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2012年6月学術大会委員会報告配付版

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TDM標準化ガイドライン

抗てんかん薬のTDMガイドライン(案)

Draft version 1.2

日本TDM学会TDMガイドライン策定委員会

<抗てんかん薬ワーキンググループ>

委員長:猪爪 信夫(北海道薬科大学臨床薬理学分野) 委 員:今村 知世(慶應義塾大学医学部臨床薬剤学教室) 末丸 克矢(就実大学薬学部健康解析学分野) 鈴木 小夜(慶應義塾大学薬学部医療薬学センター) 戸田 貴大(北海道薬科大学臨床薬理学分野) 矢野 育子(京都大学大学院薬学研究科臨床薬学教育) 湯川 栄二(第一薬科大学臨床薬剤学教室) 中村 秀文(国立小児成育医療研究センター治験推進室)

2012 年 6 月 17 日

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- 2 - 1.はじめに てんかん薬物治療は抗てんかん薬の単剤投与からはじめることが推奨され、2〜3 種類 の抗てんかん薬による単剤治療を行っても奏功しない場合に多剤併用による治療が選択さ れる。それでも発作が抑制されないときに外科的治療の可能性が考慮される。 有効とされる血中濃度域を維持することによりてんかん発作を抑制することが可能とな る抗てんかん薬では、てんかん発作を効率的に予防する血中濃度の維持を指標とした TDM が重要である。てんかん患者に新たに抗てんかん薬を投与する際には、副作用発現に注意 しつつ投与量を漸増し、有効濃度域に到達するように患者に見合った投与量を見いだす方 法が行われる。患者の服薬コンプライアンスを確認するときにも TDM が有用である。 治療血中濃度とは多くの患者において発作発現を抑制する濃度域であり、この濃度域以 下でも効果を示す患者や治療有効濃度を越えてはじめて効果が出現する患者も存在する。 有効濃度域に達していなくとも発作発現が抑制されているならば、その患者に対する投与 計画を変更する必要はない。血中濃度が非常に低濃度であり、かつ、てんかん発作を長期 間発現していない患者であっても抗てんかん薬投与の中止決定は慎重に行う必要があり、 数ヶ月から年単位に亘る長期間をもって徐々に投与量を減少させて抗てんかん薬投与から 離脱することが求められる。一方、有効濃度域以上の血中濃度であっても、特記すべき副 作用が発現しない状態で発作が抑制されている患者であれば、以後の副作用発現に留意し つつ現在の投与計画が継続される。 一般に、血液中でたん白質に結合していない薬物(血中非結合形薬物)が作用部位に達 して薬理効果を発揮し、主として肝臓での代謝や腎臓での排泄を受け体内から消失する。 たん白結合率の高い薬物では、限外濾過法や平衡透析法によりたん白質に結合していない 薬物を分離し、血中非結合形薬物濃度の測定が行われることがある。 シトクロム P450 を代表とする代謝酵素の遺伝子多型が抗てんかん薬の代謝速度に影響 を与え、血中薬物濃度に大きな差が生じることも知られており、遺伝子型情報をふまえた 薬剤の選択・投与量調整の可能性が議論されている。 TDMは専門的な担当者の知識と経験に基づいた業務として行われてきた傾向を否めな い。しかし、現在では血中薬物濃度測定値による個別投与量管理は確立された技術であり 、医療従事者の一般的な業務としての普及が必要である。本ガイドラインでは、日本にお いて抗てんかん薬としての適応があり、汎用される抗てんかん薬の TDM についての情報を

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- 3 - 下記に示すエビデンスレベルと推奨グレードとしてまとめ、日常業務への対応に重点をお いた。重要と考えられる文献については解説中に示し、その他の文献は末尾に記載した。 エビデンスレベル I システマティックレビュー/ランダム化比較試験のメタアナリシス II 1 つ以上のランダム化比較試験 III 非ランダム化比較試験 IV 分析疫学研究 V 記述研究 VI データに基づかない専門家の意見 推奨グレード A 強い科学的根拠があり、TDM を行うべきである。 B 科学的根拠があり、TDM が有用・有効である可能性が高い。 C 科学的根拠は確立していないが、一定条件下では参考となる。 D 推奨できない。 2.血中濃度測定法 これまで、血中薬物濃度の免疫学的測定法としてアボット社の全自動血中濃度測定シス テム(TDx システム)を用いた蛍光偏光免疫測定 (FPIA) 法による測定が多くの施設で行 われてきた。しかし、TDx システムのメンテナンス終了に伴い、2012 年現在ではアボット 社の新規測定システムやその他の診断機器会社からの測定機器と試薬類が多数市販されて いる。新規に導入された機器の特性を見極めた TDM を行うことと、これまでの測定結果と の整合性評価が求められる。また、多くの臨床検査機器において各種の TDM 測定試薬を用 いた測定ができるが、測定試薬の交差反応性などの影響に加え、使用する臨床検査機器自 身による測定誤差を評価して、得られた血中濃度測定値の信頼性を検証する必要がある。 本邦においてはバイオ・ラッドラボラトリーズ社が精度管理プログラムを毎年実施してお り 、 集 計 結 果 も 無 償 で 入 手 可 能 で あ る 。 米 国 病 理 学 会 (CAP: College of American Pathologists)では国際的な精度管理プログラムを毎年実施しており、有料参加すること により市販されている試薬と測定機器を用いたときの測定値比較表を入手することが可能

