第18号B 昭和58年
名古屋地域の深部地盤構造
I
I
I
やや長周期領域における常時徴動および地震動観測
正 木 和 明 @ 吉 田 厚 司 * ー 成 瀬 聖 慈 *
O
:
n
t
h
e
Ground S
t
r
u
c
t
u
r
e
o
f
N
agoya A
r
e
a
.
IH
O
b
s
e
r
v
a
t
i
o
n
s
o
f
l
-
t
o
-
l
O
Second Microtremors and S
e
i
s
m
i
c
Waves
Kazuaki MASAKI
,
A
t
s
u
s
h
i
YOSHIDA
ネandS
e
i
j
i
NARUSE
ネMicrotremors and日eismicwaves in the frequency range from 0.1Hz to 1.0 Hz w巴reobserved
at the sites in the Nagoya area and their s巴ismiccharacteristics were discussed in relation to
deep structure of the ground. The following results were obtained.
1) Period and amplitude characteristics of microtremors well agreed with that of seismic waves at the site with deposit of about 1000m thickness
2) Predominant period of microtremors and seismic wav巴sagreed with the characteristic
period of the ground which was estimated Irom SH.wave transfar function or Love-wave dispersion curve
3) Therefore, it was reasonable that seismic base of the Nagoya ground was situated on the rock basement し は じ め に 入射地震動に対する地表面付近の地盤の応答を論ずる 除一般には基盤(基盤における地震動は等ししうとそ の上に堆積する表層地盤(表層地盤内で地震動は増幅さ れる〕とし、う二層モテソレが用いられる。両者の境界は「地 震基盤面」と呼ばれているが,具体的にどの深度に、ど の地層にこの地震基盤面を設定すべきかは,考慮すべき 地震動周期,あるいは目的に応じて決定されるべきであ る。今,考慮すべき地震動周期を10秒から1秒(し、わゆ る「やや長周期領域J)とし, この周期領域における表層 地盤の地震波増幅特性を求めようとするならば,地震基 盤 はS波 速 度Vs=3.0km/sの 層 に 設 定 す べ き で あ る1)。 第1報2) 第2報3)において人工地震探査により得られ た湯の山から@鍋回。豊橋に至る名古屋地盤の深部地震 波速度構造を報告したが,名古屋地盤におけるS波速度
V
sニ3.0km/s層 は 濃 尾 平 野 南 西 部 で 最 も 深 く 深 度2.0 km,三重県北部@知多ー西三河部で1.0km,鈴鹿・三ケ 根山では地表部に露頭している。このVs=3.0km層は 地質的には第三紀中新統の下位に存在する層(古生層な いしは花崩岩〉に対応していると考えられる。桑原市)は 猿投山から桑名に至る深部東西地質断面を報告している*
愛知教育大学地学教室(AichiUniversity of Education) が,この報告によれば,第三紀中新統基底面(即ち, Vs= 3.0km/s層上面〕は濃尾平野西部で深度2.0km,名古屋 市中央部でO.8km,猿投山で露頭している。著者他の報 告,桑原の報告を総括すると今,地震基盤として設定す べきVs=3.0km/s層は,濃尾平野南西部を基底とし猿 投山。鈴鹿。三ヶ根山を縁とする盆状構造を形成してい ると言えよう。 このような盆状構造を持つ名古屋地盤の振動特性が如 何なるものかを追求することは興味深い。本報告は,こ の盆状構造をほぼ東西に横断する猿投山から湯の山温泉 に至る測線上における振動特性に関し,常時微動,地震 動の両国から追求するものである。 2.微動園地震の観測方法 2. 1 観測地点 観測地点の位置,および地質概要を図1に示す。また 観測地点所在地を表 1Iこ示す。微動観測点はほぼ岩盤上 と思われる愛工大(サイト 1),湯の山温泉(サイト35) を両端とする測線上に 1~2 km間隔で設置した。地震 動観測は,岩盤上と思われる愛工大(AIT),最深部の弥 富中学(YTM),中間部の名古屋大学(NUV)の3点に 設置した。司 ・ 成 瀬 聖 慈 厚 回 明・吉 木 和 正 160 微 動 お よ び 地 震 動 観 測 地 点 番 所 在 地 番 所 在 地 番 所 在 地 号 号 号 1 愛 知 工 大
(A
1T)
13 中 島 小 24 大山田団地第二公園 2 青 少 年 公 園 14 正 色 小 25 大 山 田 団 地 中 央 3 愛 知 芸 大 15 豊 治 小 26 桑 名 工 業 高 4 愛 知 学 院 16 舟 入 小 27神 田 小 5 高 針 中 17 蟹 江 高 28 三 和 小 6 神 丘 中 18 十四山村幼稚園 29 保 々 中 7 椙 山 女 子 大 19 弥 富 中(YTM)
