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サブプラ危機と格付け会社

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(1)

著者 鹿野 嘉昭, 野間 敏克

雑誌名 同志社アメリカ研究

号 48

ページ 105‑129

発行年 2012‑03‑19

権利 同志社大学アメリカ研究所

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000012747

(2)

サブプラ危機と格付け会社

鹿 野 嘉 昭   野 間 敏 克

Ⅰ はじめに

2008 年 9 月のアメリカの大手投資銀行であるリーマンブラザーズ社の破綻は 世界中の金融資本市場を動揺させるとともに、「百年に 1 度の危機」(バーナンキ FRB 議長)と称されるように実体経済にも深刻な影響を及ぼした。この一連の 動きは現在、グローバル金融危機と呼ばれている。いうまでもなく、その背景に は、2003 年から 06 年にかけて生じた住宅価格バブルのなかで大きく伸長したサ ブプライムローンと呼ばれる信用度の低い家計向けの住宅ローンが大量に焦げ付 いたことを主因に、当該住宅ローン債権を担保として発行された資産担保証券の 市場価値が急落したことが挙げられる。

その一方で、金融資本市場の動きを子細にみると、2007 年 7 月におけるアメ リカの大手格付け会社であるムーディーズ社およびスタンダードアンドプアーズ 社によるサブプライムローンを原資産とする資産担保証券の大量格下げを契機と して、リーマンショック以前からも株価の急落やマネーマーケットでの信用収縮 などが生じていたことを忘れてはならない。資産担保証券の場合、仕組みが複雑 なこともあって、その安全性は格付け会社が付与した格付けにより一般に判断さ れるなか、格付け会社は当該証券の 6 〜 8 割に対して AAA または Aaa という 最上級の格付けを与えていた。その格付けがある日突然、引き下げられたため投 資家は大きく動揺し、市場から資金を引き揚げるという行動に走ったからである。

この事実はまた、サブプライムローン債権を原資産とする資産担保証券の膨張 と崩壊の過程において格付け会社が重要な役割を果たしていたことを示唆してい る。事実、2008 年 11 月に開催された G20 ワシントンサミットでは、格付け会社 に対する監督規制の強化が提唱された。しかし、今回のグローバル金融危機にお いて格付け会社がどのような役割を具体的に果たしていたのかという点に関して は、学界はもとより政策論議においても必ずしも明らかにされていない。そうし た検証なくして提唱された格付け会社に対する監督規制の強化が再発防止策とし て果たして有効なのか否かに関しては、大きな疑問が残る。

それゆえ、本稿ではこの問題について検討することにした。以下、第 II 節では、

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サブプラ危機と格付け機関に関する議論を整理するとともに、格付け機関に対す る監督規制強化提案を概観する。第 III 節では、住宅ローン担保債券という仕組 み債にかかわる格付けの実際とその問題点を指摘するとともに、仕組み債の格付 けが易きに流れたことや投資家も仕組み債の安全性を事業債と同様の基準で判断 したことがサブプライムローンを担保とする資産担保証券の発行増大につながっ たことを明らかにする。第 IV 節では、アメリカおよび EU での格付け会社に対 する監督規制強化の動きをまとめたあと、そうした規制措置の有効性について評 価する。最後に第 V 節では、本稿での議論を要約する。

Ⅱ サブプラ危機と格付け会社に関する議論の展望

1 .住宅価格バブルの発生・崩壊とサブプラ危機

2007 年 7 月 10 日、アメリカの大手格付け会社であるムーディーズ社はサブプ ライムローンを担保として 2006 年に発行された資産担保証券 399 本を一斉に格 下げするという通常ではありえない大規模な格下げを発表した。サブプライム ローンの焦げ付き増大に伴って同資産を担保とする資産担保証券の価値が急落す るなど、同ローンに潜む問題が表面化したからである。これを契機として図 1 の とおり、世界中の株価が下落するとともに各国の信用市場は大混乱に陥った。サ

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2007 2008 2009 2010

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*ᶓ㍈䛿䚸2005ᖺ䛾ᖹᆒ=100

図 1 各国株価の推移

(資料)IMF, International Financial Statistics

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ブプライムローン関連の資産担保証券はアメリカのみならず世界中の投資家に売 り捌かれていたほか、誰がどれだけ保有しているのかわからなかったため、リス ク負担回避の姿勢が急速に高まったからである。

そうしたなか、翌 2008 年 3 月にはベアスターンズ社、同年 9 月にはリーマン ブラザーズ社というように、大手投資銀行 5 社のうち 2 社が保有するサブプライ ムローン関連の資産担保証券の価値急落を主因として経営破綻するに至った。と りわけ、リーマンブラザーズ社の破綻はリーマンショックと称されるように、世 界中の金融市場を大混乱に陥れた。この混乱のなかで欧州諸国においても経営危 機に直面する銀行が少なからずみられたため、イギリス、アイルランドなどでは 金融システムの安定性維持を狙いとして銀行の国有化や公的資本注入が相次いで 実施された。加えて、世界的な金融・資本市場の混乱は実体経済活動にも悪影響 を及ぼし、リーマンブラザーズ社が破綻した 2008 年 9 月以降、世界各国の生産 活動は瞬く間に大幅な縮小を余儀なくされた。

これが、アメリカの住宅市場でのバブル崩壊が世界同時不況にまで広がった、

いわゆるサブプライムローン問題の概観である。1  サブプライムローンとは一般 に、過去 5 年間に延滞、差し押さえを経験するなど、信用度が劣る借り手を対象 とする住宅ローンのことをいう。サブプライムローンの借り手の多くは黒人、ヒ スパニックなどのマイノリティにより占められていたほか、その延滞率はおよそ 10%前後と、通常のプライム層向けの住宅ローン(同、2.5%程度)の 5 倍の水 準にあったことが確認されている。したがって、2003 年までの間、サブプライ ムローンが供与されることは少なかった。その後、プライム層向けが一巡したこ とから風向きが変わり、2004 年以降、サブプライムローンは著増し、2007 年末 には 1.3 兆ドル、住宅ローン残高 10 兆ドルの 12 〜 14%を占めるまでに至った。

サブプライムローンが急増した背景としては、根強い自家取得意識を背景に政 府が住宅取得促進政策を展開するなかで、住宅ローン会社が量的拡大を目指して サブプライム層を積極的に掘り起こしたことが指摘される。図 2 は連邦住宅金融 局作成の住宅価格指数(Home  Price  Index)の推移(前年比増減率<%>)を 示したものである。この図をみれば、アメリカの住宅価格は長期的な上昇傾向に あるなか、2003 年以降、騰勢傾向をさらに強めた後、2007 年からは下落に転じ

1   サブプライムローン問題の詳細については、たとえば倉橋透・小林正宏『サブプライム問題の 正しい考え方』(中公新書,2008);  Charles  W.  Calomiris,  “The  Subprime  Turmoil:  Whatʼs  Old,  Whatʼs  New,  and  Whatʼs  Next,”  in ed. 

