側円術(II) : 側円公式の例題・応用
著者名(日)
米山 忠興
雑誌名
東洋大学紀要. 自然科学篇
号
48
ページ
87-97
発行年
2004-03
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00002489/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja側 円 術 II*
-側円公式の例題・応用-米 山 忠 興**Ellipse in Japanese Historical Mathematics II.
-Applications of Elliptic Formulae-Tadaoki YONEYAMA
序. 前号の『側円術1』において,楕円の外接円及び内接円に関する公式を紹介した. 和算家はこれらの図形の間の関係を,2本の連立方程式に置き換えて解決していた.し かし,この公式の有用性については,解例が少なく分かりにくかったと思われるので,こ こで再び,この公式の例題・応用を紹介する. なおこれらの例題及び解例は,今からおよそ170年ほど前の幕末の頃の和算家たちによ ってもたらされ,今から50年ほど前に加藤平左工門(#)著『和算ノ研究 雑論1』(昭 和29年:日本学術振興会刊)によって研究されている.それをさらに,50年後の現在に 再び紹介しようとする意図で,幾つかある誤りを訂正しながらここに掲載する. # 加藤平左工門:大正12年東北帝大数学科卒で,林鶴・・一藤原松三郎両博1:に教えを受け,台北高 等学校・台北帝大(予科長)・台湾大・名城大などの教授を歴任(著者略歴他による). *この研究は,平成15年度文部科学省科学研究費補助金基盤研究(C)「算額及び和算の数学史・文化史 的な調査・研究と解法の探究」,および平成14 一一 15年度東洋大学特別研究(個人研究)による. ’‡ 圏m大学自然科学研究室 〒351-8510埼玉県朝霞市岡2-11-10 Natural Science Laboratory, Toyo University,11-10,0ka 2, Asaka-shi, Saitama 351-8510, Japan楕円の外接円(内接円)公式より
(皿) 2b4r十b2AR-a2R3=0 (W) -1)4r 2十BR 2十2α2rR3=0 . あるいは, (V) b2rA十2BR一ト3a2rR2=0 . (VI) 3b4r 2十2b2rAR十BR 2=0 . ただし, ノ1=α2十b2十r2-OF2-CT2 B;aL’b2十α2r2⊥b2r2-b20F2-a2C’F2 内接円のときには,(m)~(VI)でr→-rとおく.図1
『側円術1一楕円の外接円・内接円公式一』 東洋大学紀要自然科学篇2003年 第47号pp.61-72. [側円解例] 1.楕円の外接円 村田佐十郎 算法側円詳解(四十四) 2.楕円の内接円 1 内田恭 楕円集解(六) 図2 3.楕円の内接円一2 内田恭 楕円集解(七)側円術ll一側円公式の例題・応用一 89
1.楕円の外接円
村田佐十郎:算法側円詳解(四十四):(天保四年1833)図3
E-F-一
璽
1\ 略)答日甲円径三寸一分有奇
円径幾何と問
外円径七寸乙円径極ユ至る其甲
一石一司
と乙円八個を容る灘鋸雛阿
内ユ図の如く側円四個及甲円一
_o-_」
図4
図のように,外円径を長径とする楕円4個が(互いに45°の傾きで)外 円に内接し,甲円はそれらの4個の楕円に共通に内接している. さらに,長径端で一つの楕円に内接し,両隣りの2つの楕円に外接す る8個の乙円がある.乙円径が最大になるときの甲円径は幾らか. [解] 「乙円径極に至る其の(ときの)甲円径 (=楕円の短径)は幾らか」という.乙円 が楕円の極円であり,隣り合う2つの楕円 に外接すると謂う条件で,楕円の短径が決 まる. 楕円の長径2αを与えて,甲円径(=楕 円の短径)2bを求める問題である.乙円は 楕円の極円で,「側円術1』で示したように, b2 γ= .図5
また, a-r OF=C’F= であるから, A=a2+b2+r2-OF2-C’F2 -。・+b2+。・一(a-r)2×2 2 =a2十ar十r2-(a2-2αr十r2) =3ar このA=3αrを楕円の外接円公式(皿)に代入するが,このAは,『側円術1』の例題 (村田佐十郎:算法側円詳解(三十六))と同じであるから, 2b2
R=2r=一.
