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高等学校「政治・経済」教科書の検定について(投稿原稿(査読付))

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 本論は,高等学校教科書の経済分野の内容に関する検定意見書について,韓日比較研究を計画した韓国開発研究院(KDI)経済 情報・教育センター(EIEC)の要請にもとづき,日本における教科書検定の制度・手続き・基準,最近の「政治・経済」教科書に おける検定意見書の内容と焦点,経済教科書の改善案について述べたものである。向後の研究の参考に供するために,本論の本誌 への掲載を快諾された KDI/EIEC の関係者には心からの謝意を表したい。

Ⅰ.はじめに

 2013(平成 25)年 11 月 15 日に文部科学省は,日本 の初等及び中等教育で使われる教科書の改革実行プラ ンを発表した。下村博文文部科学大臣が安倍晋三首相 に報告したそのプランの内容は,(1)《検定申請時の 提出書類の改善について》教育基本法に則った教科書 の著作・編集を促進するため,教科書会社(発行者) による検定申請時の提出書類(編修趣意書等)を改善 するとともに,文部科学省ホームページにおいて編修 趣意書等を公開すること,(2)《教科用図書検定基準 等の改正について》公正・中立でバランスの取れた教 科書の記述となるように教科用図書検定基準を改正し, 教育基本法の目標等に照らして重大な欠陥がある場合 には検定不合格とすること,(3)《検定手続の透明化 について》検定意見書等関係文書の具体化と透明化を 図るため,教科用図書検定調査審議会の部会及び小委 員会の議事概要をより具体的に作成するとともに,す べての検定意見書等を文部科学省ホームページに掲載 したり,検定意見書の記述内容の具体化を図ること ─を目的とするものである。1)文部科学省では,こ のプランに沿って2014(平成26)年1月には具体的な 制度改正を行い,2014 年度の中学校用教科書の検定 から新制度を適用していく方針である。  本論は,2009(平成 21)年 3 月に改正された高等学 校学習指導要領に従って作成された高等学校公民科の 「政治・経済」教科書について,どのような検定が行 われたかを明らかにしようとするものである。ただし, そこには上記プランの内容はまだ反映されていない。 なお,「政治・経済」教科書の検定について,これま でに詳細な分析を行った先行研究はない。わずかに鈴 木他(2003)のみが,2004 年度から使用される教科 書の検定結果について,その特徴の分析を教科書検定 批判の立場から,日本史,現代社会,倫理,政治・経 済,地学Ⅱ,科学Ⅱ,物理Ⅱ,生物Ⅱについてきわめ て簡単に行っているだけある。  上記のプランに示された 3 つの目的のうち,本論に 関係しているのは(2)である。上述したように,「教 科用図書検定基準等の改正」とは,①バランス良く教 えられる教科書となるように検定基準を見直すこと, ②教育基本法の目標等に照らして重大な欠陥がある場 合を検定不合格要件として明記すること─の 2 つが ポイントである。特に①については,「通説的な見解 がない場合や,特定の事柄や見解を特別に強調してい る場合などに,よりバランスの取れた記述にするため の条項を新設・改正」すること,及び「政府の統一的 な見解や確定した判例がある場合の対応に関する条項 を新設」することを謳っている。ただし,「通説的な 見解がない場合や,特定の事柄や見解を特別に強調し ている場合」あるいは「政府の統一的な見解や確定し た判例がある場合」について,文部科学省は具体的な 事例を示しているわけではない。これについて 2013 年 11 月 16 日付の朝日新聞(朝刊)では,第 2 次世界 大戦中の南京事件(南京大虐殺とも言う。1937 年に 中国・南京において日本軍が多数の中国人兵士や一般 住民を殺害したとする事件)や慰安婦の問題などが想 定されており,こうした事項に関する政府の見解(特

Specific Study

The Journal of

Economic Education No.33, September, 2014

論考

高等学校「政治・経済」

教科書の検定について

On the Inspection of High School Textbook “Politics and Economy” in Japan

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に歴史上の問題に関する見解)を教科書に記載するこ とを求めるような検定基準の改定であると報じてい る。2)  また,(3)の「検定手続の透明化」とは,検定関係 文書(議事概要や検定意見書など)の記述内容をより 具体化し,ホームページで公開することとされている。 文部科学省(および安倍政権)は,(2)と(3)に挙 げたこれらの改革措置により,バランスを欠いた教科 書記述について検定を通じて修正を図るとともに,検 定手続きの透明性の向上を達成すべき目標としている。

Ⅱ.教科書検定制度について

 そこでまず,日本における教科書(教科用図書)の 検定制度について簡単に述べておきたい。  日本では 1947 年に学校教育法が制定されたが,そ の条文(現行の学校教育法では第 34 条)で,次のよ うに小学校における教科用図書・教材の使用が定めら れている。 第 34 条 小学校においては,文部科学大臣の検定 を経た教科用図書又は文部科学省が著作の名義を 有する教科用図書を使用しなければならない。 2 前項の教科用図書以外の図書その他の教材で, 有益適切なものは,これを使用することができ る。 3 第 1 項の検定の申請に係る教科用図書に関し調 査審議させるための審議会等(国家行政組織法 (昭和 23 年法律第 120 号)第 8 条に規定する機関 をいう。以下同じ。)については,政令で定め る。  この条文にある規定は,小学校だけでなく,中学校 については第 49 条で,および高等学校については第 62 条で,それぞれ準用されることが定められている。 また,第 3 項にある「検定の申請に係る教科用図書に 関し調査審議させるための審議会」とは,学校教育法 施行令で教科用図書検定調査審議会と規定されている (同施行令第 41 条)。したがって,小学校から高等学 校までの教科書はすべて教科用図書検定調査審議会に よる調査審議を受けることになる。  ここで,上記第 3 項にある「検定の申請に係る教科 用図書」とは,民間で教科用として著作・編集された 図書であり,その図書すなわち教科書を作成・発行し た著作者あるいは民間の会社(発行者)は,検定を受 けるために文部科学大臣に対して申請を行う。申請を 受けた文部科学大臣は,その図書が教科書として適切 か否かを,教科用図書検定調査審議会による審査結果 にもとづいて決定するが,適切と判断されて合格すれ ば教科書として使用することが認められる。このよう に日本では,初等・中等教育に使用される教科書の作 成・発行は民間に自由に認められているが,それが実 際に学校で使用される適切な教科書であるためには, 文部科学大臣の検定を受け,合格しなければならない。

Ⅲ.教科書検定の手続きについて

 教科書検定の手続きについては,教科用図書検定規 則(平成元年文部省令第 20 号)に定められている。3) 教科書の著作者ないし発行者による検定申請から,検 定の決定(合格)に至るまでの手続きの流れは,図 1 に示すとおりである。  まず,教科書の検定申請を行おうとする者は,所定 の検定審査申請書に,申請する図書と検定審査料を添 えて文部科学大臣に提出する。申請を受けた文部科学 大臣は,申請された図書(教科書)が適切か否かの審 査を,諮問機関である教科用図書検定調査審議会に付 す。同審議会は,文部科学大臣によって任命された大 学教授や小・中・高等学校教員など学識経験者から成 る30名以内の委員で構成されている(任期は2年,再 任可)。また,審議会は主として教科ごとの部会から 構成されている。たとえば 2011(平成 23)年度と 2012 (平成 24)年度では 9 つある部会のうち,地理歴史と 公民の教科書を扱うのは第 2 部会であり,さらにそれ は科目ごとの小委員会に分かれている。4)そこで本論 では,平成 23 年度第 2 部会政治経済小委員会と平成 24 年度第 2 部会政治・経済小委員会における審議の経 過と結果について検討することにする。5)そのほか同 審議会は,特別事項の調査審議のために臨時委員を, また専門事項の調査のために専門委員を置くことがで きる。これらはすべて,教科用図書検定調査審議会令 (昭和 25 年政令 140 号)にもとづいている。  文部科学大臣から諮問を受けた教科用図書検定調査 審議会では,委員,臨時委員,専門委員,及び教科書 調査官による調査を行う。教科書調査官は文部科学省 の常勤職員であり,大学の教職の経歴等を持つ人が採 用される。6)その役割は,申請された図書に関する審 議会での専門的な審議のために必要な調査を行い,そ の調査意見をまとめた資料(調査意見書)を作成して 審議会に提出することなどである(教科用図書検定規 則第 11 条)。委員や教科書調査官らによるこうした調 査結果を総合して,同審議会では専門的,学術的な審

