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検証実験に基づく真のプロファイル 推定における制約条件の設定

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(1)【土木学会舗装工学論文集 第 9 巻 2004 年 12 月】. 検証実験に基づく真のプロファイル 推定における制約条件の設定 白川 1. 2. 正会員. 学生会員 3 正会員. 龍生 1・前田. 博(工) 北見工業大学助手 修(工) 北見工業大学大学院 博(工) 北見工業大学助教授. 近邦 2・川村. 彰3. 工学部土木開発工学科(〒090-8507 北海道北見市公園町 165 番地) 工学研究科博士後期課程(〒090-8507 北海道北見市公園町 165 番地) 工学部土木開発工学科(〒090-8507 北海道北見市公園町 165 番地). 3m プロフィロメータの測定データから真のプロファイルを推定する場合,対象となる波数の範囲を広げ すぎると推定精度が低下するため,波数範囲に一定の制約条件を与える必要がある.本研究では,複数の 条件で真のプロファイルを推定し,区間統計値による推定精度の比較分析を行った.また,乗用車の乗り心 地解析を行う際に影響の大きい波数のプロファイルが正確に推定されていることを検証するため,北見工業 大学のドライビングシミュレータ(KITDS)を用いて走行実験を行った.その結果,一般道路における制約 条件として,Wave Number(WN)=0.04〜0.33m-1 と設定すれば,実用上大きな問題は生じないことを示した.. Key Word:3m Profilometer, True Profile, Profile Estimate Filter, KIT Driving Simulator. しかし,この方法を適用する場合,真のプロファ. 1.はじめに. イルの推定精度を高めるために,推定の対象となる 波数の範囲に制約を与える必要が生じるが,既往の. 舗装のサービス性能を評価する上で,路面のプロ. 研究ではフィルタ設計等の演算過程に自由度が残さ. ファイル特性を把握することは,乗り心地の評価に. れているため,実用上重要な「波数範囲の制約条件」. つながるだけではなく,これに起因するすべり,. については明確に示されていなかった.. 騒音,振動問題などの解析評価に有効であり,今日,. そこで本研究では,3m プロフィロメータを例に,. 道路管理者にとって重要な課題となっている1).. 真のプロファイル形状を推定する場合の波数に関す. 路面プロファイル測定装置(以下,「プロファイ. る制約条件について,PIARC EVEN 試験結果を用い. ラ」という)は数多く考案されているが,わが国で. て考察した.特に一般道路上を走行する乗用車の乗. 最も普及している 3m プロフィロメータのような. り心地解析を行う場合に影響が大きい波数が含まれ. 特有の検出特性を有するプロファイラについては,. ていることを検証するため,北見工業大学のドライ. その測定結果が真のプロファイル形状と大きく異な. ビングシミュレータ(以下,「KITDS」という)によ. っている.このため,例えば路面上を走行する自動. る走行実験を行った(写真-1).このシミュレータは. 車の運動を数値シミュレーションにより予測する場. 路面性状データ(わだち掘れや平坦性,摩擦係数な. 合などの用途には適していない.. ど)を入力することができ,この上を走行する乗用. これを解決する方法として,プロファイラの測定. 車の運動を 6 軸のサーボシリンダによって再現する. データから真のプロファイルを推定する方法が考案. 機能など,独自の機能を有する国内唯一のシミュレ. されている2).この研究では,1998 年に世界道路協. ータである5),6).. 会(以下,「PIARC」という)によって実施された路. 研究開発にドライビングシミュレータを用いる. 面の平坦性に関する国際共同試験(以下,「EVEN 試. 利点としては,以下の点が挙げられる7).. 験」という)3),4)のデータを用いて,一定の波数範. a) 安全性が高い. 囲内であれば路面プロファイル形状及び国際ラフネ. b) 現象の再現性が高い. ス指数(International Roughness Index,以下, 「IRI」 という)を高精度で推定できることが示されている.. 41. c) 条件設定が容易で経済性が高い d) 効率よく訓練,開発,研究が進められる.