α (皿) ⇒ 2b‘r十b2AR-a2R3=0 2a2r3十αr・3αr・R-a21~3=0 2r3十3r『R-R3=0 (r-{-1~)2(2r-R) =0 .’. 2r=1~ . また, B=a2b2+a2r2+b2r2-b20F2-a2C’F2 a2 2a2 -,1・{b6・・a2b4+・a‘b2-・6} このB及び上のR,rを楕円の外接円公式(IV)に代入する. (VI) ⇒ -b4r 2-f BI~2十2a2rR3= 0 . 一・・aE+(・・+・・)・・一(・・…)(?j2
.。・b・+(。・.b・)旦L(。・.b・)(α2-b2)2 一b・・ セ彦{b・+・a・b・+…b・一・・}箏+…÷警6-・ -a2bS十(2b6十6a 2b4十6a 4b 2-2a6)」-1602b 4=0 2b6一ト21a2b4十6a4b2-2α6=0 (2b2十a2)(2b4-f 20a2b2-4a4) =O b2 一(-5±后)α2 ゲ>0だから b2= (3Vli--5)a2 .’D b=后α≒O.44289a (甲円径)
2α=7寸を代入すると, 2b=3.10024寸となって,算題の答が正しいことが分かる.側円術ll一側円公式の例題・応用一 91
2.楕円の内接円一1
内田恭 楕円集解(六)図6
一一一
積一得レ数開二平方 得二乾円径一合レ問 ‥ -- ー1ー五百個開二平方一以減レ極余円積率以除二外
ト トヲ テ 術日置二八個一開二平方一加一一二十個一名・極、 答日乾円径一十九寸有奇
坤円四個⊃只云外積一百三十二寸六分二
厘、欲・使二坤円径至少べ問二乾円径幾何一、図7
ー-‘
云有・如・図側円内容・乾円二晶酪づ瓢
__一
この楕円集解(六)の問題は,少しヒネッてあって,楕円内の6つの円(乾円2個と坤 円4個)を除いた部分の面積を「外積」として与え,坤円径が最小になるときの乾円径を 求める問題である.(後述) しかし,敢えてそんな不自然な問題設定をしなくても,以下のような形で,楕円の内接 円公式を利用する問題にすることが出来る. [改題] 図のように,互いに外接する乾円2個が,楕円と長径端一所で切している. さらに,4個の坤円が楕円に内接し,乾円に外接している. このとき,最小となる坤円径を,乾円径で表わせ. [解] r 楕円の内接円C’の半径 rl:楕円の半長径を直径とする円Olの半 径 R:楕円の長軸上に中心を持ち,楕円及び その内接円C’と接点を共有する円の 半径(この円は図には描かれていない)図8
楕円の長径・短径を,それぞれ2α,2bとする.楕円の長径を与えれば,乾円径はその 半分である.楕円短径が大きければ,坤円径は大きい.しかし,短径が小さすぎると,乾 円が楕円と1所で接するという条件を満たさなくなる.よって,乾円が楕円の極円である とき,坤円径は最小である. よって乾円の半径r1について
rl-9.かつ・一三
2.・.旦=b2⇒ b=a
2 万
また,OF2=〆, ・’F2 一・’・,2-・IF2-(一十r2)2-(号一・)2 =2ar. よって .4=α2⊥b2十ア2-OF2-C’F2 。。・.t+。・.r・.2。r 2 3a2 α =2-2・r=丁(3・-4r)・ B=α2ゲ+a2r2+b2r2-b2・OF2一α2・C’F2 2 2 2 =a2. a _トa2r2_トーf{_r2_一≦≧_.r2_a2.2αr 2 2 2 2 -;(a2-・・r+・r2)・ この問題では,円C’(r)は楕円に内接しているから,公式(V)(VDにおいて, r→-rと置き換えたものに,上で計算したA,B及びb2を代入する. (V) ⇒ -b2rA」-2BJ~-3a 2rl~2=0 2 2 ÷・・;(・・一・・)・・R;(α2-・・r+・・2)一・α2rR2-・ -ar(3a-4r)十4R(a2-4ar--2r2)-12r頭~2=0 , ・・・・・・… (V)ノ (VI) ⇒ 3b4r 2-2b2rA R十.BR 2=0 . 4 2 2 ・{・ r2-・」丁・rR・9(・・一・・)・号(a2-・ar+・r2)・R2-・ 3a2r 2-2ar∬~(3a-4r)十2∬~2(a2-4ar十2r2) =0 , ・・… t-・・(VI)’ ここで, (V)’×(a2-4ar十2r 2)十 (VI)’×6r ⇒ 一αr(3α一4r)(α2-4αr十2r2)十4R(α2-4ar十2r2)2十18α2r3-12αr21~(3a-4r) =0 , ∴4R(a4-8a3r+11a2r2-4αr3+4r4)-ar(3a3-16a2r+4αr2-8r3)①側円術ll一側円公式の例題・応用一 93 また, (V)’×3ar十(VI)’×(3α一4r) ⇒ 12ar(a2-4αr十2r2)1~-36αr21~2-2ar(3a-4r)2R一ト2(3α一4r)(a2-4ar-←2r2)1~2= 0
∴αr(3α2ヰ4r2)=R(3a3-16a2r+4ar2-Sr3)②
①と②からRを消去すると, 4(a4-8a3r十11a2r2-4ar3十4r4)×(3α2十4r2) = (3a3-16α2r十4αr2-8r3)2 これを計算して, 16r4十44a2r2-a4;0 、_-22±222+16,_-22±Vf566-2 r - a 一 α 16 16 - -22±10V信一 2_ -11±5在一@2