Federal  Reserve  Bank  of  Kansas  City (Kansas  City,  MO:  Federal  Reserve  Bank  of  Kansas  City, 2009), 19-110(以下、Calomiris, “The Subprime Turmoil” とする)などを参照。

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たことがわかる。そのため、2003 年から 2007 年にかけてアメリカでは住宅価格 バブルが膨張するとともに同年夏に崩壊したという見方が広く受け入れられてい る。住宅価格が高騰するなかでサブプライムローンが伸張するとともに当該ロー ンを担保とする資産担保証券の発行が急増した背景には、格付け会社による格付 け審査が易きに流れたことがあったのではないかという意見が根強い。

このほか、アメリカでの住宅価格バブルの発生・崩壊には、中央銀行である連 邦準備制度理事会(FRB)による過度の金融緩和というマクロ経済的な要因が 作用したとされることが多い。すなわち、2000 年 3 月に生じた株式市場での IT バブル崩壊などを契機としてアメリカ経済が減速を余儀なくされるなか、2001 年に入ると FRB では、図 3 のとおりフェデラルファンドレートの誘導目標を 1%

とするなど、金融緩和姿勢を一段と強めたほか、2003 年から 2004 年にかけても 超低金利政策を継続した。教科書的にいうと利子率が下がれば資産価格が上昇す るため、この時期における金融緩和措置の実施が住宅価格の高騰を招来するとと もに担保価値の上昇が住宅ローンの増大を促し、それがまた住宅価格を押し上げ るというかたちで住宅価格バブルの膨張を加速したとされるのである。それゆえ、

住宅価格のバブル的高騰を招いた原因は金融緩和の行き過ぎにあるとして、サブ プライムローン問題の責任の一端は FRB にあるという意見もみられる。2

2   こうした議論の代表的なものとしては、ジョン・テイラー(村井章子訳)『脱線 FRB』(日本経

図 2 住宅価格指数の推移  (単位、%〈前年比〉)

(資料)Federal Housing Finance Agency, Home Price Index

-10 -8 -6 -4 -2 0 2 4 6 8 10 12

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2 .各国政府による対応と格付け会社に対する監督規制の強化

先に指摘したリーマンショックを契機として生じた金融市場の混乱および世界 同時不況への対応を目指して 2008 年 11 月、ワシントンにおいて「金融・世界経 済に関する首脳会合(G20)」が開かれ、サブプライム危機の原因と採るべき政 策措置に関する宣言が公表された。この宣言では、「高い成長が続いた期間に市 場参加者がリスクを適正に評価することなく高利回りを求めたことに加えて、資 産担保証券の引き受け基準が易きに流れたこと、不健全なリスク管理慣行、複雑 で不透明な金融商品といった事情が重なって生じた過度のレバレッジが金融シス テムを脆弱にした」ことが金融危機の根本原因として指摘された。このほか、先 進諸国の政策立案者や規制監督当局が金融市場において積み上がっていたリスク を適切に評価のうえ対処することを怠ったこと、金融取引にかかわる規制監督が 金融革新のスピードに対応できなかったこと、さらには各国での規制行為が世界 全体としての金融システムにもたらす影響を考慮しなかったことも、危機の原因 とされている。

それを受けて、各国とも遵守すべき金融システム改革の基本的な方向性として、

①金融商品にかかわる透明性および説明責任の向上、②健全規制の適用範囲の拡 大、③金融市場における公正性の促進、④国際連携の強化、⑤国際金融機関の改革、

という 5 つの共通原則が挙げられた。そして、上記の 5 原則達成のために 2009

済新聞出版社,2009)を挙げることができる。

0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010

        図 3 フェデラル・ファンド・レートの推移  (単位、%)

(資料)IMF, International Financial Statistics

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年 3 月 31 日までに実施すべき当面の措置や、それ以降に実施されるべき中期的 措置などが盛り込まれた。

本稿の主題である格付け会社にかかわる監督規制の強化については、付属の行 動計画における「健全規制の適用範囲の拡大」のなかで各国の当局に対し、①格 付け会社が証券監督当局の国際機構が定めた規範のうち最も高い水準のものを満 たしたり、②格付け会社が利益相反を避けたりするのはいうに及ばず、投資家お よび発行体への経営財務情報の開示を強化するとともに複雑な金融商品に関する 格付けを事業債格付けと区別するうえで必要となる措置を 2009 年 3 月までに実 行に移すことが要請された。いうまでもなく、これらの措置は、格付け会社が公 正な情報および分析を市場に提供するという重要な役割を果たせるよう適切なイ ンセンティブと監督を与えることを狙いとしている。

翌 2009 年 4 月に開催された G20 ロンドンサミットでは、ワシントンサミット で宣言された措置の実施状況のチェックおよび規制監督改革の方向性に関する再 確認が行われた。そして、「金融システムの強化に関する宣言」という付属文書 のなかで格付け会社にかかわる規制監督の強化に関連して各国の規制当局には、

① 2009 年末までに登録制度も含めて格付け会社を規制監督の対象とすること、

②規制監督の枠組みは証券監督者国際機構が定めた基本行動規則と整合的なもの とすること、③利益相反の防止および格付けプロセスの透明性と品質の向上を図 ること、が要請された。とりわけ、仕組み商品(structured  products)の格付 けに関しては、通常の格付けと区別するとともに格付け会社が格付実績ならびに 格付プロセスを裏付ける情報および前提についての情報を完全なかたちで開示す るよう監督規制体系を再編することが求められた。

このほか、監督当局が各種の規制において格付け会社の格付けを利用すればす るほど、格付け自体が公的な性格を帯び、格付けの急激な変更が今回のグローバ ル危機のように不測の影響を及ぼす。そうした事態の発生を未然に回避するため にも、銀行や証券監督規制における格付けの利用を最小限の範囲にとどめること が求められる。そうした観点のうえに立って、主要国の金融監督当局からなる金 融安定化委員会(FSB)3  では 2010 年 10 月、「格付け会社の格付けに対する依存 度合いを縮減するための原則」を公表した。これを受け、各国の監督当局はこの 原則に準拠して銀行規制等における格付けの利用を削減する方向で検討を開始し ている。

3   金融安定化委員会は、1999 年の G7 において創設された金融安定化フォーラムの機能を拡大するか たちで 2009 年 9 月の G20 ロンドンサミットにて再構成され、各国金融当局間の情報交換および協 調の促進のほか、金融規制の基準およびその遵守についての監視や助言を行う役割を担っている。

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3 .蹉跌が起こった真の原因

今回のグローバル金融危機発生においては、次に掲げるような要因が複合的に 作用して危機拡大につながったと考えられる。それゆえ、将来におけるグローバ ルな金融危機の発生を未然に防止するためにも、これらの点について速やかに是 正することが求められる。