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議を行った上で,当該図書が教科書として適切か否か の結論を出し,その結論を文部科学大臣に答申する。 そして,答申を受けた文部科学大臣は,この答申にも とづいて検定の合否について判断を下す。  この検定審査の結果,合格(①)ないし不合格 (②)になった図書については,その旨が申請者に通 知されるが,「必要な修正を行った後に再度審査を行 うことが適当である場合には」合否の判定が留保され て(③),検定意見が申請者に通知される(教科用図 書検定規則第 7 条)。なお,不合格の場合には「検定 審査不合格となるべき理由書」が申請者に対して事前 に通知される(同規則第 8 条)。この「理由書」の通 知を受けた申請者は,その日の翌日から起算して 20 日以内に「不合格となるべき理由に対する反論書」を 文部科学大臣に提出することができる(同規則第 8 条 第 2 項)。反論書の提出がなされない時には,文部科 学大臣は検定審査不合格の決定を行う(同規則第 8 条 第 3 項)が,反論書が提出された時には,文部科学大 臣はそれを踏まえて再度,検定に合格(①)ないし不 合格(②)の決定を下すか,あるいは合否の判定を留 保して(③)検定意見を申請者に通知する(同規則第 8 条第 4 項)。なお,不合格の場合には,文部科学大臣 はそれを申請者に通知する際に「反論認否書」を交付 する。  合否の判定が留保され(③),検定意見が文書(検 定意見書)によって通知された申請者は,その通知を 受けた日の翌日から起算して 20 日以内に,「検定意見 に対する意見申立書」を文部科学大臣に提出すること ができる(同規則第 9 条)。この「意見申立書」で申 請者が個々の事項について申し立てた意見については, それが妥当と認められるか否かを,意見申立書が提出 された日の翌日から起算して 20 日以内に,文部科学 大臣は申請者に通知する。仮に申し立てられた意見が 妥当だと認められれば,文部科学大臣は当該検定意見 1 合格したら教科書の見本提出。 2 不合格の場合には再申請が可能。 3 検定意見書を交付することにより行われる。 図 1 教科書検定の手続き

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を取り消す(同規則第 9 条第 2 項)。  他方で,申請者が検定意見に従って図書の内容を修 正した場合には,それを「修正表」にまとめて「修正 表提出届」とともに,検定意見の通知を受けた日の翌 日から起算して 35 日以内に文部科学大臣に提出する (同規則第 10 条)。この提出を受けた文部科学大臣は, 修正された内容について審議会の審議に付し,その結 果にもとづき修正後の申請図書について,検定の合格 (④)ないし不合格(⑤)の決定を下し申請者に通知 する(同規則第 10 条第 2 項)。不合格の場合には,そ の通知の際に「検定審査不合格理由書」が申請者に交 付される。また,「修正表」と「修正表提出届」が提 出されなかった時には,文部科学大臣は検定不合格の 決定を行って申請者に通知する(同規則第 10 条第 3 項)。  なお,検定不合格(②⑤)となった図書については, その著作者または発行者はそれに必要な修正を加えた 上で,一定期間内に再申請することができる(同規則 第 12 条)。現行制度では,この一定期間とは,高等学 校用教科書の場合,検定不合格の決定がなされた年度 の翌年度の 6 月 1 日〜 10 日の期間である。

Ⅳ.教科書検定の基準について

 最新の教科書検定の基準は,高等学校に関しては, 高等学校教科用図書検定基準(平成 21 年文部科学省 告示第 166 号)に定められている。7)その第 2 章では, 各教科共通の条件が,次の 3 つの側面から述べられて いる。   1 基本的条件   2 選択・扱い及び構成・排列   3 正確性及び標記・表現  まず「1 基本的条件」については,(1)教育基本 法と学校教育法に掲げられた目的・目標に一致してい ること,(2)学習指導要領の総則に示す教育方針や各 教科の目標に一致していること,(3)高等学校学習指 導要領に示す教科及び科目の「目標」に従い,学習指 導要領に示す科目の「内容」及び「内容の取扱い」に 示す事項を不足なく取り上げていること,(4)教科書 の内容には,学習指導要領に示す目標,内容及び内容 の取扱いに照らして不必要なものは取り上げていない こと,(5)教科書の内容は,生徒の心身の発達段階に 適応しており,心身の健康や安全及び健全な情操の育 成について必要な配慮を欠いていないこと─という 5 項目が挙げられている。  次に「2 選択・扱い及び構成・排列」については, まず《学習指導要領との関係》で,(1)学習指導要領 の総則に示す教育方針,学習指導要領に示す目標,内 容及び内容の取扱いに照らして,不適切なところや生 徒が学習する上で支障を生ずる恐れのあるところがな いこと,(2)話題や題材が他の教科・科目にわたる場 合には,十分な配慮なく専門的知識を扱っていないこ と,(3)学習指導要領の内容及び内容の取扱いに示す 事項が,学習指導要領に示す標準単位数に対応する授 業時数に照らして,教科書の内容に適切に配分されて いること─の 3 項目が挙げられている。  《政治・宗教の扱い》では,(4)教育基本法第 14 条 (政治教育)及び第 15 条(宗教教育)の規定に照らし て適切かつ公正であり,特定の政党や宗派またはその 主義や信条に偏っていたり,それらを非難していると ころがないこと─の 1 項目が挙げられている。  《選択・扱いの公正》では,(5)話題や題材の選 択・扱いは,特定の事項・事象・分野などに偏ること なく,全体として調和がとれていること,(6)教科書 の内容に,特定の事柄を特別に強調しすぎていたり, 一面的な見解を十分な配慮なく取り上げているところ がないこと─の 2 項目が挙げられている。  《特定の企業・個人・団体の扱い》では,(7)教科 書の内容に,特定の営利企業,商品などの宣伝や非難 になる恐れのあるところがないこと,(8)教科書の内 容に,特定の個人・団体などの活動に対する政治的ま たは宗教的な援助や助長となる恐れのあるところがな く,また,その権利や利益を侵害する恐れのあるとこ ろがないこと─の 2 項目が挙げられている。  《引用資料》では,(9)引用・掲載された教材・写 真・挿絵・統計資料などは,信頼性のある適切なもの が選ばれていて,その扱いが公正であること,(10) 引用・掲載された教材・写真・挿絵・統計資料などに ついて,著作権法上必要な出所や著作者名,学習上必 要な出典や年次などの事項が示されていること─ 2 項目が挙げられている。  《構成・排列》では,(11)教科書の内容は,全体と して系統的,発展的に構成されていて,網羅的,羅列 的なところはなく,その組織及び相互の関連は適切で あること,(12)教科書の内容のうち,説明文・注・ 資料などは,主たる記述と適切に関連づけて扱われて いること,(13)実験・観察・実習・調べる活動など に関しては,生徒が自ら当該活動を行うことができる よう適切な配慮がされていること─の 3 項目が挙げ られている。

