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い。 へノ格の名詞と名詞とのくみあわせ

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(1)

岡山大学大学院社 会文化科学研 究科紀 要弟32(2011ll)

へ ノ格の名詞 と名詞 との くみあわせ

‑か ざ られが動作 ・状態性 の名詞 の場合 ‑

ASt udyo ft heCombi na t i o no faNouna nd

aNounwi t ht heCa s e ‑ ma r ke r" Eno"

:Modi f i e ea sa nAc t i veo rSt a t i veNoun

大 平 真紀子

00HI R A,Ma ki ko

1

.はじめに

名詞の形態論的な形 としての格の体系の中には、連用格 と呼ばれる 「ガ ・ヲ ・二 ・へ ・デ ・ト・カ ラ ・マデ」が存在する。それに対 して連体格 は 「ノ」、 さらに、「ノ」に 「へ ・デ ・ト・カラ ・マデ

がついた複合連体格 「へノ ・デノ ・トノ ・カラノ ・マデノ」が存在す る。そ して複合連体格 は、ノ格 では担 うことのできない領域 をカバー しなが ら存在 している。それは、連用格の体系 とも異な り、独 自の体系 をな していると思われる。

この複合連体格 を連語論的観点か ら研究 した ものに関 して、連用格 における記述は詳 しくその くみ あわせのタイプを網羅的に示 しているが、連体格 に関 しては、一部の研究を除 き、ほ とんどされて き ていない。これまでこの複合連体格が取 り上げ られてこなかった背景の一つには、これ らの形式が「へ +ノ」、「デ+ノ」などというように、助詞の足 し算で解決する問題だ という捉え方があると思われる。

しか し、連用格が 「ガ ・ヲ ・二 ・へ ,デ ・ト・カラ ・マデ」で

、8

つあるのに対 して、複合連体格は

「ヘ ノ ・デノ ・トノ ・カラノ ・マデノ」で

、5

つであ り、これだけを見て も、連用格 と連体格 に違い がある。

さらに連用格 と連体格 は、 どんな場合で も置 き換 えられるわけではない。たとえば 「東京へ行 く」

が 「東京への行 き」にはな りに くい。 しか し、「東京へ出張する」 を 「東京への出張」 とす ることは 容易であろう。かざられ名詞が漢語サ変動詞の語幹である場合、連用格 と連体格の置 き換 えが しやす

い。

しか し、複合連体格 にはニノ格がないため、連用格のこ格がヘノ格で表 されることになる。たとえ ば 「息子に送金する」は 「息子への送金」 と、連用のこ格が、複合連体格のヘノ格 で表 される。 また、

「彼女 を信頼する」が 「彼女への信頼」 となるように、 ヲ格で表 された ものがヘ ノ格で表現 されるこ とさえある。 しか し、ニ格、ヲ格のすべての用法がヘ ノ格で表 されるわけで もない。結論 を先取 りす るが、ニ格における、かざ り名詞があい手的であるもの、 ヲ格 における、かざられ名詞が心理活動で あるものが、ヘノ格で表 される。

(2)

ヘノ格の名詞 と名詞 との くみあわせ ‑か ぎられが動作 ・状態性の名詞の城合 ‑ 大平 共紀子

これ らのことを考 えると、確かに、「へ」 と 「ヘ ノ」の、つ まり連用格 と連体格 は、対応が明 らか な部分 もあるが、 しか しやは り、連用 を連体 に置 き換 えるだけでは、あるいは 「へ +ノ」だけでは説 明で きない部分が存在する。従 って、複合連体格 はその中に独 自の体系 を形作 っていると考 えるべ き であ り、それぞれの体系の中での意味、他の格 との関係 を調べていかなければならない。 日本語にお いて連体は、書 き言葉 を中心 として、連用 とは異なる発展 をしてお り、連体独 自の機能に応 じた体系 を発達 させている。 これを明 らかにするためにまず、ヘノ格 でつながれた名詞 と名詞 を一つの連語 と 考え、その連語が どのような意味的 タイプに分類 されるのかを明 らかに していきたい。

連語論 とは構文論の一種であ り、単語の語藁的な意味が どのようなむすびつ き方 をしているかを明 らかにするものである。同時に、文の文法的な構造、つ まり文 をくみたてている要素の間のむすびつ き方を研究する。連語論の 目標 は、一つ一つの連語 に備わっている具体的な記述 をす るとい うわけで はな く、一つ一つの連語 を くみたてている単語の語嚢的な意味は異なって も、単語のカテゴリカルな 意味、さらにむすびつ きの性格 は一般的であるとい う事実に基づいて、単語の間のむすびつ きを一般 化 してい くところにある。 これは、無限に多様 な連語 を構造的なタイプに整理す ることである。

ある一つのむすびつ きは、別のい くつかのむすびつ きと対立 しなが ら、補い合いなが ら、パ ラデイ グマテイツクな関係 をとりむすんでいて、‑つの体系 をな している。つ まり、連語論的なむすびつ き の体系の中で、一つ一つの具体的な連語論的なむすびつ きは一般化 され、カテゴリー として存在 して いる.従 って、連語論的なむすびつ きをカテゴリーに一般化するとい うことは、連語論的なむすびつ

きの体系 を捉えるということを意味 している。

複合連体格において もっとも複雑なのが 「ヘノ」格であろう。使用頻度 も高 く、また、上述 した よ うに、ヘノ格 は、連用格 でいうヲ格や二格の役割 を担っている場合 もあ り、複雑である。 よって、 こ こから分析 を始めようと思 う。

ところで、連用 と連体が置 き換 えられない例 は他 に もある。それが、「東京への道」の ような、か ざられが動作 ・状態的ではない名詞 らしい名詞の場合 だ。 この場合、「東京‑向か う道/東京へ続 く 追/東京へ伸 びる道」 といった意味合 いになるが、連用格で表現で きない。それは、か ざられ名詞が 名詞 らしい名詞に起 因すると思われる。そ して、かざられが動作 ・状態的な名詞の場合 とは、異なる 意味的タイプを持つ。一万、かざられが動作 ・状態性の名詞である場合は、「東京へ出張する」が 「東 京への出張」 とい う移行関係がわか りやすい。本稿ではまずか ざられが動作 ・状態的な名詞の場合 に ついて述べる。「東京への道」のようなか ざられが名詞 らしい名詞である場合 は、稿 を別に して述べ たいと思 う。

用例 に挙 げられているへ ノ格の中には

、「

〜へ向けての」

や 「

〜に対する」な どの後置詞 と置 き換 えが可能なものが存在する。 こういった後置詞 と複合連体格が どのような関係であるか とい うことも 重要なことであるが、これについて も稿 を変えて論 じたいと思 うD

(3)

岡山大学大学院社会文化科学研究科紀要 第32(2011.ll)

2.先行研究

へノ格の名詞 と名詞の くみあわせに関する先行研究 としては、彰広陵

( 1 9 9 8 )

「ヘ ノ格 の名詞 と名 詞の くみあわせ」が挙 げられる。彰

( 1 9 9 8 )

ではヘ ノ格 を取 り上げ、その前後の名詞のカテゴリカル な意味によって分類 している。

次に彰の分類 とその用例 を載せる。用例は彰

( 1 9 9 8 )