第 1 は、サブプライムローンにかかわる信用リスク管理に際し最も重要とされ る監視機能が宙に浮き、誰もが真剣に担わなくなったことが挙げられる。信用供 与に際しては通常、借り手の財務内容を審査のうえ返済が確実と判断されること が前提となる。万が一債務不履行となれば、貸し手は損失負担を求められるから であり、融資期間が長期にわたる住宅ローンでは当然のことともいえる。そうし た事態の発生回避のため、貸し手は貸出債権の安全性を維持するべく融資実行後 も、借り手の行動を監視のうえ不適切な動きが観察されれば是正を求めることが 期待される。4

しかし、サブプライムローンの場合、資産証券化に伴って、オリジネーターで ある住宅ローン会社や銀行は当該債権を投資銀行等に売却することにより借り手 を監視する義務から解放される。5  投資銀行もサブプライムローン債権を資産証 券化のために設立された特別目的会社に譲渡・移管することで、監視責任を免責 される。借り手とのコンタクトはサービサーが担当するが、サービサーの業務は 元利金の回収であって、借り手の監視はとくに要求されていない。このようにし て、借り手に対する監視が機能しなくなったのである。加えて、そうした借り手 による監視機能の後退は BIS 基準の自己資本比率規制によって奨励されていた。

売却した資産を帳簿から消し去るに際しては、求償権のない完全売り切りが前提 とされているからである。

第 2 には、CDS(credit  default  swap)市場の拡大が挙げられる。資産担保証 券のうちメザニン債、劣後債といった信用度の低いトランシェを購入するに際し ては、何らかのかたちでリスクをヘッジすることが重要となる。サブプライムロー ンが伸張した 2004 年以降、CDS 市場が急拡大したため、CDS を利用すればそ うした信用度に劣るトランシェに潜む延滞リスクを安価でカバーすることができ た。それゆえ、ハイリスク志向の高い投資家も CDS を利用のうえ積極的にメザ ニン債、劣後債といったトランシェを購入したのであった。

4   こ の 点 に 関 連 し て 2010 年 7 月 に 可 決・ 成 立 し た 金 融 規 制 改 革 法(Dodd-Frank  Wall  Street  Reform  and  Consumer  Protection  Act)は、証券化事業者に対し証券化の手法を用いて第三者 に転売した資産の信用リスク(原則 5%以上)を保有することを義務づけている。

5   ただし、譲渡後 6 か月以内に延滞となった時、オリジネーターは買い戻し義務を負う。

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CDS は取引対象となった企業や金融商品が破綻した際に契約金額を支払う一 種の保険である。こうした商品の性格を鑑みると、契約金額に対応した準備金の 積み立てが求められる。しかし、CDS 取引においてはそういった準備金の積み 立てはとくに要求されていないため、売り手はオプションの売りと同様に手数料 獲得を主たる狙いとして取引に参加していたようである。それゆえ、サブプライ ムローン関連の資産担保証券の劣後債において延滞が現に発生して元本の補償を 求められると、CDS の売り手は巨額の損失負担を余儀なくされるに至ったので ある。CDS を大量に売っていたのは大手生命保険会社である AIG の金融子会社 の AIG  Financial  Products  であり、子会社の経営破綻で親会社の AIG の経営も 大きく動揺し、これがまた金融危機に拍車をかけたのであった。

第 3 には、投資銀行に対する監督体制の不備が指摘できる。証券取引委員 会(SEC) で は 2005 年 以 降、 統 合 リ ス ク 管 理 主 体 プ ロ グ ラ ム(consolidated  supervised entities program、CSEP)に基づき総資産 50 億ドル以上の大手投資 銀行を自己資本規制(NCR)の適用除外とすると同時に適正な自己資本の保有 を義務づけた。しかし、監督対象となった証券持ち株会社はアメリカ国内には 存在しなかったため、CSEP は形骸化し、投資銀行によるサブプライムローン関 連の資産担保証券の保有拡大に歯止めを掛けることはできなかった。そのため、

大手投資銀行においては総資産が自己資本の 40 倍にものぼるという過大なレバ レッジが可能となっていたのである。歴史に「もし」は禁物ながら、コックス SEC 議長が議会証言で述べたように、SEC が 2005 年に NCR の適用除外としな ければ、投資銀行はサブプライム関連の資産担保証券の売れ行き不振とともに当 該業務からの撤退を余儀なくされたはずである。6

いずれにしても、G20 などの議論においては格付け会社の甘い格付け審査が結 果としてサブプライムローン担保債券の価格下落に起因するグローバルな金融危 機を深化・増幅させたと認識のうえ、格付け会社に対する監督規制の強化が提案 された。しかし、その一方で、格付けのどういったところに問題があったのかと いう本質論についての検証はほとんど行われていない。このような検証なくして 提唱された格付け会社に対する監督規制の強化が再発防止策として果たして有効 なのか否かに関しては、大きな疑問が残るといわざるを得ない。それゆえ、節を 改めて、この問題について検討することにしたい。

6   Christopher  Cox,  “Testimony  Concerning  the  Role  of  Federal  Regulators:  Lessons  from  the  Credit Crisis for the Future of Regulation,”  October  23, 2008.

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Ⅲ 住宅ローン担保債券にかかわる格付けの実際とその問題点

1 .資産証券化と格付け会社  ⅰ.資産証券化の仕組み

サブプライムローン債権を担保とする証券化の仕組みは、通常の資産証券化の スキームと何ら異なるところはない。それゆえ、ここでは資産証券化の仕組みに ついて簡単に確認しておくことにする。

図 4 は、住宅ローン債権にかかわる資産証券化の標準的な仕組みを示したもの である。この図からも明らかなように、資産の証券化は銀行、住宅ローン会社な どの貸し手が家計にオリジネーターとして住宅ローンを供与することから始ま る。資産の証券化ビジネスに従事する投資銀行(証券会社)や銀行はアレンジャー

(あるいはスポンサー)としてオリジネーターから原資産としての住宅ローン債 権を担保と併せて買い取る。7  買い取られた住宅ローンはアレンジャーの手許で 一時的にプールされ、ある一定の金額水準に達した段階で同じような属性を持つ 住宅ローン債権と併せてひとつに束ねられたうえで証券化される。このように多 数の担保付住宅ローン債権をひとつに束ねた集合体はモーゲージプールと呼ば れ、通常は額面金額ベースで 2 〜 3 億ドル、件数ベースでは 2,000 〜 6,000 件前 後で証券化の手続きが始まる。

7   住宅ローンの取得に際してはオリジネーション費用として、1 件あたり 2,000 ドル前後が住宅ロー ン会社などに支払われる。

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図 4 資産担保証券の発行スキーム

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住宅ローン債権の証券化に際しては通常、原資産とオリジネーターが保有する 他の資産との分別管理を狙いとして資産証券化のための特別目的会社(SPC)が 設立され、アレンジャーは証券化の対象となった住宅ローン債権を SPC に移管 のうえ、当該 SPC 名義で資産担保証券を発行し、内外の投資家に販売する。投 資家の多くは、アレンジャーの依頼に基づき格付け会社が資産担保証券に付与し た格付けを参考にして当該証券の信用度やリスクを評価のうえ購入の可否を判断 する。この間、資産担保証券の裏付けとなった原資産からの元利金の回収や投資 家への元利金の支払いという資産の管理・資金回収事務は通常、オリジネーター ないしその関連会社がサービサーとして担当する。

