• 検索結果がありません。

26 BPSD が悪くなった時の認知症利用者のカンファレンスの仕方 わたしたちのやりたいケア介護の知識 50 BPSD が悪くなった時の認知症利用者のカンファレンスの仕方 介護の知識 まずカンファレンスでの要因分析 認知症の BPSD をやわらげようとするとき 最初に行なうのが BPSD の要因分析

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "26 BPSD が悪くなった時の認知症利用者のカンファレンスの仕方 わたしたちのやりたいケア介護の知識 50 BPSD が悪くなった時の認知症利用者のカンファレンスの仕方 介護の知識 まずカンファレンスでの要因分析 認知症の BPSD をやわらげようとするとき 最初に行なうのが BPSD の要因分析"

Copied!
6
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

1

わたしたちのやりたいケア 介護の知識 50 BPSDが悪くなった時の認知症利用者のカンファレンスの仕方 ○まずカンファレンスでの要因分析 認知症の BPSD をやわらげようとするとき、最初に行なうのが BPSD の要因分析のカンファレンスです。 BPSD が悪くなった要因を考えることで、対応法が見えてきます。 カンファレンスでの要因分析ぬきで、当てずっぽうでケアをすること はあってはなりません。カンファレンスでの要因分析が重要です。 認知症のBPSD(周辺症状)の要因には、大きく分けてつぎの3 つがあると言われています。 ① 精神・心理的要因 ② 社会・環境的要因 ③ 身体的要因 ○要因は一つではない、複合要因 カンファレンスでは、「認知症のカンファレンスシート」をチェック リストとして用いて、この3つをバランスよく考えていきましょう。 BPSD の要因を心理的要因だけに求めたり、環境的要因だけに求め たりするのではなく、3つの要因すべてを検討することが必要です。 ADL が低く、身体的な要介護度が高い(身体的に重度化した)認知 症の方は、BPSD の要因が一つでないケースがあります。 心理的要因と身体的要因が重なっていたり、身体的要因だけが複数 あったりします。こういった状態を「複合要因」と呼んでいます。 身体的に重度化した認知症の方は、複合要因である場合が多いので す。 心理的要因、環境的要因、身体的要因のすべてを分析することが、 身体的に重度化した認知症の方のケアのポイントとなります。 特別養護老人ホームなどで暮らす身体的に重度化した認知症の方 は、身体的要因だけで複数あることが多いです。 1. 精神・心理的要因 これまでの生活が継続できなかったり、本人の望む暮らしや行動が できなかったり、人間関係がうまくいかなかったりといったことによ って、不安感やストレスがつのり BPSD が悪くなることがあります。 BPSD を悪化させる不安感、ストレスなどを精神・心理的要因と呼 んでいます。

介護の知識

(2)

2

ストレス、不安の要因は多様です。 一人ひとりの価値観、生活観、生活歴の数だけ要因があるとも言え ます。 本人の生活歴、生活観、価値観、人間関係、言動、しぐさ、表情な どから、要因をさぐっていきます。 ・ 他者(他入居者・職員・家族)との関わり 他の入居者と人間関係が BPSD 悪化の要因になることがありま す。たとえば、食事のときに隣に座った方が気に入らないといった ことから、BPSD が悪くなるケースがあります。 入居者の一人を亡くなった夫と間違えて不安になり、BPSD が 悪くなったケースもあります。 仲のよかった利用者が入院してしまったり、別の施設へ移ってし まったりということが、BPSD 悪化の要因となることもあります。 教師経験者で人に教えることが好きだった人や会社の重役経験 者でリーダーシップをとることが好きだった人が、施設の生活の中 で人に教えることができない、リーダーシップをとることができな いといったストレスから、BPSD が悪化することもあります。 それまでの生活で培ってきた価値観と施設での暮らしのミスマ ッチがストレスをひきおこし、状態を悪化させるのです。こういっ たケースは枚挙にいとまがありません。 職員の接し方が本人の望む形でない場合も、BPSD が悪化しま す。介護スタッフのなかにはやさしく積極的に関わった方がいいと 考え「猫なで声」で子どもに接するようにする人がいます。猫なで 声が好きな方もいれば、きらいな方もいます。バカにされていると 感じる方もいるでしょう。 福岡市にある宅老所よりあい施設長下村恵美子さんは、認知症高 齢者に接するスタッフの望ましい姿勢を「いたらんことせん」(博 多弁でよけいなことをしないの意味)と説明しています。 介護する側—される側という関係ではなくて、ともに暮らす人と してフラットな人間関係が大切と言っています。 家族は利用者にとって特別な存在です。家族との関わりや会話 は、利用者に大きな影響を与えます。BPSD が悪化した場合、ご 家族の面会の頻度、会話の内容なども確認してみましょう。 ・ 生活歴と今の暮らしぶりの変化 その方の入居前の生活(一日の過ごし方、趣味、仕事、毎日の習 慣、宗教、対人関係などなど)と施設入居後の生活は、大きく異な ります。 認知症によって、現実とのギャップを受け止めきれないとき、そ

