日本人の身体活動・体力と
全文
(2) 目 次. 第1章. 序論 .......................................................................................................................... 1. 1.メタボリックシンドローム該当者および 2 型糖尿病有病者の状況............................. 2 2.身体活動および運動の実施状況.................................................................................... 2 3.身体活動に関する我が国の健康政策 ............................................................................ 2 4.本論文の目的と全体構成............................................................................................... 4 第2章. 身体活動量の基準とメタボリックシンドローム (研究課題 1) .......................... 7. 1.緒言 ............................................................................................................................... 8 2.方法 ............................................................................................................................... 9 3.結果 ............................................................................................................................. 14 4.考察 ............................................................................................................................. 21 5.結論 ............................................................................................................................. 24 第3章. 全身持久力の基準と 2 型糖尿病 (研究課題 2).................................................. 25. 1.緒言 ............................................................................................................................. 26 2.方法 ............................................................................................................................. 27 3.結果 ............................................................................................................................. 31 4.考察 ............................................................................................................................. 38 5.結論 ............................................................................................................................. 40 第4章. 筋力と 2 型糖尿病 (研究課題 3) ....................................................................... 42. 1.緒言 ............................................................................................................................. 43 2.方法 ............................................................................................................................. 44 3.結果 ............................................................................................................................. 48 4.考察 ............................................................................................................................. 54 5.結論 ............................................................................................................................. 56.
(3) 第5章. 総括 ........................................................................................................................ 57. 1.本研究の成果 ............................................................................................................... 58 2.総括論議 ...................................................................................................................... 59 3.今後の課題と展望........................................................................................................ 61 謝辞 ....................................................................................................................................... 63 引用文献 ............................................................................................................................... 65 掲載論文 ............................................................................................................................... 76.
(4) 第1章. 1. 序論.
(5) 第 1 章 序論. 1.メタボリックシンドローム該当者および 2 型糖尿病有病者の状況 2012 年に実施された国民健康・栄養調査によると(1)、メタボリックシンドロームが強く 疑われる者の割合は男性 24.7%、女性 9.4%、さらに予備群と考えられる者を含めると男性 48.3%、女性 17.1%であったことが報告されており、日本人男性のおおよそ 2 人に 1 人がメ タボリックシンドロームの予備群または該当者という状況となっている。また、同調査の 結果より、糖尿病が強く疑われる者の割合は男性 15.2%、女性 8.7%、さらに糖尿病の可能 性を否定できない者を含めた場合には男性で 27.3%、女性で 21.8%であったことが報告され ている。国際糖尿病連合によると、2013 年に発表された日本の成人の糖尿病有病者数は 720 万人と推定されており、その数は世界で第 10 位と日本は上位国となっている(2)。我が国 における死因の第 1 位は悪性新生物 (28.8%)、 第 2 位が心疾患 (15.5%)、 第 3 位が肺炎(9.7%) 、 第 4 位が脳血管疾患(9.3%)であり、生活習慣に起因する疾患がその大部分を占めている (3)。したがって今後、生活習慣病の予防・改善に向けた対策の実施は重要であるといえる。. 2.身体活動および運動の実施状況 2012 年の国民健康・栄養調査より(1)、1 回 30 分以上かつ週 2 日以上の運動を 1 年以上 継続している運動習慣者の割合は男性 36.1%、女性 28.2%であったことが報告された。年代 別でみると、60 歳以上の高齢者では運動習慣者の割合はおおよそ 4 割程度であったのに対 し、 30~49 歳の男性では 2 割程度、 20~49 歳の女性では 2 割を下回るという現状であった。 また、中高強度の身体活動量の指標の一つである 1 日の平均歩数は男性で 7139 歩、女性で 6257 歩と、ここ 10 数年間で男女ともにおおよそ 1000 歩の減少が認められている(1, 4)。 身体活動・運動の実施が生活習慣病の予防・改善に対して有益であることは一般に広く知 られており、今後、国全体での運動習慣者の増加や身体活動量の増加が望まれる。. 3.身体活動に関する我が国の健康政策 3-1.健康日本 21(第二次) 2.
(6) 第 1 章 序論. 厚生労働省は、2010 年度までの「健康日本 21」の最終評価を踏まえた上で、2013 年 4 月 より「健康日本 21(第二次) 」をスタートさせた(5)。その中で、生活習慣病の発症予防と 重症化予防の徹底が国民の健康の増進の推進に関する基本的な方向の一つとして掲げられ ている。具体的な数値目標として、 「メタボリックシンドロームの該当者および予備群の減 少(2015 年度までに 2008 年度より 25%減少)」、 「糖尿病有病者の増加の抑制(2022 年度に 1000 万人) 」などの項目が挙げられている。また、身体活動・運動の分野に関しては、「日 常生活における歩数の増加(約 1000~1500 歩の増加)」、 「運動習慣者の割合の増加(約 10% の増加) 」 、 「住民が運動しやすいまちづくり・環境整備に取り組む自治体数の増加(47 都道 府県) 」の 3 点についてそれぞれ具体的な数値目標が掲げられている。 「健康日本 21」の最 終評価において、意識的に運動を心がけている人の割合に増加がみられたものの、歩数は 減少しており、今後、国民に向けた身体活動量増加のための支援の強化が必要とされてい る(6)。. 3-2.健康づくりのための身体活動基準 2013 「健康日本 21(第二次) 」の推進に向け、2013 年 3 月に厚生労働省より「健康づくりの ための身体活動基準 2013」(7)および「健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイ ド) 」(8)が策定された。 「健康づくりのための身体活動基準 2013」では、生活習慣病や死亡、 運動器障害などと身体活動や体力との関連について検討した前向きコホート研究のシステ マティックレビューおよびメタ解析の結果に基づき、健康づくりのために必要な身体活動 量の基準が示されている。具体的には、18 歳から 64 歳に向けた「身体活動量の基準」とし て、 「3 メッツ以上の強度の身体活動を 23 メッツ・時/週」を行うことが推奨されている。 また今回新たに、全ての世代に共通した「身体活動量の方向性」として、 「身体活動量を今 より少しでも増やす。例えば毎日 10 分長く歩く」ことが推奨されている。この身体活動量 の方向性をベースとし、アクティブガイドでは「+10(プラス・テン)」というキャッチフ. 3.
(7) 第 1 章 序論. レーズで「今より 10 分多くからだを動かす」ことをメインメッセージとして前面に押し出 している。さらに、 「健康づくりのための身体活動基準 2013」では体力の基準についての検 討もなされており、全身持久力(最大酸素摂取量)の基準が性年代別に示されている。 今回、身体活動量の基準を定めるにあたり採用された文献はそのすべてが質問紙法によ り身体活動量が評価されており、採用された 33 本の文献のうち日本人を対象とした文献は 3 本のみと限られていた。また、全身持久力の基準に関しても日本人を対象とした文献は 45 本中 5 本のみとわずかであった。さらに今回、全身持久力以外の身体機能や筋力などの その他の体力についても基準策定のための検討は行われたものの、現時点では基準を定め るための十分なエビデンスがなかったために基準の策定は次回に見送られている。. 4.本論文の目的と全体構成 以上のように、日本人を対象として身体活動や体力との関連について定量的に検討した 疫学研究は十分とは言えない。欧米人と日本人では遺伝素因や生活環境が異なることから、 日本人を対象として身体活動や体力に関する疫学研究を行うことは公衆衛生上の意義があ ると考えられ、今後更なる研究の蓄積が期待されている。また、身体活動量や全身持久力 等の基準は、生活習慣病や死亡、運動器障害などの様々なアウトカムと身体活動や全身持 久力との関連について検討した前向きコホート研究の結果を統合することで各基準値が定 められている。したがって、これらの基準が、実際に各疾患とどのような関係にあるのか については明確になっておらず、身体活動量や全身持久力の基準と各疾患との関連につい て検討を行うことは、 「健康づくりのための身体活動基準 2013」の普及・啓発を推進する上 でも重要であると考えられる。 日本人は 2 型糖尿病になりやすい人種であることが知られている。これまでの研究にお いて、日本人は白人と比較してインスリン分泌能が低いことが報告されており(9)、欧米人 とは異なり日本人では BMI が低くても 2 型糖尿病を発症するといった特性を持つ(10)。こ. 4.
