【Ⅵ 自治体の初期対応と福祉避難所設営】
1.避難所トイレの設営と衛生管理
中央防災会議は平成7 年 7 月 18 日付で防災基本計画を出し、その中で、国、公共機関、 地方公共団体、住民それぞれの役割を明確にした基本施策が提示されている。それによる と保健衛生、防疫、遺体の処置等に関する活動として、「地方公共団体は、避難場所の生活 環境を確保するため、必要に応じ、仮設トイレを早期に設置するとともに、被災地の衛生 状態の保持のため、清掃、し尿処理、生活ごみの収集処理等についても必要な措置を講ず るものとする。」とされ、“トイレ対策”は各避難所の対応ではなく地方公共団体が保健衛 生と防疫上の観点から、これに当たることになっている。 震災時は一度に大量の被災者が避難所に収容されるために緊急性と実用性を優先した応 急的なトイレが設営されることから、仮設トイレにおいても災害時要援護者に配慮するな ど、利便性かつ安全性の確保が重要であり、細かく述べると以下の点に留意すべきである。 (1) 廃材等を利用した手作りトイレを作る上での安全衛生性 超急性期には実用性を優先した応急的なトイレを作るために、地面に溝を掘り、 板を渡し、周りを塀で囲ったトイレや穴を掘ったトイレが一般的であるが、これら は井戸などの水源から最低30m 以上離れた適所に作り、次第にさらに実用的なトイ レに移行できるようにする。 (2) 仮設トイレの設置場所の安全性 高齢者、子ども、妊婦等の安全性に配慮して、設置場所は避難生活場所に近い位 置に作る。 (3) 仮設トイレのバリアフリー化 避難生活場所から仮設トイレまでの通路を高齢者、子ども、妊婦等にとって、転 倒でケガをしないようにできる限りのバリアフリー化に努める。 (4) 仮設トイレの設置と撤去 超急性期から亜急性期にかけて、トイレ対応が変化してくるが、避難所人数と対 比しながら仮設トイレの設置時期と撤去時期の適正化に努める。 (5) 要援護者用トイレのプライバシー確保 どうしても外まで行けない要援護者については、ポータブルトイレ等の置く位置など について、十分にプライバシーが確保でき、衛生面や臭気面等に配慮した取扱いがで きるようにする。 (6) 避難者の男女数の確認 既存のトイレは元々男性用が少ないことと、近隣者の利用と男女差を考慮して、 既存トイレの使える数を実態調査し、仮設トイレの数を割り出す。ただし、排泄時 間は女性は男性の3 倍を要するので、そのことを配慮してトイレ数を設定する。(7) トイレに関する情報提供 日常生活情報として広報を流す必要があることから、誰にでも分かるように表現 することが大切である。 また、トイレの衛生管理については、伝染病や感染症等の蔓延を招くこととなるので、 清掃、手指の消毒、排泄物の処理等防疫対策が重要です。 (1) 消毒薬等薬液の管理 ① 薬品や消毒液の備蓄 避難所にはアルコールスプレー、クレゾールなどの消毒液や手洗いやトイレ消 毒に対処できるものを備蓄すること。 ② 薬品や消毒液の在庫調べと確保 避難所の薬品や消毒液の在庫調べと、被災者人数に応じて必要量の推測における 薬品及び消毒液の確保・補充に適宜努めること。 ③ 家庭常備薬品等の使用上の注意 トイレットペーパーやトイレ消毒や清掃溶剤及び消臭剤などに関して家庭常備 薬の拠出持ちよりをした時の使用方法と使用適合の誤認をおこさないように適宜 留意すること。 (2) 伝染病や感染症の予防対策 保健所から手指の消毒、糞便の消毒、ハエや蚊の退治などの伝染病や感染症予 防の通達がくるので、その指示に従い防疫対策に当たること。 (3) 動物の糞便の防疫対策 野犬や野良猫などの動物の糞尿便については汚染対象物として取扱い、速やか に防疫対策として適宜対処すること。 (4) トイレ清掃管理と保健所の防疫対策 災害後に疫病が発生するのは3~6 週間以降のことが多いが、トイレの衛生状態 への対応は重要であり、清掃管理を実施するほか保健所の防疫対策の指示に従う こと。 (5) 害虫駆除 持ち寄った家庭害虫駆除スプレー・駆除剤等で害虫駆除をする場合には使用上 の注意をよく読み使用すること。
【文献】
1. 阪神・淡路大震災の教訓 震災時のトイレ対策 -あり方とマニュアル- (http://www.lib.kobe-u.ac.jp/directory/eqb/book/11-284/html/index.html)
2.入浴サービスの設営
避難所生活が数日経過し災害発生直後の混乱が落ち着き、風呂等の衛生問題が注目され 始めます。阪神・淡路大震災において自衛隊による入浴支援が災害発生後7 日目に設置さ れ、目標は1 週間に 1 度の入浴で、仮設風呂や温水シャワーの供用が開始されたのは災害 発生後12 日目であったことを考察すれば、災害発生直後にいち早く設置すべきものという より、衛生上の問題として注目される時期である1 週間以内に整備すべき事項になります。 ただし、災害時の季節にも左右されることから、新潟県中越沖地震では、7 月という暑い 時期の災害であったため、早い段階から洗濯や入浴問題が注目され、自衛隊による風呂の 設営に対し、被災者約200 人が並びました。また、地震発生から 5 日後には救援物資輸送 のために柏崎港に停泊していた海上自衛隊輸送艦が、艦内の温水シャワーを提供しました。 このように入浴サービスについては、衛生上の問題として注目される“時期”が重要で あり、気温や湿度、断水の状況等で、被災者ニーズが異なることに着目し、適切な時期の サービスの提供が望まれる。【事前の把握】