(2) 進行方向 記録計. 測定車輪 L/2. L/2 L. 図-1 写真-1. 3m プロフィロメータの模式図. 北見工業大学のドライビングシミュレータ (KITDS) 1.5. 自動車の乗り心地に影響する範囲 (一般道路の場合). 先述の PIARC EVEN 試験では路面性状に関するデ. 1 Gain. ータは公開されているが,試験区間を走行する乗用 車の振動加速度等のデータについては明らかにされ. 0.5. ていない.このような場合,KITDS の路面性状デー タ入力機能を用いることにより,過去に測定された 路面上を走行する車両振動データを実験的に得るこ. 0. とができる5).. 0.0. 本研究におけるシミュレータ実験の目的は,真の. 0.1. 0.2. 0.3. 0.4. 0.5. Wave Number (m-1). プロファイル推定における制約条件設定の妥当性を 図-2. 検証するものである.入力データとしては,PIARC. 3m プロフィロメータの検出特性(PIARC EVEN 試験結果より算出). EVEN 試験で測定された 4 箇所の真のプロファイル (一般道路,IRI のレベル別)に対し,それぞれ 9 種 類のバンドパスフィルタ処理を施した波形を用いる.. られているが 8 ),これは一般道路の法定最高速度 60km/h の場合,Wave Number(以下, 「WN」という) =0.06〜0.09m-1 の範囲に相当する(図-2 中,矢印で. 2.3m プロフィロメータの検出特性2). 示す波数の範囲) .自動車の乗り心地を良好な水準に. 3m プロフィロメータは,全長 3m の測定装置であ. するには,この範囲におけるプロファイル形状を正. り,中央部の測定車輪の変位を記録するものである. 確に把握する必要があるが,この範囲における Gain. (図-1) .測定における特徴としては,変位測定の基. は 0.2~0.4 程度であり,真のプロファイル形状に比. 準面を確立するため,装置の始終点部を複数の車輪. べ非常に小さいため,その実形状を把握することは 困難である.したがって,3m プロフィロメータの. によって平均化している点があげられる. 3m プロフィロメータの検出特性を図-2 に示す.. 測定結果を有効活用する場合は演算補正を要する.. ここで,振幅利得(感度)を示す Gain が 1 の場合は. すなわち,Gain が 1 より大きい波数の場合は成分を. 真のプロファイルと同じ値が,1 を上回る場合は真. 縮小演算し,逆に Gain が 1 より小さな波数の場合は. のプロファイルに比べ大きな値が得られることを示. 拡大演算を行う必要がある.この演算に用いるフィ. す.これに対し,Gain が 1 を下回る場合は本来得ら. ルタの振幅特性を図-3 に示す.. れるべき値に比べ小さな結果が得られる.図-2 を考. 図-3 において,Gain が非常に小さい波数の場合. 察すると,線形など長波長の領域ついては Gain の値. は拡大率が大きくなり,わずかな測定誤差が演算結. が小さいため,これらの成分はプロファイルの測定. 果に影響を及ぼすことから,補正する波数の範囲に. 結果として明確には現れない可能性がある.. 一定の制約を与えなければならない2).そこで本研 究では,演算補正対象となる波数の範囲について考. 路面上を走行する乗用車が共振しやすい波数(= バネ上固有振動数)は一般的に約 1〜1.5Hz と考え. 察した. 42.

