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その他/SP03 栂尾 016‐026(4)Y◎

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(1)

C E S T イ メ ー ジ ン グ は 近 年 M R I に お け る 新 た な 分 子 イ メ ー ジ ン グ 手 法 と し て 、 そ の 発 展 と 臨 床 応 用 が 期 待 さ れ て い る 分 野 で あ る 。 C E S T は 2 0 0 0 年 に 初 め て 提 唱 さ れ た 新 し い 概 念 で あ り 、 日 本 に お い て ま だ 広 く は 認 識 さ れ て い な い 。 従 来 の M R I で は プ ロ ト ン の 密 度 と 緩 和 時 間 に 基 づ い て 画 像 の コ ン ト ラ ス ト を 得 て い た が 、 C E S T イ メ ー ジ ン グ は 全 く 新 た な コ ン ト ラ ス ト メ カ ニ ズ ム に 基 づ い て お り 、 従 来 の 手 法 で は 不 可 能 で あ っ た 、 生 体 内 に 存 在 す る 種 々 の 化 合 物 の マ ッ ピ ン グ や pH な ど の 生 体 内 環 境 の 情 報 の 取 得 を 行 う こ と が で き る 。 具 体 的 に は 、 中 枢 神 経 領 域 で は 可 動 性 タ ン パ ク / ペ プ チ ド 中 の ア ミ ド に 基 づ く 脳 腫 瘍 の 悪 性 度 判 定 や 進 展 範 囲 の 評 価 、 放 射 線 壊 死 と 脳 腫 瘍 と の 鑑 別 、 脳 梗 塞 に お け る pH の 評 価 な ど 、 中 枢 神 経 領 域 以 外 で は 肝 臓 や 骨 格 筋 に お け る グ リ コ ー ゲ ン の 測 定 、 関 節 軟 骨 の 変 性 疾 患 に お け る グ リ コ サ ミ ノ グ リ カ ン の 測 定 な ど が 挙 げ ら れ る 。 た だ 現 時 点 で は 基 礎 的 研 究 が 中 心 で 、 臨 床 応 用 は こ れ か ら で あ る 。 こ こ で は ま ず C E S T の 基 本 原 理 を 紹 介 し 、 神 経 領 域 を 中 心 と し た 今 後 の 臨 床 応 用 の 可 能 性 に つ い て 言 及 し た い 。

CLINICIAN ’11 NO. 602 16 (1098)

(2)

