◆全国で鳥獣害の被害金額は年間
191
億円にのぼり、そのうち約
55
億円がイノシシによる被害
です。(平成 26 年度)
◆主な被害農作物は、水稲、野菜類、いも類、果樹やタケノコ、クズの根など30種類以上になります。
◆夏から秋期には、水稲が乳熟期をむかえるため水田に侵入し、穂の食害だけでなく、踏み荒らしや
ヌタウチ(泥あそび)により稲を倒伏させることもあります。
◆1~4月ごろには、タケノコが地上に現れないうちに掘って食害します。
◆ミミズやナメクジ、昆虫の幼虫を食べるために年中土を掘り荒らします。
◆掘り起こしによる落石が原因で民家等の破損被害が発生しています。
◆奈留島で農作物の食害、踏み倒し、掘り起こし、交通事故等、被害が多発しています。
◆福江島・久賀島の数箇所から目撃情報が寄せられ、農作物被害も発生しており、今後はさらに増え
ると予想されています。
◆奈留島にて撮影◆
イノシシは、私たちにとってなじみのある動物ですが、意外とその生態は知られていません。習慣や
行動に対する誤解から、対策を失敗している例も少なくありません。被害対策の第一歩は、まずイノシ
シのことを正確に知り、農地周辺の生活痕跡を見逃さないことが大切です。
生 態
対 策
●出産 4~5頭/年
●落葉広葉樹林や竹林、カヤ・ススキ・クズなどの
草地に生息
◎極めて臆病で警戒心が強く、
藪から出るときは必ず止まって安全確認
●人目につかない夜間に行動(本来は昼行性)
●嗅覚は犬と同等かそれ以上
◎鼻で探して目で確認
●侵入に成功した仲間の行動を模倣し、
一度覚えると忘れないなど学習能力は高い
◎鼻の力が強く、70kg の石を動かすことができる
●助走なしで 1m20cm の高さを飛び越え、
2m の高さをよじ登ることができる
●時速45km で走ることができる
●成獣は 20cm(幼獣は 10cm)の隙間をくぐり抜ける
◎シソ・唐辛子などが苦手
●泳いで島から島へ移動する
草刈りをして、隠れ場所をなくす
複数の対策を組み合わせる
(作物をイノシシから隠すことが有効)
柵の設置面を補強する
農作物の周りに植える
くぐる 跳ぶ 持ち上げる
総合的な対策は、「棲み分け対策」、「防護対 策」、「捕獲対策」の3つの対策からなります。1 つだけの対策を行うよりも、3つの対策を総合的 に取り組むことで、相乗効果が期待できます。
① イノシシが嫌がる環境をつくる <棲み分け対策>
◆
畑や人家周辺の藪などを適
切に刈り払い、隠れ場所となる
所を取り除く
※畑の周りを2、3m 刈り払う
だけでも効果あり
◆野菜くずを田畑や山際に捨て
ないように
◆
収穫の終わった田畑は出来
るだけ早く耕す
◆農地が餌場だと覚えさせない
ためにも残菜をなくすように集
落ぐるみで実施する
◆秋に向かって収穫しない果樹
や作物が農地や集落にないか
皆で点検
◆放置した竹林のタケノコは竹
を伐採するか枯死させる
最初から完全に被害を防ぐことは出来ません。対策が失敗しても諦めないで、失敗の原因を探り、
改善策を考え、集落ぐるみで粘り強く続けることが必要です!
