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<論文>所得と購買行動 : 中価格製品の場合 利用統計を見る

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全文

(1)

著者

小川 純生

著者別名

Ogawa Sumio

雑誌名

経営論集

42

ページ

99-112

発行年

1996-02-28

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00005677/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

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所 得 と 購 買 行 動 一中価格製品の場合 一 小 川 純 生 はじめに1. 所得とは2. 所得の逐次的使用と製品価格3. 所得と意思決定プロセス4. 仮説5. 実証分析 (1)ジーンズの分析 (2)靴の分析 おわりに 所 得 と購買 行動99 は じ め に 本 論 の 目的 は 、購 買 行動 に たい す る所 得 の影 響 を 分析 す る こ とであ る。 特に 、 中 程度 の価 格 の製 品を 購 買 ・ 消費 す る とい う消 費者 の行 動を 取力 上 げ 、そ の行 動に たい す る所 得 の影 響を 探 るも ので あ る。 消費 者 が 製 品を 買 うのは 、そ の製品 か ら得 ら れ る欲 求 の充 足を 獲 得 する ため で あ る。 し かし 、 製 品 は 有 限 であ り、 製 造あ るい は流通 の ため の コ スト が掛 か って い る。 そ れを 手 に 入 れ るた めに は 価 格に 応 じ たお 金 が必 要 であ る。 欲求 は 無限 に 拡大 し うるが 、所 得 は有 限 の範 囲 内に 留 めら れる。 モ の 意味 に おい て、所 得 は 目的 達成 のた め の手 段 であ りそし て 制 約であ る。 消費 者 は、 個 々 の所 得制 約 下に お い て 、 自身 の効 用1)を極 大化 し よ うと す る。 通 常、所 得 と一 言で 表現 す るが2)、 少し 深読 みす れ ば、そ れは 次 の様式 を 持っ てい る。所 得 は 消費 者 べ購買 ) 行 動に た い し て過 去、現 在、 未来 とい う時 間次 元を 持 った 要 因 として 影 響を 与 え る。 現 在 の所 得 は、 通 常 お金 と し て表現 され る も のであ り、月 給 と か年 収 とい う形 式を とる。 そ れは、 所 得 制約 とし て買 う能力 に 直 接関帳 して い る。 過 去 の所 得 は、 現 時点 で所 得 に変 換 可能 な 過去 の蓄え で あ る。 過 去 の蓄 えを 切 り崩す こ とに よ り、現 在 の 所得 制 約を 緩 める こ とが でき る。 未来 の所 得 は、 ク レジ ット ( 消費 者 信 用) の使 用を 意味 す る。 そ れを 使用 す るこ とに より、 やは り現 在 の所 得制 約 を 緩 める こ と がで き る。 いず れの 所得 も現 在 の所得 制 約、 す な わち 「買 う能力」 に直 接に 影 響を 与 え る こ とが で きる。

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しか し 、 こ れら の所 得が す べて の製 品 、 す べて の場 合に お い て同 じ よ うに 購 買 行動 に 影 響を 与え ると は考 えら れない 。 意思 決定 者 であ る 消費 者 の 違い 、 購 入し よ うとす る製 品 の 価 格 の違 い は、所 得 の消費 者 行動 へ の異 なっ た影 響 関 係を 生 じさ せ る。 本 論で は、 消費 者 の違い は 所与 の もの として 、 製 品 価格 の 違い と諸 所 得 の影響 関 係を 考 察 す る。 既 刊 の拙 論で は、低価 格 製品 の購 買 に たい す る所 得 の影 響を 実証 分析し た3)。そ こで 今 回 は、中 価 格製品 の場 合に おけ る 購買 行 動 への所 得 の影響 を 考 察し 、実 証 分析を 行 う。 1. 所 得 と は 所 得は 、 消費 者 が製 品、 サ ービ スそ し て アイデ ィア( 以下 、 製品 、 サ ービ ス、 アイ デ ィ アと記述 する こ とは 冗漫 な ので 、製 品 とい う語 で3 者 の 意味を 包 含 する も のと する) を 購 入 ・ 消費 す る こと に よって 得 ら れる であ ろ う欲求 充 足 とい う 目的 を 達 成す る た めの、 手段 で あ りそ し て制 約 で あ る。 所 得は 消 費者 (購 買 )行 動 に たい し て 過去、 現 在 、 未来 とい う時 間 次元を 持 っ た 要 因 とし て関 係 し て くる4)。 現 在 の所 得 は、買 う能力 に 直 接関 係し てい る。 そ れ は経 済学 の所 得 制約 とし て、 一 般に 認 めら れ る ところ で あ る。一 般 に所 得 水 準が 高い ほ ど購買 ・ 消費 す る製 品 の種 類 と消費 量 は多 い 。 こ の こと は限 界効 用 逓 減 の法則を 前提 と する なら ば、 論理 的 に 帰結 で きる。 通常 、 所 得 とい うと き、私 た ちは 年 間所 得 や月 間 の 給与 所得 を さし て 使用 す る。 し かし 、 後に 記 述 す る よ うに、 消費 者 行 動を より精 密に 分析 す るた めに は 、所 得 はそ れ よ りさら に 小 さ な金 額 ベ ー ス のも の、 す なわ ち次 の 給料 日 まで の 現金 残 高、 あ るい は 買い 物 時点 にお い て所 持 し てい る現 金数 量 な ど も、 所得 概 念に 含 め る必 要が あ る。 本 論 では 、 こ れら の残 余 のあ るい は 小 さな 金 額 ベ ース の 丁お 金」 も所得 概 念に 含 めて 考 察す る。 ト 過 去 の所 得 と所 得制 約 の関 係に 関 七 て は、ト ービ ン(J.Tobin)に よ り提 出さ れ てい る 仮説 が そ の 理 解 に有 効 であ る。 すな わち 、そ れは 個 人 の購買 行 動 にお い て、 手持 ち 現金を 含 めて 、 そ の 他の金 融資 産( 銀 行預 金 、 債券 、株 式 証券 な ど) の放 出に よ り、 消 費支 出 が行 わ れる 可能 性 を そ れは 指摘 し て い る5)。そ の仮 説を 認 め るなら ば 、現時 点 にお け る所 得 制約 を考 え る と き、純 粋 なフ ロ ー概念に よる 所得 以 外 の、 現 時点 で所 得 に変 換 可 能 な ものを も考慮 し なけ れ ばな ら ない6)。 実 物 資 産 で あ る 土 地 、建 物 のよ うな 不動 産、 あ るい は 自 動 車 の よ うな 耐久 消 費 財も、 換 金 の速 度 は 遅い が 換 金可能 であ る≒ 七たが っ て、そ れら は 十 分所 得 の代 わ りを 務 め る こと が出 来 る。こ の ような 場 合、所得 制 約は 所得 フ ロ ーの範 囲に 限ら れず、 スト ッ クの部 分 まで 含 めなけ ればな ら ない。 実 物資 産 あ るい は 金融 資産 が 、 過去 の 所 得 の蓄 え であ り、 そ の資産 の換 金化 か 過 去 の資 産 の現 在 化 とい う意味を 持つ とす る なら ば 、将 来 の 資産 あ るい は 所得 の 現 在化 と い う 意 味 に お い て 、 クレ