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 《発展的な学習内容》では,(14)生徒の理解や習熟 の程度に応じて,学習内容を確実に身につけることが できるよう,学習指導要領の内容及び内容の取扱いに 示す事項を超えた事項(以下「発展的な学習内容」と いう)を取り上げることができること,(15)発展的 な学習内容を取り上げる場合には,学習指導要領の内 容や内容の取扱いに示す事項との適切な関連の下,学 習指導要領の総則に示す教育方針,学習指導要領に示 す目標や内容の趣旨を逸脱せず,生徒の負担過重とな らないものとし,その内容の選択・扱いには,これら の趣旨に照らして不適切なところや生徒が学習する上 で支障を生ずる恐れのあるところがないこと,(16) 発展的な学習内容を取り上げる場合には,それ以外の 内容と区別され,発展的な学習内容であることが明示 されていること─の 3 項目が挙げられている。  「3 正確性及び標記・表現」については,(1)誤り や不正確なところ,相互に矛盾しているところがない こと,(2)客観的に明白な誤記,誤植,脱字がないこ と,(3)生徒がその意味を理解しがたい表現や,誤解 する恐れのある表現がないこと,(4)漢字・仮名遣 い・送り仮名・ローマ字つづり・用語・記号・計量単 位などの表記は適切であって不統一はなく,別表(省 略)に掲げる表記の基準に拠っていること─の 4 項 目が挙げられている。  上記のような教科書検定の基準における各教科共通 の条件のうち,基本的に重要なことは,初等及び中等 教育段階の学校で使われる教科書の内容は,学習指導 要領に沿ったものであるべきだということである。し たがって,当然のことではあるが,学習指導要領で示 されていない事項は(発展的な学習内容は別にして) 教科書には記載されていないし,もし記載されたとし たら検定の段階で不適切と判断され,修正や削除の対 象とされるであろう。また,学習指導要領で示されて いる事項が教科書に記載されていない場合には,やは り検定の段階でその教科書は不適切と判断されて,加 筆・記載が求められるであろう。  次に,高等学校教科用図書検定基準の第 3 章では, 各教科固有の条件が述べられているが,公民科につい ては,「1 選択・扱い及び構成・排列」で 6 項目,「2  正確性及び標記・表現」で 1 項目が挙げられている。  まず,「1 選択・扱い及び構成・排列」では,(1) 省略(科目「倫理」に関することであるため),(2) 学習指導要領第 2 章第 3 節第 2 款第 3「政治・経済」 の 2「内容」の(3)のア及びイそれぞれに示す課題 については,すべてを取り上げ,選択して学習するこ とができるよう配慮されていること,(3)未確定な時 事的事象について断定的に記述したり,一面的な見解 を十分な配慮なく取り上げたりするところがないこと, (4)近隣のアジア諸国との間の近現代の歴史的事象の 扱いに,国際理解と国際協調の見地から必要な配慮が されていること,(5)著作物,資料などを引用する場 合には,評価の定まったものや信頼度の高いものを用 いており,その扱いは公正であること。また,史料・ 法文を引用する場合には,原典の表記を尊重している こと,(6)日本の歴史の紀年について,重要なものに は元号と西暦を併記すること─の 6 項目が挙げられ ている。8)  「2 正確性及び標記・表現」では,(1)図・表・グ ラフ・地図などは,通常の約束・方法に従って記載さ れていること─の 1 項目が挙げられている。  ここで特に触れておきたいのは,上記「1 選択・ 扱い及び構成・排列」の(2)と(4)である。まず (2)について,高等学校学習指導要領において,9) 民科の科目である「政治・経済」の 2「内容」の(3) のアとイに示された課題とは,次のようなものである。   ア 現代日本の政治や経済の諸課題  少子高齢化と社会保障,地域社会の変貌と住 民生活,雇用と労働を巡る問題,産業構造の変 化と中小企業,農業と食料問題などについて, 政治と経済とを関連させて探求させる。   イ 国際社会の政治や経済の諸課題  地球環境と資源・エネルギー問題,国際経済 格差の是正と国際協力,人種・民族問題と地域 紛争,国際社会における日本の立場と役割など について,政治と経済とを関連させて探求させ る。  これらの諸課題は,近年の日本ないし日本社会がま さに直面している問題であるとともに,その解決のあ り方に関しては,さまざまな意見が出され,議論が交 わされていて,いまだに最善の解決策が見出されてい ない問題である。それだけに,これらは,持続可能な 社会の形成が求められる現代社会の諸課題と位置づけ られて,その望ましい解決のあり方について生徒に考 察を深めさせることを,学習指導要領では求めている。 とはいえ,これらは唯一の正解が必ずあるという問題 ではないので,教員にとっては教えにくいテーマであ ると考えられる。  また(4)は,いわゆる近隣諸国条項と呼ばれてい るものであり,戦前・戦中の旧日本軍による「侵略」 に関する歴史教科書の記述をめぐって,1982 年に日

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本政府が韓国と中国から批判を受けたために,近隣ア ジア諸国の国民感情にいっそう配慮する必要があると して,当時の文部大臣が教科用図書検定調査審議会に 諮って教科書検定基準に加えられた 1 項である。これ に関しては,「政治・経済」の教科書の中の経済分野 では関連する記述がないので,論じるには及ばないで あろう。

Ⅴ.「政治・経済」教科書の検定結果に

ついて

 ここまでは,日本の教科書検定制度,教科用図書検 定規則に定められた検定手続き,及び教科書検定基準 について述べてきた。本節では,2011(平成 23)年度 と 2012(平成 24)年度に実際に行われた教科書検定の 結果について述べたい。ここで対象とする教科書は, 検定の結果,翌年度に採択され,翌々年度から高等学 校で使用されるものであり,また農業・工業・商業・ 福祉など専門学科にだけ開設された教科(専門教科) ではなく,どの学科(普通科,専門学科,総合学科) にも共通の教科(共通教科)で使用される教科書の検 定結果に関してである。検定を申請した教科書は, 2011 年度は 219 点,2012 年度は 135 点であり,そのう ち 11 年度は 218 点が合格,1 点が不合格,12 年度は 132 点が合格,2 点が不合格,1 点が申請取り下げと なった。10)  教科別に公民を見ると,11 年度は 18 点が申請され, そのうち 12 点が「現代社会」,5 点が「倫理」,1 点が 「政治・経済」の教科書であり,それらすべてが合格 となった。12 年度は申請された 9 点すべてが合格と なったが,そのうち 2 点が「倫理」の教科書,7 点が 「政治・経済」の教科書であった。  図 1 で示したように,文部科学大臣に申請された教 科書は,教科用図書検定調査審議会において教科書調 査官による調査と同審議会における審査を受け,その 結果は①合格,②不合格,③合否の判定留保と検定意 見書の交付─のいずれかによって,文部科学大臣か ら各申請者に通知される。2011 年度および 2012 年度 の教科書検定では,申請された「政治・経済」の 8 点 については,すべての合否が「判定留保」とされ,11) 検定意見書が申請者に交付された。その検定意見書の 内容を次に示す。  なお,検定意見書のフォーマットは次のとおりであ る。「受理番号」は,教科書ごとに検定の申請を受け 付けた番号である。「学校」は,小学校・中学校・高 等学校の別である。「教科」は,政治・経済の場合に は「公民」である。「種目」は,検定を申請する教科 第 1 表 平成 23/24 年度検定申請教科書 *この数は,検定意見書の元になった調査意見書で指摘された箇所の数である。また括弧内の数は,左から,高等学校教科用図書検定基準の第 2 章(各教科共通の条件)の「1 基本的条件」「2 選択・扱い及び構成・排列」「3 正確性及び標記・表現」に該当する箇所の内訳を示す とともに,第 3 章(各教科固有の条件)の「1 選択・扱い及び構成・排列」あるいは「2 正確性及び標記・表現」に該当する箇所があれば, それも括弧内の中央あるいは右側の数にそれぞれ加えて記載される。