① イノシシが嫌がる環境をつくる <棲み分け対策> ・・・・・P4 ② 農地を効果的に囲う <防護対策> ・・・・・・・・・・P5 ③ 適切な捕獲を行う <捕獲対策> ・・・・・・・・・・P7◆ゴミ捨て場の生ゴミはしっかり囲っておく
◆家庭から出た生ゴミを堆肥がわりに庭先に放置しない
◆庭先の家庭菜園が、イノシシに見えないように塀・フェン
スで囲う
◆かわいいからといって餌付けしない
一般家庭の皆様へお願い
農家の方へお願い
荒れた田畑が近くにある
よく管理された田畑
楽勝!楽勝! すぐ逃げられるぞ すぐに隠れる場所がある 無理かな? 逃げられないよ! 逃げるのに時間がかかる畑
畑
イノシシの農地への侵入を防ぐには、防護柵の設置が最も効果的です。 各防護柵の特徴を参考にし、正しく設置してください。
トタン板
◆視覚を遮断する効果が高く、扱いやすい。 ◆一枚だけでは高さが不足するので、2枚継ぎ足しや他の資材との 組み合わせで、高さ1.2m 程度まで上げて、飛び越えられないように 設置する ◆設置場所に起伏があると地面とトタン板の隙間ができて、そこに 鼻を突っ込まれ、トタン板を持ち上げられるので、凸凹があればよく ならし、草など刈った後に設置する ◆トタン板同士の継ぎ目が破られやすいので、重なり部分は厚めに する。 ◆押し倒されないように、支柱の強度と設置間隔にも注意する。ワイヤーメッシュ
◆ワイヤーメッシュは、丈夫な鋼線を縦横に溶接した建築素材で、視 覚的遮断効果は無いが、上手に使えば強度に優れた柵として利用 できる。 ◆鋼線が細いと折り曲げられ、升目が大きいとウリボウに侵入され る。10cm 升目で太さ6mm 程度のものを使用する。 ◆飛び越えられないように十分な高さ(1~1.2m)を確保する。 ◆押し倒されたり、鼻で持ち上げられたりしないように適当な間隔で 頑丈な支柱を立てる。 ◆くぐり抜けられないように支柱の間に2~3ヶ所、杭などで固定す る。電気柵(ワイヤー式)
◆軽量で設置や収納が容易。 ◆侵入防止効果が高く、何度も狙われている田畑にはお勧め。 ◆背中などの毛皮部分は感電せず、鼻先だけがよく通電する。 ◆設置にあたっては、電気事業法等関係法令に留意し、人の感電 や火災の恐れがないように設置する。 ◆前足が土の上になるよう最低50cm は舗装道路から離して設置す る。 ◆電線を張り巡らせる高さは、20cm(歩行中の鼻の高さ)、40cm (停止中の鼻の高さ)、60cm(覗き込んだときの鼻の高さ)を基本と する。 ◆支柱の押し倒しを防ぐため、支柱の外側に電線を張る。 ◆周囲の草刈や通電の確認など、継続した管理を行い、漏電による効果低下に注意する。 ◆除草のためといってゴムマットなど電気の通りにくい素材のマットは敷かない。 ◆斜面や傾斜の終わったところでは、勢いで突き破られることがある。部分的に資材を補強するか、助走距離 を短くするように電気柵の設置場所を変えてみる。 ◆設置場所に起伏があると、地面と電線のすき間が広くなり侵入されることがあるので、部分的に支柱を追加 し、20cm 間隔を確保する。② 農地を効果的に囲う <防護対策>
ネット類
◆起伏のある場所や斜面の多い場所での設置が容易。 ◆編み目を押し広げられたり、食い破られたりしないように10cm 以 上の編み目は避け、丈夫なものを選ぶ。 ◆くぐり抜けられないように接地面を折り返し、杭などで固定する。 ※イノシシの踏切位置は、柵などの障害物から20~40cm であ る。柵から手前に1m くらいの幅でネットを斜めに垂らすと、踏切 位置が遠くなり、飛び越えを防止することができる。トタン板 + 電気柵(ワイヤー式)
◆電気柵による侵入防止効果に加え、トタン板で視覚も遮断することによ り設置効果が高い設備。 ◆トタン板をほ場側に、電気柵をイノシシの侵入する側に設置する。 ※各資材を組み合わせる場合は、それぞれの弱点を補うようにするとよ い。島根県では、畦波板+電気柵(ワイヤー式)も普及している。その他
