第5節
科学技術科の創設によるエネルギー環境教育の実践
-科学的な知識をもとに自ら判断し実践しようとする態度と能力の育成のために-
河野 卓也 澤田 一彦 太田 聡 七里 広志
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エネルギーと社会・環境とのかかわりの問題は,多岐 にわたる要因が複雑に絡み合った問題であり,単純な解 決策が簡単に見つかるものではない。日々繰り返される 環境問題にかかわる報道には,科学的な視点で分析され ていないものもあり,恣意的に人類の生存や繁栄が維持 できなくなるような恐怖感をあおっているように思える ものも少なくない。さまざまな経済活動によって排出さ れる温室効果ガスの量は,自然環境の悪化をはかるため の指標ではなく,国や企業のイメージ戦略のための経済 指標になってしまった感もある。科学的な素養をもつこ とを拒否し,報道による情報を批判的に見つめることな く鵜呑みにする傾向は,大人だけのものではなく,これ からの社会の主役となるべき中学生にも顕著である。科 学的に正しい知識をもち,自分の考えを導き出す能力を もたせることは,未来を担う中学生にとって非常に重要 である。
自然環境を保全するためのさまざまな活動や教育の結 果,生徒の環境意識は大変高く,程度の差こそあれ多く の生徒が省エネルギーを意識した生活をしようとしてい る。省エネルギー技術で世界のトップクラスに位置し,
多くの人が自然環境保全に強い意識をもつ日本において,
一番欠けているのはエネルギーと社会・環境を科学的に かつ包括的に認識しようとする態度ではないかと考える。
社会全体のエネルギー問題を一気に解決する方策が見 つからない中で,現在の状況を正しく認識し,さまざま な視点から考察を加えようとする態度をもつことが,希 望のもてる未来を作り上げる世代には必ず必要であると 考える。自然環境を保全しようとする意識を強くもった ことで,多くの生徒が科学技術の進展は,ただ環境を破 壊するものであると単純に思い込んでいるように感じる。
科学技術の発展によってもたらされた人類の危機の解決 は科学技術を無視しては実現し得ないことを,現実の社 会から体験的に学ばせる必要がある。そのことによって,
科学離れ,技術離れといった現象にも歯止めがかかるの ではないかと考えている。本校では,これらの考えをも とにエネルギー環境教育に取り組んでいる。
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��� 科学技術科の創設
本校では,生徒にエネルギーと社会・環境のかかわり の現状について正しい認識をもたせることと,生徒自身 本論の要旨
滋賀大学教育学部附属中学校では,平成 18 年度よりエネルギー環境教育に取り組むための教科「科学技術 科」を創設し実践をしている。科学技術科は,エネルギーと社会・環境のかかわりについて基礎的な知識の習 得と現状を認識し自分で考えて判断しようとする態度の育成を目標とし,理科と技術分野それぞれの視点から 内容を整理し,両教科を担当する教員のチィームティーチングで授業を行っている。各教科で学んだ内容をも とにした実践の場である総合学習や,情報の取り扱いを学ぶ情報教育と連携をとりながら,エネルギー問題を 考える上で必須となる知識を確実に身につけさせ,生徒自身が深く考え議論をしながら現代社会でのエネルギ ーに関する問題に決まりきった答えなど存在しないことを学ぶ学習の場として科学技術科を展開している。
科学技術科では,毎年,新たな題材開発に取り組んでいる。本年度は社会科教員の協力を得て従来からの実 践を行い,新たな題材を開発した。また,短時間で実施するエネルギーの基礎についての学習題材を開発した。
キーワード エネルギー環境教育 ティームティーチング
科 学 技 術 科
が自分で判断して行動しようとする態度を育てることを,
エネルギー環境教育の最大の目標であると考えている。
エネルギーに関する問題は,現代社会の問題であるとと もに未来へ続く問題であり,現在の状況に対応するため の実践的な活動とともに,未来の社会を考えるための現 状の認識と積極的にエネルギー環境問題に対処していこ うとする態度の育成が重要であると考える。