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- 4 - である。 3.定常状態 薬物を一定投与量、一定投与間隔で経口投与すると血中濃度は徐々に上昇し、最終的に 一定の濃度域を上下する定常状態に到達する。抗てんかん薬による発作抑制には定常状態 における血中濃度を治療濃度域内に保つことが求められる。定常状態への到達度を判断す るには薬物の血中からの消失半減期が重要な因子となる。1–コンパートメントモデルによ り解析できる薬物を一定の投与量と投与間隔で使用した場合、消失半減期の 5 倍時間以上 経過すれば、定常状態における血中濃度の 96%以上の濃度に到達する。したがって、通常 は消失半減期の 4 から 5 倍時間経過した時点で定常状態に到達したとみなされる。 参考文献

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- 5 - フェニトイン(PHT) フェニトインの特徴と TDM フェニトインは、てんかんのけいれん発作、自律神経発作、精神運動発作に対して経口 投与され、てんかん発作重積時および術中・術後や意識障害時には静脈内投与される。フ ェニトインの治療濃度域における血中濃度は投与量に対して非線形性を示すため、TDM に よって投与量管理を精密に行う必要がある。 Q1.治療濃度域について教えてください。 10~20 μg/mL(非結合形濃度:1~2 μg/mL)(推奨グレード A) 【解説】 てんかんの重症度や症例によって違いはあるが、成人の強直間代発作に対する有効血中 濃度は 10~20 μg/mL とされている。血中濃度の上昇に伴う中毒症状としては、眼振、発 作の機能活動, 不随意運動の誘発、運動失調、知的能力の低下などがあり、さらに血中濃 度が上昇すると意識障害、血圧低下、呼吸障害を生じる。血中非結合形フェニトインの有 効域は 1~2 μg/mL とされている。結合たん白である血漿アルブミンの濃度低下時には非 結合形分率が上昇するため、総濃度が治療域範囲内であっても中毒症状を発現することが ある。またバルプロ酸などのたん白結合置換現象による薬物相互作用を生じる薬物との併 用時や黄疸ならびに腎不全時にも非結合形分率は上昇する(Shorvonet al, 1978)(後述 の Q4 参照)。 Q2.一般的な体内動態について教えてください。 非線形体内動態を示す(推奨グレード A) 【解説】 経口投与では消化管よりほぼ 100 %が吸収される。血漿たん白結合率は約 90 %と高く、 分布容積は約 0.7 L/kg である。主として CYP2C9 および一部 CYP2C19 によって活性を持た ない主代謝物 5-(p-hydroxyphenyl)-5-phenylhydantoin (HPPH)に肝臓で代謝される。こ の代謝は治療濃度域において飽和することによりクリアランスが減少し、定常状態到達時 間も延長するため、投与量の増減は慎重に行った上で血中濃度をモニタリングする必要が ある。フェニトインの投与計画には、Michaelis-Menten 式による1日最大代謝量 Vmaxとミ カエリス定数 Kmが用いられる。 Q3.測定タイミングについて教えてください。 成人に臨床用量を経口投与した場合は、投与開始もしくは用量変更 5 日以降に測定 する(推奨グレード A)

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- 6 - 【解説】 フェニトインは治療域すなわち臨床用量の範囲内で代謝が飽和し、半減期は血中濃度の 上昇に伴い増加する。治療域での半減期は成人で 6-36 時間であるため、初回投与時、用 量変更時、相互作用を生じる可能性のある併用薬剤の変更時には、5~7 日間隔でトラフ 濃度(投与前値)のモニタリングを行い、用量調節を行いながら個々の患者での至適用量 を見いだす。 Q4.特殊患者での TDM について教えてください。 たん白結合率の低下患者では非結合形濃度測定が必要である(推奨グレード B) 【解説】 高齢者の Vmax は非高齢者とほぼ同程度であるが、小児においては成人よりも体重当た りの Vmax は大きい。しかし、高齢者、小児とも Km はほぼ一定の値を示す。妊婦では循環 血流量や脂肪組織の増加、および胎児、胎盤、羊水のため分布容積が増大することから、 血中フェニトイン濃度が低下していくため TDM に基づく増量が必要となる。 熱傷、肝硬変、ネフローゼ、妊婦、嚢胞性線維症、黄疸、腎不全などの疾患時や妊娠時 には、フェニトインのたん白結合率が低下して非結合形濃度が上昇する(Perucca, 1980, Wallace & Brodie, 1976)。このようなときには血漿あるいは血清を限外濾過して、非結 合形薬物濃度の測定を検討することにより、さらに精密な TDM による投与量管理を行うこ とができる(Sheiner & Tozer, 1978) 。肝硬変患者においては肝代謝の低下も報告されて いる。 Q5.中毒時の TDM について教えてください。 血中フェニトイン濃度が治療域内に低下するまで頻回に TDM を行う(推奨グレード A) 【解説】 フェニトインの中毒時には、血中濃度が治療域に低下するまで休薬し、高濃度域で血中 からのフェニトインの消失が遅くなることに注意しながら TDM を頻回に行う。たん白結合 率が高いため血液透析での除去率は高くないが、活性炭血液吸着法は有効との報告がある (Kawasaki et al, 2000)。その際には血中濃度のリバウンド(再上昇)が認められないこ との確認も必要である。 Q6.薬物相互作用について教えてください。 フェニトインの血中濃度は併用する抗てんかん薬によって変動する。また、薬物代 謝酵素の誘導作用が強いため、併用薬物の血中濃度を低下させ、薬理効果を減弱さ せる(推奨グレード A)