アメリカの場合、住宅ローンは通常、銀行や住宅ローン会社が単独で全額を供 与するとともに、モーゲージと称されるように土地・建物はすべて担保として抵 当権が設定されるほか、住宅ローンを転売するに際しては抵当権も新たな債権者 に併せて移動する。8  さらに、住宅ローンは一般にノンリコースで供与され、万 が一借り手が元利金の支払いを滞らせた際には担保となった土地・建物を債権者 に明け渡せば債務の支払い義務から解放される。アメリカでは通常、元利金の支 払いが 2 か月以上延滞すると延滞債権となり、住宅ローンを供与した機関あるい は譲り受けた機関は抵当となった物件を差し押さえるとともに借り手に明け渡し を求める。そして、競売にかけて資金の回収を図ることになる。回収された資金 は、あとで詳しく述べる資産担保証券の発行に際し設定された優先劣後構造に基 づき投資家に分配される。

 ⅱ.資産証券化に際しての格付け会社の機能と役割

このような資産証券化に際しての格付け会社の第 1 義的な役割は、事業債の格 付けと同様に、資産担保証券の将来にわたる弁済可能性すなわち元利金の支払い が 2 か月以上延滞となる確率にかかわる判断を簡易な記号で示すことにある。そ うした弁済可能性を指標化するに際しては事業会社が発行する社債に適用される 格付けと同一の記号が利用され、AAA または Aaa を最上級の格付けとして AA または Aa や BB または Ba などの格付けが付与される。投資家はこの格付け記 号に基づいて資産担保証券の安全性を評価し、通常は BBB または Baa 格以上が 投資適格とされる。

そして、第 2 義的な役割としては、その後の事情変化に伴って弁済可能性が大

8   アメリカにおける住宅金融の詳細については、たとえば翁 百合「住宅金融の証券化」岩田・八 田編『住宅の経済学』(日本経済新聞社,1997),177-220 を参照。

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きく変動したときには、格下げあるいは格上げというかたちでそうした事実を投 資家に速やかに伝達することが求められる。それゆえ、2007 年 7 月 10 日、ムー ディーズ社ではサブプライムローン債権を原資産とする 2006 年発行の資産担保 証券 399 本の大量格下げを発表したのであった。いうまでもなく、投資にかかわ る最終判断は個々の投資家が自らの責任において行うものであり、格付けは参考 意見として位置づけられている。そのため、仮に格付けが誤っていたとしても、

格付け会社は投資責任を問われることはない。

当然のこととして、格付けに際し格付け会社は手数料を徴求する。この手数 料は通常、1 銘柄当たり額面金額の 0.06 〜 0.13%と伝統的な社債の格付け手数 料(0.03%程度)のおよそ 2 倍以上の水準にある。9 加えて、資産担保証券の場合、

アレンジャーが依頼した格付け会社 1 社のみが当該証券の格付けを行うのが慣例 となっている。そのため、格付け会社経営という視点からみた場合、資産担保証 券の格付けは収益的にみて旨みのある分野であると同時に引き受け競争に敗れる と収益機会を一挙に喪失する takes  all  or  nothing  のゲームとして作用する。そ の一方で、アレンジャーにおいては、複数の格付け会社に接触のうえ最も高い格 付け、すなわち希望の格付けレベルに到達するに際して必要とされる信用補完措 置が最少の水準にとどまる格付けを付与してくれる会社に依頼するという誘因が 働く。これを格付けショッピングという。

アレンジャーが格付けショッピング行動を強めるなかで格付け会社が収益の拡 大を狙いとして格付け判断が易きに流れると、投資家への中立的な情報の提供と いう格付け会社の存立基盤が脅かされるという利益相反の問題が生じる。一般社 債の場合、発行体の財務情報は広く利用可能となっているため、格付けの妥当性 は常に市場において厳しくチェックされる。それゆえ、伝統的な社債の分野では 格付けショッピングを見かけることはあまりないとされる。しかし、資産担保証 券の場合、そもそも原資産の詳細や債券の具体的な仕組みにかかわる情報が開示 されないため、第三者が当該案件の信用リスクや付与された格付けの妥当性を検 証することは困難となっている。それゆえ、資産証券化の隆盛とともに 2000 年以降、

格付けショッピングに起因する利益相反の問題が注目を集めるに至っている。10

 ⅲ.資産担保証券の仕組みと格付け方法

資産担保証券は現在、投資家の資産運用ニーズにきめ細かく応えることを狙い

9   森田隆大『格付けの深層』(日本経済新聞出版社,2010),174(以下、森田『格付け』とする)。

10  格付けショッピングにかかわる議論の詳細については、森田『格付け』第 4 章を参照。

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として、ペイスルー方式を採用のうえリスク・収益に差をつけたトランシェと呼 ばれるいくつかの部分に切り分けて発行されている。11  例えば、ペイスルー方式 に基づき借り手が支払った元利金の受け取りや損失負担にかかわる優先順位が異 なる 3 種類の資産担保証券が発行される場合、最も安全性が高くてクーポンレー トの低いトランシェは優先債(シニア債)、中程度のトランシェはメザニン債、

最も安全性が低くてクーポンレートの高いトランシェは劣後債あるいはエクイ ティと呼ばれる。

図 5 は、こうした元利金受け取りおよびリスク負担にかかわる優先劣後構造を 示したものであり、サービサーは借り手から受け取った元利金をシニア債から順 に払い込み、借り手全員が元利金を全額支払った時には劣後債に至るまですべて の債券保有者は約定どおりの支払いを受け取る。しかしながら、延滞が発生する と、優先劣後構造にしたがって受け取った元利金が底をついたところで支払いが 完了し、それよりも下位に位置する債券を保有する投資家には一切支払われない。

言い換えると、元利金はシニア債から順次支払われる一方で、延滞に伴う損失は 劣後債から順次負担を求められることになる。

11  ペイスルー方式とは、プールされた原資産から生じる収益・リスクとは異なった元利金の支払い を実現するために考案された手法のことをいい、証券保有者は投資家ニーズに沿って再構築され たキャッシュフローを受け取る権利を有するものの、プールされた原資産に対しては直接の権利 を有さないところに特徴がある。

図 5 資産担保証券の優先劣後構造

(資料)Bear Sterns, RMBS Residuals: A primer

(14)

それでは、格付け会社は資産担保証券の返済可能性をどのような基準にした がって判断して格付けを実施しているのだろうか。格付け会社の場合、一般事業 会社が発行する長期債の格付けを行うに際してはスルー・ザ・サイクル(through  the  cycle)と称される景気変動に伴う財務内容の変化を考慮のうえ中長期的な 視点から発行体の信用力を判断する手法が用いられている。12  資産担保証券の格 付けに関しても通常、この手法が適用される。ただし、その際にとくに重要とな るのは証券化のためにプールされた原資産の平均的な破綻の可能性であり、通常 は当該資産にかかわる中長期的な延滞発生確率およびその分布状況が重視され る。このリスクにかかわる分布を基礎として、銀行等の金融機関が信用補填者と して行う保証等を通じて原資産にかかわるリスクをどの程度負担するかというこ となども参考にして個々の資産担保証券の格付けが実施される。