(3) 3m プロフィロ. 図-3 に示すフィルタを用いて この範囲は拡大率が大きくなるため,. メータの測定データ. 真のプロファイルを推定. 演算補正の対象から除く 演算補正対象となる. Gain. 波数の範囲. 評価基準. 推定. プロファイル. プロファイル. 共通のバンドパスフィルタ 通過域の上限値:WN=0.33m-1 通過域の下限値:WN=0.10,0.09,0.08,0.07,0.06, 0.05,0.04,0.03,0.025m-1(9 種類). 1. Wave Number (m-1) 図-3. 演算に用いるフィルタの振幅特性と補正対象と. 評価基準. なる波数の範囲. 推定. プロファイル. 比較. プロファイル. (フィルタ処理後). 3.真のプロファイル推定における制約条件の. 図-4. (フィルタ処理後). 波形分析のための事前処理フロー. 設定及び結果の比較分析 下限値 (0.10~0.025m-1) 通過域. 3m プロフィロメータの測定データから真のプロ ファイルを推定する演算過程において,補正対象と バンドパスフィルタ処理を用いた.そこで本章では,. Gain. なる波数に制約を与える方法として,本研究では. 1. この制約条件の設定方法及び制約条件適用後の結果. (中略) バンドパス 範囲の拡大. について比較分析を行った.. 上限値 (0.30m-1). フィルタ Wave Number (m-1). (1)事前処理 図-5. 分析を行う前に,3m プロフィロメータの測定デー. バンドパスフィルタ通過域の設定方法. タから推定したプロファイル形状,及び評価基準の プロファイル形状に対して共通のバンドパスフィル. (2)IRI による比較. タ処理を施し,比較するデータの波数の範囲を統一 する.この事前処理フローを図-4 に示す.. 上記フィルタ処理後のプロファイルについて,IRI. ここで,評価基準となるプロファイルとしては,. により比較した結果を図-6 に示す.評価区間長は. 水準測量と Rolling Dipstick 及び Dipstick の測定デー. 50m とした.また,評価基準プロファイルにエラー. タによって構成された波形を用いた(EVEN 試験で. と思われる値が介在している箇所があるため,既往. はこの波形が真のプロファイルとされている)4),9).. の研究と同様,本研究でも当該箇所を計算対象から. バンドパスフィルタ通過域の上限値については,. 除外した(EVEN 試験の区間 No.3,No10,No11,. EVEN 試験における 3m プロフィロメータのサンプ. No12,No14,No17 の一部箇所)2).また,図中,. リング間隔が 0.30m であるため,データの精度を考. 評価基準プロファイルの IRI を「True Profile IRI」 ,. 慮し,サンプリング間隔の 10 倍の波数に相当する. 推定したプロファイルの IRI については「Estimate. WN=0.33m - 1 を補正する波数範囲の上限値に設定. Profile IRI」と表記した.. した9).下限値については,WN=0.10,0.09,0.08,. 図-6 を考察すると, 2 変数間の関係の強さを表す. 0.07,0.06,0.05,0.04,0.03,0.025m-1 の 9 パターン. 相関係数は高い値を示しており,実用上の目安値を. を設定した(図-5).. R=0.7(決定係数 R2=0.5)以上と考えれば,いずれの パターンも問題ないと思われる. ここで,図-6 においてフィルタ通過域の下限値を 43.

(4) (b) WN=0.09〜0.33m-1. 6 5 4 3 2 1 0. 6 5 4 3 2 1 0. y = 1.11x R = 0.97. y = 1.10x R = 0.97 0. 1 2 3 4 5 6 True Profile IRI (mm/m). 6 5 4 3 2 1 0. 1 2 3 4 5 True Profile IRI (mm/m). y = 1.14x R = 0.97 0. 1 2 3 4 5 True Profile IRI (mm/m). (c) WN=0.08〜0.33m-1 Estimate Profile IRI (mm/m). 0. Estimate Profile IRI (mm/m). y = 1.14x R = 0.97. (a) WN=0.10〜0.33m-1. 0. 7 6 5 4 3 2 1 0. 1 2 3 4 5 6 True Profile IRI (mm/m). y = 1.09x R = 0.97 0. 1 2 3 4 5 6 True Profile IRI (mm/m). (d) WN=0.07〜0.33m-1. (e) WN=0.06〜0.33m-1. (f) WN=0.05〜0.33m-1. 7 6 5 4 3 2 1 0. 7 6 5 4 3 2 1 0. 7 6 5 4 3 2 1 0. y = 1.09x R = 0.96 0. 