科学技術科の実践は,基礎的な知識の習得と現状を正 しく認識して判断するための能力の育成を目標としてい る。これらの学習は,生徒の自主的な課題意識を尊重し て展開する総合的な学習の時間で取り上げることは難し い。総合的な学習の時間をつかって行われるエネルギー 環境教育について,技術的・科学的なリテラシーを育て ないままにエネルギーについての内容を指導しているこ とが多いと感じる。実践を積み重ねることは必要だが,
現状を正しく認識することが非常に重要である。
中学生に高度な科学技術を完全に理解させることは難 しいが,現代の科学技術に関する基礎的な素養を身につ けさせることは必要であり,科学技術の原理や現代技術 のもつ問題点を理解させることは十分に可能である。エ ネルギーの学習を進める上では,技術的・科学的な視点 から生活に密着した問題について考えさせることが非常 に重要である。このようなことから,理科・技術分野担 当の教員が直接指導にあたる教科としてのエネルギー環 境教育が必要であると考えている。
科学技術科は理科と技術・家庭科技術分野を担当する 教員がチィームティーチングで指導にあたる。これまで,
理科・技術分野・社会などでエネルギーにかかわる内容 を指導してきたが,それらは各教科の目標にそって指導 しており,エネルギー環境についての体系的な指導では なかった。エネルギー環境にかかわる教育を充実させる ためには,これまでさまざまな学習体系の中に散在して いたエネルギーと環境のかかわりについての学習内容を 一つの目標の元に束ねることが必要であり,より各学習 体系での連携をとった指導を展開する必要がある。特に,
理科と技術分野で実践してきたエネルギーに関する学習 を一つの内容として再構築することにより,科学的な裏 づけをもち,かつ生活に密着した視点からの学習をさせ ることができる。広い視野をもって考えるべきエネルギ ーに関する問題について,両教科が領域を主張するので はなく,歩み寄る意義は大きいと考える。
この取り組みは教科指導を中心とした実践であり,学 校全体として取り組む総合的な学習の時間とは大きく異 なる学習体系である。恒常的・永続的に行うことのでき る実践であり,担当者の異動や予算の有無などにかかわ
らず実践を続けることができることが大きな特徴である。
エネルギーと社会・環境のかかわりを題材として取り 上げるためには,社会科の学習内容と連携を取ることが 不可欠である。三教科担当者でのティームティーチング を行うことを理想として実践の計画を始めたが,多くの 教員が関係する教育課程の編成は実際の時間割編成など が大変難しく,断念することになった。科学技術を題材 の中心としたことで,理科と技術分野を中心に実践を進 めることになったが,科学技術を正しく理解するために は,経済・地理・歴史・政治等の社会的な視点が不可欠 であり,社会科教諭に意見を求めながら実践を行ってい る。
エネルギー環境教育を実践する上で,外部の専門家や 関係機関と連携することや,地域社会や家庭を巻き込む ことは大きな意義がある。しかし,カリキュラム全体を 見通した上で,それぞれの単元での目的にあった外部と の連携が必要であり,単発的・散逸的な連携には大きな 意義を感じない。一つの教科として日常の時間割に組み 込んで実践し,特別な時間を確保しての他所への訪問や 専門家への指導依頼などはほとんど行わなかった。
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本校では,「総合的な学習の時間」に琵琶湖を題材とし た総合学習「Biwako Time」の実践を中心に環境にかかわ る学習を進めてきた。「Biwako Time」は27年に及ぶ歴史 の中で,本校の環境教育を支える学習として機能してき た。「Biwako Time」では,エネルギーに関する課題も取 り上げられたことがあり,それらは身近なエネルギー問 題について,生活に密着した問題を取り上げていること が多かった。しかし,それらは「Biwako Time」で学習す る多くの課題の一部に過ぎず,生徒全員に確実に定着さ せるための学習としては機能していない。総合学習「Biwako Time」は,本校の全教員20名弱と全 校生徒358名が一斉に学習する形態をとっている。本校が もつすべてのリソースを使って,全校が同時に学習に取 り組む。このような学習形態の中で行われるエネルギー 環境教育は,生徒の自主性を尊重した学習であり,指導 する担当教師も必ずしも専門的な知識をもつ者ではない。