やむを得ず避難所で長期の避難生活を送らなければならない人たちのために、避難所周 辺で入浴設備のある施設を事前に把握しておくことが望まれます。 また、可能であれば、大規模銭湯やスポーツ施設等とあらかじめ協定等を締結しておく ことが望まれます。場合によっては、二次避難所にある入浴設備の活用も考慮することが 有用です。【代替手段の準備】
要介護者、発熱、下痢、皮膚疾患のある方は入浴施設の使用を制限されることから、入 浴施設が利用できなくても、体を拭くためのぬるま湯とタオルを準備するといった配慮が 求められる。また、能登半島地震や新潟県中越沖地震では、“足湯ボランティア”が活躍し たという事例が報告されている。足湯には心身の疲労除去効果が期待できる。 また、避難所に入浴施設が整備できない場合でも同様のことが言えることを申し添えて おく。【文献】
1. 平成 20 年 3 月 静岡県 避難所アメニティの向上に係る検討会(報告書) (http://www.e-quakes.pref.shizuoka.jp/data/toukei/amenity/)3.総合防災情報システムの構築(平時および災害時の運用)
(防災伝言ダイヤルを含む)
総合防災情報システムについては、国が進める防災行政無線を中心に多種多様なインフ ラとアプリケーションの組み合わせで情報伝達が行われている(図参照のこと)。 しかし、平成21 年 7 月の山口県防府市の大雨による災害時には避難途中の住民も含め 19 人の命が失われた。その後の検証で大雨の音で防災無線の放送は聞こえ難いことが分かっ た。 図:総合防災情報システムのイメージ 文献1より引用 現在提供されている代表的な情報伝達手段としては、防災行政無線、コミュニティFM ラジオ、ケーブルテレビ、携帯電話、デジタル放送、電子メールなどがあり、今後は、新 しい技術に着目しながら、多種多重のシステム構築による堅牢で迅速かつ的確な情報伝達 手段を、地域性や独自性を加味しながら検討していく必要があります。以下にそれぞれの 特徴を簡単に解説します。 市民 家庭(市民) 街頭の大画 携帯電話 市町村 市民への 情報送受 ネットワーク 避難勧告 安否確認 現場情報 都道府県 総理官邸/内閣府 K-WAN 気象庁等 防災関連機関 行政 ネットワーク 情報共有 遠隔操作 TV 会議 医療機関 消防、警察等 緊急移動機 整備局等 国の出先 インターネット,無線 FTTH,ADSL,無線 家庭(市民) TV・ラジオ 家庭(市民) CATV 防災無線 河川・道路 監視カメラ ライフライン事業者 電気・ガス・交通・通信等 FTTH,ADSL【防災行政無線】
アナログ停波によるデジタル防災行政無線への乗り換えが現在行われている。信頼性の 面では、非常に優れており、多くの自治体で整備が進んでいる方式である。しかし、多大な 整備費用が必要となるため、最近の地方財政を考慮すれば、自治体の負担が大きいことが問 題。【コミュニティFMラジオ】
FM ラジオ網を利用し、主に地方自治体が開局するもので、平常時は稼働確認も兼ね地域 情報や音楽を放送しながら、災害時には、一般的な携帯ラジオや自家用車で被災者が聞くこ とができるため、整備されている自治体も多い。ただし、AM ラジオと比べて放送地域が狭 いことが短所。【ケーブルテレビ】
防災行政無線と同様の機能を保持するものであり、阪神・淡路大震災では、有用な情報 伝達手段として活躍したもののひとつ。有線ケーブルを電柱間を架線して各戸へ接続する形 式であり、災害時には目視でケーブル等の切断等を発見でき、早期の復旧が可能。しかし、 ほとんどのケーブルテレビ会社の運営は良好とは言えず、センター設備のある局舎の耐震化 が課題。【携帯電話】
携帯電話網を使ったパケット通信による情報伝達手段が最近急増していることから、今 後も非常に注目すべき情報伝達手段のひとつ。ただし、キャリアが3 社あり、統一した規格 がないことが短所。【デジタル放送】
災害時にあらゆる世代の被災者が最も情報を得やすいテレビ媒体を使っていることが最 大のメリットであり、デジタル放送が開始され、画面上にテロップを流すことができるよう になった。【電子メール】
電話の通話網と違い災害時でも制限されることがあまりなく、災害時の情報伝達手段と しては有効な手段である。一斉参集メールや被災状況報告など、メールを使ったシステムを 構築していることが多い。【伝言ダイヤル】
災害時に被災地への通信が増加し、つながりにくい状況になった場合に提供が開始され ます。災害伝言“171”をダイヤルし、利用ガイダンスに従って、伝言の録音・再生を行っ てください。【文献】
1. 2005 年 12 月 社団法人情報サービス産業協会 ナショナル・プロジェクト総合防災対 策情報システムの構築【ご提案】 (http://www.jisa.or.jp/opnion/20051221.pdf)