◆金網 網の目合いは小さく、編み目を広げられないよう結束部位が丈夫なものを選び、くぐり抜けられないように地 面と接する部分に杭などで補強する。 ◆忌避剤(木酢液、線香、人間の毛髪、芳香剤など含む) 環境の変化に戸惑うだけで臭いには必ず慣れるので、期間限定、一時的な嫌がらせとして収穫前等に使用 する。各種防護柵の特徴
防護柵 資材の特徴と価格 (m 当たり) 囲い方などの ポイント 野生獣の侵入 防止効果 トタン板 幅 80cm のトタン板が効果的。200~500 円/m 程度。 隙間をつくらないように 設置。 ○ 金網 フェンス 野生獣に押し広げられにくいように 10cm 以下の目 合いがよい。200 円~1,200 円/m 程度。 対象獣に応じた柵の高 さ、設置面の処理が必 要。 ◎ ワイヤー メッシュ イノシシ用は、径 5mm 以上の鉄棒で、目合いは 10cm 以下(幼獣の侵入防止)のメッシュがよい。 250 円~1000 円/m 程度。 上部を折り返すと侵入 防止効果が高い。 ◎ ネット イノシシ用は目合い 10cm 以下が効果的。 200 円~1,200 円/m 程度。 侵入方向にネットを垂 らして侵入防止を図る。 ○ 電気柵 (電線型) アルミ線、針金あるいは金属線を編みこんだロー プなどを使用。250~1,000 円/m 程度。 漏電防止のため防護柵 の中では、最も除草に 手間がかかる。 ◎『①棲み分け対策』と『②防護対策』をしても被害が無くならない場合は、いよいよ捕獲対策です。
山の10頭より里の1頭を
◆イノシシの行動範囲は平均1km²程度といわれています。そのため、被害発生場所から 1 ㎞以上離れた場所 で捕獲しても、被害軽減効果はあまり期待できません。被害軽減を目的として捕獲するには、山で10頭のイノシ シを捕まえるよりも里に出て被害の原因となっているイノシシ(加害固体)を1頭捕まえたほうが効果的です。農家による捕獲(狩猟)
◆近年、被害を受けた農家が狩猟免許を 取得して、自ら捕獲に取り組む事例も増 えています。 ◆捕獲を行うには、狩猟免許が必要です。 実際に狩猟を行うには、狩猟者登録も必 要となります。さらに、銃を使用する場合 は、警察から所持許可を受けなければな りません。 ◆農家自らがイノシシを狩猟する場合は、 「わな猟免許」が比較的取得しやすいで す。 ◆狩猟期間は、11月15日から翌年2月 15日まで(イノシシ、シカは11月15日か ら翌年3月15日まで) ◆県では狩猟免許試験を毎年6月~7月 頃に実施しています。 ◆狩猟免許試験受験のための狩猟講習 会が行われている地域もあります。試験 を受ける方はなるべく受講するようにしま しょう。 ◆狩猟や免許取得については、最寄りの 振興局農林水産部農業企画課に相談し ましょう。有害鳥獣捕獲制度の活用
イノシシなどの野生鳥獣は「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律」で保護されており、基本的に捕獲 をすることは禁止されています。しかし、鳥獣による被害が大きい場合は、許可を得ることにより捕獲することが 可能となります。 ※奈留島では136頭のイノシシが捕獲されています。(平成26年度) ◆防護柵や見回りなどで防除を実施したにもかか わらず、農作物が深刻な被害を受けたとき、市 町村等の許可を受けて駆除班が捕獲する制度 です。 ◆法律等で捕獲が禁止されている場所や期間で も、許可を受けることにより、捕獲が可能となる 場合があります。 ◆被害を受け捕獲が必要な場合は、市役所かJA に相談してください。③適切な捕獲を行う <捕獲対策>