生活に密着した実践化・態度化を目的とするためにはこ のような学習体系で問題なく学習を進めることができる ものの,体系的かつ網羅的にエネルギー環境にかかわる 内容を指導し,生徒自身が判断して行動しようとする態 度の育成や,そのための知識の習得について指導するこ とは難しい。「Biwako Time」のような総合学習の場での エネルギー環境教育は,実践的な生徒の省エネルギー活 動や,外部と連携した学習を展開しやすい学習体系では
あるが,現実の社会でのエネルギーにかかわる多くの問 題を体系的に網羅的に扱うことは難しいと考える。本校 では総合学習を科学技術科で全員が学習した現代社会で のエネルギーの基礎をもとにした,発展的な学習の場と して捉えている。
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現代社会でのエネルギーと社会・環境のかかわりを理 解するためには,それらに関する情報を正しく理解する ための素養が必要であるとともに,情報を慎重に吟味す る能力と態度が必要である。本校が現在,校内全体での 研究として取り組んでいる「情報学に基づいた教育課程 の開発」が,エネルギー環境教育を進める上での大きな 支えとなっている。
本校では,平成18年度より,生徒の学習活動そのもの を情報の観点から捉えなおし,情報を創造し活用する力 を育てることを軸に情報の取り扱いについて体系的に学 習する時間として,「情報科」を創設した。「情報科」は,
最新の学問である文・理系双方を含む「総合情報学」に 基づいて,全教科の基底の知識・技能として働く情報に 関する内容をまとめたものである。情報科では,批判的 思考力・問題解決能力・問題発見能力の育成と,生徒の 感性と論理的に考える力を高めることを目標とし,言葉 と体験,習得と探求をつなぐ活用する力をつけさせるた めに,中学生に必要な情報教育のコアとなる内容を整理 したものである。コンピュータをつかう授業は全体の5分 の1程度にとどめ,発想・創造を具現化する手法などを中 心に全教師で指導にあたっている。「情報科」の学習は,
生徒がもつエネルギーと社会・環境とのかかわりについ ての批判的思考力を高め,論理的に現状を分析して判断 しようとする態度を育成することに大きな効果をあげつ つある。
平成 22 年度より,文部科学省研究開発学校指定を受け,
「情報科」のコンセプトを継続した「情報の時間」を 実施している。「情報の時間」は科学技術の授業と密接 なかかわりを持ち,科学技術の授業は「情報の時間」
で学んださまざまな手法を現代的な課題の中で使いこ なす場として機能している。 「情報の時間」では,
さまざまなメディアからの情報をクリティカルに見つ め,正しく理解する力を求めている。日本の現代社会 において,エネルギーや環境の問題にかかわる情報は,
身近な場面で感じ取るものよりも圧倒的にマスメディ アを通じてのものが多い。生徒にとって,エネルギー,
特に原子力にかかわるものはほぼ完全にマスメディア によってコントロールされた情報であるといっても過 言ではなく,生徒のエネルギー感は,マスメディアの
情報そのものであるといってもよい。残念ながら,マ スメディアからの情報は記事としての価値を重視する あまり,恣意的に危険を強調したものであることが多 いのは周知の事実である。本校では,生徒に正しい情 報の見方をし,正しく考え,自分自身で判断し,行動 することを重要な能力であると考えている。科学技術 科はこの考えを具現化するために,非常に重要な意味 を持っている。
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本校では,これらの学習の補完的な作用を活かしなが ら,科学技術科を中心としたエネルギー環境教育に取り 組んでいる。科学技術科は,理科と技術分野のティーム ティーチングであり,それぞれの教科の間に位置する学 習である。また,それぞれの教科でのエネルギーについ ての学習と内容的・時期的な整合性を保ちながら授業を 行う。「Biwako Time」は,各教科などの学習によって身 につけた知識を総合的に働かせる自主的な学習の場であ る。エネルギーの問題に興味をもった生徒がより深い内 容をもとめて実践的な学習に取り組むことができる。情 報科はエネルギーの問題を扱うための不可欠な情報の取 り扱いを学ばせ,科学技術科で学習した内容を実践する ための,創造的な思考力を育成する。各教科の学習を深 めるための手法を学ぶとともに,各教科で培った力を総 合学習の場で生かすための手法についても学ぶ。これら の学習を通して,本校が考えるエネルギー環境教育の目 的を達成できるようにカリキュラムをデザインし,実践 している。