C E S T は Chemical Exchange Saturation Transfer の 略 語 で あ り 、 元 来 は N M R ス ペ ク ト ロ ス コ ピ ー に お い て 知 ら れ て い た 現 象 で あ る 。 古 く は 1 9 6 3 年ForsenHoffman ら に よ っ て 報 告 さ れ て い る が 、 2 0 0 0 年 にBalaban ら が こ の 現 象 を C E S T と 名 付 け て 再 認 識 さ れ る こ と と な っ た 。 C E S T と は プ ロ ト ン 原 子 核 が 化 学 的 に 異 な る 環 境 間 で 交 換 ︵Exchange ︶ さ れ る 現 象 を 指 す 。 プ ロ ト ン の 磁 化 移 動 ︵ Magneti-zation T ransfer ︶ に 近 い あ る い は そ れ に 包 含 さ れ る 現 象 で あ る が 、 従 来 の 磁 化 移 動 が 背 景 の 巨 大 分 子 に 存 在 す る 非 常 に 広 い 周 波 数 帯 を 持 つ プ ロ ト ン と バ ル ク 水 の プ ロ ト ン と の 間 で 移 動 が 起 こ る 現 象 を 指 す の に 対 し 、 C E S T は あ る 化 合 物 に 組 み 込 ま れ た 特 定 の 周 波 数 を 持 つ プ ロ ト ン と バ ル ク 水 の プ ロ ト ン の 間 で 交 換 が 起 こ る 現 象 を 指 す 。 こ の よ う な 特 定 の 周 波 数 で の 交 換 を 示 す プ ロ ト ン を 含 む 化 合 物 をCEST agent と 呼 ぶ 。 生 体 組 織 内 で は ア ミ ド ︵-NH ︶ あ る い は ヒ ド ロ キ シ 基 ︵-OH ︶ の プ ロ ト ン が 周 囲 の バ ル ク 水 と 交 換 さ れ て い る た め 、 こ の 2 つ が 内 因 性 C E S T イ メ ー ジ ン グ の 対 象 と な る 。 ま たCEST agent を 造 影 剤 と し て 投 与 す る 外 因 性 C E S T イ メ ー ジ ン グ も 可 能 で あ り 、 そ れ に つ い て は 後 述 す る 。 C E S T の 基 本 的 な 原 理 を 図 ! に 示 す 。 ま ず M R I の パ ル ス シ ー ク エ ン ス 中 の プ レ パ ル ス と し て 、 対 象 と す る 交 換 可 能 な プ ロ ト ン の 周 波 数 を 選 択 的 に 抑 制 す る プ レ サ チ ュ レ ー シ ョ ン パ ル ス を 使 用 す る 。 プ レ サ チ ュ レ ー シ ョ ン パ ル ス を 照 射 す る と 、 バ ル ク 水 と は 異 な る 周 波 数 に 存 在 す るCEST agent の 交 換 プ ロ ト ン の 信 号 が ま ず 抑 制 さ れ る 。 こ の プ ロ ト ン は 一 定 の 速 度 で 周 囲 の バ ル ク 水 と 絶 え ず 交 換 さ れ て い る た め 、 こ の 信 号 抑 制 さ れ た プ ロ ト ン が 周 囲 の バ ル ク 水 に 順 次 移 り 、 バ ル ク 水 の 信 号 を 減 少 さ せ る 。 つ ま り 、 ネ ガ テ ィ ブ コ ン ト ラ ス ト を 生 じ る 。 十 分 な 交 換 が 行 わ れ る た め に は プ レ サ チ ュ レ ー シ ョ ン パ ル (1099) 17 CLINICIAN ’11 NO. 602

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ス の 時 間 は で き る だ け 長 い ほ う が 望 ま し い 。 プ レ サ チ ュ レ ー シ ョ ン パ ル ス の 周 波 数 を 連 続 的 に 変 化 さ せ な が ら バ ル ク 水 の 信 号 を 観 察 す る と 、 交 換 プ ロ ト ン の 周 波 数 と バ ル ク 水 の 周 波 数 の 二 峰 性 ︵ あ る い は そ れ 以 上 ︶ の 信 号 抑 制 曲 線 を 示 す 。 す な わ ち 、 そ れ ぞ れ 間 接 的 ︵ C E S T 効 果 ︶ お よ び 直 接 的 な バ ル ク 水 の 信 号 抑 制 を 表 す 。 こ の 曲 線 を Z − ス ペ ク ト ル と 呼 ぶ 。 C E S T イ メ ー ジ ン グ の 最 大 の 利 点 は 、 直 接 M R I で 観 察 す る こ と が 困 難 な 低 濃 度 の 化 合 物 で あ っ た と し て も 、 そ れ に 含 ま れ る プ ロ ト ン が 交 換 さ れ る こ と で 、 バ ル ク 水 の 信 号 変 化 を 介 し て 間 接 的 に 、 高 い 感 度 で 観 察 す る こ と が で き る こ と で あ る 。 こ の 周 波 数 選 択 的 な プ レ サ チ ュ レ ー シ ョ ン パ ル ス を オ ン ・ オ フ レ ゾ ナ ン ス で 撮 像 し 、 そ の 2 つ の 画 像 の 計 算 画 像 ︵ 差 !CEST の原理 A:交換プロトンの周波数の信号を抑制するプレサチュレーションパルスを 照射すると、交換プロトンの信号がまず抑制されるが、このプロトンは 一定の速度で周囲のバルク水と絶えず交換されているため、プロトンが 周囲のバルク水に順次移り、バルク水の信号を減少させる。 B:プレサチュレーションの周波数を連続的に変化させながらバルク水の信 号を観察すると、交換プロトンの周波数とバルク水の周波数の二峰性(あ るいはそれ以上)の信号抑制曲線を示す。この曲線を Z-スペクトルと呼 ぶ。交換プロトンの周波数での信号低下量を CEST 効果と呼ぶ。 CLINICIAN ’11 NO. 602 18 (1100)