(8) 第 1 章 序論. のように、日本人と欧米人では 2 型糖尿病の発症の背景が異なることから、2 型糖尿病と生 活習慣との関連については特に日本人を対象に検討を行う必要があると考えられる。また、 メタボリックシンドロームは 2 型糖尿病の前段階ともいわれており、メタボリックシンド ローム該当者では 2 型糖尿病の発症リスクがおおよそ 3 倍であることが日本人を対象とし たコホート研究により報告されている(11)。 そこで本研究では、日本人を対象として身体活動および体力とメタボリックシンドロー ムおよび 2 型糖尿病との関連について検討するとともに、 「健康づくりのための身体活動基 準 2013」で推奨されている身体活動量および全身持久力の基準達成との関連について検討 することを目的とし、以下の研究課題を遂行することとした。. 本博士論文は以下の 3 つの研究課題より構成する。. 1. 身体活動量の基準とメタボリックシンドローム(研究課題 1;第 2 章) 「健康づくりのための身体活動基準 2013」の身体活動量の基準および身体活動量の方 向性(プラス・テン)を満たすこととメタボリックシンドロームとの関連について横 断的に検討する。 2. 全身持久力の基準と 2 型糖尿病(研究課題 2;第 3 章) 「健康づくりのための身体活動基準 2013」の全身持久力の基準と 2 型糖尿病罹患との 関連について検討するとともに、2 型糖尿病の発症予防に対する全身持久力の基準の妥 当性について縦断的に検討する。 3. 筋力と 2 型糖尿病(研究課題 3;第 4 章) 2 型糖尿病に対する筋力と肥満の単独および複合の関連を横断的に検討する。. 以上の研究課題を遂行することにより、我が国においてメタボリックシンドロームや 2. 5.
(9) 第 1 章 序論. 型糖尿病の予防・改善に向けて身体活動・運動を推奨していく上で有益なエビデンスを提 供できると期待される。. 6.
(10) 第2章. 身体活動量の基準とメタボリックシンドローム (研究課題 1). 7.
(11) 第 2 章 身体活動量とメタボリックシンドローム. 1.緒言 2012 年の国民健康・栄養調査によると、メタボリックシンドロームが強く疑われる者の 割合は男性 24.7%、女性 9.4%であり、さらに予備群と考えられる者を含めると男性 48.3%、 女性 17.1%にのぼることが報告された(1)。健康日本 21(第二次)では、メタボリックシン ドロームの該当者および予備群を 2015 年度までに 2008 年度から 25%減少させることを具体 的な数値目標として掲げており(5)、我が国においてメタボリックシンドロームの予防・改 善に向けた対策の実施は急務である。 これらの現状を踏まえ、2013 年 3 月に厚生労働省より「健康づくりのための身体活動基 準 2013」(7)および「健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド) 」(8)が策定さ れた。 「健康づくりのための身体活動基準 2013」では、生活習慣病や死亡、運動器障害と身 体活動との関連について検討したコホート研究のシステマティックレビューおよびメタ解 析の結果に基づき、健康づくりのために必要な身体活動量や運動量の基準が示されている。 その中で、18 歳から 64 歳に向けた「身体活動量の基準」として、「3 メッツ以上の強度の 身体活動を 23 メッツ・時/週」 (以下、身体活動量の基準)を行うことが推奨されている。 さらに今回新たに、全ての世代に共通した「身体活動量の方向性」として、 「身体活動量を 今より少しでも増やす。例えば毎日 10 分長く歩く」ことが推奨されている。この身体活動 量の方向性をベースとし、アクティブガイドでは「+10(プラス・テン) 」というキャッチ フレーズで「今より 10 分多くからだを動かす」 (以下、身体活動量の方向性(プラス・テ ン) )ことをメインメッセージとして前面に押し出している。 有酸素性運動の量と内臓脂肪の減少率には量反応関係があることが報告されており(12)、 身体活動によるメタボリックシンドロームの予防・改善効果(13, 14)が一般に広く知られ ている。これまでに、身体活動とメタボリックシンドロームとの関連について検討した疫 学研究は数多くある(15-20)。しかしながら、これら多くの先行研究では質問紙により身体 活動量が評価されており、加速度計を用いて客観的に評価した総身体活動量とメタボリッ. 8.
(12) 第 2 章 身体活動量とメタボリックシンドローム. クシンドロームとの関連について検討した疫学研究は少ない(21-24)。質問紙法は、容易に 多くの人を対象とした調査を実施できるという利点を持つ反面、回答者の主観や思い出し バイアスが入るため客観性や正確性に乏しい(25)。身体活動基準 2013 において身体活動量 の基準を定めるにあたり採用された文献はそのすべてが質問紙により身体活動量が評価さ れており、これら採用された 33 本の文献のうち日本人を対象とした文献はわずか 3 本のみ であった(7)。したがって、日本人を対象に、客観的に評価した身体活動量を用いて身体活 動量の基準の達成とメタボリックシンドロームとの関連を評価することは意義があると考 えられる。しかしながら、我々の知る限りこれまでに日本人を対象とし、客観的に評価し た身体活動量の基準達成とメタボリックシンドロームの関連について検討した研究は、1 件 の横断研究のみと限られている(21)。さらに、身体活動基準 2013 で新たに示された身体活 動量の方向性(プラス・テン)とメタボリックシンドロームの関連について検討した研究 は見当たらない。 そこで、本研究は「健康づくりのための身体活動基準 2013」の基準を満たしている者で はメタボリックシンドロームの該当者が少ないという仮説を検証するため、身体活動量の 基準(3 メッツ以上の強度の身体活動を 23 メッツ・時/週)および身体活動量の方向性(身 体活動量を今より少しでも増やす。例えば毎日 10 分長く歩く:プラス・テン)を満たすこ ととメタボリックシンドロームとの関連について横断的に検討した。. 2.方法 2-1.対象者 本研究は、Nutrition and Exercise Intervention Study(NEXIS) (ClinicalTrials.gov Identifier:NCT00926744)のコホート研究に 2007 年 3 月から 2013 年 9 月の間に登録され た 1120 名の参加者を対象とした。NEXIS は、生活習慣病一次予防に必要な身体活動量・体 力基準値策定を目的とした大規模介入研究であり、主な参加者は東京都および岡山県を中. 9.
(13) 第 2 章 身体活動量とメタボリックシンドローム. 心とした地域住民および企業である。参加者は、ベースライン測定時の身体活動量により 活動群と非活動群に分類され、さらに非活動群については無作為に身体活動介入群と非活 動対照群に分類された。身体活動介入群には 1 年間の身体活動・運動指導を実施しており、 その後毎年すべての参加者に対して追跡調査・測定を継続的に実施している。 本研究の解析には、NEXIS 登録者のベースライン測定データを用い、脳血管疾患や腎臓病 等の重篤な疾患を有する者(15 名) 、データに欠損のある者(85 名)を除外した。さらに、 身体活動量の基準における年齢区分を考慮し、65 歳以上の高齢者(114 名)を除外した。 最終的に、23 歳から 64 歳までの男女 906 名(男性 285 名、女性 621 名)を本研究の解析対 象者とした。 本研究を始めるにあたり、独立行政法人国立健康・栄養研究所における研究倫理審査委 員会の承認を受けた。また、全ての研究参加者には、本研究の目的や意義、起こり得る危 険性について事前に詳細な説明を行い、研究参加の同意を得た。. 2-2.健康診査 10 時間の絶食後の早朝空腹時に健康診査のすべての測定を実施した。身長と体重の測定 結果より body mass index(BMI;kg/m2)を算出した。腹囲は、立位、軽呼気時における臍 位の周径囲を測定した。血圧測定は、仰臥位において十分な安静をとった後、血圧脈波検 査装置(form PWV/ABI:オムロンコーリン社製)を用いて両腕の上腕血圧を測定し、左右 の平均値を算出した。また、肘正中皮静脈より血液を採取し、血糖、HbA1c(国際標準値) 、 中性脂肪、HDL コレステロール、総コレステロールの濃度を測定した。血液分析は三菱化学 メディエンス株式会社に委託した。さらに、自記式質問票により、服薬状況、飲酒状況お よび喫煙状況の調査を実施した。飲酒状況に関して、週 1 回未満、週 1~3 回、週 4 回以上 の 3 つに分類した。また、喫煙状況に関して、喫煙、以前まで喫煙、非喫煙の 3 つに分類 した。. 10.