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書が使われる授業科目であり,本論で言えば「政治・ 経済」である。「学年」は,「検定審査申請書」の書式 のうち「目的とする学年」に申請者が記入すれば,そ れが検定意見書でも当てはまるが,筆者が調査した限 りでは,12)特定の学年を記入した「検定審査申請書」 を提出した申請者はゼロであった。したがって,どの 科目においても検定意見書の「学年」は空欄のままで ある。  「指摘箇所」は,修正が必要であると指摘した箇所 が存在する頁と行である。「指摘事項」には,修正が 必要であると指摘した用語や文を記入する。「指摘事 由」には,なぜ修正が必要とされるかを説明する理由 を記入する。「検定基準」には,指摘事由に示す理由 がもとづく高等学校教科用図書検定基準の第 2 章に掲 げる各教科共通の条件,あるいは第 3 章に掲げる各教 科固有の条件のうち(前述参照),該当するものを番 号で記入する。ちなみに,各教科共通の条件は,「1  基本的条件」「2 選択・扱い及び構成・排列」「3 正 確性及び標記・表現」であり,各教科固有の条件は, 公民科に関しては「1 選択・扱い及び構成・排列」 と「2 正確性及び標記・表現」である。そして,こ れらの条件がさらに小項目に分類されている。  まず,該当する教科書 8 点は第 1 表のとおりである。 「政治・経済」の教科書は,Ⅰ.現代の政治,Ⅱ.現 代の経済,Ⅲ.現代社会の諸課題,という 3 つの大項 目から構成されているが,ここでは「現代の経済」の 分野に限定して,第 1 表にある教科書 1 点ごとについ て,検定意見書で指摘された事項と事由を検討したい。 1.㈱第一学習社『高等学校 政治・経済』 (三浦軍三ほか)  検定意見書では全部で 8 箇所の指摘がなされたが, そのうち「現代の経済」の分野では 4 箇所である。こ れらを高等学校教科用図書検定基準(以下「検定基 準」)で分類すると,その第 2 章に掲げる各教科共通 の条件の「3 正確性及び標記・表現」に,4 箇所す べてがあてはまる。  また,「3 正確性及び標記・表現」は,前述したよ うに次の 4 種類に小分類される。(1)誤りや不正確な ところ,相互に矛盾しているところがないこと,(2) 客観的に明白な誤記,誤植,脱字がないこと,(3)生 徒がその意味を理解しがたい表現や,誤解する恐れの ある表現がないこと,(4)漢字・仮名遣い・送り仮 名・ローマ字つづり・用語・記号・計量単位などの表 記は適切であって不統一はなく,別表(省略)に掲げ る表記の基準に拠っていること。  そこで,この基準に従って上記 4 箇所を小分類する と,「3 正確性及び標記・表現」のうち(1)に問題 があるとされた(調査意見書と検定意見書の検定基準 の欄には 3-(1)と表記される)のは 2 箇所,(3)に問 題があるとされた(同様に 3-(3)と表記される)の も 2 箇所である。それを簡略化した検定意見書の形で 示したのが,下表である。 頁 指摘事項 指摘事由 検定基準 121 価格が変化したと きの需要量の変化 の大きさ(需要の 価格弾力性) 需要の価格弾力性 について誤解する おそれのある表現 である。 3-(3) 124 第二に,外部不経 済を排除するため には,公害防止に 取り組んでいる企 業に補助金を与え るほか,外部不経 済を発生させる企 業に社会的コスト を追(「負」の誤 り;筆者注)わせ る方法がある。 直接的規制が考慮 されておらず不正 確である。 3-(1) 132-133 税負担の不公平 (「捕捉」の誤り;所得税の所得補足 筆者注)率の格差 を税負担の不公平 とするのは不正確 である。 3-(1) 149 1990 年 代 に 入 っ て,日銀はようや く金融引き締めに 転じ 公定歩合引き上げ の時期について誤 解するおそれのあ る表現である。 3-(3)  このような指摘事項と指摘事由が記載された検定意 見書を交付された申請者は,意見申立書を提出するの でなければ(第 1 図参照),指摘された個々の事項に ついて修正を行い,それらを修正表にまとめることに なる。修正表では,検定意見書で指摘された 1 つひと つの事項について,その原文(および指摘事由)と修 正文が対照して示されるが,ここではそれを簡略化し て,下表のように修正文だけを示すことにする(以下 同じ)。なお,下線が修正部分を示す。 頁 修正文 121  …(以上,筆者略)価格が変化したときの需要 量の変化の割合(需要の価格弾力性)…(以下, 筆者略) 124  第二に,外部不経済を排除するには,政府が汚 染物質の排出を制限するといった直接規制のほ か,公害の原因企業に社会的費用を負わせるのも 有効な方法である。…(以下,筆者略)

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132-133  租税の基本原則は,公平であること・中立であること・簡素であることである。また,所得・消 費・資産に対してバランスよく課税するほか,税 負担が不公平であるという不満をなくす必要があ る。…(以下,筆者略) 149  1989 年から,日銀はようやく金融引き締めに 転じ…(以下,筆者略)  このように,「現代の経済」の分野に関して検定意 見書で指摘された事項は,すべて検定基準の第 2 章 「各教科共通の条件」の「3 正確性及び標記・表現」 にかかわるものである。要するに,それらは記述が不 正確であったり,生徒にとってわかりにくい表現であ るために,修正を求められたのである。したがって, それらを適切に修正し,それが教科用図書検定調査審 議会で認められたことで最終的に検定に合格すること ができた。13) 2.実教出版㈱『高校政治・経済』 (宮本憲一ほか)  検定意見書で指摘された箇所は全部で 26 箇所ある が,そのうち「現代の経済」の分野では 10 箇所が該 当する。これらはすべて検定基準の「3 正確性及び 標記・表現」にあてはまるが,さらにそれらを小分類 すると,(1)に問題があるとされたのは 4 箇所,(3) に問題があるとされたのは 6 箇所である。それらの例 をいくつか挙げると,下表のとおりである。 頁 指摘事項 指摘事由 検定基準 115 逆にいえば,家計や企 業は公共財の対価とし て租税を負担している のである。 租税について誤 解するおそれの あ る 表 現 で あ る。 3-(3) 119 外部不経済をもたらす 行為には課税して抑制 することが望ましい。 不正確である。 3-(1) 128 物価・・・財・サービ ス価格の平均値 物価の定義として不正確である。 3-(1) 153 しかし,契約自由の原 則が貫かれれば,(経 済的強者による経済的 弱者への圧迫や支配が 正当化されてしまう。 大企業と中小企業,資 本家と労働者,貸し手 と借り手などの契約関 係は;この括弧内の部 分は検定意見書では 「・・・」と略記)事実 上自由ではないことが ある。 説明不足で理解 しがたい。 3-(3) 164 今回の原発災害によっ て, 新 規 の 立 地 を と め,災害危険地域と老 朽化した設備の運転は 停止し,脱原発すべき である。 誤解するおそれ のある表現であ る。 3-(3)  このような指摘事項の 1 つひとつについて,申請者 は修正を行い,それらを修正表にまとめた。その中に ある修正文を下表に示す。 頁 修正文 115 逆にいえば,家計や企業は,公共財が総体として もたらす便益の対価として租税を負担する。 119 外部不経済をもたらす行為には法的規制をかける か,課税して抑制することが望ましい。 128 財・サービス価格の平均的な水準。 153 …(以上,筆者略)しかし,契約自由の原則の名 のもとに,経済的強者による経済的弱者への圧迫 や支配が正当化されるおそれがある。大企業と中 小企業,資本家と労働者,貸し手と借り手などの 契約関係は事実上対等なものではないことがある。 164  今回の原発災害によって,新規の立地をとめ, 災害危険地域と老朽化した設備の運転は停止し, 脱原発をすべきだとする国民の声がひろく聞かれ るようになった。  上表のように,この教科書においても,「現代の経 済」の分野に関して検定意見書で指摘された事項は, すべて検定基準の「3 正確性及び標記・表現」にか かわるものであった。申請者はそれらを適切に修正す ることで,最終的に検定に合格することができた。14) 3.実教出版㈱『最新政治・経済』 (伊東光晴ほか)  「現代の経済」の分野について検定意見書で指摘さ れたのは 4 箇所であり,そのすべてが検定基準の 3-(1),すなわち「3 正確性及び標記・表現」のうち 「(1)誤りや不正確なところ,相互に矛盾していると ころがないこと」に該当している。それら 4 箇所は, 下表のとおりである。 頁 指摘事項 指摘事由 検定基準 73 右下写真キャプション 7 行〜 8 行 「失業者は 1,400 万人を こえた。」 不正確である。 3-(1) 74 ※ 1「社会主義経済」中 社員全員 誤りである。 3-(1) 86 物価とは,財・サービス 価格の平均値 物価の定義として不正確で ある。 3-(1)