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- 7 - 【解説】 表に示すフェニトイン血中濃度を変動させる可能性がある薬物の投与開始もしくは中止 、および用量の増減を行った際は、TDM を通常より頻繁に行って相互作用による影響を確 認し、必要に応じて対処を行う。また併用薬の変更後にフェニトインの効果増強もしくは 減弱が認められた場合には、TDM による検証に努める。なお併用による臨床症状の変化は 、併用薬の変更直後ではなく徐々に発現する場合も多いため、長期的な注意深い観察が必 要である。 Q7.代謝酵素の遺伝子検査の必要性について教えてください。 必ずしも行う必要はない(推奨グレード C) 【解説】

フェニトインの主代謝酵素は CYP2C9 であり、一部 CYP2C19 で代謝される。CYP2C19遺 伝子多型の寄与は小さいものの、CYP2C9*1/*3の患者では血清中フェニトイン濃度が低用 量からでも急激に上昇するという報告がある(Odani et al, 1997、Mamiya et al, 1998) 。日本人でのCYP2C9*3のアレル頻度は 3%程度であり、投与前の代謝酵素の遺伝子検査は 必要ではないが、投与初期に適切な TDM を行うことが重要である。

文献検索条件

PubMed (2011.07.03)

phenytoin/(serum OR plasma) AND drug monitoring 436 hits 医中誌(2011.07.05) フェニトイン AND (血清 OR 血漿) AND (血中濃度モニタリング OR ドラッグモニタリン グ) 26 hits 参考文献

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- 10 - フェノバルビタール(PB) フェノバルビタールの特徴と TDM フェノバルビタールは抗てんかん薬として、新生児発作の第一選択薬、部分発作、全般 性強直間代発作およびミオクロニー発作の第二選択薬に用いられる。 Q1.治療濃度域について教えてください。 10-35 μg/mL(推奨グレード A) 【解説】 フェノバルビタールの有効治療濃度域は 10-35 μg/mL とされている。35 μg/mL を超 えると眠気、歩行失調などが出現する。 Q2.一般的な体内動態について教えてください。 他の抗てんかん薬との薬物相互作用が多い(推奨グレード A) 【解説】 フェノバルビタールはヒトで投与量の 45-65%が肝臓で代謝され、主に CYP2C9 および CYP2C19 により p-ヒドロキシフェノバルビタールとなり、さらにグルクロン酸抱合される 。表に主な体内動態情報を示す。相互作用が多く報告されているので必要に応じて TDM を 精密に行う必要がある。 一方、プリミドンは臨床での使用頻度が低い抗てんかん薬であるが、経口投与後約 25% がフェノバルビタールに代謝される。プリミドンの消失半減期は成人で約 8 時間であるの に対してフェノバルビタールの消失半減期は長いため、プリミドン投与時に TDM(治療濃 度域:3-12 μg/mL)を行う際には代謝物としてのフェノバルビタールの TDM を同時に行 うことが求められる。 Q3.測定タイミングについて教えてください。 初回投与開始約 14-28 日以降、投与量変更時には 4-5 日以降に測定する(推奨グレ ード A) 【解説】 フェノバルビタールは半減期が長く、定常状態に達するまでに 10-30 日を要する。また 、1日の血中濃度の変動は小さく、採血時間はトラフ値で良い。ただし、投与間隔内での ピーク値とトラフ値の振れ幅が小さいのでどの時間帯で採血しても大きな誤差はない。バ ルプロ酸、フェニトイン、クロバザムを併用開始時には 4-5 日以降に血中濃度を測定す る。症状が安定した状態における TDM 頻度は1回/1-3ヶ月 程度で良い。 Q4.特殊患者での体内動態について教えてください。 疾患および年齢によりクリアランスが変動する(推奨グレード A) 【解説】 肝硬変患者における消失半減期は 130±15 時間であり、健常人に比べて有意な延長が認

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- 11 - められる。また、腎疾患の程度により消失半減期が延長することが報告されている。尿毒 症患者ではたん白結合率が 20-30%に低下する。これはアルブミン濃度の低下によると考 えられる。 妊娠により血中濃度は低下する。この原因としてはたん白結合率の低下が考えられてい る。また、妊娠に伴う体重増加や羊水中への移行など分布容積の増加も考えられている。 文献検索条件 PubMed (2011.07.03)

phenobarbital/(serum OR plasma) AND drug monitoring 260 hits 医中誌(2011.07.05) フェノバルビタール AND (血清 OR 血漿) AND (血中濃度モニタリング OR ドラッグモニ タリング) 14hits 参考文献