の用いたものの一部である。

状況規定的なむすびつ き 空間規定的なむすびつ き

ゆ くさきのむすびつ き ‑地方へのお出かけ、 日本への亡命 方向のむすびつ き‑左右への歩行、前方向への動 き

くっつけのむすびつ き‑ 日本人患者への移植、同機への搭乗

出現のあ りかのむすびつ き‑店頭への返 り咲 き、大雪 による国道への雪崩事故 存在のあ りかのむすびつ き‑わが国への定住、天安 門広場への人民解放軍進駐 目的規定的なむすびつ き

i

目的のむすびつ き‑アジアの緊張緩和への動 き、30年ぶ りの中ソ正常化実現への動 き 目標のむすびつ き‑平和国家‑の努力、「中東平和」への調整

結果規定的なむすびつ き

‑2 4

時間休みな く動 き続 ける国際金融都市

TOKYO

への変化、「実力主義

への変換 相手規定的なむすびつ き

i

や りもらいの相手のむすびつ き‑家族への送金、 日本輸出入銀行への配分 言語活動の相手のむすぴつ き‑避族‑の取材、私たちへの質問

態度の相手のむすびつ き‑市民への対応、福田元首相の後継へのバ トンタッチ 感情の相手のむすびつ き‑植源の嫁‑の嫉妬、お姉 さん‑の悼れ

対象規定的なむすびつ き

i

社 会 的 活

の 対 象 の む す び つ き

共 産 主 義

年 団 へ の 入 団 、 全 国 大 会 へ の 出 場

態度的活動の対象のむすびつ き‑・自己への批判、高齢や新庁舎への批判

心理状態の対象のむすびつ き‑Ir社会党j名への郷愁、過 ぎ去った青春‑のノス タルジア 主体規定的なむすびつ き‑市民への被害、大学、大学院‑の社会人受け入れ

内容規定的なむすびつ き‑大会成功への大号令、戦争への危機

まず彰

( 1 9 9 8 )

では、「地方へのお出かけ

「日本への亡命」を初め とする空間規定的なむすびつ き と日的規定的なむすびつ きを状況規定的なむすびつ きとしているが、「地方への

「日本への」 という

(4)

ヘノ格の名詞 と名詞 との くみあわせ ‑かぎられが動作 ・状態性の名詞の坊合 一 大平 真紀子

のは状況語ではな く対象語である。つ ま りへ ノ格 の名詞 と名詞 との くみあわせでは基本的に全 て対象 的なむすびつ きになる。

また、彰ではむす びつ きの名前のつけ方がか ざ りかか ざられかを中心 とした ものになっているため、

本稿ではかざ りとか ざられの両方のカテゴリカルな意味 を加味 した名付 けにする とともに、分類 の精 密化 を試みたい と思 う。

3.

方向性のむすぴつ き

3

節では、方向性のむすびつ きについて述べ る。か ざ りが具体的な場所でか ざられが具体 的動作 を 表す ものが

3

1

、3

.2節

、33、34

35

節ではか ざ り名詞の抽象化が抽象化 した もので、それによってか

ざられに くる名詞の語束的意味の タイプも異 なる。

まずかざ りが具体 的場所 でか ざられが移動動作 の くみあわせ とい う、 よ り具体 的な語菜的意味 を持 つ くみあわせの タイプが初めに くる。そ して、か ざられの移動動作が他動的動作 の ものになると、 う つ しかえ場所 とうつ しかえ動作 のむすびつ きとなる。か ざ り名詞が抽象化 し、抽象的な場所名詞や団 体 とな り、か ざられが参加動作 となった とき、参加先 と参加動作のむすびつ きとなる。 さらに、か ざ りが新 しい状態、か ざられが変化 を表す動作 をとると状態変化のむす びつ きとなる。か ざ りが 目標 ・ ゴール とな り、か ざられが達成のための活動 となる場合、 目標 のむすびつ きとなるO

これ らのむすびつ きは連用でい うところのへ格 やこ格 の領域 にあたるものである。 しか し目標 のむ すびつ きである 「最終ステ ップ‑の準備」 な どは、連用 で表す とするな らば 「最終ステ ップ 1‑向け て/のためにl準備する」な ど、単純 に連用格 で表現で きない。 このむすびつ きは、連体格 の中で独 自に発展 していった形であろうと思われる。

3.1.ゆ くさきと移動動作のむすぴつき

か ざ りが具体的場所名詞でかざられが移動動作 である場合、その くみあわせはゆ くさきと移動動作 のむす びつ きになる。か ぎ り名詞には 「台北

「備 中」 な どの具体 的な場所 名詞が き、か ざ られ名詞 には 「転任

「脱 出」 などの移動動作 を表す名詞が くる。

(1) ここも逃げ出す決心 を した彼 は、 ようや く備 えた小舟で、 まず、ジェノヴァ領のキオス島‑の 昼 型に成功す る。 (コンスタンティノープルの陥落)

(2)光秀 は 自分の十三人の隊将 をあつめて備 中への遠征 を告げ、その支度 を命 じたあ と、 (国盗 り 物語)

(3) この遁走 を全軍団に告げたわけではな く、わずかに後 を追 う馬廻 りの人数 をひ きいた まま闇に まざれて脱 出 し、浅井領ではない琵琶湖西岸 の山岳 地帯 を縫 って京都への遁走 を開始 したo (Bl

(5)

岡山大学大学院社会文化科学研究科紀要帝32(2011ll)

盗 り物語)

( 4)

岩壁 に密着 した氷が北貨尾根への下山をこぼんでいるようであったO (孤高の人)

(5)それでガダルカナル島ヘ ンダーソン基地への帰還が仲間より数 日お くれたが、帰 ってみると二 機の 「ベティ」撃墜の殊勲者 として トーマス ・ランフイヤー ・ジュニアとレックス ・バーバ‑

の二人の名が、 日本流に言えばすでに武勲上聞に達 していた。 (山本五十六)

(6)少 し前に、私の社でそれを原料 に使用 したいか らと、内地への移入を申請いた しました (人民 は弱 し 官吏は強 し)

(7)航海長池田貞枝中佐 は、パ ラオへの入港前に、模型 を作 った りして直角 に曲る個所の通過 を研 究 し、入港時には成功 したが、あわただ しい出港時にはかな りの不安があった。 (戦艦武蔵)

( 8)

しか し梅雨があけるのは七月なかば頃だろう、 ということで、北海道への出発は七月十八 日と きめてあった。 (冬の旅)

(9) しか し結局、上司 としで慎重な師 も、我 々の (特に同僚、ガルペの)熱意にまけて 日本への密 垂 を遂に許 して下 さいました。 (沈黙)

(10)「ひとがみてるわ」 と彼女はひどくコケティッシュにみえる抗講の微笑 をうかべていい、それ にぼ くが さらに抗議 しようとすると、彼女は両手をのば してぼ くのコー トのはずれていたボタ ンをかけて くれなが ら、一 日中太陽の航跡がみえる島‑の旅行のことを口に した。 (聖少女)

複合連体格 においてそのか ざられ名詞の主体 を表す場合、 (ll)の 「父の台北‑の転任」 ように、

ノ格 を用いて連語を広げることができる。 さらに、主語は (13一)のように、かざられを臨時的な複 合名詞 として用いることもで きる。この ように、主語 を臨時的な複合語 に してかざられにお く現象は、

どの くみあわせにおいて も出現する可能性がある。

(ll)鮎太は一年生の間だけ家か ら通学 したが、二年になった春、父の台北への転任 と同時に寄宿へ 入った。 (あすなろ物語)

(12)あとは北方の美濃への進攻だ (国盗 り物語)

( 1 3 )

そ して現在の戦況、米軍の リンガエ ン湾への上陸 も、徐 々に激 しくなってゆ く本土への空襲 も、

彼 自身の毎 日の工場通い も、やがては同 じように子供だましの安逸なもの として記憶 されるよ うになるのか も知れない。 (稔家の人び と)

(13′) リンガェ ン湾への米軍上陸

次の4つの例は、かざられ名詞が、場所 をさすが具体的に地点 を示せるものではない例である。 ま た、このむすびつ き全体 を通 してそうであるが、(17)の ように、「マルケサス群島か らフィジー諸島 への航海」 といったように

、「

〜カラ〜ヘ ノ」 と、カラ格で起点を表 した上で 「航海」 を修飾す る場

(6)

ヘノ格の名詞 と名詞 との くみあわせ ‑かざられが動作 ・状態性の名詞の場合 一 大平 共紀子

合 も見 られる。

(14)水際の対空戦闘 と奥地への困難な亘里でルソン島に駐屯当時か ら不安 を感 じていた、以前の 病気が昂 じたのである。 (野火)