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分 画 像 な ど ︶ を 作 成 す る こ と で 、 そ のCEST agent の 濃 度 や 交 換 速 度 を 反 映 し た マ ッ ピ ン グ を 行 う こ と が で き る 。CEST agent に は 反 磁 性 体 を 用 い たDiamagnetic CEST ︵DIACEST ︶ と 常 磁 性 体 金 属 を 用 い たParamagnetic CEST ︵PARACEST ︶ の 化 合 物 が あ り 、 内 因 性 の C E S T イ メ ー ジ ン グ は す べ て D I A C E S T で あ る 。 内 因 性 C E S T イ メ ー ジ ン グ に は い く つ か の 方 法 が 提 唱 さ れ て お り 、 そ れ ら を 紹 介 す る 。 Amide P roton Transfer ︵APT A P T イ メ ー ジ ン グ は 内 因 性 C E S T イ メ ー ジ ン グ の 一 法 で あ り 生 体 内 の 可 動 性 タ ン パ ク / ペ プ チ ド 内 に 含 ま れ る ア ミ ド ︵-NH ︶ の 濃 度 あ る い は 交 換 速 度 に 基 づ く コ ン ト ラ ス ト を 得 る こ と が で き る 。 生 体 内 の 主 に 細 胞 質 内 に 含 ま れ る 可 動 性 タ ン パ ク / ペ プ チ ド に 含 ま れ る ア ミ ド の 交 換 プ ロ ト ン 全 体 と し て の 共 鳴 周 波 数 は 、 バ ル ク 水 を0 ppm と し て+ 3.5ppm に あ る ︵ 図 ! ︶ 。 生 体 内 で は Z− ス ペ ク ト ル で は ア ミ ド の 交 換 プ ロ ト ン に よ る C E S T 効 果 は 通 常 数 % と 小 さ い た め 、 C E S T ピ ー ク を 視 覚 的 に 同 定 す る こ と は 難 し い 。 負 と 正 の 非 対 称 性 を 計 算 す る こ と で C E S T 効 果 が 明 瞭 と な る 。 A P T 効 果 は 、± 3.5ppm で の Z− ス ペ ク ト ル の 非 対 称 性 で あ り 、 以 下 の 式 で 表 さ れ る 。 C E S T ︵ A P T ︶ 効 果= ︵S sa t− 3.5ppm −S sa t+ 3.5ppm ︶0/S こ こ でS sa t− 3.5ppm とS sa t+ 3.5ppm は プ レ サ チ ュ レ ー シ ョ ン の 周 波 数 を そ れ ぞ れ 3.5ppm と+ 3.5ppm で 撮 像 し た と き の 信 号 で あ り 、 S0 は プ レ サ チ ュ レ ー シ ョ ン を オ フ で 撮 像 し た と き の 信 号 で あ る 。 こ の 計 算 を ピ ク セ ル 毎 に 行 っ た マ ッ プ が 、 A P T 強 調 画 像 で あ る 。 図 " に 脳 腫 瘍 患 者 お け る A P T イ メ ー ジ ン グ の 例 を 示 す 。 50 歳 代 女 性 の 膠 芽 腫 例 で は 正 常 脳 組 織 に 比 べ て 腫 瘍 部 の A P T 効 果 が 高 い 。 一 方 、 10 歳 代 男 性 の 低 悪 性 度 神 経 (1101) 19 CLINICIAN ’11 NO. 602