狩猟免許の取得の流れ ① 狩猟免許申請 必要書類に講習料と試験手数料を添えて最寄りの振興局農林水産 部農業振興課へ申請する。 ② 県猟友会による講習会(1日) 講習を受けなくても狩猟免許試験を受けることができるが、受けてお いた方が合格への近道。 ③ 狩猟免許試験(1日) 一次試験(知識試験・適正試験) 二次試験(猟具取扱い・鳥獣判別等)がある。 ④ 狩猟免許試験合格 ⑤ 狩猟者登録 狩猟免許を持っているだけでは狩猟はできないので、狩猟をしたい 場所の都道府県知事に登録料を添えて狩猟者登録を申請する。 ⑥ 狩猟 狩猟期間内に、狩猟鳥獣を狩猟が禁止されていない場所で定められ た方法により捕獲できる。 ①農作物被害 ⑥許可証の交付 ⑦駆除 有害鳥獣捕獲の流れ 被 害 者 ②相談 ①加害 ④依頼 ③指導 五 島 市 有害鳥獣 ⑤申請 ⑥許可 ⑦捕獲 農 協 駆 除 班 ⑥許可地域で被害対策について話し合う ・研修会や学習会を開いて、対策の正しい知識を 知る ・地図(航空写真など)を用いて、被害や対策の 状況の情報交換をおこなう 被害・対策の現地踏査を行う ・集落環境点検による被害の原因究明をおこなう ・防護柵設置ルートや緩衝帯整備エリアを確認す る 現地踏査の結果を踏まえて具体的な対策計画 ・対策マップを作成する ・対策に関わる費用などを計上する ・研修会や意見交換会をおこなって、地域内の合 意形成を図る ・防護柵、緩衝帯の管理体制を決めておく 被害対策を実施する ・防護柵を設置する ・緩衝帯を整備する ・誘引物(野菜クズなど)や放任果樹を処分する ・捕獲機を設置する ※柵設置や捕獲については、事前に現地研修 の開催を検討する 管理を続けて対策効果を維持する ・柵の見回り、補修をおこなう ・緩衝帯が藪に戻らないように草刈をおこなう ・捕獲したイノシシで収穫祭などをおこなう ※効果を見ながら 3 対策を広げていきます
偏った被害対策から総合的な被害対策に変える
県では、H21 年 4 月から H22 年 10 月末までの間に、特に被害の大きかった 208 地区を調査したところ、9 割 の地域で捕獲対策を行っていることがわかりました。それに対して、防護対策と棲み分け対策のそれぞれを行っ ていない地域の 7 割が被害を受けていることが分かりました。 このことからも 1 つの対策(特に捕獲対策)だけに偏らず「防護・棲み分け・捕獲の 3 対策」をバランスよく実施 することが被害軽減の近道といえます。被害対策の目標は被害軽減であり、柵設置や捕獲はその手段であるこ とを忘れないようにしましょう。捕獲だけを強めれば良いという考え方は間違いです。 イノシシ被害が大きい地域での対策状況(H22 年度中間報告) 防護対策 棲み分け対策 捕獲対策 指導・助言 被害なし 70.2% 71.2% 11.1% 69.2% 被害あり 29.8% 28.9% 88.9% 30.8%個別対策から地域ぐるみで協力して対策する
上述のとおり、3 対策を行うことが鳥獣被害の軽減には必要ですが、1人の力で全ての対策を行うのは困難で す。そして、たとえ自分のほ場だけを守っても、近くの人が何の対策もしていなければその地域は野生鳥獣の餌 場になってしまい、市街地にイノシシ等が出没して生活被害や人身被害が起こる可能性が残ります。 特に防護対策では、個人単位で柵を設置するよりも周りの人と一緒に柵を作ることで柵の総延長距離が短く 済み、資材費や設置労力、見回りや補修の手間も軽減できます。隣接するほ場は一緒に囲い、離れたほ場であ ってもなるべく資材購入や設置作業をみんなで進めます。そうすることで地域内に対策の遅れたエリアがなくな り、鳥獣被害に強い地域づくりが可能になります。集落における 3 対策の進め方
以下の地図はイノシシの生息が確認、または痕跡があった地域です。これに該当する住民の方は注意してく ださい。 出没、または被害のあった地域 掘り起しやヌタウチ(泥あそび)など痕跡のあった地域 目撃情報が寄せられた地域 毎年のように、ハンターによる誤射等が原因で死傷者が出るなど、全国各地で痛ましい事故が起こっていま す。狩猟期間以外でも、「有害鳥獣捕獲」のため銃をもったハンターが山に入っていますので、山に入る際は下 記のことを心がけてください。 ◆事故を未然に防ぐために、オレンジ色の服や帽子などを身に着けるようにしましょう。 ◆山林内では見通しの良い道を利用しましょう。