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所 得 と 購 買 行 動101 グッド( 消費 者 信用 ) の存 在を 考慮 し なけ れば なら ない。 そ れは、 今 は手 元に は ない お 金を 、 未来 から 借 りて き て現 在 の購買 に充 て 、そ し て そ の支払 い を 未来 に委 ねる の であ る。 そ れ は、 未 来 の所 得に より現 在 の所得 制 約を 緩 める こ とで あ る8)。し かし 、そ れは 過去 の蓄 え に 限 り があ る よ うに 、未 来 の蓄 えに も 限 りがあ り、 個 人 の借 金 の能 力、 あ るい は返 済 能力 に依 存 す る。 い く ら ぐら い の金 額 を 借 りるこ と がで き るか、 そ の場 合 の利 率 は 何% か 、そし て ど のくら い ずつ 返 済 し 、い つ 完了 す る か 、 とい うこ とを 考え る。 し たが っ て、 個 人 の判 断 (お 金を 借 りる 側) と 他人 の 判 断 (お 金を 貸 す 側) に より可 能な範 囲で 所得 制約 を 緩 める とい うこ とに な る。し かし 、い ず れに し て も 未来 の所 得 と 言い な がら 、現 在 の所 得制 約、 す な わち 「買 う能 力」 に直 接 影響を 与 え る ので あ る 。 2 .所 得 の 逐 次 的 使 用 と 製 品 価 格 ダ 経 済学理 論 で は、 個 々の 消費 者は 、 あ る所 得制 約 の下 に、 数多 くある 製 品 の中 か ら 最 大 の満足 を もたら す よ うな諸 製 品 の組 み合 わ せを 見つ け だ し、 そ の満足 総 量を 極大 化 し よ う とす る。 そ れは、 どの よ うな種 類 の製 品を 購 入す る のか 、そ し て 購 入し ようと決 め た製品 を どの くら い の数 量で 購入 す る と満足 総 量を 極 大化 で きる の か とい う問 題 であ る。 この問 題に たい し て、 経 済学 は 、 通常 、 消 費 者 があ る時 点 のあ る 所得 制約 下に おけ る製 品 購買 の組 み合 わせ でも っ て、い か に 効用 を 極大 化 す るか とい う形 式 で数 学 的に そ の問 題を 処 理し てい る9)。 そ れは 、あ たか もあ る1 時 点 を と っ た と き に 、 消費 者 が、瞬 間的 にあ らゆ る 製 品情 報を 収 集 し、 どの製 品を 、 どの 程度 購 入 す る かを 決定 し て い る か の ように みな す こ とに よっ て な され る。 た とえ れば、 そ れはあ る 消費 者 が 月 の 給料を 貰 った 時 点 にお い て、 そ の月 の1 か月間 の 消費 支 出を 全 て決 定 する こ と と同 義 にな る。 実 際 の消費 者 行動 を 観察 、あ る い は 内観 す る と、そ の ような こ とはあ り得 ない 。 消 費者 は、 使用 可能 な所 得を 一 挙に 支 出し ない 。 逐 次的 に 、 時間を 追 い な がら 製品 種類 と購 入 数 量 を 検討 し 、 決定 し てい く。 理 性的 な 思 考で は、1 か月 間で あ る なら ば 、1 か月 の範 囲で 所得 制約 を 考慮 し て 製 品 購入を 決定 す る。し か し、 現 実に は 、 消費 者 は 、 日常 的 に常 に そ の思 考範 囲を 全体 的 な視 野 、 こ こ では1 か月 の所 得 制約を 睨 みつ つ 購 買 意思決 定を 行い 続け てい る とは 考え ら れない 。そ の行 動 は 、 予想 以 上に 場当 た り的 であ る 。 購入 す る製品 種 類 に よっ て は、 あ ま り深 く考 えず購 入 す る場 合も あ るし 、 ある い は熟 慮 の上 で購 入 する 場 合もあ る。 そ れは 、 所得 制 約 とし ての お金を 考 え た と き も同 様 であ る。 特に 、 製品 価 格 が所得 に 比 較し て、 相 対的 に 低 い場 合 と高 い場 合 には、 異 な っ た 思考 が働 く。 一 般 的に は 、製 品 価 格 と所得 制 約 の関 係 は次 の よ うに説 明 で きる。最 寄 品 ( 日 用 品) の よ うな低 価 格製 品 の場 合 は、 購 入時 点に おけ る給 料 日 まで の現 金 (預 金) 残 高、あ るい は 今そ の時 点で サ イ フ の中 に 入っ てい る金額 に 、そ の 意 思決定 が左 右 さ れる。 衣 服あ るい は家 電 製 品 の ような 中価 格 製