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膠 腫 例 で は 腫 瘍 部 の A P T 効 果 の 上 昇 は 見 ら れ な い 。 こ の よ う に 腫 瘍 内 の 可 動 性 タ ン パ ク / ペ プ チ ド の 濃 度 に 基 づ い た 、 分 子 レ ベ ル で の コ ン ト ラ ス ト に 基 づ く 画 像 化 が 可 能 で あ る 。 一 般 に 悪 性 度 の 高 い 腫 瘍 ほ ど 豊 富 な 細 胞 質 に よ り 含 ま れ る 可 動 性 タ ン パ ク / ペ プ チ ド の 量 は 多 く な る こ と が 予 想 さ れ る 。 ま た 病 変 の 良 性 、 悪 性 の 鑑 別 に も 有 用 で あ る か も し れ な い 。 例 え ば 脳 腫 瘍 放 射 線 治 療 後 に 不 整 な ガ ド リ ニ ウ ム 増 強 効 果 を 認 め た 場 合 、 従 来 の M R I で は 腫 瘍 再 発 か 放 射 線 壊 死 か の 鑑 別 は 非 常 に 困 難 で あ っ た 。 ま だ 動 物 実 験 の レ ベ ル で あ る が 、 高 悪 性 度 の 腫 瘍 モ デ ル で 高 い A P T 効 果 が み ら れ る の に 対 し 、 放 射 線 壊 死 の モ デ ル で は A P T 効 果 が 乏 し い こ と が 明 ら か に な っ て い る 。 も し こ の 鑑 別 に 有 用 で あ れ ば 臨 床 的 に 大 き な イ ン パ ク ト を 持 つ こ と が 予 想 さ れ る 。 ま た ア ミ ド に 含 ま れ る プ ロ ト ン の 交 換 速 度 は

!Amide Proton Transfer(APT)

A:APT 強調画像は±3.5ppm の非対称性から計算される画像であり、可動 性タンパク/ペプチドの濃度を反映する。卵白は可動性タンパクを豊富 に含むため高い APT 効果を有する。一方卵黄は結合タンパクが主体で あるため、APT 効果は乏しい。 B:卵白には±の周波数オフセットで非対称性があり、+側(2∼4ppm)の 信号低下が APT 効果であり、可動性タンパクの量を表している。 CLINICIAN ’11 NO. 602 20 (1102)

(6)

組 織 の pH に 依 存 す る た め 、 A P T イ メ ー ジ ン グ は pH マ ッ ピ ン グ と し て も 使 用 す る こ と が で き る 。 プ ロ ト ン の 交 換 は 一 般 的 に ア ル カ ロ ー シ ス の 環 境 で 速 く 、 ア シ ド ー シ ス で 遅 い 。 急 性 期 脳 虚 血 に お い て 組 織 は ア シ ド ー シ ス と な る た め 、 正 常 脳 組 織 に 比 べ て プ ロ ト ン 交 換 は 遅 く 、 C E S T ︵ A P T ︶ 効 果 は 小 さ く な る 。 生 体 組 織 の pH 測 定 は 、 リ ン を 用 い た M R ス ペ ク ト ロ ス コ ピ ー な ど が 古 く か ら 試 み ら れ て い る も の の 、 研 究 レ ベ ル に と ど ま り 、 臨 床 応 用 は 困 難 で あ っ た 。 A P T イ メ ー ジ ン グ は 脳 梗 塞 の 虚 血 部 の 予 後 予 測 な ど に お い て 重 要 な 情 報 を 与 え て く れ る 可 能 性 が あ る 。 A:造影後 T1強調画像では右頭頂葉に不整 なリング状増強病変を認める。 B:APT 強調画像では同腫瘤に APT 効果の 増加を認め、可動性タンパク/ペプチド の増加が示唆される。 C:T2強調画像では左視床に境界不明瞭な淡 い高信号を示す病変を認める。同病変に よる水頭症を認める。 D:APT 強調画像では同病変に APT 効果の 増加は認めない。 !脳腫瘍の APT イメージング (1103) 21 CLINICIAN ’11 NO. 602

(7)