(15)次の 日から又、故の竜城の道に循 って、南方への退行が始 まる。 (李陵)

(16)敦賀は一乗谷 とはちがい、海岸 に面 して万一の場合海上への脱 出が可能であ り、それに陸上交 通の要衝で もあ り、義秋が諸国の大名 に使 いをやった り使いを受けた りするのに便利が よい。

(国盗 り物語)

(17)私は彼の指揮下に‑艇長 として加わ り、マルケサス群島か らフィジー諸島への航海を夢 にまで 見ていただけに、残念でならない。 (風 に吹かれて)

かざられが複合名詞 になる場合は、興味深い現象がい くつか見 られる。その うちの一つが、かざ り は普通かざられ名詞全体 を修飾するが、か ざられの単語の一部を修飾 している例である。次の例の「呉 工廠

「アメリカ」が修飾 しているのがそれぞれ 「転任

「逃亡」であることは明 らかであるが、これ らは「転任命令

逃亡準備」という単語の一部で しかないO普通はか ざられが複合名詞になって も「亘 都‑の慰安旅行 を計画する」などの ように、複合名詞の後部、つ ま り複合名詞全体 を修飾する点で以 下の もの と異なる。ヘノ格の連語は 「転任命令」などの臨時的な複合名詞 を導 きやすいが、ヘノ格 と 臨時的な複合名詞が重なることでで きる特異な例である。

( 1 8 )

艦政本部か ら梶原造船監督官に呉工廠‑の転任命令が出たのは、三月上旬であった。(戦艦武蔵) (19)アメリカへの逃亡準備のひとつ としてぼ くは数学関係の本 をのぞいて蔵書 をすっか り売 り払 っ

て しまったので、部屋はガイコツの模型 じみた空虚な貧弱 さをむ きだ していた。 (聖少女)

単純に一方向に進むのではな く、移動の範囲を表す例 も見 られる。か ざりは場所名詞であるが、か ざられが 「往復

行 き来」 など、往復 を表す名詞 になる。別の見方 をすれば、「往復」の 「往」が、

ヘノ格の使用を可能に していると言 えるか もしれない。 この種の連語 を連用格で表そうとすると、「主 戦場 を往復する」 と、 ヲ格 になる。

( 2 0 )

唆‑の判断によると、 どうもこの島の近 くを通過する敵の機動部隊は、ウエーク島を一種の演 習地 と見な し、彼 らの主戦場への往復 に飛行機 を飛 ば して くるもののようであった。 (稔家の 人びと)

か ざりが抽象名詞 となることで、上記の もの とは異なる例 である。

(7)

岡山大学大学 院社会文化科学研 究科紀要 第32(2011ll)

(21)中間だとするな らば、未知なるもの‑の逃避 より、既知なるものへの退却の方が より安全の よ うに思われた。 (孤高の人)

3. 2

うつ しかえ場所 とうつ しかえ動作のむすびつき

か ざりが具体的場所名詞であることは

3

.1と同 じであるが、か ざられが他動的動作 になるとこのむ すびつ きになる。かざり名詞 には 「倉庫

「ここ」などの場所名詞 (代名詞)が、かざられ名詞には 「搬 入、召喚」などの、他動的な動作 を表す名詞が くる。 また、前節のゆ くさきと移動動作のむすびつ き に比べ、この種のむすびつ きは数が少 ない。

(盟 )保税倉庫への搬入は輸入 とみ とめる。 (人民は弱 し 官吏は強 し)

(23)「しかるのちに、私 をお調べ になるのが順序で しょう。それを怠 って、私の家宅捜索 をなきった。

ここへの召喚の件 も報道 された。 (人民は弱 し 官吏は強 し)

前節で も少 し触れた、かざられが複合名詞である場合であるが、このむすびつ きの場合 にも興味深 い例が見 られる。かざられが 「援軍派遣」 とい う臨時的な複合語なのであるが、これは 「援軍を派遣 する」 という目的語 を含んだ臨時的な複合語である。上述 したか ざられが主語 を含 んだ臨時的な複合 名詞 ((13̀) リンガエ ン湾への米軍上陸) と、 目的語 を含 んだ臨時的な複合名詞 (24)、さらに、単 純な規定語 を含んだ場合 (京都‑の慰安旅行 を計画する) と、複合名詞 をか ざられ とする場合 には三 つのケースがある。

(24)それで も、大使 は皇帝に、ヴェネツィア本国に居留区の態度決定 を報告するためにお くる使者 に、コンスタンティノープルへの援軍派遣 をあ らためて要請 させ ることを約束 した。 (コンス タンティノープルの陥落)

3. 3

参加先 と参加動作のむすびつ き

かぎりが場所名詞や参加 される団体で、かざられが参加 に関わる動作名詞の場合、参加先 と参加の むすびつ きになる。 ここでは、(25)のように、実際の戟線や戟場への移動 を伴 う場合 もあるが、(26) のように、実際の行為ではな く、かざ り名詞である団体 「化学工業研究会」 に加入する、 とい う例 も 見 られる。 これは、実際の移動を伴 うものではな く、新 しい団体 に参加することで、身分や立場が変 化 したことを表す。かざられ名詞が移動動作 を伴わず、抽象化 された場合、 くみあわせの タイプが こ れまでのタイプとは異なって くる。

さらに 「田沼屋敷への出入 り

「編集局への出入」 などでは、実際の出入 りする行動 をさすのでは な く、「出入 りすることがで きる」あるいは 「出入 りする許可 を得ている」 といった意味合いになる。

(8)

ヘノ格の名詞 と名詞 との くみあわせ ‑か ぎられが動作 ・状態性の名詞の幼合 一 大平 真定子

(25)アメリカの世論は、欧洲への参戦 を好 まず、議会 には孤立主義の傾向が強かったが、ルーズベ ル ト大統領 としては、 ヒッ トラーの勝利 と狂態 とを、あの まま座視するわけには行かなかった であろう。 (山本五十六)

(26)化学工業研究会への参加 を呼びかけ、勧誘 してまわった業者たちのことを考 えたのだ。 (人民 は弱 し 官吏は強 し)

(節)オランダの提案による日本の連盟‑の加入を暴認する。 (人民は弱 し 官吏は強 し)

(28)「なかなか成按 もよかったんですが、残念 で した。あの公立へ入 ったのでは彼の志望 している 大学への進学はち ょっと無理か も知れませんね」 (エデ ィプスの恋人)

(29)副社長の小池 さん、それに小池派である森内 さんや田崎 さんなども、あなたの星島建設‑の入 廷 を快 く思っていなかった方たちで した。 (錦繍)

(30)名古屋の野裁量砲隊への入隊 までには三 日しか残 されていなかったので、弘前へ帰 る余裕 も、

郷里へ帰る余裕 もなかった。 (あすなろ物語)

(31)私に対 しては親切 に して くれたが、この記事 を読んでか らは彼の所で行 なわれたパーティ‑の 墾堕 を辞退 させて もらった。 (若 き数学者のアメ リカ)

(32)送 りとどけたのが井関息八郎で、これが縁 とな り、井関は田沼屋敷への出入 りをゆるされ、田 沼に市ヶ谷の道場 を建てて もらった。 く剣客商売)

(33)閣屋ずれの しない一徹者の人のよさで、編集局への出入 を大 日に見 られていた人物であった。(あ すなろ物語)

(34)三冬の両腕 を折って、右京 との試合 をあ きらめさせ、永井家への嫁入 りを成功にみちびこうと する策を主人にすすめたのは大山用人である。(剣客商売)

(35) さる士族の御曹子だが、街のカフェの女に入れ揚げて、 自家への出入 りを禁 じられているとい う噂であった。(幻燈聖典)