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- 15 - カルバマゼピン(CBZ) カルバマゼピンの特徴と TDM カルバマゼピンは、複雑部分発作、てんかん性格及びてんかんに伴う精神障害、強直間 代発作(全般痙攣発作、大発作)のようなてんかんの痙攣発作、あるいは躁病、躁うつ病 の躁状態、統合失調症の興奮状態、三叉神経痛に用いられる。このうち本邦では 2011 年 現在、カルバマゼピンをてんかん患者、あるいは躁うつ病または躁病の患者に対して使用 したときに、特定薬剤治療管理料の対象となっている。剤形には錠剤と細粒があり、小児 から高齢者まで幅広い年代で使用されている。カルバマゼピンは代謝の自己誘導を起こす ことが知られており、そのため、血中濃度が定常状態に到達するには 3-4 週間が必要であ る。投与量を増量していくと、それに伴う血中濃度の上昇率が徐々に低下する頭打ち現象 が認められる。また、代謝物であるカルバマゼピン-10,11-エポキシドには、カルバマゼ ピンと同程度の抗痙攣作用があると報告されている(Tomson et al, 1990)。 Q1.治療濃度域について教えてください。 4-12 µg/mL であるが、8 μg/mL を超えると、副作用の発現頻度が高まる (推奨 グレード A) 【解説】 カルバマゼピンの有効血中濃度域は、多くの文献で 4-12 μg/mL とされている(St. Louis, 2009、Neels et al, 2004、Eadie, 2001、Rapeport, 1985)。しかし、日本神経 学会監修の「てんかん治療ガイドライン 2010」では、治療域は 5-10 μg/mL とされてい る。さらに、カルバマゼピンの血中濃度が 8 μg/mL を超えると、副作用の発現頻度が高 まることから、最初の治療目標濃度は 5-8 μg/mL とし、薬理効果および患者の状態に応 じて最大 12 μg/mL まで増量するのが良いと考えられる。 主な副作用には、複視、眠気、知覚障害、眼振、運動失調、嘔気・嘔吐があり、これら はカルバマゼピン血中濃度上昇とともに発生頻度が上昇する。一方、血中濃度が治療域内 であっても、皮膚粘膜眼症候群が投与後 1-3 週間に発症することがある。近年、日本人に

おいては HLA-A*3101 がその発症に関連していることが報告された(Ozeki et al, 2011)

。 フェニトイン、フェノバルビタール、バルプロ酸など他の抗てんかん薬を併用している 患者では、カルバマゼピンの副作用が生じやすいため、治療域はやや低めの 4-8 μg/mL が推奨される(Lee, 2009)。 Q2.一般的な体内動態について教えてください。 主として CYP3A4 による代謝を受ける。自己誘導を起こすため、消失半減期は投与 初期で 10-36 時間であるのに対し、連続投与時では 10-24 時間に短縮される(推奨 グレード A) 【解説】 カルバマゼピンは肝において主に CYP3A4 により代謝を受け、それ自身も薬理作用を有 する 10,11-エポキシド体となる。カルバマゼピンは CYP3A4 や CYP2C9 などを誘導するた め、長期投与においては自己誘導が認められる(Neels et al, 2004)。カルバマゼピン の単独投与を受けているてんかん患者において、血中濃度と投与量の関係に個人差は大き

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- 16 - いが、投与初期は投与量に比して高い血中濃度が得られ、その後は低くなることが示され ている。これは、カルバマゼピンの自己誘導によるものである。したがって、カルバマゼ ピンの体内動態パラメータを考える上では、投与初期と長期投与で分ける必要がある。( 表参照) Q3.測定タイミングについて教えてください。 基本的にトラフ値で採血し、投与開始から定常状態到達までは 1-2 週間ごとに測定 し、投与量、併用薬変更時には新たな定常状態到達後にも測定する(推奨グレード A) 【解説】 血中濃度測定に際しては、代謝の自己誘導があるため定常状態に到達(おおよそ投与後 3-4 週間)したことが確認できるまで、1-2 週間ごとの TDM が推奨される。自己誘導が完 全に終了した後は、投与量変更、カルバマゼピンとの相互作用を有する薬物の追加、削除 があったときにモニタリングを行えば良い(Janicak, 1993)。 投与量変更時には、新しい投与量での定常状態到達後に採血する。自己誘導完了後に投 与量を変更した場合には、新たな定常状態に達するのに 4-5 日かかる。自己誘導が完了す る前に投与量を変更した場合には、それまでの投与期間に応じて、定常状態に入るまでに 1-3 週間が必要である(Taylor & Diers Caviness, 1985)。