1 2 3 4 5 6 True Profile IRI (mm/m). y = 1.09x R = 0.96 0. (g) WN=0.04〜0.33m-1. Estimate Profile IRI (mm/m). Estimate Profile IRI (mm/m). 5 4 3 2 1 0. 1 2 3 4 True Profile IRI (mm/m). Estimate Profile IRI (mm/m). Estimate Profile IRI (mm/m). 0. Estimate Profile IRI (mm/m). y = 1.15x R = 0.97. Estimate Profile IRI (mm/m). Estimate Profile IRI (mm/m). 5 4 3 2 1 0. 1 2 3 4 5 6 True Profile IRI (mm/m). (h) WN=0.03〜0.33m-1 図-6. y = 1.09x R = 0.96 0. 1 2 3 4 5 6 True Profile IRI (mm/m). (i) WN=0.025〜0.33m-1. 真のプロファイルの推定精度(IRI による比較). WN=0.04m-1 以下に広げた場合の結果(図-6(g)~(i)). するために一般的に用いられている値(検出特性の. はほぼ同じ結果が得られたが,これは IRI のフィル. 補正を行っていないデータから計算した値,サンプ. -1. タ効果の影響と考えられる(IRI は WN=0.065m 付近. リング間隔 1.5m)とは異なり,検出特性を補正した. の感度が高く,波長が長くなるに伴い感度が低くな. サンプリング間隔 0.3m のデータから求めた値であ. るため). 10). るため注意を要する.. .. なお,推定結果は評価基準に比べ,いずれも 10%. 計算条件としては,前節と同様に評価区間長を. 程度大きな結果が生じている.したがって,推定し. 50m とし,エラー箇所は計算対象から除外した.さ. たプロファイル形状から IRI を算出する場合は縮小. らに区間 No.4 のみ,他の区間に比べ標準偏差の値が. 演算を要する.. 著しく大きいため,相関係数算出において影響が強 いことから,計算対象から除外している(なお,当 該区間の相対誤差はフィルタ通過域の範囲が最も広. (3)標準偏差による比較. い WN=0.025~0.30m-1 の場合でも約 3.6%であり,誤. 前節のように,IRI による比較では 9 種類いずれの. 差は小さいといえる) .また,図中,評価基準プロフ フィルタの場合も相関係数は高い結果が得られたが, ァイルの標準偏差を「True Profile σ 」,推定したプ バンドパスフィルタ通過域の下限値が WN=0.04m-1 ロファイルの標準偏差については「Estimate Profile 以下に設定された各パターンの相違点を明確に示す. σ」と表記した.. ことができなかった.このため本節では標準偏差に. 図 -7 に お い て , フ ィ ル タ 通 過 域 の 下 限 値 を WN=0.10m-1 とした場合(図-7(a))を基準に比較す. よる比較を行った.結果を図-7 に示す. ここで,本研究で求めた標準偏差は平坦性を算出. ると,フィルタ通過域の拡大に伴い,相関係数の値 44.

(5) 1 2 3 4 True Profile σ(mm). 4 2. y = 1.06x R = 0.96. 0 0. 5. 1 2 3 4 True Profile σ(mm). 8. 10 8 6 4 2 0. Estimate Profile σ(mm). (b) WN=0.09〜0.33m-1. Estimate Profile σ(mm). (a) WN=0.10〜0.33m-1. 6 4 y = 1.02x R = 0.93. 2 0 0. 2 4 6 True Profile σ(mm). 10 8 6 4 2 0. y = 0.85x R = 0.70 0. 2 4 6 8 10 12 True Profile σ(mm). 10 8 6 4 2 0. y = 1.04x R = 0.95. 0 0. 10 8 6 4 2 0. 8. y = 0.83x R = 0.41 0. (g) WN=0.04〜0.33m-1 図-7. 2. 1 2 3 4 5 True Profile σ(mm). 6. y = 0.91x R = 0.75. 0. 2 4 6 8 10 True Profile σ(mm). (f) WN=0.05〜0.33m-1. (e) WN=0.06〜0.33m-1. Estimate Profile σ(mm). Estimate Profile σ(mm). (d) WN=0.07〜0.33m-1. 2 4 6 True Profile σ(mm). 4. (c) WN=0.08〜0.33m-1. y = 0.99x R = 0.90 0. 