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品 の場 合 は、`月 々の ロ ーン 支 払い 、 ボ ー ナス 日一 括払 い、 あ るい は 現金 支払 い を 検討 し、 月 々 の給 料 に見 合 った 支払 い方 法 を 検 討す る。 家 とか土 地 の よ うな 高 価格製 品 の場 合は 、個 人 あ るい は家族 世 帯 の年 間所得 ベ ースで 、 ろ ド ッ クの 使用 とい う過去 の所 得 と長 期 の ロ ーンを 組 む とい う 未来 の所 得を 含 め て所得 制 約 が考 慮 さ れ る。 こ の ように 購入 し よ うと す る対 象物 の価 格 に応 じ て、 個人 の所得 制 約 の 内容 も変 化 対応 す る と考 え ら れる。 そ して そ れは ま た 、 消費 者 が買 お うとす る意 思 の程度 に よ り、 自身 の スト ッ クを どこ ま で 持ち 出 す のか、 あ るい は クレ ジ ットを どの 程度 利 用す る のかに より、 所 得 の 制 約程 度 が大 き く異 なって く る とい うこ と も指 摘 で きる。 3 .所 得 と 意 思 決 定 プ ロ セ ス \ 最終 的 に購 入す る かし な い か の 意思 決定 時 点か ら の時 間的 距離 、 あ るい は 意 思 決定 の緊 迫 度に 応 じて、 消費 者 の所 得制 約 の 内 容 が違 っ て くる こ とが 考え ら れる10レ 意 思決定 と所 得 制 約 の関 係 は 次 の ように 説 明 で きる。 す なわ ち、い まだ 意思 決定 す る ま でに 時間 的 余 裕が ある 時点 で は、 まだ 本当 に 購 入 する か ど うか も定 まっ てい ない し 、 た と え購 入 す る方 向に あ っ たとし て も、 自身 の身 に さし 迫 っ てい な い こ とから 、 自身 の状 況を 遠 くか ら 客観 的 に 見てい る。 そ の状 態 におい て は 、抽 象 的 にあ る 幅を 持 って所 得 制約を 考 え てい る。「年 間所 得 が こ の位 だから 、 月 々 の給 料 がこ れ位 だか ら 購 入に 無 理 は ない だろ う」 とい うぐら い に。 しか し、 意思決 定 が行 わ れ る時 点 が 近づ くにつ れて、 徐 々に緊 追 性、 具 体性 が 生 じて く る。そ う す る と、所 得 制約 に 関し て も 具 体的 な 金 額 レベル で 考慮 し なけ れ ば な ら な く な る 。 自 分 の 給 料 が499,500 円だか ら 、そ の商 品 の 購買 は 身 分 相応 か な。「次 の給料 日 まで 、あ とい く ら 銀行 に 預 金残 高が あ るか ら、購 入し て も平 気 かな 」とい う ように 考 える か もし れない 。残 金 と残 り給 料 日 まで の生 活を 比 較対 照 する とい う緊迫 感 が 生 じる。 そし て 、最 終的 に 購 入す るか ど うかを 決 定 す る瞬 間に おい て は 、対 象物 の価格 と自身 の 現 在 の所 有 金 額が 具 体的 に比 較 さ れる。 極 論す る と 、い ま サイ フにい く らい くら 入っ てい る から 、 買 お うあ るい は買 うのを 止そ うと決定 す る か もし れ ない / 意思 決定 時点 から の時 間的 距離 に よって 、 消費 者 の 考慮 す る所 得 内容 が変 化 して く る。 以上 の こ とが 類 推 できる。 4. 仮 説 ここ ま で、「2. 所 得 の逐 次的 使 用 と製 品 価 格」 と 「3. 所得 と 意 思決定 プ ロ セ ス」 の 節 に お い て 、所 得 と製 品価 格 、所 得 と 意 思決 定 プ ロ セ スの 関係を 個 別に 見て き た。 ここ で は 、両 者を まとめ て 考察 す る。 図 とし て の表 現 力 は余 り よく ない が、 所得 、 製品 価格 、 意 思決定 プ ロ セス の関 係は図1 の よ うに 集 約さ れ る。 ∧

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高価 格 中価 格 低価 格 図1 所 得と 製 品価 格そ して 意思 決定時 点 の関係 意思 決定 時点 所 得 と購買 行動103 a. 年間所得b. 月 々の給 料c. 給 料 日 までの 現金 (預金) 残 高d. 所 持金 額( サイフ の中 のお 金) 高 価 格 の製 品を 購買 する とき、 そし て 、 購買 ・非 購買 とい う最終 的 な 意思決定 時 点 から い ま だ離 れて い れ ばい るほ ど、 考慮 する所 得 は過 去 の所 得 や 未来 の所 得 を 含め た年 間所 得 ベ ー スの大 き な単 位 のも の であ る。 中 価 格 の製品を 購買 す る とき、 そ し て意 思決 定 時点に 少し近 づ い た 時、 念 頭 に生 じて くる 所得 は、月 々の給 料や 給料 日 まで の現金 ( 預金 ) 残 高で あ る、 低価 格 の製 品 を 購買 す る と き、 そ し て 意 思決定 時 点に 限 りな く近づ い た時、 考 慮 す る所 得 は、そ の 時 の所持 金 す な わち サイフ の中 のお 金 、 あるい は ポ ケット の中 に あ るお 金 の額 で あ る。 当 論文 で は 、そ れら の 組 み合わ せ の中 で 、中 程度 の価 格 の製 品購 買に たい す る 経 済的 要 因 の影 響 度 を 探 る。 意思 決定 時点 と経済的 要 因 の関係 は、今 回は 所与 の一定 の も のとし て 、 考 察対 象 から外 し た6 以 前 の論文 に おい て は、 こ れら の組 み合 わ せ の中 で、 低 価 格 の製品 で、 か つ購 買 意 思 決定 時 点に 限 り な く近い 購 買 行動 に た い す る 所 得 の影 響 を 分 析 し た 。 具 体 的 に は 、 低 価 格 製 品 の購 買 金 額 ( 量) は、 経 済的変 数 と し ての所 持金 額、1 ヵ 月 のお 金 、年 間所 得 の多 少 に よっ て影 響 さ れ るとい うこ とを 分析 し た。 統計 的 には、 従 属変 数を 購 買 金 額、 独立 変 数を 所 持金 額、1 ヵ月 のお 金 、そ し て 年 間 所得 とし た回 帰 モデ ルを 設 定 し、 下 記 の 仮説 の下 に そ れを 検証 し た。 仮 説 : 『低 価 格製 品 の場 合、そ の 購買 に 最 も 大 きな影 響 を与 え る所 得 は、 そ の時 に 持 っ てい る所 持 金 額 で あ る』 こ の仮 説 に たい して 、回 帰 モデル を 重線 形 回 帰式 にあ てぱ め て、 統計 的 検定を 行 った。 そ の結果 は、こ れら の変 数 の うち所 持金 額 の みが 、重 回 帰 分析 上 、統 計 的 に 有 意 な 値 を 示 し て い た 。 し た が っ て、 こ の仮説 は、 明 瞭に 支持 さ れ るとい うこ と が統 計的 に 検証 さ れた。 そ こ で、 今 回 は、 経 済的 要因 の購買 行 動 へ の影 響を も う少し 価 格帯 の 高い 製品 に おい て、 分 析を 試 み る こ とに し た。 す なわ ち、低 価 格 製品 と 高 価格 製品 の中 間 としヽうこ とで 、中 価格 の 製品 の購買 に た い す る 経 済的要 因 の影 響を 分析 す る。 低 価 格製 品 と同 様 の手 続 きを 今 回の 分 析に お い て も使用 す る。 具 体的 に は 、中 価 格製 品 の購買 数量 は 、 経 済的変 数 とし て の所 持金 額、1 ヵ 月 のお金 、 年 間所 得、