カルバマゼピンの代謝を誘導あるいは阻害する薬物の併用が開始あるいは中止された場 合には、定常状態に入るまでに 1-2 週間が必要である(Taylor & Diers Caviness, 1985 )。 Q4.特殊患者での体内動態について教えてください。 重篤な肝障害患者、高齢者、妊婦には慎重に投与する(推奨グレード A) 【解説】 重篤な肝障害において、カルバマゼピンの全身クリアランスは低下するため(Lee, 2009)、投与量減量を考慮した慎重なモニタリングおよび投与設定が必要である。一方、 腎障害では全身クリアランスに大きな変化はない(Bennett et al, 1994)。 小児においては成人よりも高いクリアランス値を示す。テグレトール®添付文書におい ては、成人(14-64 歳)に対して小児(6-13 歳)では、カルバマゼピン代謝速度が速いた め投与量当たりの血中濃度は低値を示す。成長に伴いカルバマゼピンクリアランスが減少 するとの報告がある(Taylor & Diers Caviness, 1985)。

高齢者においては、肝機能低下のためカルバマゼピンの全身クリアランスは低下すると 言われているが、成人と高齢者でカルバマゼピン体内動態に変化はないとする報告もある ため(Hockings et al, 1986)、個々の患者に合わせたモニタリングが必要である。 妊婦に関しては投与量変更の必要はないとの報告(Tomson et al, 1994、Battino et al, 1985)がある。一方、妊娠中にはカルバマゼピンの全身クリアランスが約 2 倍に上昇 し、分娩後 2 週間で元に戻るため、出産 1 ヶ月後までは頻繁なモニタリングが必要との記 載(Taylor & Diers Caviness, 1985)もあり、一定の見解が得られていない。

Q5.薬物相互作用について教えてください。

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- 17 - 【解説】 評価が一定ではない薬物もあるが、カルバマゼピンと相互作用を生じる抗てんかん薬は 数多くある。一般的に、バルプロ酸、フェノバルビタール、プリミドン、クロナゼパム、 エトスクシミド、特にフェニトインは、CYP3A4 を誘導することでカルバマゼピンの代謝 を促進し血中濃度を低下させる。一方、クロバザムは、カルバマゼピンの代謝を阻害し血 中濃度を上昇させる(てんかん治療ガイドライン 2010)。 Q6.活性代謝物の TDM の意義について教えてください。 ルーチンでの測定は必要ない(推奨グレード C) 【解説】 活性代謝物であるカルバマゼピン-10,11-エポキシド体は、カルバマゼピンの 1/4-1/2 程度の濃度で体内に存在し(Anderson, 2008)、主にグルクロン酸抱合を受け尿中排泄さ れる。10,11-エポキシドを直接投与したときの消失半減期は約 6 時間である(Neels et al, 2004)。10,11-エポキシドは、カルバマゼピンと同程度の抗痙攣作用があると報告さ れているが(Tomson et al, 1990)、ルーチンの TDM の必要性については認められていな い(Johannessen & Landmark, 2008)。一方で、カルバマゼピンの血中濃度が高くないに も関わらず副作用が現れている患者ではエポキシド体の蓄積が考えられ、エポキシド体の TDM を勧める報告がある(St Louis, 2009、Potter & Donnelly, 1998)。

免疫学的測定法では 10,11-エポキシド体と高い交差性を示す検査試薬もあり、PETINIA 法での交差性は 96%と報告されている(McMillin et al, 2010)。

文献検索条件

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carbamazepine & (serum OR plasma) & drug monitoring 456 hits 医中誌(2011.09.21) カルバマゼピン AND (血清 OR 血漿) AND (血中濃度モニタリング OR ドラッグモニタリ ング) 22 hits 参考文献

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- 20 - バルプロ酸ナトリウム(VPA) バルプロ酸ナトリウムの特徴と TDM バルプロ酸ナトリウム(以下、バルプロ酸)は各種てんかん(小発作・焦点発作・精神 運動発作ならびに混合発作)およびてんかんに伴う性格行動障害(不機嫌・易怒性等)の 治療、躁病および躁うつ病の躁状態の治療、片頭痛発作の発症抑制に適応を有し、錠剤、 シロップ剤、細粒、および徐放性製剤が開発されている。 バルプロ酸血中濃度と臨床効果、副作用(毒性)に関する報告は数多いが、これらの明 確な相関性は示されていない。しかし、バルプロ酸体内動態の個体間/個体内変動は大き く、治療濃度域において濃度依存性にたん白結合率が変化すること、毒性代謝物の生成、 他の抗てんかん薬(AEDs)との相互作用、その他、合併症や患者年齢など、バルプロ酸体 内動態への影響要因は多岐に亘るため、目的とする効果が得られていない場合、副作用出 現時、服薬状況の確認、投与量調節の際、多剤併用時、妊娠中、てんかん重積状態治療時 、肝障害、腎障害など臨床上必要性がある場合の TDM が推奨されている。 Q1.治療濃度域について教えてください。 40-125μg/mL (推奨グレード A) 【解説】 本邦のバルプロ酸製剤のインタビューフォームには 40-120μg/mL が治療上有効な血中 濃度と記載されており、一般に、バルプロ酸の有効濃度下限は 40μg/mL 程度が目安とさ れる。有効濃度上限についての確固たるコンセンサスはないが、部分発作患者ではしば しば 100μg/mL 以上のバルプロ酸濃度を要し、難治性部分発作の患者では 80-150μg/mL でコントロールが得られることがある。躁うつ病に対する臨床効果とバルプロ酸血中濃 度との間には線形性があり、米国精神医学会ガイドラインでは躁うつ病に対するバルプ ロ酸目標血中濃度を 50-125μg/mL と定めている(Allen et al. 2006, Bowden et al. 1996)。 毒性域は一般に 200μg/mL 以上とされているが、バルプロ酸血中濃度と副作用のリス ク域値は明確でなく、昏睡、せん妄は多くの場合 100μg/mL 以上、吐き気、嘔吐、傾眠 、めまい、運動失調などの副作用症状は治療濃度域でも発現する可能性があるため、副 作用に関する注意は常に必要である。 Q2.一般的な体内動態について教えてください。 治療用量範囲において、投与量と総バルプロ酸血中濃度は非線形を示すが、非結合 形バルプロ酸濃度は投与量に比例して上昇する(推奨グレード A) 【解説】 バルプロ酸の経口製剤のバイオアベイラビリティはほぼ 100%である。経口投与後、通 常製剤ではおよそ 2 時間、徐放性製剤ではおよそ 10-12 時間で最高血中濃度に到達する。 バルプロ酸のたん白結合率は濃度依存性の非線形を示し(Machkichan & Macgory 2009, Garnett et al. 2005)、治療濃度域でのたん白結合率はおよそ 70-95%である。分布容積 はほぼ細胞外液に相当するが、胎盤通過性を有するため臍帯血中バルプロ酸濃度は母体血 中濃度の 1.5-2.0 倍、たん白結合率が高いため母乳中濃度は母体血中濃度の 1-10%程度 である。大部分は肝代謝により消失し、尿中未変化体排泄率は 5%以下である。肝クリア ランスは肝血流量に依存せず肝固有クリアランスと非結合形分率に依存するため、総バル プロ酸血中濃度は投与量の増加とは比例せず頭打ちの傾向を示すが、非結合形濃度は投与

