげをしないなど。
老人のいる場所について……老人のいる部震を清潔に保つ,老人が家族員と 触れあえる場をできる範囲で整えるなど。
この他,目やにが多いので目薬をいれてあげて欲しいとか,歯科医を受診させ てあげて欲しいなど,スタッフが家族に期待することは老人の身体状況や
ADL
を中心としたものが多いようである。家族の介護力や介護者の性格,理解力などを総合的に判断したうえで,スタ ッフはその期待を伝え,家族に対処してもらうようはたらきかけるが,これは それほど容易なことではない。老人の障害ていどが重く日常の介護負担で疲れ きっている家族に,スタップの期待を機械的に伝えるというわけにはいかな い。また,老人の障害がそれほど重度でなくても,介護者や他の家族員は介護 を含む日常的活動に追われ疲弊していることが少なくなく,たとえ介護者自身 気がついていてもなかなか対処できないといった状態にあることが多L、。ある いはまた,老人と介護者との関係がよくないばあいとか,その他の家族員の協 力を得ることが困難と予想できるばあい,さらに,もう老人には十分なことを
してあげているのだからこれ以上なにもする必要はないと考えている家族や,
老人はねたきりになってもしかたがないと考えている家族にたいしても,改善 するようはたらきかけることはむずかしい。老人の家庭における「生活の質」
の向上のためにはたらきかけることが,すでに多かれ少なかれ種々の負担をか かえている介護者や家族にとって,いっそうの負担や重荷を課すことになるよ うで、は,そのはたらきかけは家族の「福祉の向上」に相反することになってし まし、かねない。
1 4 4
老人のためのデイケアサービスにおける家族援助ショートステイ利用期間中に老人の
ADL
が向上したので(たとえば,オム ツをしていた老人に尿意があるので,介助してポータプル便器の使用を試みた らその使用が可能となった), 家庭でもそれを維持するよう試みて欲しいとい うスタッフの期待にたいして,家族が余計なことをしてくれたという反応を示 し,家庭ではもとのADL
の状態、にもどす(再びオムツを使う〉といったよう な例がときにみられる。こうした例は,老人の家庭における「生活の質」の向 上をも含めた「福祉の向上」を目指すことが,家庭の「福祉の向上」の達成と 調和しないという一面をもっていることを示唆しているo
では,老人が家族に介護してもらい在宅生活を継続できることでよしとし,
家族にたいするはたらきかけは控えるのか。実際には,デイケアサーピスのス タッフはつぎのような努力を試みている。改善されることが望ましいことを伝 え,それを実行してもらうよう個々の家族にはたらきかけるさいには,当該老 人にとって改善されることが望ましい必要最少限のことはなにかを検討する,
誰に伝えるのがよいかを考慮する,伝えはたらきかけるタイミングを考える,
その伝えかたを工夫する,家族の負担がふえて困るようであれば利用できる社 会資源がないか検討しておくなどなど。
こうした配慮のもとで、のはたらきかけが効を奏するのは,家族がスタッフに たいして信頼感をもっているばあいであろう
o
この信頼感は,適切なサービス の提供がなされ,先に述べたような基本的な効果のいくつか,とくに身体的,精神的な負担の減少を感じ満足感を得ること,疾病や介護方法など専門的知識 を問うたときに適切に答えてもらった経験をもつこと,あるいは答えてもらえ るとふだんから感じられること,また,なによりも介護する立場の苦労をわか ってくれていると感じられること,悩みやグチを聞いてもらえた体験をもつこ となどによって徐々に形成されていくものであろう
o
老人の喜びを自分の喜び として感じられることも,スタップへの信頼感につながる。スタップはまた,利用者の家族全体にたいしてのはたらきかけも試みてい る
o
たとえば,家庭での介護生活において一般的に注意して欲しい点,配慮し て欲しい点などをわかりやすく説明した通信を定期的に発行するO そして,家 族から疑問や要求,悩みや困っている点などをだしてもらい,通信のなかで答老人のためのデイケアサービスにおける家族援助
1 4 5
えていく。あるいはまた,年に1
,2
度家族に集まってもらい家庭介護につい て話合うとか,家族会を組織して介護者どうし在宅介護について語りあう機会 をもつようにするなど。さらにまた,個々の老人と家族の状況に適した利用可 能な社会資源の活用について検討する,活用している社会資源の連携を図ることで老人と家族双方を援助する方法を探る,家族介護を支援する地域のボラン ティアの組織化など社会資源をつくりだすといったことを試みる
( 2 ヘ
老人の「生活の質」の向上のためのスタップの試みとしてあげた,家族の介 護にかんする疑問や悩みに答える,家族の介護努力を評価する,家族のグチや 不満を傾聴することで心理的負担感を軽減する,といった家族との信頼関係形 成の基盤づくりや,家族会の結成・運営の援助,利用可能な社会資源の紹介,
利用している社会資源の調整といったことは,同時に家族そのものへの援助と いってよい。これらの試みは,家族介護者にたいするカウンセリングやケース ワーク,グ、ループワーグ, コミュニティワークの機能をはたすという意味をも っ援助であるD デイケアサービスにおいては,こうした試みを老人のためとし てだけではなく,家族にたいする車接的援助として積極的におこなうことを試 みてよいのではないか仰〉。