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貯 蓄残 高 、 ロ ―V の多 少に よっ て影 響 さ れる とい うモデ ルを 設定 し た。 低 価格 製 品 の場合 に 比較し て、 経済 的変 数 とし て、 過 去 の所 得 の 代理 変数 で あ る貯 蓄残 高、 未来 の所 得 の 代 理変 数 であ る ロ ー ン の使用 状 況を 加 えてい る のが特 徴 で あ り、 違い で ある。 方 法論 的 に は、 中価 格製 品 の 購買 数 量を 従 属変 数 、所 持 金 額、1 ヵ月 のお金 、年 間所 得、 貯蓄 残 高、 そし て ロ ーンを 独立変 数 とし た回 帰 モデ ルを 設 定し た。 そ し て、 そ れを下 記 の 仮説 の も とに 統 計的 に 検証 す るこ とに な る。 この 仮説 を 検証 す る こと が、 本論 の目的 に な る。 仮説 : 『中 価格 製 品 の場合 、 所 持金 額 、1 ヵ月 のお 金、 年 間所 得、 貯蓄 残 高 、 ロ ーン の うち、そ の購 買 に 最 も大 きな影 響を 与 え る 所得 は 、1 ヵ月 のお 金で あ る』 5. 実 証 分 析 仮説 を 検証 す るた めに 、 従 属変 数 と 独立変 数に た いし て、 そ れぞ れ 次の 測度 を 使用 し た。 従属変 数 で あ る 「中価 格製 品 の購 買」 は 、 消費 者 のジ ーン ズ と靴 の所 有数 量 であ る。 他 の独 立変 数 に関 し て は、次 の ように 測 定し た。[所 持 金 額]は、ア ン ケ ート収集 時 点に おけ る消費 者 の手 持 ち金 額 であ る。/1 ヵ月 のお 金」は、消費 者 の 自 由裁 量所 得 を 意味 し、生活 費を 除 い た学 生 自 身 が自 由に 使 える 金額 で あ る。「年間 所得 」 は、 消費 者 が所 属 す る家 庭 の年 間所 得で あ る。「貯 蓄 残 高」 は 、 消費 者自 身 の過 去 の蓄 えで あ る貯蓄 金 額 で あ る。[ ロ ーン]は、消 費者 の 現在 の ロ ーン支 払 状 況 であ り、月 々 の支 払 金額 を 回答 し て もら った。 そ れは 、 消費 者 の 未来 の所 得 の利用 状 況を 測 定 し てい る。 分析 に 使用 し た変 数 の統計 的 概 要 は下 記 の よ うに 示 さ れ る11)。 従 属 変 数 で あ る ジ ー ン ズ の 平 均 所 有枚 数 は4.2枚 、靴 の平 均 所 有数 は5.9 足 で あ った。 独 立変 数 であ る平 均 所持 金 額 は8,484.7 円、1 ヵ月 の平 均 自 由裁 量所 得 は42,448.5 円、 平均 貯 蓄 残高 は2.5 (質 問選 択肢1.6 万 円 未満 、2.6 ∼10万 円 未満、3.10 ∼15 万 円 未満、4 ト15 ∼20 万 円未満 、5.20 ∼25 万 円 未 満 、6.25 ∼30 万 円 未満 、7.30 ∼35万 円 未満 、8.35 万 円 以 上、の うち 選択 肢2 と3 の 中 間 値を 示 し てい る)、平 均 ロ ーン支 払額 は1.4 (質 問 選択 肢1. ロ ーンは なし 、2.5 千 円 未満 、3.5 千 円ヽ1 万 円 未 満 、4.1 ∼2 万 円未 満、5.2 ∼3 万 円 未満 、6.3 ∼4 万 円 未満 、7.4 ∼5 万 円 未 満、8.5 万 円以 上 、 の うち選 択 肢1 と2 の中 間値 を 示 して い る)、 家 庭 の平均 年 間 所 得 は4.4( 質 問選 択肢1.600 万 円 未満 、2.600 ∼700 万 円 未満 、3.700 ∼800万 円 未満 、4.800 ∼900 万 円 未満 、5.900 ∼1,000 万 円 未満、6.l,000 ∼l,100 万 円 未満、7.1,100 ∼1,200万 円 未満 、8.1,200 万 円以 上、 の うち 選 択肢4 と5 の 中間 値 を示 し て い る) で あ る。 他 の詳 細 な数 値 は、 表1 の ように示 さ れ る。

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ジ ―ンズ 靴 所 持金 額1 ヵ月 のお金 年 間所 得 貯蓄残 高 ロ ーン 表1 平均 値4.2475.8928484.71842448.4684.3572.5381.432 使 用変 数の 概要 標 準偏差2.5723.27110880.99725994.8852.2072.1291.294最 小 値 010 3000 I I I 最 大 値 c v i o -C O C ^ 150000 150000 oooo 8 所 得 と購 買 行 動105 分 析に 使 用し た 標本 数 は、361であ る。そ の標 本対 象 者は 、東 洋大 学 の学 生 であ る。分析 対 象 の標 本 特 性を 記 述 する と、下 記 の よ うに な る。平 均年 齢 は19.9歳、男女 の 内訳 は 、男 子 学 生が247 名、女 子 学 生 が108名 、性 別 無回 答 が6 人 であ る。 標 本が 学 生に 限ら れ てい るのは 、 偏 った 標本 と 言え る が、 そ れは逆 に 分析 にお い て次 の メ リ ット を 指 摘で き る。 所得 の 購買 行 動へ の影 響 を 測定 す る とき、 他 の条 件を 一定 の下に おい て そ れを 行 う こ とを 可 能に し てい る。 す なわち 、購 買 行 動に 影響 を与 え る であ ろ うい くつ か の 要 因、 た とえ ば、 年 齢、 職業 、 情 報処 理 能力 など の違い に 基づ く購買 行 動 の違し を 、学 生 とい う標 本に 限 定す ること に よ り、 あ る程 度な く し てい る。 (1) ジ ー ンズ の 分析 「消費 者 の経 済的 要 因 であ る所 持金 額 、1 ヵ 月 のお 金、年 間所得 、 貯 蓄残 高 、 そ して ロ ―ンの変 動 が、 消費 者 のジ ーン ズ の所 有枚 数 の変 動 に影 響を 与 え る」 とい う操 作 モ デルを 設定 し た。 数 学的 な 表 現で示 す と、下 記 の よ うに な るレ ジ ーン ズ の所 有枚 数 =f( 所 持 金額 、1 ヵ 月 のお 金、 年 間所 得、 貯 蓄 残高 、 ロ ーン) ジ ーン ズ の所有 枚 数 は、 所持 金 額、1 ヵ月 のお金 、年 間 所得 、貯 蓄 残 高、 そし て ロ ーン の関数 で あ る。 そし て 、 こ の従 属変 数 と独 立変 数 の 関係を 線 形 関 係に あ る とみ なし て 、統 計的 に 仮説 を 検証 す る。 そ れを 行 うた めに 、次 の(2)式 の ような 線形重 回帰 方 程式を 設 定す る。こ の式 は、所 持金 額、1 ヵ 月 のお 金、 年 間所 得 、貯 蓄 残高 、 そし て ロ ―ンの変 動 がジ ーンズ の所 有枚 数 に影 響を 与 え る とtヽう 意 味に な る。 従 属変 数 が ジ ーンズ の所 有 枚数 、 独立 変数 が 所持 金 額、 レ 蓄 残高 、そ し てP ーン の5 つで あ る。 Y =a 十b,X, 十ba ×2+b3 ×3 十b4 ×4 十bs ×5 十s (1)