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- 21 -

量に比例して上昇する。β-酸化、シトクロム系酵素(CYP2C9、CYP2C19、CYP2A6 など) による代謝、UDP-glucuronosyltransferase(UDPGT)を介するグルクロン酸抱合がバルプ ロ酸の主な代謝経路であり、CYP を介して生成される代謝物 2-propyl-4-pentenoic acid (4-en-VPA)は肝毒性と胎児毒性(催奇形性)に関与する。 Q3.測定タイミングについて教えてください。 初回投与後または投与量変更後 3-5 日目以降に測定する(推奨グレード A) 【解説】 トラフ値をモニタリングする。単剤投与時のバルプロ酸の消失半減期は、通常製剤 6-20 時間、徐放性製剤 14-26 時間程度であるため、それぞれ定常状態に到達する初回投与 後または投与量変更後の 3-5 日目以降で血中濃度を測定する。ただし、バルプロ酸は他の AEDs など酵素誘導作用をもつ薬剤と併用により消失半減期が短縮するため、状況により 早めの測定も考慮する。 Q4.特殊患者群での体内動態について教えてください。 病態や生理状態が特殊な患者では、総バルプロ酸血中濃度測定値のみに基づく判断 は評価を誤る可能性がある(推奨グレード B) 【解説】 総バルプロ酸血中濃度は非結合形分率と肝固有クリアランス両方の影響を受けるが、非 結合形薬物濃度は肝固有クリアランスのみに依存する。つまり、腎疾患時など、バルプロ 酸たん白結合率が低下する病態は総バルプロ酸血中濃度を低下させるが非結合形バルプロ 酸の薬物動態には影響しないため投与量調節の必要はない。肝疾患時には肝固有クリアラ ンスが低下するが、低アルブミン状態を呈している場合には非結合形分率も上昇するため 、非結合形濃度が上昇しているにもかかわらず総血中濃度は治療濃度域に入っていること がある。このように肝・腎機能障害患者においては総バルプロ酸血中濃度測定値のみにも とづく判断は評価を誤る危険性があり、非結合形バルプロ酸濃度の挙動を意識する必要が ある。透析患者の透析日に追加投与の必要はないが、バルプロ酸は高濃度域ほど非結合形 分率が高く、分布容積がほぼ細胞外液に相当することから、過量投与時などの血中濃度異 常高値の際には high-efficiency HD/HDF(高効率血液透析/血液透析ろ過)が体内から のバルプロ酸除去に有効である。 新生児のたん白結合率は 84-90%と成人に比しやや低く、非結合形分率が高いが、3-16 歳におけるたん白結合率および分布容積は成人と大きく変わらない。小児の全身クリアラ ンスは成人に比し大きめで、消失半減期はやや短い。小児においては年齢によるバルプロ 酸体内動態の経時的変化に伴う非結合形バルプロ酸濃度の挙動を常に意識して評価を行な う。 高齢者の全身クリアランスは非高齢者と大きく変わらないが、たん白結合率や非結合形 バルプロ酸クリアランスが低下するため、予想以上に非結合形バルプロ酸濃度が高い可能 性を考慮し、臨床症状・経過にもとづき投与量設定を行なう。 妊娠中は、妊娠後期(第 3 期)のたん白結合率の低下とクリアランス増加により、しば しば総バルプロ酸血中濃度が低下するが非結合形バルプロ酸濃度は比較的安定であるため 、総濃度の低下のみを理由に増量すべきではない。 以上のように、特殊な患者群などの非結合形分率の上昇が予想されるような場合は、状 況により総濃度は低めの設定から様子を見るなどの配慮も必要である(Machkichan & Macgory 2009)。

