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動物実験におけるRI トレーサー法を用いる定量的脳循環評価法の開発

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1.はじめに

 脳梗塞などの脳循環疾患において,その病態は,脳 血流量(CBF),脳酸素摂取率(OEF),脳酸素代謝率 (CMRO2)などの脳循環代謝パラメータの変化と密接に 関連している.そのため,[15O]O2ガスを用いた陽電 子断層画像イメージング法(PET)による CBF,OEF, CMRO2の定量測定法が開発され,脳循環疾患の診 断,治療方針の決定,予後予測などにおいて,その臨 床上の有用性が高く評価されている1~3).しかし,実施 準備に時間を要することや治療の緊急性などの観点か ら,臨床において,本法を脳循環疾患発症後の急性期 に適用することは難しく,発症後数時間以内の急性期 における脳循環代謝状態の変化や治療効果については ほとんど検討されていない.このため,動物を用いた 基礎検討の必要性が認識されているが,病態の時間変 化や薬物処置効果などの評価を行うためには同一個体 で複数回の測定が可能となることが望ましいため,非 侵襲的な手法であるインビボイメージング法が有効で ある.そこでこのような背景のもと,動物モデルで OEFや CMRO2の測定を可能とする静脈内投与型[15O]

O2剤の開発を行った.  さらに,PET で CBF を定量するためには[15O]CO2 か,[15O]H2Oを用い,動脈採血により入力関数を求 めるが,ラットの場合,動脈採血をするためには通常 大 動脈にカニューレを刺入し,そこから採血するこ とになる.この場合,一度刺入したカニューレを長期 間維持するのは困難となるなど実験的な制約が多い. そこで,定量的 CBF 評価のため,画像の分解能や利 用の簡便さを考慮して,[99mTc]HMPAO をトレーサー とし,動物用 SPECT 装置を用いた無採血定量的 CBF 評価法を開発した.

2.静脈内投与型[

15

O]O

2

剤の開発

 静脈内投与型[15O]O2剤の開発にあたり,PET 測定

動物実験における RI トレーサー法を用いる

定量的脳循環評価法の開発

間賀田泰寛

要  旨  脳梗塞などの脳循環疾患発症後の病態は,脳血流量(CBF),脳酸素摂取率(OEF),脳酸素代謝率(CMRO2)な どの脳循環代謝パラメータの変化と密接に関連している.これらパラメータの測定には[15O]O 2ガスを用いた 陽電子断層画像イメージング法(PET)が有用であるが,臨床では通常治療におわれ PET を施行している余裕は ない.そのため,脳循環疾患発症後の急性期での脳循環代謝状態を検討するためには,動物を用いた基礎検討

が有効である.このような背景のもと,動物モデルで動物用 PET 装置により OEF や CMRO2の測定を可能と

する静脈内投与型[15O]O

2剤を開発するとともに,さらに,動物用 SPECT 装置により,動脈採血することな

く,定量的に CBF を評価することを目的として,[99mTc]HMPAO をトレーサーとする無採血定量的 CBF 評価

法を開発した.

(脳循環代謝 30:41∼45,2018)

キーワード : positron emission tomography(PET),single photon emission computed tomography(SPECT),

ラット,cerebral blood flow(CBF),cerebral metabolic rate of oxygen(CMRO2)

浜松医科大学光尖端医学教育研究センター 〒 431-3192 静岡県浜松市東区半田山 1-20-1 TEL: 053-435-2398 FAX: 053-435-2393 E-mail: [email protected] doi: 10.16977/cbfm.30.1_41