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(Y ニ ジ ー ン ズ の 所 有 枚 数 、a ― 定 数 項 、bi 、b2 、b3 、b4 、b5 = 偏 回 帰 係 数 、x, = 所 持 金 額 、X2 =1 ヵ 月 の お 金 、X3 = 年 間 所 得 、X, = 貯 蓄 残 高 、X5 = ロ ー ン、 £= 攬 乱 項 )Y =2.754 十〇.00000585×1 十〇.0000187×2 十 〇.00991×3 (0.376 )(0.0000128 ) (0.00000555 ) (0.062 ) 標 準 誤 差 (7.316 ) (0.455 ) (3.371) (0.0001 ) (0.6491) (0.0008 ) 十〇.116×4 十〇.216×5(0.064 ) (0.106 ) (1.807 ) (2.044 ) (0.0716 )(0.0417 )R' =0.074AdjR' =0.061 (0.160)t 値 (0.8733)p 値 標 準誤 差t 値p 値 ① F 値 =5.568Prob >F0.0001n =354 まず、 個 々 の変 数 の 偏 回 帰 係 数 の 有 意 性 や 大 き さ を 調 べ る 前 に 、 回 帰 方 程 式 全 体 の有 意性 を チ ェ ックす る12)。 そ れ は、 次 の 帰無 仮 説1 と対 立 仮説1 を 検定 す る こ とに よっ てな さ れ る。 帰無 仮説1 :b 戸b2 =b3 =b4 =bs =0 対 立 仮説1 :b. 、b2 、b3 、b4 、bs ≠0 こ の帰無 仮 説1 は 、 すべ て の 偏回 帰 係数b, 、bz 、b3 、h レb 丿ま0 であ る、 す な わち 、い ず れ の 偏 回帰 係数 も従属変 数 の説 明に たい して 何 ら貢 献し てい ない とい う意味 であ る 。 対 立 仮説1 は、 こ れ ら の偏 回 帰係数 は 同 時にO で ない ( 少な くと も1 つ はO で ない) とい う意味 であ る。F 値 は5.568を 示し てお り、確 率0.0001 のレ ベル で棄 却 域に 含 まれ る。し た が っ て、帰無 仮 説1 を 棄 却し 、対 立 仮説1 を 採択 す る こ とに な る。よっ て、こ の 回帰方 程式 は、0.1% 水 準 の高 レベ ルで 有 意 と判 断 で きる。 こ の 回 帰方 程 式を 分析 す るこ とは 意味 があ る。 そ こで 今 度は 、偏 回 帰 係 数b. 、b. 、b, 、b, 、bs を 個 々に 検討 す る こ とに よっ て、個 々 の変数 の 統計 的 有意 性を 検定 す る。 次 の帰 無 仮説 と対 立 仮説 を 検定 す るこ とに な る。 帰無 仮 説2 :bi =0 、 対 立 仮説2 :bi ≠0 帰 無 仮説3 :b2 =0 、 対 立 仮説3 :hz ≠0 帰 無 仮 説4 :b3 =0 、 対 立 仮説4 :b ≠0 帰 無 仮 説5 :b4 =0 、 対 立 仮説5 :b4 ≠0 帰無 仮 説6:b, =0 、対 立 仮説6 :bs ≠0 帰無 仮 説2 は、[所 持 金 額 の変 動 は、ジ ーンズ の所 有枚 数 の変 動に 影 響を 与 え ない ]とい うも ので あ る。対 立 仮 説2 は 、「所 持 金 額 の変 動 は、ジ ーン ズの所 有枚 数 の変 動 に 影響 を 与 え る」とい うもの