(22)

- 22 -

Q5.その他に TDM を行なう上で考慮すべきことについて教えてください。 カルバペネム系抗生物質の併用は禁忌である(推奨グレード A) 【解説】

バルプロ酸は、肝ミクロソーム酵素を誘導しないため自身や併用薬剤の代謝を促進せず 、CYP2C9 や UGT、epoxide hydroxylase で代謝される薬物を併用した際には阻害剤となる 。また、バルプロ酸はたん白結合率が高いため、他の薬物のアルブミンとの結合を置換す るとともに、非結合脂肪酸などの内因性物質による置換を受ける。カルバペネム系抗生物 質はバルプロ酸の血中濃度を低下させるため併用禁忌である。

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valproic acid/(serum OR plasma) AND drug monitoring 301 hits

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- 27 - ゾニサミド(ZNS) ゾニサミドの特徴と TDM ゾニサミドは広範な抗てんかんスペクトルを有し、難治性てんかんにも有効性を示す抗 てんかん薬で、成人と小児の部分てんかんおよび全般てんかんに適応を有する。治療用量 範囲において、ゾニサミドの投与量と血中濃度は直線的な関係を示す。一般的な治療濃度 域は確認されているが、血中濃度と薬効/副作用の関連性は明らかではない。ゾニサミド の消失半減期は長く、酵素誘導作用を有する抗てんかん薬と薬物相互作用を示す。ゾニサ ミドの血中濃度のモニタリングは、定常状態における患者個々の濃度を参照する場合、治 療効果が発現しない場合ならびに副作用や薬物相互作用を確認する場合等に実施を考慮す る。 Q1.治療濃度域について教えてください。 10-30 μg/mL(推奨グレード B) 【解説】 ゾニサミドの治療濃度域は、てんかんの重症度や症例によって違いがあり、確定してい ない。一般的な治療濃度域は 10-30 μg/mL とされ(Wilensky, 1985)、20 μg/mL 前後が 目安と考えられている。10-40 μg/mL とする報告もある(Mimaki, 1998; Johannessen et al, 2006)。しかし、血中濃度と臨床効果との関連性は明らかでなく、てんかん発作が抑 制された患者と無効患者の血中濃度に有意な差は認められていない(Faught et al, 2001; Brodie et al, 2004; French et al, 2004a; Sackellares et al, 2004) 。 一 方 、 30 μg/mL 以上で認知機能の低下(Berent et al, 1987)、40μg/mL 以上で眠気/注意力低下 (Sackellares et al, 1985; Miura, 2004)が報告されていることから、血中濃度上昇によ る副作用を確認する場合には血中濃度のモニタリングの実施を考慮する。

Q2.一般的な体内動態について教えてください。

治療用量範囲において投与量と血中濃度は直線的な関係を示す(推奨グレード B) 【解説】

ゾニサミドは経口投与でそのほとんどが吸収され、成人では 2-5 時間以内に最高血中濃 度に到達する(Johannessen et al, 2006; Perucca et al, 1996)。ゾニサミドは血清たん 白と 40-60%が結合するため(Perucca et al, 1996)、血中非結合形濃度を測定する必要 はない。ゾニサミドは赤血球に高い親和性を示すため、血清より赤血球内濃度が高くなる 。ゾニサミドは投与量と血中濃度が非線形性を示すことが報告されているが(Wagner et al, 1984)、定常状態の治療用量範囲においては投与量に比例して血中濃度が上昇する (Perucca et al, 1996; Faught et al 2001)。

Q3.測定タイミングについて教えてください。

初回投与後または投与量変更後の 2 週間以降に測定する(推奨グレード A) 【解説】

ゾニサミド単剤投与の消失半減期は 50-70 時間である(Johannessen et al, 2006; Perucca et al, 1996)。定常状態に到達するまでには半減期の 5 倍以上の時間が必要であ

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- 28 - るため、初回投与後または投与量変更後の 2 週間以降にゾニサミドの血中濃度を測定する 。 内 服 後 の 血 中 濃 度 の ピ ー ク は 成 人 で 2-5 時 間 で あ る (Johannessen et al, 2006; Perucca et al, 1996)。ゾニサミドは長い半減期を有するため、定常状態以降のトラフと ピークの血中濃度の差は小さく(Kochak et al 1998; Miura 2004)、採血時間の相違に よる影響も小さい。しかし、同一の患者では同じタイミングで採血することが望ましい。 Q4.特殊患者での体内動態について教えてください。 肝・腎機能障害患者では血中濃度のモニタリングを実施する(推奨グレード C) 【解説】

