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1. はじめに 5 年 7 月の住宅着工戸数は 季調済年率換算値で 万戸 前年同月比 +.3% と 97 年以来の高水準 かつ ヶ月連続の着工増加となった 利用関係別に見ると 持家は 年後半以降 住宅ローン減税の規模縮小に伴う駆け込み需要の剥落により 季調済年率換算値で 35.2 万戸

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2005 年 9 月 9 日発行

分譲住宅市場の展望

∼分譲マンション在庫の現状∼

調査本部 経済調査部

松田 進

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1.はじめに 05 年 7 月の住宅着工戸数は、季調済年率換算値で 133.5 万戸、前年同月比+8.3%と 97 年以来の高水準、かつ 4 ヶ月連続の着工増加となった。利用関係別に見ると、持家 は04 年後半以降、住宅ローン減税の規模縮小に伴う駆け込み需要の剥落により、季調 済年率換算値で35.2 万戸、前年同月比▲8.5%と 11 ヶ月連続での減少となっている。 一方、平成バブル崩壊後、着工戸数が抑えられていた貸家は、04 年以降、低金利下で、 首都圏の新築賃貸マンションの利回りが5%超と底堅く推移しているため、資産運用 手段として見直されたこともあり、季調済年率換算値で50.3 万戸、前年同月比+17.3% と4 ヶ月連続で増加している。また、分譲住宅は、30 歳代の分譲マンションや分譲一 戸建ての購入が中心となり、貸家とともに住宅着工を牽引してきた。04 年 10 月~12 月期には、過剰供給が懸念され一旦着工戸数が減少したものの、05 年に入ると回復、 7月には季調済年率換算値で38.9 万戸、前年同月比+14.0%と急拡大した(図表1)。 このように分譲住宅は貸家とともに住宅着工戸数を牽引しているものの、首都圏の 分譲マンション市場では、05 年に入っても過剰供給問題が持ち上がっており、少子化 による世帯数の伸び悩みや金利の上昇、地価の上昇や消費税率引き上げに伴う需要の 低下等、今後の住宅市場には様々な下押し要因が存在している。 これまで堅調に推移し、足元では急拡大を見せ、住宅市場を牽引してきた分譲住宅 着工であるが、05 年も好調は持続するのであろうか。本稿では、分譲住宅着工戸数の 約 6 割を占める分譲マンションの動向を中心に、分譲住宅市場の今後について考えて いきたい。 30 32 34 36 38 40 42 44 46 48 50 01 02 03 04 05 持家 貸家 分譲 (万戸) (注)季節調整済みの年率換算値で後方3ヵ月移動平均。 (資料)国土交通省「住宅着工統計」 持家:税制変更 に伴う駆け込み 需要と反動落ち が顕著 貸家:上昇トレンド 分譲:横ばいから 上昇トレンドへ 図表1:利用関係別着工戸数推移

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2.分譲住宅市場の動向 (1)10 年以上高水準が続く分譲住宅着工 分譲住宅着工戸数の動きを長期的に見ると、平成バブル末期の90 年に年間 38 万戸 弱まで拡大した後、92 年には年間 21 万戸にまで減少したものの、金利や地価の低下 を背景に 94 年には年間 37 万戸まで増加、消費税率が引き上げられた 97 年まで年間 35 万戸程度の高水準を維持した。98 年には消費税率引き上げに伴う駆け込み需要後の 反動落ちから一旦 29 万戸まで減少するも、00 年以降は住宅ローン減税の実施効果、 首都圏を中心とする大規模・超高層マンションの供給増や団塊ジュニア世代1の需要を 期待したデベロッパーの着工増に後押しされ、32~35 万戸程度の比較的高い水準の着 工が続いている(図表1)。このように、分譲住宅着工は総じて見ると、94 年以降 10 年間以上、バブル期並みの高水準の着工を維持している。 10 15 20 25 30 35 40 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04(年) (万戸) バブル崩壊 消費税率引き上げ 住宅ローン減税 (資料) 国土交通省「住宅着工統計」 (2)増加するマンションと一戸建ての着工 分譲住宅は、建て方別には「一戸建て」・「長屋」・「共同住宅」に、さらに共同 住宅は、「マンション」と「マンション以外」に分類されており、着工戸数の建て方 別構成比を見ると、マンション(共同住宅)と一戸建ての合計で全体の約99%を占め ている(図表3)。また、マンションは規模別に「大規模」・「中規模」・「小規模」 に、高さ別に「低層」・「中層」・「高層」・「超高層」に分類されることが多い。 分譲住宅全体の約6 割を占めるマンション着工戸数は、00 年以降、首都圏を中心に大 規模マンションや超高層マンションを中心に大幅な増加が続いている(図表 4)。ま た、残りの大部分を占める一戸建てもパワービルダー2と呼ばれる業者が、建築コスト 削減により、低価格の規格住宅を大量供給したことから、一戸あたり平均価格が低下 し、それが需要の拡大に寄与したものと考えられる(図表5)。 1 ここでいう団塊ジュニア世代とは、1970~1974 年生まれの世代。団塊世代に次ぐ人口のボリュームがある。 2 建売り住宅を低価格で販売する地域密着型の住宅販売会社。 図表2:分譲住宅着工推移