30 千 種 小 8 名 古 屋 大(NUV)
20 桜 31 池 底 9 名 商 大 附 属 高 21 長 島 中 部 小 32 小 種 小 10 白 金 小 22成 徳 中 33 湯の山ゴノレフ場 11入 賞 属 小 23A大 和 小 34 四 日 市 職 員 寮 12 篠 原 小 23B大 山 田 川 浄 水 場 35 湯 の 山 温 泉 表1'
"
~
EE 高 8 . ト E A 品 観 測 日 時 を 表2に示す。徴動は移動観測とし 3班 が それぞれ 1 時~2 時間間隔で移動の上,各地点で15分間 の記録を収録した。地震観測は常時観測とし,スタータ ーの始動により地震時のみデータレコーダーを作動させ るとともに,BCD
コードにより記録時刻を収録する方式 を用いた。 図1 2.2 観測jシステム・観測日時 地 震 計 は 振 動 技 研 製PELS-73型 を 使 用 し た 。 出 力 は 速度波形とし,増幅器,ローパスフィノレターを通した後, 磁 気 テ ー プ に 収 録 し た 。 地 震 計 の ダ ン ピ ン グ 定 数 は0.7, 出 力 感 度 は2.1V;註ineとした。地震計国有周期,ローパ スフィノレター・カットオフ周波数は表2に示すように, 多少変更があった。 観 測 シ ス テ ム お よ び 観 測 日 時 場 所 日 時 地 震 計 固 有 周 期 ローパスアィノレター 微 動 観 測 サイト 1 ~22 1981.8 . 24~26 8s
e
c
2s
e
c
サイト 22~35 1982. 8 .28 8s
e
c
0.5s
e
c
AIT
,NUV
,YTM
1982.8 .25 10s
e
c
0.5s
e
c
地
AIT
1982. 5 .22~ 10s
e
c
0.5s
e
c
観 測 震NUV
1982. 6 .12~ 10s
e
c
YTM
1982. 7 .12~ 10s
e
c
0.5s
e
c
表2 2に示す。各サイドで5秒付近にスベクトノレピークがみ られるが,サイト12からサイト 5に か け て は ピ ー ク が5 秒から2秒へと系統的にずれていることが注目される。 サイト22から35にかけては2秒 付 近 に 顕 著 な2次ピーク 3.微 動 観 測 結 果 3.1 フーリエスベクトノレ 各地点で得られた微動記録のフーリエスベクトノレを図日 凶 百 円 三 口 口 、 ω m n
'
"
~ ...____. ,S刷AGE[
E S H H H H H H H H H にο ∞~' " 目 立 凶 N... 0 H Cコ 四 国 出 C己 t:::3 c:式 NC当陪仁三 」ムー_L_..L._.l " ~羽耳 口.suz~ 附S_'--- ~~主盟主S ド50R NAGOYA S1N, ご、"._2,的ゼ>-_.-.--ーーー、¥、r--ーー---WLJLート一一一一一一-一一! ----_::;--l 、 1_
一
一
戸
〆 / ーL
「 べ 、 ' - - ー / ♂ -、 ー ム 広 山 一 一 一 、人
p 1 ----ーー_ _ -一
戸
_
_
H G 1 5,(J(Mjs 、¥ナァー---1 "、ー~-_---~ i 図2 微動のフーリエ,スベクトノレ(上〕と深部地盤構造2ト 5)(下〉 A (沖積層), B (洪積層), p (鮮新統), M (中新統),数字はP波速度 ロ m Z 耳 、 否 こでは卓越周期(Tp)と定義する。図3に卓越周期Tpと 地盤構造との関係を示す。大きい丸印は第一卓越周期を, 小さい丸は第二,第三の卓越周期を示す。前節で、述べた ようにサイト 1から5までの第一卓越周期は5秒付近に ある。サイト 6では第一卓越周期は 2秒程度になり,サ イト 12にかけて次第に長くなり,ついには 5秒に到る。 サイト12以西では,卓越周期の変化は小さい。サイト 23 以西の卓越周期の分布には多少ばらつきがみられるが4 秒から5秒程度であり,第二卓越周期が2秒付近に存在 がみられる。図2の下段に地質断面図が示されている。 サイト22以東は桑原5)による地盤モデノレで、あり,サイト 22以西は正木他3)によるP波速度構造モデノレである。既 に述べたように,P
波速度でV
p=5
,O
k
m
/
s
の層はサイ ト22以東の岩盤層に対応していると考えられる。スベク トノレと地盤構造との対応を以下の節で詳しく述べること にする。 3.2 卓越周期と地盤構造との関係 図2Iこ示されたスベクトノレのピークを与える周期をこ。
10 20 11 DISTANCE, Km 30 40 50 60l
O
R
可→
Z l' ヌヨ
2 3 ロ u , , f j , JMHJ' ヨ 〆 -,一 ,
F 4 F一
〆
' 4 F e f p F 寸 J / / -d 一﹁ F 一 J 戸 一 f p 一 日 F F F F一 一
r -' t -, t 一 , F -F ♂ -d 〆 一 F 戸 1 ! ? 1 3 J ι d p 一 F一
M -A =一
一
-l -F ,h
-R u
-﹄ ZI--11 ﹄ ﹃ -、 、
:
、
! 、
!