( 2 )
関連ザービスとの連携デイケアサービスのスタッフが,老人の家庭における「生活の質」の向上や 家族への直接的援助の試みをおこなうには,家庭における老人の生活と家族の 実状をよく把握しておくことが重要で、ある。それゆえ,サービス利用申請後に 家庭訪問して家庭の実状をみておくことや,ふだんの移送サービスに直接サー ビスを提供する寮母や看護婦などが加わって家庭の状況を見知っておくことが 必要であろう。しかし,家庭の状況や家庭介護の実態をより把握できる立場に あるのは,定期的に家庭訪問する訪問看護婦や保健婦,ホームヘルパーなどで ある
o
デイケアサービスを利用している老人には,訪問看護婦やへルパーなど がかかわっているケースが少なくない。家庭の実状をよく観察でき家族の話を よく聞ける立場にいるこれらの人々と情報や意見を交換したり,それらの人々 からはたらきかけてもらうといったことも検討される必要がある。実際にそうしたことを,デイケアサーピスのスタッフはおこなっている
o
しかし, ときに1 4 6
老人のためのデイケア、サーピスにおける家族援助はデイケアサービスのスタッフは,老人の「福祉の向上」を優先する立場に立 ち,訪問看護婦や保健婦などは家族の「福祉の向上」を優先する立場に立つこ
とで意見が対立し,結果として家族が困惑するといったこともおこりうる。そ れゆえ,ふだんからの関係各機関,関連サービス提供者との話合いや,事例検 討会などをとおして実質的な相互理解を深めておくことが必要であろう。
今後,こうした連携はつぎのような意味でもますます重要となってくると思 われる。国の新しい『在宅デイ・サービス事業実施要綱』や都の『高齢者在宅 サービスセンタ一事業実施要綱』にもとづいて今後つくられていくセンター は,そのサーピス内容や人員配置基準,施設設備基準などから判断して,虚弱 老人や比較的障害の軽い老人を中心としてサービスを提供することになると考 えられる(2心。だが,そうしたセンターを利用する軽い障害をもっ老人も徐々に 身体機能が弱まり
ADL
が低下していったり,疾病によって障害が重くなって いくo
そうなったとき,当該センターのサービス対象者ではないからといっ て,利用を中止してもらうということで、かかわりを終了してよいとは思われな い。老人の「福祉の向上」と家族の「福祉の向上」を図っていくことを目的と するサービスの提供機関として,訪問看護サービスやホームヘルプサーピス,あるいはその他の訪問サービス
( d e l i v e r ys e r v i c e s )
や重い障害老人を対象と しているデイケアサービスの利用につなげていく必要があろう。現在は,これ らの訪問サーピス提供者がデイケアサービスの利用を老人や家族に勧めること が多い。だが,今後はデイケアサーピスの提供センターが,当該老人と家族の 長期にわたる在宅介護の援助のために,これら他の在宅サーピスへのリファー や長期入所施設の提供する諸サービスの利用を含めたケースマネジメント的役 割もはたす必要がで、てくると思われる。しかし,国の要綱に準じてつくられるセンター,とくに特別養護老人ホーム に付設・併設しない基本事業のみをおこなう単独のセンターでは,こうした期 待をするのはかなり難しい。ならばなおのこと,いっそう関係各機関・サービ スの連携体制が充実してし、かねばならないであろう
(2 ヘ
本稿は,特別養護老人ホーム北東京寿栄圏および寿栄園ケアセンターで勉強
老人のためのデイケアサーピスにおける家族援助
1 4 7
さ せ て い た だ い た こ と を も と に 執 筆 し た 。 寿 栄 圏 の 園 長 お よ び ス タ ッ プ の か た が た に 厚 く 御 礼 を 申 し 上 げ た い 口 ま た , 筆 者 の 参 加 す る デ イ サ ー ビ ス 研 究 会 のメ ン パ ー の 訪 問 を 心 よ く 迎 え , お 忙 し い な か 詳 し く お 話 し て 下 さ っ た 富 山 市 デ イ サ ー ビ ス セ ン タ ー , 松 原 デ イ ケ ア セ ン タ ー , 弘 済 ケ ア セ ン タ ー , サ ン ピ レ ッ ジ 新 生 苑 お よ び 西 山 苑 の 所 長 , 園 長 お よ び ス タ ッ フ の か た が た に も , こ の 場 を 借りて深く謝意を表したい。
注
(1)
拙稿「老人のためのデイケアサーピス」 総合都市研究No.32
,東京都立大 学都市センター,1 9 8 8
, 127~129 ベージ。( 2) Goldberg
,Matilda & Connelly
,Naomi. TheEffectiveness o f S o c i a l Care o f t h e
Eld e r l y
,B i d d l e s L t d .
,1 9 8 2
,p . 118~143.
Goldberg
らのいうローカノレクラブやドロップイン・センターなどでの社交や 食事の機会の提供は,比較的健康で自立している老人を対象としているので,本 稿でいうデイケアサービスには当てはまらないが,Goldberg
らは,ζ
のサービスも老人のためのデイケアとしている。