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(建て方別分類) 戸数 % 備考 139,242 40.3 1つの建物が住宅であるもの。 1,141 0.3 2つ以上の住宅を1棟に建て連ね、別で出入り口を有するもの。例;テラスハウス マンション 204,081 59.1 分譲住宅で鉄筋(鉄骨)構造のもの。 マンション以外 1,037 0.3 分譲住宅で木造構造のもの。 345,501 100.0   ― (資料)国土交通省「住宅着工統計(2004)」 共同 合計 一戸建て 長屋 ( マ ン シ ョ ン 分 類 ) 大 規 模 マ ン シ ョ ン 2 0 0 戸 ~ 低 層 マ ン シ ョ ン 3 階 建 て 中 規 模 マ ン シ ョ ン 5 0 戸 ~ 1 9 9 戸 中 層 マ ン シ ョ ン 4 、 5 階 建 て 小 規 模 マ ン シ ョ ン ~ 4 9 戸 高 層 マ ン シ ョ ン 6 ~ 1 9 階 建 て 超 高 層 マ ン シ ョ ン 2 0 階 以 上 、 ま た は 高 さ 6 0 m 以 上 規 模 高 さ 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000 86 88 90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10~ (年) (戸) 賃貸マンション 分譲マンション (注) 05年以降は計画数字であり、賃貸マンションも含める。     10年は10年以降も含める。 (資料)不動産経済研究所 「マンション市場動向」 予定 0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 8000 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 (年) (棟) 0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 8000 (万円) 発売戸数(左目盛) 平均価格(右目盛) (資料)不動産経済研究所『マンション市場動向』より 3.分譲住宅着工増加の要因 上述のように分譲住宅着工戸数が増加した要因には、①住宅ローン減税の実施と低 金利の継続、②用地供給増加、③団塊ジュニア世代の住宅取得、などが挙げられる。 ①住宅ローン減税の実施と低金利の継続による着工増加 分譲住宅着工が増加した主な要因の一つとして、住宅ローン減税と低金利の継続に よる借入負担の低下が挙げられる。通常、分譲マンションの着工から竣工までの工期 は約1 年程度といわれており3、住宅ローン減税は年末時点で居住をしている必要があ るため、駆け込み需要を見込んだ着工は住宅ローン減税の規模が縮小される 1 年程前 に集中する傾向が見られる。99 年以降、実施されている住宅ローン減税は、段階的に 規模が縮小されるため需要が刺激されやすく、デベロッパーは駆け込み需要が発生す ることを狙い着工を増加させたものと思われる(図表6)。 3 大規模・超高層マンションなどでは、工期が2 年以上掛かる物件もある。 図表3:分譲住宅の分類とマンションの分類 図表4:首都圏超高層マンション供給・計画 図表5:首都圏建売販売戸数・平均単価推移