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所 得と購 買行動107 であ る。帰無 仮説3 は 、「1 ヵ月 のお 金 の変 動 は 、ジ ーV ズの所 有枚 数 の変 動に 影 響 を 与 えな い」と い う もので あ る。対 立 仮説3 は 、「1 ヵ月 のお金 の変 動 は 、ジ ーン ズの所 有枚 数 の 変 動に 影 響を 与 え る」とい うも のであ る。帰無 仮説4 は、「年 間 所得 の変 動は、ジ ーンズ の所有 枚数 の変 動 に 影 響を 与 え な い」とい うも のであ る。対立 仮 説4 は 、「年 間所得 の変 動は 、ジ ーン ズ の所有 枚 数 の変 動 に影 響 を 与 え る」とい うも のであ る。帰 無 仮説5 は、「貯 蓄 残 高 の変 動 は、ジ ーン ズの所 有 枚数 の変 動に 影 響 を 与え な い」とい うも のであ る。対 立 仮説5 は、「貯 蓄 残 高 の変動 は、ジ ーン ズ の 所有 枚 数 の変 動 に 影 響を 与 え る」とい うもので ある。 帰無 仮 説6 は 、「ロ ーン の変動 は、ジ ーン ズ の 所有 枚 数 の変 動 に 影 響を 与 え ない」 とい うも のであ る。対 立 仮説6 は、「 ロ ーンの変 動は 、ジ ーン ズ の所 有 枚 数 の変 動 に 影響 を 与 える」 とい う もので あ る。1 偏 回 帰係 数bi のt 値は0.455、b. のt 値 は3.371、b3 のt 値は0.160、hi のt 値 は1.807 、b5 のt 値 は2.044で あ る。 両 側検定 で、そ れらt 値 は 、そ れぞ れ0.6491、0.0008、0.8733 、0.0716 、0.0417 の 確 率で 棄 却 域に 入る。偏 回帰 係数bz が0.1% 水 準以 上 で統 計的 に 有意 であ る。他 の偏 回 帰係 数 は、b4 とbs が有 意 かな ど うか な とい う水 準 であ る。 偏 回 帰 係数b, とba ぱ完 全に 有意 で は ない。 よ って、 帰 無 仮説2 は棄 却 され 、対 立仮 説2 が 、 完 全に 採択 され る。 帰無 仮説4 と5 は、 厳 密に 判定 す るな ら ば、 棄 却 す るこ とは で きない 。 帰無 仮 説1 と3 は甘 く 見積 も って も棄 却で きな い。 独立 変 数 の うち1 ヵ月 のお金 が、 ジ ーン ズ の所 有枚 数に 影 響を 与え る、 貯 蓄残 高 と ロ ーン は、 微 妙 な とこ ろ 、所 持金 額 と年 間所 得 は影 響を 与 え ない とい うこ とが 統計 的に 言 え る。 こ の回 帰方 程式 に おい て は 、所 得 の うちジ ーンズ の所 有 枚数 に影 響 を 与 える と断 言で き るの は、1 ヵ 月 の お金 であ る と結 論 で きる。 統計 的に は有 意で ない もの も含 ま れる が、 標 準偏 回 帰 係数を 算 出し て みた。 (1)¨ 式 参 照。そ れに より、所持 金 額 、1 ヵ 月 のお 金 、年 間所 得、貯 蓄 残 高、そ し て ロ ーン のジ ー ン ズ の所 有枚 数に た いす る 相対 的影 響 度 の大 き さを 見 るこ と がで きる。 Y =0.025 ×1 十 〇.188 ×2 十 〇.008 ×3 十 〇.096 ×4 十 〇.109 ×5 ●●●●●● ① こ の標 準偏 回 帰係 数を 見 ると、 所 持金 額 の係数 が0.025、1 ヵ月 のお 金 のそ れ は0.188 、年 間所得 のそ れ は0.008、貯 蓄 残高 のそ れは0.096 、ロ ―ンのそ れは0.109を示 し てい る。1 ヵ 月 の お金 の標 準 偏 回帰 係数 の数値 が 、最 も 大きい 。 相対 的 に 比較 す る と、2 倍から23 倍程 度、1 ヵ 月 の お金 が 他 の 独立 変 数 よ り もジ ーンズ の所 有に たい し て 大 き な影 響力 を 持 ってい る と言 え るレ よっ て、 統 計的 なt 検定 に よって も、 また 標 準回 帰 係数 に よ る 数 値 的 な 比 較 に よ っ て も 、 仮 説 『中 価 格製 品 の場 合、 所 持金 額、 レ 最 も大 きな 影 響を 与 える所 得 は、 レ で きる。

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(2) 靴 の 分析 ジ ーンズ の場 合 と同 様に 、「消費 者 の 経済 的要 因 であ る 所持 金額 、1 ヵ月 のお 金 、年 間 所得 、貯蓄 残 高、 そ し て ロ ーンの変 動 が 、 消費 者 の靴 の所有 数 の変動 に 影響を 与 え る」 とい う操 作 モデ ルを設 定 し た。 靴 の所 有 数=f ( 所 持金 額 、1 ヵ月 のお 金 、年 間 所得 、貯 蓄 残高 、 ロ ーン) 靴 の所 有数 は、 所持 金 額、1 ヵ月 のお 金、 年 間所 得 、貯 蓄残 高、 そ し て ロ ーン の 関数 であ る。 以 降 の線 形重 回 帰方 程式 モデ ル の設定 と検 定手 続 きは 、 ジ ーン ズの 場 合と 同 様 であ る。 こ の操作 モ デルを 元 に、 次 の(2)式 の よう な 線形 重 回 帰方 程式 を 設定 す る。 こ の式 は 、所 持金 額 、1 ヵ 月 のお 金 、年 間所得 、 貯蓄 残 高、 そし て ロ ーンの 変 動 が靴 の所 有数 に 影 響を 与え る とい う 意味に な る。 従属変 数 が靴 の所 有数 、 独立 変数 が 所 持金 額 、1 ヵ 月 の お金、 年 間所 得 、貯 蓄 残高、 そ し て ロ ー ンの5 つ であ る。 Y =a 十biX, 十b2 ×2 十b3 ×3 十b4 ×4 十b5 ×5 十 ε

(Y = 靴 の 所 有 数 、a = 定 数 項 、b, 、hz 、ba 、b4 、b5 こ 偏 回 帰 係 数 、Xi = 所 持 金 額 、 の お 金 、X3 = 年 間 所 得 、X4 =貯 蓄 残 高 、X5 = ロ ー ン 、 £ = 攬 乱 項 )Y =3.429 十 〇.000035X 汁0.000029 ×2 十 〇.105 ×3 (0.465 )べ0.0000158 )(0.0000069 ) (0.077 ) 標 準 誤 差 (7.374 ) (2.207 ) (4.262 ) (1.364 )t 値 (0.000D (0.0280 ) (0.0001) (0.1735 )P 値 十 〇.183 ×4 十 〇.022 ×5 (0.080 ) (0.131 ) 標 準 誤 差 (2.303 ) (0.165 )t 値 っ (0.0219 )(0.8687 )p 値R' =0.124AdiR' =0.111F 値 =9.842Prob >F0.0001n =354 (2) X2 こ1 ヵ 月 ●●●丿●● (2) 個 々 の変 数 の偏 回 帰 係数 の 有 意性 や大 きさを 調 べ る前 に、 回 帰方 程式 全 体 の有 意性を チ ェ ック す る。 そ れ は、 先 と同 様に 、 次 の 帰無 仮説7 と対 立 仮 説7 を 検定 す るこ とに よっ て な され る。 帰無 仮説7:bi =b2 =b3 士b4 =b5 =0 対 立 仮説7 :b. 、b. 、b3 、b4 、b5 ≠0 今 度 の場 合、F 値 は9.842を 示 し てお り、や は り確率0.0001 の レベ ルで 棄却 域に 含 ま れる。帰無 仮 説7 を棄 却 し、対 立 仮 説7 を 採 択す る こ とに な る。し た が って 、こ の回 帰方 程式 は 、0.1% 水 準 の高 レ ベル で有 意 と判 断で き る。 こ の 回 帰方 程式 を 分 析す る こ とは 意味 があ る。

