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企業の不確実性と投資家行動

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企業の不確実性と投資家行動

著者 新関 三希代

雑誌名 同志社大学ワールドワイドビジネスレビュー

巻 10

ページ 241‑244

発行年 2009‑03‑31

権利 同志社大学ワールドワイドビジネス研究センター

URL http://doi.org/10.14988/re.2017.0000015969

(2)

tives, Journal of the Korean Economy, Vol. 7, No. 1, pp. 119−134.

Kikuchi, T. and C. Kobayashi(2007), Network Effects and the Impact of Trade Liberalization, Economics Bulletin, Vol. 6, No. 4, pp. 1−7.

Kikuchi, T. and C. Kobayashi(forthcoming),On the Role of Communications Networks in Regional Economic Development, in T. N. Caldeira(ed.)Economics of Developing Countries, Nova Science Publishers.

Kobayashi, C.(2005), Productivity Growth in the Electric Power Industry : A Comparative Study of Japan, United States and Korea, Public Finance and Management, Vol. 5, No. 3, pp. 421−438.

Polasky, S.(1992), Divide and Conquer : On the Profitability of Forming Independent Rival Decisions, Eco- nomics Letters, Vol. 40, No. 3, pp. 365−371.

UNCTAD(2008),World Investment Report 2008.

1 UNCTAD(2008)。

2 例えば,Corchon(1991),Polasky(1992),Bayeet al.(1996 a, 1996 b)などを参照。

企業の不確実性と投資家行動

新関三希代

(同志社大学経済学部教授)

1987

年のブラック・マンデー,1990年のバブル崩壊,そしてサブプライム・ローン問題か ら端を発した

2008

年のリーマン・ショック等,近年の国際金融市場は未曾有のショックを経 験し,その度に株価は急激なスピードで大暴落している。その際注目されるのは,株価変動

(下落)が上昇時に比べて激しいことである。つまり,株価下落局面において,株価変動の不 確実性(変動リスク)が急激に増大しているのである。理論上,ランダムな値動きをする株価 について,1% の変化に対する変動リスクは,上昇局面も下降局面も同じはずである。しか し,現実の株式市場においては,下落局面の方がより不確実性が増すというアノマリーが存在 している。

本研究は,このアノマリーについて,日本の株式市場における個別銘柄を対象に実証分析を 行っている。また,その価格変動リスクの要因はどの投資家行動によってもたらされるのか,

実証分析を行っている。

株価下落局面,すなわち株価収益率が負の場合の不確実性が正の場合の不確実性に比べて大 きいという現象(アノマリー)は,「収益率分布の負の歪み」,あるいは「収益率分布の非対称 性」問題として,これまでファイナンス分野,あるいはエコノメトリックスの分野において広 く研究が行われている。Christie(1982)は,株価が下落すると上昇時よりレバレッジ効果が 働くため,株価が

1% 下落したときの企業価値の変化率がより大きくなり,変動リスクが増大

することを示している。しかし,Duffee(1995)によると,株価は企業資産のオプション価格

(3)

を示したものであり,オプション価格式における

κ,すなわち株価が 1% 変化したときのオプ

ション価格の変化率が正であることから,株価収益率と変動リスクには正の関係が存在するこ とになる。実際,米国の株式市場において,ダウ平均のような株価指数を用いた実証では負の 因果性が,個別銘柄を用いた実証では正の因果性が実証されている。

Niizeki(1998)では,企業価値の不確実性,株価変動リスクの推定方法に着目し,負の歪み

をより正確に捉えるには,従来のパラメトリックな計量モデルではなくノンパラメトリックな モデルによって推定するべきであることを示している。また,日本の株式市場における株価指 数,日経平均を用いた実証分析によって,株価収益率と不確実性の間の負の因果性を見出して いる。さらに,この要因が取引量にあるとし,新関(2003)では株価変動リスクの推定に取引 量を入れたモデルを用いて実証分析を行っている。