8. 6. 5. Estimate Profile σ(mm). 0. Estimate Profile σ(mm). y = 1.08x R = 0.96. 6. Estimate Profile σ(mm). Estimate Profile σ(mm). Estimate Profile σ(mm). 5 4 3 2 1 0. 12 10 8 6 4 2 0. 2 4 6 8 10 12 True Profile σ(mm). (h) WN=0.03〜0.33m-1. y = 0.79x R = 0.32 0. 2 4 6 8 10 12 14 True Profile σ(mm). (i) WN=0.025〜0.33m-1. 真のプロファイルの推定精度(標準偏差による比較). は小さくなる.特にフィルタ通過域の下限値を. 範囲は,一般道路上を走行する乗用車のバネ上固有. WN=0.025m-1 まで広げた場合(図-7(i))の相関係数. 振動数に対応する WN=0.06〜0.09m-1 の領域が全て含. は小さい.これはフィルタ通過域が Gain の小さい長. まれていることから,実用上大きな問題は生じない. 波長の領域まで広がったため,補正倍率が大きくな. と思われる. このことを検証するため,次章では真のプロファ. る範囲が広がり,その結果,測定誤差の影響を受け. イル上を乗用車が走行した場合に生ずるバネ上振動. 推定精度が低下したと考えられる. IRI と同様に,実用上の目安値として R=0.7(決定 2. 加速度を考察するため,KITDS による走行実験を行. -1. 係数 R =0.5) 以上とすれば, 波数の範囲は WN=0.04m. った.. 以上(=波長 25m 以下)に設定すべきである.. 4.ドライビングシミュレータによる検証実験. (4)制約条件の設定 3m プロフィロメータの測定データから真のプロ. (1)シミュレータの概要5). ファイルを推定する場合の制約条件としては,推定 結果を様々な分析用途に対応できるよう,可能な限. 一般的に,ドライビングシミュレータは運転者の. り図-3 に示す演算対象範囲を広げるべきである.. 安全教育,車両設計及び道路の線形・標識に対する. 1 ~ 3 節 の 分 析 結 果 を 総 合 す る と , WN=0.04 ~. 評価が主体であり,これまで道路利用者の快適性及. 0.30m-1 の範囲内であれば,IRI 及び標準偏差いずれ. び安全性と関係の深い路面性状評価を指向したもの. の場合も一定の精度が期待でき,さらにこの波数の. は見当たらなかった.KITDS は,このような要求に 45.

(6) 表-1. IRI =1.6mm/m IRI =2.7mm/m. 実験対象箇所. バネ上加速度標準偏差 (m/s2). EVEN試験の区間No. IRI (mm/m) 2 国道276号線 1.6 14 国道234号線 1.7 6 道道259号線 2.7 4 国道451号線 4.6. 対応できるシミュレータとして注目を集めている. KITDS は多くの機能を備えているが,このうち本研. 1. 0.1. 0.01 0. 究に関係する路面性状及び車両モデルに関する概要. IRI =1.7mm/m IRI =4.6mm/m. 0.02. 0.04. 0.06. 0.08. 0.1. -1 バンドパスフィルタ通過域の下限値 (m ). は以下の通りである. ・ 路面性状データ これまでに凹凸路面(平坦性やメガテクスチャに. 図-8. 属するもの),わだち路面及び損傷路面(段差,パッ. バンドパスフィルタ通過域の下限値とバネ上振動 加速度標準偏差との関係. チング)の作成実績がある.この他の路面について も開発可能な PC 環境が用意されている.縦横断の ・ 走行条件. サンプリング間隔は任意に設定することができる.. 走行条件は,速度 60km/h とし,コースはいずれも. ・ 車両モデル 車両モデルは独立 4 輪モデルであり,バネ上質量. 直線で,延長は 330m とした.走行回数は,各路面. の運動は 6 自由度である.運動モデルはユーザーが. に対して 6 回ずつとした.ゆえに,総走行回数は. 開発した独自のモデルを組み込むことが可能である. 36×6 = 216 回である.. (3) バンドパスフィルタ通過域の下限値と. (2) 実験条件 KITDS による検証実験では以下の条件を設定した.. バネ上振動加速度の関係 真のプロファイル推定におけるバンドパスフィル. ・路面条件 本研究は縦断方向の路面プロファイルを対象とし. タ通過域の下限値とバネ上振動加速度の標準偏差と. ているため,わだち掘れなど横断方向の路面プロフ. の関係を図-8 に示す.ここでバネ上振動加速度標準. ァイルは実験の対象外として入力項目から除外した. 偏差の値は,路面パターン毎に実施した 6 回の走行 実験の平均値である. 