(3)

3

の心理的ストレスは計り知れないものがあります。 過去の生活習慣との違いに周辺症状の悪化をさぐるヒントが隠 れていないかを考えてみる必要があります。 特別養護老人ホーム等の入居系事業所で多いのは、入院後や骨折 後に生活が大きく変わり BPSD が悪くなるケースです。ケアを必 要とせずに排尿、排泄をしていた方が、骨折によりケアが必要にな り羞恥心からケアを受け入れることができず BPSD が悪化した り、伝い歩きだったのが車いすでの生活になり気持ちが落ち込んで BPSD が悪化したりすることがあります。 2. 社会・環境的要因 環境的要因とは、利用者を混乱させたり、不安にさせたりする周囲 の状況の変化のことです。 生活空間が変わると、空間に対して認知のずれが起こり、混乱した り不安になったりすることがあります。 典型的な例が「引っ越し」です。 引っ越しによる BPSD の悪化は2000年くらいまでよく見られま した。都会で暮らす子どもが、田舎で暮らす認知症の親を引き取った りしたときに、BPSD の悪化が起こることが多くありました。田舎か ら都会へという大きな変化でなくても、同じ都市間での引っ越しによ っても BPSD が悪化するケースがありました。 田舎の家と都会の家の違い、田舎の景色と都会の景色の違い、田舎 での知り合いがいる生活と都会での知り合いのいない暮らしの違い等 を受け入れることができず、不安になったり、混乱してしまうことが 多かったのです。 認知症になっても住み慣れた町で暮らし続けること、認知症になっ ても知り合いに囲まれて暮らすことが、BPSD の悪化を防ぐためには とても大切です。 それまで住んでいた自宅でケアが受けられずに都会へ引っ越すこと は、本人の理由ではありません。ケアの提供体制が不十分であるとい う社会的な問題です。このようなことを社会的要因と言います。 生活環境や人間関係の変化による BPSD の悪化、認知症の進行を「リ ロケーションダメージ」と呼びます。 ○リロケーションダメージは日本の在宅サービスの構造的問題 リロケーションダメージは、日本の在宅サービスの構造的問題でし た。認知症のある高齢者が在宅サービスを受ければ受けるほど、リロ ケーションダメージにより BPSD が悪くなるリスクがあったのです。 例えば、自宅で暮らす認知症のイズミダさんがデイサービスを利用

(4)

4

するようになったとします。イズミダさんは自宅以外のデイサービス センターという環境の変化にさらされます。人間関係も変化します。 自宅での家族との人間関係にくわえて、デイサービスセンターのスタ ッフ、デイサービスセンターの他の利用者といった新しい人間関係が くわわります。その変化になじめないときには、BPSD が悪くなる可 能性があります。 さらにショートステイを使えば、イズミダさんはデイサービスセン ター、ショートステイの施設、自宅といった3つの異なる環境、人間 関係の中ですごすことになります。デイサービスセンターだけに行っ ていたとき以上に大きな変化にさらされ、BPSD が悪くなるリスクが 高まります。 ショートステイの場合は、イズミダさんが変化にさらされ続ける時 間も長くなります。デイサービスセンター利用時は3〜8時間、自宅 と異なった環境の中で過ごします。ショートステイ利用時は、24時 間×利用日数となり、デイサービス利用時の数倍から数十倍となりま す。 ショートステイの環境になじむことができなければ、混乱や不安は 大きくなります。 小規模多機能居宅介護は、日本の在宅サービスの構造上の問題を解 決できます。通っても、泊まっても、家にきてもらっても、環境や人 間関係が大きく変化することはありません。リロケーションダメージ を受けるリスクがあまり高くならないのです。 特別養護老人ホーム等の入居系事業所の利用者が、環境的要因で BPSD を悪化させることが多いのは、サービスの利用開始直後です。 これまでと違った環境で暮らすことによって、不安が高まり、混乱が 広がります。 居室移動後、ユニット変更後にも環境変化による BPSD の悪化がよ くおこります。 3. 身体的要因 特別養護老人ホーム等に入居している重度化した認知症高齢者の場 合、身体的要因が BPSD 悪化の要因になっていることが多いです。 環境的要因、心理的要因は比較的わかりやすいものです。 しかし、身体的要因はきちんとした知識がないと考えることができ ません。 特別養護老人ホーム等の入居系事業所では、最初に確認をするべき 要因でもあります。 身体的要因で確認する主なポイントを紹介します。 詳細は「認知症のカンファレンスシート」を参照してください。