、
:
、
(
(
1
j
ヘ 一 一 ¥ I F -S J -, t 一 一 m r S 一k -l u : 一m
一 引s
一 山 一 l -m一
3 山 哨 トc
-! 司 、;
-、 、 、 、 、 ! 、 、、 、
、 、 、 5 7 9 13 15 17 19 25 23822 212
7
29 31 33[
;
1可 2歪 0 30 4"i? 帥5R
2
3
3
δ
0 4~ ご司 5肌 6~ .L---L e -@ a a ' @ @ @ @ @ @ @ 。.
.
.
.
@ ' <1 e CI e @ @ @ 富 @ @ 富••
@ @・ @ ・
@ @ @ @ @ @ @ @ @ @ @ @ @ @ @ @ @ @ @ @.
.
.
@ @ @r
O
)> l玄 r 唱 flO刃 1 )> ~ '-i 1__0 l霊O スベクトノレ比の卓越周期T,および振幅比 偽深場 @ 働雌@ @ @ @ 35 ] 日 @ 書 @ @ 事 @ 串.
.
:
.
.
.
.
"
0.
,
.
.
@ @ @ ・ @ ⑧ @ @ @ @ @ @ @ @ @.
.
.
@ す す → ー @ A @.
.
.
.
.
.
.
.
@書.. . . : @ @ @ @ @.
.
.
@ ag
J...J.__J. i @ ムムよム..LI @ @ @ @ @ ; L_l__.l.,
III.. フーリエスベグトノレの卓越周期Tp, 深部地盤構造2ト 5) 図3162 正 木 和 明 , 吉 田 厚 司 ・ 成 瀬 聖 慈 する。 のサイトでみられる5秒付近の卓越周期は,したがって サイト 5から12にかけての卓越周期の変化は西方へ傾 振源特性を反映したものに他ならない可能性が強い。 斜する基盤構造と良く対応している。しかし,サイト12 振 源 か ら の 微 動 伝 播 の メ カ ニ ズ ム は 明 ら か で な い の 以西では基盤構造が次第に深くなるのに対じ,卓越周期 で,本論文ではこの伝播特性については触れず,岩盤内 の変化はみられない。また,サイト 5以東,サイト23以 における振動特性は各サイトにおいて同じであり,岩盤 西では基盤構造が浅いにもかかわらず卓越周期は4ない から入射した波動が表層地盤の振動特性に対応して変換 し5秒と長い。これは, ¥,、かなる理由によるものであろ されるものと仮定する。サイト 1と35は岩盤上の地点と うか。 考えてよいので?各サイトのスベクトノレf
,
(ω)とサイト 谷 口 他6)は1
秒から1
0
秒 の 領 域 の 微 動 の 周 期 が 外 洋 波1
あるいはサイト35のスベクトノレfo(ω〕との比f*(臼〉二 浪の周期と良い対応を示すことを岩盤上の数点における f,
(ω)/fo(ω) (f* (ω〕をスベクトノレ比と呼ぶ〕は表層地盤 微動観測l結果から得ている。外洋波浪の周期は通常1
0
秒 の振動特性を示す。サイト 2~22 はサイト 1 を,サイト 前後であるので,微動の周期は5秒前後となる。大部分 23~34 はサイト 35 を基準サイトとしスベクトノレ比を求め て3 れ』DEPTH
,
km
P
E
R
I
O
D
,
s
e
c
。 戸 内 約 、 才 師w
ト 底 ,m
0 日 4 i ~ I rr ! ___j _ij . 寸 ⑮ M 寸 口o
~。
電電量ロ
lO。
曜華 凶齢宮 ~4a
重量 p斡
。
3 ー 臼?