︵myo-inositol CEST ミ オ イ ノ シ ト ー ル は シ ク ロ ヘ キ サ ン の 各 炭 素 上 の 水 素 原 子 が ひ と つ ず つ ヒ ド ロ キ シ 基 ︵-OH ︶ に 置 換 さ れ た 構 造 を 持 つ 、 シ ク リ ト ー ル の 一 種 で あ る 。 脳 の グ リ ア の 中 に 存 在 し オ ス モ ラ イ ト と し て 機 能 し て い る 。 ミ オ イ ノ シ ト ー ル は グ リ ア の マ ー カ ー で あ り 、 様 々 な 脳 疾 患 で 変 化 す る こ と が 知 ら れ て い る 。 ミ オ イ ノ シ ト ー ル の 増 加 は ア ル ツ ハ イ マ ー 病 、 大 脳 膠 腫 症 、 糖 尿 病 、 多 発 性 硬 化 症 、 進 行 性 多 巣 性 白 質 脳 症 な ど で 起 こ り 、 ま た 神 経 膠 腫 の 悪 性 度 の 増 加 に 伴 っ て 減 少 す る こ と が 報 告 さ れ て い る 。 ミ オ イ ノ シ ト ー ル に 含 ま れ る ヒ ド ロ キ シ 基 ︵-OH ︶ の プ ロ ト ン は バ ル ク 水 の プ ロ ト ン と 交 換 さ れ て お り 、 そ の 周 波 数 は バ ル ク 水 の+ 0 .6 ppm に あ る 。 こ の0.6ppm で の C E S T 効 果 を 求 め る こ と で 、 ミ オ イ ノ シ ト ー ル の マ ッ ピ ン グ が 可 能 と な る 。 し か し 、 そ の 周 波 数 は バ ル ク 水 に 非 常 に 近 い た め 、 極 め て 正 確 な 磁 場 不 均 一 の 補 正 が 必 要 と 考 え ら れ 、 技 術 的 な 難 易 度 が 高 い 。 ま だ 疾 患 で の 応 用 例 は 報 告 さ れ て い な い 。 グ リ コ ー ゲ ン ︵glycoCEST ︶: グ リ コ ー ゲ ン は 多 数 の ブ ド ウ 糖 が グ リ コ シ ド 結 合 に よ っ て 重 合 し 、 多 数 の 分 枝 構 造 を 示 す 高 分 子 で あ る 。 生 体 の 貯 蔵 多 糖 と し て 知 ら れ 、 肝 臓 と 骨 格 筋 で 主 に 合 成 さ れ 、 余 剰 の ブ ド ウ 糖 を 貯 蔵 し て お く 意 義 が あ る 。 グ リ コ ー ゲ ン に も 多 数 の ヒ ド ロ キ シ 基 ︵-OH ︶ が 含 ま れ る 。 グ リ コ ー ゲ ン の ヒ ド ロ キ シ 基 の プ ロ ト ン は バ ル ク 水 か ら+0 .5 ∼1.5 ppm に 周 波 数 が あ り 、 バ ル ク 水 と 交 換 さ れ て い る ︵ 図 ! ︶ 。 考 え ら れ る 臨 床 応 用 と し て は 肝 臓 に 糖 原 の 異 常 蓄 積 を 示 す 糖 原 病 が 挙 げ ら れ る が 、 そ の 他 に も 2 型 糖 尿 病 、 耐 糖 能 異 常 、 肥 満 な ど の 一 般 的 疾 患 で も グ リ コ ー ゲ ン の 代 謝 異 常 が 報 告 さ れ て お り 、 こ れ ら の 疾 患 の 病 態 の 理 解 に 有 用 で あ る 可 能 性 が あ る 。 ま だ 臨 床 例 で の 報 CLINICIAN ’11 NO. 602 22 (1104)

(8)