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さらに、住宅購入にあたりローン金利は重要な購入理由の一要因となっており、現 在も続く低金利は、住宅ローンの利用促進に大きく貢献している(図表7、8)。 30 34 38 42 46 50 54 58 62(千戸) 02 03 04 05 06 07 08 (年末までに入居が条件) 過去減税実施分 ローン残 5,000万円 (上限) 減税額    587.5万円 (上限) ローン残    5,000万円    (上限)    減税額      500万円 (上限) ローン残 4,000万円 (上限) 減税額 360万円   (上限) ローン残 3,000万円   (上限) 減税額  255万円 (上限) ローン残 2,500万円  (上限) 減税額  200万円   (上限) ローン残 2,000万円 (上限) 減税額 160万円 (上限) (資料) 国土交通省 「住宅着工統計」 01 00 99 98 駆け込み需要を見込んだと思われる着工増 0 1 0 2 0 3 0 4 0 1 ( % ) 金 利 ・ 税 制 面 で よ い タ イ ミ ン グ 手 狭 に な っ た 家 賃 よ り ロ ー ン 返 済 の 方 が 得 マ イ ホ ー ム が 欲 し か っ た 部 屋 数 が 不 足 し た 駅 ま で 遠 か っ た そ の 他 景 気 ・ 地 価 等 で よ い タ イ ミ ン グ 老 朽 化 し た 環 境 が 悪 か っ た 通 勤 が 不 便 だ っ た 結 婚 を 機 会 に 買 い 物 が 不 便 だ っ た 子 供 の 就 学 前 に 移 転 し た い 出 産 に よ り 家 族 が 増 え た 社 宅 の 退 去 時 期 借 家 の 更 新 時 期 子 供 の 入 学 や 卒 業 を 機 会 に 電 車 の 便 が 悪 か っ た 賃 料 等 が 上 が っ た ( 資 料 ) 日 本 経 済 社   「 首 都 圏 大 規 模 マ ン シ ョ ン 購 入 者 調 査 ( 2 0 0 5 年 ) 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 (年) (%) 銀行 公庫 (資料)日経FQ (注) 銀行は都市銀行変動金利、公庫は住宅金融公庫個人住宅金利     を使用。 ②用地供給増加による着工増加 分譲住宅の着工が好調な要因として次に挙げられるのが、企業による用地供給の増 加である。バブル崩壊後、地価は大幅に下落した。首都圏を中心に不動産を所有して いた企業の中には、リストラや減損会計への対応のため不動産を売却する企業が 97 年頃から増加、そこに大規模・超高層マンションが建設されたものと考えられる(図 表9)。東京都心 5 区4の大規模土地取引(2,000 ㎡以上)の動向を見ると、利用目的 4 千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区。 図表6:住宅ローン減税の規模縮小とマンション着工(全国)推移 図表7:マンション購入検討の理由上位 20 図表8:住宅ローン金利推移

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が住宅地の取引件数は 02 年に一時減少したものの面積は増加傾向にあり、住宅用地 の取得が活発に行われている状況が窺える(図表10)。 27.5 25.6 29.8 36.9 49.5 52 57.2 57.3 56.2 49.2 40.9 42.7 7.2 9.5 6.8 7.8 5.4 4.7 5.9 1.3 2.2 1.4 2.2 2.2 0 2.5 6.2 3.9 2 4 0% 20% 40% 60% 80% 100% 00 99 98 97 96 95 (年) 個人のみ 法人のみ 個人と法人 その他 移転なし (資料) 国土交通省 「都心回帰現象の実態把握調査」 (注)調査は東京都心8区(千代田、中央、港、新宿、渋谷、豊島、台東、 文京区)の分譲マンション946棟が対象。 0 500 1,000 1,500 2,000 99 00 01 02 03 04 (年) (千㎡) 0 100 200 300 400 (件) 面積 件数 (資料) 東京都 「東京の土地(2004)」 さらに、企業がリストラや減損会計に備え売却した土地は、平成バブル期より価格 が下落しているため、デベロッパーはより低価格でマンションを供給することが可能 となったことも、分譲マンションの着工戸数増加に寄与したと見られる。首都圏にお けるマンションの販売単価は、平成バブル崩壊直後の92 年に 1 ㎡あたり約 80 万円で あったが、02 年には約 50 万円程度と 3 割以上低下しており、その後も 50 万円代で推 移している(図表11)。 また、首都圏においては他地域からの人口流入もさらなる着工増に繋がったものと 思われる(図表12)。04 年の人口移動の状況を見ると、一都三県への転入が増加して おり、特に東京都心への人口の集中は『都心回帰』ともいわれている。 0 2 4 6 8 10 12 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 (年) (万戸) 0 10 20 30 40 50 60 70 80 (万円) 発売戸数(左目盛) 1㎡単価(右目盛) (資料) 不動産経済研究所 「首都圏マンション動向」 -2 -1 0 1 2 3 4 5 6 7 8 北 海 道 青 森 県 岩 手 県 宮 城 県 秋 田 県 山 形 県 福 島 県 茨 城 県 栃 木 県 群 馬 県 埼 玉 県 千 葉 県 東 京 都 神 奈 川 新 潟 県 富 山 県 石 川 県 福 井 県 山 梨 県 長 野 県 岐 阜 県 静 岡 県 愛 知 県 三 重 県 滋 賀 県 京 都 府 大 阪 府 兵 庫 県 奈 良 県 和 歌 山 鳥 取 県 島 根 県 岡 山 県 広 島 県 山 口 県 徳 島 県 香 川 県 愛 媛 県 高 知 県 福 岡 県 佐 賀 県 長 崎 県 熊 本 県 大 分 県 宮 崎 県 鹿 児 島 沖 縄 県 (万人) (資料) 総務省「住民基本台帳人口移動報告(2004)」 ③団塊ジュニア世代の住宅取得に伴う着工増加 91 年以降の首都圏におけるマンション着工の動きを見ると、まず 94 年に価格の 低下などを受けて着工が急増した後、概ね横ばい圏での推移が続き、00 年以降はや 図表9:マンション敷地の従前所有者 図表10:住宅地利用目的土地取引推移 図表11:首都圏分譲マンション販売戸数と 1 ㎡単価の推移 図表12:都道府県別人口転入超過数

