生殖補助医療の光と陰
2016.10.19 谷口 憲 グランドラウンド生殖補助医療の
光
とは?
妊娠できなかったひとが,
妊娠できるようになった.
生殖補助医療の
陰
とは?
生殖医療における問題点
ヒト体外受精・胚移植の成功
1978年 Steptoe & Edwards
ルイーズ・ブラウンの誕生 エドワード博士 2010年 ノーベル医学生理学賞受賞 36歳の卵管性不妊症の女性
年別 治療周期数
393,745年別 出生児数
46,008ART
妊娠率・生産率・流産率 2 0 1 4
ART
治療周期数 2 0 1 4
なぜ加齢とともに妊娠しにくくなるのか?
・卵巣予備能の低下 ・卵子の質の低下卵巣予備能とは?
日本がん・生殖医療学会HPより引用年齢による残存卵子数の変化
卵巣予備能の評価
AMH : 抗ミュラー管ホルモン ・前胞状卵胞から小胞状卵胞の顆粒膜細胞から分泌される ・原始卵胞から発育する卵胞の数を反映し, 卵巣予備能の指標である 120日以上 85日 14日 原始卵胞 初期卵胞 二次卵胞 小胞状卵胞 主席卵胞 排卵 ゴナドトロピン 依存性 ゴナドトロピン 非依存性 パラクリンコントロール エンドクリンコントロール FSH 依存性 AMH Estradiol Inhibin B 選抜 主席 リクルートメント リクルートメントLa Marca. Hum Repro 2009
AMH
の加齢による変化
AMH
とは
・基準値はないが, 加齢とともに低下する.
・あまりにも低値であるとよくない.
・排卵誘発剤への反応性を表している.
卵子の質の低下はなぜ起こるのか?
加齢とともに卵子における
染色体の数的異常が増加する
ミトコンドリアの機能の低下
ミトコンドリアには活性酸素種の一つであるスーパーオキシド を除去するMn-SOD(スーパーオキサイドジスムターゼ)が存在 している. ミトコンドリアの機能低下 Mn-SODの減少 スーパーオキシドの増加 卵子の質の低下男性不妊症
精子の数が少ない, あるいは運動精子数が少ないと
受精しにくい
人工授精
約12万の精子を媒精体外受精における媒精
精液所見が非常に悪い場合
あるいは
精液所見は正常だが, 受精しない場合は
どうするのか?
ヒトにおける顕微授精の成功
1992年 Palermo et al.
ZD PZD ZO SUZI ICSI射出精液中に精子がいない場合は
どうするのか?
精巣あるいは精巣上体から精子を採取
閉塞性無精子症 ・そけいヘルニアの手術既往 ・先天性精管欠損 非閉塞性無精子症 ・クラインフェルター症候群多胎妊娠の増加
以前は, 妊娠率を上げるために複数個の受精卵を 子宮に移植していた. 妊娠率は上昇したが, 多胎率も上昇した. 周産期医療を圧迫した.生殖補助医療における多胎妊娠防止に関する見解
生殖補助医療の胚移植において、移植する胚は原則として 単一とする。ただし、35歳以上の女性、または2回以上続けて 妊娠不成立であった女性などについては、2胚移植を許容する。 治療を受ける夫婦に対しては、移植しない胚を後の治療周期で 利用するために凍結保存する技術のあることを、必ず提示しな ければならない。 平成20年4月12日 日本産科婦人科学会受精卵の凍結保存
ガラス化法( vitrification )卵子提供
日本では基本的には卵子提供を受けることはできない. 限られた団体 ・JISART ・NPO法人 OD-NET で行われている. OD-NETの場合(講演会で代表の方の話をきいて) ・生まれてくる子供の出自を知る権利 ・頻回のカウンセリング ・副作用の発生した場合の保証は誰かするのか? (基本的にボランティアである)代理出産
他の女性に出産を依頼すること. ・子宮がない女性 ・高齢で自らの卵子で妊娠できない女性 問題点 ・金銭的なトラブル ・児に異常があった場合 ・母体に異常があった場合 ・戸籍の問題 ・児の知る権利子宮移植
マッツ・ブランストローム教授 2014年 子宮移植後の出産例が報告された (35歳のロキタンスキー症候群の患者) 9例(ロキタンスキー症候群 8例, 子宮頸癌術後 1例) うち7例は高度の拒絶反応や合併症を認めず これまで5例が出産している着床前診断
胚移植前に受精卵の細胞の一部を生検し, 染色体検査を行う. 現在, PGD (Preimplantation Genetic Diagnosis)は夫婦の染色体 構造異常または遺伝子疾患が原因での習慣流産(不育症)に 限り許可されている. PGS (Preimplantation Genetic Screening) は許可されていない.がん患者の妊孕性温存
がんサバイバーシップ
1986年 米国のNCCS
(The National Coalition for Cancer Survivorship)