噛
i> 長 O<
f
b
も
8
ロ
ロ f♂3 ぱ3。
。桜番号重量4 O~~ め 0ロ
目 〉ロ
p、
t 重量 ~ 0 0 <l ロσ
E
@ 。 @ 。 ロ 亀 炉、4 官、叫 母語 図 4 深部地盤構造(上〉と微動卓越周期〔下)0 フーリエスベクトノレの卓越 周期(1), スベクトノレ比の卓越周期(2),S波伝達関数のピーク周期(3), ラフ およびレーレー波群速度分散曲線極小周期(4および5)地 層 S波速度 密 度 層 厚 (m) (m/s) (g /cm') N U V Y T M D:洪積層 350 1. 95
。
340 P:鮮新統 680 2.10 500 960 M:中新統 ,1600 2.30 250 700 B 岩 雄 3,000 2.60 地盤構造モデ、ノレ 表3 致しない。結局,サイト 3から10にかけてはS波の多重 反射あるいはラブ波の分散で,サイト10から15にかけて はラフ波の分散て、卓越周期が説明で、きるが,サイト16以 西については議論の余地がある。 4.2 台風下における微動観測 サイト16からサイト22にかけての微動卓越周期は理論 的に期待される周期に比べて短い。その理由のひとつと(
υ
出的・凶 Z H X ) ω O ﹂ 凶 H J ト } E r 量 ︽ E U { E 2 0比 た。スベクトノレ比f*(日〕の卓越周期をT
rとする。T
rはサ イト 5以東では1.5秒と短く,基盤が極めて浅いことと良 い対応、を示す。またサイト12以西では5秒から6秒へと, 周期が長くなり,西方に深くなる基盤構造と良い対応を 示す。サイト22以西の卓越周期は1.5秒ないし3秒であ り , これまた,基盤が浅くなっていることと良く対応し ている。 ところで各サイトの岩盤内における微動の振動特性は 同じであると仮定したが, この仮定が成立している保証 は全くない。多賀他川主,数秒程度の微動には明らかに伝 播 性 表 面 波 と し て の 特 性 が み ら れ る こ と を 指 摘 し て お り , この場合にはスベクトノレ比の概念には物理的意味を 与えにくL、。しかし,スベクトノレ比から求めた卓越周期 が地盤構造と良い対応を示すことも事実であり,今後詳 細な検討が望まれる。 3.3 振幅比と地盤構造との関係 磁気テーフ。に収録した記録をプレイパックし,ベンレ コーター記録紙上に波形を再現し,その振幅を読みとり 「振幅」とする。ところで微動の振幅は時間的に変動す ることが知られている。時間変動は各サイトで同じであ ると仮定するならば,基準点における振幅で各サイトの 振幅を徐した値「振幅比」は時間的変動を取り除かれた 量となる。 サイト22以東はサイト 1を基準に,サイト22以西はサ イト35を基準に(サイト22は重複〉求めた振幅比を図3 第4
1
段に示す。振幅比は,サイトl
からサイト19にかけ て増大し,サイト19から22にかけて減少,サイト23から 30にかけてはほぼ一定の後,サイト35にかけて減少する。 第1段に示した地盤構造との対応は極めて良いことがわ かる。5
0
h A
1 T
/
I
J
i
liul/YTWAIT
1
0
協
相んいん
門 V、
iAi
h
.
l
、
J
i
入
¥
1
ν ¥n
,,-
.
r
¥
W ¥ /'"~
ヘ
!
?
t
f
¥
:
~,~
tJぜ
l
♂
日
‘
1
V
1
ももi
i¥.八N
U
V
/
A
I
T
ρ'l/
、
/J1
。
戸
︿
江
ぜ
戸
屋
∞
2 3 4 5
P
E
R
I
O
D
,
SB: 1982年8月25日の3点同時微動観測 におけるフーリエスベクトノレおよび スベクトノレ比 (AITを基準〉l
0
.
5
1
図54
.