資産担保証券の格付けに際しては、先に指摘した原資産プールの平均的なリス ク・収益分布に加え、こうした元利金の弁済順位に差をつけた優先劣後構造をも 考慮のうえ、トランシェごとに格付けが付与される。例えば、モーゲージプール の平均的な延滞確率が 10%、標準偏差が 3%とすると、99%の確率で 80%の資 産は統計的に安全と判断され、シニア債に位置づけることができる。その一方で、

最後の 10%のトランシェは劣後債となって延滞リスクをすべて引き受ける。こ れらシニア債と劣後債の中間に位置するトランシェがメザニン債である。そして、

投資家は自らの運用方針に沿ってローリスク・ローリターンのシニア債、ミドル リスク・ミドルリターンのメザニン債、ハイリスク・ハイリターンの劣後債のい ずれに投資するかを決める。以上のような資産担保証券の仕組みと格付け会社の 役割を念頭において、本題であるサブプライムローン債権の証券化にかかわる問 題について検証することにしよう。

 ⅳ.サブプライムローン債権を原資産とする資産担保証券の仕組み

サブライムローンが急増した背景としては、根強い自家取得意識を背景に政府 が住宅取得促進政策を展開するなかで、住宅ローン会社が量的拡大を目指してサ ブプライム層を積極的に掘り起こしたことが指摘される。そうしたなか、サブプ ライムローン債権を資産担保証券のアレンジャーとして活躍する投資銀行等に転 売すればリスク負担がなくなるとともに売却手数料が得られるため、与信審査が 甘くなったとされることが多い。事実、2004 年以降の急増過程においては、No 

12  格付け手法としてのスルー・ザ・サイクル・アプローチの詳細についてはたとえば、森田『格付 け』192-207 を参照。

(15)

Doc と称されるように所得証明などの審査書類がなくても融資が実行されたもの が多い。こうしたサブプライムローンの信用度をそのまま評価すると、投資適格 とされる BBB または Baa 格ぎりぎりの水準となる。投資家の視点からみた場合、

そうした低格付けの金融商品は投資対象にはなり難い。

それでは、投資適格ぎりぎりの信用度しか有さないサブプライムローンはどの ような処理を施されて優良な資産担保証券へと変換されたのだろうか。答えは単 純である。先に指摘したペイスルー方式を採用し、あらかじめ想定された設計に 基づき元利金受け取りおよびリスク負担にかかわる優先劣後構造にしたがって モーゲージプールを 20 種類前後のトランシェに切り分けて証券化のうえ販売す ることが考案された。その結果、元利金の支払い延滞に伴う損失リスクは劣後債 あるいはエクイティを保有する投資家が全額負担することになって、シニア債は 安全確実な債券と見做されて AAA または Aaa といった最上級の格付けが発行 額の 6 〜 8 割のトランシェに付与されることになったのである。

 ⅴ.格付けの失敗

ちなみに、2008 年 1 月時点で最上級の格付けを維持していた社債発行企業は 5 社にとどまっていたのに対し、資産担保証券に代表される仕組み債では 64,000 ものトランシェに最上格が付与されていた。13  このようにサブプライムローン債 権を原資産とする資産担保証券に付与された最上級格の件数は確かに異様に多い が、格付件数に占める割合としてみたときには 7%程度(事業債の 700 倍)にと どまる。14  この程度の比率であるならば、大きな問題にはならないとも考えられ るが、実際にはグローバルな金融危機を引き起こしたのである。理由は単純であ り、1 銘柄当たり発行額の 7 割以上を占めるトランシェに最上級格が付与されて いたからである。

資産担保証券のシニア債が最上格の格付けを維持するうえで重要となるのは、

サブプライムローンにかかわる延滞リスクが適切に評価のうえ優先劣後構造のな かに組み入れられているか否かである。延滞リスクが適切に評価されるとともに 優先劣後構造のなかに慎重に組み入れられているのであれば、とくに懸念する必

13  ヘンリー・ポールソン(有賀裕子訳)『ポールソン回顧録』(日本経済新聞出版社,2010),560- 61.

14  アメリカの一般事業会社のうち格付けを取得している企業は 2007 年末時点で累計 75,052 社にのぼ るが、すべての企業が 2 社から複数の格付けを得ていると想定のうえ最上級格企業の比率を計算 すると、0.01%となる。一方、プライム住宅ローンを含むすべての資産担保証券で格付けを取得し ているのは 394,635 銘柄にものぼる。そのうちサブプライムローン関連は 8 割、資産担保証券 1 銘 柄当たり最上級格を取得しているのは 3 トランシェと仮定すると、最上級格の割合は 6.75%となる。

(16)

要はない。しかし、事実は逆のようであった。換言すると、サブプライムローン 債権を担保とした資産担保証券にかかわる格付けが失敗するに至った根本的な原 因は、延滞発生率にかかわる確率計算の基礎となるデータが不十分であったこと および延滞発生リスクを過小評価し、最上級格を過剰に付与したことにあったと いえる。

この点に関連しては、コロンビア大学のカロミリス教授はサブプライムローン 債権の証券化に際しアレンジャーとしての投資銀行はデータが少ないなか、最上 級格のトランシェをより多く切り出すべく延滞率を 4.5 〜 6%(実際は 12% 以上)

と想定して商品設計を行い、格付け会社はそうした想定を承認して格付け判断を 行ったとしている。15  仮にこれが事実とした場合、格付け会社の格付け判断は投 資家に中立かつ公正な情報を提供するという本来の趣旨を大きく逸脱していたと いうことができる。しかしながら、そうした問題を孕んでいたとしても、格付け はあくまでも参考意見として位置づけられる。それゆえ、「格付けの失敗」に伴っ て金融市場が動揺して不測の損失が発生したとしても、それは資産運用者の判断 ミスとされ、格付け会社や格付け担当者が責任を問われることはない。

要するに、格付け会社を市場のなかで規律づける仕組みが埋め込まれていない のである。これこそが格付けの失敗を誘発する最大の問題点であり、そうした仕 組みの是正を伴わない限り、監督規制をいくら強化したとしても所期の効果を得 ることは困難と考えられる。したがって、格付け会社に対する監督規制を強化す るのであれば、格付け会社を市場のなかで規律づけるような方策を導入する方向 で検討するのが望ましいほか、そうした観点から改善策を練り上げることが求め られるといえよう。