3.4 状態変化のむすびつ き

かざりが新 しい状態 をさし、かざられが変化 を表す動作名詞の場合、状態変化のむすびつ きになる。

参加のむすびつ きではか ざり名詞は参加 される団体であったが、状態変化のむすびつ きでは、社会的 地位や身分、新 しい状態などを表す点で異なる。以前の段階か ら次の段階へ移 る、 という場面での使 用が多いため

、「

〜カラ〜ヘノ」 となるケース も多 く見 られる。

( 3 6 )

吹雪はいささか も衰 えようとする気配は見せなかったが、加藤 は、夜か ら朝へ、 または畳 むと 夜への移 り変 りの とき、必ず ご く僅かな時間だけ小康現象があることを知 っていた。(孤高の人) (37)カオスか らコスモス‑の生成 を説いた古代人の哲学には深い真理が含 まれている。(人生論 ノー

ト)

(9)

岡山大学大学院社会文化科学研究科紀要第32 (201ll)

(38)メデルに敗れることで、フライ級か らバ ンタム級への転向に失敗 した関は、 さらにフェザー級 へ と転向 していった。 (一瞬の夏)

(39)アリのブラック ・モス レムへの改宗 と、その信仰 に もとづ く徴兵忌避が、 タイ トルとライセ ン スの剥奪 を強行 させることになった。 (一瞬の夏)

(40)建築科か ら農芸科への転科 を希望 したのは八月は じめであった。 (冬の旅)

(41)近代啓蒙主義の倫理 における幸福論 は幸福のモラルか ら成功のモラル‑の推移 を可能に した。

(人生論 ノー ト)

(42)君は、君の同期生の中で もっとも将来を嘱望 されている。技師への昇格 も考えねばならない。(孤 高の人)

(43) しばらく考えた末に、私はやは り二十二時間と少 しあ とに自分が死ぬ と仮定 した方が筋が とおっ ているだろうという結論に達 した。不死の世界への移行 などとい う風 に考えると話が 「ドン ・ フアンの数え」みたいになって、おさま りが悪 くなる。 (世界の終 りとハー ドボイル ド・ワンダー ラン ド)

3. 5

目標のむすびつ き

かざりが 目標やゴールを表 し、かざられがそのための動作 を表す名詞の場合、 目標のむすびつ きと なる。着 目すべ きは、この くみあわせの場合、連用格で表現することが困難であ り、 もし連用で表現

しようとすれば.「最終ステ ップへ向けて準備する

「最終ステ ップのために準備する」などの ように、

後置詞を用いる必要があることである。連用格 は連体格か らの移行関係か らだけ作 られるのではな く、

独 自の体系 をな していると言える一つの要因である。

(44)「察 しはつけているが、明確 な答ではない. とにか く彼 はあんたに焦点 を しぼ りこんで研究 を 進めていた。長い期間にわたって最終ステ ップへの準備が整えられて きたんだ。あんた自身の 知 らないうちにね」 (世界の終 りとハー ドボイル ド ・ワンダーラン ド)

(45)子貢は、 この言葉にも拘わ らず孔子の偉大な完成はその先天的な素質の非凡 さに依るものだと いい、宰予は、いや、後天的な自己完成への努力の方が与 って大 きいのだと言 う。 (弟子) (46)会社設立への計画は順調に進みつつあった。 (人民は弱 し 官吏は強 し)

4

.あい手のむすびつき

4

節ではあい手のむすびつ きについて見てい く。 このタイプは、かざりに人名詞、団体、組織 をと り、かざられにはそのあい手に対 してはた らきかけてい く動作名詞をとる。 しか し実質的な行動 を伴 わない名詞 も多い。 また、はたらきかけ性が強い、直接あい手に接触 し、対象の状態変化 を起 こさせ

(10)

ヘノ格の名詞 と名詞 との くみあわせ ‑かざられが動作 .状態性の名詞の場合 一

‡紀子

るようなむすびつ きも実現 しに くい。た とえば、「窓への破壊」などの ような連語はないだろう。そ れに対 して、「窓への圧迫

彼への殴打」 とい う、対象 との接触にとどまる範囲の連語は、文脈にも

よるが可青巨となるであろう。この種の連語は連用のこ格やへ格 と移行関係にある部分が多い。

4. 1

節ゆず りあい手 とゆず り動作 のむすびつ きと

4. 2

節 申 し入れあい手 と申 しいれ動作のむすび つ きは、連用では三項動詞であるが、連体格のヘ ノ格で表 される場合はその三項の うちの二つ、あい 手 と動作の部分が ピックアップされて連語 となる。授受 される物、あるいは言語活動の内容が ピック アップされるタイプの 「彼へのプレゼ ン ト/彼への手紙」などは本箱 で述べたむすびつ きと意味的 タ イプが異なると考えられる。 よってか ざられ名詞が名詞 らしい名詞 として扱わねばならない。

かざられがそのあい手 に対 して何 らかの動作 を行 うものが

4. 1、4. 2、43

、4

.

4、4. 5

節で はよりはたらきかけ性の低 いかかわ り、関係的なむすびつ きを作 る。

4.1 ゆずりあい手 とゆず り動作のむすびつ き

かざ りがゆず りあい手でかざられがゆず り動作 を表す場合、この くみあわせ になる。ゆず りあい手 は、「家

「朝廷

「僧」などのような人名詞、団体、組織 などが くる。かざられには 「送金

「献金

「布 施」などのゆず り動作が くるCただ、「送金

「献金」の ように、単に 「送る」だけではな く、単語の 中に、「金 を送る」 とい う目的語が含 まれている場合がある。

(47)しか し、伸子 としては、 もう (偉い人)になるのはごめんだった。 もっとも、給料 とい う点か ら考えれば、真鯛や大畑の申 し出を受けた方がいいのは当然だ。家への送金 もふやせ る。‑

それで、伸子 は、決心 をつけかねているのである。 (女社長に乾杯 !)

(48)その、実利 を期待せぬ無駄、 とい うのが、た とえば朝廷への献金である、 と信秀がいい、そ う い う種類のことをや らぬ斎藤道三は、しょせ んは美濃一国のぬ しだ、とみているのである。 (国 盗 り物語)

(49)修法などさせ られると開いて、夕霧は僧への布施などもこまごまと気 をつけてさし上げる。 (釈 源氏物語)

(50) ドイツ学界への寄付 のような、名 目の立つ意義のあることならいいのだが‑ 0 (人民 は弱 し 官吏は強 し)

( 5 1 )

あた しはまだ十九になったばか りで、それにこんなとこにいるものですか ら、結婚 って どうい うものなのか、 さっぱ り実感がな くて、なんだか心はそ くて、それに家への仕送 りのこともあ ります し、いちどお断 りしたんですけど、 (忍ぶ

川)

( 5 2 )

幕府への届けは、「急病のため、中屋敷 において三 日の静養 をする」 と、い うものであった。 (刺 客商売)

(11)

岡山大学大学院社 会文化科学研究科紀要筋32(2011ll)

4. 2

申 しいれあい手 と申 しいれ動作のむすびつき

かざりが申 しいれの相手 をさし、か ざられが申 し入れ動作 を表す場合、申 しいれあい手 と申しいれ 動作のむすびつ きとなる.申 しいれのあい手には、「玉

宣 」

母」など主に人名詞が来 るが、「ド ライバ

‑ 」

一般国民」 など人の集合体、あるいは、「テ レビ局」などの組織 などもくる。かざられに は 「求婚

返事

報告」など、申しいれを表す名詞が くる。

(53)大将は、柏木 をいつ も呼びつけて、玉翠への求婚 を熱心に申 し入れていたO (新源氏物語) (54)臥 したまま、休 み休み、宮への返事 を書 いたO文章 もとぎれがちに、字 もおぼつかな く、「身

は煙 となって空へ昇 っても、心はあなたのそばを離れは しないで しょう。私が死 んだ ら、夕暮 れにはとりわけ、空を眺めて下 さい。 (新源氏物語)

