• 検索結果がありません。

年度研究会シンポジウム記録 18 歳選挙権実施を前にして その影響と対応 18 歳選挙権と主権者教育を巡る問題 牧之内隆久 1. 選挙の常時啓発と主権者教育総務省及び各地の選挙管理委員会は, 選挙の時の投票参加等の呼びかけ ( いわゆる 臨時啓発 ) だけでなく, 常にあらゆる機会を

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "年度研究会シンポジウム記録 18 歳選挙権実施を前にして その影響と対応 18 歳選挙権と主権者教育を巡る問題 牧之内隆久 1. 選挙の常時啓発と主権者教育総務省及び各地の選挙管理委員会は, 選挙の時の投票参加等の呼びかけ ( いわゆる 臨時啓発 ) だけでなく, 常にあらゆる機会を"

Copied!
6
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

1.選挙の常時啓発と主権者教育

 総務省及び各地の選挙管理委員会は,選挙の 時の投票参加等の呼びかけ(いわゆる「臨時啓 発」)だけでなく,「常にあらゆる機会を通じて 有権者の政治意識の向上を図る」(公職選挙法第 6条)という「常時啓発」の任務を負っている。 しかし,行政だけでこの任務を負うのは困難な ので,各地の明るい選挙推進協議会等の民間団 体(以下「協議会等」という。)と連携した官民 協働の「明るい選挙推進運動」に取り組んでい る。  この運動は,運動開始後60年が経ち様々な問 題を抱えるようになったので,時代に即した運 動のあり方を探るため,2011年,有識者による 「常時啓発事業の在り方等研究会」(座長=佐々 木毅元東大総長。以下「研究会」という。)が総 務省に設置され,同年12月にその最終報告書が 出された。同報告書は,現在我が国は解決困難 な様々な政策課題に直面しており,これに対処 するためには,質の高い主権者(国や社会の問 題を自分の問題として捉え,自ら考え,自ら判 断する自立した主権者)が求められているとし, これからの常時啓発は,この質の高い主権者を 養成する「主権者教育」を目指すべきことを提 唱した。  「主権者教育」は,欧州において注目されるよ うになった「シティズンシップ教育」を意識し たもので,そのキーワードとして掲げたのが 「社会参加」と「政治的リテラシー」である。「社 会参加」とは,知識を習得するだけでなく,実 際の社会の諸活動に参加することで社会の一員 としての自覚を深めること,「政治的リテラシ ー」とは,政治的,社会的に対立している問題 について,必要な情報を収集し,的確に読み解 き,考察し,判断する能力を高めることとされ ている。「シシティズンシップ教育」は,移民の 増大等を背景とした国家と国民,市民と社会の 再構築など幅広い概念を含んでいるが,その中 心をなすのは市民と政治との関わりであるので, 研究会はそれを「主権者教育」と呼ぶことにし たのである。  従って,「主権者教育」という特定の教科があ るわけではなく,新たなジャンルを求めるもの でもない。主権者として相応しい社会参加意欲 や政治的リテラシーを育てる教育であれば,色 々な分野のものが幅広く含まれる。また,子供 達は勿論,高齢者も学び続けることが必要で, 学校教育に限ったものではない。その主体は, 行政や教育機関だけでなく,政党,学界,経済 界,メディア,NPO,家庭など幅広いセクター が連携して担うべきものである,と述べている。 これは,文科省の「主権者教育に関する検討チ ーム」の中間とりまとめ(2016.3.31)の考え 方とも軌を一にするものである。  国会では,18歳選挙権の審議にあたり,高市 総務大臣だけでなく,安倍総理も「あらゆる機 会を通じて主権者教育を進めてまいります」と 答弁しているが(2015年2月17日,参院本会議 等),これらの答弁は,研究会の報告があったれ ばこそであろう。

2.常時啓発における学校教育との連携

 研究会が「主権者教育」を提唱した背景には, 〈2016年度研究会シンポジウム記録 18歳選挙権実施を前にして―その影響と対応―〉

18歳選挙権と主権者教育を巡る問題

牧之内隆久

選挙研究 32巻2号 2016年

(2)