2 .債券市場と格付け機関

 ⅰ.近年におけるアメリカ債券市場の構造変化

以上が、サブプライムローン債権を原資産として発行された資産担保証券が蹉 跌するに至った主たる事情である。しかし、話はここで終わりではなく、近年に おけるアメリカ債券市場の構造変化が果たした役割についても考慮することが求 められる。図 6 は、2000 年以降におけるアメリカの債券市場での債券発行高(国 債および政府関係機関債を除く)の推移を示したものである。この図からは、ア メリカにおける債券発行高は 2002 年の 1 兆 7,370 億ドルから 06 年には 3 兆 3,220 億ドルへとほぼ倍増したことがわかる。そうした急増を支えたのは住宅ローン債

15  Calomiris, “The Subprime Turmoil,” 35.

(17)

権を担保とする資産担保証券であり、この時期に発行が拡大したのはサブプライ ムローン債権を担保とした資産担保証券であった。その一方で、企業が発行する 社債や地方債の発行高は概ね横ばい圏内の動きにあった。

このようにアメリカの債券市場における主役が企業の発行する社債から資産担 保証券に交代するという構造変化が静かに進行するなかで、格付け会社間の競争 の場も資産担保証券に移ったと考えられる。ちなみに、図 7 は大手格付け会社で あるムーディーズ社の格付け収入の内訳を示したものである。16  この図が端的に 示すように近年、同社の格付け収入における最大の稼ぎ柱は資産担保証券など仕 組み商品(structured  finance)にかかわる格付けであり、ピークの 2006 年には 格付け収入合計の 54%を占めていた。

16  大手格付け会社であるスタンダードアンドプアーズ社は教育・出版企業、マグロウヒル社の 100%子会社であるため、格付け収入の部門別内訳といったセグメント情報は開示されていない。

しかし、マグロウヒル社の部門別収支のなかで公表された金融部門の収入がスタンダードアンド プアーズ社の格付け収入となる。この推移をみると、ムーディーズ社とほぼ同様の動きを示して いる。それゆえ、スタンダードアンドプアーズ社においても同様の傾向がみられると考えてもあ ながち間違いはないであろう。

図 6 アメリカ債券市場での債券発行高の推移(単位、10 億ドル)

(資料)The McGraw-Hill Companies, Investor Fact Book 0

500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009

CDOs

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(18)

このように格付け会社収益の資産担保証券への依存度が高まるなかで、資産担 保証券のアレンジャーである投資銀行が格付けショッピング姿勢を強めたことか ら格付け会社間での引き受け競争が激化し、それがまた格付け会社の格付け姿勢 を弛緩させたおそれは否定できない。その結果、サブプライムローン債権を原資 産とする資産担保証券の格付け審査が易きに流れ、最上級のトランシェにおいて も本来は起こりえない延滞損失の負担が発生し、それに伴って同債券の価格が急 落することになったといえよう。加えて、事業会社とは判断基準が異なってしか るべき資産担保証券の格付け表示に事業会社が発行する長期社債に適用されるの と同一の記号が利用されたため、投資家も格付け判断を誤った可能性も否定でき ない。なお、企業の無担保の短期債務である CP の格付けに際しては通常、P-1、

P-2 または A-1、A-2 といった長期債券の格付けとは異なった記号が利用されて いる。

 ⅱ.アメリカの債券市場における格付け会社

アメリカでは現在、表 1 のとおり、内外の格付け会社 10 社が NRSROs(nationally  recognized statistical rating organizations,政府承認格付け機関)として債券等

図 7 ムーディーズ社格付け収入の部門別内訳の推移(単位、10 億ドル)

(資料)Moodyʼs Corporation, Annual Report 0.0

200.0 400.0 600.0 800.0 1000.0 1200.0 1400.0 1600.0 1800.0 2000.0

2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009

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(19)

の格付け業務に従事している。これら格付け会社のうち、ムーディーズ社、スタ ンダードアンドプアーズ社およびフィッチ社の 3 社を 3 大格付け会社という。た だし、下に掲げた表 1 が示すように、各社が得意とする分野は異なっており、ムー ディーズ社は事業会社、金融機関、資産担保証券、政府・地方債を、スタンダー ドアンドプアーズ社は事業会社、資産担保証券、政府・地方債を、フィッチ社は 金融機関および政府・地方債をそれぞれ得意とする。

格付け業務そのものは投資家への私的な情報サービスの提供であるため、基 本的には政府規制の対象にはなりえない。しかし、証券取引委員会(SEC)が 1975 年に導入した証券会社に対する自己資本規制において格付け会社が投機的 等級と判断した金融商品についてはより高い自己資本の保有を求めたことを契機 に、格付けの公正性を担保することを狙いとして NRSROs の認定を開始するに 至ったのである。その意味で、NRSROs は自己資本規制に利用可能な格付け会 社を特定することを目的として始まったものであり、格付け会社による格付け 事業の規制を狙いとするものではなかったといえる。このような事情もあって NRSROs への登録は任意であり、格付け会社による申請に基づき SEC が定めた 要件を満たした格付け会社のみに認められるという扱いにあった。

その一方で、格付け会社が行う格付けに対する市場での評判は近年、1997 年 に勃発したアジア通貨危機を予測できなかったことや 2001 年のエンロン社の粉 飾決算、02 年のワールドコム社の不正経理を見抜けなかったことから、必ずし も高くはない。グローバル金融危機後は、さらに一段と低下するとともに格付け

表 1 アメリカにおける NRSRO 一覧

(資料)SEC, 

 January 2011.

NRSRO Financial  Institutions

Insurance  Companies

Corporate  Issuers

Asset- Backed  Securities

Government,  Municipal & 

Sovereign

Total  Ratings

A. M. Best 3 5,364 2,246 54 0 7,667

DBRS 16,630 120 5,350 8,430 12,400 42,930

EJR 82 45 853 14 13 1,007

Fitch 72,311 4,599 12,613 69,515 352,697 511,735

JCR 156 31 518 64 53 822

LACE 17,263 60 1,000 0 61 18,384

Moodyʼs 76,801 5,455 31,008 106,337 862,240 1,081,841

R & I 100 30 543 186 123 982

Real point 0 0 0 8,856 0 8,856

S & P 52,500 8,600 41,400 124,600 1,004,500 1,231,600 Total 235,846 24,304 95,531 318,056 2,232,087 2,905,824 HHI 2,599 2,601 3,145 3,145 3,767 3,495 HHI Inverse 3.85 3.84 3.18 3.18 2.65 2.86

(20)

に対する信頼性の向上を求める声が強まった。そうしたなか、政府・議会では投 資家保護のためには格付け会社に対する規制の強化と競争の促進が必要として 2006 年、信用格付け会社改革法(Credit  Rating  Agency  Reform  Act  of  2006)

を制定した。この法律に基づき SEC には格付け会社を監督する権限が与えられ たほか、NRSROs の認定プロセス・基準の透明性向上が図られた。

これを受けて、格付け市場への新規参入が大きく進み、現在の 10 社体制となっ たのである。しかしながら、表 1 の下欄に掲げられたハーフィンダール・ハー シュマン指数(HHI)が示すように、格付け業務のムーディーズ社およびスタン ダードアンドプアーズ社という大手 2 社への集中度は引き続き高水準にあり、格 付け合計で 3,495、資産担保証券では 3,145 となっている(1 社独占の場合、HHI は 10,000 となる)。なお、SEC に付与された格付け会社に対する監督権限は書類 の保存、機密情報の保全、利益相反の管理、財務情報の提出などにとどまり、格 付け・同プロセスに対する直接の干渉・規制は明確に禁止されている。