1
卓越周期に対する理論的考察 図4に示すような地盤構造を仮定し,s
波多重反射法 によりS
波伝達関数を求め,伝達関数のピークを与える 周期を求めた。またレ レ一波,ラブ波の群速度分散曲 線を求め,群速度極小を与える周期を求めた。サイト 1 からサイト22に至るこれらの周期,および観測微動の卓 越周期を図4下段に示す。 サイト 3から10にかけてのスベクトノレ比の卓越周期は S波伝達関数ピ ク周期によく一致している。しかし, サイト11以西におけるS波 伝 達 関 数 ピ ー ク 周 期 は 地 盤 構造に対応して10秒程度まで長くなり,卓越周期とは一 致しない。一方,ラブ波群速度極小周期はサイト 6以西 において卓越周期と比較的一致しているが,サイト15以 西では卓越周期がやや短くラフ、波群速度極小周期とはー 4.微動観測結果に対する考察1
6
4
正 木 和 明 ・ 吉 田 厚 司 ・ 成 瀬 聖 慈 して,微動の振源そのものに,長い周期成分が含まれて いないことが挙げられよう。名古屋地盤の微動の振源は 外洋波浪である可能性が強いが6) 外洋波浪の半周期は 通常5秒である。したがって, 5秒より長い周期の波は 表層地盤で励起されない。このことが,サイト1
6
以西で の卓越周期が5秒にとどまっている理由のひとつと考え られる。台風通過時には外洋波浪の周期a振幅は増大す る。したがって,台風通過時においては表層地盤内でよ り長い周期の波が励起されている可能性がある。このよ うな自的のもとに,台風通過直前の1982年8月25日,サ イト 1(AIT),サイト 8(NUV)およびサイト19(YTM)で微動の同特観測を実施した。 得られたスベクトノレを図5に示す。各サイトとも卓越 周期は7秒ないし8秒と,図3Iこ示された周期よりかな り長い。したがって,図3に示された 5秒付近の卓越周 期は振源が高々5秒程度の周期しか持たないことに原因 しているようである。
図6にAITを基準点とした場合のNUV,YTMのス ベクトノレ比を示す。 NUVのスベクトノレ比には2.5秒に鋭 いピークがみられる。図3の結果とも合わせ考えると UNV におけるスベクトノレあるいはスベクトノレ比には振 源特性の時間的変動にかかわらず常に2.5秒の卓越周期 が存在すると言える。また図6に破線で示すような S波 伝達関数あるいはラブ波振幅応答関数のピーク周期とも 一致する。これらの事実から,サイト 8あるいは近傍の C:J
戸
1
0
〈ζ 丘二 ー」 〈主 口三 ト-u W.J ローω l
1N
U
V
Eコ ~1
0
Cピ=-
g
J トー しJ W.J 口ー 仁/) ー 宅に 4 12
J 1H 5 7
1
0
P
E
R
I
O
D
, SEC 図6 微動スベクトノレ比(実線),s
波 伝 達関数(破線〕およびラフ波振幅応 答 関 数 日 点 鎖 線 〕 各サイトのスベクトノレあるいはスベクトノレ比の卓越周期 は 地 盤 の 振 動 特 性 を 反 映 し た も の で あ る と 言 え る 。 YTMのスベクトノレそのものの周期は7秒であるが, ス ベクトノレ比の卓越周期は3秒ないし5秒である。図3の 結果とも合わせると 5秒の卓越周期の再現性は良いよう である。しかし,この5秒の卓越周期を理論的に説明で きないことを考えると地盤の振動特性を反映したもので あるかどうかについてはまだ検討の段階にあると言えよ う。 4.3 振幅比と基盤深度との関係 3.3節で、述べたように振縞比と地盤構造との対応、は よい。そこで,サイト 1から22における振幅比と,岩盤 までの深度との関係を調べた。図7に両者の関係を示す。 10 E J Z 、 口 一 ト 4 Z ω 口 コ ト 日 ﹂ 止 E d。
〆 0 0 0 0 0 / l O / O /¥ 、
O
8
n 可 d 3 O ハ 川 O + マ L h 白 ﹃ 烹 ノ 一 一 n k 0/0
/ 。 00 0。
。
。
。
。
1.0 llEPTH TO臥SEト'ENT,KM 図7 振幅比 (R)と岩盤深度(Z)との関係 2.0 両者の関係を一次式で近似すると, R=3.4z+0.39 (ll'cニ0.84)R