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可能な放射能濃度の溶液を得るため,効率的なガス交 換の可能な人工肺に着目した.すなわち,小動物用小 型人工肺と血液リザーバをチューブを用いて輪状に繋 いで閉鎖系とし,この系内に蠕動ポンプを用いて血液 を循環させるとともに人工肺部にサイクロトロンによ り合成した[15O]O2ガスを導入することで,PET イ メージングに必要な放射能を有する静脈内投与可能な [15O]O2剤を得た(Fig. 1).   そ こ で, こ の 静 脈 内 投 与 型[15O]O2剤 を 用 い た OEF,CMRO2測定の有効性を調べるため,正常ラッ トに本剤を静脈内投与し,頭部の PET 撮像を行うと 同時に,カニューレを用いて大 動脈採血を行い,動 脈血中の時間放射能曲線(入力関数)を得た.また, OEF,CMRO2の定量解析に必須の CBF の測定は, 種々検討の結果,最も定量性に優れる[15O]H2Oを用 いる PET 法4, 5)により行った.血液と脳組織とにコン パートメントを設定した 2 コンパートメントモデルに より,動脈血中の代謝物の割合や,イメージング時点 とカニューレによる大 動脈採血時点との時間差など を補正した動的解析法を開発し,全脳 OEF,CMRO2 を定量的に評価した.その結果,直接採血法により動 静脈血液中酸素分圧較差を計測することにより算出し た全脳 OEF,CMRO2の値6)とよく一致し,本法の有効 性を示した7)  さらに,脳循環疾患モデルでの静脈内投与型[15O] O2剤を用いる PET 法([15O]O2-PET法)の有効性を調べ るため,栓子法により右中大脳動脈(MCA)永久閉塞 モデルラットを作製し,閉塞早期および後期に[15O] O2-PET撮像実験を行った.その結果,閉塞半球であ る右脳は閉塞早期において CBF 低下と代償的な OEF 上昇を示し,CMRO2低下は軽度であることを認め た.一方,閉塞後期の右脳では,閉塞早期の右脳と比 べ,有意な CBF 低下を示すとともに OEF の代償的上 昇は消失し,CMRO2も有意に低下することを認めた (Fig. 2).また,対側半球である左脳の CMRO2は閉塞 早期,後期で変化せず,外科的手法により求めた正常 値8)と同等であった.以上の結果より,[15O]O2-PET 法が脳循環障害下でのラット脳局所酸素代謝のインビ ボ定量化に有効であることを示した9)

3.CBF 無採血定量法の開発

 本法の開発にあたり,半減期 6 時間の Tc-99m で標 Fig. 1.静脈内投与型[15O]O 2剤調製ユニット ダイアグラム(左),実際の装置写真(右)をそれぞれ示す. Fig. 2.片側性中大脳動脈閉塞モデルラットにおける閉塞 後の各パラメータ変化 ラット右中大脳動脈閉塞モデルを作製して,1 時間後 (n=6)および 24 時間後(n=7)に静脈内投与型[15O]O 2剤を 用いて各パラメータを評価した平均値を示す.閉塞 1 時 間後でのいわゆる貧困灌流状態が再現された. * p<0.05, ** p<0.01, *** p<0.0001

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識された[99mTc]HMPAO10)を用いて CBF を評価するこ ととした.半減期が 6 時間なので,最初の撮像後 3 日 経過させれば,再度本トレーサーを同一個体に投与し て,CBF を評価することができる.このため,大きく 生理的条件が変化しない期間中に繰り返し CBF 評価 が可能であると期待された.定量的 CBF 評価のため には動脈血入力関数が必要となるが,[99mTc]HMPAO を用いた場合,その放射化学的不安定性のため血液中 分解物の評価が困難である11).そこで,これまでに ラット CBF 評価法が確立されている[125I]IMP12)を内部 標準として同時に投与し,[125I]IMP で得られた CBF と比較することで,[99mTc]HMPAO によるラット CBF 評価に必要な条件検討を行った.種々の脳血流量条件 を作製するため,アセタゾラミド(0∼75 mg/kg)をト レーサー投与 15 分前に前投与したラットに,[99mTc] HMPAO と[125I]IMP の混液を投与し,ダブルトレー サー法により CBF 測定を行った.[125I]IMP による CBFをオートラジオグラフ法により求め,その数値に 合うように[99mTc]HMPAO の全血採血時間を求めたと ころ,平均 19.4±3.5 秒となった.そこで,投与後 19 秒までの入力関数を用いて[99mTc]HMPAO による CBF を求めたところ,[125I]IMP による CBF と高い相関性 を示した13)  動脈血採血手技は侵襲的であり,同一個体での繰り 返し測定にも不向きであることから,上記の結果をも とに,ラット心腔のプラナー撮像により入力関数を評 価し,その後の脳 SPECT 撮像により脳内放射能濃度 を評価して,これらを用いるラット無採血 CBF 測定 法を確立することとした.ラット心腔プラナー画像よ り得られる心腔内放射能濃度の時間放射能曲線から投 与後 0 秒から 19 秒までの曲線下面積(AUC)を求めた ところ,動脈血採血により求めた入力関数の AUC と よく一致することが示された.また,元来 SPECT 画 像では定量性が低いと考えられているが,ラットのよ うな小動物であれば放射線の吸収などに大きな影響は なく,SPECT 画像(Fig. 3)により求めた脳内放射能濃 度は,撮像後にと殺して脳を摘出後に求めた脳内放射 能濃度とよく相関することが示された.それぞれの AUCと脳内放射能濃度から ARG 法により CBF を求 めて比較したところ,SPECT 画像から算出した脳内放 射能濃度を心腔プラナー画像から算出した血中放射能 濃度 AUC で除することで,ラット CBF を無採血で定 量評価可能であることが示された(Fig. 4)14).ただし, [99mTc]HMPAO は高 CBF 域で化合物のすり抜け現象が 起きることが知られているが,本検討においても,同 様の結果が示され,上限は 100 ml/100 g/min 程度であ り,適用できる CBF に上限があることを理解したう えで使用する必要がある.このような一定の制限はあ るものの,本法は非観血的に繰り返し同一個体で CBF 評価を可能とする方法として有効であるものと考えら れた.