言うまでもなく,近年における投票率の低下, なかんずく若者の選挙離れがある。  若者の選挙離れの要因としては色々なことが 考えられるが,研究会報告はその一つとして, 学校教育における政治教育が不十分なこと(政 治や選挙の仕組みは教えても,現実の社会や政 治に対する理解力や判断力を養成するものにな っていない)ことを挙げ(表1参照),教育基本 法第14条第1項の実質化を目指すことを提言し た。そのために,学校教育との連携をこれから の常時啓発の柱に位置付けた。  (公財)明るい選挙推進協会(以下「協会」と いう)においては,研究会報告が出される数年 前から,学校教育との連携を常時啓発の主要な 柱と位置づけ,各地の選管や協議会等に学校へ の働きかけ,特に選挙出前授業の実施を薦めて きた。しかし,学校側の受 け入れ希望が少なく,中で も高校は,受験勉強で時間 が取れない,模擬選挙をや っても小・中学生と違って 余り関心を示さないなどの 理由から,実施が極めて困 難であった。ところが,18 歳選挙権の実現により,学 校への選挙出前授業,特に 高校への出前授業が急増し ている(図1,図2参照)。 これまではほとんど見られ なかった選管と教育委員会 の連携が進み,中には連携 協定を結ぶところも出てき ている。  18歳選挙権の意義は,要 約すれば①世界の潮流への 同調,②少子高齢化社会へ の対応,③若者に対する主 権者教育の充実にあり,特 に③の意義が大きいと考え るが,幸いにして,その実現を契機として,各 方面から主権者教育の必要性が指摘されるよう になった。昨年出された高校生用副教材及び初 等中等局長通知(2015.10.29)は,政治や選挙 に関する仕組みなどに加えて,現実の具体的な 政治的事象を扱うことにしており,教育基本法 表1 小・中・高のいずれかで   学んだことが「ある」と答えた人の割合 24歳 18歳 全体 59.9 78.0 68.9 国民主権などの民主主義の基本 56.5 76.8 68.4 選挙区制などの選挙の仕組み 38.2 63.6 48.5 普通選挙の実現の歴史 29.5 44.9 36.0 選挙の意義と投票参加の重要性 12.7 24.4 20.5 投票所での投票の方法 9.9 16.9 12.7 ディベートや話し合い 6.2 9.3 7.3 模擬投票・模擬選挙 出典 公財明推協「18歳選挙権認知度調査」2015年6月,対 象:15~24歳のネットモニター,3,000人 図1 選挙出前授業実施団体数の推移 H22年度 461の内訳:44都道府県,417市区町村。 500 400 300 200 100 0 出典:総務省「学校教育と連携した啓発事業実施調査 報告書」2016年3月 78 92 143 183 215 461 H23年度 H24年度 H25年度 H26年度 H27年度 図2 選挙出前授業の実施学校数の推移 小学校 1200 1000 800 600 400 200 0 出典:図1と同じ 309 93 56 27 1,149 79 中学校 高等学校 大学(短大含) 特別支援学校 H25年度 H26年度 H27年度 369 514 115 261 70 27 58 6 3

(3)

14条1項の実質化へ向けての大きな前進である。 出前授業の急増,子ども議会等の増加はその成 果として評価できる。  ただ,出前授業は急増しているが,学校数で みれば全国の高校(4,939校中1,149校)の23.3%, 生徒数で見れば10%弱(3,3319千人中310千人), 高校3年生でも11.5%に過ぎない(約1,125千人 中129千人)。また,授業の中身は,選挙に関す る講義のみのものが約4割を占めており,模擬 選挙を伴っていても投票体験を重視したものが ほとんどで,争点教育など政治的リテラシーの 養成を重視したものは少ない(総務省「学校教 育と連携した啓発事業実態調査報告書」2016年 3月参照)。  もっとも,政治的リテラシーの養成を選管の 出前授業に期待するのは限界があり,学校の日 頃の授業における争点教育等の取り組みが不可 欠である。選管の出前授業は,模擬選挙の体験 等を通じて投票のハードルを下げる,選挙の意 義を理解してもらうなど,あくまでも学校の授 業の先鞭ないし補完と位置付けるべきであろう。  選挙出前授業は,学校の希望はあっても,選 管のスタッフが少なく対応できていないところ もある。今後さらに学校数を増やす必要がある が,それには,県と市町村との役割分担(小・ 中は市町村)が欠かせない。また,市町村の選 管職員も限られているので,協議会等の協力が 求められる。