ここで,株価変動の不確実性は,株価収益率の条件付分散(その平方根のボラティリティ ー)として

2

次モーメントを用いて推定される。新関・牧(2005)では,非線形共和分モデル を用いて株価収益率の

1

次モーメントを用いた実証分析により,収益率分布の負の歪み,非対 称性を検証している。また,新関(2006)では,このアノマリーをこれまでの伝統的経済学の フレームでは捉えられない現象とし,行動ファイナンスにおけるプロスペクト理論を用いて検 証している。

いずれの先行研究においても企業価値の不確実性要因,アノマリーの要因については,具体 的な実証分析が行われていない。とりわけ,日本の株式市場において個別銘柄を用いた実証分 析が行われていない。そこで,本研究では,日本の株式市場において個別銘柄を分析対象と し,株価収益率分布の負の歪み(アノマリー)が存在するか否か,どの投資家行動がこのアノ マリーを引き起こしているのか,時系列モデルで不確実性を推定するとともに,パネル分析に よる検証を行った。

近年,日本の株式市場で最も注目される投資家として,外国人投資家が挙げられる。2007 年度の東証

1

部委託売買保有額の

65% を外国人投資家が占め,時価総額で総額 270

兆円にも 上る。また,1990年から他の投資家(個人,金融,法人)とは全く反対の売買を行ってお り,外国人投資家は概ね買い越している(2000, 2002, 2007年を除く)。その売買高の推移は,

他の投資家の推移と異なり,株価指数である

TOPIX

の収益率と連動しており(2003年

1

月か ら

2008

11

月の月次データによる実証分析),外国人投資家が日本の株式市場で特異なパフ ォーマンスを示していることわかる。とりわけ,リーマン・ショック後の株価下落局面におい て外国人投資家のみ売り越しており,この間のボラティリティーの増大と負の相関を示してい る。なお,2007年度の東証

1

部上場企業のすべてを対象にその時価総額と各投資家の持分比 率の相関を調べたところ,外国人投資家比率が最も高い正の相関係数を示した(個人,法人は 負の相関係数を示した)。

このように外国人投資家の行動は,近年の日本の株式市場に強い影響力を与えていることか

(4)

ら,本研究では外国人投資家に着目し,上記アノマリーに関する実証分析を行った。外国人投 資家のモニタリング指標の一つとして,株主資本の有効活用の度合いを示す

ROE(自己資本

利益率)が挙げられる。東証

1

部上場企業で,ROEの高い業種である海運業(10社)と鉄鋼 業(33社),そして外国人投資家比率の高い医薬品業(31社)を対象に日次データでボラティ リティーを推定し,年度別の不確実性の累計(ボラティリティーの合計)が各投資家比率の変 動によって影響を受けるか否か,1999年から

2007

年までのパネルデータによって推定した。

なお,過去

3

年間の各業種の

25

日移動平均線を用いて,上昇トレンドと下降トレンドを目 視にて割り出し,各トレンドの株価収益率と分散の相関を求めたところ,下降トレンドでより

1

に近い負の相関,上昇トレンドでより

1

に近い正の相関が見られた業種は,鉄鋼業,海運 業,医薬品業の順であった。また,どちらも対称的に正の相関が計測されたのは,外国人投資 家比率の低い国内インフラ業,電力・ガス業であった。そこで,対比的に電力・ガス業(15 社)も分析対象に取り入れた。

理論的に,ROEが負債コストである金利より高い企業は,レバレッジを効かす(負債を増 やす)ことによってさらなる

ROE

の上昇が見込まれる。したがって,外国人投資家が注目す る

ROE

の高い企業は,レバレッジ効果が強く働き,アノマリー(収益率分布の負の歪み)が 生じやすいと考えられる。果たして,これら業種において個別企業の株価収益率に負の歪みは 存在するのだろうか,また,その不確実性に投資家行動(外国人投資家)は影響を与えている のだろうか。