4.おわりに

 以上,静脈内投与型[15O]O2-PET法を開発し,本法 が脳循環障害下でのラット脳局所酸素代謝のインビボ 定量化に有効であることを示した.また,SPECT を用 いるラット無採血 CBF 定量法を開発し,本法が薬物 負荷前後での CBF 比較等,繰り返し CBF 評価を必要 Fig. 4.従来法 CBF と無採血 CBF の比較 従来法 CBF は動脈採血を行い,一定時間後にと殺して脳 を取り出して脳内に取り込まれた放射能を測定すること により CBF を算出した.無採血 CBF はプラナー画像に より心腔内時間放射能曲線を,SPECT 画像により脳内に 取り込まれた放射能を評価して CBF を算出した. ρ: Spearmanの順位相関係数 文献 14 より著者作成 Fig. 3.動物用 SPECT 装置により撮像 した[99mTc]HMPAO 画像 SPECT,CT 両者ともに白黒画像にしてあるためわかり難 いが,CT 画像で観察される頭蓋骨内に SPECT 画像が重 ねてあり,白いところほど放射能の取り込みが高い.こ の画像では Tc-99m の放射能の取り込み量を示している が,脳内においては CBF に比例する.

(4)

とする実験系に用い得ることを示した.今後これらの 方法を用い,ヒトでは評価できない超急性期∼急性期 の病態評価や治療法評価,投与薬物の薬理評価などに 活用できれば幸いである.  本論文の発表に関して,開示すべき COI はない. 文  献

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(5)

Abstract

Development of quantitative evaluation method of cerebral circulation

using RI tracer in animal experiments

Yasuhiro Magata

Preeminent Medical Photonics Education and Research Center (pMPERC),

Hamamatsu University School of Medicine, Shizuoka, Japan

Cerebral blood flow (CBF), cerebral metabolic rate for oxygen (CMRO

2

) and cerebral oxygen

extraction fraction (OEF) are some of the most fundamental parameters to characterize the

pathophysiologic status of cerebral tissue, especially. after the onset of cerebral infarction. Positron

emission tomographic imaging (PET) using [

15

O]O

2

gas is a useful tool for measuring these parameters,

but there is no time to perform PET studies in clinical practice. Therefore, animal examination is

effective to explore cerebral circulatory metabolic condition in the acute phase. We developed an

injectable [

15

O]O

2

imaging agent for the purpose of measuring OEF and CMRO

2

in an animal model

using a small animal PET system. Furthermore, we developed a quantitative CBF evaluation method

without arterial blood sampling using [

99m

Tc]HMPAO with a small animal SPECT system.

Key words: positron emission tomography(PET), single photon emission computed tomography

参照

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