振幅比 z.岩盤深度 (km) ll'c .相関係数 となる。 振幅比と岩盤深度とが比例j関係にあることは,八戸に おける例ベ新潟における例9) ロスアンジエノレスにおけ る例9)にも示されている。 サイト23以西における振幅比を上式に代入して岩盤深 35 33 31 29 27 252
3
B
22 ニ二二ニニム A。、二'-_
~'~~"2!:___一ーへそこ
。 ¥ ¥ 、3町Okm/s0 '- p'D O B t - r - - 1 0 - L。¥三
5bk附S。
、
M
-B
微動の振幅上むから推定した岩盤深度 (丸印〉とP
波速度構造3)とは,微動の振動基盤が岩盤層で、あることを示すひとつ の証拠であろう。ただし,比例係数ならびに定数項は地 域によって異るので全ての地域において上式より岩盤深 度を推定することはできない。しかし,少くとも名古屋 地盤においては上式は岩盤推定の有力な手掛りとなるで あろう。 度を求めた結果を図8に示す。得られた岩盤深度は爆破 実験から得られたP波速度5.0km/s層の深度と一致す る。このことはサイト 1から 22における岩盤層とサイト 23から 35における
V
p=5.0km/s層とは同じ地層である ことを示している。岩石物性的にみて岩盤のP
波速度が 5.0km/sという値はおかしくなし、。 振幅比と岩盤深度との聞に上述の経験式が成立するこ 表4 地震概要 地震番号 発 震 時 刻 北 緯 東 経 深Ckm度〉 M 場 所 11 1982年6月21日9時23分 34040' 137"04' 40 5.0 渥美湾 12 6月22日O時57分 33053' 135026' 60 5.3 和歌山県中部 15 6月30日10時58分 44002' 151000' 40 7.2 千島中部 25 7月23日23時26分 36015' 141" 55' 10 7.0 茨城沖 26 7月23日23時50分 36018' 142001' 20 5.3 関東東方はるか沖 42 11月5日O時55分 38・
05' 143000' 40 宮城県沖5
.
地震観測結果 5.1 地震概要 解析に用いた地震の概要を表4に示す。マグニチュー ド,震源距離は様々である。地震11,12はマグエチュー ド5クラスの中距離地震,同 15,25はマグエチュード 7 Fラスの途地地震,同26,42はマグニチュード 5!-'ラス の遠地地震である。地震25の記録は主要動部分において n u lJ
7
T AJ
A R a dJ
c
J
E
-S・
d h u -, 四 n u -仇 U・
4 胃 J Y A -n n -r E -O 号 L つ 一[
1
3 Q R e u -鳴 マ , , F2C E 判 S , n U 3 0 I R E p n t ~ 0 :.: 1 EQ,12, WAKAYAMA,g
-
l
Lfu
ヘ九、 (NS) ~ 1凡 ^^
.
",....NUV .3-2FV.町、~\,.."'"一、lgl
ITノ ー¥二ー に-3 t Eu
.
:
-4I I I I II111I -4 1 2 3 4 0 7 10 1 PERIOD, SEC 州v
'
a H ν 恥 、 , A D H H d 州 、 仏 一 hu r A
-3 ー1 ー2 -3 2 3 Ll:: 7 lQ 1 2 3 4 5 7 10 PERIOD, SEC ?ERICQ, SEC 図9 AIT(愛工大), NUV(名大〉におけ る地震動フーリエスベFトノレ オーパースケールしているが,オーパースケーノレ部分を 除いた主要動に続く部分のみ解析している。 5.2 スベクトノレ解析結果 得られたスベクトノレを図9,10に示す。地震11,12の スベクトノレには短周期成分の卓越がみられるが, これは 両地震がマグニチュード5クラスの中距離地震であるこ とに原因する震源特性が現われているものと考えられ る。他のスベクトノレには長周期成分も含まれているが地 2 3 4 5 7 1 0 PERI0D,sfc -1r
EQ26,MIYAGIOKI-1 ~ '?I
I,,,rHl-':..,~人二一 (NSl I_JV-旬
、
、
甲
,
、
富-2r _.、、
言ヲド九
n
'
1'
"
.
.
.
.