(5)

5

・ 病歴 周辺症状に関わる病気の発症、再発、重症化などを確認します。 直接的要因である脳の疾患だけではなく、糖尿病による知覚異常 (服を着ていると身体がざわつき不快になるため、服を脱ぐなど)、 癌による痛みなど、病気による痛みや不快感や周辺症状の要因とな る場合があります。 高齢者でよくみられる白内障などは、本人も周りも気がつかない 間に進行している場合があり、視力低下が周辺症状を招いているこ ともあります。 ・ 栄養状態 低栄養状態では、エネルギー不足となり、脳の活動が不活発にな ります。したがって判断力や覚醒状態が低下します。 ・ 脱水 高齢者は水分を控えがちになりますが、水分不足になると血流量 が下がり、脳の活動が不活発になります。夜間にみられる幻聴や幻 覚など「夜間せん妄」の原因の多くは、脱水によるものといわれて います。 ・ 便秘 便秘はお腹が張ったり、重苦しくなったりといった不快感があり ます。認知症の方はこの何ともいえない腹部の不快感を「便秘」と 正しく認識できない場合があります。 この何ともいえない腹部の不快感が周辺症状の悪化につながる 場合があります。 ・ 睡眠不足 十分な睡眠がとれていないと疲労感が残り、脳もしっかりと覚醒 しません。また、体内時計のリズムが狂うと昼夜逆転につながりま す。 ・ 風邪 風邪をひくと、倦怠感や発熱など全身状態が低下し、一時的に周 辺症状が現われることがあります。 ・ 内服薬 向精神薬や睡眠薬など、精神的な部分に作用する薬は周辺症状に 強い影響を与えている場合があります。認知症の治療薬として処方

(6)

6

されている薬であっても、「攻撃的になる」などの副作用があるも のもあります。 高齢者は薬を分解する肝臓の働きが弱まり、代謝機能が低下して います。薬の説明書に示されている作用時間が一般成人より長くな り、体内に残りやすい状況になります。睡眠薬などは、薬の有効時 間を確認することが必要です。長く効きすぎてしまい、覚醒を悪く している場合があります。 風邪薬やかゆみ止めの飲み薬なども、頭がボーっとしたり、ふら つきが出る場合があります。 周辺症状が悪化する時間帯を確認しましょう。薬の作用が強く出 る時間帯かもしれません。 服用している内服薬の副作用は必ず確認しておきましょう。 周辺症状の出ている入居者の総合記録シートは、普段からこのよう な視点で書くと貴重な情報となります。 認知症の周辺症状が悪化したときは、数カ月分の総合記録シートを 参照しながら認知症のカンファレンスシートをチェックリストとして 使い、この3つの視点から要因を考えてみましょう。

参照

関連したドキュメント

キャンパスの軸線とな るよう設計した。時計台 は永きにわたり図書館 として使 用され、学 生 の勉学の場となってい たが、9 7 年の新 大

傷病者発生からモバイル AED 隊到着までの時間 覚知時間等の時間の記載が全くなかった4症例 を除いた

原田マハの小説「生きるぼくら」

認知症の周辺症状の状況に合わせた臨機応変な活動や個々のご利用者の「でき ること」

・私は小さい頃は人見知りの激しい子どもでした。しかし、当時の担任の先生が遊びを

Ⅲで、現行の振替制度が、紙がなくなっても紙のあった時に認められてき

 講義後の時点において、性感染症に対する知識をもっと早く習得しておきたかったと思うか、その場

 根津さんは20歳の頃にのら猫を保護したことがきっかけで、保健所の