告 は な く 、 今 後 の 発 展 が 望 ま れ る 。 グ リ コ サ ミ ノ グ リ カ ン ︵gag CEST ︶: グ リ コ サ ミ ノ グ リ カ ン は 長 鎖 の 枝 分 か れ の な い 多 糖 で あ り 、 動 物 の 結 合 組 織 を 中 心 に 存 在 す る 。 グ リ コ サ ミ ノ グ リ カ ン は 糖 鎖 と し て コ ア タ ン パ ク に 共 有 結 合 し 、 プ ロ テ オ グ リ カ ン を 形 成 す る 。 関 節 軟 骨 や 椎 間 板 の 基 質 と な る 物 質 で あ り 、 変 形 性 関 節 症 に て 軟 骨 の 変 性 に 伴 っ て 減 少 す る 。 グ リ コ サ ミ ノ グ リ カ ン に は ヒ ド ロ キ シ 基 ︵1ppm ︶ と ア ミ ド ︵3.2ppm ︶ の 両 者 が 含 ま れ る が 、 前 者 の 方 で 濃 度 が 高 く 、 C E S T 効 果 が 大 き い た め 、gagCEST で は ヒ ド ロ キ シ 基 が 対 象 と な る 。gagCEST を 用 い た 研 究 に お い て 、 変 形 性 膝 関 節 症 に 対 し て 軟 骨 修 復 手 術 が 行 わ れ た 群 で は 正 常 群 に 比 べ て 有 意 に グ リ !glycoCEST グリコーゲンファントムの Z-スペクトル:グリコーゲンに含まれるヒドロ キシ基のプロトン周波数は水の+0.5∼+1.5ppm にある。CEST 効果の濃度 依存性が認められる。 (1105) 23 CLINICIAN ’11 NO. 602

(9)

コ サ ミ ノ グ リ カ ン が 低 下 し て い た こ と が 報 告 さ れ て い る 。gagCEST は 変 形 性 関 節 症 に お け る 軟 骨 変 性 の バ イ オ マ ー カ ー と し て の 有 用 性 が 期 待 さ れ て い る 。 P A R A C E S T: C E S T に お い て プ ロ ト ン の 交 換 は N M R の タ イ ム ス ケ ー ル で“s lo w” で あ る 必 要 が あ り 、 交 換 速 度 が 速 す ぎ る と 水 の ピ ー ク と 分 離 が で き な く な っ て し ま う 。 す な わ ち 、 交 換 速 度<_ Δ 周 波 数 ︵ 2 つ の 化 学 環 境 の 周 波 数 の 差 ︶ で あ る 必 要 が あ る 。 し か し 、 こ の 制 限 の 中 で な る べ く 交 換 が 速 い ほ う が C E S T 効 果 は 大 き く な る 。 も し Δ 周 波 数 が 大 き け れ ば 交 換 速 度 を 速 く す る こ と が で き 、 大 き な C E S T 効 果 を 得 る こ と が で き る 。 ラ ン タ ノ イ ド 系 の 常 磁 性 体 金 属 を 用 い る こ と で 、 こ の Δ 周 波 数 を 10 倍 以 上 に 大 き く す る こ と が で き る 。 ラ ン タ ノ イ ド の 中 で 、 Eu ︵ ユ ウ ロ ピ ウ ム ︶ 、 Tb ︵ テ ル ビ ウ ム ︶ 、 Dy ︵ ジ ス プ ロ シ ウ ム ︶ 、 Yb ︵ イ ッ テ ル ビ ウ ム ︶ 、 Tm ︵ ツ リ ウ ム ︶ な ど が P A R A C E S T に 用 い ら れ る 。 な お 、 M R の 一 般 的 な 造 影 剤 で あ る Gd ︵ ガ ド リ ニ ウ ム ︶ は 交 換 が 速 す ぎ る た め 用 い ら れ な い 。 図 ! に 代 表 的 なPARACEST agent で あ るEu-DOTA-4AmCE 3+ の Z− ス ペ ク ト ル を 示 す 。 C E S T 効 果 は 約+ 50 ppm で 認 め ら れ 、 D I A C E S T ︵ ∼5ppm ︶ に 比 べ て バ ル ク 水 の ピ ー ク か ら 遠 く 離 れ て い る こ と が わ か る 。 ラ ン タ ノ イ ド の 選 択 に よ っ て 、 異 な る 周 波 数 シ フ ト を 持 つ P A R A C E S T 化 合 物 を 作 る こ と が で き る 。 例 え ばEu-DOTA-4AmCE -は 約50 ppm で あ る が 、Tb-DOTA-4AmCE -は 600ppm の 部 位 に あ る 。 P A R A C E S T を 用 い て 組 織 の pH や 温 度 を モ ニ タ ー で き る こ と が 示 さ れ て お り 、 そ の 他 に は 亜 鉛 や グ ル コ ー ス の セ ン サ ー と し て の P A R A C E S T 化 合 物 も 作 成 さ れ て い る 。 い ず れ も ま だin vitro あ る い は 小 動 物 で の in vivo 実 験 が 行 わ れ て い る 段 階 で あ り 、 臨 床 CLINICIAN ’11 NO. 602 24 (1106)