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120 左 1 行〜 4 行。「現在の 日本は,GDP でみると, アメリカ,中国,インド につぐ世界で第四番目の 経済大国である。 第四番目は不 正確である。 3-(1)  これらの指摘事項について,申請者により次のよう な修正文が作成された。 頁 修正文 73 …(以上,筆者略)失業者は約 1,300 万人にのぼ った。…(以下,筆者略) 74 生産手段は社会全員の共有物とされ(生産手段の 共有化), 86 物価とは,財・サービス価格の平均的な水準。 120 現在の日本は,GDP でみると,アメリカ,中国 につぐ世界で第三番目の経済大国である(2011 年)。  この検定申請教科書でも,検定意見書で指摘された 事項はすべて,検定基準の「3 正確性及び標記・表 現」に問題があるとされており,それを上記のように 適切に修正することで検定に合格することができた。 4.数研出版㈱『政治・経済』(岩田一政ほか)  「現代の経済」の分野について検定意見書で指摘さ れたのは 5 箇所である。そのうち 2 箇所は検定基準の 3-(1)に,ほかの 3 箇所は 3-(3)に該当している。 頁 指摘事項 指摘事由 検定基準 112 新古典派経済学, フリードマン フリードマンを新古典派経済学の代 表とするのは不正 確である。 3-(1) 122 「寡占下での競争」誤解するおそれの ある表現である。 3-(3) 134 間接税は,生活必 需品に課税される と,低所得者ほど 相対的に負担が重 くなる逆進課税に なりやすい。 間接税の逆進性に ついて不正確であ る。 3-(1) 150 しかし,1990 年以 後は株価や地価が 下落して,バブル 経済は崩壊し バブル崩壊の原因 について説明不足 で誤解するおそれ のある表現である。 3-(3) 172 アメリカは「低福 祉・低負担」とい われる。日本はア メリカ型に近い。 誤解するおそれの ある表現である。 3-(3)  これら 5 箇所の指摘事項について申請者は修正文を 作成したが,それらを下表に示す。 頁 修正文 112 マネタリズム 122 寡占下での競争 価格競争を避けてブランドイメ ージで競争する高級ブランド企業や,その地域で 近くに競争相手がいない企業などでは,「価格の 下方硬直性」「非価格競争」が当てはまる。ただ し,携帯電話などの通信企業間や牛丼チェーン企 業間などのように,需要の拡大が見込まれる市場 や価格以外では製品の差別化が難しい場合には, 寡占下でも価格引き下げ競争が行われる。 134 …(以上,筆者略)間接税は,生活必需品に課税 される消費税のように,低所得者ほど所得との比 較で相対的に負担割合が高くなる逆進課税になる 傾向を持つ。 150 …(以上,筆者略)しかし,1990 年以降は金融引 き締めや不動産向け融資の規制もあり,株価や地 価が下落して,バブル経済は崩壊し…(以下,筆 者略) 172 …(以上,筆者略)アメリカは「低福祉・低負担」 といわれる。日本は「中福祉・低負担」で,給付 水準はヨーロッパ大陸諸国に近く,国民負担の面 ではアメリカに近い。  この検定申請教科書でも,検定意見書で指摘された 5 箇所すべての事項が,検定基準の「3 正確性及び 標記・表現」に問題があるとされ,それらを適切に修 正することで最終的に「合格」と判定された。 5.東京書籍㈱『政治・経済』(間宮陽介ほか)  「現代の経済」の分野について検定意見書で指摘さ れたのは 4 箇所であり,そのすべてが検定基準の 3-(3),すなわち「3 正確性及び標記・表現」のうち 「(3)生徒がその意味を理解しがたい表現や,誤解す る恐れのある表現がないこと」に該当している。  それらを具体的に示すと,下表のとおりである。 頁 指摘事項 指摘事由 検定基準 136 と こ ろ が,2006 年 ごろからサブプライ ムローンの焦げつき が増え始め(サブプ ライムローン問題) 説明不足で誤解す るおそれのある表 現である。 3-(3) 168 政府もまた,産業界 の意向に添う形で労 働者派遣法などの改 正を行い 労働者派遣法など の改正について誤 解するおそれのあ る表現である。 3-(3) 168 経済のグローバル化 と自由化は,労働者 の立場を著しく弱体 化させている。 日本経済に関する 状況説明がなく誤 解するおそれのあ る表現である。 3-(3) 169 また女性や障害者な ど,これまで仕事か ら排除されていた人 たちの 誤解するおそれの ある表現である。 3-(3)  これら 4 箇所の指摘事項に対して申請者は修正文を

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作成したが,それらを修正表で 1 つずつ見てみる。 頁 修正文 136 …(以上,筆者略)ところが,不動産価格の低落 などをきっかけとして 2006 年ごろからサブプラ イムローンの焦げつきが増え始め(サブプライム ローン問題)…(以下,筆者略) 168 …(以上,筆者略)政府もまた,産業界の意向に 添うものとの批判もあるなか,労働者派遣法など の改正を行い…(以下,筆者略) 169 現代の労働問題 経済のグローバル化と自由化は 企業間の競争を激化させ,労働者の立場は著しく 弱体化している。…(以下,筆者略) 169 …(以上,筆者略)また女性や障害者など,これ まで働く機会が十分に確保されていなかった人た ちの…(以下,筆者略)  この検定申請教科書では,検定意見書で指摘された 4 箇所すべての事項が,検定基準の第 2 章「3 正確性 及び標記・表現」のうち,「(3)生徒がその意味を理 解しがたい表現や,誤解する恐れのある表現がないこ と」に問題があるとされた。申請者はそれらを適切に 修正することで,最終的にこの教科書は「合格」と判 定された。 6.㈱山川出版社『詳説 政治・経済』 (山崎広明ほか)  「現代の経済」の分野について検定意見書で指摘さ れたのは11箇所である。そのうち2箇所が検定基準の 3-(1)に,9 箇所が 3-(3)に該当している。具体例を 下表に示す。 頁 指摘事項 指摘事由 検定基準 114 家計の所得は,(企業 などに雇用されて受け 取る;この括弧内の部 分は検定意見書では 「…」と略記)勤労所 得や事業を営んで得る 事業所得のほか,… 経済主体として の 家 計 に つ い て,誤解するお それのある表現 である。 3-(3) 122 2 不完全情報 市場の失敗を説 明する用語とし て,理解し難い 表現である。 3-(3) 123 外部性は,工場の例で は,政府が汚水排出に 税金を課したり,企業 が近隣に賠償金を払っ たりすれば内部化さ れ,市場のメカニズム で処理できるようにな る。 外部性について 説明不足で,理 解し難い。 3-(3) 127 GDP,GNI,NI などは …それぞれの総額は等 しくなる(国民所得の 三面等価)。 不正確である。 3-(1) 132 税収-(歳出-国際の 元利払い費)をプライ マリー=バランス…と いい,… プライマリー・ バランスの説明 として,不正確 である。 3-(1)  これらの指摘事項については,申請者により次のよ うな修正文が作成された。 頁 修正文 114 家計の所得は,企業などに雇用されて受け取る勤 労所得や事業を営んで得る所得のほか, 122 2 情報の非対称性 123 外部性は,工場の例では政府が汚水排出を規制し て防除施設を設置させたり,税金を課したり,あ るいは企業が近隣に賠償金を払ったりすれば内部 化され,市場のメカニズムで処理できるようにな る。 127 GDP は,…それぞれの総額は等しくなる(国民所 得の三面等価)。 132 ③(歳入-国債発行額)-(歳出-国債の元利払い 費)をプライマリー=バランス…といい,  この教科書でも,修正が必要であるとして検定意見 書で指摘された箇所はすべて,検定基準の第 2 章「3  正確性及び標記・表現」にかかわるものであり,そ れらを適切に修正することで最終的に「合格」と判定 された。 7.㈱清水書院『高等学校 新政治・経済  最新版』(大芝亮ほか)  「現代の経済」の分野について検定意見書で指摘さ れたのは 8 箇所である。そのうち 1 箇所が検定基準の 3-(1)に,7 箇所が 3-(3)に該当している。具体例を 下表に示す。 頁 指摘事項 指摘事由 検定基準 84 この買い手の気持ちを グラフにしたものが需 要曲線である。(同様 に 24 〜 25 行目:この 売り手の気持ちをあら わしたものが供給曲線 である。) 「気持ち」は, 誤解するおそれ のある表現であ る。 3-(3) 114 …都市・生活型公害は 依然として深刻で,… ダイオキシン類,…な どが問題となってい る。及び,側注 3:ダ イオキシン類 ダイオキシン類 対策特別措置法 の制定に触れら れておらず,説 明不足で理解し がたい。 3-(3)