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所 得と購買 行動109 そ こで今 度 は、 偏 回帰 係 数b, 、hz 、b3 、b, 、bs を 個 々に 検討 す るこ とに よっ て、M 々 の変 数の 統 計的 有 意性 を 検定 す る。 次の 帰無 仮 説 と対 立 仮説を 検定 す るこ とに なる。 帰無 仮説8 :bi =0 、 対立 仮説8 :b, ≠0 帰無 仮 説9:hz=0 、 対立 仮 説9 :h ≠0 帰 無仮 説10:b3 =0 、 対立 仮 説10:b3 ≠0 帰 無 仮説11:hi =0 、 対立 仮 説11 :b, ≠0 帰 無 仮説12:b5 =0 、 対 立 仮説12:bs ≠0 帰無 仮説8 は、[所持 金 額 の変 動 は 、靴 の所 有 数 の変 動に 影 響を 与え な い]とい うもの で あ る。対 立 仮説8 は、「所持 金 額 の変 動は、靴 の所 有 数 の変 動に 影 響を 与え る」とい うも の であ る。帰無 仮説9 は、「1 ヵ月 のお金 の変 動 は、靴 の所 有数 の変 動 に影 響 を 与え ない」 とい うも の で あ る。対 立 仮説9 は、「1 ヵ月 のお金 の変 動 は、靴 の所 有数 の変 動 に 影響 を 与え る」とい うもの で あ る。帰 無仮 説10 は 、「年 間所 得 の変動 は 、 靴 の所 有 数 の変 動に 影 響 を 与え ない」 とい う もの であ る。 対立 仮説10は、 「年 間 所得 の変 動 は、靴 の所有数 の変 動に 影 響を 与 え る」とい うもので あ る。帰 無 仮説11 は、「貯蓄 残 高 の変 動 は、靴 の所有 数 の変動 に 影 響を 与 え ない」 とい うもの であ る。対 立 仮 説11は 、「貯蓄 残 高 の変 動 は、 靴 の所 有数 の変 動に 影響 を与 え る」 とい う もの であ る。 帰無 仮説12 は 、「 ロ ー ン の変 動 は、靴 の所有 数 の変 動に 影 響を 与え な いト とい うも ので あ る。対 立仮 説12は、「 ロ ーンの変 動は 、靴 の所 有 数 の変 動に 影響 を 与 え る」 と い うも ので あ る。 偏回 帰 係数b, のt 値は2.207、b. のt 値 は4.262、bs のt 値 は1.364、b4 のt 値は2.303 、bs のt 値 は0.165であ る。 両 側 検定で 、そ れ らt 値 は、そ れぞ れ0.028、0.00081、0.1735、0.0219、0.8687 の確 率で 棄 却 域に 入 る。 先 と同 様に 、 偏 回 帰係 数b2 が0.1% 水準 以上 で統 計的 に 有 意 で あ る。 偏 回 帰係 数b,hb4 が2 ∼3 % 水準で 有 意 であ る。 残 りの 偏回 帰 係数ba とbs は、 ほ と ん ど 有 意 で は な い。 よって 、 帰無 仮説1 、2 、4 は棄 却さ れ、 対 立 仮説1 、2 、4 が採 択 され る 。 帰 無仮 説3 と5 は、 棄 却 す るこ とは で きな い。 独立変 数 の うち 所 持金 額、1 ヵ月 の お金 、 そ し て貯蓄 が、靴 の所 有 数に 影響 を 与え る。 年 間所 得 と ロ ーン は、 影響 を 与え な い とい うこ と が統 計的 に 言 え る。 統計 的に は 有 意で ない もの も含 まれ る が、 ジ ーンズ と同 様に 標 準偏 回 帰係数 を 算 出し て みた。(2 )"式 参 照。そ れに よ り、所持 金 額 、1 ヵ月 のお金 、年 間所 得、貯 蓄 残 高、そ し て ロ ーン の靴 の 所 有 数に たい す る相 対 的影 響度 の 大 きさ を 見 るこ と がで きる。 Y =0.116 ×1 十〇.231×2 十〇.070×3 十〇.119×4 十〇.009×5 (2)" こ の標 準 偏回 帰 係数を 見 ると、 所持 金 額 の 係数 が0.116、1 ヵ 月 のお 金 のそ れ は0.23L 年 間所 得 のそ れ は0.070、貯 蓄残 高 のそ れは0.119 、ロ ー ンのそ れ は0.009を 示 し てい る。1 ヵ 月 のお 金 の 標準

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偏 回 帰係数 の数値 が、 最 も 大 きい。 そし て、 所 持 金額 と貯 蓄残 高 が次に 大 き い 。 相 対的 に 比較 する と、2 倍程 度 、1 ヵ月 のお 金 が所 持 金額 と貯 蓄 残 高 より も靴 の所 有に たい し て 大 き な影 響力 を 持っ て い ると 言え る。 年 間所 得 とC3 ―ン は、t 検定 で も有 意 でな かっ た よ うに 、 標 準 偏 回 帰 係数 の数値 を みて も、 相 対的 に 小さ な 数値 を示 し てい る。 よっ て、 統 計的 なt 検 定 に よっ て も、 ま た標 準 回帰 係数 に よ る数 値 的 な 比 較 に よ っ て も 、 仮 説 『中価 格製 品 の場 合、 所 持 金額 、 レ 最 も大 き な影 響を 与 え る所 得は 、1 ヵ月 の お金 で あ る』 は、今 回 の靴 の 分析 に お い て も支 持 でき る。 お わ り に ト 購 入し よ うと する製 品 の 価 格 の高 低に 応 じて 、 消費 者 の所得 制 約 の内 容が 違 って く る と考 えた。 高 価格 の製 品を 購 買 する と き、 考 慮 す る所得 は 過 去 の所得 や 未来 の所 得を 含 め た年 間所 得 ベ ース の 大 きな 単位 のも のであ る。 中価 格 の 製品を 購買 す る とき、 考慮 す る所 得 は、 月 々 の給料 や 給料 日 ま で の現 金( 預 金) 残 高で あ る。 低 価 格 の製 品を 購 買す る と き、 考 慮す る所 得 は 、 そ の時 の所持 金す な わち サ イフ の中 のお 金 、 あ るい は ポ ケ ット の中 にあ る お金 の額 であ る。 こ れら の考 察 の もとに 、今 回 は 分析 を中 価 格 の製 品 に限定 し 、次の 仮説 を 設定 し た。『中 価 格製品 の 場合 、所 持 金額 、1 ヵ 月 のお 金 、年 間所 得、 貯 蓄残 高 、 ロ ーンの うち 、そ の購 買 に最 も大 きな影 響を 与 え る所得 は 、1 ヵ月 のお 金 であ る』。こ の仮 説を 検証 す る ために 、線形 重 回帰 方 程式 モデルを 設定 し た。 ジ ーンズ と靴を 中価 格 製 品 とし て採 用 し た。 し た が って、 従 属変 数 は ジ ーン ズの所 有枚 数 と靴 の所 有数 であ る。 こ の従 属変 数を 説 明 す る独立 変 数は、 所 持金 額 、1 ヵ 月 のお 金、 年 間所得 、 貯蓄 残 高、 そし てpi ―ン の5 つ で あ る。 得 ら れ たデ ータに基 づ き 回 帰 分析 の計 算を 行 った。 そ の結果 、 回 帰方 程式 全 体 の説 明力 に 関わ るF 検定 、そ し て個 々 の偏 回 帰 係数 の 統計 的 有 意性を みるt 検定 、 そし て 標 準偏 回帰 係 数 の数値 を 相 対的 に 評価 す る ことに よ り、 仮説 は ほ とん ど 支持 で きる と結 論づけ た。 次の 研究 は、 高 価 格製 品 の購 買 と 所得 の関 係を 分 析す る予定 であ る。 * 本 研究 は、 東 洋大 学 の 井上 円 丁 記念 研 究 助成 金を 受け て 行 なっ てお りま す。 ここ に 感謝 の 意を 表 し たい と思い ます 。 注 1 )「効用」 は、 各個人 が 消費 に よっ て得 る主 観的 な満足 感 であ る。 今 井賢一 、宇 沢弘 文 、 小 宮 隆 太郎 、 根岸 隆 、村 上泰亮 著 『現代 経済 学1 価 格理論1 』岩 波書店 、1971年 、39頁。