_
、一 ...ーシ当
ト-~.-~ ~ ~-
5
t
2 3 4 5 7 1 0 PERIOD.SEC -1rEQ.42,KANlOOKI,-、、 NS) ./~~YT問、“ 面-21- ι d r 凶 … ~ l,-.'¥(5
-
3
当
ロ
4 t 宅-51 I" ,., -5 ~ 1 2 3 4 5 7 10 1 PERIOD,SEC EQ,25,IBARAKI (UDl 司 ム 3 E且26,MIYAGIOKI 4ト
ペ
b J U M角 川3~へメヒ、、、~'
-~ -5 1 2 3 4 5 7 10 PERI由.SEC 1 ... EQ,句2,KANTOOKI (UD) 内 LYTM、,~
-,
- I^
、
-
- 〆 、…
3ザ
レ
Jべ'J' 、AIT"
'
-
-
、
-4 2 3 4 5 7 10 PERIOD,sEC 図10 AIT(愛工大), YTM(弥富中〉にお ける地震動フーりエスベクトノレ166 正 木 和 明 ・ 吉 田 厚 司 ・ 成 瀬 聖 慈
2
3
与P
E
R
I
O
D
,
s
E
C
図11 AIT(愛工大〕を基準としたNUV(名大), YTM(弥富中〉の地震動スベFトノレ比
N
U
V
(
N
S
)
一
一
E
Q
,l
l
一
一
E
Q
,1
2
-.-EQ
,
1
5
:
'
.
.
0
F H J 司 64 口 -ト J 4 v -J d α トu
u
a
一
ω0
.
5
i2 3
持5 7 1
0
P
E
R
I
O
D
,s
E
C
Y
T
r
.
'
(
N
S
)
5
0
。 に
E
d
匹
Uぜ
ω
l
0
,
5
1
震26,42のスベクトノレ振幅lオーダー程小さい。 震源特性の影響をとり除くために, AITのスベクトノレ を基準としてNUV,YTMのスベクトノレ比を求めた。得 られた結果をそれぞれ図11に示す。 NUVのNS成分ス ベクトノレ比には 2~3 秒に顕著なピ-!1がみられること が注目される。ピーク値は5
~10であり,2
~3
秒の波 が大きく増幅されている。上下成分のスベクトノレ比には 1.2秒のピ-!1がみられるがNS成分と同じように, 4秒 以上でのスベクトノレ比は小さい。 YTMのNS成分のス ベクトノレ比には多小のばらつきがみられるが 2~3 秒, 5~6 秒にピークがみられる。上下成分のスベクトノレ比 には3秒付近に強いピークがみられる。 5. 3 地震動特性と徴動特性との比較 地震動のスベクトノレ比と徴動のスベクトノレ比との比較 を図12に示す。地震動のスベクトノレ比はNUV,YTMそI
'
l
U
V
(叩)一
一
一
E
Q
,l
l
--EQ.12
-.-EQ
,1
5
1
8
Fコ
l
﹃3 4 ﹁ ﹁ J n 川 U7
1
0
5
0
Y
T
M
(
U
D
)
一一E
Q
,2
5
--EQ
,2
6
_
.
-E
Q
,4
2
言
5
a
l
田 ・0
,5
1
7
1
0
れぞれについて3つの地震動スベクトル比の包絡線で示 しである。また,徴動スベクトノレ比は1982年8月25日に おける同時記録から求めたものである。 NUVにおける地震動と徴動のスベクトノレ比は一致を 示している。1.1秒, 2.5秒にいずれも明瞭なピーFがみ られる。また, 4 ~ 5秒にも弱いながらピークがみられ る。増幅率(スベクトノレ比の縦軸の値を仮にこう呼ぶ〉 も両者は等しく,地震動スベクトノレ比の包絡線内に徴動 スベクトノレ比が収っている。図 6に示された S波伝達関 数,ラブ波振幅応答関数との一致もよし、。 YTMにおける両スベクトル比の一致は必ずしも良く ない。微動のスベF トノレ比は 2秒以下と 3秒にピークを 持つのに対し,地震動のスベクトノレ比の増幅率はこれら の周期においてむしろ小さい。しかし5
秒付近のピー クは一致している。また振幅比と岩盤深度とが対応することから岩盤が微動 の振動基盤となっていると考えられる。
(
3
)
このことは,岩盤を振動基盤として得られたS
波 伝達関数あるいはラフ波群速度分散曲線から期待される 卓越周期と測定微動のスベクトノレあるいはスベクトノレ比 の卓越周期とがサイト 3から15にかけて一致することか らも支持される。 (4) サイト 8 (NUV)における地震動のスベクトノレ (比〕の卓越周期は 2~3 秒であり,微動の卓越周期, S波伝達関数ピーク周期あるいはラブ波群速度分散曲線 極小周期と一致する。また増幅率の一致もよい。したが って,中新統下の岩盤を「地震基盤」と考えることは極 めて妥当である。(