3.18歳選挙権を巡る問題

3.1 政治的中立性の確保  主権者教育,特に学校における主権者教育を 推進していく上で一番の問題は,政治的中立性 の確保の問題であろう。  欧米においては,時事問題など世論が対立し ている問題を取り上げ,討論や意見の発表を重 視した教育,教室に生の政治を持ち込む教育が 行われているが,「中立性」とは対立する立場を フェアに紹介することと理解されている。副教 材教師用指導資料中の「実践的な教育活動を行 うに当たっての留意点」にはドイツのボイテル スバッハコンセンサス(1976年)やイギリスの クリック報告(1998年)の論争的問題を扱う場 合の基準と同様な考えのものも含まれているが, 「教員は自らの言動が生徒に与える影響が極め て大きいことから,教員が個人的な主義主張を 述べることは避け,中立かつ公正な立場で生徒 を指導することが求められる」とし,さらに, 「学校における指導に関するQ&A」では,「生 徒から教員の主義主張を尋ねるような質問があ る場合には,慎重に対応する」とも述べており, 不安視している教員は多い。  何故政治的中立が必要か,というと,学校教 育は「公の性質をもつもの」(教育基本法第6 条)で,多数の者に対して強い影響力を持ちう るので,特定の政治勢力の考えが持ち込まれ, そのための政治教育や政治活動が行われると, 子供たちの公正な教育を受ける権利を阻害する 恐れがあるからであろう。特に,年齢の高くな い生徒には教員の与える影響が大きいと考えら れる。  従って,ボイテルスバッハコンセンサスにあ るように「いかなる正しい見解をもってしても, それで学習者を圧倒してはならない」が,政治 的リテラシーを養成するには,現実の政治の問 題を取り上げ,問題の背景や主張の対立点を理 解し,自分の頭で考察させる,いわゆる争点教 育が不可欠であり,場合によっては,クリック 報告にあるように,「教師が明示的に自分の意 見を言う」ことも必要であろう。  18歳選挙権の実現は,主権者教育を推進し, 有権者の資質の向上を図るまたとないチャンス であるが,中立性の確保を理由に学校教育が現 実の政治問題を避けることになれば,18歳選挙 権の意義は皆無となるに等しい。学校の前向き な取り組みを後押ししていくことが必要である。

(4)

3.2 生徒の政治活動の規制  授業における中立性の確保と同様にあるいは それ以上に悩ましいのが生徒の政治活動に対す る規制である。  2015年10月29日に出された新しい初等中等局 長通知は,選挙権を有する生徒が選挙運動を行 えるようになることなどに伴い,「生徒の政治 活動」についても,「生徒は未成年者であり, (中略)選挙権等の参政権が与えられていない ことなどからも明らかなように,国家・社会と しては未成年者が政治的活動を行うことを期待 していない。」(昭和44年10月 文部省初等中等 局長通知)という考えから,「今後は高校等の生 徒が国家・社会の形成に主体的に参画していく ことがより一層期待される。」という考えに大 きく転換している。  しかし,具体的な取扱になると「生徒会活動, 部活動等の教育活動を利用したものは,授業以 外でも禁止することが必要」,「放課後や休日で も学校内は,施設管理への支障等が出ないよう 制限又は禁止が必要」,「放課後,休日に学校外 で行われる政治活動は,家庭の理解の下,生徒 が判断して行うが,ただし,違法なもの,暴力 的なもの又はそれらの恐れが高いものは制限, 禁止が必要。学業や生活に支障のある場合は制 限・禁止を含めて指導」としている。  この通知内容の取扱いについては学校側から の疑義が多いことから,文科省は2016年1月29 日「Q&A」集を出したが,そこでは,「校則等 で『選挙運動,政治活動,投票運動は校内では 禁止する』と定めることができるか」という問 いには,学校教育法第5条の設置者管理主義を 根拠に,「不当なものではない」と回答しており, また,「放課後,休日等に校外で行われる政治活 動等を届出制とすることはできるか」という問 いには「高校の教育目的の達成等の観点から必 要かつ合理的な範囲内の制約となるよう各教育 委員会等において適切に判断すべき。例えば, 個人的な政治的信条の是非を問うようなものに ならないようにするなどの適切な配慮が必要」 と回答している。  このように,具体的な取扱には禁止事項や制 限事項が多い。特に,放課後,休日等に校外で 行われる政治活動の事前届け出は,生徒の行動 を相当委縮させるだけでなく,政治活動の範囲 をどうするかによっては,学校の統廃合問題, バス路線の縮小など日常の生活にまつわるもの 全てが政治に関係していることから,若者の政 治や社会への関心を高めるという選挙権年齢引 き下げの意義を損なうことにもなりかねない。 高校生の政治活動に関する規制は必要最小限の 抑制的なものに止めるべきであり,事前の届け 出は不要にすべきである。  愛媛県下の全県立高校は新年度から校則を見 直し,生徒の校外での政治活動に対し事前の届 け出を義務付けたが,幸い,その後愛媛県と同 様の状況の県は出ていない。むしろ,事前届け 出は不要という方針を決定した教委が増えてお り,4月下旬の「毎日新聞」調査によると15府 県,8指定都市となっている(5月2日付け朝 刊)。 3.3 18歳未満の者の選挙運動  欧米では実際の選挙に併せた未成年模擬選挙 が大規模に行われており,我が国でも先駆的に これに取り組む学校,教育委員会,選管が出て きた。また,副教材の実践編には「模擬選挙 (2)実際の選挙に合わせて模擬選挙をやって みよう」が掲載されている。  これまでは,高校生の模擬選挙は,非有権者 の模擬選挙であった。しかし,18歳選挙権の実 現により,同じ高校生の中に有権者が含まれる ことになり,教師の生徒に対する言動,生徒相 互の言動が選挙運動になる場合があることにな った。選挙運動は,本来できるだけ自由である べきものだが,自由を認めすぎると,財力,権 力,威力等によって選挙の公正・公平を欠く恐 れがあるので,様々な規制が設けられており, これに違反すると,罰則がある。このため,副 教材の教師用指導資料は,実際の選挙に合わせ