(55)これは一つには、ナオ ミが国の方の思わ くを心配 している様子で したか ら、彼女に安心を与 え るためと、私 として も公明正大に事件 を逼びたかったので、出来るだけ母への報告 を急いだ訳 で した。 (痴人の愛)

( 5 6 )

三原は返事 をぼか した。苦 しかった。安田‑の弁解はあ とでするつ もりだった。 (点 と線) (57)長谷川は山本への申し継 ぎをす ませると間 もな く、ハバナ見物 をしてか ら日本へ帰 ることになっ

たが、長谷川の発つ時、山本は、 (山本五十六)

(58)一般国民への大本営発表は、翌五月二十一 日、「武蔵」東京湾入港当日の午後 に行 われたO (山 本五十六)

( 5 9 )S KD

の踊 り手たちは、最初 に自分の名前 を名乗 り、それか ら何かパーソナルなお喋 りをして、

最後 を ドライバーへの呼びかけで しめ くくるとい う約束だった. (風 に吹かれて)

(60)中央の為政者 はもう敵 と話 をつけて、一般への公表が明 日の正午だと云 うのだろう。 (黒い雨) (61)テ レビ局への交渉は金子に委ね、準備 はほぼ整 った。 (一瞬の夏)

(62) ここ数 日に折重 なった軍医学校の形ばか りの試験、卒業式、茶話会、荷造 り、母校 の医局への 墜登 、退校式、そ して出発O (稔家の人びと)

なお

、( 6 3 )

に見 られるような 「男への返事」の場合、「返事」が、返事 をする動作 なのか、なされ た返事その ものをさすのかが暖味になる場合がある。なされた返事その ものをさす場合、 これはかざ られが名詞 らしい名詞の場合 に扱 うべ きものである。 これ らの違いは文脈によって判断で きることも 多いが、どちらに属するか暖味な場合 も見 られる。

この要因としては、かぎられの 「返事、仕送 り」 といった名詞は、返事や仕送 りといった動作 を表 す場合 もあれば、返事や仕送 りその もの (手紙や金品)を表す場合 もあるか らである。その、名詞の 意味の二面性によるものである。

さらに、この現象 は申 しいれあい手 と申 しいれ動作 のむすびつ きだけではな く

、 4 1

節のゆず り

(12)

ヘノ格の名詞 と名詞 との くみあわせ ‑かざられが動作 ・状態性の名詞の吸合 一 大平 共定子

あい手 とゆず り動作のむすびつ きにも観察 される。

(63)「手紙 をよこす人には、返事 をす る人 と、 しな くて もいい人 と、 よく見 きわめてほ しい.塁二 些 葦 とい うものにこそ、女の人柄が出るものだよ。 (新源氏物語)

4. 3

はたらきかけあい手 とはたらきかけ動作のむすびつ き

かざりがはたらきかけのあい手、か ざられがはたらきかけ動作 を表す。かざ り名詞は組織 や団体が くる。かざられにははた らきかけ動作が くる。 この種の、直接的にあい手 に対 してはた らきかけるタ イプのむすびつ きは、ヘノ格のむすびつ きの中では多 くは見 られない0

(64)この二、三年、帝国藩法、教育勅語等の発布 をきっかけに して、これまでの急激な欧化政策の 反動 と国粋主義的国家思想が勢いをもり返 し、基督教への圧迫が再び起 り始めていた。(花埋み) (65)切歯憤激の敵は、今 に決然たる反撃に可転、海に堂々の決戦か、我本土の空襲か、艦隊主力へ

空重些 か、御批判はその上にて御願致度存侯。 (山本五十六)

(66)学生 を商品 としかみず、それを管理 し、 またそれに対する闘いを抹殺 しようとしている杢豊里 局へのたたかい。 (二十歳の原点)

(67)「持 ってるんだ、みんなには隠 してるが、おれ一人になるとふ ところか ら出 して、刃 にぬ ぐいをか けた りしている、むろんおれへの威 しだろうが、あの としごろがいちばんあぶないんだ、(さぷ)

4. 4

かかわり的態度のあい手 とかかわり的態度のむすびつき

かざりがあい手でかざられがかかわ り的態度である場合、このむすびつ きになる。かざり名詞は「姉」

「母

「被害者」などであ り、かざられ名詞は 「反逆

「復

等 」

「補償」などあい手に関わっていこうと する態度 を表す。

( 6 8 )

昼間の短い時間に、京子の秘密が畳み込 まれていたのである。そ して、明子はその姉への反逆 の姿勢 を取 りは じめた‑‑‑0 (砂の上の植物群)

(69)四 ・二八闘争のとき、私は何 よりも自由を大切にする人間として、現在の政治 を動か している 支配階級への反逆 としてたたかった。 (二十歳の原点)

(70)太郎は補 って考える癖 をつけていたが、それは出家 した母には、息子が どんな大学に入ろうと、

大 した問題はない筈だという公式論 と共に、藤原の微 かな、母への復等ではないか、 と思われ る要素 も含 まれていた。 (太郎物語 ・大学編)

(71)事件の大規模 を知ったアポロはふたたび rおかあさま方へ」 と題す るメ ッセージを発表 した。

そのなかで彼 らは率直に事件の経過 をのべて手おちをみ とめ、被害者‑の補償 を誓 うとともに、

(13)

岡山大学大学院社会文化科学研 究科紀要第32(2011ll)

今後公表するまで ドロップは他社の ものを買 うようにといった0 (巨人 と玩具)

(72)公営の店であるか らお客へのサー ビスなどと言 う事 にも余 り関心が無い し、公務員である店員 はあるだけ売 って しまうと後はニェー トの一点張 りとなる. (風 に吹かれて)

(73)加藤は、その彼の行動が、一種の取 りみだ Lであって、そのように彼 を追いこんだのは、彼に おきが りを押 しつけようとした影村一夫の不信行為 に対する怒 りと、影村一夫 を代表 とする△

間への抵抗であると考えた。 (孤高の人)

かざりは、通常人であるが、このむすびつ きに似 た例 として以下の例が挙げ られる。 これ らは、か ざりの 「病

冬山」は、人ではないが、戦 うあい手、 目標物 を表す。「病」の ように、あい手か ら攻 撃されるタイプの もの もあれば、「冬山」の ようにあい手に戦 う気はない ときもある。

これを

5

節の対象のむすびつ きとしない理由は

、5

節で取 り上げる対象のむすびつ きは、心理活動 をかざられにさしだす タイプの ものだか らである。 4.4節 と同様の タイプの もの として、用例か ら は収集 されなかったが、「近代化への抵抗」 などといったように、かざ りが現象名詞の もの も考 えら れる。

(74)あるとき、父の手が私のワイシャツのボタンを上か ら順 に、苦労に苦労 を重ねた末に全部を外 しおえたとき、それが父 にのこされた、病‑の最後の抵抗であ り、再起への祈 りであったこと を深い感動 と共に理解 した。 (恥の譜)

(75)冬山への挑我 という観念が大 きな誤謬 だった。(孤高の人)

4.5 関係のあい手のむすびつき

かざりがあい手、かざられが関係 を表す場合である。二つの もののあいだの関係について表す。

(76)なにより桃子はわが子のお もだちに、殊 に横のほ うに突出 した大 きなその耳に、まざれ もない 夫への近似 を、いや酷似 を認めたのである。 (稔家の人びと)

5.