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121 なかでも,長期滞在で 単純労働に従事する労 働者は,その受け入れ の方法,処遇,人権確 保への配慮など,社会 問題化しているものも 少なくない。 外国人労働者の 単純労働につい て,説明不足で 理解し難い表現 である 3-(3) 147 環太平洋戦略的経済連 携協定(TPP)及びそ の説明文中,…日本も 参加を表明した。 現状に照らし て,不正確であ る。 3-(1)  上記のような指摘事項に対して,申請者は下表のよ うな修正文を作成して修正表を提出した。 頁 修正文 84 この買い手の購入したい量をグラフにしたものが 需要曲線である。この売り手の売りたい量をあら わしたものが供給曲線である。 114 …都市・生活型公害は依然として深刻で,…ダイ オキシン類▶ 3 ,…などが問題としてあげられる。  ▶ 3 ダイオキシン類 ごみ焼却の際に発生する 有毒物質で,発がん性が認められている。2000 年にダイオキシン類特別措置法が施行され,ごみ 焼却施設に対する排出ガス規制やごみの減量化な どの取り組みが推進され,排出量は大幅に減少し ている。 121 なかでも,長期滞在で単純労働に従事する外国人 は不法就労とされ▶ 12,その雇用に関して,処 遇,人権確保への配慮など,社会問題をともなう ものも少なくない。 (側注 12 を追加) ▶ 12 外国人の不法就労 …(以下,筆者略)… 147 ▶ 5 環太平洋パートナーシップ協定(TPP)  …日本も交渉参加にむけた協議をすすめている。 (以下,筆者略)  この教科書でも,修正の必要性を指摘された箇所は, 検定基準の第 2 章「3正確性及び標記・表現」の中の (1)ないし(3)にかかわるものであり,それらを適 切に修正することで最終的に「合格」と判定された。 8.㈱清水書院『高等学校 現代政治・経済  最新版』(中村研一ほか)  この教科書では,「現代の経済」の分野について検 定意見書で指摘されたのは 13 箇所である。そのうち 3-(1)に該当するのが 4 箇所,3-(3)に該当するのが 9 箇所である。それらの例を下表に示す。 頁 指摘事項 指摘事由 検定基準 121 家計は,…事業を営 んで事業所得を得る。経済主体としての家計について,誤 解するおそれのあ る表現である。 3-(3) 123 政府は家計や企業か ら税金(租税)や保 険料を徴収し,…調 整をしている。…こ うした政府が経済主 体として営む活動を 財政という。 財政について,不 正確である。 3-(1) 187 …発展途上国から集 まる不法就労者は法 的に無保護の状態に あり,… 外国人労働者への 労働法等の適用に 照らして,誤解す るおそれのある表 現である。 3-(3) 205 タイが管理変動相場 制に移行したことを 契機として,タイの 通貨バーツの相場が 下落し,… 通貨危機の原因に ついて不正確であ る。 3-(1) 210 しかし,金利が上が り, 融 資 を う け た 人 々 の 返 済 が 滞 る と,証券が不良債権 化するとともに,市 場への信頼も失墜し た。 サブプライムロー ン問題の経緯につ いて,説明不足で 理解し難い。 3-(3)  上記のような指摘事項に対して,申請者が作成した 修正文は次のようなものである。 頁 修正文 121  家計は,みずから企業や政府に労働力を提供し て,賃金などのかたちで労働所得(勤労所得)を 受けとる(→ p. 183)。また,過去に蓄積した資 産を運用して…資産所得(財産所得)を得る (→ p. 146)。 123 政府は,家計や企業から税金(租税)を徴収し, …(筆者略)…調整をしている。こうした政府の 活動は財政とよばれる。政府の支出は…(以下, 筆者略) 187  …貧困と失業に苦しむ発展途上国から集まる不 法就労者は,労働基準法などの適用はされるが, 適切に保護されていないという指摘もあり,人権 保護に向けてどのように配慮するべきかという問 題もかかえている。 205  …タイはヘッジファンドによる投機の動きに対 し,通貨バーツを買い支えたが,結局管理変動相 場制に移行せざるをえなかった。これを契機に相 場が下落し,東アジア,東南アジア各国の経済に 打撃をあたえた。その後… 210  サブプライムローンとは低所得者層や信用度が 低い人に向けての,高金利の住宅融資である。こ のローン債権(融資金を返済してもらう権利)が 証券化され,金融商品となった。しかし,住宅バ ブルが崩壊すると住宅価格は下落し,担保価値も 大幅に下がった。その結果,金融商品のリスクが 高まって金利が上昇し,融資をうけた人々の返済 が滞ると,証券が不良債権化するとともに,市場 への信頼も失墜した。  この教科書でも,修正が求められた指摘事項は,検 定基準の第 2 章「3 正確性及び標記・表現」の中の (1)ないし(3)に該当するものであり,それらを適