(14) 第 2 章 身体活動量とメタボリックシンドローム. 2-3.メタボリックシンドロームおよび各リスク項目の判定 メタボリックシンドロームの判定には、2005 年に日本内科学会等 8 学会より合同で提案 された診断基準を用いた(26)。腹囲が男性 85cm 以上、女性 90cm 以上であること(腹部肥 満)を必須基準とし、これに加えて以下のリスク項目に 1 つ該当する者をメタボリックシ ンドローム予備群、2 つ以上該当する者をメタボリックシンドローム該当者とした。Ⅰ)血 糖高値:空腹時血糖値 110mg/dl 以上、Ⅱ)脂質異常:中性脂肪 150mg/dl 以上、または HDL コレステロール 40mg/dl 未満、Ⅲ)血圧高値:収縮期血圧 130mmHg 以上、または拡張期血 圧 85mmHg 以上。 尚、 服薬治療を受けている者はそれぞれの項目に該当していると判定した。 本研究ではメタボリックシンドローム該当者の割合が少なく、検出力が十分でなかった ため、メタボリックシンドローム予備群と該当者の両者を合わせたメタボリックシンドロ ーム予備群以上を主要なアウトカムとして解析を行った。. 2-4.身体活動量の評価 3 次元加速度計(Actimarker EW4800:パナソニック電工社製)を用いて、日常の身体活 動量を客観的に評価した。加速度計には、3 軸方向(x:上下、y:左右、z:前後)の加速 度センサが内蔵されており、各軸方向の加速度を合成することで活動強度が求められた。1 分毎の加速度値(Km)は、3 軸の合成加速度の標準偏差として以下の式により算出された。. Km . 2 2 2 1 n 2 n 2 n 2 1 n n n xk yk z k xk yk z k n 1 k 1 k 1 k 1 n k 1 k 1 k 1 . (xk、yk、zk:1 分毎における各軸方向の加速度、n:1 分間にサンプリングされる個数) 加速度のサンプリング周波数は 20Hz であり、算出された加速度値は酸素摂取量との関係 を用いたアルゴリズムによって身体活動の活動強度(単位:メッツ)に変換され、1 分毎に 平均されたメッツ値が時刻暦とともに内蔵メモリに蓄積された。. 11.
(15) 第 2 章 身体活動量とメタボリックシンドローム. 研究参加者は、起床から就寝までの間、入浴や水泳のような水中での活動時以外の時間 において、休日を含めて毎日 28 日間加速度計を腰部前方に装着した。加速度計に記録され たデータのうち、1.1 メッツ以上の加速度データが 1 日 6 時間以上認められた日を有効日と し、有効日数が 14 日に満たない場合には再装着を依頼した(27)。14 日以上の有効日のデー タから、1 日あたりの平均歩数(歩/日)を求めた。また、週あたりの平均身体活動量(メ ッツ・時/週)は、3 メッツ以上の強度を示した 1 分毎のメッツ値を積算し、算出した。 本研究で用いた 3 次元加速度計の妥当性を検討した先行研究において、7 種類の家事作業 と 7 水準の歩行、走行速度における酸素摂取量との間に高い相関(r=0.93)が認められて いる(28)。また、ゴールドスタンダードとされている二重標識水法によって評価した総エ ネルギー消費量との間にも高い相関(r=0.84)が認められており、3 次元加速度計法と二重 標識水法による総エネルギー消費量の一致度は高く、総エネルギー消費量の絶対値を少な い誤差で計測可能であることが確認されている(29)。 「健康づくりのための身体活動基準 2013」(7)を基に、18 歳から 64 歳に対する身体活動 量の基準「3 メッツ以上の強度の身体活動を 23 メッツ・時/週」を満たした者を身体活動量 の基準達成者(≧23 メッツ・時/週) 、満たさなかった者を未達成者(<23 メッツ・時/週) と分類した。また、全ての世代に共通した身体活動量の方向性「身体活動量を今より少し でも増やす。例えば毎日 10 分長く歩く」および「健康づくりのための身体活動指針(アク ティブガイド) 」(8)の「今より 10 分長くからだを動かす」 (プラス・テン)に関して、歩 行の活動強度は 3 メッツ程度であることから(30)、本研究では 3 メッツの身体活動を 10 分 /日と想定し、3.5 メッツ・時/週と換算して解析を行った。. 2-5.統計解析 身体活動量の基準達成者と未達成者の 2 群間におけるメタボリックシンドロームのリス ク因子に関して、各連続変数の平均値の比較には対応のない t 検定を用い、カテゴリー変. 12.
(16) 第 2 章 身体活動量とメタボリックシンドローム. 数の頻度の比較にはχ2 検定を用いた。 3 メッツ以上の身体活動量の五分位および身体活動量の基準の達成とメタボリックシン ドロームとの関連について検討するため、メタボリックシンドローム予備群と該当者(該 当=1、非該当=0)を従属変数として投入した多変量ロジスティック回帰モデルを用い、 年齢(連続変数) 、性別(男性、女性)、飲酒状況(週 1 回未満、週 1~3 回、週 4 回以上)、 喫煙状況(喫煙、以前まで喫煙、非喫煙)を調整したオッズ比および 95%信頼区間を算出し た。さらに、身体活動量の方向性(プラス・テン)とメタボリックシンドロームの量反応 関係について検討するため、3 メッツ以上の身体活動量(メッツ・時/週)を 3 メッツの身 体活動 10 分/日に相当する 3.5 メッツ・時/週で除した連続変数を調整因子とともに独立変 数に投入し、3.5 メッツ・時/週ごとの増加に対するオッズ比を求めた。また、メタボリッ クシンドローム予備群と該当者(該当=1、非該当=0)に対する 3 メッツ以上の身体活動 量あるいは身体活動量の基準達成と性別の交互作用を検討するため、多変量ロジスティッ ク回帰モデルを用い、独立変数に上述の調整項目(年齢、性別、飲酒状況、喫煙状況)お よび 3 メッツ以上の身体活動量あるいは身体活動量の達成に加え、3 メッツ以上の身体活動 量(連続変数)あるいは身体活動量の基準の達成(達成者=1、未達成者=0)と性別(男 性=0、女性=1)の交互作用項(積項)を投入し、解析を行った。 身体活動量とメタボリックシンドロームとの関連において、メタボリックシンドローム の必須基準である腹部肥満がどのように関わっているのかを検討するため、リスク項目に ついて「いずれも非該当」 、 「腹部肥満のみ該当」、 「腹部肥満以外で 1 項目以上該当」、「メ タボリックシンドローム予備群と該当者」の 4 つを従属変数とし、「いずれも非該当」を参 照カテゴリーとした多項ロジスティック回帰分析を行った。 統計的有意水準はすべて 5%未満とした。解析には IBM SPSS Statistics 20(日本 IBM) を用いた。. 13.
(17) 第 2 章 身体活動量とメタボリックシンドローム. 3.結果 対象者の特性を表 1 に示した。平均年齢は 49 歳(男性 47 歳、女性 50 歳)であった。メ タボリックシンドロームの該当者の頻度は 4.4%(男性 10.2%、女性 1.8%)であり、メタボ リックシンドローム予備群の頻度は 10.3%(男性 20.0%、女性 5.8%)であった。 身体活動量の基準達成者は全体で 500 名(55.2%)であり、男女別にみると、男性 150 名 (52.6%) 、女性 350 名(56.4%)であった。身体活動量の基準達成者と未達成者における各 メタボリックシンドロームのリスク因子の平均値の比較を行った結果を表 2 に示した。身 体活動量の基準達成者の体重、BMI、腹囲、空腹時血糖値、HbA1c、中性脂肪、収縮期血圧 は、未達成者と比較して有意に低く、HDL コレステロールは有意に高かった。男女別でみて も、身体活動量の基準達成者の腹囲および中性脂肪は、男女ともに未達成者よりも有意に 低かった。 3 メッツ以上の身体活動量の五分位によるメタボリックシンドローム予備群と該当者の オッズ比を表 3 に示した。年齢、性別、飲酒習慣、喫煙習慣を調整後、身体活動量が最も 少ない第 1 五分位に対する各分位のオッズ比(95%信頼区間)は、第 2 五分位で 0.71 (0.40-1.27) 、第 3 五分位で 0.66(0.36-1.19) 、第 4 五分位で 0.36(0.19-0.70) 、第 5 五 分位で 0.43(0.23-0.81)となり、有意な負の量反応関係が認められた(トレンド検定:P =0.001)。 メタボリックシンドローム予備群と該当者に対する 3 メッツ以上の身体活動量と性別の 交互作用について検討した結果、年齢、飲酒状況、喫煙状況を調整後のオッズ比(95%信頼 区間)は 1.00(0.97-1.04) (P=0.999)となり、交互作用は認められなかった。 身体活動量の基準達成によるメタボリックシンドローム予備群と該当者のオッズ比を表 4 に示した。年齢、性別、飲酒状況、喫煙状況を調整後、身体活動量の基準未達成者に対す る達成者のメタボリックシンドローム予備群と該当者のオッズ比(95%信頼区間)は、0.49 (0.33-0.74)と、統計的に有意に低いオッズ比が認められた。さらに、身体活動量の方向. 14.