心理活動の対象のむすびつき

心理活動の対象のむすびつ きは、かざられに思考活動、心理、態度 を、か ざりにその対象 をとるも のであるCか ざりである対象は、人の場合 も物の場合 もコ トの場合 もあるOかざられは、認識、感情、

評価、態度 などにより6つに分類で きる。連用格 で表現するならばヲ格やこ格 をとることが多いが、

ヘノ格はヲ椿の領域 までを含むという意味で、ヘノ格がカバー している領域は広い。

(14)

ヘノ格の名詞 と名詞 との くみあわせ ‑か ざられが動作 ・状態性の名詞の槻合 一 大平 来紀子

5.1 認識の対象のむすぴつき

かざりが認識の対象、かざられが認識活動 を表す名詞の場合、このむすびつ きになる。かざ り名詞 は 「信長

「日本」のように認識の対象 をさし、かざられ名詞 は 「認識

理解」など、認識に関する ものが くる。

(77)光秀は、不快 なが らも信長への認識 をす こしずつあ らため ざるを得 なかった。 (国盗 り物語) (78) この 「ジャパ ン ・アン ド ・アメリカ」 とい う小新聞は、 日本の記事 をのせ、在留邦人には故国

のニュースを知 らせ、米人には 日本への理解 を高め させ るのが 目的だった。 (人民は弱 し 官 吏は強 し)

5.2 感情の対象のむすびつき

この節では、かざ りが感情の対象、か ざられが感情であるものを見てい く。かざ りとか ざられの タ イプによって、ここをさらに三つに下位分類する。

5.2.1 感情的態度の対象のむすぴつ き

かざ りが感情的態度の対象、か ざられが感情 となるとこのむすびつ きになる。 この場合の感情は、

プラスの感情 もマイナスの感情 もどちらで もない ものも存在する。か ざり名詞は人であることが多い が、そうでない場合 も見 られる。

(79)なるほど彼女 には、長いことそれ一つに念 じていた男の子、歳 のちが う夫への嫌厭 を姦返 して 身体の震えるほどい としくてたまらぬ聡がいる。 (稔家の人び と)

(80)沖や山脇幸子 にも見 られた 「彼」への畏怖の感情が憎 しみの爆発 を辛 うじて抑圧 していたため、

その屈辱感はさらに探かった。 (エディプスの恋人)

(81)だが、掃除を し、洗濯をしている間にも 「彼」への思慕 はます ますつのるばか りだった。 (エディ プスの恋人)

(82) ヨーロッパは、この 「キ リス ト教徒の敵」の死 を、たいまつを焚 き花火を打ちあげて祝い、教 会は、神への感謝を捧げる人々で埋 まった。 (コンスタンティノープルの陥落)

(83)あんなにまで しな くて も、 と思いは したが、彼女の一部には 「彼」 を護るために平気で どんな ことでもする 「意志」への共感 もあった。 (エディプスの恋人)

(84)以前 「彼」の周囲でそれに似 た現象が起 ったか らこそ、それを目撃 したか らこそ、バ ッ トの若 者があれほど 「彼」へのおびえをあか らさまに示 したのではなかったか。 (エディプスの恋人) (85)ひと通 りの回想 を終 えた郵便局員の中では 「彼」への恨みがいつの間にか七瀬への攻撃衝動 に

変化 していたO (エディプスの恋人)

(15)

岡山大学大学 院社会文化科学研 究科紀要蘇32(2011ll)

(86)母の死はやがて訪れると知 りなが ら呑気 に構 えていた。それは旦二里一種の旦主で もあった.(衣 埋み)

(87)三 日前に感 じた彼の体への衝 きが、再び建 って きた.悪 くないOそれをエディに確 かめた くて、

なかなかいいですね と話 しかけた. (一瞬の夏) (88)私は男への反感がむ らむ らと燃 えた。 (放浪記)

(89)南の海辺です ごす とき、栄二はひっきりな しに独 り言 を云 う、その大半はさぶ とおすえのこと であ り、自分 をなだめようとする役人たちへの噸笑であった。 (さぶ)

かざ り名詞が 「試験

「スパイ嫌疑」 など、 コ ト的になると、か ざ りはかざられの原因 ・状況的意 味合いを持つ ようになる。かざられが心理活動 とい う面では、次の5 2 2と同 じであるが、 ここで の心理活動は原因的で、かざ りのせいでかざられのような感情が引 き起 こされる、あるいはか ざりが かざられのような感情が起 きた原因、引 き金 となる

O( 9 0 )

でいうならば、「焦 りを感 じる要因が試験 である」 とい う意味合いになる。そ うい う意味で ここでのか ざられは受け身的であるが、 5 2.2で はむ しろ積極的に判断を行 っている。

( 9 0 )

試験への焦 りも、明 日の生活への不安 もなかった。 (花埋み)

(91)背後には、抜刀 したイユニチェリ軍団の兵士が待ちうけている。マホメ ッ ドニ世は、敵への恐 怖 よりも味方に恐怖 をいだ くことで戟力 をたかめるや り方 を、同 じ血の流れる トルコ兵 に対 し て も使った。(コンスタンティノープルの陥落)

(92)横はべつに炎上 もせず大破 もせず、唆‑がスパイ嫌疑‑の恐怖 も忘れて駈 けつけてみると、怪 我 もしないらしかったテス トパ イロッ トが、折れかかった電信柱 をと りお りて くるところだっ た。 (稔家の人びと)

(93) ところで呆然 としたこんな時の空想 は、 まず第一 に、 ゴヤの描いたマヤ夫人の乳色の胸の肉、

頬の肉、肩の肉、酸 っぱいような、美麗なものへ、豪華なものへの反感が、 ぐん ぐん血の塊の ように押 し上げて来て、私の胃のふは旅愁に くれて しまった。いったい私 はどうすれば生 きて ゆけるのだ。 (放浪記)

(94)それはようや くドイツ国内にみなぎる彼の学説への憎悪の衰退 を告げる現象か と思わせたが、

ヒッ トラーの接頭はふたたびこの老人の晩年 をおびやか した。 (稔家の人び と)

(95)惰性のような芸妓遊びへの悔恨が、ふたたび戦場にお もむ くまえに、なにか しら無垢の少女の 像 を彼 に求めさしたのである。 (稔家の人びと)

(96)や くざな りの観察力で二人が まだ肉体関係にはない と知 り、美や知性やその他 さまざまな二人 をとり巻 く雰囲気への嫉妬か ら、二人の心に深い傷 を負 わせ ようとた くらんでいた。 (エデ ィ プスの恋人)

(16)

ヘノ格の名詞 と名詞 との くみあわせ 一か ざ られが動作 状態性の名詞 の場合 一 大平 共紀子

(97)女のつげロは、哲子の裕福 な暮 しぶ りと、若 い男 に礼讃 されていることへの嫉妬 か らだろうけ れ ど、祖母 は、その まま輪 をかけて、逸郎 にこれ をつげた。 (プアボーイ)

さらに、次はか ざられ名詞 「いたわ り

「思いや り」が、上記の感情 と少 しずれ る例である。上記 のかざられは単純 に感情 を表 していたが、「いたわ り

「思いや り」 は、感情ではあるが、それ らを実 現 させるためには行動 を伴 わなければな らない とい う点で、 これ までの もの と異 なる。

か ざられが態度的な名詞である とい うこ とか ら4.3、4.4との類似性 もあるが、4.3や4.4では かざられのはたらきかけ性が強いのに対 し、 この タイプの連語では感情面が前面に出ている点が異 な る。

( 9 8 )

一人で身仕度 を したのは、つかれている里子へのいたわ りだったか もしれない、そんな風 に思 っ た。 (雁の寺)

(99)しか し信夫は、かえってその一言一言 に、妹ふ じ子‑の思いや りが溢 れているような気が した。

(塩狩峠)

5. 2. 2

評価的態度の対象の むすびつ き

か ざ りが評価 的態度の対象、か ざられが評価活動 を表す名詞である。か ざ りは 「息子

「吟子」 な どの人名詞が くることもあるが、「社会制度

「阿片 を購入 したこと」 などの コ トが くるこ ともある。

か ざられには 「非

稚 」「

韮讃」 などの評価 を表す名詞が くるO

(100)何 も言わないことが、息子への非難 を意味 していた。 (青春の嵯鉄)

(

1

0

1)吟子が内務省の免許 を得 た と伝 え られると吟子への賞蒼の記事 とは別 に、「女 は果 して医者 に 向 くか否か」 とい う問題がたちまち新聞紙上で論議 された。 (花埋み)