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切に修正することで最終的に「合格」と判定された。

Ⅵ.おわりに

 ここまで,2011(平成 23)年度および 2012(平成 24)年度の検定に申請された高等学校「政治・経済」 の教科書 8 点に関して,経済の分野に焦点を当てて, 検定意見書と修正表にもとづき分析してきた。これら 8 点の教科書について,検定意見書で指摘された指摘 事項の数は第2表のとおりである。合計で59箇所の事 項が指摘されたが,そこで特徴的であるのは,それら の指摘事項が,検定基準の第 2 章にある各教科共通の 条件のうち,「3 正確性及び標記・表現」における (1)誤りや不正確なところ,相互に矛盾しているとこ ろがないこと(3-(1)),または,(3)生徒がその意味 を理解しがたい表現や,誤解する恐れのある表現がな いこと(3-(3))という,比較的重大でない理由に該 当するとされたことである。要するに,検定申請教科 書における表記や説明の不正確さ,あるいは表現のわ かりにくさが理由とされて,表記・説明・表現の微修 正が必要だと指摘されたのである。  この 2 つ以外の,より重大な理由による指摘事項が ないこと,すなわち検定基準の第 2 章にある各教科共 通の条件である「1 基本的条件」と「2 選択・扱い 及び構成・排列」に該当する指摘事項,あるいは検定 基準の第 3 章にある各教科固有の条件に該当する指摘 事項が 1 つもないことは,教科書の著作者と発行者が, 検定基準に定められたそれらの条件に抵触しないよう に,慎重かつ綿密に教科書を執筆・編集した結果であ ると言えよう。特に執筆の際に重視しなければならな 第 2 表 検定意見書における指摘事項の数 第 3 表 経済を教える教員が教科書に抱く不満 出所:淺野忠克・山岡道男・阿部信太郎(2014)「高等学校公民科教員の研究:経済教育の視点から〔2〕」 『山村学園短期大学紀要』第 24 号。

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い条件は,教科書の内容が,学習指導要領に定められ た当該科目の「目標」「内容」「内容の取扱い」に合致 していることである。もしそれらから逸脱した場合に は,表記・説明・表現の微修正にはとどまらずに,教 科書の内容じたいに大幅な修正を求められることにな るであろうし,さらには,そのような修正箇所が多け れば,検定不合格の結果さえ予想される。15)  最後に,筆者は高等学校公民科教員のアンケート調 査を実施する中で,経済を教える教員が教科書に抱く 不満を明らかにした(淺野・山岡・阿部 2014)。その 中の代表的な意見を抜粋したのが第 3 表である。  これを見ると,教科書の説明がむずかしい・わかり にくい,教科書の記述が簡潔すぎて生徒に理解できな い,教科書の内容が抽象的・理論的で生徒が経済を身 近に感じられない,教科書の構成・配列が適切でない, などの不満を教員が持っていることがわかる。こうし た不満を解消するには教科書の抜本的な改訂が必要で あるが,そのためには現行の学習指導要領の改定も必 要であり,それを短期間で実現することは困難であろ う。  さらに,経済を教える教員が抱く最大の不満は,筆 者による同じアンケート調査によれば,授業時数の不 足である。それを,検定申請者が提出した「検定申請 書類の添付書類」の中に記載された「政治・経済」の 配当授業時数で見ると,第 4 表のとおりである。そこ では,年間授業時数 70 時間のうち,「現代の経済」に 配当される最大の授業時数は 33 時間であり,最少は 22 時間である。生徒にとって理解が困難で身近に感 じられない教科書の経済の内容を,教師がわずかに 22 〜 33 時間の年間授業時数ですべて教えることは不 可能に近い。これを可能にするためには,経済分野に 配当する授業時数を増加するか,または,教えるべき 経済の内容を厳選して教科書の内容量を減らす必要が あるだろう。ただし,このどちらかを実現するために も─あるいはその両方を実現するためにも,現 行の学習指導要領の見直しが前提であることは言うま でもない。  しかし,そうした学習指導要領の改定が簡単には実 現できないとすれば,どうすればよいであろうか。そ こで考えられるのが,学習指導要領は現行のままで, 教科書の内容を質的にも量的にもより充実させること である。たとえば,現在使われている教科書に対する 不満を解消するために,生徒の興味を引く身近なテー マや事例を増やし,記述・説明はできる限り平易かつ 詳しく行い,資料・統計・写真・イラストなども本文 の理解を容易にするために豊富に掲載することで,生 徒が進んで自学自習できるような教科書を編集するこ とである。そうすれば,たとえ授業時数が少なくても, 生徒は学校での学習のほかに自習することを通じて, 経済に対する興味・関心と理解を深めることが可能に なるであろう。  このような新しいコンセプトにもとづく教科書を編 集するとしたら,そこには 1 つの重大な問題が生じる と考えられる。それは,ページ数が相当に増えること にともない,教科書製作の費用が増大するという問題 である。現在の教科書の定価については,2013(平成 25)年 3 月 13 日に改正された教科書の定価認可基準 (文部科学省告示第 32 号)によって,政治・経済の教 科書 1 冊あたりの最高額は 450 円という低い水準に定 められている。もし教科書の内容の充実にともない製 作費用が増大するとすれば,民間の教科書会社(発行 者)にとっては利幅が減ったり,あるいは採算が取れ なくなったりするかもしれない。それを避けるために は,紙ベース(印刷物)の教科書ではなく,デジタル 化した教科書を製作することが 1 つの代替案として考 えられるが,その実現と普及は日本にとっては今後の 課題である。 註 1) 平成 25 年度教科用図書検定調査審議会「『教科書検定の 改善について』(審議のまとめ)」(平成 25 年 12 月 20 日) 参照。 2) 『朝日新聞』2013(平成 25)年 11 月 16 日付朝刊の 1 〜 2 面。 3) 教科用図書検定規則については,文部科学省の下記ウェ ブサイト参照(2013 年 12 月 27 日確認。以下同じ)。  http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/ken 第 4 表 検定申請教科書に示された配当授業時数 *定期考査の 5 時間を含む。