図1にこれらのカリキュラムの関係と役割のモデル図 を示す。
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基礎となる 力・体系的 な知識
���� 教科で培った力が総合的に働く場 実践的な活動・生徒主導の活動
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�� すべての教科で必要な情報の扱い方 批判的な思考力
�� 教科と総合をつなぐための力 創造力と言語力
科 学 技 術 科
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科学技術科は,理科と技術分野での基礎的な学習をも とに,多岐にわたるエネルギーに関する問題を概観する ことができる網羅的なカリキュラムを有する。2年生では エネルギーに関する基礎的な内容を学習させ,3年生では 経済・政治・科学・技術等のさまざまな観点からエネル ギーに関する理解を深めるとともに,環境保全や経済発 展とのかかわりについて学習させた。
平成22年度まで,科学技術科は総合的な学習の時間を 使い,2年生に7時間,3年生に18時間を設定し,すべての 生徒を対象に理科と技術のチィームティーチングで授業 を行ってきた。理科室をベースにできるだけ観察や実験 を交えながら,単位時間50分だけではなく2時間続き(100 分)でも実施した。
2年生では,エネルギーの適切な取り扱いを考える上で 非常に重要な概念である「効率」を学習の中心としてい る。実験や生徒同士の議論を通して,基礎的内容を理解 させるようにした。
3年生では,エネルギーにかかわる多くの問題が多岐に わたる課題を含んでおり,単純に解決できない複雑なも のであることを生徒に理解させることを大きな目標とし た。
平成23年度は,平成24年度から総合的な学習の時間を
つかった授業の確保が難しくなることを見越して,でき るだけ短時間で効率よく学習させるためのカリキュラム の開発に取り組んだ。
平成22年度までのカリキュラムに従い,3年生の授業を 終了させた後,3年生に授業の感想と共に,科学技術科の 議論を中心とした学習を進めるために必要となる基礎知 識について,アンケート調査を行った。その結果にから,
平成22年度の2年生のカリキュラムの中で,必要度が高い と生徒が感じているものを中心に,授業内容を再構成し た。平成22年度まで7時間を割いていたカリキュラムを3 時間で実践した。
表1に本年度の2年生のカリキュラム,表2に3年生のカ リキュラムを示す。
科学技術科では,エネルギーと環境のかかわりについ て科学的視点と技術的視点の双方から考える授業が必要 でとなるため,理科と技術分野の教員の密接なチームワ ークが要求される。
多面的な見方をさせるために,教師同士が一つの課題 について相反する立場に立ち,生徒の短絡的な考え方を 混乱させるような授業展開をした。このことにより,と りあえず「省エネ」という言葉を使っておけば収束する ような授業ではなく,生徒にエネルギーを取り巻くさま ざまな課題を深く考えさせる機会を与えるようにした。
単元名 題材名 内容 目的
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化学エネルギー から電気エネル ギーへ
水を電気分解した後の溶液を,そのまま電池と して機能させる実験を行う。エネルギーそのも のの概念を整理する。
エネルギーの利用には変換が伴い,生活の中でエネルギ ーを変換しながら利用していることを理解させる。
お湯と水を混ぜ ると何℃?
お湯と水を混ぜた時の温度を予測し,実際にそ の温度になるかの実験を行う。混ぜたものを再 度,お湯と水の状態に戻す試みの作業を行う。
エネルギー保存の法則とともに,エネルギーの遷移には 方向性があることを理解させ,エントロピーの概念をつ かませる。
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まわした分だけ まわるのか?