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所 得 と購買行動Ill 2 ) 消 費 者 行 動 研 究 の 下 記 の 主 要 な 文 献 を 見 て も, 所 得 を 本 論 の よ うに 詳 細 に 取 り 扱 っ て い る も の は ほ と ん ど 見 ら れ な い 。 ゜JohnA.Howard,BuyerBehaviorinMarketingStrategy,SecondEdition,Prentice −Hall,1994,p.41.Johnu.FarleyandL.WinstonRing,"DerivinganEmpiricallyTestableVersionoftheHoward −ShethModelofBuyerBehavior",inJ.N.Shethed. にModelesofBuyerBehavior −Conceptual,QuantitativeandEmpirical,HarparandRow,1974,p.151.AlanR.Andreasen,"AttitudesandCostomerBehavior:ADecisionModel"inHaroldH.KassarjianandThormass.Robertsoned.,PerspectivesinConsumerBehavior,Scott,ForemanandCompany,1968,p.506,p.508.JamesF.Engel,DavidT.Kollat,RogerD.Blackwell,ConsumerBehavior,SecondEdition,DridenPress,1973,p.55.JamesF.Engel,RogerD.Blackwell ,Pallw.Milliard,ConsumerBehavior,FifthEdition,TheDridenPress,1986,p.58 ・JamesR.Bettman,AnInformationProcessingTheoryofConsumerChoice,Addison −Wesley,1979,p.36.c.GlennWaltersandBlaiseJ.Bergiel,ConsumerBehavior −ADecisionMakingApproach −,South −Western,1989,pp.574-590.WilliamL.Wilkie ,ConsumerBehavior,SecondEdition,JohnWiley&Sons ,1990,pp.85 −88.3 ) 小 川 純 生 「所 得 と 購 買 行 動 一低 価 格 製 品 の 場 合 一」『 経 営 論 集 』( 東 洋 大 学 経 営 学 部 ) 第40 号 ,1994 年3 月 ,1 −13 頁 。4 ) 小 川 純 生 「消 費 者 行 動 に た い す る 所 得 の 影 響 一 時 間 − 」『 経 営 論 集 』( 東 洋 大 学 経 営 学 部 ) 第33 号 ,1989 年3 月 ,18 −20 頁 。5 ) 小 泉 進 , 建 元 正 弘 著 『 現 代 経 済 学2 所 得 分 析 』, 岩 波 書 店 ,1972 、30 頁 ,141 −142 頁 (JamesTobin, “RelativeIncome,AbsoluteIncome,andSaving"inMoney,Trade,andEconomicGrowth,EssaysinHonorofJohnHenryWilliams,Macmillann,1951 )。6

)J.A.Howard とJ.N.Sheth は , 現 在 所 得 以 外 に 蓄 え ら れ た 過 去 の 所 得 を 指 摘 し て い る 。JohnA.HowardandJagdishN.Sheth,TheTheoryofBuyerBehavior,JohnWiley&Sons,1969,p.78 、7 )F.M.Nicosia は , 所 得 以 外 に , 貯 蓄 , 資 産 , そ し て 保 険 を 指 摘 し て い る 。FrancescoM.Nicosia,ConsumerDecisionProcesses 一MarketingandAdvertisingImplications-,Prentice-Hall,1966,p.160. ( 野 中 郁 次 郎 , 羽 路 駒 次 訳 『 消 費 者 の 意 思 決 定 過 程 』, 東 洋 経 済 新 報 社 , 昭 和54 年 ,146 頁 )。8 )Katona は , 現 実 の 分 析 に お い て は , 消 費 者 の 消 費 行 動 ( 貯 蓄 行 動 ) を 説 明 す る 為 に , 過 去 と 将 来 の2 つ の 所 得 変 化 を 説 明 変 数 と し て 利 用 し て い る 。GeorgeKatona,PsychologicalAnalysisofEconomicBehavior,McGraw −Hill,1951,pp.157 −158.9

)JamesM.HendersonandRichardE.Quandt ,MicroeconomicTheory:AMathematicalApproach 一secondedition,McGraw

−Hill,1971. <

( 小 宮 隆 太 郎 , 兼 光 秀 郎 訳 『 現 代 経 済 学 一価 格 分 析 の 理 論 − 』 第 二 版 増 訂 版 , 創 文 社 , 昭 和48 年 ,7 頁 )10 ) 小 川 純 生 「 消 費 者 の 意 思 決 定 プ ロ セ ス と所 得 の 関 係 」『 経 営 論 集 』( 東 洋 大 学 経 営 学 部 ) 第34 号 ,1990 年3 月 ,35-52 頁 。

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11) 以下 の統計 計 算は 、Macintosh 版、StatViewVer.4.02 を 使用 した 。 ▽12

) 回帰方 程式 を 分析 する と きの検 討順 序は、 次の ように 行 う。1. 回 帰方 程式全 体 の検 定=R' の検 定、F 検

定を 行 う。2.R' が有 意で あ った ならば 、個 々の 係数 の検定、t 検 定を 行 う。PaulE.Green,AnalyzingMultivariateData,TheDrydenPress,1978,pp.74 −76.(1995

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