Ⅳ 欧米諸国における格付け会社に対する規制監督強化提案とその評価

1 .アメリカにおける格付け会社に対する規制監督強化の動き

欧米主要国においては現在、2008 年 11 月の G20 ワシントンサミットで合意さ れた行動計画に沿って、格付け会社に対する監督規制を強化する方向で規制体系 の再編や法制化が進んでいる。本節では、こうした動きを簡単に振り返ることに したい。

最初はアメリカである。アメリカの場合、2006 年信用格付け会社改革法に基 づき格付け会社に対する監督規制が強化されたにもかかわらず、サブプライム ローン問題の発生を防止することができなかったという反省のうえに立って、格 付け会社の監督官庁である SEC では 2009 年 2 月(同年 4 月から適用)、11 月(2010 年 2 月から適用)の 2 度にわたり規制強化を目的として NRSROs にかかわる規 制ルールを次のとおり改変した。すなわち、①格付けのパフォーマンスおよび証 券化商品の格付け手続き・手法に関する情報開示など格付けに対する信頼性の向 上を目指した情報開示の強化、②発行体や他の利害関係者に推奨行為を行った場 合の格付け付与の禁止や格付け決定にかかわった者による営業活動の禁止といっ た利益相反防止規定の強化のほか、③証券化商品の格付けを依頼された格付け会 社はその旨他の NRSROs に通知するとともにアレンジャーからは案件情報の提 供に関する了解を取り付けるという格付けショッピングの防止、といった措置が 追加されたのである。

さらに、アメリカ政府は 2009 年 7 月、包括的な金融規制改革法案(財務省法案)

(21)

のひとつとして格付け会社への監督強化、格付けの透明性向上および格付への依 存度合いの軽減を目指した信用格付け機関規制改善法案(The Improvements to  the Regulation of Credit Rating Agencies)を議会に提出した。この法案に盛り 込まれた主要な措置としては、①格付け会社の SEC への登録を義務づける、② 格付け会社によるコンサルティングサービスの提供禁止、17  ③発行体から格付け 会社に支払われた報酬額の開示、④格付けショッピング防止策としての予備格付 け取得の公表、⑤証券化商品の格付けへの事業債のとは異なった格付け記号の使 用、⑥格付け情報の詳細開示(デフォルト率、デフォルト時の期待損失、使用 データの信頼性、前提条件の変化に対する格付けの感応度などについての評価)、

⑦格付け依頼を受けた格付け会社が発行体から取得した証券化商品データを他の NRSROs に提供すること、が挙げられる。

この財務省法案の議会での審議のなかで格付け会社に対する訴答基準の変更が 盛り込まれ、格付けを決める際に利用するデータに関し「意図的にもしくは不当 に、・・・合理的な調査・・・あるいは合理的な検証を怠った」という疑義があ る場合、金銭的損害を被った者は連邦証券詐欺行為として格付け会社に対して訴 訟を起こすことができるようになった。加えて、先に指摘した FSB 提言を先取 りするかたちで、連邦法で定められている格付け参照義務の廃止に加え、連邦機 関による格付け利用にかかわるルールや規制の見直しが盛り込まれた。格付け会 社による格付けが連邦法において定められた各種のルールや規制における基準と して過度に利用され、公的な色彩が強まった結果、格付けに対する市場からの チェック機能が有効に作用しなくなって今回の危機を招来したと考えられるから である。

この格付け会社に対する監督規制の強化措置を含む金融規制改革法案を独自に 審議していたアメリカ上・下院は 2010 年 7 月、両院審議会において法案の内容 に関して合意し、同月に金融規制改革法(ドッド・フランク法)として可決した。18  その合意過程で新たに追加された格付け会社に対する監督規制の強化にかかわる 条項としては、① SEC は利益相反に対処するよう設計された準政府機関の設立 に向けた調査の実施が求められたこと、② SEC に格付け会社に罰金を科したり、

17  この規制措置の導入を先取りするべくスタンダードアンドプアーズ社の親会社であるマグロウヒ ル社では 2010 年 11 月、スタンダードアンドプアーズ社の業務を格付け事業に特化させるととも に、従来同社で営んでいた株価指数である S&P 指数の作成や株式調査業務についてはマグロウ ヒル・フィナンシャル社という独立した別会社に事業譲渡したことを明らかにした。

18  格付け会社に対する監督規制の強化措置は、ドッド・フランク法第 9 編第 C 章において定めら れている。

(22)

長期にわたって正当とみなされない格付けを多数行った格付け会社の登録を抹消 したりする権限が付与されたこと、などが挙げられる。

EU でも、あとに詳しく述べるように、格付け会社に対する監督規制が強化さ れており、そのなかでドッド・フランク法に盛り込まれた強化措置の一部はす でに実施に移されている。たとえば、証券化商品の格付けに際しては事業債の とは異なった格付け記号を使用するという条項の場合、2009 年 9 月に公布され た EU 規則により証券化商品であることを示す識別子を付与することを義務づけ られた。これを受け、ムーディーズ社およびスタンダードアンドプアーズ社で は 2010 年 8 月から 9 月までに証券化商品であることを示す識別子(たとえば sf)

を付与し、普通社債などの格付けと区別している。

2 .EU での格付け会社に対する規制監督強化の動き

EU に目を転じると、2008 年 5 月に欧州証券規制当局委員会が発表した報告 書に基づき同年 11 月に格付け会社に対する規制案が公表された後、2009 年 4 月 に EU 規則として制定された(施行は 2010 年 1 月)。この EU 規則でもワシント ンサミットでの行動計画に沿って、域内の信用機関、投資会社、保険および再保 険会社、集団投資スキーム、年金基金が規制目的で利用する格付けを発行する格 付け会社には登録制が導入され、格付け会社は各国政府の監督下におかれること になった。それとともに同規則により、EU の投資家は EU 登録格付け会社以外 の会社によって付与された格付けや EU 登録の格付け会社によって承認されてい ない格付けについては規制対応目的のために使用することはできないと定められ た。

この EU 規則はまた、EU 域外の国に本拠地をおく格付け会社に対しても次に 掲げるように EU と同等の政府規制の下にあることを求めている。すなわち、第 1 に格付け会社は母国当局による承認または登録を得たうえで日常的な検査監督 を受けていること、第 2 に業務規制等において EU と同等の法的規制の下にある こと、第 3 に格付けおよび格付けプロセスに対する監督当局や政府の介入が禁止 されていること、などという条件を満たさなければならないのである。国際的な 資本市場で活躍している格付け会社はムーディーズ社、スタンダードアンドプ アーズ社およびフィッチ社の 3 社に限定されるが、欧州に本社があるのは第 3 位 のフィッチ社しか存在しないからである。