5
)
サイト19(YTM)の微動および地震動のスベクト ノレ比には5秒に弱L、ピークがみられる。しかし, このピ ークを理論的に説明することは困難である。 (5) 以上の考察から,サイト 1 (猿投山付近〉からサ イト15(庄内川付近〕にかけての地域では第三紀中新統 の下位に存在する岩盤を「地震基盤」と考えてよい。ま たサイト22(桑名〕以西についても地盤構造,微動特性 から推測して岩盤を「地震基盤」とみなしてよいと考え られる。濃尾平野中央部においてこの岩盤を「地震基盤」 とみなしてよいかどうかは今回の研究からは不明であ7
‘
、
‘
、
、
、
、
‘
1、 、
、
、
、
、
、
、
、
、
‘
/ / / /¥
、 、
¥,
,
,
s ' t, ,
S111
r rN
U
V
R J3 4
F
'
E
I
O
D
,SEC
YTr~2
コ
O-51
r::'i .JVl
。 一 ↑
︿ 出
。
] i F ︿江 J J 旬 、 E ト U U 門 出 Jdz ト u u t ω 本研究の一部は文部省科学研究費「深層地震基盤地形 のやや長周期微動による探索(代表者,久保寺章京大教 授)Jによって行われた。太田 裕北大教授をはじめグル ープの方々には多大な御尽力をいただいた。ここに感謝 の意を表する。解析に際しては多賀直恒名大助教授,富 樫 豊助手に御助力いただいた。感謝の意を表する。 また,愛教大地学教室4年生原 久子,愛工大土木工 学科4年生境田龍太郎,紫田弘毅の諸君には観測。解析 両面で手伝っていただし、た。合わせ感謝の意を表する。 尚,計算には名大計算センターを利用した。 る。 謝辞 1C'. -ιv 6.まとめ(微動および地震動振動特性と深部地盤構造 との関係)7
2
3 4 5
P
E
R
I
O
D
,sEC
地震動 (EQ) および微動 (M1) のスベクトノレ比 図120
,5
1 )瀬尾和大 地震基盤の工学的意義,文部省科学研究 費自然災害特別研究研究成果, No.A-54-3,地震活動 度と震害分布, 20-23, 1979 2 )正木和明,飯田汲事 名古屋地域の深部地盤構造1, 愛知工業大学研究報告B,No.16, 165-173, 1981 3)正木和明,谷口仁土,飯田汲事:名古屋地域の深部 地盤構造II,愛知工業大学研究報告B,No.17, 159 171,1982. 参考文献 微動および地震動の周期@振幅特性と深部地盤構造と の関係を「地震基盤」とし、う側面から追究してきt
c
.
o本 論文で得られた結論は次のように要約されよう。 (1) 微動の卓越周期はサイト 1~5 で 5 秒,サイト 6 ~12 では 2 秒 ~5 秒へと変化,サイト 12~35 で再び 5 秒 である。サイト 6~12 での卓越周期変化は西方へ傾斜す る地盤構造と対応するが他のサイトでの対応はみられな い。岩盤サイトでのスベクトノレを基準とするスベクトノレ 比を用いると卓越周期はサイト 1~5 でl. 5秒,サイト 22~35 でl. 5秒 ~3 秒と短くなり,地盤構造との対応は良(
2
)
岩盤サイトを基準とした振幅比は地盤構造と良い 対応を示す。振幅比と中新統基底面深度,振幅比とP波 速度5.0km/s層の深度との対応から,中新統の下位に存 在する地盤はP波速度が5.0km/sの岩盤と推定される。168 正 木 和 明 ・ 吉 田 厚 司 ・ 成 瀬 製 慈 4)桑原 徹:濃尾傾動盆地の発生と地下水の第四系, 地盤沈下の実態とその対策に関する調査報告,愛知 県環境部, 109-182, 1975. 5) 桑 原 徹 濃 尾 盆 地 と 傾 動 地 塊 運 動 , 第 四 紀 研 究 , Vol.7, No.4,235.247, 1968.
6
)
谷口仁士,飯田汲事,多賀直垣,富樫豊,宮崎正: 濃尾平野におけるやや長周期微動特性,地震学会予 稿集, 191
.
1982.7
)
多 賀 直 恒 , 富 樫 叢 , 谷 口 仁 士 , 宮 崎 正 : 濃 尾 平 野の微動特性(5),自然災害科学総合シンポジウム予 稿集, 617-618. 1980. 8)坂尻直己:私信, 1982.9) Kagami H., Duke C. M.,