(18) 第 2 章 身体活動量とメタボリックシンドローム. 性(プラス・テン)について検討するため、3 メッツの身体活動 10 分/日に相当する 3.5 メ ッツ・時/週ごとの身体活動量の増加に対するオッズ比を求めた。年齢、性別、飲酒状況、 喫煙状況を調整後、オッズ比(95%信頼区間)は 0.92(0.87-0.98)と、有意な負の量反応 関係が認められた。 メタボリックシンドローム予備群と該当者に対する身体活動量の基準達成と性別の交互 作用について検討した結果、年齢、飲酒状況、喫煙状況を調整後のオッズ比(95%信頼区間) は 1.09(0.48-2.48) (P=0.830)となり、交互作用は認められなかった。同様に、3.5 メ ッツ・時/週ごとの身体活動量の増加と性別の交互作用についても検討したが、オッズ比 (95%信頼区間)は 1.00(0.89-1.13)(P=0.999)と有意ではなかった。 性別による交互作用は有意ではなかったものの、男女間でメタボリックシンドローム予 備群および該当者の頻度が大きく異なったため男女別の層別解析も行った。その結果、身 体活動量の基準未達成者に対する達成者のメタボリックシンドローム予備群と該当者の調 整オッズ比(95%信頼区間)は、男性で 0.48(0.28-0.82) 、女性で 0.51(0.28-0.95)と、 男女ともに統計的に有意に低いオッズ比が認められた。また、身体活動量の方向性(プラ ス・テン)に関して、3.5 メッツ・時/週ごとの身体活動量の増加に対する調整オッズ比は、 男性において 0.92(0.86-0.99)と有意な負の量反応関係が認められた。女性においては 0.92(0.84-1.02) (P=0.108)と明確な関連が認められなかった。 さらに、身体活動量とメタボリックシンドロームとの関連において腹部肥満がどのよう に関わっているのかを検討するため、多項ロジスティック回帰分析を行った(表 5)。 「いず れも非該当」を参照カテゴリーとした際の「腹部肥満のみ該当」或いは「腹部肥満以外で 1 項目以上該当」では、身体活動量との間に明確な関連が認められなかった。一方、「メタボ リックシンドローム予備群と該当者」では、身体活動量の基準達成および身体活動量の方 向性において有意な関連が認められた。. 15.
(19) 第 2 章 身体活動量とメタボリックシンドローム. 表 1 対象者の身体的特性. 全体 全体 n 906 年齢 (歳) 49 ±10 身長 (cm) 161.3 ±8.2 体重 (kg) 59.1 ±10.5 2 22.6 ±3.1 BMI (kg/m ) 歩数(歩/日) 10364 ±3525 3メッツ以上の身体活動量(メッツ・時/週) 26.9 ±14.6 メタボリックシンドローム該当者 40 (4.4) メタボリックシンドローム予備群 93 (10.3) 各リスク項目該当者 腹部肥満該当者 211 (23.3) 血糖高値該当者 41 (4.5) 脂質異常該当者 137 (15.1) 血圧高値該当者 218 (24.1) 腹部肥満以外のリスク3項目 該当なし 593 (65.5) 1項目のみ該当 243 (26.8) 2項目以上該当 70 (7.7) 腹部肥満の該当者 n 211 各リスク項目該当者 血糖高値該当者 23(10.9) 脂質異常該当者 66(31.3) 血圧高値該当者 96(45.5) 腹部肥満以外のリスク3項目 該当なし 78(37.0) 1項目のみ該当 93(44.1) 2項目以上該当 40(19.0) 腹部肥満の非該当者 n 695 各リスク項目該当者 血糖高値該当者 18(2.6) 脂質異常該当者 71(10.2) 血圧高値該当者 122(17.6) 腹部肥満以外のリスク3項目 該当なし 515(74.1) 1項目のみ該当 150(21.6) 2項目以上該当 30(4.3). 平均値±標準偏差または n(%). 16. 男性. 女性. 285 47 ±10 170.0 ±5.8 68.7 ±8.9 23.7 ±2.6 10537 ±3475 26.7 ±15.3 29 (10.2) 57 (20.0). 621 50 ±10 157.4 ±5.7 54.7 ±8.0 22.1 ±3.1 10284 ±3548 27.0 ±14.3 11 ( 1.8) 36 ( 5.8). 125 (43.9) 23 (8.1) 78 (27.4) 104 (36.5). 86 (13.8) 18 (2.9) 59 (9.5) 114 (18.4). 132 (46.3) 110 (38.6) 43 (15.1). 461 (74.2) 133 (21.4) 27 (4.3). 125. 86. 17(13.6) 50(40.0) 57(45.6). 6(7.0) 16(18.6) 39(45.3). 39(31.2) 57(45.6) 29(23.2). 39(45.3) 36(41.9) 11(12.8). 160. 535. 6(3.8) 28(17.5) 47(29.4). 12(2.2) 43(8.0) 75(14.0). 93(58.1) 53(33.1) 14(8.8). 422(78.9) 97(18.1) 16(3.0).
(20) 表 2 身体活動量の基準達成とメタボリックシンドロームのリスク因子との関係 全体. 平均値±標準偏差または n(%). 達成者 ≧23メッツ・時/週 500 150 /350 49 ±10 161.0 ±8.2 58.1 ±10.1 22.3 ±2.8 79.9 ±8.7 89.4 ±9.4 5.3 ±0.4 85.6 ±52.0 66.5 ±15.7 206.6 ±34.6 116.7 ±13.8 71.1 ±10.5 12117 ±3388 35.9 ±13.7. 男性. P値 0.295 0.907 0.221 0.002 0.001 <0.001 0.002 0.013 0.001 0.003 0.699 0.036 0.064 <0.001 <0.001. 未達成者 <23メッツ・時/週 135 ― 47 ±10 170.3 ±5.8 69.5 ±8.5 23.9 ±2.6 85.3 ±7.1 96.6 ±14.3 5.4 ±0.7 128.8 ±86.9 53.2 ±12.0 199.9 ±31.7 123.7 ±12.8 77.6 ±9.5 8336 ±2414 14.9 ±5.3. 達成者 ≧23メッツ・時/週 150 ― 46 ±11 169.7 ±5.9 67.9 ±9.2 23.5 ±2.6 82.9 ±8.2 91.6 ±8.9 5.2 ±0.4 107.2 ±69.8 58.7 ±15.7 199.4 ±29.3 121.7 ±13.1 76.3 ±10.2 12519 ±3071 37.3 ±13.4 116(77.3) 23(15.3) 11(7.3). 446(89.2) 41(8.2) 13(2.6). 0.001. 83(61.5) 34(25.2) 18(13.3). 96(19.2) 15(3.0) 63(12.6) 107(21.4). 0.001 0.014 0.019 0.038. 68(50.4) 16(11.9) 44(32.6) 54(40.0). 57(38.0) 7(4.7) 34(22.7) 50(33.3). 0.008. 52(38.5) 59(43.7) 24(17.8). 80(53.3) 51(34.0) 19(12.7). 347(69.4) 124(24.8) 29(5.8). 女性 未達成者 <23メッツ・時/週 271 ― 50 ±9 157.4 ±5.3 55.8 ±8.9 22.5 ±3.5 81.3 ±9.3 90.3 ±17.3 5.4 ±0.7 85.4 ±64.7 68.2 ±16.5 211.3 ±35.4 116.2 ±16.2 69.7 ±10.1 8139 ±2,198 16.3 ±4.5. 達成者 ≧23メッツ・時/週 350 ― 50 ±10 157.3 ±6.0 53.9 ±7.1 21.7 ±2.7 78.6 ±8.7 88.5 ±9.5 5.4 ±0.4 76.4 ±38.8 69.9 ±14.5 209.7 ±36.2 114.5 ±13.6 68.8 ±9.8 11945 ±3505 35.3 ±13.8. 0.014. 244(90.0) 18(6.6) 9(3.3). 330(94.3) 18(5.1) 2(0.6). 0.025. 0.036 0.026 0.061 0.243. 47(17.3) 10(3.7) 30(11.1) 57(21.0). 39(11.1) 8(2.3) 29(8.3) 57(16.3). 0.027 0.301 0.241 0.130. 0.042. 194(71.6) 60(22.1) 17(6.3). 267(76.3) 73(20.9) 10(2.9). 0.097. P値. 0.408 0.386 0.123 0.165 0.009 0.001 0.009 0.021 0.001 0.897 0.185 0.247 <0.001 <0.001. P値. 0.794 0.821 0.005 0.005 <0.001 0.102 0.174 0.043 0.194 0.580 0.156 0.258 <0.001 <0.001. 第 2 章 身体活動量とメタボリックシンドローム. 17. 未達成者 <23メッツ・時/週 n 406 性別 (男性/女性) 135 /271 年齢 (歳) 49 ±10 身長 (cm) 161.7 ±8.2 体重 (kg) 60.4 ±10.9 23.0 ±3.3 BMI (kg/m2) 腹囲 (cm) 82.6 ±8.8 空腹時血糖値 (mg/dl) 92.4 ±16.6 HbA1c (%) 5.4 ±0.7 中性脂肪 (mg/dl) 99.8 ±75.5 HDLコレステロール (mg/dl) 63.2 ±16.7 総コレステロール (mg/dl) 207.5 ±34.6 収縮期血圧 (mmHg) 118.7 ±15.5 拡張期血圧 (mmHg) 72.4 ±10.6 歩数 (歩/日) 8205 ±2271 3メッツ以上の身体活動量 (メッツ・時/週) 15.8 ±4.8 メタボリックシンドローム 非該当者 327(80.5) 予備群 52(12.8) 該当者 27(6.7) 各リスク項目該当者 腹部肥満 115(28.3) 血糖高値 26(6.4) 脂質異常 74(18.2) 血圧高値 111(27.3) 腹部肥満以外のリスク3項目 該当なし 246(60.6) 1項目のみ該当 119(29.3) 2項目以上該当 41(10.1).