本実証においては,ボラティリティーの推定にセミパラメトリック・モデルの

EGARCH

(1,1)モデルを用い,係数の負の有意性から株価収益率とボラティリティーの負の因果性を検 定した。ROEが最も高い海運業では

10

社中

10

社,第

2

位の鉄鋼業では

33

社中

30

社でアノ マリーが検出された。これに対し,外国人投資家比率が高い医薬品業では

31

社中

16

社,投資 家比率の低い電力・ガス業では

15

社中

7

社のみアノマリーが検出された。やはり,ROEの高 い業種では,株価下落局面でより不確実性が増大するというアノマリーが生じやすいことがわ かる。これは,Christie(1982)のレバレッジ効果が強くアノマリーに影響していることを示 している。

さらに,バランス・パネルの最小二乗法により,被説明変数のボラティリティーに説明変数 の収益率と各投資家(外国人,個人,金融,法人)比率が有意な影響を与えているか否か,推 定・検定を行ったところ(Hausman検定等により固定効果とランダム効果を選択している),

電力・ガス業以外で外国人投資家比率が有意な影響を及ぼしていないことがわかった。もとも と外国人投資家比率が低く,アノマリーも少ない電力・ガス業においては,外国人投資家のパ フォーマンスの変化がより株価変動の不確実性に影響を与えていることが実証された。しかし ながら,他の業種においては,株価変動リスクに外国人投資家行動が有意な影響を及ぼしてい ないことがわかった。逆に,個人投資家や法人比率が増えるとリスクが増大することが検証さ

(5)

れた。

最後にコーポレート・ガバナンスの観点から,そもそも企業価値に投資家行動(投資家比 率)が影響を及ぼしているのか否か,推定・検定を行ったところ(ここで企業価値は株式の時 価総額ではなく実体経済から算出した企業価値),電力・ガス業のみ外国人投資家行動が企業 価値に有意な影響を及ぼしていることがわかった。

今後,すべての業種において,つまり東証

1

部上場全企業を対象に同様の分析を行い,投資 家行動と株価変動の不確実性,アノマリーの関係について検証を行っていく。

文献

Christie, A. A.(1982), The Stochastic Behavior of Common Stock Variances, Journal of Financial Econom- ics, Vol. 10, pp. 407−432.

Duffee, G. R.(1995), Stock Returns and Volatility : A Firm-level Analysis, Journal of Financial Econom- ics, Vol. 37, pp. 399−420.

Niizeki, K. M.(1998), The Japanese Stock Rate of Return and Volatility : A Comparison of Methods to Esti- mate Volatilities, The Doshisha University Economic Review, Vol. 49, pp. 67−93.

新関三希代(2003),「価格変動の不確実性と取引量の関係−日本の株価指数オプション市場における実 証−」『経済学論叢』,第55巻第1号,pp. 33−50.

新関三希代(2006),「リスクとリターンの実証分析−行動ファイナンスによるアプローチ−」『経済学 論叢』,第58巻第3号,pp. 51−79.

新関三希代・牧大樹(2005),「日経225株価指数と先物・オプション価格の関係−非線形共和分検定に よる実証分析−」,『ワールドワイドビジネスレビュー』,第6巻第2号,pp. 1−15.

企業グループと企業間関係

竹廣 良司

(同志社大学経済学部教授)

研究テーマと問題意識

一連の研究において,企業間関係の面から見た企業グループの組織や行動に焦点を当て実証 的分析を行ってきた。とりわけ,漓企業間の長期継続的関係はどのように変化したか,滷関係 の変化は企業に何をもたらすのか,といった点について,財務データから見た企業間関係に着 目しながら,企業グループを企業間関係の束としてとらえることにより分析を行ってきた。

『有価証券報告書』には財務諸表に加え多くの企業情報が含まれており,企業間の取引項目 についても明らかにされている。分析には日本経済新聞社の

NEEDS

財務データを使用するこ とにより,こうした情報の利用が可能であり,一連の分析では特に,関係会社に対する売上や 仕入,企業間信用,金銭貸借,出資等の情報,企業グループの状況に関するデータが有用なも のとして用いられた。

参照

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