実車試験では,走行環境の特定パラメータのみを対 象とし,その影響度を測定することは極めて難しい. 図-8 を考察すると,バンドパスフィルタ通過域の. が,シミュレータ実験の場合は容易に行うことがで. 範囲が拡大することに伴いバネ上振動加速度標準偏. きる.また,真のプロファイルのサンプリング間隔. 差の値は大きくなるが,IRI の大きさを問わず,. は 0.3m に間引き処理している.. WN=0.04〜0.05m-1 近傍の波数を境界にほぼ一定値に. 実験対象箇所としては,IRI の程度に応じて 4 箇所. 収束することがわかる.このことは,図-9 に示す. を選定した(表-1).いずれも一般道路であり,高速. バネ上振動加速度のパワースペクトル密度分析結果. 道路は含まれていない.この 4 箇所のデータに対し. にも現れている.バンドパスフィルタ通過域の下限. て,前章の 9 種類のバンドパスフィルタ(フィルタ. 値が WN=0.05 m-1 より小さい値に(=長波側に). 通過域の上限値はいずれも WN=0.33m-1 ,下限値は. 設定されている場合のパワースペクトル密度はほぼ. WN=0.10,0.09,0.08,0.07,0.06,0.05,0.04,0.03,. 同じ分布形状となっている. この理由として,乗用車のバネ上振動における. -1. 0.025m )を用いて演算処理し,KITDS に入力した. したがって,路面条件は 4×9 = 36 パターンである. ・車両条件. 主要成分(バネ上固有振動数のピークである約 1~ 1.5Hz に相当する成分)は既に WN=0.05~0.30m-1 の 範囲内に含まれており,これ以上範囲を広げたと. 車両条件は,バネ上質量約 1,300kg 程度の一般的. しても残る振動成分はごく微量であり,振動加速度. な乗用車の運動モデルを用いた.. 波形の形状としては現れないためと考えられる. 46.

(7) 推定範囲 WN=0.04〜0.33m-1. PSD ((m/s 2)2/m-1). 10. 相関係数 R=0.7 以上 (標準偏差). 1. 振動加速度一定 (緊急自動車). 真のプロファイル推定に おけるバンドパスフィルタ. 0.1 振動加速度一定. 通過域の下限値. (乗用車). 0.01 0. 0.05. 0.1. 0.15 0.01. -1. Wave Number (m ). 0.1. 1 -1. Wave Number (m ) ※凡例の数値は推定範囲の下限値を表す. 図-10 図-9. 真のプロファイル推定におけるバンドパスフィル タ通過域の下限値の設定. バンドパスフィルタ通過域の下限値とバネ上振動 加速度のパワースペクトル密度との関係(EVEN 試験 No.4(IRI=4.6mm/m)の例). 5.まとめ (4) 車の乗り心地を考慮したバンドパス. 本研究では,真のプロファイルを推定する際に 実用上重要な「推定対象となる波数範囲の制約条件」. フィルタ通過域の設定. について,区間統計値による推定精度の比較結果 前節の結果より,一般道路(法定最高速度 60km/h). 及び KITDS によるバネ上振動加速度測定結果を用い. 上を走行する乗用車の乗り心地を考慮する場合,. て考察した.本研究対象のプロファイラは 3m プロ. 真のプロファイル推定におけるバンドパスフィルタ. フィロメータであるが,8m プロフィロメータなど. 通過域の下限値は,振動加速度波形がほぼ一定の値. 他のプロファイラについても本研究と同様の方法で. に収束する WN=0.04~0.05m-1 程度の値に設定すれば. 真のプロファイルの推定が可能である.また,ドラ. よいと思われ,フィルタ通過域の範囲をこれ以上広. イビングシミュレータを路面プロファイルに関する. げるのは得策ではないと考えられる.この理由とし. 研究に用いた例は数少ないが,今後,道路の管理. ては,前章で示したようにフィルタ通過域が広がる. 基準の妥当性を検証する際のツールとして活用の. ことに伴い真のプロファイルの推定精度が低下する. 機会は多くなると予想される.. ためである.以上を整理したものを図-10 に示す.. 本研究で得られた知見は以下の通りである.. なお,一般道路でも救急救命車両などの緊急自動. ・ 一般道路を走行する乗用車の乗り心地を考慮し. 車の場合は道路交通法施行令により速度 80km/h で. て 3m プロフィロメータの測定データから真のプ. の走行が認められているが,この車両のバネ上固有. ロファイルを推定する場合,バンドパスフィルタ. 振動数のピーク値が今回の実験と同程度(約 1.1Hz). 通過域の下限値は WN=0.033m-1 より大きい値に設. であれば,バネ上振動加速度の主要成分は. 定する必要があることを示した.. WN=0.05m-1 近傍に集中すると思われる.したがって,. ・ KITDS による検証実験の結果,バンドパスフィル. フィルタ通過域の設定は,若干余裕を考慮し. タ通過域の範囲が拡大するに伴いバネ上振動加速. WN=0.04〜0.33m-1 と設定すれば,このような車両の. 度の値は大きくなるが,IRI の大きさを問わず,一. 走行を想定した場合でも実用上大きな問題は生じな. 般道路の場合は WN=0.04〜0.05m-1 近傍を境界に値. いと考えられる.. がほぼ一定値に収束することがわかった. ・ 推定精度及び KITDS のバネ上振動加速度測定結 果から,真のプロファイル推定におけるバンドパ スフィルタ通過域を設定する場合の目安としては, 47.