( 1 0 2 )

続いて 日本人の耶蘇教徒が演壇 に立 ち教義の説明 とその偉大 さを語 るが、それは現在 の 日本 の社会制度‑の痛烈 な些型 ともなっていた。 (花埋み)

( 1 0 3 )

年間の制限数量 を越 えて星が原料 阿片 を購入 した ことへの批難 を反証す る、内務省衛生局長 か らの文書。 (人民は弱 し 官吏は強 し)

(104)一方では、そんなことがあるわけはない、そんなことを思 うのは珠子のや さ しさ‑の冒涜だ、

などとけんめいに否定 したのですが、 (エデ ィプスの恋人)

5. 2. 3

期待 ・欲求の対象の むすびつ き

かざ りが期待 ・欲求の対象で、か ざられが期待や欲求 を表す状態性名詞の場合である。期待 や欲求 の対象 となるか ざられ名詞 は 「期待

「渇望」 な ど、他 に対す るはた らきかけ性が弱 く、 自己の中で

(17)

岡山大学大学 院社会文化科学研 究科紀要第32(2011.ll)

の感情、感覚的な名詞である。 しか し、それ らが、対象 に対するはたらきかけ性 を表す 「ヘノ」格 と むすびつ くところは興味深い。

5.2.1、5.2.2の感情は、すでに終わった出来事 に対する感情、評価であったが、 このタイプは これか ら先の将来に対する展望 を表す心理状態 となる。

(105)和倉ほどの男で も、その場逃れの言葉 を使 ったのか と思 うと何 ともいえな く俺 しかった。塑 倉への期待 を婁切 られたような淋 しさと共に、祈 りが きかれなかった というむな しさがあっ

た。 (塩狩峠)

(106)その購曳 きの間隔 を二倍 に延ば し四倍 に延ば し、やがて十倍に延ば して しまえば、その時間 の長 さだけ二人の関係 はうすれ、それ と共に女の愛 も男への期待 もうすれて行 って、つ ま り は元の他人に還元 して しまうに違いない。 (青春の鐙鉄)

(107)耶邸の都は、天下一の名人 となって戻 って来た紀 昌を迎えて、やがて眼前 に示 されるに違い ないその妙技への期待 に湧返ったO (名人伝)

(108)源氏が、御息所 に熱心に求愛 したのは、いまになって考えると、みたされぬ藤壷 の宮への渇 望が、意識下にあったか らに違いないが、なみなみの女人に見 られぬ、ふかい心の奥行 きに 魅せ られたためだった。 (新源氏物語)

(109)本社で企画中の新製品について知 らせた り、本社への要望 を闘いた りした。 (人民 は弱 し 官 吏は強 し)

(110)(それが、この婚姻でおさまる。やすい ものだ) とお もうし、かつ将来への希望 もあった。 (国 盗 り物語)

(111)これまでの江藤の命 を支 えて来たものは、明 日への希望、未来への期待であった。 (青春の桂 妹)

5. 3

活動へのかかわり的態度の対象のむすびつき

かざりが活動へのかかわ り的態度の対象 をきしだ し、かざられが態度を表す。か ざりが、「作戦

「仕 事」などに見 られるような活動 を表 し、かざられが 「協力

献身」などの、それに対する態度を表す。

「冬山」は、それ自体は活動 とは言いに くい ものであるが、「冬山に登 る」 ということの言 った表現だ と考えればこのむすびつ きとして考えられるだろう。

(112)「大和」の司令長官公室は、従来の戦艦の型 を破 って、艦の中央部艦首寄 りに設け られていた。

黒鳥先任参謀 と字垣参謀長に大体のことを話 したあ と、中央部の長官室 に案内 されて、彼は 山本に会い、「陣地を持ちこたえている将兵は、ガンジー以下に痩せ細 りました」 と、補給船 団護送の問題で、陸軍のガ島奪回作戦への海軍の箪亘 を要請 した。 (山本五十六)

(18)

ヘノ格の名詞 と名詞 との くみあわせ ‑か ざられが弛作 ・状態性の名詞の場合 一 大平 共紀子

(113)人づ き合いが よ くなった とい うことはいいことではあるが、加藤の変貌が、あの倣健 にも見 えるほどの技術 における自信 と仕事への献身を減殺するものだった ら困ると思 ったO (孤高の 人)

6.原因的なむすびつ き

へノ格の名詞 と名詞 とのむすびつ きの中では特異であるが、か ざりがか ざられの原因 となっている 場合が見 られる。「誤報のせいで抗議 を した

式部卿宮が冷たかったか ら報復 した」 という意味合 い になる。

(114)星の乗 った車 は刑務所 のある市ヶ谷方面 にはむかわず、問題の報知新 聞社 の前 に とまった。

誤報への抗議 を し、費任者 とな ぐりあい をす るのではないか と、ひとさわ ざを期待 した記者 もあったか もしれない。 しか し、そうではなかった。 (人民は弱 し 官吏は強 し)

(115)それはたぶん、源氏の逆境時代、式部卿 の宮が冷たかったことへの報復 であろう、 と宮 はあ きらめてい られる。 (新源氏物語)

7.まとめ

これまで見てきたことをまとめると、以下の表のようになる。いちばん左の欄 はむすびつ きのタイ プ、真ん中の欄は用例、いちばん右の欄 はか ざりとかざられの名詞のカテゴリカルな意味である。分 類 を細分化 し、かざ りとか ざられの厳密 なカテゴリー化ができた。

ヘノ格の名詞 と名詞 との くみあわせ は、大 きく三つの タイプに分類 される。方向性 のむすびつ き、

あい手のむすびつ き、心理活動の対象のむすびつ きである。ヘノ格 に共通するのが、かざ りが、ある 意味での方向を表 しているということである。 また、か ざられが、直接的に対象 に向かって働 きかけ て対象に状態変化 を加 えるというものではな く、変化や状態、態度 を表す とい うことである。

方向性のむすびつ きは、 か ざ りが具体的場所や変化後の状態、到達点などの場所や 目標 を表 し、

かざられが移動や変化の動作 を表す。ゆ くさきと移動動作のむすびつ きでは、か ざりにもっとも具体 的な場所名詞が き、かざられは移動動作 を表す。それが、か ざられが他動的動作 になった場合、 うつ しかえ場所 とうつ しかえ動作のむすびつ きとなる。かざりが参加 される団体や組織、か ざられが参加 動作 となった場合、参加先 と参加動作のむすびつ きとなる。 このむすびつ きになると実際の移動は伴 わな くなるものも出て くる。かざ りが新 しい状態、かざられが変化動作の場合、状態変化のむすびつ きを作 る。参加のむすびつ きではか ざり名詞は参加 される団体であったが、状態変化のむすびつ きで は社会的地位や身分、新 しい状態 となる。かざ りの抽象化が進み、かざりが 目標、か ざられが 目標実

(19)

岡山大学大学 院社 会文化科学研究科紀要 第32 (2011.ll)

現のための動作 となる場合、 目標 のむすびつ きを作 る。 これは連用では表現で きないタイプのむすび つ きである。

あい手のむすびつ きは、 かざ りに人名詞、団体、組織 をとり、かざられにはそのあい手に対 して はたらきかけてい く動作 をとる。かざ りが人名詞、か ざられがゆず り動作 を表す場合、ゆず りあい手 とゆず り動作のむすびつ きとなる。かざられが申 しいれ動作 となった場合、申 しいれあい手 と申 しい れ動作のむすびつ きとなる。この二つのむすびつ きは、連用で表現すると三項動詞であ り、その三項 のうちのあい手 と動作の部分 をピックアップ してで きた連語である。かざられがはた らきかけ動作 と なった場合、はたらきかけあい手 とはた らきかけ動作のむすびつ きを作 る。 しか しこの種の直接あい 手にはたらきかけるタイプのむすびつ きは量的に多 くない。かざられがかかわ り的態度 になる場合、