「がんの診断・治療の後に, 患者本人や家族, ケアをする人, 友人など, 広くがんに関係のある人々が, がんと共に生き, 充実した生活を送ること」
医原性の早発卵巣機能不全
化学療法, 放射線療法にともなう卵巣機能の低下 早発卵巣機能不全にならないまでも・・・ 月経の有無=
卵巣の予備能がん患者の妊孕性温存の診療
患者
がんの主治医
産婦人科医師
・妊孕性温存の技術 ・他分野のがん治療が妊孕性に 与える影響 ・がん治療の技術 ・がん治療が妊孕性に与える影響 ・がんの告知によるショック ・妊孕性低下のショックがんの統計 2013
部位別年齢階級別がん罹患率(2008年)
女性 5-9歳 10-14歳 15-19歳 20-24歳 25-29歳 30-34歳 35-39歳 第1位 第2位 第3位 白血病 白血病 白血病 甲状腺 子宮頸部 乳房 乳房 脳・中枢神経系 脳・中枢神経系 卵巣 卵巣 乳房 子宮頸部 子宮頸部 悪性リンパ腫 悪性リンパ腫 甲状腺 白血病 甲状腺 甲状腺 甲状腺 *上皮内がんを含まず * * * * * *化学療法および放射線療法後の無月経のリスク
米国臨床腫瘍学会 2013 High risk Intermediate risk Low riskVery low or No risk
Unknown モノクローナル抗体(アバスチン, アービタックス, ハーセプチン)(乳癌) チロシンキナーゼ阻害剤(タルセバ, グリベック) (CML) ビンクリスチン(白血病, リンパ腫, 乳癌), 放射性ヨウ素(甲状腺) アルキル化剤を含まない白血病に対するプロトコール ABVD療法・CHOP/COP療法(ホジキンリンパ腫, 非ホジキンリンパ腫, 白血病) シクロフォスファミドを含む乳癌プロトコール(30歳以下女性) アンスラサイクリン + シタラビン(AML) シクロフォスファミド単剤投与(30から40歳に対し5g/m2投与例)(乳癌) AC療法(40歳以下に対し4コース + パクリタキセル, ドセタキセル)(乳癌) シスプラチンを含むプロトコール(子宮頸癌) 腹部放射線療法, 骨盤内放射線療法(月経発来前 10から15Gy, 月経発来後 5から10Gy) (Wilms腫瘍, 神経芽腫, 脊椎腫瘍, 再発した非ホジキンリンパ腫もしくはALL) アルキル化剤(ブスルファン, カルムスチン, シクロフォスファミド, イフォスファミド, ロムスチン, メルファラン, プロカルバジン)+ 全身放射線療法 : 造血幹細胞移植(白血病, リンパ腫, 骨髄腫, ユーリング肉腫など) アルキル化剤 + 卵巣を含む外照射(肉腫、卵巣癌) シクロフォルファミド単剤投与(多発:乳癌, 非ホジキンリンパ腫, 造血幹細胞移植前投与) (特に40歳以上に対し5g/m2投与例, 20歳以下に対し7.5 g/m2投与例) テモゾトミドあるいはカルムスチンが含まれるプロトコール(脳腫瘍)
プロカアルバジンを含むプロトコール, MOPP(3 cycle以上), BEACOPP(6 cycle), (ホジキンリンパ腫) 腹部放射線療法, 骨盤内放射線療法(成人女性 : 6Gy以上, 月経発来後 10Gy以上, 月経発来前 15Gy以上)(Wilms腫瘍, 肉腫, ホジキンリンパ腫, 卵巣腫瘍 全身放射線療法(造血幹細胞移植) 頭頸部放射線療法(40Gy以上)(脳腫瘍) (> 70%) (30 70%) (< 30%)
妊孕性温存法の選択
FertiPROTEKT (ドイツ語圏の妊孕性温存ネットワーク) 婦人科 悪性腫瘍 骨盤に対する放射線照射 2週間以上ある場合化学療法開始まで 化学療法開始まで 2週間未満の場合 妊孕性温存手術 (広汎子宮頸部 切除術) ・卵巣位置移動術 ・卵巣組織凍結 ・胚凍結 ・卵子凍結 ・卵巣組織凍結 ・GnRHアゴニスト エストロゲン 非依存性腫瘍 エストロゲン依存性腫瘍 ・胚凍結 ・卵子凍結 ・卵巣 組織凍結 ・GnRH アゴニスト ・卵巣 組織凍結 ・胚凍結 ・卵子凍結 ・GnRH アゴニスト Risk Benefitの検討 が必要卵巣組織凍結の適応疾患
がん細胞の再移入の問題Risk of transferring malignant cells
with transplanted frozen-thawed ovarian tissue
Dolmans. Fertil Steli 2013
高リスク 中等度リスク 低リスク 白血病 神経芽細胞腫 バーキットリンパ腫 乳癌 stageⅣ 浸潤性小葉癌 結腸癌 子宮頸部腺癌 非ホジキンリンパ腫 ユーイング肉腫 乳癌 stage Ⅰ Ⅱ 浸潤性乳管癌 子宮頸部扁平上皮癌 ホジキンリンパ腫 横紋筋肉腫 ウィルムス腫瘍