(8) 一般道路の場合,WN=0.04〜0.33m-1 の範囲に設定. Simulator for Road Surface Evaluation,Proceedings of 5th. すれば,緊急自動車の走行にも対応するなど,実. Symposium on Pavement Surface Characteristics , pp.1-10(CD-ROM),2004.. 用上大きな問題は生じないことを示した. 6). 白石修士:運転教習のための小型ドライビングシミュ レータの開発,自動車技術,Vol.55,No.11,pp.72-77, 2001.. 参考文献 1). 7). Hass,R. and Hudson,W.R. : Pavement Management. グシミュレータにおけるバーチャルリアリティ技術,. Systems,McGraw-Hill Book,New York,1978. 2). 自動車技術,Vol.56,No.6,pp.36-41,2002.. 白川龍生,川村彰,高橋清,中辻隆:3m プロフィロ 8). メータによる True Profile の推定 -PIARC EVEN デー. 9). Kawamura,A., Takahashi,M. and Inoue,T.: Basic Analysis. 白川龍生,川村彰,高橋清,中辻隆:ウェーブバンド を考慮した路面プロファイルデータ処理手法につい. of Measurement Data from Japan in EVEN Project,. て- EVEN データを用いて-,舗装工学論文集,Vol.7,. Journal of the Transportation Research Record,No.1764,. pp.15.1-15.12,2002.. pp.232-242,2001. 4). カヤバ工業株式会社編:自動車のサスペンション,山 海堂,1991.. タを用いて-,舗装工学論文集,Vol.8,pp.25-33,2003. 3). 須田義大,椎葉太一,荒木厚,大貫正明:ドライビン. 10) Sayers,M.W. and Karamihas,S.M.(土木学会舗装工学委. 亀山修一,川村彰,早坂保則,高橋守人,笠原篤:. 員会路面性状小委員会訳):路面のプロファイリング. PIARC 路面性状国際共通試験における舗装の縦断プ. 入門 -安全で快適な路面をめざして-,土木学会,2002.. ロファイルと支持力の関係,土木学会論文集, No.683/V-52,pp.119-129,2001. 5). Kawamura,A., Shirakawa,T. and Maeda,C. :KIT Driving. THE SETTING OF THE RESTRICTIONS ABOUT ESTIMATING A TRUE PROFILE BASED ON A VERIFICATION EXPERIMENT Tatsuo SHIRAKAWA, Chikakuni MAEDA and Akira KAWAMURA In this paper, we studied the estimating range when estimating a true profile using measurement data from a profilometer. Especially, the experiment using the KIT Driving Simulator (KITDS) was described. The purpose of the experiment was to confirm the peak of the frequency component of the acceleration of a vehicle contained in the estimating range. Consequently, it was shown from the filter performance and the acceleration of sprung-mass of the KITDS that the standard of the estimating range in the case of a general road is Wave Number = 0.04-0.33m-1.. 48.

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