- a - a l6 8 r2>0 だから 、 sV5’ 一 11, r ; a . 8 ところで,楕円集解(六)の元の問題に戻 って,外積を与えて坤円が最小のときの乾円 径を求めてみよう. 外積をSとすると, nr2×…(旦2)2×…一・・b・ 先に求めたように,〆,bをαで表わせば,吋5告’La2・♀}・・一橿
・一・a2 o10-5万 1 2 +万} 210-sV5一ト拒一 =πa 2 . 2_ 2S .. a 一 π(10-sVs」十,rl}一)/碗{
,製積s・ ㌢
/ \a l … 丁\丁 ノ
\噸ゑ一
/
図9
ここに,S=132.62を代入すれば, 乾円径=α≒19.000013となり,元の答と一致する.94
3.楕円の内接円一2
内田恭:楕円集解(七) 米 山 忠 興 大 図10一一一
乗二中径一得二小径一合レ問 術日置二一十二個一開一一平方一内減二一二個一余答日
小円径百十七寸有奇
少小円径幾何
図11 楕円内に大円1個,中円2個,小円4個が上の図のように,各々,内接・ 外接している.大円は楕円短径を直径とし,中円は大円に外接し楕円に長径 端で内接している.さらに,小円は大円・中円に外接している. 中円径が与えられたとき,楕円の短径が最小となるときの小円径は幾らか. [解] 中円径が与えられたとき,もし大円 径が大きければ,図12の(a)のよう になり,大円径を小さくしていくと, (b)のように中円が楕円の長径端に おける曲率円になり,さらに大円径を 小さくすると,(c)のように中円が楕 円の長径端から離れてしまう. その間,小円径もだんだん小さくな (b) 図12 曲率円 中 大 小 (c) 中図13
側円術H一側円公式の例題・応用一 95 っていく.よって,(b)が条件を満たす最小の大円径(=楕円の短径)である.図13のように, 楕円の長径=2α,短径=2bとする. また,大円径=2b,中円径=2rl,小円径=2rとする. 中円は曲率円だから,前間と同様に b2 「1= ・ a 図13から 2b2 a= b十2ri= b十 a a2一αb-2b2=0 (α+の(α一2め=0 .’. a=2b , ゆえに, b 「1=2・ (すなわち,a=2b=4r! .) また,△OO,C’において第二余弦定理を用いると, (rl 十r)2=(b十rl)2十(b十r)2-2(b十rl)・OF 2rir=2b2十2b(rl十r)-2(b十rl)・OF br=2b2十b2十2br-3かOF 3b・OF=3b2十br .・. OF=b十」二. 3 C’F2-(b+r)2-(b+9)2 4br 8r2 = 十 3 9 これらを用いて, A=a2+b2+r2-OF2-C’F2 -・・+・・+r・一( rb十一 3)2-(4iγ⊥8;2) =a2-2br=4b2-2br =2b(2b-r) , B=α2∂⊥a2r2+ゲγ2-b2・ OF2一α2・C’F2 -・・b・+…W-b2・( rb十一 3)2-…(41γ+8;2) 一 4b・⊥4b・r・+b・r・.b・一!1’ib・-b2r2-16δ3L 32b2・2 3 9 3 9 -・b‘一・b3r ・9b2・2一ゲ(・b2-・b・+9r2)・
ここで側円公式を用いる. (V) b2r 4+2BR 十 3a2rR 2=0. (VI) 3b4r 2十2b2rA 1~十BI~2=0 . ただし,内接円だから,r→-rとする.
巴∴芸;llll露:竺:°
上の2式を,それぞれ,2b2, b2で割るとL二llご:∵㌶∴ :1:
まず, (1)・(・b2-・br+1・2)・(・)・・r⇒ R{(・b2-・br+{ト2)2-24・2b(・b-r)} 一{br(・b-r)(・・2-・b・斗i・2)-18b2r3} ∴R{・b4-36b3r-・b2・2+…3阜4}-b・{・b3-15b2・一芸・・2-gr3},(・) 次に, (1)×3br 十 (2)×(2b-r) ⇒ R{・br(・b-r)2-・b・(・b2-・br+9・2)} -R2{(・b-・)(・b2-・br+丁・2)-18b・2} ∴b・{・b2・・br}-R{・b3-15b2・-ll’Lbr2-9・3}・ (・) (3)と(4)からRを消去して, {・b4-36b3r-・b2・2+・br3+剖・{・ゲ+・b・}一{・b3-15b2・一誓ゲ÷3}2 この式を展開し,bの降幕の順に整理し,-9を掛けると, -243b6十486bsr一ト1917b4r2十1944b3r3十888b2r4⊥192br5十16r6=0 さらに・b6で割り㌃一・とおき・その左辺をf(・)とする・ f(t) ≡ 16t6十192t5十888t4十1944t3十1917t2十486t-243 . この式を因数分解するために,各項の係数を素因数分解して調べてみると,16=24 192=26×3 888=23×3×37 1944=23×35 側円術ll一側円公式の例題・応用 1917=33×71 486=23×5 243=35 97 f(t)が有理数の範囲で因数分解出来るならば, 3「n