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や水準を高めている(図表13)。 一方、この間の住宅金融公庫の平均利用年齢を見ると、93 年から 99 年にかけて 上昇が続いていたが、00 年以降は低下に転じている。これは、人口のボリュームが ある団塊ジュニア世代が30 代となり、住宅取得を本格化し始めたことが、平均年齢 を押し下げたことを示しているものと思われる。このような団塊ジュニア世代の持 家取得の動きが分譲住宅の着工戸数に拍車を掛けたものと思われる。 0 2 4 6 8 10 12 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 (年) 35.5 36.0 36.5 37.0 37.5 38.0 38.5(歳) 着工戸数(左目盛) 平均年齢(右目盛) 平均価格(左目盛) (資料) 住宅金融公庫「公庫融資利用者調査」、 不動産経済研究所「首都圏マンション市場動向」 国土交通省「住宅着工統計」 団塊ジュニア30代 (万戸・・棒グラフ、千万円・・折線グラ 4.分譲住宅着工戸数の増加要因の変化 (1)04年10~12月期の減少と動向変化 03 年第 3 四半期以降、前年比で増加が続いていた分譲住宅着工戸数は、04 年の 10 ~12 月期には前年比マイナスに転じた(図表 14)。中でも首都圏の分譲マンションの 着工戸数が大きく落ち込んだ(図表15)。05 年に入った後は、分譲住宅着工は前年比 で再びプラスとなり、7 月には大幅に伸びを高めたものの、マンション業界には「2005 年問題」と言われる過剰供給に伴う在庫増大の懸念も指摘されている。そこで、以降 では住宅着工全体の先行きを左右するものと思われる分譲マンションの在庫状況を確 認した上で、需要を変化させる諸要因について検証したい。 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 25 02 03 04 05 (年) (前年比%) 持家 借家 分譲 (資料)国土交通省「住宅着工統計」 (注)3ヶ月移動平均値 -25 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 02 03 04 05 (対前年比寄与 度%) 首都圏 中部 関西 その他 全国 (資料) 国土交通省「住宅着工統計」 図表13:マンション着工と価格、公庫利用者年齢推移(首都圏) 図表14:利用関係別着工推移 図表15:都市圏別マンション着工推移