(10)

応 用 に は ま だ し ば ら く 時 間 が か か る と 思 わ れ る 。 新 た な M R I の 分 子 イ メ ー ジ ン グ で あ る C E S T の 基 本 原 理 と い く つ か の 応 用 に つ い て 概 説 し た 。 特 に 内 因 性 C E S T イ メ ー ジ ン グ は 造 影 剤 を 用 い な い 非 侵 襲 的 な 方 法 に よ り 生 体 内 の 可 動 性 タ ン パ ク / ペ プ チ ド 、 ミ オ イ ノ シ ト ー ル 、 グ リ コ ー ゲ ン 、 グ リ コ サ ミ ノ グ リ カ ン な ど の マ ッ ピ ン グ を 行 う こ と が で き 、 臨 床 応 用 が す で に 可 能 な と こ ろ ま で 来 て い る 。 し か し そ の 臨 床 的 有 用 性 は 全 く の 未 知 数 で あ り 、 従 来 か ら あ る 画 像 的 指 標 や 患 者 の 臨 床 的 因 子 、 病 理 学 的 所 見 、 予 後 な ど と 比 較 し な が ら 確 立 し て い く 必 要 が あ る 。 P A R A C E S T は 将 来 有 望 な 造 影 剤 で あ り 、 従 !PARACEST : Eu-DOTA-4AmCE3+

代 表 的 な PARACEST agentで あ る Eu-DOTA-4AmCE3+

の Z-ス ペ ク ト ル:

DIACESTと異なり、交換プロトンの周波数はバルク水から遠く離れている

(+53ppm)。

(1107)

(11)

来 の 単 な る 濃 度 依 存 性 の コ ン ト ラ ス ト で は な く 、 生 体 内 で 重 要 な 代 謝 化 合 物 や 組 織 の pH 、 温 度 な ど 生 体 内 環 境 を 反 映 し た コ ン ト ラ ス ト を 持 つ “s m ar t” な 造 影 剤 と し て の 発 展 が 期 待 で き る 。 ︵ 九 州 大 学 大 学 院 医 学 研 究 院 臨 床 放 射 線 科 学 分 野 ︶ * ︵ 九 州 大 学 大 学 院 医 学 研 究 院 臨 床 放 射 線 科 学 分 野 講 師 ︶ 1)Ward , K . M ., et al . : A n ew class o f contrast agents for M R I b as ed on pr oton chem ical exchange dependent sa tur ation tr ans fe r (CEST ). J. M agn . R es on ., 143 (1 ), 79-87 (2000 ) 2)Zhou , J., et al . : Us ing the am ide p ro ton signals of intracellular p roteins and peptides to detect pH effects in M R I. Nat .M ed ., 9 (8 ), 1085-1090 (2003 ) 3)Haris ,M ., et al . : In vivo m apping of br ain m yo-inos itol . Neur oI m age ,54 (3 ), 2079-2085 (2011 ) 4)Van Z ijl ,P .C ., et al . : MRI d etection o f g lycogen in vivo by us ing chem ical exchange sa tur ation tr ans fe r im aging (g lycoCEST ). Pr oc .N atl .Acad .S ci .U SA ,104 (1 1 ), 4359 -4364 (2007 ) 5)W oods , M ., et al . : Par am agnetic lanthanide com p lexes as PARACEST agents for m edical imaging . Chem . Soc . Rev ., 3 5 (6 ), 500-511 (2006 ) CLINICIAN ’11 NO. 602 26 (1108)

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