(21) 表 3 3 メッツ以上の身体活動量の五分位によるメタボリックシンドローム予備群と該当者のオッズ比. 1.00 0.72 (0.40 - 1.28) 0.67 (0.37 - 1.21) 0.36 (0.19 - 0.69) 0.43 (0.23 - 0.80) トレンド検定:P =0.001 年齢調整 オッズ比 (95%信頼区間). 1.00 0.71 (0.40 - 1.27) 0.66 (0.36 - 1.19) 0.36 (0.19 - 0.70) 0.43 (0.23 - 0.81) トレンド検定:P =0.001 多変量調整b オッズ比 (95%信頼区間). 23 23 17 10 13. 1.00 0.87 (0.39 - 1.91) 0.48 (0.22 - 1.09) 0.27 (0.11 - 0.68) 0.46 (0.19 - 1.06) トレンド検定:P =0.005. 1.00 0.89 (0.40 - 1.98) 0.47 (0.21 - 1.09) 0.30 (0.12 - 0.75) 0.46 (0.19 - 1.10) トレンド検定:P =0.008. 12 12 11 6 6. 1.00 1.21 (0.52 - 2.85) 0.99 (0.41 - 2.35) 0.56 (0.20 - 1.57) 0.52 (0.19 - 1.45) トレンド検定:P =0.090. 1.00 1.19 (0.50 - 2.81) 0.96 (0.40 - 2.31) 0.55 (0.20 - 1.54) 0.51 (0.18 - 1.42) トレンド検定:P =0.079. 該当者数. ≦16.0 16.1-21.6 21.7-27.4 27.5-35.7 ≧35.8. 182 182 181 186 175. 41 29 27 17 19. 3メッツ以上の身体活動量 (メッツ・時/週). 対象者数. 該当者数. 男性 第1五分位 第2五分位 第3五分位 第4五分位 第5五分位. ≦14.2 14.3-20.6 20.7-27.3 27.4-37.1 ≧37.2. 57 57 60 55 56. 女性 第1五分位 第2五分位 第3五分位 第4五分位 第5五分位. ≦16.8 16.9-21.7 21.8-28.0 28.1-35.4 ≧35.5. 137 118 128 114 124. a. 多変量調整:年齢、性別、飲酒状況、喫煙状況を調整. b. 多変量調整:年齢、飲酒状況、喫煙状況を調整. 第 2 章 身体活動量とメタボリックシンドローム. 多変量調整a オッズ比 (95%信頼区間). 対象者数. 全体 第1五分位 第2五分位 第3五分位 第4五分位 第5五分位. 18. 年齢・性別調整 オッズ比 (95%信頼区間). 3メッツ以上の身体活動量 (メッツ・時/週).
(22) 表 4 身体活動量の基準達成によるメタボリックシンドローム予備群と該当者のオッズ比. 全体 身体活動量の基準 未達成者(<23メッツ・時/週) 達成者(≧23メッツ・時/週) 身体活動量の方向性(プラス・テン) 3メッツ以上の身体活動量(per 3.5メッツ・時/週). 身体活動量の方向性(プラス・テン) 3メッツ以上の身体活動量(per 3.5メッツ・時/週) 女性 身体活動量の基準 未達成者(<23メッツ・時/週) 達成者(≧23メッツ・時/週) 身体活動量の方向性(プラス・テン) 3メッツ以上の身体活動量(per 3.5メッツ・時/週). P値. (0.33 - 0.74). 0.001. 0.006. 対象者数. 該当者数. オッズ比. 406 500. 79 54. 1.00 0.49. (0.33 - 0.73). 0.001. 1.00 0.49. 906. 133. 0.92. 0.005. 0.92. 対象者数. 該当者数. オッズ比. (0.87 - 0.98) 年齢調整 (95%信頼区間). P値. オッズ比. (0.87 - 0.98) 多変量調整b (95%信頼区間). 135 150. 52 34. 1.00 0.46. (0.27 - 0.79). 0.005. 1.00 0.48. (0.28 - 0.82). 0.008. 285. 86. 0.92. (0.86 - 0.99). 0.019. 0.92. (0.86 - 0.99). 0.028. 271 350. 27 20. 1.00 0.53. (0.29 - 0.97). 0.039. 1.00 0.51. (0.28 - 0.95). 0.034. 621. 47. 0.93. (0.84 - 1.02). 0.119. 0.92. (0.84 - 1.02). 0.108. a. 多変量調整:年齢、性別、飲酒状況、喫煙状況を調整. b. 多変量調整:年齢、飲酒状況、喫煙状況を調整. 注)3.5 メッツ・時/週は 3 メッツの身体活動 1 日 10 分に相当. P値. P値. 第 2 章 身体活動量とメタボリックシンドローム. 19. 男性 身体活動量の基準 未達成者(<23メッツ・時/週) 達成者(≧23メッツ・時/週). オッズ比. 多変量調整a (95%信頼区間). 年齢・性別調整 (95%信頼区間).
(23) 表 5 身体活動量の基準達成とメタボリックシンドローム予備群と該当者および腹部肥満との関連(多項ロジスティック回帰分析) 腹部肥満のみ該当(n=78) 多変量調整オッズ比. a. 腹部肥満以外で1項目以上該当(n=180). (95%信頼区間). P値. 多変量調整オッズ比. a. (95%信頼区間). P値. メタボリックシンドローム予備群と該当者(n=133) 多変量調整オッズ比. a. (95%信頼区間). P値. 身体活動量の基準 未達成者(<23メッツ・時/週). 1.00. 達成者(≧23メッツ・時/週). 0.78. (0.47 - 1.27). 0.314. 1.00 0.78. (0.54 - 1.12). 0.174. 1.00 0.43. (0.28 - 0.67). <0.001. 0.95. (0.89 - 1.01). 0.117. 0.98. (0.94 - 1.03). 0.503. 0.91. (0.86 - 0.97). 0.003. 身体活動量の方向性(プラス・テン) 3メッツ以上の身体活動量(per 3.5メッツ・時/週). a. 多変量調整オッズ比:年齢、性別、飲酒状況、喫煙状況を調整. 20. 注 2)参照カテゴリーは「いずれも非該当」 (n=515). 第 2 章 身体活動量とメタボリックシンドローム. 注 1)3.5 メッツ・時/週は 3 メッツの身体活動 1 日 10 分に相当.
(24) 第 2 章 身体活動量とメタボリックシンドローム. 4.考察 本研究は、 「健康づくりのための身体活動基準 2013」で推奨されている身体活動量の基準 (3 メッツ以上の強度の身体活動を 23 メッツ・時/週)および身体活動量の方向性(身体活 動量を今より少しでも増やす。例えば毎日 10 分長く歩く:プラス・テン)を満たすことと メタボリックシンドロームとの関連について横断的に検討した。 本研究の結果、18 歳から 64 歳に向けた身体活動量の基準の達成者は、未達成者と比較し てメタボリックシンドローム予備群と該当者の頻度が低いことが示唆された。加速度計に より評価した身体活動量とメタボリックシンドロームとの関係について検討した先行研究 がいくつかある。米国の National Health and Nutrition Examination Survey(NHANES) の研究において、中高強度の総身体活動量が多い者では少ない者と比較してメタボリック シンドロームの頻度が低いことが報告されている(22, 23)。また、日本人高齢者を対象と した中之条研究においても同様の関連が認められている(24)。これまでに、身体活動量の 基準とメタボリックシンドロームとの関連について検討した先行研究が 1 件ある。Kim らは、 30~64 歳の健康な中年男女 483 名の日本人を対象として検討した結果、男性において身体 活動量の基準達成者では未達成者よりもメタボリックシンドローム予備群と該当者の頻度 が低かったことを報告している(21)。 身体活動基準 2013 では、全ての世代に共通した身体活動量の方向性が示されており、 「身 体活動量を今より少しでも増やす。例えば毎日 10 分長く歩く」ことが推奨されている。ま た、アクティブガイドでは、この身体活動量の方向性をベースに、 「+10(プラス・テン) 」 というメッセージが前面に押し出されている。歩行の活動強度はおおよそ 3 メッツである ことから(30)、本研究では 3 メッツの身体活動を 1 日 10 分と想定し、3.5 メッツ・時/週と 換算して検討を行った。その結果、3.5 メッツ・時/週ごとの身体活動量の増加に伴いメタ ボリックシンドローム予備群と該当者の頻度が低くなる負の量反応関係が示された。すな わち、3 メッツの身体活動を 1 日 10 分長く行うことはメタボリックシンドロームの低い頻. 21.