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(2)首都圏分譲マンションの「2005 年問題」 最近の首都圏分譲マンション市場において、「2005 年問題」と呼ばれる問題が指摘 されている。それは、これまでマンション着工戸数が需要を上回る水準で推移した結 果、供給過剰となり、大量の在庫が発生するというものである。 ①首都圏分譲マンション在庫の現状 不動産経済研究所が毎月公表している販売・在庫数5を基に首都圏の分譲マンション の在庫循環図を作成してみると(図表 16)、概ね時計回りになっており、05 年 4~6 月期には販売の持ち直しにより、在庫調整が終了し、在庫を増やしていく「在庫積み増 し局面」にあることが分かる。実際に、在庫数と契約率の推移を見ると、契約率が足元 でやや上昇傾向を見せつつ高水準で推移するなかで、在庫数は減少を続けており、 「2005 年問題」は生じてないように見える(図表 17)。 -40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40 -40 -20 0 20 40 在庫前年比(%) 販 売 前 年 比 ( % ) 2000.1Q 2005.2Q 在庫調整局面 在庫積み増し局面 意 図 せ ざ る 在 庫 増 (資料) 不動産経済研究所「マンション市場動向」 意 図 せ ざ る 在 庫 減 40 45 50 55 60 65 70 75 80 85 90 98 99 00 01 02 03 04 05 (年) 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 在庫 契約率 (%) (千戸) (資料)不動産経済研究所「マンション市場動向」 ただし、この在庫循環図で用いた「在庫数」のデータには、デベロッパーの「期分け 販売」6の状況によって水準が変化する可能性がある点には注意が必要である。すなわ ち、ここで用いた「在庫数」は着工後、販売されたマンションのうち売れ残っている もののみがカウントされ、着工はされているが販売がされていないものは在庫数に含 まれず(「見えざる在庫」と定義)、一方で販売が開始された後、竣工(完成)まで 売れ残っている物件は仕掛在庫、竣工後売れ残っている物件は完成在庫に計上される (図表18)。そのため、竣工前であれば「期分け販売」を行うことで在庫数を意図的 に抑制することも物理的に可能である。このような点を考慮し、以降では首都圏の分 譲マンションの着工戸数と販売戸数、在庫戸数を比較するものとして首都圏分譲マン 5 在庫=前月繰越在庫戸数+当月発売戸数―総販売戸数 6 マンションの「期分け販売」とは、主に大規模マンションにおいて、需要調整のため販売を数回に分けて行うこと を言い、値下げや売れ残りによる販売業者の収益リスクを抑制するため、契約率の高さを維持し「不人気物件」のイ メージを与えない販売戦略として一般的に用いられている。 図表16:首都圏マンション在庫循環図 図表17:首都圏マンション在庫・契約率推移

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ションの着工戸数から推計される販売戸数7(以下、推計販売戸数)を用いて分析を行 っていきたい。 着工 販売開始 竣工 (完成) 完成在庫 売れ残り⇒仕掛在庫 販売済 見えざる在庫 当 月 着 工 戸 数 調整可能   「期分け販売」 当 初 販 売 戸 数 平均 6ヶ月 平均 15ヶ月 まず、首都圏分譲マンションの在庫状況を正確に把握するため、竣工前の仕掛在庫 と竣工してからの売れ残りである完成在庫に分けその推移を見ると、完成在庫は減少 しているものの減少幅は少なく、仕掛在庫が02 年 12 月のピークの半分以下になって おり、仕掛在庫の減少が目立つ。さらに、仕掛在庫・完成在庫を合わせた在庫全体と 推計販売戸数の推移を比較すると、04 年から推計販売戸数と在庫戸数の差が拡大して いるのが分かる(図表19)。推計販売戸数と在庫戸数の差が拡大している理由として は、一つには販売が好調であったのではということが考えられ、もう一つには「見え ざる在庫」の拡大が考えられる。 次に、着工戸数と販売戸数のデータを用いて首都圏分譲マンションの「見えざる在 庫」の方向性を見てみる。ここでは、推計販売戸数と販売戸数の差から「見えざる在 庫」の方向性を捉える。ただし、推計販売戸数と販売戸数の差が「見えざる在庫」そ のものでなく「見えざる在庫」の方向性を表しており、推計販売戸数と販売戸数の差 が拡大すれば「見えざる在庫」の状況が悪化、縮小すれば状況が改善に向かっている と判断する。これによると、01 年以降、推計販売戸数と販売戸数の差は拡大しており、 「見えざる在庫」の状況は悪化傾向にあることがわかる。特に04 年前半は販売戸数が ほぼ横ばいで推移しているものの、推計販売戸数が大幅に増加しているため推計販売 戸数と販売戸数の差が急拡大しており、「見えざる在庫」の状況が大幅に悪化した可 能性がある。しかし、04 年 07 月以降、推計販売戸数が減少したことにより推計販売 7マンションの着工から竣工までは平均約15ヶ月、また着工から販売開始まで平均約6ヶ月かかるといわれている。 そこで、期分け販売等を考慮し、販売月から6ヶ月前の着工分が新規販売の最大値となる加重比率を算出、そこに 着工戸数を乗したものを「着工から推計される販売戸数」とした。なお、国土交通省の住宅着工統計では、分譲マン ションに30㎡以下の物件が含まれているが、不動産経済研究所のデータには30㎡以下のマンションは含まれていな いため、30㎡以下の物件を除いた数字を用いている。 販売月 17ヶ月前 16ヶ月前 15ヶ月前 14ヶ月前 13ヶ月前 12ヶ月前 11ヶ月前 10ヶ月前 9ヶ月前 8ヶ月前 7ヶ月前 6 ヶ 月 前 5ヶ月前 4ヶ月前 加重比率 0.01111 0.02222 0.03333 0.04444 0.05556 0.06667 0.07778 0.08889 0.10000 0.11111 0.12222 0 .1 3 3 3 3 0.08888 0.04444 図表18:マンション在庫発生までの時系列フロー