発電機を 2 台接続し,片方をモータとして機能 させる実験を行う。片方を 10 回まわした時にも う片方が何回まわるかを予想させる。
前時の変換の内容から,電力と動力の変換がおこなわれ ていることを理解させ,回数が減ることから効率と損失 について考えさせる。
白熱灯と蛍光灯
白熱灯と蛍光灯を準備し,照度計を用いて同じ 明るさであること,電流計を用いて白熱灯の消 費電流が大きいことを確認させる。
同じ明るさでも消費電流が違うことや,寿命の長さなど に触れ,技術の進歩によって効率が改善されていること を理解させる。
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無駄になるもの をつかう方法
琵琶湖でのエネルギー開発の模式図をもとに,
使われていないものを有効に利用するシステム について考える。
酸素が湖底の水質改善に利用されていることを理解さ せ,コージェネレーションシステムの概略について知ら せる。
システムの問題 点を考える
琵琶湖でのエネルギー開発がもつ問題点につい て,グループで議論し発表する。
どんなシステムでも,実現にはさまざまな問題があるこ とを理解させ,3 年生での社会や環境とのかかわりにつ いての学習につなげる。
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科学技術科のほとんどの授業で,実験による科学的基 礎的事項の理解と,技術的なシステム開発による生活に
単元名 題材名 時数 内容 目的
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人類 240 万年と エネルギー 1
火の利用によって人間と動物が分かれたこと や,利用されてきたエネルギーの移り変わり,
エネルギー利用技術の発展についてまとめる。
太陽エネルギーのみを利用していた太古からエ ネルギーと生活は密接な関係にあったことや,
エネルギーの利用は差別や戦争にもつながった ことを理解させる。
江戸の明かりを 体験しよう 1
菜種油と石油ランプ,蛍光灯の明かりを実際に 体験し,明かりの移り変わりとその時代背景を まとめる。
菜種油の暗さを体験させ,江戸時代は高級な油 であったこととあわせて,現代の便利な生活に 気づかせる。菜種油は昨夏の太陽エネルギー,
石油は太古の太陽エネルギーであることから再 生産性について考えさせる。
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エネルギーとし ての原子力 1
原子力によるエネルギーの概略を解説し,放射 性をもつ岩石の測定実験から,放射線は身近に 存在することを体感させる。
核分裂によって熱を取り出す原理を理解させ,
制御することによって安全に利用できることを 知らせる。放射線の危険性を理解させるととも に,微量の放射線は身近に存在することを確認 させる。
賛成反対は単純 に決められるか 1
原子力発電に頼っている日本の現状を紹介し,
原子力発電についての世界的な動向,賛成・反 対両者の意見があることを理解させる。
日本のエネルギー政策の概略について理解さ せ,賛成・反対の両者の意見があることを知ら せる。原子力に対する報道から正しく理解され ていない現状について考えさせる。
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新エネルギーの導入によって,近い将来に起こ りえる問題について確認させ,不安定な自然エ ネルギーを利用する上でのシステムについて考 えさせる。
原子力発電などの安定的な電飾供給に対して,
自然エネルギーの不安定さを確認させると共 に,技術によって問題を解決していこうとする 方向性について共感的な理解をさせる。。
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バイオエタノー ルとトルティー ヤ
1
ピーナッツの燃焼,日本酒の蒸留実験から生物 由来のエネルギーを体験させる。エネルギー作 物の増産によって,穀物価格の高騰を招いてい ることを理解させ,各自がどちらをとるかを考 えさせる。
環境に優しく再生産が可能であるとされるエネ ルギーにも,大国と貧困国,原油価格との関連 などさまざまな問題が潜んでいることを理解さ せる。
トリレンマ人間 マップ 1
エネルギーにかかわるトリレンマを 3 人の教師 のディベートによって具現化し,各自の考えが どれに近いかを表現させる。
「単純な答えがないことが,今の答え」である ことを体感させ,広い視野と多くの視点からエ ネルギー問題を捉える態度を育成する。
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滋賀の新エネル
ギー 1
教師が考えた架空の滋賀新エネルギープロジェ クトに関するプレゼンテーションを聞き,各グ ループで担当するプロジェクトを決定する。