(25) 第 2 章 身体活動量とメタボリックシンドローム. 度と関連する可能性が示唆された。1 日 10 分の歩行はおおよそ 1000 歩に相当する(31)。 NHANES の横断研究では、1 日あたり 1000 歩の歩数増加に伴いメタボリックシンドローム該 当者の頻度が低く、負の量反応関係が男女ともに認められたことが報告されている(32)。 また、日本人高齢者を対象とした先行研究において、中高強度の総身体活動量とメタボリ ックシンドロームとの間に負の量反応関係が認められている(24)。 本研究では、3 メッツ以上の身体活動量の五分位によってメタボリックシンドロームとの 関連についての検討も行った。その結果、身体活動量が多いほどオッズ比が低く、負の量 反応関係がみられたが、第 5 五分位(身体活動量が最も多い群)のオッズ比は第 4 五分位 よりやや高い値を示していた。本研究において、身体活動量を今より少しでも増やし、毎 日 10 分長く歩くことはメタボリックシンドローム予備群と該当者の低い頻度と関連するこ とが示唆されたが、この関連は身体活動量が最も多い群では認められなかった。したがっ て、身体活動量が十分に多い群においては身体活動量とメタボリックシンドロームの間に 明確な関係がみられないかもしれない。しかしながら、本研究のデザインは横断研究であ ることから、これらの関連を検証するためには、今後コホート研究や介入研究による更な る検討が望まれる。 本研究において、メタボリックシンドローム予備群と該当者に対する身体活動量と性別 の交互作用は認められず、交互作用項のオッズ比はおおよそ 1.00 であった。また、性別で 層別解析を行ったところ、女性では明確な量反応関係は認められなかったが、オッズ比は 男女で同等であった。以上の結果より、本研究では女性において検出力不足により統計学 的に有意に至らなかったものの、男女ともに身体活動量とメタボリックシンドロームとの 間に量反応関係があると推察される。 本研究では、身体活動量とメタボリックシンドロームとの関連において、メタボリック シンドロームの必須基準である腹部肥満がどのように関わっているのかについての検討も 加えた。その結果、腹部肥満のみの該当および腹部肥満には該当しないが 1 項目以上の他. 22.
(26) 第 2 章 身体活動量とメタボリックシンドローム. のリスクに該当することと身体活動量との間には明確な関連が認められなかった。一方、 メタボリックシンドローム予備群と該当者では、身体活動量の基準達成および身体活動量 の方向性との間に関連性が認められた。すなわち、身体活動量は特に腹部肥満でありかつ その他のリスクを併せ持つことに関連している可能性が示唆された。その一方で、十分な サンプルサイズが確保され、腹部肥満のみ該当する者や腹部肥満には該当しないが 1 項目 以上の他のリスクに該当する者の数が多ければ、身体活動量との関連が統計学的に認めら れる可能性も否定できない。 本研究にはいくつかの限界がある。第一に、本研究の対象者は、 1 日あたりの平均歩数 が男性 10537 歩、女性 10284 歩と比較的活動的な集団であった。2012 年の国民健康・栄養 調査によると国民の平均歩数は男性 7139 歩/日、女性 6257 歩/日であったことが報告され ている(1)。また、本研究におけるメタボリックシンドロームの該当者は男性 10.2%、女性 1.8%と少なく、健康的な集団であったといえる。さらに、本研究では脳血管疾患や腎臓病 等の重篤な疾患を有する者は予め解析から除外した。したがって、不活発な者や疾患保有 者等においても、本研究の結果と同様の関連が認められるか否かについては、更なる検討 が必要である。第二に、本研究では高い精度が確認されている加速度計を用いて客観的に 身体活動量を評価した。しかしながら、入浴や水泳のような水中での活動や自転車および 筋力トレーニングなどの活動については本研究で用いた加速度計で評価することができず、 身体活動量が過小評価されている可能性がある。第三に、参加者を層別化して検討する際 にオッズ比は十分に低いが統計的に有意ではないという場合が散見された。詳細な検討を 行うために、より大きなサンプルサイズでの検討が必要かもしれない。最後に、本研究は 横断研究であるため、身体活動量の基準や身体活動量の方向性(プラス・テン)を満たす こととメタボリックシンドロームの因果関係については不明であり、メタボリックシンド ロームの予防・改善に向けた対策のためのエビデンスを提供するためにも今後、縦断的な 検討が必要である。. 23.
(27) 第 2 章 身体活動量とメタボリックシンドローム. 5.結論 本研究は、 「健康づくりのための身体活動基準 2013」で推奨されている身体活動量の基準 (3 メッツ以上の強度の身体活動を 23 メッツ・時/週)および身体活動量の方向性(身体活 動量を今より少しでも増やす。例えば毎日 10 分長く歩く:プラス・テン)を満たすことと メタボリックシンドロームとの関連について横断的に検討した。 身体活動量の基準や身体活動量の方向性を満たすことは、メタボリックシンドロームの 低い頻度と関連することが示唆された。. 24.
(28) 第3章. 全身持久力の基準と 2 型糖尿病 (研究課題 2). 25.
(29) 第 3 章 全身持久力と 2 型糖尿病. 1.緒言 2013 年における糖尿病有病者数は世界で 3 億 8200 万人、日本の成人では 720 万人であっ たことが国際糖尿病連合より報告された(2)。糖尿病有病者数は世界的に急速に増加してお り、2035 年には世界で 5 億 9200 万人にのぼると推測されている(33)。 これまでにいくつかの前向きコホート研究において、全身持久力が高い人では、2 型糖尿 病の罹患リスクが低いことが報告されている(34-43)。これらのことから、高い全身持久力 を保持することは、2 型糖尿病予防のために重要な因子の一つであることが知られている。 しかしながら、我々の知る限り、将来の 2 型糖尿病罹患を予防するためにどの程度の全身 持久力が必要であるかについて日本人を対象として定量的に検討した疫学研究はなく、未 だ明確になっていない。 我が国では、2013 年 3 月に厚生労働省より「健康づくりのための身体活動基準 2013」が 策定された(7)。この基準では、2 型糖尿病を含めた生活習慣病や死亡、運動器障害と全身 持久力に関するシステマティックレビューおよびメタ解析の結果に基づき、健康づくりの ために必要な全身持久力の基準が性年代別に示されている。しかしながら、ここで示され ている基準が、実際に 2 型糖尿病罹患とどのような関係にあるのかについては明確になっ ておらず、その妥当性を検討する必要があると考えられる。また、2 型糖尿病に関連するリ スクファクターとして、体力に加えて、主として加齢(44)、肥満(45)、飲酒(46)、喫煙(47)、 家族歴(48)等が挙げられるが、これらのリスクファクターと全身持久力との相互作用につ いて検討した疫学研究は数が限られている。そのため、各リスクファクター保有者におい て、この基準と 2 型糖尿病罹患との関連性についても検証することは有益であると考えら れる。 本研究は、日本人男性労働者において「健康づくりのための身体活動基準 2013」で推奨 されている全身持久力の基準と 2 型糖尿病罹患との関連について検討するとともに、2 型糖 尿病の発症予防に対する全身持久力の基準の妥当性について縦断的に検討することを目的. 26.