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戸数と販売戸数の差は縮小、足元05 年 07 月時点では「見えざる在庫」の状況は少な くとも03 年前半の水準まで改善しているものと思われる。これは、03 年第 4 四半期 に首都圏マンション着工が大幅増加し、04 年に入り過剰供給を懸念したデベロッパー が着工を03 年第 4 四半期の水準以下に抑えたことや、04 年後半からJ-REITと非 公開の不動産投資ファンドによる首都圏分譲マンションの1棟買いの増加などが影響 したものと考えられる(図表20)。 0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 00 01 02 03 04 05(年) (戸数) 仕掛在庫 完成在庫 着工から推計される販売戸数 (資料)国土交通省「住宅着工統計」、不動産経済研究所「マンション動向」 (注)マンション着工統計は6ヶ月移動平均を使用。 6000 6500 7000 7500 8000 8500 9000 9500 10000 00 01 02 03 04 05 (年) (戸) 着工から推計される販売戸数 販売戸数(6ヶ月移動平均) (資料)不動産経済研究所「マンション市場動向」、     国土交通省「住宅着工統計」より作成。 (注) 着工から推計される販売戸数の計算方法は文中の脚注7を参照。 販売戸数は6ヶ月移動平均を使用。 以上から首都圏分譲マンション在庫需要の状況を判断すると、実際の在庫水準は、 公表されている在庫数より高い状態にあるものの、04 年以降のデベロッパーの着工抑 制等により「見えざる在庫」の状況は改善傾向にあり、03 年前半の水準まで調整が進 んでいると考えられる。 ②首都圏への人口流入状況 首都圏への人口流入は94 年に一旦減少に転じたものの、96 年以降は再び増加してい る(図表21)。ただし、流入人口の増加幅は、縮小に向かっており、04 年にかけて首 都圏への人口流入の勢いはやや弱まっている。県別には、千葉県や埼玉県で頭打ちが見 られ、神奈川県や東京都でも伸び悩んでいる(図表22)。 一方、分譲住宅着工戸数の動きを都市圏別に見てみると、04 年 10~12 月期以降、首 都圏では伸び悩んでいるものの、首都圏以外では中部圏を中心に総じて底堅い動きを見 せている(図表 23)。こうした動きは、首都圏への人口流入が細るに伴い、分譲住宅 市場の主役が首都圏以外の地域へ移りつつある状況を示唆している可能性があろう。 図表19:首都圏分譲マンション着工と完成在庫、 仕掛在庫推移 図表20:首都圏分譲マンション「見えざる在庫」 の方向性

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-4 0 4 8 12 16 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04(年) (前年差:万人) (資料) 総務省「住民基本台帳人口移動報告」より作成。 -12 -8 -4 0 4 8 12 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04(年) (前年差:万人) 埼玉県 千葉県 東京都 神奈川県 (資料) 総務省「住民基本台帳人口移動報告」より作成。 -16 -12 -8 -4 0 4 8 12 16 02 03 04 05 (年) (前年比寄与 度%) 首都圏 中部圏 近畿圏 その他 全国 (資料) 国土交通省「住宅着工統計」 ③団塊ジュニア世代の住宅取得時期 団塊ジュニア世代の住宅取得がいつ頃ピークを迎えるかという点も、分譲住宅市場 の先行きを占う上で重要であろう。首都圏において世帯主の年齢が30~34 歳の世帯数 は増加しているにも関わらず、世帯数に占める持家世帯の割合は17.9%しかない(図 表24)。しかし、団塊ジュニア世代の住宅取得に対する意欲は、「どちらかと言えば 持家」を含めると90%以上もあり、持家志向が強い様子が窺われる(図表 25)。団塊 ジュニア世代の持家取得がこれから本格化してくるものと考えると、分譲住宅への潜 在的な需要は今後むしろ強まる可能性が高いと思われる。さらに、団塊ジュニアの次 の世代も比較的人口の多い世代であることを考えると、人口動態から予想される住宅 需要は当面底堅い動きとなろう。 図表21:首都圏人口移動推移 図表22:都県別人口移動推移 図表23:都市圏別分譲住宅着工推移