(5)

た模擬選挙の実施にあたっては,教師及び生徒 が選挙違反をすることが無いよう,かなり細か く留意事項を記載している。実際の選挙に合わ せた模擬選挙は,生の政治に触れる,またとな い争点教育の機会なので,どういう場合に選挙 違反になるのかを良く知り,いたずらに怖がら ず,果敢に取り組んでもらいたいが,この留意 事項を見ると,尻込みする学校が多くなるので はないかと危惧される。  この問題は,18歳未満の者の選挙運動の禁止 (公選法第137条の2)があるために,複雑化し ている。この規定は,小学生を動員した選挙運 動があったことから,多種多様な議論が衝突す る選挙運動に子供たちを巻き込ませない(未成 年者を保護する)ために昭和27年の法改正で追 加されたものである。規制を検討した小委員会 の原案は,未成年者を選挙運動に使用すること を禁止するものだったが,親委員会で未成年者 の選挙運動そのものを禁止し,さらに,国会で の審議の結果,規制の実効性を確保するという 理由で罰則までつけてしまった。禁止の目的は 心身未熟な者の保護であるが,選挙に関する労 務の提供は18歳未満の者にも認められており, 理路整然としない。プレ有権者を保護すると言 いながら,違反したら罰則が科されるというの もはなはだ疑問である。検討を要する公選法の 壁は多いが,少なくともこの18歳未満の者の選 挙運動の禁止規定は,見直しが必要ではなかろ うか。全国高等学校 PTA連合会は,主権者教育 の連続性の観点から「選挙権以外の政治的権利 は高校生全てに一律に保障すべきである」と述 べているが(2015年9月30日「18歳選挙権年齢 引き下げに関する意見(修正版)」),傾聴に価し よう。

4.選挙人名簿への登録

 若い人たちの投票率が低い原因の一つとして, 大学生が住所を移さないことを挙げる人は多い。 全国で初めて大学内期日前投票所を設置した松 山市が,それでも投票しなかった人にその理由 を聞いたところ,「住民票を移していない」とい う人が7割を占めた,という。  協会が2015年6月に行ったネットモニター調 査では,親と一緒に住んでいない大学生のうち, 現在住んでいるところに住所を移していると答 えた人は26.4%しかいなかった。  住所の異動についてネットの書き込みを見る と,親元を離れたとき住所の異動届をするかど うかは本人の自由だという誤解がまかり通って いる。しかし,昭和29年の最高裁判決によると, 住所は「実家がごく近くにあり,休日以外でも しばしば帰宅する必要があるなど特段の事情が ある場合を除き」居住する寮や下宿の所在地に ある。このため,我々も住民票の異動届を行う よう,啓発に努めている。  しかし,住民票の異動が行われたとしても, 転入届があってから3箇月経たないと新しい住 所地の選挙人名簿には登録されず,そこでの投 票はできない。選挙権年齢の引き下げにより18 歳,19歳が新しく有権者となるのは,改正法の 施行日6月19日である。これらの人たちが選挙 人名簿に登録されるのはそれ以降になる。年4 回定時登録の機会があるが,6月1日の定時登 録は過ぎているので,参院選の公示の日の前日 (7月10日投票だと6月22日)(1)に一斉に選挙時 登録される。その時,転入届をしてから3箇月 経っていないと,転入先の住所地の選挙人名簿 には登録されない。6月19日以前はまだ選挙権 がないので,従前の公選法では,転居前の住所 地の選挙人名簿にも登載されておらず,選挙当 日に選挙権があっても(18歳以上であっても), 投票することができなかった。このような問題 を解消するため,2016年1月28日の法改正で, 選挙人名簿の登録日において,旧住所地にその まま住んでいたら3箇月以上経っていたという 人は,旧住所地の選挙人名簿に登録されること になった。この改正により,選挙権はあるのに 投票できないという問題は解消した。しかし登 録されるのは,現住所地ではなく,旧住所地の 選挙人名簿である。今年の春に進学や就職で住