かかわ り的態度のあい手 とかかわ り的態度のむすびつ きとなる。かざられが感情 を含 んだ態度である ことで

、5

節の心理活動の対象のむすびつ きと似た面があるが、ここで取 り上げた ものは態度的要素 が前面に出ているものである。か ざられが関係 を表す場合、関係のあい手のむすびつ きとなる。

心理活動の対象のむすびつ きは、か ざりに対象、か ざられに思考活動、心理、態度 をとる。かざり は人、物、コ トの場合がある。かざられが感情 をとるとき、感情的態度の対象のむすびつ きとなる。

この時の感情はプラス、マイナス、 どちらで もない ものがある。 さらにこのタイプでは、か ざり名詞 が コ ト的になるとかざりはか ざられの原因的な意味合 いを持つ ようになる。か ざられが対象への積極 的な判断 ・評価 を行 う名詞になると、評価的態度の対象のむすびつ きとなる。か ざられが、これか ら 先の将来に対する展望 を表す心理状態 となった場合、期待 ・欲求の対象のむすびつ きとなる。今回用 例に見 られなかったが、不安や懸念 といったマイナスの展望は、 この期待 ・欲求の対象のむすびつ き のす ぐ隣 りにある結びつ きであろう。かざられが態度 を表す場合、活動へのかかわ り的態度の対象の 結びつ きを作る。

さらにヘノ格 には原因的なむすびつ きが存在する。原因的なむすびつ きはかざ りがかざられの原因 となっているタイプの ものであるが、連用のへ格か らはす ぐに考えつかない ものである。

このように複合連体格のヘノ格 とヘノ格 との くみあわせについて見て きたが、本研究の 目標 は、単 語の語桑的な意味は異なって も、単語のカテゴリカ)i,な意味か らむすびつ きの性格 を一般化 して体系 を捉 えようとするところにある。従 って一つずつの単語の語桑的な意味による分類ではな く、今後新 しい例が出て きたときにも、 どこかに位置づけ られる、あるいは,どこかの タイプか らの派生関係で 説明で きる仕組みである。

(20)

ヘノ格の名詞 と名詞 との くみあわせ ‑かざられが動作 ・状態性の名詞の場合 一 大平 共定子

用例 か ぎ り/ か ぎられ

3方向性

3.1ゆ くさきと移動動作 キオス島への脱出 具体的場所名詞/移動動作 3.2うつ しかえ場所 とうつ しかえ動作 保税倉雌への搬入 具体 的場所名詞/他動的動作 3.3参加先 と参加動作 欧州への参戦/連盟‑の加入 場所名詞 .参加 される団体/参加動作 3.4状態変化 畳か ら夜への移 り変 り 新 しい状態/変化 を表す動作 3.5目標 最終 ステ ップ‑の単備 目標 .ゴー)i,/達成のための活動 4あい手

4.1ゆす りあい手 とゆず り動作 家への送金 ゆず りあい手/ゆず り動作 4.2申 しいれあい手 と申 しいれ動作 玉宴‑の求婚 申 しいれあい手/ 申 しいれ動作 4.3はたらきかけあい手とはたらきかけ動作 基督教への圧迫 はた らきかけあい手/はた らきかけ動作 4.4かかわり的態度のあい手とかかわり的濃度 姉への反逆 かかわ り的態度のあい手/かかわり的態度

4.5関係のあい手 夫‑の近似 あい手/関係

5心理活動の対象

5.1認軌の対象 信長へ の認一瓶 認軌の対象/認識 を表す状態 5.2感情の対象

5.2.1感情的態度の対象 夫‑の嫌欣 /試験への焦 り 感情的態度の対象/感情 を表す状態 5.2.2評価的態度の対象 社会制度への批判 評価 的態度の対象/評価 を表す状態 5.2.3期待 .欲求の対象 和合‑ の期待 期待 .欲求の対象/期待 .欲求を表す状態 5.3活動のかかわ り的態度 冬 山へ の挑戦 かかわ り的態度の対象/態度

参考文献

奥田晴雄

( 1 9 8 3 )

「に格の名詞 と動詞の くみあわせ

」r

日本語文法 ・連語論 (安料編

)

j むぎ昏房 奥田晴雄

( 1 9 8 3 )

「を格の名詞 と動詞の くみあわせ

」r

日本語文法 ・連語論 (瞥料編

)

j むぎ書房 彰広

陵 ( 1 9 9 8 )

「ヘノ格の名詞 と名詞 との くみあわせ

」r

日本学研究論」

彰広隆

( 1 9 9 9 )

「複合連体格の名詞 を<かざ り>にする連語

」r

ことばの科学

9

1 むぎ書房 渡辺友左

( 1 9 8 3 )

へ格の名詞 と動詞の くみあわせ

」r

日本語文法 ・連語論 (瞥料編

)

] むぎ書房

使用資料

CD‑ ROM

版 r新潮文庫の

1 0 0

冊』

女社長に乾杯 ! (赤川次郎)、山本五十六 (阿川弘之)、羅生門・鼻 (芥川龍之介)、砂の女 (安部公房)、

小 さき者へ ・生れ出づ る悩み (有 島武郎)、華同音洲の妻 (有書佐和子)、剣客商売 (池波正太郎)、

焼跡のイエス ・処女懐胎 (石川淳)、一握の砂 ・悲 しき玩具 (石川啄木)、青春の瑳鉄 (石川達三)、

歌行燈 ・高野聖 (泉鏡花)、風 に吹かれて (五木寛之)、野菊の墓 (伊藤左千夫)、プ ンとフン (井上 ひさし)、あすなろ物語 (井上靖)、黒い雨 (井伏鱒二)、沈黙 (遠藤周作)、死者の香 り ・飼育 (大江 健三郎)、野火 (大岡昇平)、パニ ック ・裸の王様 (開高健)、樺様 (梶井基次郎)、雪国 (川端康成)、 稔家の人びと (北杜夫)、聖少女 (倉橋 由美子)、モオツアル ト・無常 とい う事 (小林秀雄)、一際の

(21)

岡山大学大学院社会文化科学研究科紀要第32 (2011.ll)

夏 (沢木耕太郎)、新橋鳥森口青春篇 (椎名誠)、 コンス タンティノープルの陥落 (塩野七生)、小僧 の神様・城の崎にて (志賀直哉)、国盗 り物語 (司馬遼太郎)、破成 (島崎藤村)、太郎物語 (曾野綾子)、

二十歳の原点 (高野悦子)、 ビルマの竪琴 (竹山道雄)、人間失格 (太宰治)、冬の旅 (立原正秋)、新 源氏物語 (B]辺聖子)、痴人の愛 (谷崎潤一郎)、エディプスの恋人 (筒井康隆)、二十四の瞳 (壷井栄)、

李陵・山月記 (中島敦)、こころ (夏 日淑石)、孤高の人 (新田次郎)、アメリカひ じき・火垂るの墓 (野 坂昭如)、放浪記 (林芙美子)、にごりえ ・たけ くらべ (樋口一葉)、革の花 (福永武彦)、若 き数学者 のアメリカ (藤原正彦)、人民は弱 し官吏は強 し (星新一)、風立ちぬ・美 しい村 (堀辰雄)、点 と線 (松 本清張)、塩狩峠 (三浦綾子)、忍ぶ川 (三浦哲郎)、人生論ノー ト (三木活)、金閣寺 (三島由紀夫)、

雁の寺 ・越前竹人形 (水上勉)、銀河鉄道の夜 (宮沢賢治)、錦繍 (宮本輝)、友情 (武者小路実篤)、

世界の終 りとハー ドボイル ド・ワンダーラン ド (村上春樹)、山板大夫 ・高瀬舟 (森鴎外)、遠野物語 (柳田国男)、さぶ (LLJ本周五郎)、路傍の石 (山本有三)、載艦武蔵 (吉村昭)、砂の上の植物群 (吉 行淳之介)、花埋み (渡辺淳一)

参照

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