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0 20 40 60 80 100 120 140 88 93 98 03 (年) (万世帯) 0 10 20 30 40 50 60 70 (%) 世帯数(左目盛) 持家割合(右目盛) (資料)総務省「住宅・土地統計調査」 49.5 40.7 8.1 1.7 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 団 塊 ジ ュ ニ ア 持家がいい どちらかといえば持家 どちらかといえば賃貸 賃貸がいい (資料)長谷工アーベスト「団塊ジュニア世代の住意識調査(2005年4月)」 ④地価反転の影響 平成バブル崩壊以降、住宅地地価の下落幅は拡大し続けてきたが、03 年頃から全国 住宅地地価は下げ止まりの兆しを見せている(図表26)。特に東京都区部都心部では 前年比プラスに転じており(図表27)。これまで住宅需要を下支えしてきたと見られ る地価動向は、今後、逆に需要を下押しする可能性が出始めている。 首都圏以外では、下落幅が縮小する地域が増えつつあるものの、依然として下落が 続いている。先に見た人口動態のみならず、地価動向も今後は分譲住宅市場の主役が 首都圏から首都圏以外へ移っていく可能性を示唆しているといえよう。 -10 -8 -6 -4 -2 00 01 02 03 04 05年 東 京 圏 三 大 都 市 圏 平 均 地 方 平 均 全 国 平 均 (前 年 比 % ) (資 料 )国 土 交 通 省 「地 価 公 示 」よ り作 成 。 -10 -8 -6 -4 -2 0 2 00 01 02 03 04 05年 区 部 都 心 部 区 部 南 西 部 区 部 北 東 部 多 摩 地 域 (前 年 比 % ) (注) 区部都心部とは千代田,中央,港,新宿,文京,台東,豊島の各区 区部南西部は品川,目黒,大田,世田谷,中野,杉並,練馬の各区部、 区部北東部とはその他の各区部のことである。 (資料) 国土交通省「地価公示」 図表24:首都圏30~34歳世帯数と持家割合 図表25:団塊ジュニア世代の持家志向 図表26:住宅地公示地価推移 図表27:東京都住宅地公示地価推移

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5.分譲住宅着工戸数の今後の展望 これまで見た通り、分譲住宅の着工戸数は、住宅ローン減税の規模縮小や低金利の 持続、住宅用地供給の増加、団塊ジュニア世代の住宅取得本格化などの要因により増 加してきた。04 年 10~12 月期には前年比マイナスとなったが、05 年 1~3 月期以降 は、前年比がプラスに戻り、05 年 7 月は大幅増加となった。 その様子を建て方別に見ると、分譲マンションの着工戸数が一旦減少した背景 は、 これまで牽引役であった首都圏で、在庫が過剰になったことや人口流入の伸び悩み、 地価の反転ないしは下げ止まりなどが指摘できる。しかし、在庫の調整が進んでいる うえ、団塊ジュニア世代の住宅取得需要はこれから本格化することが期待できるため、 05 年の分譲マンションの着工戸数は 04 年より小幅ながら増加するものと予想する。 06 年に入ると、金利の上昇や市場規模の小さい首都圏以外の地域での販売鈍化から、 分譲マンションの着工戸数は減少に向かうものと思われる。 また、一戸建てについては、足元までパワービルダーが中心となり市場を牽引し、 着工戸数を大きく伸ばしている。しかし、中堅マンションデベロッパーなどがマンシ ョン販売で低迷する中、分譲一戸建てに参入するといったニュースも流れており、住 宅用地の取得などの競争が加速するものと思われる。 このようなことを踏まえると、分譲住宅着工は05 年には前年と同様に底堅く推移す るものの、06 年には金利上昇や市場規模の小さい首都圏以外の地域での販売鈍化など の影響で、着工戸数も減少していくものと予想する。 以上

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参照

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