そうした状況下、欧州証券・市場監督機構19 は 2011 年 5 月、EU 域外で付与さ

19  欧州証券規制当局委員会は 2011 年 1 月、欧州証券・市場機構に改組された。

(23)

れた格付けにかかわる承認手続きに関する指針を公表したほか、EU 域外で付与 された格付けの承認基準も明確にした。このうち後者の域外で付与された格付け の承認基準に関し ESMA は格付けが付与された国の規制の枠組みが EU と「同 程度に厳格」であることを要件として求め、現在、オーストラリア、カナダ、日 本、米国の規制の枠組みを検証している。このほか、EU は 2010 年 6 月、格付 け会社を監視する域内横断的な監督を実施すると同時に独自に格付けを行う機関 の創設計画を発表した。

3 .欧米諸国での格付け会社に対する監督規制措置の評価

以上のとおり、欧米諸国では 2008 年 11 月のワシントンサミットで合意をみた 行動計画に沿って格付け会社に対する監督規制の強化措置が提案され、その多く はすでに法制化され、実施に移された措置も少なくない。問題となるのは、そう したなかで提案・実行に移された各種の措置が果たして金融危機の再発防止とい う観点からみて有効といえるのか否かである。ここでは、この問題について検討 することにしたい。

その際、重要となるのは各種の監督規制措置をどのような視点から評価するか である。格付け会社はあくまでも民間企業であり、政府がその業務内容を規制し たり、格付けおよび格付けプロセスに介入したりすることは厳に避けなければな らない。先に指摘したように格付け会社の経営を市場のなかで規律づけ、格付け 会社が公正な情報および分析を市場に提供するという重要な役割を果たせるよう 適切な誘因を与えることが重要であり、そうした観点から監督規制のあり方を検 討する必要があるといえよう。

こうした観点からすると、少なくとも次に掲げる 5 つの措置を新たな監督規制 のなかに盛り込むべきと考えられる。

①  資産担保証券の格付け手法は事業債のそれとは異なるため、同証券の信用度 を表す格付けについては、短期債務と同様に、事業債とは異なる記号を利用 する。

②  格付けの妥当性を市場のなかでチェック可能とするべく、資産担保証券の格 付け判断に利用された資産プールの属性を示す統計指標などの情報を幅広く 開示する。

③  格付けショッピングの横行を排するためにも、発行体あるいはアレンジャー が予備的格付けを取得した際にはそうした事実を速やかに公表する。

④  格付け判断に際し利用されたデータの処理等が適切でないと判断されると き、投資家は格付け会社あるいは当該格付けに従事したアナリストを対象と する訴訟を起こすことができるようにする。

(24)

⑤  格付け会社相互間の競争促進のためにも、新規参入がさらに進むよう制度改 革を行う。

幸いにも、EU およびアメリカで提案・実施されている格付け会社に対する規 制強化策はそうした市場からのチェック機能の強化措置を盛り込んでおり、首肯 できる。このほか、ドッド・フランク法では資産証券化された原債権の保有者に よる借り手に対する監視機能が宙に浮くことのないように手当てされており、そ の意味で、これまで放置されてきた資産担保証券の格付けにかかわる規制ギャッ プは概ね解消されたといえる。それゆえ、EU およびアメリカで新たに制定され た格付け会社にかかわる規制監督の強化措置が運営ルールを具体的に定めたうえ で速やかに実施されることが期待される。その一方で、格付け市場の競争促進策 についてはとくに準備されておらず、この点、改善策の早期提案が望まれる。

Ⅴ おわりに

以上のとおり、本稿では、サブプライムローンを担保とする資産担保証券の発 行拡大過程において格付け会社が果たした役割に関する分析結果を基礎として、

欧米諸国で現在進められている格付け会社に対する監督規制強化策の有効性につ いて検討した。その結果、証券化商品には事業債とは異なった格付け記号の利用 を求める、格付け判断に利用された情報の開示強化、格付けが適切ではないと投 資家が判断したときには訴訟ができるなど、格付け会社の経営を市場のなかで チェックするという考え方に基づく措置が数多く導入されたほか、格付けの公的 な色彩を減じるためにも金融当局においては規制目的での格付けの利用縮減が目 指されていることが確認できた。

こうした措置は、金融にかかわる規制監督のデザインに際しては、自律的・内 生的に形成される市場での私的自治を基本として、そうした機能が最大限に発揮 されるように公的規制については誘因同等的なものとするという現代的な考え方 に基づいており、その意味で首肯できる。それゆえ、こうした政策措置について は運営ルールを具体的に定めたうえ早期に実施に移されることが期待される。20  その一方で、サブプライムローン関連の資産担保証券の発行が開始された時、そ ういった措置のひとつでも導入されておれば、その後の展開は大きく異なった可 能性は否定できない。この事実はまた、金融規制監督にかかわるフォーワードルッ

20  ドッド・フランク法が定めた規制策定にかかわる「工程表」は、400 本にも上る新たなルールの 制定を求めている。しかし、2011 年 6 月末までに策定期限が到来した 40 本のうち 6 割相当は、

金融界からの強い反対もあって決着をみるに至っていないなど、店晒しの状態にある。

(25)

キングな視点の重要性を示唆している。金融監督当局に対しては、そういった観 点を十分取り入れて規制監督体系を普段から見直すことが求められる。

※本稿は、2009−2011 年度同志社大学アメリカ研究所第4部門研究「金融危機 とその後のアメリカ経済」(主査:篠原総一同志社大学教授)の研究成果の一部 である。研究成果を取りまとめるに際しては、地主敏樹(神戸大学)、手塚広一 郎(福井大学)、吉田雄一朗(政策研究大学院大学)をはじめとして部門研究に 属する諸先生方や2名の匿名レフェリーから有益なコメントや意見を頂戴したこ とを記して感謝することにしたい。いうまでもなく、ありうべき誤解や誤りはす べて筆者の責に帰す。なお、本論文の作成に際しては、日本学術振興会科学研究 費「交通インフラの整備・維持に関する制度・理論・実証分析―国際比較―」(基 盤研究(B)、研究課題番号:2133007、主査:篠原総一同志社大学教授)から研 究補助を得た。

(26)

The subprime mortgage turmoil  and credit rating agencies

Yoshiaki Shikano and Toshikatsu Noma

This paper aims at discussing what roles the credit rating agencies have  played in the propagation of the shock in the subprime mortgage turmoil and  assessing the regulatory reform on the credit rating agencies embodied in the  Dodd & Frank Act and EU regulations.  We find that the reform is enacted to  improve  the  regulatory  use  of  the  rating  agenciesʼ  opinions  and  to  discipline  the credit analysts in the market; thus conclude that the reform is acceptable  since  it  is  consistent  with  the  recent  ideas  that  the  regulation  should  be  incentive  compatible.  The  prompt  implementation  of  the  reform  is  strongly  urged.

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