ゾニサミドは肝臓(70%)と腎臓(30%)で消失する(French et al, 2004a)。肝・腎機能 障害とゾニサミドの体内動態に関するデータは少ない。しかし、重篤な腎機能障害ではク リアランスが低下することが報告されている。また、重篤な肝機能障害でも血中濃度が上 昇するおそれがある。従って、肝・腎機能障害患者では血中濃度モニタリングの実施を考 慮する。 Q5.小児での体内動態について教えてください。 一定の血中濃度を得るには低年齢ほど体重当たりの投与量を多くする必要がある( 推奨グレード A) 【解説】 ゾニサミドの小児における消失半減期は 16-36 時間、血中濃度のピークは 1-3 時間であ り、低年齢ほど半減期とピーク時間が短くなる。逆に、ゾニサミドのクリアランスは低年 齢ほど大きくなるため、一定の血中濃度を得るには低年齢ほど体重当たりの投与量を多く する必要がある(Johannessen et al, 2006; Miura, 2004; Perucca et al, 1996)。思春 期以降は成人と同様になる。従って、発達や成長を考慮した投与設計と TDM を行う必要が ある。 Q6.薬物相互作用について教えてください。 酵素誘導作用を有する抗てんかん薬の併用によりゾニサミドのクリアランスが増加 する(推奨グレード A) 【解説】 ゾニサミドは主として肝臓のシトクロム P-450(CYP3A4)によって代謝されるため、酵 素誘導作用を有するフェニトイン、カルバマゼピン、フェノバルビタールとの併用により ゾニサミドのクリアランスが増加する(Ojemann et al, 1986)。従って、酵素誘導作用を 有 す る 抗 て ん か ん 薬 を 併 用 し て い る 場 合 の 消 失 半 減 期 は 25-40 時 間 と 短 く な る (Johannessen et al, 2006; Perucca et al, 1996)。ゾニサミドが他の抗てんかん薬(フ ェニトイン、カルバマゼピン、バルプロ酸およびラモトリギン)の血中濃度に及ぼす影響 は小さい(French et al, 2004a; Levy 2004 & 2005; Ragueneau-Majlessi et al, 2004) 。薬物相互作用が推定される場合には、血中濃度のモニタリングを考慮する。

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- 29 - PubMed (2011.09.15)

zonisamide /(serum OR plasma) AND drug monitoring 33 hits

医中誌(2011.09.15)

ゾニサミド AND (血清 OR 血漿) AND (血中濃度モニタリング OR ドラッグモニタリング) 6 hits

参考文献

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- 32 - クロバザム(CLB) クロバザムの特徴と TDM クロバザムは他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかんの部分発作(単純 部分発作、複雑部分発作、二次性全般化強直間代発作)および全般発作(強直間代発作、 強直発作、非定型欠神発作、ミオクロニー発作、脱力発作)に対して他の抗てんかん薬と 併用して用いられる。クロバザムおよび活性代謝物 N-デスメチルクロバザムの血中濃度 測定方法として HPLC が用いられており外注測定が可能である。治療域は明らかとはなっ ていないため TDM の有用性は限定的で、期待される治療効果が得られない場合や副作用が 疑われる場合等に TDM の実施を考慮する。活性代謝物の血中濃度はCYP2C19遺伝子型の影 響を受けるため注意が必要である。 Q1.治療濃度域について教えてください。 クロバザムについて 0.1-0.4 μg/mL (活性代謝物の濃度は 8 倍高値)という報告が ある(推奨グレード C) 【解説】 クロバザムの治療濃度域については 0.1-0.4 μg/mL(活性代謝物である N-デスメチルク ロバザムの濃度は 8 倍高値)とする報告があるが(Neels et al, 2004)、活性代謝物とクロ バザム血中濃度の比には大きな個体間変動があるため注意が必要である(安田ら, 2008) 。また、クロバザムや活性代謝物の血中濃度と治療効果に関連がないという報告もあるが (Allen et al, 1983)、活性代謝物の血中濃度が高くなる患者では低用量のクロバザム (平均 5.6 mg/day)が有効であるとの報告がある(Kinoshita et al, 2008)。そのため 、血中濃度の解釈については個々の患者の臨床症状を見ながら、個別に対応するべきであ る。 Q2.一般的な体内動態について教えてください。 主として肝臓の薬物代謝酵素 CYP3A4 で代謝され、活性代謝物 N-デスメチルクロバ ザムは CYP2C19 で不活化される(推奨グレード A) 【解説】 臨床用量を経口投与した後 1-4 時間以内に最高血中濃度に到達する(Neels et al, 2004; Glauser and Pippenger, 2000)。主として肝臓で代謝され、未変化体の尿中排泄率 は投与量の 1.0-2.7%である(マイスタン添付文書)。クロバザムは主として薬物代謝酵 素 CYP3A4 で代謝され、活性代謝物 N-デスメチルクロバザムは CYP2C19 で不活化される (Giraud et al, 2004) 。 活 性 代 謝 物 の 薬 理 活 性 は 未 変 化 体 の 40 % ( Fielding & Hoffmann, 1979)あるいは 1/2-1/15(マイスタンインタビューフォーム)であるとされて いる。 Q3.測定タイミングについて教えてください。 初回投与後または投与量変更後 2-4 週目以降に測定する(推奨グレード B) 【解説】 クロバザムの消失半減期は単剤投与時において成人で 10-30 時間、活性代謝物の半減期

参照

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