教師がすぐに実現可能な素晴らしいプロジェク トのように語るプレゼンテーションから,科学 的・経済的な問題点を読み取らせる。
新エネルギー実 現のために 4
担当するプロジェクトを実際に推進するため に,問題点を整理し聞く人が納得するような説 得を考え,プレゼンテーションにまとめる。
広い視野でのさまざまな情報を整理し,問題点 の解決法を考えさせるとともに,どうすれば理 解を得られるかを考えさせる。
新エネルギーコ ンペティション 2
各グループのプレゼンテーションを聞き,どの プロジェクトが実現可能なように思えるか,コ ンペティションを行う。
どのプロジェクトもさまざまな問題点をもって いることを確認させ,新エネルギーの実現には 大きな困難が伴うことを理解させる。
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エネルギーロー ドマップをつく ろう
1
数百年後までのエネルギー事情を予想した表を つくり,各自のこれからの行動をどうすればよ いかを考える。
これまでに学んだことを総合的に用い,各自が しっかり理解し,考え,判断した上で環境保全 のために行動しようとする態度をもたせる。
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科 学 技 術 科
科学技術科のほとんどの授業で,実験による科学的基 礎的事項の理解と,技術的なシステム開発による生活に 密着した問題点について考える授業のスタイルを構成し,
システムの運用について経済的な視点からの分析等,意 志決定に必要な要素をふやした事例に関するモデル実験 や作業を通して総合的に考える難しさを理解させるよう に単元をデザインした。これらの単元の指導においては,
結論を与えることはせず,事実をできるだけ正確に伝え,
事実をもとに自分で考え判断する態度を育成することが できるように展開した。教師が一般的と思われる結論を 与えるのではなく,生徒が将来に向けて自分の意見を持 つことを,最も重要な目標であると考え,このような授 業の進め方を基本としている。
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科学技術科の学習を終えた生徒に対するアンケートで は,科学技術科の学習内容や授業の方法については大変 に評価が高く,7割以上の生徒が「もっと時間をとって,
続けて学習をしたい。」としている。特に,自分の考えを 明示して討論する授業形態を楽しみにしている生徒が多 く,生徒のエネルギーに対する興味関心はつきることが ないと感じている。生徒の感想には,エネルギーが身近 にあることへの驚きや,社会の中でのエネルギー利用技 術への賞賛,真剣に考えて行動すれば明るい未来がある といったものが多い。いたずらに悲壮感をあおることで はなく,問題を正しく認識させ,自分の意見をもって判 断することに重きを置いてきたことが功を奏したと考え る。
科学技術科では,省エネルギー活動を実際に行ってい るわけではなく,具体的に数値に表れる省エネルギー効 果を求めていない。省エネルギーの効果をあげた実践は 数多くあるが,科学技術科の実践はこれらの実践例とは 考え方を異にするものであり,生徒の意識や考え方を揺
さぶることによって,将来にわたってエネルギー問題を 正しく認識し,必要な行動を自分で生み出し実践する人 物を育てることにつながるといえる。
理科と技術のチィームティーチング等,科学技術科の 授業の形態に関しては,教師間でコンセプトを共有する ことで授業のスタイルが確立し,役割分担が明確になり,
それぞれが題材開発にかける時間の確保につながった。
多くの題材を開発し,変化の大きい問題に素早く対応す るカリキュラムを組むことができたのは大きな成果であ る。
一方,課題としては次のようなことが考えられる。
教科として実践をする上で,時間の確保は大きな問題で ある。理科・技術分野の授業を確保しながら,科学技術 科の時間を確保することが,もっとも大きな課題となっ ている。実践したい題材はまだ多く残っているが,時間 の確保ができないのが現状である。
本年度はこの問題に対応するため,内容を精選し2年生 の授業を3時間で実施することに取り組んだ。3時間を確 保することは,本校のように教科のスタイルでエネルギ ー環境教育に取り組んでいない学校でも,実施できる時 数であると考える。
また,平成24年度に全面実施される学習指導要領では,
理科の一単元としてエネルギー問題が取り上げられるこ とになる。科学技術科の学習内容との整合性を確保する とともに,時間を共用することなども考えていきたい。
教科としての学習では学校全体をあげて取り組むエネ ルギー環境教育のような派手な活動はできないが,エネ ルギー問題以外にも多くの課題を抱える学校現場の中で,
特定の状況にある学校だけが取り組むことができるエネ ルギー環境教育ではなく,どの学校でも継続的に取り組 むことのできるエネルギー環境教育のスタンダードを開 発することを目指して,今後も研究に取り組みたいと考 えている。