(30) 第 3 章 全身持久力と 2 型糖尿病. とした。. 2.方法 2-1.対象者 本研究の対象者は、首都圏に都市ガスを提供するガス会社の社員であり、すべての社員 は労働安全衛生法に基づき定期健康診断を毎年受診している。全社員に占める女性の割合 が少ないため、男性のみを対象とした。また、定期健康診断によって長期間にわたる追跡 調査が可能となる 40 歳以下の者でコホートが形成された。 本研究の対象者は、1985 年に健康診断を受診した 20~40 歳の 5984 名の男性社員であっ た。このうち、以下の疾患に少なくとも 1 つ該当した 335 名は本研究の解析対象から除外 した(糖尿病 102 名、循環器系疾患 228 名、結核 3 名、消化器系疾患 9 名) 。さらに、整形 外科的疾患、体調不良、休職等の理由により全身持久力の測定を実施できなかったか、適 切に実施できなかった 904 名を除外した。また、全身持久力の基準の年齢区分を考慮し、 ベースライン測定時に 40 歳であった 112 名を除外した。最終的に、18~39 歳の男性社員 4633 名を本研究の解析対象者とした。 本研究は、疫学研究に関する倫理指針を遵守するとともに、独立行政法人国立健康・栄 養研究所における研究倫理審査委員会の承認を受けて実施された。. 2-2.健康診断 健康診断の測定には、身長、体重、安静時血圧の測定項目が含まれていた。Body mass index (BMI)は体重(kg)を身長(m)の 2 乗で除することにより求めた。安静時血圧は、聴診 法によって測定された。また、自己記入式質問票により飲酒習慣、喫煙習慣、糖尿病家族 歴を確認した。糖尿病家族歴は質問票により 3 世代における糖尿病家族歴が調査された。. 27.
(31) 第 3 章 全身持久力と 2 型糖尿病. 2-3.全身持久力の評価 全身持久力の評価として、モナーク社製自転車エルゴメータを用いた最大下運動負荷試 験が実施された。運動負荷は、4 分毎に 37W ずつ漸増し、最大で 3 段階まで漸増した。最初 の段階における運動負荷は、対象者の年代に合わせて、20~29 歳で 98W、30~39 歳で 86W に設定された。ペダルの回転数は毎分 50 回転とした。心拍数は、心電図による RR 間隔か ら算出され、年齢より推定した最大心拍数(220-年齢)の 85%を目標心拍数に設定した。 最終段階の最後の 1 分間から得られた仕事量と運動終了前の 10 秒間より得られた心拍数か ら、Åstrand と Ryhming のノモグラム(49)および Åstrand の年齢補正係数(50)を用いて最大 酸素摂取量を推定した。 「健康づくりのための身体活動基準 2013」で推奨されている全身持久力の基準(7)をもと に(表 1) 、基準値以上であった者を達成者、基準値未満であった者を未達成者と、2 群に 分類した。. 2-4.2 型糖尿病罹患の判定 1985 年から 1999 年 6 月までの間、2 型糖尿病発症の追跡調査が行われた。2 型糖尿病罹 患の判定は以下の 3 つのうち 1 つでも該当した場合とした。Ⅰ)健康診断の尿糖検査の結 果が陽性であった対象者に対して行った糖負荷試験において 2 時間後の血糖値が 200mg/dl 以上の場合、Ⅱ)健康診断時における看護師による面接で糖尿病の治療を開始したという 申告があった場合、Ⅲ)健康診断時の空腹時血糖値が 126mg/dl 以上の場合。この空腹時血 糖値の判定値は、米国糖尿病学会(51)および日本糖尿病学会(52)の糖尿病治療ガイドライ ンで示された値である。尚、空腹時血糖値の測定は 1988 年以降において 35 歳および 40 歳 以上を対象に実施された。. 2-5.統計解析. 28.
(32) 第 3 章 全身持久力と 2 型糖尿病. 全身持久力の基準の達成者と未達成者の 2 群間におけるベースライン時の特性に関して、 各連続変数の平均値の比較には対応のない t 検定を用い、カテゴリー変数の頻度の比較に は Kruskal-Wallis 検定を用いた。 全身持久力の基準達成と 2 型糖尿病罹患との関連について検討するため、コックス比例 ハザードモデルを用い、年齢(連続変数)、BMI(連続変数)、収縮期血圧(連続変数)、飲 酒習慣(非飲酒、1~45g/日、46g 以上/日)、喫煙習慣(禁煙、1~20 本/日、21 本以上/日)、 糖尿病家族歴(有、無)を調整したハザード比および 95%信頼区間を算出した。また、Receiver Operating Characteristic(ROC)解析を用いて、2 型糖尿病罹患の予測に向けた全身持久 力のカットオフ値を求めた。ROC 曲線において感度が 1、1-特異度が 0 の点に最も近い点 の全身持久力を最適カットオフ値とした(53)。 統計的有意水準はすべて 5%未満とした。解析には IBM SPSS Statistics 20(日本 IBM) を用いた。. 29.
(33) 第 3 章 全身持久力と 2 型糖尿病. 表 1 「健康づくりのための身体活動基準 2013」の全身持久力の基準(男性). 18-39歳. 40-59歳. 60-69歳. 全身持久力(メッツ). 11.0. 10.0. 9.0. 最大酸素摂取量(ml/kg/分). 38.5. 35.0. 31.5. 30.
(34) 第 3 章 全身持久力と 2 型糖尿病. 3.結果 ベースライン時における対象者の平均年齢は 31 歳(範囲:20~39 歳)であった。14.1 年間(中央値)の追跡期間中(62937 人年) 、266 名において 2 型糖尿病の発症が確認され た。追跡期間において、死亡または転勤の理由により 169 名の追跡を打ち切った。 全身持久力の基準達成有無別のベースライン時の対象者の身体的特性を表 2 に示した。 全身持久力の平均値は 11.7 メッツ(中央値:11.4 メッツ)であった。全身持久力の基準未 達成者と比較して達成者では、年齢が若く、体重、BMI、収縮期および拡張期血圧が有意に 低かった。また、達成者では、飲酒者、喫煙者、糖尿病家族歴を有する者の割合が有意に 低かった。 全身持久力の基準達成による 2 型糖尿病罹患のハザード比および 95%信頼区間を表 3 に示 した。年齢、収縮期血圧、飲酒習慣、喫煙習慣、糖尿病家族歴を調整後(モデル 1)、全身 持久力の基準未達成者に対する達成者のハザード比(95%信頼区間)は、0.44(0.34-0.58) であった。さらに、BMI の調整を加えても基準達成者のハザード比は 0.67(0.51-0.89)と有 意に低かった(モデル 2) 。全身持久力の基準達成による 2 型糖尿病の累積罹患率の曲線を 図 1 に示した。 2 型糖尿病罹患に対する全身持久力の ROC 曲線を図 2 に示した。ROC 曲線のアンダーカー ブ面積(95%信頼区間)は 0.70(0.66-0.73)となり、全身持久力の最適カットオフ値は 10.8 メッツ(感度:0.64、特異度:0.64)であった。 年齢(20~29 と 30~39 歳) 、BMI(<25 と≧25kg/m2)、飲酒習慣(非飲酒と飲酒)、喫煙 習慣(非喫煙と喫煙) 、糖尿病家族歴(有と無)の各因子で層別解析した全身持久力の基準 達成による 2 型糖尿病罹患のハザード比および 95%信頼区間を表 4 に示した。年代、BMI、 飲酒習慣にかかわらず、全身持久力の基準達成者は未達成者よりも 2 型糖尿病罹患のリス クが有意に低かった。喫煙者および糖尿病家族歴を有する者においては統計上有意な関連 は認められなかったが、全身持久力の基準達成者では未達成者より 2 型糖尿病罹患リスク. 31.
(35) 第 3 章 全身持久力と 2 型糖尿病. が低い傾向がみられた。. 32.
(36) 第 3 章 全身持久力と 2 型糖尿病. 表 2 全身持久力の基準達成有無別のベースライン時の身体的特性 P値. 未達成者. 達成者. 全体. 1946. 2687. 4633. 9.7 ± 0.9. 13.2 ± 1.8. 11.7 ± 2.3. <0.001. 34.1 ± 3.2. 46.1 ± 6.4. 41.1 ± 8.0. <0.001. 年齢(歳). 33 ± 4. 30 ± 5. 31 ± 5. <0.001. 身長(cm). 169.8 ± 5.4. 169.3 ± 5.5. 169.5 ± 5.5. 0.002. 68.8 ± 8.4. 63.6 ± 7.4. 65.8 ± 8.2. <0.001. 23.9 ± 2.6. 22.2 ± 2.2. 22.9 ± 2.5. <0.001. 収縮期血圧(mmHg). 128.1 ± 11.4. 123.5 ± 11.4. 125.4 ± 11.6. <0.001. 拡張期血圧(mmHg). 75.2 ± 8.8. 70.8 ± 8.7. 72.6 ± 9.0. <0.001. 喫煙率(%). 69.8. 65.7. 67.4. 0.003. 飲酒率(%). 71.4. 67.3. 69.0. 0.003. 糖尿病家族歴(%). 24.0. 20.1. 21.7. 0.001. n 全身持久力(メッツ) 最大酸素摂取量(ml/kg/分). 体重(kg) 2. BMI(kg/m ). 平均値±標準偏差または%. 33.