(6)

所を変えた人は,登録日の3箇月前(7月10日 投票だと3月22日)までに転入届をしていない と,旧住所地に行って投票するか,かなり面倒 な不在者投票手続きをしなければならない。  協会の2015年6月の調査から推計すると(表 2参照),6月時点で親元を離れている18歳は 27%(約30万人),19歳は38%(約45万人)で, 18歳で親元を離れている人のほとんど(約30万 人),19歳で親元を離れている(45万人)のうち 住所を移していない人(66.7%,約30万人),併 せて約60万人(18歳,19歳の約1/4)は,自分が 現に住んでいる所で投票できない(2)。18歳選挙 権だ,新有権者だともてはやされ,住所をちゃ んと移せと教えられたのに,投票所に行こうと 思ったら投票できない,このことが,選挙嫌い につながらないことを祈っている。  選挙権が得られた最初の選挙に行くかどうか はその後の投票行動に大きく影響する。3箇月 要件がもたらすこの問題は今後も続く。住所異 動や不在者投票制度の啓発は勿論必要だが,そ れだけでクリアすることは難しい。検討・研究 を要する課題ではなかろうか(3) (1) 今回の参院選は選挙期間が18日で,公示 日は6月22日,選挙時登録は6月21日,その 3カ月前は3月21日であった。 (2) 協会が参院選直後(7月11~14日)に行 った18歳から24歳のネットモニター1,900人 を対象に行った調査(「新有権者等若年層の 参院選投票日後の意識調査」,以下「協会の参 院選後調査」という)によれば,選挙権がど こにあったかという問に対し,「現在住んで いる市区町村にあった」と回答したのは18歳 で67.2%,19歳で66.8%,「実家など以前住ん でいた市区町村にあった」と回答したのは18 歳で23.2%,19歳で22.7%,「わからない」と 回答したのは18歳で9.2%,19歳で10.2%だっ た。 (3) 協会の参院選後調査によれば,18歳,19 歳の不在者投票の利用率は7~8%と突出し て高く(これまでの選挙は,全世代で1%程 度),啓発の効果が覗われる。しかし,18歳, 19歳で投票に行かなかった人がその理由に挙 げたのは,「面倒だったから」や「選挙に余 り関心がなかったから」を押さえて「現在の 居住地で投票できなかったから」が第1位だ った(18歳で30%,19歳で28.7%。) 表2 若者の住所の異動 24歳 23歳 22歳 21歳 20歳 19歳 18歳 52.1 43.1 34.5 39.5 40.0 37.5 27.0% 親と一緒に住んでいない人の割合 75.8 65.9 55.6 39.5 34.2 33.3 24.2% うち,住所を移している人の割合 出典 表1と同じ 公財明推協の「18歳選挙権認知度調査」平27年6月(対象:15~24歳のネットモニター,3,000人)

参照

関連したドキュメント

現行選挙制に内在する最大の欠陥は,最も深 刻な障害として,コミュニティ内の一分子だけ

教育・保育における合理的配慮

○本時のねらい これまでの学習を基に、ユニットテーマについて話し合い、自分の考えをまとめる 学習活動 時間 主な発問、予想される生徒の姿

ンディエはこのとき、 「選挙で問題解決しないなら 新国家を分離独立するという方法がある」とすら 述べていた( Nation , August 24,

アジア地域の カ国・地域 (日本を除く) が,

Hellwig は異なる見解を主張した。Hellwig によると、同条にいう「持参

「文字詞」の定義というわけにはゆかないとこ ろがあるわけである。いま,仮りに上記の如く

何故、住み続ける権利の確立なのか。被災者 はもちろん、人々の中に自分の生まれ育った場