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tei/021201.htm 4) 第 2 部会の小委員会は,地理,世界史,日本史,現代社会, 倫理,政治・経済の 6 つが設けられている。 5) 2011(平成 23)年度第 2 部会政治経済小委員会の委員は, 次のとおり。  委員:小室正紀(慶應義塾大学教授)  臨時委員:赤坂正浩(神戸大学大学院教授)・篠原総一 (同志社大学大学院教授)・清水順子(専修大学准教 授)・鈴木佑司(法政大学教授)・高橋滋(一橋大学大 学院教授)・円谷峻(明治大学法科大学院教授)・山本 孝宏(弁護士)  専門委員:野間敏克(同志社大学教授)・宮里尚三(日 本大学准教授)   また,2014(平成 24)年度第 2 部会政治・経済小委員 会の委員は,次のとおり。  委員:小室正紀(慶應義塾大学教授)・清水順子(学習 院大学教授)  臨時委員:赤坂正浩(立教大学教授)・篠原総一(同志 社大学大学院教授)・鈴木佑司(法政大学教授)・高橋 滋(一橋大学大学院教授)・円谷峻(明治大学法科大学 院教授)・山本孝宏(弁護士)  専門委員:野間敏克(同志社大学教授) 6) 文部科学省の下記ウェブサイト参照。http://www.mext. go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/gaiyou/04060901/004. htm   文部科学省初等中等教育局に教科書調査官を置くこと の根拠法令は,文部科学省組織規則(平成 13 年文部科学 省令第 1 号)の第 22 条にある。そこには教科書調査官 57 人を置くとされている。また,同条第 3 項では,「教科書 調査官は,命を受けて,検定申請のあった教科用図書の 調査に当たる。」とされ,第 4 項では,「教科書調査官の うち文部科学大臣が指名する者 14 人を,担当する教科を 定めて主任教科書調査官とし,主任教科書調査官は,命 を受けて,その担当する教科について,教科書調査官の 職務の連絡調整に当たる。」と定められている。これにつ いては文部科学省の下記ウェブサイト参照。  http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/tosho/003/gi jiroku/08090901/006.htm   教科書調査官の職務(申請図書の審査,教科用図書検 定調査審議会の審査に必要な資料の作成,合格・不合格 の判定案の作成,検定意見相当箇所についての調査意見 書の作成,検定審査不合格となるべき理由書の作成,不 合格となるべき理由に対する反論書の調査,反論の認否 の判定案の作成,検定意見に対する意見申立書の調査, 申し立てられた意見の認否の判定案の作成,修正表の調 査と判定案の作成,検定済図書の訂正の申請の勧告を行 おうとする場合の資料作成など)についての詳細は,上 記のウェブサイトに掲載の教科用図書検定審査要項(平 成 13 年 1 月 15 日教科用図書検定調査審議会決定)を参 照のこと。   また,教科書調査官となることのできる者の条件につ いては,教科書調査官選考基準〔1969(昭和 44)年 4 月 1 日施行,初等中等教育局長決裁〕に定められている。こ れについては文部科学省の下記ウェブサイト参照。  http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/tosho/toushin/at tach/125886.htm   なお,2011(平成 23)年度の教科用図書検定調査審議 会第 2 部会政治経済小委員会と 2012(平成 24)年度の教 科用図書検定調査審議会第 2 部会政治・経済小委員会には, その議事要旨を見ると,最大 4 名の教科書調査官(うち 1 名は主任教科書調査官)が出席している(いずれも同一 人物である)。これについては文部科学省の下記ウェブサ イト参照。  http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/tosho/018/048_6/ gijiroku/1320163.htm  http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/tosho/018/058_6/ gijiroku/1335053.htm 7) 高等学校教科用図書検定基準については,文部科学省の 下記ウェブサイト参照。  http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/1284728. htm 8) 2014(平成 26)年 1 月 17 日の文部科学省告示第 2 号では, 「教科書改革実行プラン」を反映した高等学校教科用図書 検定基準(平成 21 年文部科学省告示第 166 号)の一部改 正が公表された。そのうち公民科については,第 3 章の 「1 選択・扱い及び構成・排列」において,下記のよう に(3)の一部追加と新たに 2 項目の新設〔(4)と(5)〕 が行われた。なお,改正前の項目である(4)(5)(6)は それぞれ(6)(7)(8)に修正された。  (3)未確定な時事的事象について断定的に記述してい たり,特定の事柄を強調し過ぎていたり,一面的な見 解を十分な配慮なく取り上げていたりするところはな いこと。(下線部追加)  (4)近現代の歴史的事象のうち,通説的な見解がない 数字などの事項について記述する場合には,通説的な 見解がないことが明示されているとともに,生徒が誤 解するおそれのある表現がないこと。  (5)閣議決定その他の方法により示された政府の統一 的な見解又は最高裁判所の判例が存在する場合には, それらに基づいた記述がされていること。 9) 高等学校学習指導要領(平成 21 年 3 月改正)については, 文部科学省の下記ウェブサイト参照。  http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/ micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2011/03/30/1304427_ 002.pdf 10) 文部科学省「(2013 年 3 月)平成 24 年度教科用図書検定 結果の概要」(下記ウェブサイト)参照。http://www.me xt.go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/kentei/1332488.htm 11) 2011(平成 23)年度の検定申請教科書については,教科 用図書検定調査審議会第 2 部会政治経済小委員会(第 1 回:平成 23 年 9 月 29 日)および同審議会第 2 部会(第 1 回:平成 23 年 10 月 14 日)における「判定案」にもとづく。 また,2012(平成 24)年度の検定申請教科書については, 教科用図書検定調査審議会第 2 部会政治・経済小委員会 ( 第 1 回: 平 成 24 年 9 月 26 日, 第 2 回: 同 9 月 28 日 ) および同審議会第 2 部会(平成 24 年 10 月 19 日)におけ る「判定案」にもとづく。 12) 検定審査終了後に,申請図書(教科書),見本,編修趣意 書,検定申請書類の添付書類,調査意見書,検定意見書, 修正表,判定案,教科用図書検定調査審議会・部会・小 委員会の議事録などが公開されている。このような資料 の公開については,教科用図書検定規則(平成元年 4 月 4 日文部省令第 20 号)第 18 条と,それに関連する教科用 図書検定規則実施細則(平成元年 10 月 17 日文部大臣裁 定)第 5「申請図書等の公開」に定められている。なお, 筆者が訪問調査したのは,国立教育政策研究所教育研究 情報センター教育図書館と公益財団法人教科書研究セン ター附属教科書図書館である。 13) 2011(平成 23)年度の検定申請教科書 1 点については, 教科用図書検定調査審議会政治経済小委員会(第 2 回: 平成 24 年 2 月 6 日)および同審議会第 2 部会(第 4 回: 平成 24 年 2 月 17 日開催)で修正表が審査され,その結

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果「判定案」は合格となった。 14) 2012(平成 24)年度の検定申請教科書 7 点については, 教科用図書検定調査審議会政治・経済小委員会(第 3 回: 平成 25 年 2 月 12 日)および同審議会第 2 部会(第 3 回: 平成 25 年 2 月 19 日開催)で修正表が審査され,その結 果「判定案」はすべて合格となった。ただし,提出した 修正表にある修正文に関して,「修正の内容に不適切なも のがあるが,なお適切な修正の余地があると認められた」 場合には,「申請者に当該箇所の修正表の変更を求め,適 切に修正が行われたと認められる場合は合格と判定する」 ということが,同日の政治・経済小委員会と第 2 部会の 議事要旨を読むとわかる。前者の議事要旨については, 文部科学省の下記ウェブサイト参照。  http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/tosho/018/058_6/ gijiroku/1335053.htm   また,後者の議事要旨については,文部科学省の下記 ウェブサイト参照。  http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/tosho/018/058/gi jiroku/1335225.htm 15) 教科用図書検定審査要項(平成 13 年 1 月 15 日教科用図 書検定調査審議会決定)には,検定の合格ないし不合格 の判定方法が次のように記されている。  第 1 申請図書の審査(教科用図書検定規則第 7 条関係)  3 合格又は不合格の判定方法 (2)次の①〜③までのいずれかに該当する申請図書 は,不合格と判定する。なお,①及び②の場合, 申請図書の頁数は,規則第 13 条により算定した頁 数を用いる。 ①検定意見相当箇所の数(検定意見書において番号 を付している意見をそれぞれ 1 と数える。)が申請 図書 100 頁当たりに換算して 80 を超えるとき ②検定基準の各観点別の検定意見相当箇所の数に申 請図書 100 頁当たりに換算して 65 を超えるものが あるとき ③教科用図書としての基本的な構成に重大な欠陥が 見られるものや 1 単元や 1 章全体にわたる極めて 重大な欠陥が見られ,適切な修正を施すことが困 難と判断されるもの   上記①〜③のどれか 1 つにでも該当すれば,その検定 申請教科書は不合格と判定されることになる。なお,③ にいう「重大な欠陥」について文部科学省は,「教育基本 法や学校教育法で示された教育の目標等や学習指導要領 の趣旨等を適切に反映した教科書の著作・編修がなされ るべきことを明確にする観点から,『重大な欠陥』が見ら れるかどうかの判断に当たっての 1 つの例示として,こ れらの観点に照らして判断する旨を示してはどうか。」 〔教科用図書検定調査審議会総会配付資料 3「教科書検定 制度の改善について(審議要請)」平成 25 年 11 月 22 日〕 と述べて,教科用図書検定調査審議会に対して検討課題 の 1 つとして提示した。これについては文部科学省の下 記 ウ ェ ブ サ イ ト 参 照。http://www.mext.go.jp/b_menu/ shingi/tosho/103/shiryo/_icsFiles/afieldfile/2013/12/04/ 1342029_02_1.pdf 参考文献 [1] 淺野忠克・山岡道男・阿部信太郎(2014)「高等学校公民 科教員の研究:経済教育の視点から〔2〕」『山村学園短期 大学紀要』第 24 号,1-34 頁。 [2] 鈴木裕子・高嶋伸欣・柴田健・矢野川清・盛口襄・山口 幸夫・最首悟(2003)「高校教科書検定の分析―歴史・公 民・理科」『教育評論』Vol.676(2003 年 8 月),39-47 頁, ㈱アドバンテージサーバー。

参照

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