(37) 表 3 全身持久力の基準達成による 2 型糖尿病罹患のハザード比. モデル1a. モデル2b. ハザード比 (95%信頼区間). ハザード比 (95%信頼区間). 年齢調整 n. 観察人年 罹患者数 ハザード比 (95%信頼区間). 未達成者. 1946. 26091. 183. 1.00. 達成者. 2687. 36846. 83. 0.36. P値. 1.00 (0.28-0.48) <0.001. a. モデル 1:年齢、収縮期血圧、飲酒習慣、喫煙習慣、糖尿病家族歴を調整. b. モデル 2:モデル 1+BMI を調整. 0.44. 1.00 (0.34-0.58) <0.001. 0.67. (0.51-0.89) 0.005. 34 第 3 章 全身持久力と 2 型糖尿病.
(38) 第 3 章 全身持久力と 2 型糖尿病. 図 1 全身持久力の基準達成による 2 型糖尿病の多変量調整累積罹患率の曲線 年齢、BMI、収縮期血圧、飲酒習慣、喫煙習慣、糖尿病家族歴を調整. 35.
(39) 第 3 章 全身持久力と 2 型糖尿病. 1. 最適カットオフ値. Sensitivity 感度. 0.8. 0.6. 0.4. 全身持久力:10.8 (メッツ) 感度:0.64,特異度:0.64 アンダーカーブ面積: 0.70 (95%信頼区間:0.66-0.73). 0.2. 0 0. 0.2. 0.4. 0.6. 1 1-特異度 - Specificity 図 2 2 型糖尿病罹患に対する全身持久力の ROC 曲線. 36. 0.8. 1.
(40) 表 4 2 型糖尿病に関連するリスクファクターで層別解析した全身持久力の基準達成による 2 型糖尿病罹患のハザード比 多変量調整a n. 観察人年 罹患者数 ハザード比. 多変量調整a. (95%信頼区間) P 値. 20-29歳. 観察人年 罹患者数 ハザード比. (95%信頼区間) P 値. 30-39歳. 未達成者. 474. 6374. 37. 1.00. 達成者. 1114. 15375. 17. 0.37. (0.20-0.71). 0.003. BMI<25kg/m2. 37. 未達成者. 1472. 19717. 146. 1.00. 達成者. 1573. 21471. 66. 0.73. 未達成者. 592. 7623. 107. 1.00. 達成者. 280. 3738. 25. 0.57. 未達成者. 1359. 18165. 130. 1.00. 達成者. 1765. 24141. 60. 0.73. 未達成者. 1390. 18583. 147. 1.00. 達成者. 1808. 24767. 70. 0.73. 未達成者. 467. 6019. 94. 1.00. 達成者. 539. 7303. 46. 0.71. (0.54-0.99). 0.045. (0.37-0.89). 0.013. (0.52-1.01). 0.056. (0.53-0.99). 0.041. (0.49-1.05). 0.087. BMI≧25kg/m2. 未達成者. 1354. 18469. 76. 1.00. 達成者. 2407. 33108. 58. 0.55. 未達成者. 587. 7927. 53. 1.00. 達成者. 922. 12705. 23. 0.56. (0.39-0.79). 0.001. 非喫煙者. 喫煙者 (0.33-0.95). 0.030. 非飲酒者. 飲酒者 556. 7508. 36. 1.00. 達成者. 879. 12079. 13. 0.45. 未達成者. 1479. 20072. 89. 1.00. 達成者. 2148. 29543. 37. 0.61. (0.23-0.89). 0.022. 糖尿病家族歴有り. 表中のすべての因子で調整. (0.40-0.92). 0.017. 第 3 章 全身持久力と 2 型糖尿病. 未達成者. 糖尿病家族歴無し. a. n.
(41) 第 3 章 全身持久力と 2 型糖尿病. 4.考察 本研究は、 「健康づくりのための身体活動量基準 2013」で推奨されている全身持久力の基 準と 2 型糖尿病罹患との関係について日本人男性を対象とし縦断的に検討した。さらに、2 型糖尿病に関係するリスクファクターとの関連性についても検討を行った。 約 14 年間の追跡期間中、266 名が 2 型糖尿病を発症した。全身持久力の基準達成者は、 未達成者と比較して、年齢、血圧、飲酒習慣、喫煙習慣、糖尿病家族歴、BMI で調整後の 2 型糖尿病罹患のハザード比が有意に 33%低く、「健康づくりのための身体活動基準 2013」で 推奨されている全身持久力の基準以上の値を保持することで、2 型糖尿病の発症リスクを抑 制できる可能性が示唆された。 これまでに、全身持久力と 2 型糖尿病罹患との関連について検討した前向きコホート研 究がいくつか報告されている(34-43)。Lynch らは、フィンランド人の中年男性において、 最大自転車エルゴメータテストを用いて呼気ガスにより評価された全身持久力と 2 型糖尿 病罹患との間に負の関係があることを報告している(41)。Wei らは、45 歳未満および 45 歳 以上の両者の男性において、修正 Balke プロトコルを用いて推定された全身持久力と 2 型 糖尿病罹患との間に有意な負の量反応関係が認められたと報告している(35)。さらに、 Carnethon らは、18~30 歳の若年男女において、全身持久力が低い者では 2 型糖尿病の発 症リスクが高いことを報告している(39)。これら先行研究と同様に、40 歳未満の日本人男 性労働者を対象とした本研究においても、全身持久力が高い人では 2 型糖尿病の発症リス クが低いことが確認された。また、 「健康づくりのための身体活動基準 2013」で推奨されて いる全身持久力の基準を満たすことで将来の 2 型糖尿病発症を軽減できる可能性が示唆さ れた。 我々は、将来の 2 型糖尿病発症の予測に向けた全身持久力の最適なカットオフ値を算出 するために ROC 解析を行った。その結果、最適カットオフ値は 10.8 メッツ(感度:0.64、 特異度:0.64)となり、 「健康づくりの身体活動基準 2013」で推奨されている全身持久力の. 38.
(42) 第 3 章 全身持久力と 2 型糖尿病. 基準(18~39 歳の男性:11 メッツ)と近似した値となった。したがって、 「健康づくりの ための身体活動基準 2013」で示されている 40 歳未満の男性に対する全身持久力の基準は、 2 型糖尿病予防に対しておおよそ妥当な基準である可能性が示唆された。また、この全身持 久力の基準値をカットオフとした場合の感度および特異度はそれぞれ 0.60、0.69 となり、 全身持久力の基準を満たしているか否かを評価することによって少なくとも 60%以上の確 率で将来の 2 型糖尿病の発症を予測できる可能性が示唆された。Katzmarzyk らは、18~69 歳の男女を対象とした縦断研究において、ステップテスト(modified Canadian Aerobic Fitness Test)によって評価された推定最大酸素摂取量による 2 型糖尿病罹患予測のため の全身持久力のカットオフ値が 11.3 メッツ(感度:60.6%、特異度:59.0%)であったことを 報告しており(34)、本研究により算出されたカットオフ値と近似した値が確認されている。 しかしながら、性別や年齢の考慮が不十分であることから、今後、性年代別の更なる詳細 な検討によるエビデンスの蓄積が要されるだろう。 2 型糖尿病に関連するリスクファクターとして、体力に加えて、主として加齢(44)、肥満 (45)、飲酒(46)、喫煙(47)、家族歴(48)等が挙げられる。これらのリスクファクターとの 関連についても検討を加えるため、本研究では各因子における層別解析を行った。その結 果、年齢、BMI、飲酒習慣にかかわらず、基準達成者では、未達成者と比較して有意に 2 型 糖尿病の発症リスクが低かった。本研究で喫煙習慣による層別解析では、禁煙者における 基準達成者で有意に低いハザード比が認められ、喫煙者における基準達成者ではリスクが 低くなる傾向がみられた (P=0.056)。また、糖尿病家族歴による層別解析の結果、家族 歴を有する者におけるハザード比は統計的に有意には至らなかったものの(P=0.087) 、家 族歴の無い者と同様に低いハザード比を示した(0.71 および 0.61) 。両親の糖尿病歴と全 身持久力について複合解析を行った前向きコホート研究では、両親が糖尿病歴を有する者 であっても、高い全身持久力の者は低い全身持久力の者より 2 型糖尿病罹患のリスクが低 かったことが報告されている(37)。糖尿病家族歴の有無は糖尿病発症の強力なリスクファ. 39.
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